(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デンドライト状導電性微粒子(B)は、見掛密度ADとタップ密度TDの比率が、AD/TD=0.3〜0.9であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性シート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得る。また、以下の実施形態は、互いに好適に組み合わせることができる。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、数A及び数Aより大きい範囲であって、数B及び数Bより小さい範囲を意味する。
【0018】
本発明の導電性シートは、少なくとも導電層を有するものである。導電性シートは、一層の導電層からなるものでも、複数の導電層が積層されたものでもよく、また、導電層以外の層(例えば、支持層、絶縁層、保護層、接着層)などが積層されたものでもよい。なお、本明細書でいう導電性シートは、シート全体において導電特性を有する必要はなく、少なくとも導電層において導電特性を有していればよい。導電層の導電特性は、用途やニーズに応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。
【0019】
[第1実施形態]
第1実施形態においては、導電性シートの一実施態様として、1層の導電層から構成される例について説明する。第1実施形態の導電性シートの導電層は、熱硬化性樹脂(A)と、デンドライト状導電性微粒子(B)を必須構成として含むものである。導電層の厚みが、150℃、2MPa、30分間の条件で、被着体と加熱プレスした場合に、加熱プレス前の導電層の厚みを100としたときに加熱プレス後の厚みが30以上、95以下の範囲になるものである。なお、「加熱プレス前の導電層」とは、プリント配線板等の被着体に貼り付ける直前の導電層をいう。また、被着体は、導電性シートを貼り付ける対象物全般であり、例えば、プリント配線基板、フレキシブル基板等が挙げられる。
【0020】
導電性シートの導電層の上記条件下での加熱プレス後の導電層の厚みは、40以上がより好ましく、45以上であることがさらに好ましい。また、当該加熱プレス後の導電層の厚みは90以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。特に好ましくは、60〜80の範囲である。加熱プレス後の厚みが95より大きい場合、加熱プレス前の導電層に空隙が少ないことが想定されるため、加熱プレス前後で厚み変化が少なく、加熱プレス時に水平方向への熱硬化性樹脂(A)の染み出しが大きくなる恐れがある。一方、加熱プレス後の厚みが30より小さい場合、導電層に空隙が多すぎることが想定されるため加熱プレス前後の厚み変化が大きく、加熱プレスによっても空隙が残り、所望の導電性が達成しにくい傾向にある。なお、本明細書でいう「染み出し」とは、低分子量成分がブリードすること、及び導電層が流動したはみ出しを含むものとする。
【0021】
第1実施形態の導電性シートは、導電層にデンドライト状導電性微粒子(B)を用いることによって形成させた空隙を温度150℃、時間30分、圧力2MPaの条件で加熱プレスすることで埋めることができるものである。なお、第1実施形態の導電性シートをプリント配線板等の被着体に貼着せしめる際の条件は、上記加熱プレス条件で行う例を説明するが、異なる加熱プレス工程を採用して導電性シートを形成してもよい。例えば、用いる熱可塑性樹脂の種類に応じて、加熱条件、プレス条件等を調整することができる。
【0022】
第1実施形態の導電性シートは、プリント配線板等の被着体に、第1実施形態の導電性シートの導電層側が接するように積層し、上記加熱プレス工程を経ることにより、被着体に導電性シートを貼着せしめることができる。第1実施形態の導電性シートによれば、熱可塑性樹脂を含有させているので、被着体との接着性を良好に保つことができる。なお、導電層を被着体に接合する例を述べたが、用途やニーズに応じて導電性シートに導電層とは別の接着剤層を設け、接着剤層と被着体を接合する態様としてもよい。
【0023】
第1実施形態において用いられる熱硬化性樹脂(A)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されないが、アクリル系、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの樹脂が好ましい。さらにフレキシブルプリント配線板のように加熱プレス工程にて接着し、貼り付した後に屈曲して使用する場合には、耐熱性と屈曲性を兼ね備えたアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂がより好ましい。なお、熱硬化性樹脂(A)は、1種類を用いても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0024】
導電層には、熱硬化性樹脂(A)と併用して硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤は、用いる樹脂の官能基に対応した公知の化合物を使用できる。例えば、樹脂がカルボキシル基を含有する場合はエポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤等が好ましい。また、樹脂が水酸基を含有する場合はイソシアネート硬化剤や酸無水物基含有化合物等が好ましい。
【0025】
図1Aに、第1実施形態の導電層に好適なデンドライト状導電性微粒子(B)の一例のSEM像を示す。デンドライト状とは、一般に樹枝状ともいい、樹木の枝のような形状を意味する。デンドライト状導電性微粒子(B)の素材は、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛または鉄などの導電性金属やその合金、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性有機化合物、あるいはこれらを複合した導電性化合物が例示できる。または、金属や有機化合物や無機化合物を核とし、当該核の表面を導電性の素材で被覆した導電性微粒子も好ましい例として挙げられる。
【0026】
導電性の被覆層を有する導電性微粒子は、コアとなる核に対し、表面に被覆層が形成された粒子が好ましい例として挙げられる。核としては、銅、ニッケル、カドニウム等の金属その合金、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性有機化合物、あるいは通常の非導電性の有機化合物などが挙げられる。また、被覆層としては、金、銀、銅などの導電性に優れる金属が挙げられる。また、銅を核として銀で被覆層を形成した導電性微粒子がより好ましい例として挙げられる。なお、デンドライト状導電性微粒子(B)は、単一種類を用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0027】
導電性の被覆層を有する導電性微粒子における被覆層の割合は、デンドライト状導電性微粒子(B)100重量%中、1重量%〜40重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。被覆された導電性微粒子を使用することで、高価な銀の使用量の低減によるコストダウンや、銅の導電性微粒子を使用した場合の銅の酸化による導電性低下を抑制できる。
【0028】
加熱プレス前後で導電性シートの厚みが変化するのは、主として嵩高いデンドライト状導電性微粒子(B)の存在により導電層に空隙が存在しやすく、加熱プレスによりに熱硬化性樹脂(A)が流動してその空隙を埋めることによるものと推測している。デンドライト状導電性微粒子(B)の空隙は、使用するデンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D
50と平均粒子径D
90の関係によって、より影響を受けやすい。そして、加熱プレス前の導電層に空隙が多いほど厚み変化が大きくなる。つまり、加熱プレス前の厚みを100とした場合に、加熱プレス後の厚みの値が小さくなるほど導電層に空隙が多いと考えられる。
【0029】
デンドライト状導電性微粒子(B)は、平均粒子径D
50が3μm〜50μmであり、かつ平均粒子径D
90が平均粒子径D
50の1.5〜5倍であることが好ましい。また、平均粒子径D
50は3μm〜40μmがより好ましく、5μm〜25μmがさらに好ましい。平均粒子径D
50が3μm以上になることで、導電層に空隙が出来やすくなり、染み出しを低減できる。一方、平均粒子径D
50が50μm以下になることで、適切な厚さの導電層を形成しやすくなる。
【0030】
デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D
90は、平均粒子径D
50の1.5倍〜5倍が好ましく、2倍〜3.5倍がより好ましい。平均粒子径D
90の値は、平均粒子径D
50の平均粒子径に依存する傾向にあるが、4.5μm〜250μmが好ましい。平均粒子径D
90が、平均粒子径D
50の1.5倍以上になることで、粒子径分布の幅が広がるため導電層中に空隙が生じやすい傾向にある。一方、平均粒子径D
90が、平均粒子径D
50の5倍以下になることで、粒子径分布の幅が広がりすぎず、導電層中のデンドライト状導電性微粒子(B)の充填が適切になる傾向にある。さらには、巨大な樹枝状粒子の存在により加熱プレス後に当該巨大な樹枝状粒子が導電層から突き出る現象が起こりにくくなる。
【0031】
デンドライト状導電性微粒子(B)は、タップ密度(以下、「TD」ともいう)が、0.8g/cm
3〜2.5g/cm
3であることが好ましい。TDが0.8g/cm
3以上になることで、導電層中の導電性微粒子の充填をより密にできる。一方、TDが2.5g/cm
3以下になることで、導電層中の導電性微粒子の充填が過密になりにくく、加熱プレス前後の膜厚変化が大きい状態を維持できる傾向にあるため、染み出しをより低減できる。
【0032】
また、デンドライト状導電性微粒子(B)は、見掛密度(以下、「AD」ともいう)が0.4g/cm
3〜1.5g/cm
3であることが好ましい。ADが0.4g/cm
3以上になることで、導電層中の導電性微粒子の充填をより密にできる。一方、TDが1.5g/cm
3以下になることで、導電層中の導電性微粒子の充填が過密になりにくく、加熱プレス前後の膜厚変化が大きい状態を維持できる傾向にあるため、染み出しをより低減できる。
【0033】
デンドライト状導電性微粒子(B)の見掛密度ADとタップ密度TDの値を適切にすることで、より適切に導電層に空隙を形成できる。すなわち、デンドライト状導電性微粒子(B)は、ADとTDの比率(AD/TD)が0.3〜0.9であることがより好ましい。AD/TDを0.3以上とすることで、ADとTDの数値がより適切になり、加熱プレス後の膜厚変化が大きくなりすぎない傾向にある。一方、AD/TDを0.9以下にすることで、ADとTDの数値がより適切になり、加熱プレス後の膜厚変化が小さすぎない傾向にある。
【0034】
導電層中にデンドライト状導電性微粒子(B)を使用する割合は、導電層100重量%中、50重量%〜90重量%が好ましく、60重量%〜80重量%がより好ましい。使用量が50重量%以上になることで所望の導電性が得やすい傾向にある。一方、90重量%以下になることでシート化するための樹脂量が確保しやすい傾向にある。
【0035】
デンドライト状導電性微粒子(B)は、球状導電性微粒子やフレーク状導電性微粒子(
図1B参照)と比較すると、樹の枝のような形状をしているため、1つ1つの粒子間に隙間を形成しやすい。そのため、デンドライト状導電性微粒子(B)を使用して導電層を形成すると、空隙が生じやすい。デンドライト状導電性微粒子(B)を用いることにより、球状導電性粒子やフレーク状導電性微粒子を主成分として使用した導電性シートを同一条件で加熱プレスする場合と比較して、横方向への染み出しをより低減できる。
【0036】
導電層には、熱硬化性樹脂(A)とデンドライト状導電性微粒子(B)の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の添加剤を加えることができる。例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を含むことができる。
【0037】
続いて、第1実施形態の導電性シートの製造方法について説明する。まず、少なくとも熱硬化性樹脂(A)と、デンドライト状導電性微粒子(B)を混合することで導電性樹脂組成物(C)を調合する。混合方法は、特に限定されないが、好ましい例としてミキサー、ディソルバー、フーバーマーラー、3本ロールミル、サンドミル等を使用する方法が挙げられる。
【0038】
導電性樹脂組成物(C)を用いて、例えば、剥離シート上に塗工して導電層の塗膜を形成する。塗工方法は特に限定されず、従来公知の方法を制限なく利用できる。例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等により塗膜を形成する。
【0039】
導電層の加熱プレスを行う前の厚みは、用途に応じて適宜設定できるが、5μm〜100μmが好ましい。なお、厚みは、JISB7503(ダイヤルゲージ)に則って測定した値である。
【0040】
第1実施形態の導電性シートの加熱プレス後の膜厚は、デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D
50の0.25倍〜10倍であることが好ましく、0.5倍〜5倍がより好ましい。
【0041】
第1実施形態の導電性シートの用途は特に限定されず、導電性シートを貼り付けて使用したい用途全般に対して利用できる。例えば、プリント配線板に貼り付けて電磁波シールドをする目的で用いたり、プリント配線板に形成した回路のアースを取る為に使用することができる。また、電子レンジ等の家電をはじめとする各種電子機器等に貼り付けて使用できる。
【0042】
第1実施形態の導電性シートによれば、特許文献1のように、3層構造とせずに1層のみだけでも、熱可塑性樹脂を用いることにより被着体への接着力を発現させることができる。その結果、薄膜用途にも利用できるという優れたメリットがある。また、特許文献1のように金属箔を用いずに、熱可塑性樹脂とデンドライト状導電性微粒子を必須構成成分とする導電層を用いているので、フレキシブル性に優れている。従って、フレキシブルプリント配線板等に好適に適用できる。また、導電性微粒子として、デンドライト状の導電性微粒子を用いることにより、導電層内に空隙等を形成して加熱プレス時の染み出しを空隙により吸収することができる。その結果、導電層の染み出しを最小限の抑制することができる。また、高温環境下において使用が難しい耐熱性の低い樹脂等においてもデンドライト状導電性微粒子を用いることにより、導電層の染み出しを効果的に抑制できる。本発明の導電性シートによれば、高温・高湿等の過酷な条件下で使用される用途としても好適に利用できる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、上記第1実施形態とは異なる導電性シートの一例について説明する。第2実施形態に係る導電性シートは、絶縁層と、上記第1実施形態の導電層とが積層された絶縁層付きの導電性シートである。
【0044】
第2実施形態の導電性シートに用いられる絶縁層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で特に限定されない。絶縁層の素材は、特に限定されないが、例えば、導電層で使用できる熱硬化性樹脂(A)など絶縁性を有する樹脂を使用することが好ましい。また、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイドなどのプラスチックフィルムを使用することもできる。
【0045】
また絶縁層には、必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等を含むこともできる。
【0046】
第2実施形態の導電性シートの用途は、特に限定されないが、例えば、導電層側をプリント配線板の外側主面に貼着せしめて電磁波シールドフィルムとして利用することができる。
【0047】
第2実施形態の導電性シートの絶縁層の形成方法、及び導電層と絶縁層との積層方法は、公知の方法を制限なく使用できる。例えば、予め形成してある絶縁層上に導電層を形成したり、第1実施形態で説明した導電層と同様の製造方法により絶縁層に形成したりすることができる。絶縁層の厚さは、用途によっても異なるが、例えば、5μm〜50μmが好ましい。
【0048】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の導電層を有するので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、絶縁層との積層体とすることにより、導電性シートの機械的強度を高めたり、表面に絶縁特性を付与したりすることができる。
【0049】
なお、第2実施形態においては、絶縁層と導電層を積層する導電性シートの例を説明したが、導電層と積層する層は、特に限定されず目的に応じて種々の機能を有する層を積層することができる。例えば、支持層や半導体層、保護膜、反射防止フィルム等の光学フィルム等を積層した導電性シートであってもよい。
【0050】
[第3実施形態]
次に、上記第1実施形態とは異なる製造方法により製造した導電性シートの例について説明する。第3実施形態の導電性シートの製造方法は、第1実施形態で説明した加熱プレス前に、プレス工程を含む点において第1実施形態の導電性シートの製造方法と相違する。それ以外の点については、第1実施形態で説明した工程と同様であり、用いる導電層の構成も同様である。
【0051】
第3実施形態の導電性シートは、塗工して導電層を形成した後であって、被着体と接着する際に加熱プレスを行う前に、加圧工程(以下、被着体と導電性シートを加熱プレスする工程と区別するために「プレ加圧工程」という)を行うことにより製造したものである。プレ加圧工程は、用途により適宜変更し得るが、2.5MPa〜50MPa(25kg/cm
2〜510kg/cm
2の圧力を加えることが好ましい。温度は、加熱することを排除するものではないが、デンドライト状導電性微粒子(B)の変形や折れを誘起し、熱可塑性樹脂の流動を促す目的ではないので、加熱しない、若しくは、熱可塑性樹脂の流動を促す温度以下の加熱とすることが好ましい。
【0052】
被着体と導電性シートを接合する前に予め導電性シートに圧力を加えてデンドライト状導電性微粒子(B)を変形させたり、樹枝状の粒子を折ったりすることで、デンドライト状導電性微粒子(B)同士の接触が密になり導電層の導電特性をより向上させることができる。
導電性シートに圧力を加える方法としては、平板プレス機、ロールプレス機等を用いる方法がある。これらの中でも圧力を高めやすい(線圧を高められる)ロールプレス機が好ましい。使用するロールは、金属ロール及び樹脂ロール等の表面硬度が異なるロールを使用できる。この加圧後の導電性シートを使用して、プリント配線板等の被着体と接合して加熱プレスをすることで導電層の染み出しをより効果的に抑制できる。
【0053】
第3実施形態の導電層は、プレ加圧工程を行うものであるが、被着体と導電性シートを接合する際には第1実施形態で述べたように、150℃、2MPa、30分間の条件で加熱プレスした後の厚みが、加熱プレス前の当該導電層の厚みを100としたときに30以上、95以下の範囲になるものである必要がある。すなわち、プレ加圧工程を経た後の被着体との接合前の導電層の厚みに対して、上記条件で加熱プレス(150℃、2MPa、30分間の条件で加熱プレス)をした場合の厚み変化が上記範囲(導電層の厚みを100としたときに30以上、95以下の範囲)に含まれるものである必要がある。なお、上記条件を満たすものであればよく、プレ加圧工程において膜厚が変化するものであってもよい。プレ加圧工程において膜厚が変化するものであっても、熱可塑性樹脂組成物やブリードした低分子量成分の移動を吸収するための空隙が存在していれば、被着体と導電性シートを接合する際に加熱プレスしても、導電層の染み出しを効果的に抑制できるからである。
【0054】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の導電層を有する導電性シートを用いているので第1実施形態と同様の効果が得られる。また、プリント配線板等と導電性シートを加熱プレスする前に予め導電層をプレスしてデンドライト状導電性微粒子(B)を潰しているので、導電特性を効果的に引き出すことができるというメリットがある。
【0055】
なお、第3実施形態においては、導電層を1層有する導電性シートの例について説明したが、第2実施形態のように絶縁層付きの導電性シートや、他の層が積層された導電性シートにおいても第3実施形態のプレ加圧工程を好適に付加することができる。導電性シートを絶縁層付きの導電性シートとする場合、プレ加圧工程を行う時期は制限されないが、絶縁層を積層する前にプレ加圧工程を行うことがより好ましい。導電層にプレ加圧工程を行うと導電層の表面がより平滑になるため、さらに絶縁層を積層する場合は、絶縁層の厚み精度が向上するため、絶縁層の厚みが薄くとも所望の絶縁特性が得やすくなる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、上記第1実施形態とは異なる導電性シートの一例について説明する。第4実施形態に係る導電性シートは、1層の導電層からなる。第4実施形態の導電性シートの導電層は、熱硬化性樹脂(A)と、デンドライト状導電性微粒子(B)を必須構成として含むものであり、導電層中のデンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D
90が、導電層の膜厚に対して0.5〜3倍の範囲内にあるものである。
【0057】
なお、第1実施形態において特定していた導電層の厚みが、150℃、2MPa、30分間の条件で加熱プレスした後の厚みが、加熱プレス前の当該導電層の厚みを100としたときに30以上、95以下の範囲になるものであることは必ずしも必要ではない。これは、導電層の膜厚に対して、デンドライト状導電微粒子(B)の平均粒子径D
90を3倍以下にすることで、微粒子の先端が、加熱プレスをかける際に導電層から突き出にくい傾向になるからである。また、平均粒子径D
90を0.5倍以上にすることで、導電層に空隙が過剰に生じにくくなるからである。但し、導電層の染み出しをより効果的に防止する観点からは、150℃、2MPa、30分間の条件で加熱プレスした後の厚みが、加熱プレス前の当該導電層の厚みを100としたときに30以上、95以下の範囲にあるという条件も満たすことがより好ましい。
【0058】
第4実施形態の導電性シートは、プリント配線板等の被着体に、第4実施形態の導電性シートの導電層側が接するように積層し、第1実施形態で説明した加熱プレス工程を経ることにより、被着体に導電性シートを貼着せしめることができる。第4実施形態の導電性シートによれば、導電層に熱可塑性樹脂を含有させているので、被着体との接着性を良好に保つことができる。なお、加熱プレスの条件は、導電層の用途やニーズに応じて(例えば、求められる導電特性や空隙の割合等に応じて)任意に設定できる。
【0059】
第4実施形態の導電性シートは、導電層においてデンドライト状導電性微粒子(B)の空隙を加熱プレスにより埋めることが好ましいが、埋めないで空隙として利用することも可能である。例えば、加熱プレス工程を行わずに、例えば、接着剤層を介して被着体と導電性シートを接合してもよい。接着剤層を介する方法は、特に限定されないが、例えば、導電層とは別の接着剤層を導電性シートに設け、若しくは被着体側に接着剤層を設けて接着剤層を介して被着体を接合する方法が挙げられる。
【0060】
導電層を構成する熱可塑性樹脂(A)の好ましい例は、第1実施形態で述べたとおりである。また、導電層には、熱可塑性樹脂(A)と併用して硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤の例についても第1実施形態で述べたとおりである。
【0061】
デンドライト状導電性微粒子(B)の好ましい態様、素材は、第1実施形態において述べたものを好適に適用できる。
【0062】
デンドライト状導電性微粒子(B)は、平均粒子径D
50が3μm〜50μmであり、かつ平均粒子径D
90が平均粒子径D
50の1.5〜5倍であることが好ましい。また、平均粒子径D
50は3μm〜40μmがより好ましく、5μm〜25μmがさらに好ましい。平均粒子径D
50が3μm以上になることで、導電層に空隙が出来やすくなり、染み出しを低減できる。一方、平均粒子径D
50が50μm以下になることで、適切な厚さの導電層を形成しやすくなる。
【0063】
デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D
90は、平均粒子径D
50の1.5倍〜5倍が好ましく、2倍〜3.5倍がより好ましい。平均粒子径D
90の値は、平均粒子径D
50の平均粒子径に依存する傾向にあるが、4.5μm〜250μmが好ましい。その理由は、第1実施形態で述べたとおりである。
【0064】
デンドライト状導電性微粒子(B)は、タップ密度(以下、「TD」ともいう)が、0.8g/cm
3〜2.5g/cm
3であることが好ましい。また、デンドライト状導電性微粒子(B)は、見掛密度(以下、「AD」ともいう)が0.4g/cm
3〜1.5g/cm
3あることが好ましい。さらに、デンドライト状導電性微粒子(B)は、ADとTDの比率(AD/TD)が0.3〜0.9であることがより好ましい。これらの理由は、第1実施形態で述べたとおりである。
【0065】
第4実施形態の導電性シートの厚みは、特に限定されないが、5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。なお、厚みは、JISB7503(ダイヤルゲージ)に則って測定した値である。導電層の厚みが5μm以上になると導電性が得やすくなる。また、100μm以下になることで屈曲性のバランスがとりやすくなる。
【0066】
導電層中にデンドライト状導電性微粒子(B)を使用する割合は、導電層100重量%中、50重量%〜90重量%が好ましく、60重量%〜80重量%がより好ましい。その理由は、第1実施形態で述べたとおりである。また、第4実施形態の導電層においても、必要に応じて添加剤を加えることができ、その一例として、第1実施形態で述べた添加剤を挙げることができる。また、導電性シートの製造方法は、第1実施形態で述べたとおりである。
【0067】
第4実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、導電層の厚みとして、導電層中のデンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D
90が、導電層の膜厚に対して0.5〜3倍の範囲内にあるものを用いることにより、導電層の膜厚と平均粒子径D
90を設計することによって、導電層の染み出しを最小限にすることができる信頼性の高い導電性シートを提供することができるというメリットがある。
【0068】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の導電性シートとして電磁波シールドフィルムに適用した例について説明する。第5実施形態の導電性シートは、絶縁層と第4実施形態の導電層が積層されたものである。用途として、例えば、プリント配線板等の電子部品に貼着せしめる電磁波シールドフィルムとして利用できる。なお、電磁波シールドフィルムは、絶縁層と導電層以外の他の層(例えば、保護層、接着層)が積層されていてもよい。
【0069】
絶縁層に用いる材料は、特に限定されないが、好ましい例としては、第2実施形態で述べたものを挙げることができる。また、絶縁層には、必要に応じて、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを含むこともできる。絶縁層の形成方法については、第2実施形態で述べたとおりである。
【0070】
また、絶縁層の厚みは、導電層の厚みを100とするときに、50〜200の割合が好ましい。前記範囲内の厚みにすることで電磁波シールドフィルムの物性バランスを取りやすくなる。なお、第5実施形態の導電性シートの導電層は、必ずしも加熱プロセスを経る必要はなく、上記導電層の膜厚は、実際に利用する際の膜厚を示すものであり、加熱プロセス前のものであっても、加熱プロセス後であってもよい。
【0071】
電磁波シールドフィルムを貼着することができる被着体としては、特に限定されないが、例えば、繰り返し屈曲を受けるフレキシブルプリント配線板を代表例として挙げることができる。もちろん、リジッドプリント配線板をはじめとする各種基板、電磁波シールドが要求される電子レンジ等の家電や、電子機器全般、電磁波をシールドしたい部材全般に適用できる。
【0072】
第5実施形態に係る電磁波シールドフィルムによれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」に基づく値である。
【0074】
平均粒子径D
50及び平均粒子径D
90は、日機装社製のマイクロトラックMT3300を使用して測定した。見掛密度は、JIS Z 2504:2000に定められた金属粉の見掛密度試験方法により求めた。タップ密度は、JIS Z 2512:金属粉―タップ密度測定方法により求めた。
【0075】
<実施例1〜5>
デンドライト状導電性微粒子として、表1Aの材料を用い、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用いて導電性シートを作製した。デンドライト状導電性微粒子(B)と熱硬化性樹脂(A)の比率は、樹脂固形分100重量部に対してデンドライト状導電性微粒子(B)を250重量部とした。そして、乾燥膜厚が10μmになるように、表面を剥離処理した厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃で3分乾燥させて導電性シートを得た。
【0076】
<実施例6〜10>
実施例1〜5で得られた導電性シートの片面上に絶縁層としてウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用い、乾燥膜厚が10μmになるように塗工・乾燥し、総厚20μmの絶縁層付き導電性シートを得た。
【0077】
<実施例11>
実施例2で得られた導電性シート表面を、ロールプレス機を使用して3MPaの圧力がかかるようにプレ加圧した。その後プレ加圧した導電性シート面に、絶縁層としてウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を乾燥膜厚が10μmになるように塗工・乾燥することで総厚20μmの絶縁層付き導電性シートを得た。
【0078】
<実施例12、13>
プレ加圧する圧力を、それぞれ10MPa、40MPaに変更した以外は、実施例11と同様にして絶縁層付き導電性シートを得た。
【0079】
<比較例1〜2>
表1Bに示す導電性微粒子を用いて、実施例1〜5と同様の方法で、導電性シートを得た。
【0080】
<比較例3〜4>
表1Bに示す導電性微粒子を用いて、実施例6〜10と同様の方法で、絶縁層付き導電性シートを得た。
【0081】
<染み出し性評価>
厚さが50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)の一方の面に、各実施例、及び各比較例の導電性シートをラミネートにより貼付し、穴あけ機で直径5mmの穴を貫通させた。
別途、厚さが50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)を用意し、前述の導電性シートと150℃、30分間、2.0MPaの条件で加熱プレス処理することにより、ポリイミドフィルムによって挟持された導電性シートのサンプルを得た。加熱プレス処理後、導電性シートの穴部分を、拡大鏡を用いて観察し、染み出し量を測定した。評価基準は以下の通りである。
○:導電性シートの染み出し量が0.01mm未満
△:導電性シートの染み出し量が0.01mm以上0.05mm未満
×:導電性シートの染み出し量が0.05mm以上
【0082】
<接続抵抗値Aの測定>
実施例1〜5、及び比較例1、2の導電性シートについて、幅20mm、長さ50mmのサンプルを用意し、別に作製したフレキシブルプリント配線板を用いて接続抵抗値Aを測定した。具体的には、
図2A〜
図2Fに示すように、厚み12.5μmのポリイミドフィルム1上に、厚み18μmの銅箔からなり、電気的に接続されていない回路2が形成され、回路2上に、接着剤付きの、厚み37.5μm、直径0.8mmのスルーホール4を有するカバーフィルム3が積層されてなるフレキシブルプリント配線板を用意した。そして、カバーフィルム3上に導電性シート5を載置し、この導電性シート5上に表面が厚さ0.1μmのニッケルで処理された厚さ200μmのステンレス板6を載せて、150℃、30分間、2.0MPaの条件で加熱プレスした。その後、回路2とステンレス板6間の縦方向の抵抗値を三菱化学社製「ロレスターGP」の四探針プローブを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
○:200mΩ未満
△:200mΩ以上、500mΩ未満
×:500mΩ以上
【0083】
<接続抵抗値Bの測定>
実施例6〜13及び比較例3、4の絶縁層付き導電性シートについて、幅20mm、長さ50mmのサンプルを用意し、別に作製したフレキシブルプリント配線板を用いて接続抵抗値Bを測定した。具体的には、
図3A〜
図3Fに示すように、厚み12.5μmのポリイミドフィルム1上に、厚み18μmの銅箔からなり、電気的に接続されてはいない回路2A、回路2Bが形成されており、回路2A上に、接着剤付きの、厚み37.5μm、直径0.8mmのスルーホール4を有するカバーフィルム3が積層されてなるフレキシブルプリント配線板を用意した。そして、カバーフィルム3上に導電性シート5を載置し、この導電性シート5上に表面が厚さ0.1μmのニッケルで処理された厚さ200μmの絶縁層7を載せて、150℃、30分間、2.0MPaの条件で加熱プレスし、回路2Aと回路2B間の抵抗値を三菱化学社製「ロレスターGP」の四探針プローブを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
○:300mΩ未満
△:300mΩ以上、500mΩ未満
×:500mΩ以上
【0084】
<屈曲性>
幅6mm、長さ120mmの実施例、及び比較例の導電性シートを、別に作製したフレキシブルプリント配線板(厚み25μmのポリイミドフィルム上に、厚み12μmの銅箔からなる回路パターンが形成されており、さらに回路パターン上に、接着剤付きの、厚み40μmのカバーフィルムが積層されてなる配線板)のカバーフィルム面に、150℃、30分間、2.0MPa、の条件で圧着した。そして、曲率半径0.38mm、荷重500g、速度180回/minの条件でMIT屈曲試験機にかけ、回路パターンが断線するまでの回数により耐屈曲性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:3000回以上
△:2500回以上、3000回未満
×:2500回未満
【0085】
【表1A】
【表1B】
【0086】
表1A、表1Bの結果より、デンドライト状導電性微粒子を使用することで、従来形状の導電性微粒子よりも加熱プレス後の横方向への染み出しが少ない事がわかる。また、縦方向への接続抵抗Aが従来形状の導電性微粒子と比べて、デンドライト状導電性微粒子を用いることにより特性が優れることが明らかである。さらには、デンドライト状導電性微粒子を使用した導電性シートは、屈曲性に優れることが確認できた。
【0087】
<実施例14>
デンドライト状導電性微粒子として、平均粒子径D
90が25μm、平均粒子径D
50が13μmの銀を用いて導電層を作製した。熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用い、デンドライト状導電性微粒子(B)と熱硬化性樹脂の比率は、樹脂100重量部に対してデンドライト状導電性微粒子を250重量部とし、乾燥膜厚が10μmになるように、厚み100μmの表面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃で3分乾燥させて導電層を得た。上記の導電層の片面に絶縁層としてウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用い、乾燥膜厚が15μmになるように塗工・乾燥して、総厚25μmの絶縁層を有する電磁波シールドフィルムを得た。
【0088】
<実施例15〜17>
実施例15〜17は、導電性微粒子と平均粒子径D
90と平均粒子径D
50との部分を表2Aに示す原料に代えた他は実施例1と同様に行い、電磁波シールドフィルムを得た。
【0089】
<実施例18>
デンドライト状導電性微粒子(B)として、表2Aの材料を用い、熱硬化性樹脂(A)として、ウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用いて導電層を作製した。デンドライト状導電性微粒子(B)と熱硬化性樹脂(A)の比率は、樹脂100重量部に対してデンドライト状導電性微粒子を250重量部とし、乾燥膜厚が10μmになるように、厚み100μmの表面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃3分乾燥させて導電性シートを得た。上記の導電性シートの片面に絶縁層としてウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用い、乾燥膜厚が8μmになるように塗工・乾燥して、総厚18μmの絶縁層を有する電磁波フィールドフィルムを得た。
【0090】
<実施例19>
デンドライト状導電性微粒子として、表2Aの材料を用いて導電性シートを作製した。熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用い、デンドライト状導電性微粒子(B)と熱硬化性樹脂の比率は、樹脂100重量部に対してデンドライト状導電性微粒子を250重量部とし、乾燥膜厚が10μmになるように、厚み100μmの表面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃で3分乾燥させて導電性シートを得た。上記の導電性シートの片面に絶縁層としてウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を用い、乾燥膜厚が25μmになるように設けて、総厚35μmの絶縁層を有する電磁波シールドフィルムを得た。
【0091】
<実施例20>
実施例18で得られた導電性シート表面を、ロールプレス機を使用して3MPaの圧力がかかるようにプレ加圧した。その後、プレ加圧した導電性シート面に、絶縁層としてウレタン樹脂(トーヨーケム社製)を乾燥膜厚が10μmになるように塗工・乾燥することで総厚20μmの絶縁層付き導電性シートを得た。
【0092】
<実施例21、22>
プレ加圧する圧力を、それぞれ10MPa、40MPaに変更した以外は、実施例20と同様にして絶縁層付き導電性シートを得た。
【0093】
<比較例11〜15>
表2Bに示す導電性微粒子を用いて、実施例14〜18と同様の方法で、導電層と絶縁層とを有する電磁波シールドフィルムを得た。
【0094】
表2A,表2Bのデンドライト銀、デンドライト銅粉、フレーク状銀、球状銀に関しては、福田金属箔粉工業社製を使用した。
【0095】
表2A,表2Bのデンドライト銀コート銅粉は、福田金属箔粉工業社製のデンドライト銅粉を使用し、以下の条件で銀被覆処理を行うことで、銅の核90重量%、銀被覆層10重量%のデンドライト銀コート銅粉を得た。
【0096】
<染み出し性評価>
各実施例、及び各比較例に電磁波シールドフィルムを、実施例1〜13、比較例1〜4と同様の方法により、染み出し量を測定した。評価基準は、前述した基準と同様とした。
【0097】
<屈曲性>
幅6mm、長さ120mmの実施例、及び比較例の電磁波シールドフィルムを、実施例1〜13、比較例1〜4において説明した屈折性評価と同様の方法により評価した。評価基準は、前述した基準と同様とした。以下の通りである。
【0098】
<絶縁信頼性>
幅100mm、長さ100mmの実施例11〜16及び比較例11〜15の電磁波シールドフィルムを用意し、150℃、30分間、2.0MPaの条件で加熱プレス処理をした。絶縁層に、三菱化学社製のHiresta−UP(MCP−HT450)という表面抵抗試験機のTYPE URSを使用し、印圧電圧が100Vの条件下で1分間を接触させたときの1分間後の絶縁信頼性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:1×10
7Ω/□以上
○:1×10
7Ω/□未満、1×10
4Ω/□以上
×:1×10
4Ω/□未満
【0099】
【表2A】
【表2B】
【0100】
表2A、表2Bの結果より、デンドライト状導電性微粒子の平均粒子径D
90が導電層の膜厚に対して0.5〜3倍の範囲内に特定することで、従来形状の導電性微粒子よりも加熱プレス後の横方向への導電層の染み出しが少ない事がわかる。また、優れた屈曲性を示しているとともに、高い絶縁信頼性も実現できたことが確認された。
【0101】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
少なくとも熱硬化性樹脂(A)と、デンドライト状導電性微粒子(B)とを含む導電層を有する導電性シートであって、前記導電性シートを150℃、2Mpa、30分間の条件で加熱プレスした後の厚みが、加熱プレス前の厚みを100としたときに30〜95であることを特徴とする導電性シート。
(付記2)
少なくとも絶縁層と導電層とを有する電磁波シールドフィルムであって、
前記導電層が少なくとも熱硬化性樹脂(A)とデンドライト状導電性微粒子(B)を含み、デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D90が導電層の膜厚に対して0.5〜3倍の範囲内にあることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
(付記3)
デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D50が3〜50μmであることを特徴とする付記2記載の電磁波シールドフィルム。
(付記4)
デンドライト状導電性微粒子(B)が銅を含む核と、銀被覆層を含み、
前記銀被覆層が、デンドライト状導電性微粒子(B)100重量%中、1〜40重量%の割合であることを特徴とする付記2又は3に記載の電磁波シールドフィルム。
(付記5)
導電層の厚みを100とするときに、絶縁層の厚みが50〜200であることを特徴とする付記2〜4のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
(付記6)
熱硬化性樹脂(A)と、
デンドライト状導電性微粒子(B)と、を少なくとも含む導電層を具備し、
前記導電層の厚みが、(i)150℃、2MPa、30分間の条件で、被着体と加熱プレスした後の厚みが、加熱プレス前の当該導電層の厚みを100としたときに30以上、95以下の範囲になるもの、及び(ii)前記デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D90が、当該導電層の厚みに対して0.5倍以上、3倍以下の範囲になるもの、の少なくとも一方を満たし、
前記デンドライト状導電性微粒子(B)の平均粒子径D50が3μm以上、50μm以下であって、かつ、前記デンドライト状導電性微粒子(B)を前記導電層中に50重量%以上、90重量%以下の範囲で含有する導電性シート。
(付記7)
前記導電層は、塗工した後、2.5MPa〜50MPaの圧力を加えて形成された層であることを特徴とする付記6に記載の導電性シート。
(付記8)
電磁波シールドフィルムとして用いる付記6または7に記載の導電性シート。
(付記9)
平均粒子径D50が3μm以上、50μm以下のデンドライト状導電性微粒子(B)と、熱硬化性樹脂(A)とを含む導電性樹脂組成物を、剥離性シートに塗工して、前記デンドライト状導電性微粒子(B)を50重量%以上、90重量%以下の範囲で含有する導電層を形成し、
前記導電層に2.5MPa以上、50MPa以下の圧力を加える工程を含む導電性シートの製造方法。
【0102】
この出願は、2011年5月31日に出願された日本出願特願2011−121188、及び2011年10月25日に出願された日本出願特願2011−233528を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。