【実施例】
【0029】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
1.ゲル化組成物および製剤の作成
実施例1
200mLビーカーに、ヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬製、粘度グレード1000-5000cP)1.53gを秤量し、1,3-ジクロロプロペン(ダウケミカル日本株式会社製)61.0gを加えた。室温下、攪拌翼(マリンプロペラ型)を用いて500rpmで撹拌しながら、n−オクタノール2mL(和光純薬製、1.66g)を加えたところ、直ちに増粘し無色透明のゲル状物を形成した。その後、5分間撹拌を続けた。1,3-ジクロロプロペンの含有率は95重量%であり、これをゲル状組成物(A−1)とした。
ポリビニルアルコールフィルムであるソルブロンPT#40(厚み40μm、アイセロ化学株式会社)で作製した水溶性高分子袋に、1,3−ジクロロプロペンを2mL含有する量のゲル状組成物(A−1)を秤量し、三方向をヒートシールして製剤(A−2)とした。
【0031】
実施例2
実施例1において、1,3-ジクロロプロペンの代わりにクロルピクリン(三井化学アグロ株式会社製)を用いた他は、実施例1と同様にして、各成分を混合したところ、直ちに増粘し無色透明のゲル状物を形成した。クロルピクリンの含有率は95重量%であった。これをゲル状組成物(B−1)とした。
ポリビニルアルコールフィルムであるソルブロンPT#40(厚み40μm、アイセロ化学株式会社)で作製した水溶性高分子袋に、1,3−ジクロロプロペンを2mL含有する量のゲル状組成物(B−1)を秤量し、三方向をヒートシールして製剤(B−2)とした。
【0032】
比較例1
200mLビーカーに、超微粒子無水シリカであるアエロジル300(日本アエロジル株式会社製)3.19gを秤量し、1,3−ジクロロプロペン(ダウケミカル日本株式会社製)61.0gを加えた。室温下、攪拌翼(マリンプロペラ型)を用いて500rpmで5分間撹拌したところ、粘性の高いやや青味を帯びた透明ゲル状物を形成した。1,3−ジクロロプロペンの含有率は95重量%であった。これをゲル状組成物(C−1)とした。
ポリビニルアルコールフィルムであるソルブロンPT#40(厚み40μm、アイセロ化学株式会社)で作製した水溶性高分子袋に、1,3−ジクロロプロペンを2mL含有する量のゲル状組成物(C−1)を秤量し、三方向をヒートシールして製剤(C−2)とした。
【0033】
比較例2
試験管に12-ヒドロキシステアリン酸(和光純薬製)0.64(g)秤量し、1,3−ジクロロプロペン(ダウケミカル日本株式会社製)12.2gを加えた。試験管の口にラバーセプタムを付け、80℃の湯浴で加熱し均一に溶解後、室温で放冷すると、やや硬い白色のゲル状物を形成した。1,3−ジクロロプロペンの含有率は95重量%であった。これをゲル状組成物(D−1)とした。
ポリビニルアルコールフィルムであるソルブロンPT#40(厚み40μm、アイセロ化学株式会社)で作製した水溶性高分子袋に、1,3−ジクロロプロペンを2mL含有する量のゲル状組成物(D−1)を秤量し、三方向をヒートシールして製剤(D−2)とした。
【0034】
比較例3
比較例2において、12-ヒドロキシステアリン酸の代わりにラウロイル‐L−グルタミン酸-α,γ-ジブチルアミド(和光純薬製)を用いた他は、比較例2と同様にして各成分を混合したところ、やや硬い白色のゲル状物を形成した。1,3−ジクロロプロペンの含有率は95重量%であった。これをゲル状組成物(E−1)とした。
ポリビニルアルコールフィルムであるソルブロンPT#40(厚み40μm、アイセロ化学株式会社)で作製した水溶性高分子袋に、1,3−ジクロロプロペンを2mL含有する量のゲル状組成物(E−1)を秤量し、三方向をヒートシールして製剤(E−2)とした。
【0035】
比較例4
ポリビニルアルコールフィルムであるソルブロンPT#40(厚み40μm、アイセロ化学株式会社)で作製した水溶性高分子袋に、1,3−ジクロロプロペン(ダウケミカル日本株式会社製)2mL(2.44g)を秤量し、三方向をヒートシールして製剤(G−2)とした。
【0036】
2.耐熱試験
実施例1、及び比較例1〜3で作成した製剤(A−2)、(C−2)、(D−2)、(E−2)について、高温時の熱安定性を評価した。具体的には、各製剤をナイロンポリ袋(旭化成パックス株式会社製コーパックST1015、100mm x 50mm)に入れ、ヒートシールをして密封したものを試験体とした。試験体を70℃に設定したオーブンに入れ、5時間経過後の状態を目視で観察した。
結果を以下の表1に示す。表1中の○はゲル状態を保ったことを示し、×は固液分離又は溶解して液体に戻ったことを示す。
【0037】
【表1】
製剤A−2及び製剤C−2は、70℃以下で固体状態を保持していたが、製剤D−2及びE−2は固体状態を保持できなかった。溶解補助剤として、ヒドロキシプロピルセルロース、又は超微粒子無水シリカを用いた製剤では、高温に曝された場合にも固体状態を保持することができ、高温下での安定性に優れていることが分かった。
【0038】
3.フィルム破損時の揮発抑制性
実施例1、及び比較例1〜4で作成した製剤(A−2)、(C−2)、(D−2)、(E−2)、(G−2)について、フィルム破損時の揮発抑制性を評価した。具体的には、各製剤の周縁部(短辺の方)に長さ5mmの切れ込みを計2箇所入れ、直径90mmのガラス製時計皿上に室温(20〜25℃)下、静置した。経過時間に対する重量減少率を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
ゲル化剤として、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、ゲル化組成物を被覆しているフィルムが破損した場合の、燻蒸剤の揮発が顕著に抑制された。
【0040】
4.土壌中における放出性
実施例1、及び比較例1、4で作成した製剤(A−2)、(C−2)、(G−2)について以下の試験を行った。
即ち、1Lビーカー型ポリエチレン製容器(直径120mm、深さ140mm)に深さ40mmまで市販培養土(加水して含水率60%に調整したもの)を入れた。その上に製剤を1剤置いた。製剤の上に、前述した市販培養土をポリエチレン容器の上端まで入れた後、厚さ0.08mmのポリエチレン製シートで被覆した。2時間、4時間、6時間、8時間、24時間、30時間、48時間、72時間後に容器底部の土壌気相部50mLをガスタイトシリンジで採取し、10mLのメタノールに吸収させた。メタノール溶液をガスクロマトグラフィー(GC)分析して1,3−ジクロロプロペン濃度を測定した。試験中の土壌温度は20±3℃に保った。
【0041】
<GC分析条件>
使用カラムは、アジレントテクノロジー社 DB−1、60mx0.25mmID、膜圧1.00μm、検出器は、FID検出機能を備えた島津製作所製GC−2010、注入口温度は150℃、検出器側温度は155℃とし、カラム昇温条件は50℃で3分間測定後、3℃/分の速度で110℃まで昇温し、110℃に到達後、5分間測定した。キャリアーガスはヘリウムを用い、流量75.3ml/分とした。サンプル注入量は1.0μLとした。
【0042】
結果を表3に示す。
【表3】
【0043】
ゲル化剤としてヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合も、アエロジル300を用いた場合も、試験開始より48時間経過後には気相中の1,3−ジクロロプロペン濃度は検出限界以下となり、1,3−ジクロロプロペン原体自体の製剤を用いた場合と同等の優れた土壌放出性が得られた。
また、144時間(6日間)経過後にそれぞれの試験体より培養土を取り除き、製剤の状態を目視確認した。ヒドロキシプロピルセルロースを用いた製剤A−2、1,3−ジクロロプロペン原体自体の製剤G−2については培養土と同化して痕跡を確認できなかった。アエロジル300を用いた製剤C−2については、超微粒子シリカが白色の塊として残存しているのが確認された。