(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多層金属層が、金属からなる層と金属化合物からなる層とを交互に3層以上積層したものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、具体的な実施形態を挙げつつ説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態の熱線遮蔽フィルムは、窓板に設置することによって、熱線を遮蔽するフィルムであって、透明樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルム上に設けられた多層金属層と反射色改善層とを有している。
前記多層金属層は、金属からなる層(以下、「金属層」と記載する。)と金属化合物からなる層(以下、「金属化合物層」と記載する。)とをそれぞれ1層以上積層して構成されている。また、前記反射色改善層は、可視光線領域における最大吸収ピークの波長λmaxが580〜620nmで、可視光線領域における最大吸収ピークの半値幅が50nm以下である色素を含有している。前記反射色改善層は、前記多層金属層の室外側に存在している。
【0024】
本実施形態において、多層金属層は、室外から照射される太陽光のうち、可視光線を透過させ、熱線を主に反射によって遮蔽する機能を有する層である。
【0025】
(可視光線、近赤外線、遠赤外線)
本実施形態において、可視光線とは、電磁波のうち肉眼で認識することができる光のことであり、一般に380〜780nmの波長の電磁波(可視光線領域)のことを指している。近赤外線とは、およそ800〜2500nmの波長の電磁波であり、赤色の可視光線に近い波長を持つ。近赤外線は、太陽光の中に含まれており、物体を加熱する作用がある。これに対して、遠赤外線は、およそ5〜20μm(5000〜20000nm)の波長の電磁波であり、太陽光の中には含まれず、室温付近の物体から放射される波長に近いものである。
本実施形態において、熱線とは、近赤外線のことを意味する。
【0026】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について説明する。
【0027】
(層構成)
図1は、第1実施形態の熱線遮蔽フィルム1Aの層構成を示す模式的断面図である。
第1実施形態の熱線遮蔽フィルム1Aは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層されたハードコート層7と、基材フィルム3の室外側に積層された多層金属層4と、反射色改善層5と、粘着層6とを有している。粘着層6は、窓板2に密着させて設置するための層である。
以下、第1実施形態の熱線遮蔽フィルム1Aを構成する各材料について、詳細に説明する。
【0028】
(窓板2)
窓板2は、外界から建築物や交通車輛や船舶等の内部に太陽光を取り込むための透明な板である。窓板2としては、透明ガラス板や透明樹脂板を使用する。透明樹脂には、アクリル系、スチレン系、水添環状樹脂、ポリカーボネート系、ポリエステル系など種々の樹脂を使用することができる。
【0029】
(基材フィルム3)
基材フィルム3は、熱線遮蔽フィルム1Aとしての形態を維持するための基材であり、多層金属層4、反射色改善層5、粘着層6等を保持する機能を有している。基材フィルム3は、可視光線を透過させるように透明樹脂から製造されている。基材フィルム3は、機械的強度、可視光線透過率、取扱性等に優れていることが好ましい。基材フィルム3として使用される透明樹脂としては、アクリル系、ポリカーボネート系、スチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、水添環状樹脂、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系など種々の樹脂があり、用途や目的に応じて、使い分けることができる。これらの透明樹脂の中では、耐候性の観点から、ポリエステル系が好ましい。
基材フィルム3の厚さは、透明樹脂の機械的物性等にも因るが、8〜800μmであることが好ましく、12〜400μmであることがより好ましい。
【0030】
(多層金属層4)
多層金属層4は、室外から照射される太陽光のうち、熱線を吸収と反射によって遮蔽するとともに、室内から発せられる遠赤外線を主に反射によって再び室内に取り込む層である。多層金属層4による熱線、紫外線、遠赤外線の反射は、金属内の多数の自由電子が電磁波の振動電場に合わせて集団振動するために起こると考えられている。
【0031】
多層金属層4は、基材フィルム3上に設けられた層である。
図1では図示を省略しているが、金属層と金属化合物層とがそれぞれ1層以上積層されている。
【0032】
ここで、金属層を構成する金属としては、Al、Ag、Sn、Ni、Cu、Cr、In、Pd、Pt、Au等を使用することができる。これらの金属は、いずれも導電性能に優れ、熱線、遠赤外線、紫外線を反射することが可能である。また、前記の各金属は気相法によって基材フィルム3上に皮膜を形成することが可能であり、エッチング等によって島状の金属皮膜を形成することが可能である。これらの金属は、単独で使用してもよいし、性能的に問題がなければ、合金として使用してもよい。これらの金属の中でも、導電性に優れ、気相法による金属皮膜の形成やエッチングが容易であることから、Al、Agが好ましく、Agがより好ましい。
【0033】
また、金属化合物層を構成する金属化合物としては、ITO(酸化インジウム・スズ)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、酸化チタン、窒化アルミ等を使用することができる。これらの金属化合物は、いずれも高屈折率の材料である。金属層と金属化合物層とを組み合わせて積層させることによって、多層金属層4の可視光線透過性を高めることが可能となる。これらの金属化合物の中でも、気相法による金属皮膜の形成やエッチングが容易であることから、ITOが好ましい。
【0034】
多層金属層4の構成は、金属層と金属化合物層とを交互に3層以上積層したものであることが好ましい。具体的には、ITO/Ag/ITOの3層構成、ITO/Ag/ITO/Ag/ITOの5層構成、ITO/Ag/ITO/Ag/ITO/Ag/ITOの7層構成などがある。金属層の両側を金属化合物層によって挟んだ奇数の層を有する構成とすることによって、金属層の耐久性をより向上させることが可能となる。
【0035】
金属層と金属化合物層の数が、3層、5層、7層と増加するにつれて、光学干渉による反射防止効果によって可視光線反射率は低下し、可視光線の反射防止効果に優れたものとなる。一方では、可視光線透過率は、可視光線反射率が低下した分が増加するため、熱線遮蔽フィルムとしては、より好ましいものとなる。しかし、層の数が多くなると、製造工程が多くなり、生産性が低下する。そのため、多層金属層4の光学的性能と生産性とを勘案すると、金属層と金属化合物層の数は、3層または5層が好ましく、5層がより好ましい。
【0036】
多層金属層4の各層の具体的な構成は、これらに限定される訳ではなく、Agの代わりに他の金属を使用したり、ITOの代わりに他の金属化合物を使用したり、さらには複数の金属や金属化合物を併用したりすることによって、多様な構成を取ることができる。
【0037】
多層金属層4を構成する金属層と金属化合物層のうち、金属層の厚さの合計によって、可視光線透過率が主に決定される。そのため、金属層の厚さの合計は、2〜120nmであることが好ましく、4〜70nmであることがより好ましく、6〜30nmであることがさらに好ましい。金属層の厚さの合計がこの範囲にあると、熱線、遠赤外線、紫外線の反射性能に優れ、耐久性と取扱性にも優れている。
【0038】
(反射色改善層5)
反射色改善層5は、反射光から赤色成分を吸収することによって、反射光の色目(反射色度)を無彩色に近いものに修正するために設けられた層である。
多層金属層4の反射光のスペクトルを観察すると、可視光線の波長が長くなるにつれて、反射率が高くなる挙動を示す。そのため、可視光線の反射光は赤色成分を多く含む、赤味の強いものとなる。そこで、赤色成分を吸収する反射色改善層5を設けて、反射光を透過させることによって、反射光の赤色成分の量を低減させて、色目の改善を図ることが可能となる。
【0039】
反射色改善層5は、可視光線領域における最大吸収ピークの波長λmaxが580〜620nmで、可視光線領域における最大吸収ピークの半値幅が50nm以下である色素を含有する。赤色成分のみを非常に狭い波長幅で特異的に吸収する色素を含有していることによって、他の波長の光の挙動に影響を与えることなく、反射光の色目(反射色度)を無彩色に近いものに修正することが可能となる。可視光線領域における最大吸収ピークの波長λmaxが580〜620nmの範囲になかったり、可視光線領域における最大吸収ピークの半値幅が50nmを超えたりすると、赤色に近接する緑色などの光をも吸収することとなり、色目の精密な修正が困難となる。また、透過光の色目(透過色度)に及ぼす影響も大きくなり、室内において演色性を悪化させるおそれがある。
【0040】
なお、色素の可視光線領域における最大吸収ピークとその半値幅は、色素を含有する溶液を作成し、その溶液を透過した可視光線の吸収スペクトルから測定される。測定条件は、光源D65を標準光として使用して、通常の分光光度計を使用することができる。
【0041】
可視光線領域における最大吸収ピークの波長λmaxが580〜620nmで、可視光線領域における最大吸収ピークの半値幅が50nm以下である色素としては、アンスラキノン系色素、フタロシアニン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素等も使用することが可能であるが、耐久性の観点から、ポルフィリン系色素が好ましい。
ポルフィリン系色素は、環状構造を有するとともに、環状構造の内部に金属を配位させることによって、安定した化学構造を形成するものである。配位させる金属種や修飾基を変えることによって、吸収波長や吸光度を調整することが可能である。ポルフィリン系色素としては、バナジウム、銅、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金等の金属を配位したテトラアザポルフィリンが代表的なものである。更に耐久性を向上させるためには、フエノール系熱安定剤やカルバミン酸ニッケル系のクエンチャーなどを適宜添加することが好ましい。
【0042】
上記色素は、通常は粉体である。反射色改善層5を形成するときは、例えば、色素の粉体をバインダー樹脂に適当量添加して、多層金属層4や基材フィルム3上に塗布等することによって形成する。バインダー樹脂としては、アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系などを挙げることができる。また、反射色改善層5中の色素の含有量は、色素の吸収ピークの吸光量、波長、半値幅等に応じて、適宜調整して決定することが好ましい。
【0043】
反射色改善層5は、上記したように、反射光を透過させることが必要である。そのため、反射色改善層5は、熱線を反射する多層金属層4の室外側に存在することが必要である。
【0044】
(粘着層6)
粘着層6は、熱線遮蔽フィルム1Aを窓板2に密着させて設置するための層である。
例えば、熱線遮蔽フィルム製品の購入者が熱線遮蔽フィルム1Aを窓板2に自ら設置する際に、熱線遮蔽フィルム1Aと窓板2とを密着させるために使用される。粘着層6には、取扱性向上のために、必要に応じて、離型シートが貼付されており、窓板2に設置するときには、この離型シートを剥がしてから密着させる。
【0045】
粘着層6に用いられる粘着剤としては、一般にガラス貼着用に使用されている粘着剤を使用することができる。例えば、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ブタジエン系、天然ゴム系等が挙げられる。これらの中では、耐久性の観点から、アクリル系およびシリコーン系が好ましい。
粘着層6の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。
【0046】
(ハードコート層7)
熱線遮蔽フィルム1Aの室内側の最外層には、ハードコート層7が設けられている。このハードコート層7は、外力によって熱線遮蔽フィルム1Aの表面が傷付いたり、内層部が破壊されることを防止する。
ハードコート層7に用いられる材料としては、無機系ハードコート層、有機系ハードコート層、有機無機系ハードコート層、シリコーン系ハードコート層等を使用する。中でも、紫外線硬化型のアクリル樹脂が好ましい。ハードコート層7の厚さは、0.5〜20μmであることが好ましい。
【0047】
熱線遮蔽フィルム1Aの厚さは、10〜800μmであることが好ましく、16〜500μmであることがより好ましい。
【0048】
(反射光の色度、彩度)
熱線遮蔽フィルム1Aの反射光の色度a
*と彩度C
*を、分光光度計によって測定する。具体的には、JIS Z8722に準拠し、光源D65を標準光として用いて測定する。熱線遮蔽フィルム1Aの室外側の表面で反射した反射光について、JIS Z8729に記載のL
*a
*b
*表色系の色度図における色度a
*、b
*、彩度C
*を測定する。彩度C
*は、色度a
*、b
*から、以下の式を用いて算出される。
C
*={(a
*)
2+(b
*)
2}
1/2
【0049】
反射光の色度a
*は、5.5を超えると、赤味が強くなり、熱線遮蔽フィルム1Aの見栄えが低下する。従って、反射光の色度a
*は、5.5以下であることが好ましく、5.0以下がより好ましい。
【0050】
反射光の彩度C
*は、10を超えると、色相が強くなり、無彩色と知覚することは困難であり、熱線遮蔽フィルム1Aの見栄えが低下する。従って、反射光の彩度C
*は、10以下であることが好ましく、7.0以下がより好ましい。
【0051】
(可視光線透過率)
室内を明るくするためには、熱線遮蔽フィルム1Aは、波長380〜780nmの可視光線を透過させる能力に優れていることが好ましい。熱線遮蔽フィルム1Aの可視光線透過率としては、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0052】
可視光線透過率は、JIS A5759に準拠し、分光光度計を用いて測定する。可視光線透過率は、主に、多層金属層4の金属層の厚さの合計によって制御される。さらに、基材フィルム3、粘着層6、ハードコート層7の種類や厚さ等によって調整することができる。
【0053】
(可視光線反射率)
可視光線透過率を高くし、見栄えをよくするためには、熱線遮蔽フィルム1Aは、波長380〜780nmの可視光線の反射率を低くすることが好ましい。熱線遮蔽フィルム1Aの可視光線反射率としては、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
可視光線反射率は、JIS A5759に準拠し、分光光度計を用いて測定する。可視光線反射率は、主に、多層金属層4の金属化合物層と金属層の数によって制御される。さらに、粘着層6、ハードコート層7の種類や厚さ等によって調整することができる。
【0055】
(熱線遮蔽係数)
熱線の遮蔽効率を定量化して評価するためには、熱線遮蔽係数という指標を用いる。熱線遮蔽係数は、JIS A5759に準拠し、(i)分光光度計と(ii)赤外反射測定機とを用いて測定する。熱線遮蔽係数は、0.9以下であることが好ましい。0.9を超えると、熱線の遮蔽効率が環境省のグリーン購入法基準等に照らして、不十分となる。熱線遮蔽係数は、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。
【0056】
(製造方法)
本実施形態の熱線遮蔽フィルム1Aは、基材フィルム3上に熱線遮蔽フィルム1Aを構成する各層を順次形成することによって、製造することができる。以下に各層を形成するための製造方法について、代表的な例を説明する。また、特に記載した以外の製造条件は、公知の条件に従って製造することができる。
【0057】
多層金属層4を形成する方法について説明する。まず、基材フィルム3の片方の表面上に、気相法によって所定の金属化合物の皮膜を形成する。気相法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜選択することができる。次に、形成された金属化合物の皮膜の上に、気相法によって所定の金属の皮膜を形成する。以上の操作を繰り返すことによって、金属化合物層と金属層とが交互に積層された多層の多層金属層4を形成する。
【0058】
反射色改善層5を形成する方法について説明する。まず、色素の粉体をバインダー樹脂に適当量混合し、溶剤や温度を調整して、適切な溶液粘度とする。その溶液を多層金属層4を有する基材フィルム3上にコーティングする。その後乾燥させることによって、反射色改善層5を形成する。
コーティングの方法は、公知の方法を必要に応じて、適宜選択して用いることができる。バインダー樹脂としては、アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系などから、適宜選択して使用することができる。溶剤についてもバインダー樹脂の種類に応じて、適切なものを適宜選択することができる。
【0059】
粘着層6を形成する方法について説明する。粘着剤高分子を溶剤に適当量混合し、適切な粘度の溶液を調整する。その溶液を反射色改善層5等が形成された基材フィルム3上にコーティングする。その後乾燥させることによって、粘着層6を形成する。
【0060】
ハードコート層7を形成する方法について説明する。熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を溶剤に適当量混合し、適切な粘度の溶液を調整する。その溶液を反射色改善層5等が形成された基材フィルム3上にコーティングする。乾燥させた後、熱または光を用いて硬化反応をさせることによって、ハードコート層7を形成する。
【0061】
次に、第2実施形態〜第6実施形態について説明する。但し、多くの説明内容は、第1実施形態と共通するものである。そのため、第2実施形態〜第6実施形態に関する説明において、第1実施形態と共通する構成については、その説明を省略する。第1実施形態とは異なる構成について、以下説明する。
【0062】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を示す模式的断面図である。
第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層されたハードコート層7と、基材フィルム3の室外側に積層された多層金属層4と、反射色改善層を兼ねる粘着層6aとを有している。粘着層6aは、窓板2に密着させて設置するための層である。また、粘着層6aは、粘着層でありながら、反射色改善層に用いる色素を含有している。そのため、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bは、反射色改善層を独立して有していない。
【0063】
反射色改善層に含有される色素は、反射色改善層5という独立した層として有していてもよいが、上記色素を多層金属層4の室外側に存在する他の層中に含有させることによって、反射色改善層を他の層と兼ねさせてもよい。第2実施形態では、反射色改善層は粘着層6aと兼ねている。後記する第3実施形態と第6実施形態では、反射色改善層は粘着層6bと兼ねている。また、後記する第5実施形態では、反射色改善層はハードコート層7aと兼ねている。
【0064】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態の熱線遮蔽フィルム1Cの層構成を示す模式的断面図である。
第3実施形態の熱線遮蔽フィルム1Cは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層されたハードコート層7と、基材フィルム3の室外側に積層された多層金属層4aと、反射色改善層を兼ねる粘着層6bとを有している。多層金属層4aは、島状の多層金属皮膜が多数配置して形成されている。粘着層6bは、窓板2に密着させて設置するための層である。また、粘着層6bは、粘着層でありながら、反射色改善層に用いる色素を含有している。そのため、第3実施形態の熱線遮蔽フィルム1Cは、反射色改善層を独立して有していない。
【0065】
第1実施形態や第2実施形態のように、基材フィルム3の表面の全面にわたって、多層金属層4を形成すると、可視光線の透過性能が高くならないおそれがある。そのため、以下に述べるように、連続した多層金属層4の一部を除去して、島状の多層金属皮膜を多数配置させることによって、可視光線の透過性能を高めることができる。連続した多層金属層4の一部を除去するには、エッチング等の公知の方法を用いることができる。
図3や後記する
図6において、連続した多層金属層4の一部を除去して、島状の多層金属皮膜を多数配置させた層を多層金属層4aと表わす。
【0066】
島状の多層金属皮膜の形状については、特に制約はなく、円形、正方形、長方形、正多角形、楕円形、不定形等が可能である。製造上の容易さや形状管理のし易さからは、円形、正方形、長方形、正多角形が好ましい。また多数の島状の多層金属皮膜の配置の仕方は、規則正しく配置させてもよいし、ランダムに配置させてもよい。製造上の容易さや形状管理のし易さからは、規則正しく配置させる方が好ましい。
【0067】
図9は、島状の多層金属皮膜(斜線部分)の配置を示す平面図である。
図9では、正六角形の島状の多層金属皮膜が千鳥型に多数配置されている。また、
図9では、正六角形の島状の多層金属皮膜の中心が正三角形の頂点に位置するように、規則正しく配置されている。島状の多層金属皮膜の径は約1.15×W(μm)であり、島状の多層金属皮膜間の距離はP(μm)である。
【0068】
基材フィルム3上に形成された多層金属層4の一部を除去して、所定の形状の島状の多層金属皮膜を形成するには、レジスト(感光性樹脂)膜を用いる公知のエッチング法を用いることができる。すなわち、レジスト膜の形成方法としては、印刷法、フォトリソグラフ法等の公知の方法を選択することができる。印刷法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷等の公知の方法を選択することができる。次に、レジスト膜が存在しない部分の金属皮膜を酸やアルカリによってエッチングして、除去する。その後レジスト膜を溶剤や水等で剥離することによって、島状の多層金属皮膜を形成することができる。
【0069】
[第4実施形態]
図4は、第4実施形態の熱線遮蔽フィルム1Dの層構成を示す模式的断面図である。
第4実施形態の熱線遮蔽フィルム1Dは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層された粘着層6と、基材フィルム3の室外側に積層された多層金属層4と、反射色改善層5と、ハードコート層7とを有している。粘着層6は、室内側にある窓板2に密着させて設置するための層である。第4実施形態の熱線遮蔽フィルム1Dは、窓板2の室外側に設置して使用するものである。
【0070】
[第5実施形態]
図5は、第5実施形態の熱線遮蔽フィルム1Eの層構成を示す模式的断面図である。
第5実施形態の熱線遮蔽フィルム1Eは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層された粘着層6と、基材フィルム3の室外側に積層された多層金属層4と、反射色改善層を兼ねるハードコート層7aとを有している。粘着層6は、室内側にある窓板2に密着させて設置するための層である。また、ハードコート層7aは、ハードコート層でありながら、反射色改善層に用いる色素を含有している。そのため、第5実施形態の熱線遮蔽フィルム1Eは、反射色改善層を独立して有していない。第5実施形態の熱線遮蔽フィルム1Dは、窓板2の室外側に設置して使用するものである。
【0071】
第1実施形態〜第3実施形態の熱線遮蔽フィルム1A、1B、1Cは、窓板2の室内側に設置されるため、室外の雨風等による劣化を低減できる。一方、第4実施形態と第5実施形態の熱線遮蔽フィルム1D、1Eは、窓板2の室外側に設置されるため、天井や屋根に設けられた採光用窓に貼付する際の作業性に優れる。後記する第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fは、2枚の窓板2a、2bに熱線遮蔽フィルム1Fが挟まれた構造を有しているため、外界からの影響を受けにくく、耐久性に優れたものとなっている。
【0072】
[第6実施形態]
図6は、第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fの層構成を示す模式的断面図である。
第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fは、透明樹脂からなる2枚の基材フィルム3a、3bと、基材フィルム3aの室内側に積層された粘着層6cと、2枚の基材フィルム3aと3bの間に積層された多層金属層4aと、反射色改善層を兼ねる粘着層6bと、基材フィルム3bの室外側に積層された粘着層6dとを有している。粘着層6cは、室内側の窓板2aに密着させて設置するための層である。また、粘着層6dは、室外側の窓板2bに密着させて設置するための層である。多層金属層4aは、島状の多層金属皮膜が多数配置して形成されている。粘着層6bは、粘着層でありながら、反射色改善層に用いる色素を含有している。そのため、第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fは、反射色改善層を独立して有していない。
【0073】
(粘着層6b、6c、6d)
第6実施形態において、粘着層6bと粘着層6c、6dとは、その機能や材料を異にする。粘着層6bは、第1実施形態〜第5実施形態の粘着層6、6a、6bと同じ種類の粘着剤が使用され、2枚の基材フィルム3a、3bを積層させるためのものである(第1種の粘着層)。
一方、粘着層6c、6dは、例えば、室温では粘着性のない樹脂として基材フィルム3a、3bに塗布や積層され、熱線遮蔽フィルム1Fと窓板2a、2bとを積層させた後に、加熱処理することによって、粘着性・接着性が発現し、熱線遮蔽フィルム1Fと窓板2a、2bとを接着させる層である(第2種の粘着層)。この粘着層6c、6dは、接着後は粘着性が低下するものが多い。
【0074】
第6実施形態は、窓板2a、2bの素材として、ガラス板を用いたときは、いわゆる合わせガラスを構成することとなる。粘着層6c、6dを用いて、合わせガラスを構成する各材料が強力に接着されると、合わせガラスに優れた耐貫通性能、耐衝撃性能、飛散防止効果を付与することができる。
【0075】
粘着層6c、6dに用いられる材料としては、合わせガラスの中間膜として汎用的に使用される樹脂膜であれば特に制限されず、可視光領域や赤外光領域に吸収が無いものが好ましい。具体的には、ポリビニルブチラール系樹脂(PVB系樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(EVA系樹脂)等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。粘着層6c、6dは公知の方法を用いて製造したものでもよいが、市販品を利用してもよい。市販品としては、例えば、積水化学工業社製や三菱樹脂社製の可塑化PVB、デュポン社製や武田薬品工業社製のEVA樹脂、東ソー社製の変性EVA樹脂等がある。粘着層6c、6dは、上記の樹脂膜の単層で構成してもよいし、2層以上を積層させた状態で構成してもよい。
【0076】
粘着層6c、6dの厚さは、それぞれ100〜1000μmであることが好ましい。第6実施形態の合わせガラスを作製する方法としては特に制限されず、一般的な合わせガラスの製造方法を用いればよい。具体的には、第6実施形態の合わせガラスは、2枚のガラス板の間に、熱線遮蔽フィルム1Fを積層して予備接着した後に、予備接着後に残った気泡を高温高圧で圧着することにより取り除く工程によって製造することができる。
【0077】
以上、説明してきたように、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1B、第3実施形態の熱線遮蔽フィルム1C、第4実施形態の熱線遮蔽フィルム1D、第5実施形態の熱線遮蔽フィルム1E、第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fはいずれも、反射色改善層5または反射色改善層を兼ねる層は多層金属層4の室外側に存在しており、第1実施形態の熱線遮蔽フィルム1Aと同様に、本発明の効果を発現する。
【0078】
[第1比較例]
図7は、第1比較例となる熱線遮蔽フィルム1Gの層構成を示す模式的断面図である。
第1比較例となる熱線遮蔽フィルム1Gは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層されたハードコート層7と、基材フィルム3の室外側に積層された反射色改善層を兼ねる粘着層6aと、透明樹脂からなる基材フィルム3cと、多層金属層4と、粘着層6とを有している。粘着層6は、窓板2に密着させて設置するための層である。また、粘着層6aは、粘着層でありながら、反射色改善層に用いる色素を含有している。そのため、第1比較例の熱線遮蔽フィルム1Gは、反射色改善層を独立して有していない。
【0079】
第1比較例の熱線遮蔽フィルム1Gにおいては、上記色素は、粘着層6a中に含有されている。しかし、反射色改善層を兼ねる粘着層6aは熱線を反射する多層金属層4の室内側に存在している。そのため、熱線遮蔽フィルム1Gでは、本発明の効果を期待することはできない。
【0080】
[第2比較例]
図8は、第2比較例となる熱線遮蔽フィルム1Hの層構成を示す模式的断面図である。
第2比較例となる熱線遮蔽フィルム1Hは、透明樹脂からなる基材フィルム3と、基材フィルム3の室内側に積層された多層金属層4と、反射色改善層を兼ねる粘着層6aと、基材フィルム3の室外側に積層されたハードコート層7を有している。粘着層6aは、室内側にある窓板2に密着させて設置するための層である。粘着層6aは、粘着層でありながら、反射色改善層に用いる色素を含有している。そのため、第2比較例の熱線遮蔽フィルム1Hは、反射色改善層を独立して有していない。第2比較例の熱線遮蔽フィルム1Hは、窓板2の室外側に設置して使用するものである。
【0081】
第2比較例の熱線遮蔽フィルム1Hにおいては、上記色素は、粘着層6a中に含有されている。しかし、反射色改善層を兼ねる粘着層6aは熱線を反射する多層金属層4の室内側に存在している。そのため、熱線遮蔽フィルム1Hでは、本発明の効果を期待することはできない。
【0082】
第1実施形態〜第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1A〜1Fは、屋外から照射される可視光線を透過させるので、室内を明るくすることができる。一方、熱線遮蔽フィルム1A〜1Fは、熱線を遮蔽するので、室内の気温の上昇を抑制することができる。また、室内から放射される遠赤外線は室外へ逃げないようにすることができる。また第1実施形態〜第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1A〜1Fは、屋外から見たときに、有彩色の着色が少ない、見栄えのよいものである。
【実施例】
【0083】
本実施形態を下記の実施例によって、さらに具体的に説明する。
【0084】
(フィルム1;比較例1)
フィルム1は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
下記配合の組成物Aを易接着PETフィルム(東レ社製、U40、50μm厚さ)の一方の面にバーコーターを用いて塗工し、100℃の熱風オーブン中で2分間乾燥させた。その後、塗工面に高圧水銀灯にて紫外線(積算光量300mJ/cm
2)を照射することで硬化させ、約4μm厚さのハードコート層を形成した。
【0085】
<組成物A>
ジペンタエリスリトールポリアクレート系紫外線硬化型樹脂(荒川化学社製、ビームセット700) 83.3質量部
光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184) 1質量部
トルエン 320質量部
【0086】
PETフィルムのハードコート層とは反対側の面に、5×10
-5Torrの真空下で、スパッタリング法を用いて、30nm厚さのITO皮膜、10nm厚さのAg皮膜、30nm厚さのITO皮膜を順次積層して、3層構造の多層金属層を形成した。
一方、シリコーンで処理されたセパレータ(三菱樹脂社製、MRQ#38、厚さ38μm)上に下記配合の組成物Bをアプリケータを用いて塗工した。その後100℃の熱風オーブン中で2分間乾燥させて、約22μm厚さの粘着層を形成した。
【0087】
<組成物B>
アクリル系中性粘着剤(綜研化学社製、SKダイン2975) 100質量部
硬化剤(綜研化学社製、Y−75) 0.2質量部
トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製、Tinuvin477) 3質量部
カルバミン酸ニッケル(東京化成、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II) 0.03質量部
MEK 20質量部
【0088】
さらに、上記粘着層を、上記PETフィルムの多層金属層を形成した面と室温でラミネートして、フィルム1を作製した。7日間放置後、セパレータを剥離し、粘着層を3mm厚のアルカリガラス板に貼り合せて、各種性能の評価を行った。
【0089】
(フィルム2;実施例1)
フィルム2は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素A(テトラアザポルフィリン(V)、山田化学社製、TAP10)0.034質量部を追加した以外はフィルム1と同様にして、フィルム2を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0090】
(フィルム3;実施例2)
フィルム3は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素B(テトラアザポルフィリン(V)、山田化学社製、TAP24)0.022質量部を追加した以外はフィルム1と同様にして、フィルム3を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0091】
(フィルム4;実施例3)
フィルム4は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素C(テトラアザポルフィリン(V)、山田化学社製、TAP26)0.015質量部を追加した以外はフィルム1と同様にして、フィルム4を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0092】
(フィルム5;比較例2)
フィルム5は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素D(アンスラキノン系色素、山田化学社製、FD−B302)0.044質量部を追加した以外はフィルム1と同様にして、フィルム5を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0093】
(フィルム6;比較例3)
フィルム6は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素Dを0.11質量部追加した以外はフィルム1と同様にして、フィルム6を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0094】
(フィルム7;比較例4)
フィルム7は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素E(フタロシアニン(Cu)、山田化学社製、YMG−6)0.015質量部を追加した以外はフィルム1と同様にして、フィルム7を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0095】
(フィルム8;比較例5)
フィルム8は、第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fの層構成を有するものである(
図6参照)。
フィルム1と同様にして、易接着PETフィルムの片面に3層構造の多層金属層を形成した。この多層金属層の上に、レジスト(感光性樹脂)フィルムを熱ラミネートし、フォトリソグラフィー法にて、露光、現像して、レジストを所定の島状の配置(60°ちどり型、正六角形、開口率20%、島の径(1.15W)420μm、島間の距離(P)50μm)となるように形成した。レジストを120〜160℃で乾燥させた後、塩化第二鉄の水溶液を用いて、レジストが印刷されていない部分の金属皮膜を溶解・除去した。その後、レジストを水酸化ナトリウムの水溶液を用いて溶解して、金属皮膜表面から剥離した。水洗・乾燥して、PETフィルムのハードコート層とは反対側の面に、所定の島状の金属皮膜が配置された多層金属層を形成した(
図9参照)。
【0096】
一方、易接着PETフィルム(東レ社製、U40、50μm厚さ)上にフィルム1で使用した組成物Bをアプリケータを用いて塗工した。その後100℃の熱風オーブン中で2分間乾燥させて、約22μm厚さの第1種の粘着層を形成した。さらに、上記粘着層を、上記PETフィルムの多層金属層を形成した面と室温でラミネートして、フィルムを作製した。
【0097】
さらに、2枚の3mm厚のアルカリガラス板上にそれぞれ、第2種の粘着層としての380μm厚のPVB(ポリビニルブチラールフィルム、積水化学工業社製、S−LECTB)のシートを置いた。その後100℃の熱風オーブン中で2分間加熱して、アルカリガラス板とPVBとを接着させて、片面に粘着層を有するアルカリガラス板を2枚作製した。
【0098】
平らなテーブル上に、粘着層を有する1枚のアルカリガラス板を粘着層を上側にして置いた。その上に、上記のPETフィルムを多層金属層が形成された層を上側にして置いた。さらにその上に、粘着層を有するもう1枚のアルカリガラス板を粘着層を下側にして置いた。得られた多層シートを60℃に加熱された金属ロールを有するロールラミネーターに通して仮圧着した。その後、仮圧着した多層シートをオートクレーブに入れ、130℃、13気圧、1時間の条件にて加熱することによって、本圧着して、フィルム8が中間に挟まれた合わせガラスを作製した。その後、各種性能の評価を行った。
【0099】
(フィルム9;実施例4)
フィルム9は、第6実施形態の熱線遮蔽フィルム1Fの層構成を有するものである(
図6参照)。
フィルム8で使用した組成物Bに、色素B(テトラアザポルフィリン(V)、山田化学社製、TAP24)0.022質量部を追加した以外はフィルム8と同様にして、フィルム9を作製し、評価を行った。
【0100】
(フィルム10;比較例6)
フィルム10は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
フィルム1と同様にして、ハードコート層を片面に形成した易接着PETフィルムを作製した。PETフィルムのハードコート層とは反対側の面に、5×10
-5Torrの真空下で、スパッタリング法を用いて、40nm厚さのITO皮膜、10nm厚さのAg皮膜、70nm厚さのITO皮膜、12nm厚さのAg皮膜、35nm厚さのITO皮膜を順次積層して、5層構造の多層金属層を形成した。多層金属層を5層構造の金属層とした以外は、フィルム1と同様にして、フィルム10を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0101】
(フィルム11;実施例5)
フィルム10は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素A(テトラアザポルフィリン(V)、山田化学社製、TAP10)0.034質量部を追加した以外はフィルム10と同様にして、フィルム11を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0102】
(フィルム12;実施例6)
フィルム12は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素B(テトラアザポルフィリン(V)、山田化学社製、TAP24)0.022質量部を追加した以外はフィルム10と同様にして、フィルム12を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0103】
(フィルム13;比較例7)
フィルム13は、第2実施形態の熱線遮蔽フィルム1Bの層構成を有するものである(
図2参照)。
組成物Bに、色素D(アンスラキノン系色素、山田化学社製、FD−B302)0.044質量部を追加した以外はフィルム10と同様にして、フィルム13を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0104】
(フィルム14;比較例8)
フィルム14は、第1比較例となる熱線遮蔽フィルム1Gの層構成を有するものである(
図7参照)。
フィルム1と同様にして、ハードコート層を片面に形成した易接着PETフィルムを作製した。PETフィルムのハードコート層とは反対側の面に、実施例2で使用した色素Bを含有する組成物Bをバーコーターを用いて塗工し、100℃の熱風オーブン中で2分間乾燥させ、約22μm厚さの反射色改善層を兼ねる粘着層を形成した。
【0105】
一方、フィルム1で用いた易接着PETフィルムをさらにもう1枚用意し、その一方の面に、フィルム1と同様にして、3層構造の多層金属層を形成した。さらに、多層金属層の上に、フィルム1と同様にして、組成物Bを塗工して、約22μm厚さの粘着層を形成した。
上記のハードコート層と粘着層とを有するフィルムの粘着層側の面と、上記の多層金属層と粘着層とを有するフィルムの粘着層とは反対側の面とを室温でラミネートして、フィルム14を作製した。その後、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0106】
(フィルム15;比較例9)
フィルム15は、第1比較例となる熱線遮蔽フィルム1Gの層構成を有するものである(
図7参照)。
多層金属層を5層構造の金属層とした以外は、フィルム14と同様にして、フィルム15を作製し、フィルム1と同様にして、評価を行った。
【0107】
<評価方法>
(色素の最大吸収ピークの波長λmax、最大吸収ピークの半値幅、吸光度)
トルエン溶剤に、色素を0.001質量%濃度で均一に溶解させた。
この溶液を透明ガラスセルに入れ、分光光度計(メーカー;島津製作所社製、製品名;UV3100PC)を使用して、可視光線領域におけるスペクトルを測定した。得られた可視光線領域におけるスペクトルから、380〜780nmの波長領域における最大吸収ピークの波長λmax(nm)と最大吸収ピークの半値幅(nm)を求めた。また、溶液を透過した透過率からランベルト・ベールの式より、最大吸収ピークの波長λmaxにおける吸光度を算出した。
【0108】
(可視光線透過率)
JIS A5759に準拠して、測定した。本実施例では、分光光度計(島津製作所社製、UV3160)を使用した。
【0109】
(可視光線反射率)
JIS A5759に準拠して、測定した。本実施例では、分光光度計(島津製作所社製、UV3160)を使用した。
【0110】
(色度、彩度)
JIS Z8729に記載のL
*a
*b
*表色系の色度図における色度a
*、b
*、彩度C
*を測定した。光源にはD65を用いた。
測定装置として、分光光度計(島津製作所社製、UV3160)を使用し、透過色、反射色共に室外側から入射して測定した。
彩度C
*は色度a
*、b
*から、以下の式を用いて算出される。
C
*={(a
*)
2+(b
*)
2}
1/2
【0111】
(熱線遮蔽係数)
熱線遮蔽係数は、JIS A5759に準拠して、(i)分光光度計と(ii)赤外反射測定機とを用いて測定した。遮蔽係数が、0.8以下のとき、熱線遮蔽効率は優れていると判定した。好ましくは0.7以下である。
本実施例では、(i)分光光度計(島津製作所社製、UV3160)および(ii)赤外反射測定機(島津製作所社製、FTIR8700)を使用した。
【0112】
各フィルムを用いて、評価用に用いた色素のリストを表1に示した。また、各フィルムの構成と性能の評価結果を表2に示した。但し、フィルム1、フィルム7、フィルム9の各フィルムは、粘着層に反射色改善層に用いる色素を含有していないため、表2において、フィルムの層構成を括弧で括って記載している。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表1において、フィルム1〜7は、フィルムの層構成として、
図2の熱線遮蔽フィルム1Bを用いている。フィルム1は、本発明の色素を含有していないフィルムである。可視光線透過率は高いものの、反射光の色度a
*が5.9であり、反射光の彩度C
*が11.5であり、いずれも高い数値であり、外観は赤味を帯びて見えて、見栄えの劣るものであった。
【0116】
このフィルム1に対して、フィルム2〜4は、それぞれ本発明の色素A、B、Cを含有しており、可視光線透過率はフィルム1より若干低いものの70%前後であり、反射光の色度a
*は5以下、彩度C
*は10以下であり、外観の色相は、グレーに近く、赤味が消えて、見栄えが良好なものであった。
【0117】
フィルム5、6は、それぞれ色素Dを含有しており、フィルム7は、色素Eを含有している。いずれの色素も可視光線領域における最大吸収ピークの波長λmaxが580〜620nmの範囲にはなく、また色素Dは、最大吸収ピークの半値幅が50nmを大きく超えるものであった。そのため、フィルム5とフィルム7は、反射光の色度a
*や彩度C
*の改良が十分ではなく、外観の赤味が依然として存在し、見栄えは良好なものではなかった。また、フィルム6は、可視光線透過率に劣るものであった。
【0118】
フィルム8と9は、フィルムの層構成として、
図6の熱線遮蔽フィルム1Fを用いている。フィルム8は、本発明の色素を含有していないフィルムである。多層金属層が島状に分布しているため、可視光線透過率は高く、反射光の色度a
*は5.0と比較的良好なものであった。しかし、反射光の彩度C
*が10.6と高く、赤味を帯びて見える見栄えの劣るものであった。
【0119】
フィルム9は、本発明の色素Bを含有しているフィルムである。フィルム8に比べて、反射光の色度a
*は2であり、反射光の彩度C
*が7以下であり、外観の色相は、赤味がなく、見栄えが良好なものであった。
【0120】
フィルム10〜13は、フィルムの層構成として、
図2の熱線遮蔽フィルム1Bを用いている。フィルム1〜7は、多層金属層が3層であるのに対して、フィルム10〜13は、多層金属層が5層である。フィルム10〜13は、フィルム1〜7に比べて、可視光線反射率が低く、熱線遮蔽性能に優れたものとなっている。
【0121】
フィルム10は、本発明の色素を含有していないフィルムである。同じく本発明の色素を含有していないが、多層金属層が3層のフィルム1に比べて、フィルム10は可視光線透過率はやや劣るものの、反射光の色度a
*と彩度C
*がいずれも改善されている。
【0122】
しかし、このフィルム10に対して、フィルム11〜12は、それぞれ本発明の色素A、Bを含有しており、可視光線透過率はフィルム10より若干低いものの、反射光の色度a
*と彩度C
*は大きく改善され、外観の色相は、有彩色の着色がほとんどなく、見栄えに優れたものであった。
【0123】
フィルム13は、色素Dを含有しており、可視光線領域における最大吸収ピークの波長λmaxが580〜620nmの範囲にはなく、また、最大吸収ピークの半値幅が50nmを大きく超えるものであった。そのため、反射光の色度a
*や彩度C
*の改良が十分ではなく、色素を含有しないフィルム10と同等レベルのものであった。
【0124】
フィルム14と15は、フィルムの層構成として、
図7の熱線遮蔽フィルム1Gを用いている。フィルム14は多層金属層が3層であり、フィルム15は多層金属層が5層である。熱線遮蔽フィルム1Gの構成は、第1比較例となる層構成であり、本発明とは異なり、反射色改善層は、多層金属層の室内側に存在している。
そのため、色素Bを含有はしているものの、反射光は色素Bを含有する層を通過しないため、フィルム14と15は、それぞれ色素を含有しないフィルム1と10と比べて、外観の色相は、大きく改善されるものではなかった。