特許第6064811号(P6064811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064811
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】膜モジュール、膜ユニット
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20170116BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B01D63/00 500
   C02F1/44 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-136014(P2013-136014)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-9189(P2015-9189A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 孝行
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−305452(JP,A)
【文献】 特開2008−104945(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/033084(WO,A1)
【文献】 特開平08−132039(JP,A)
【文献】 実開平05−056294(JP,U)
【文献】 特開2012−206118(JP,A)
【文献】 特開平06−134245(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/093546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過部材の一端とこの一端から固液分離水を導入する濾過水集合部材との接続部分を含んで当該集合部材を被覆材の成型部によって被覆し、前記成型部には前記集合部材の一部分を露出させる露出部が形成され、前記一部分は透明な部材からなり、
前記濾過水集合部材は筒体から成り、この筒体には前記濾過部材の一端が挿入される挿入溝が当該筒体の軸方向と平行に形成され、当該挿入溝は当該筒体の一端まで形成されたこと
を特徴とする膜モジュール。
【請求項2】
前記濾過部材と前記集合部材とは、接着剤によって接続されたこと
を特徴とする請求項1に記載の膜モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜モジュールを複数備えたこと
を特徴とする膜ユニット。
【請求項4】
前記膜モジュールをその長手方向が垂直に複数並列に配置したこと
を特徴とする請求項に記載の膜ユニット。
【請求項5】
前記膜モジュールをその長手方向が水平に複数並列に配置したこと
を特徴とする請求項に記載の膜ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は河川水、湖水、各種廃水等の被処理水を濾過処理する膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
膜モジュールは濾過部材の一端側または両端側に濾過水集合部材が接続されているのが一般的な構成である(特許文献1〜3等)。濾過部材と濾過水集合部材とは融着剤、接着剤により接続されている。
【0003】
また、濾過処理中に濾過部材の濾過膜の破損によって濾過水への浮遊物質のリークが発生すると、濾過水の水質の低下を招くので、濾過膜の破損を早期に検知し、膜モジュールの運転を停止させて、濾過膜の交換または補修を行う必要がある。
【0004】
そこで、濾過水の水質が低下した場合にその原因となる濾過部材を特定できるようにするために、各濾過部材に接続された配管の一部分に透明部材を適用したものが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−76764号公報
【特許文献2】特開2005−125198号公報
【特許文献3】特開平10−57775号公報
【特許文献4】特開平8−132039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
濾過部材及び濾過水集合部材が高分子材料からなる場合、融着剤や接着剤により当該両者の部材の接着強度を確保させた膜モジュールが得られる。
【0007】
しかしながら、濾過部材が無機材料(例えばセラミックス)からなる一方で濾過水集合部材が高分子材料からなる場合、当該両者の部材の接合に高分子樹脂からなる接着剤を適用すると高分子材料同士の接合よりも耐久性のある接合強度を得ることが困難となる。
【0008】
しかも、従来の膜モジュールにおける前記両者の接続部分は被処理水(例えば下水、廃水等)に直接接触する態様となっており被処理水に含まれる各種の物質、温度の影響を直接受けることとなる。
【0009】
また、水質低下の原因となる濾過部材を特定するための特許文献4の透明部材は、濾過部材本体ではなく、濾過部材に接続された配管に設けられるものである。したがって、濾過部材を様々な態様で配置させる場合、前記透明部材を有する配管の設置スペースを確保する必要がある。特に、前記透明部材を有する配管は周辺機材との物理的な緩衝を避けるために配置スペースが制限される。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、濾過部材と濾過水集合部材の接続部分の耐久性、耐薬品性を確保できると共に濾過部材の劣化を省スペースで監視できる膜モジュール及び膜ユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の膜モジュールは、濾過部材の一端とこの一端から固液分離水を導入する濾過水集合部材との接続部分を含んで当該集合部材を被覆材の成型部によって被覆し、前記成型部には前記集合部材の一部分を露出させる露出部が形成され、前記一部分は透明な部材からなり、前記濾過水集合部材は筒体から成り、この筒体には前記濾過部材の一端が挿入される挿入溝が当該筒体の軸方向と平行に形成され、当該挿入溝は当該筒体の一端まで形成されたことを特徴とする。また、本発明の膜ユニットは前記膜モジュールを複数備える。
【0012】
以上の発明によれば、少なくとも濾過部材と濾過水集合部材との接続部分が成型部によって被覆されるので当該接続部分が被処理水に曝されなくなると共に、前記成型部の露出部からは前記集合部材の内部を確認できる。
【0013】
また、前記濾過部材と前記集合部材は接着剤によって接続させると、当該部材間の液密性がより一層確保される。
【発明の効果】
【0014】
以上の発明によれば、濾過部材と濾過水集合部材の接続部分の耐久性、耐薬品性の確保できると共に、濾過部材の劣化を省スペースで監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は発明の実施形態における一端片引き方式の膜モジュールの縦断面図,(b)は発明の実施形態における両端片引き方式の膜モジュールの縦断面図,(c)は膜モジュールの成型部に形成された露出部を示した斜視図。
図2】(a)は発明の実施形態における一端両引き方式の膜モジュール,(b)は発明の実施形態における濾過部材幅方向並設タイプの一端両引き方式の膜モジュールの縦断面図。
図3】(a)は発明の第一の実施形態における膜ユニットの正面図,(b)は同ユニットの片側側面図。
図4】(a)は発明の第二の実施形態における膜ユニットの正面図,(b)は同ユニットの片側側面図。
図5】(a)は挿入溝が形成された濾過水集合部材の側面図,(b)は濾過部材が挿入固定された濾過水集合部材の縦断面図。
図6】(a)は濾過水集合部材を被覆した被覆材の成型部の一端側側面図,(b)は同成型部を備えた膜モジュールの一端側の正面図。
図7】(a)は製造架台上の膜モジュールの縦断面図,(b)は濾過部材が挿入固定された濾過水集合部材の端部側を示した側面図,(c)は同集合部材の片側側面。
図8】(a)は製造架台上にて被覆材成型部の型枠が装着された膜モジュールの縦断面図,(b)は同成型部のA−A断面図。
図9】膜モジュールから被覆材成型部の型枠が撤去される過程を説明した縦断面図。
図10】(a)は表面処理された濾過水集合部材の側面図,(b)は濾過水集合部材の一端側近傍の外周面に形成されたストッパーを示す側面図,(c)は挿入溝が一端まで形成された濾過水集合部材の側面図,(d)は同集合部材の挿入溝に挿入された濾過部材をその両端から固定部材によって固定される態様を示した側面図,(e)はキャップ状,溝が形成されたキャップ状の固定部材の側断面、解放スリットが形成された筒状の固定部材の縦断面、筒体状の固定部材の側面、溝が形成されたキャップ状筒体状の固定部材の側面を示した図。
図11】(a)は製造架台上にて円管状の中空糸膜が板状に収束されて成る濾過部材が挿入された濾過水集合部材の端部を示した縦断面図,(b)は同濾過部材を示した斜視図,(c)は製造架台上にて極細の中空糸膜が板状に収束されて成る濾過部材が挿入された濾過水集合部材の端部を示した縦断面図,(d)は同濾過部材を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
[膜モジュールの態様]
図1(a)に例示された膜モジュール1aは、一端片引き方式の膜モジュールであって、濾過部材2の一端とこの一端から濾過水(固液分離水)を導入する濾過水集合部材3との接続部分を含んで当該濾過水集合部材3を被覆材4によって被覆成型して成る。濾過水を排出させる濾過水集合部材3の一端は被覆材4の成型部41から露出している。尚、濾過水集合部材3が具備されていない濾過部材2の一端側にも被覆材4の成型部41が形成される。
【0018】
同図(b)に例示された膜モジュール1bは、両端片引き方式の膜モジュールであって、濾過部材2の両端に濾過水集合部材3が接続されている。濾過水集合部材3は少なくとも濾過部材2との接続部分を含んで被覆材4の成型部41によって被覆されている。濾過水を排出させる濾過水集合部材3の一端は成型部41から露出している。
【0019】
同図(a)〜(c)に示したように、膜モジュール1a,1bの成型部41には濾過水集合部材3の一部分を露出させる露出部42が形成されている。
【0020】
図2(a)に例示された膜モジュール1cは、一端両引き方式の膜モジュールであって、濾過部材2の一端とこの一端から濾過水を導入する濾過水集合部材3との接続部分を含んで当該濾過水集合部材3を被覆材4によって被覆成型して成る。濾過水を排出させる濾過水集合部材3の両端は被覆材4の成型部41から露出している。尚、濾過水集合部材3が具備されていない濾過部材2の一端側にも成型部41が形成される。
【0021】
同図(b)に例示された膜モジュール1dは、一端両引き方式の膜モジュールであって、濾過部材2を複数幅方向に並設させたものの一端とこの一端から濾過水を導入する濾過水集合部材3との接続部分を含んで当該濾過水集合部材3を被覆材4によって被覆成型して成る。膜モジュール1cの濾過水集合部材3と同様に、濾過水を排出させる濾過水集合部材3の両端は被覆材4の成型部41から露出している。尚、濾過水集合部材3が具備されていない濾過部材2の一端側にも成型部41が形成される。
【0022】
膜モジュール1c,1dにおいても成型部41にて露出部42が形成されている。特に、膜モジュール1c,1dにおいては露出部42が2つ形成され、個々の露出部42は濾過水集合部材3の両端寄りに形成されている。
【0023】
濾過部材2は有機膜、セラミック膜、セラミック膜以外の無機膜に例示される分離膜を備えた板状のセルから成る。例えば、有機膜中空糸膜、有機平膜、無機平膜、無機単管膜等を備えたものが挙げられる。有機膜の材料としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)などが例示される。濾過部材2に設けられる濾過膜の孔径は固液分離の対象となる物質の粒径に応じて選択される。例えば、活性汚泥の固液分離に用いるのであれば、0.5μm以下の孔径を有する濾過膜が適用され、また、浄水の濾過のように除菌が必要な場合は0.1μm以下の孔径を有する濾過膜が用いられる。
【0024】
濾過水集合部材3は、円筒状若しくは角柱状の筒体から成る。図5(a)(b)に示したように濾過水集合部材3には濾過部材2の一端が挿入される挿入溝31が当該部材2の軸方向と平行に形成されている。
【0025】
濾過水集合部材3は単一の材料で構成する場合は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、硬質塩化ビニル(PVC)樹脂の例示される材料からなる透明な部材によって製作される。尚、透明とは、半透明も含み、清澄な濾過水の変化(例えば濁り)が少なくとも目視で監視できる程度の透明性を意味する。
【0026】
濾過水集合部材3は目視監視の箇所に対応する部分のみを前記透明な材料で製作してもよい。すなわち、前記箇所に対応する部分以外の部分は、必ずしも透明である必要なく、金属、セラミックに例示される無機材料、樹脂等の有機材料で製作される。前記樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂,二液硬化型樹脂,紫外線硬化型樹脂等から任意に選択される。
【0027】
濾過水集合部材3は濾過水と接触するが被処理水に直接曝されることがなく濾過水排出口以外の部位が被覆材4によって被覆されることで補強される。また、濾過水集合部材3の材質は濾過水や膜モジュールを洗浄する薬剤のpH等の使用環境を考慮すると共に部材本体の製作の容易さ並びに濾過部材3,被覆材4との接着の作業性から選択される。
【0028】
さらに、図10(a)に示したように濾過水集合部材3の表面は被覆される前に薬剤(プライマー)処理,粗面処理等の表面処理32を施すとよい。そして、同図(b)に示したように濾過水集合部材3の濾過水排出側端部付近の外周面には当該部材3に装着される配管の脱落を防止のためのストッパー34が適宜に形成される。
【0029】
また、同図(c)に示したように挿入溝31は濾過水集合部材3の一端まで形成してもよい。この態様によれば濾過水集合部材3への濾過部材2の挿入作業が容易となる。尚、この場合、同図(d)に示されたように、挿入溝31に挿入された濾過部材2は挿入溝31の両端から固定部材33によって固定される。
【0030】
固定部材33は濾過水集合部材3と同様の構成材料によって形成される。固定部材33の態様としては同図(e)に例示された固定部材33a〜33eが挙げられる。固定部材33a,33bは同図(d)に示された挿入溝31の解放端に装着される。固定部材33aは濾過水集合部材3の一端側開口部を閉塞させる筒状のキャップタイプのものである。固定部材33bは前記キャップタイプのものにおいて濾過部材2が挿入される挿入溝331が部材33bの軸方向と平行に形成されている。固定部材33c〜33eは挿入溝31の非開放端に装着される。固定部材33cは解放スリット332が形成された筒体からなる。固定部材33dは筒体からなる。固定部材33eは筒体から成り、濾過部材2が挿入される挿入溝331が当該筒体の軸方向と平行に形成されている。
【0031】
被覆材4の成型部41は図6(a)(b)に例示したように直方体形状に成型されている。被覆材4の材料としては、金属,セラミック等に例示される無機材料や、熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂,二液硬化型樹脂,紫外線硬化型樹脂等に例示される有機材料が挙げられる。これらの材料から作業性や耐久性を含めた被処理液の性状に対して適するものが選定される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が例示される。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が例示される。二液硬化型樹脂としてはウレタン系樹脂等がある。ウレタン系樹脂としては、硬質ウレタン樹脂を用いると常温での作業が可能であるので作業性が高く、耐久性及び耐薬品性を有する被覆材4を構成できる。硬質ウレタン樹脂としては、水和アルミナ含有ポリエステルポリオール型ウレタン樹脂等が例示される。
【0032】
濾過部材2と濾過水集合部材3とは図5(b)に示したように接着剤6によって接続される。接着剤6は接着機能と液密機能とを兼ねる。接着機能は一時的な仮止めとしても機能する。また、同図に示したように濾過水集合部材3を取り付けない濾過部材2の一端はシール部材20によって封止されることで液密機能が確保される。前記液密機能は膜モジュール1a〜1dの製造過程での被覆材4成分の濾過水集合部材3内や濾過部材2内への浸入を防止させる。液密機能は被覆材4による濾過水集合部材3の被覆が形成されるまで機能すればよく過度の耐圧は必要としない。これらの機能は最低限、被覆材4による一体成型の作業終了までその機能を果たしていればよく、その作業終了後(モールド成型、固化後)には当該機能は被覆材4で代替できる。
【0033】
接着剤6としては無機系接着剤、有機系接着剤が挙げられる。無機系接着剤はシリカ系接着剤、セラミック系接着剤が例示される。有機系接着剤はアクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、シリコーン系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤が例示される。また、接着剤6の特徴、機能面から瞬間系接着剤、弾性系接着剤、二液常温硬化樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤等に分類でき、適宜、選択できる。
【0034】
[膜ユニットの態様]
膜モジュール1a〜1dを備えた膜ユニットの態様について説明する。
【0035】
図3(a)(b)に例示された膜ユニット7は膜モジュール1a,1c,1dのいずれかを複数備えたユニットである。膜ユニット7は膜モジュール1a,1c,1dの長手方向が垂直に当該モジュールを複数並列に配置させるフレーム70を備える。同図(a)に記載の実線矢印は「被処理水の流れ」を示し、点線矢印は「濾過水の流れ」を示す。膜ユニット7においては膜モジュール1a,1c,1dの上端側の成型部41から露出した濾過水集合部材3の一端側が負圧状態となることにより被処理水が当該膜モジュールの濾過部材2によって固液分離されて得られた濾過水が当該一端から排出される。
【0036】
フレーム70は、当該フレーム70の上端枠部71にて膜モジュール1a,1c,1d上端側の成型部41を支持する一対の上端支持部72と、当該フレーム70の下端枠部73にて当該膜モジュール1a,1c,1dの下端側の成型部41を支持する下端支持部74とを備える。また、フレーム70の上端には前記上端側の成型部41を押え付ける上端押さえ部75を備える。下端支持部74には前記下端側の成型部41と嵌合する凹部が形成されており、当該フレーム70における膜モジュール1a,1c,1dの位置決めが容易となっている。膜モジュール1a,1c,1dの上端側の成型部41から露出した濾過水集合部材3の一端にはフレキシブル管等の配管50が接続され、この配管50にはさらに各モジュールから導入された濾過水を系外に移送させる濾過水導出管51が接続されている。膜モジュール1a,1c,1dの露出部42は膜ユニット7の上方から観察できるようになっている。
【0037】
図4(a)(b)に例示された膜ユニット9は膜モジュール1bの長手方向が水平に当該モジュールを複数並列に配置させたフレーム91をユニットフレーム90内に積層させている。ユニットフレーム90は基礎架台92上に固定されている。
【0038】
膜モジュール1bは成型部41上端がフレーム91の上端枠部911と嵌合する一方で成型部41下端から露出した濾過水集合部材3の一端がフレーム91の下端枠部912上に支持された濾過水導出枝管93にコネクタ管94を介して接続されることでフレーム91内に支持されている。この枝管93には各膜モジュール1bから集められた濾過水を系外に移送させる濾過水導出管95が接続されている。膜モジュール1bの露出部42は膜ユニット9の両方の片側側面から観察できるようになっている。
【0039】
ユニットフレーム90には膜モジュール1aも具備できる。膜モジュール1aの場合は濾過水集合部材3を露出させていない成型部41の下端部はフレーム91の下端枠部912上に配置された図示省略の支持部にて嵌合支持される。膜モジュール1aの露出部42は膜ユニット9の片側側面から観察できるようになっている。
【0040】
[膜モジュールの製造方法の一例]
本実施形態の膜モジュールの製造方法の一例について説明する。ここでは、膜モジュール1aの製造工程の一例について説明する。
【0041】
先ず、図7(a)に示したように濾過部材2の一端が濾過水集合部材3の挿入溝31に挿入される一方で当該部材2の他端が当該濾過水集合部材3と同形態の筒状支持体12の支持溝121に挿入された状態で当該濾過水集合部材3,当該支持体12が製造架台10上の窪み部11a,11bにそれぞれ鉛直に載置される。
【0042】
次いで、濾過部材2の全長と同等の間隔で配置される支持棒13a,13bが、濾過水集合部材3,筒状支持体12のそれぞれに挿通された状態で、窪み部11a,11bにて着脱自在に鉛直支持される。この支持棒13a,13bは製造架台10上での濾過水集合部材3の支持と膜モジュール1aの全長規制の機能を果たす。
【0043】
図11(a)に例示された態様は同図(b)に例示した円管状の中空糸膜が板状に収束されて成る濾過部材2が挿入された濾過水集合部材3を製造架台10の窪み部11aにて支持棒13aによって支持した形態となっている。同図(c)に例示された態様は同図(d)に例示された極細の中空糸膜を板状に収束させて成る濾過部材2の端部側樹脂層21が挿入された濾過水集合部材3を製造架台10の窪み部11aにて支持棒13aによって支持した形態となっている。
【0044】
そして、図7(a)(b)(c)に示したように濾過水集合部材3の挿入溝31と濾過部材2とが接着剤6によって接着される。
【0045】
次いで、図8(a)に示したように濾過部材2の両端にそれぞれ組まれた型枠14a,14bが被覆材注入工程の製造架台10上に着脱自在に設置される。同図(a)(b)に示したように型枠14aの内面には露出部42形成用の凸部17が設けられている。同図(a)に示したように凸部17には濾過水集合部材3の露出させる面に対応した曲面部171が形成されている。型枠14a,14bと濾過部材2,濾過水集合部材3との間にはOリング,角リング等に例示される封止部材15を適宜に介在させている。また、濾過水の排出口として機能させない濾過水集合部材3の端部側の開口部には封止栓16が装着される。その後、型枠14a,14b内の空間部に被覆材4が注入される。
【0046】
型枠14a,14b内の空間部に注入された被覆材4が硬化した後、図9に示したように、濾過部材2は型枠14a,14bが装着されたままで製造架台1から取り外される。次いで、濾過部材2から型枠14a,14bが撤去される。そして、濾過部材2,濾過水集合部材3から封止部材15が取り外される。
【0047】
上記の工程により、濾過部材2の両端に被覆材4からなる成型部41が形成され、一方の成型部41が濾過部材2と濾過水集合部材3との接続部分を含んで被覆すると共に当該部材3の濾過水排出口を露出させた膜モジュール1aが出来上がる。また、成型部41においては、濾過水集合部材3の一部分を露出させる露出部42が形成された状態となっている。尚、膜モジュール1b〜1dも上述の工程と同様の要領で製造される。
【0048】
[本実施形態の効果]
以上の膜モジュール1a〜1dによれば、少なくとも濾過部材2と濾過水集合部材4との接続部分が被覆材4によって被覆されるので当該部分が被処理水に曝されなくなる。これにより、濾過部材2が有機材料(若しくは無機材料)からなる一方で濾過水集合部材3が無機材料(若しくは有機材料)からなる場合であっても、両者の接続部分は、被処理水に含まれる各種の物質、温度の影響を直接受なくなり、耐久性、耐薬品性が向上する。また、濾過部材2の劣化状態を省スペースで監視できる。
【0049】
濾過部材2の劣化による活性汚泥物質等の浮遊物質のリークは以下により確認できる。尚、濾過部材2の劣化とは、濾過膜の表面に欠陥が生じることにより被処理水を十分に濾過しないで浮遊物質を濾過水集合部材内にリークさせることや、濾過部材の膜表面に濾過物質が堆積して膜透過性を低下させる所謂ファウリング現象を意味する。
【0050】
(1)濾過水の濁りや着色の有無の確認。
【0051】
(2)濾過水質のモニタリングや定期分析による水質劣化を発見。
【0052】
(3)露出部42にて露出された濾過水集合部材3の透明部分の目視での確認
通常は、膜分離槽内では複数の膜モジュールから成る膜ユニットを設置して吸引ポンプを自動的に運転しているので、(2)の確認方法によって濾過部材2の劣化を発見することが多い。
【0053】
(1)や(2)の方法により浮遊物質のリークの発見後、濾過部材2の交換または補修を行うために運転を停止することとなる。この作業の効率を上げるためには、前記複数の膜モジュールから劣化した濾過部材2の発見、特定を迅速に行うことが重要となる。
【0054】
劣化した濾過部材2を発見する作業では、膜分離槽内の被処理水を引き抜くかまたはこの槽から膜ユニットを引き上げてから、(3)のように露出部42から露出した濾過水集合部材3の透明部分から濾過水の状態を目視により確認できる。したがって、濾過部材2の劣化とこの部材2の特定を迅速に行える。また、濾過水集合部材3の透明部分からの目視による濾過水の有無の確認により、膜モジュールの破損やこの破損による水漏れも推定できる。
【0055】
さらに、濾過水集合部材3が被覆される前に濾過部材2と当該濾過水集合部材3とが接着剤によって接着されることで当該部材2,3間の液密性がより一層確保される。したがって、膜モジュール1a〜1dの製造過程での被覆材4成分の濾過水集合部材3内への浸入を防止できる。尚、濾過水集合部材3の挿入溝31に濾過部材2を挿入させて接着させる態様は、当該部材2が平板状の濾過膜に限定することなく、パイプ状の濾過膜、軟質のシート状若しくはパイプ状の濾過膜、または極細の中空糸膜でも適用できる。
【0056】
また、挿入溝31は濾過水集合部材3の一端まで形成させることで、膜モジュール1a〜1dの製造過程において当該濾過水集合部材3への濾過部材2の挿入作業が容易となる。
【0057】
例えば図7(a)の態様では、筒状支持体12においても挿入溝31と同様の挿入溝が形成される。濾過水集合部材3の挿入準備過程においては、製造架台10の溝部11aには支持棒13aが装着され、当該濾過水集合部材3は挿入溝31の解放端が上端となるように溝部11aに載置される。一方、溝部11bには支持棒13bが装着され、筒状支持体12は挿入溝の解放端が上端となるように溝部11bに載置される。濾過部材2を濾過水集合部材3の挿入溝31に挿入させる際には、濾過部材2の幅方向側両端をそれぞれ濾過水集合部材3の挿入溝31,支持体12の挿入溝に合わせて当該部材2を下方に移動させればよい。
【0058】
さらに、濾過水集合部材3において濾過水の排出口を任意に確保することで膜モジュール1a〜1d,膜ユニット7,9に例示される多様な膜モジュール及び膜ユニットの態様が実現する。
【符号の説明】
【0059】
1a〜1d…膜モジュール
2…濾過部材
3…濾過水集合部材、31…挿入溝
4…被覆材、41…成型部、42…露出部
6…接着剤
7,9…膜ユニット
図1
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