特許第6064951号(P6064951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6064951動吸振器、フレクシャ及びヘッド支持機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064951
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】動吸振器、フレクシャ及びヘッド支持機構
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20170116BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20170116BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   G11B21/21 A
   G11B21/10 N
   G11B5/60 P
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-170698(P2014-170698)
(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-45975(P2016-45975A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】染谷 拓
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼島 秀樹
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−306575(JP,A)
【文献】 特開平10−302423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/56−5/60
G11B 21/10
G11B 21/16−21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性手段を構成するアーム部と、
前記アーム部に連結され、質量手段を構成する重り部と、を備え、
前記アーム部と前記重り部は、それぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されており、前記アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成であり、
前記重り部は、複数の質量調整パッドからなる質量調整機構をさらに備えることを特徴とする動吸振器。
【請求項2】
前記重り部の複数の単層材のうち前記アーム部の単層材と共有している少なくとも1つの単層材は、直線状、曲線状、円形状または多角形状のいずれかのパターン、あるいは当該パターンの組み合わせからなる幾何学模様のパターンを有していることを特徴とする請求項1に記載の動吸振器。
【請求項3】
前記アーム部を構成する複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部を構成する複数の単層材の少なくとも1つは、粘弾性を有する材料から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動吸振器。
【請求項4】
前記アーム部を複数備え、
複数の前記アーム部は、それぞれ前記重り部に連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の動吸振器。
【請求項5】
弾性を有するフレクシャ基板に支持され、導体箔と絶縁層を積層したフレキシブル配線基板で構成されたフレクシャであって、
前記フレクシャは、
本体部と、
前記本体部に設けられた開口部と、
前記開口部内に配置された動吸振器と、を備え、
前記動吸振器は、
弾性手段を構成するアーム部と、
前記アーム部に連結され、質量手段を構成する重り部と、を有し、
前記アーム部と前記重り部は、それぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されており、前記アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成であり、
前記重り部は、複数の質量調整パッドからなる質量調整機構をさらに備えることを特徴とするフレクシャ。
【請求項6】
前記アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部の複数の単層材の少なくとも1つは、前記フレクシャ基板、前記導体箔及び前記絶縁層のいずれかと共有している構成であることを特徴とする請求項に記載のフレクシャ。
【請求項7】
前記重り部の複数の単層材のうち前記アーム部の単層材と共有している少なくとも1つの単層材は、直線状、曲線状、円形状また多角形状のいずれかのパターン、あるいは当該パターンの組み合わせからなる幾何学模様のパターンを有していることを特徴とする請求項またはに記載のフレクシャ。
【請求項8】
前記アーム部を構成する複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部を構成する複数の単層材の少なくとも1つは、粘弾性を有する材料から構成されていることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載のフレクシャ。
【請求項9】
前記アーム部を複数備え、
複数の前記アーム部は、それぞれ前記重り部に連結されていることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載のフレクシャ。
【請求項10】
ヘッド素子を有するスライダと、情報を書き込む対象である記録媒体のディスク面に対して荷重を与えるためのロードビームと、前記ロードビームの先端部に設けられた支点突起と、前記スライダを前記支点突起の周りに回動可能に支持するスライダ基板と、前記スライダ基板に回転力を付与する駆動素子と、弾性を有するフレクシャ基板に支持され、導体箔と絶縁層を積層したフレキシブル配線基板で構成されたフレクシャと、を備えたヘッド支持機構であって、
前記フレクシャは、
本体部と、
前記本体部に設けられた開口部と、
前記開口部内に配置された動吸振器と、を有し、
前記動吸振器は、
弾性手段を構成するアーム部と、
前記アーム部に連結され、質量手段を構成する重り部と、を有し、
前記アーム部と前記重り部は、それぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されており、前記アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成であり、
前記重り部は、複数の質量調整パッドからなる質量調整機構をさらに備えることを特徴とするヘッド支持機構。
【請求項11】
前記本体部は、前記ロードビームに固着され、
前記アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと前記重り部の複数の単層材の少なくとも1つは、前記フレクシャ基板、前記導体箔及び前記絶縁層のいずれかと共有している構成であることを特徴とする請求項10に記載のヘッド支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動吸振器、フレクシャ及びヘッド支持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置に設けられた磁気ディスクに対する記録密度は高密度化が進んでいる。磁気ディスク装置には、磁気ディスクに対してデータの記録及び再生を行う磁気ヘッドを搭載したスライダが設けられており、このスライダはヘッド支持機構によって支持されている。
【0003】
ところで、ヘッド支持機構は、記録密度の高密度化に伴い、データの記録及び再生を行う動作時のシーク残留振動や磁気ディスクが回転する際に発生する風乱とで励起されるロードビームの共振による磁気ヘッドと目標トラックの位置ずれが起きないよう制振性が要求されている。
【0004】
このような要求に対して、振動を抑制して磁気ヘッドを磁気ディスク上の目標トラックに精度高く位置決めできるように、特定の周波数の振動を抑える機能を有する小型の動吸振器を備えたヘッドサスペンションが考案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、磁気ヘッドを搭載したヘッドスライダと、そのヘッドスライダを支持するとともにスライダに負荷力を与える弾性片持ち薄板からなるサスペンション主フレームを備えたヘッドサスペンション機構が開示されている。特許文献1に記載されたヘッドサスペンション機構では、サスペンション主フレームのヘッドスライダ支持部近傍の両縁部に略垂直に立てて形成されたフランジ部の残余の部分を自由端部とし、フランジ部の長さ寸法と自由端部に設けた弾性材の減衰効果で動吸振器を構成している。また、特許文献2に記載されたヘッドサスペンション機構においては、動吸振器機能を有する付加振動系の片持ち梁がサスペンションの先端の中央部に動吸振器の質量部と弾性部を形成されていることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−172568号公報
【特許文献2】特許第4838751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、サスペンション主フレームが薄肉金属板から構成され、自由端部のビーム部の長さ寸法で動吸振器の固有振動数を抑圧する振動の周波数帯に同調させるよう構成しており、ビーム部の長さを厳密に設定する必要がある。そのため、動吸振器の固有振動数を定める弾性及び質量は、それぞれ独立して設定できないことから自由度が少なく、動吸振器の吸振する周波数の設定が難しいという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、サスペンション先端の中央部に質量部と弾性部を形成することで設けられた動吸振器機能を有する付加振動系は、ロードビームを構成している薄いステンレス板材からなる動吸振器の長さと弾性部の長さと幅で抑圧する振動の周波数帯を設定おり、動吸振器の吸振する周波数の設定範囲が狭いという問題がある。
【0009】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、容易に広い周波数帯で周波数の設定が可能な動吸振器、フレクシャ及びヘッド支持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る動吸振器は、弾性手段を構成するアーム部と、アーム部に連結され、質量手段を構成する重り部とを備え、アーム部と重り部は、それぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されており、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成であることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つが同一の単層材を共有している構成であるため、弾性手段と質量手段とが連続的に構成されることから、弾性手段と質量手段との間に構造的境界はなく、アーム部の弾性と重り部の質量で動吸振器の吸振する周波数を容易に定めることができる。
【0012】
また、本発明に係る動吸振器においては、アーム部と重り部がそれぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されているため、外形形状だけでなく単層材の積層数を調整することでもアーム部の曲げ弾性と重り部の質量がそれぞれ独立して設定することが可能となることから、吸振する周波数の設定が広い周波数帯で行うことができる。
【0013】
好ましくは、重り部の複数の単層材のうちアーム部の単層材と共有している少なくとも1つの単層材は、直線状、曲線状、円形状、又は多角形状のいずれかのパターン、あるいは当該パターンの組み合わせからなる幾何学模様のパターンを有する構成としてもよい。この場合、同量の寸法誤差により生じるアーム部の弾性と重り部の質量の変化における弾性及び質量のそれぞれの変化率の差が緩和されることから、吸振する周波数の安定性が高い動吸振器得ることができる。また、当該パターンは、重り部およびアーム部の外形形成加工時に一括的に設けることができることから、新たな工程を追加することなく動吸振器を設けることができる。
【0014】
好ましくは、アーム部を構成する複数の単層材の少なくとも1つと重り部を構成する複数の単層材の少なくとも1つは、粘弾性を有する材料から構成してもよい。この場合、別途粘弾性体を貼り付けることなく、減衰効果を得ることが可能となる。
【0015】
好ましくは、アーム部を複数備え、複数のアーム部は、それぞれ重り部に連結されている構成としてもよい。この場合、アーム部の弾性が広範囲に設定可能となるため、アーム部の弾性と重り部の質量から定まる動吸振器の吸振する周波数の設定範囲を広げることが可能になる。
【0016】
好ましくは、重り部は、複数の質量調整パッドからなる質量調整機構をさらに備える構成としてもよい。この場合、重り部の質量が広範囲に調整可能となるため、アーム部の弾性と重り部の質量から定まる動吸振器の吸振する周波数の設定範囲を広げることが可能になる。
【0017】
本発明に係るフレクシャは、弾性を有するフレクシャ基板に支持され、導体箔と絶縁層を積層したフレキシブル配線基板で構成されたフレクシャであって、フレクシャは、本体部と、本体部に設けられた開口部と、開口部内に配置された動吸振器とを備え、動吸振器は、弾性手段を構成するアーム部と、アーム部に連結され、質量手段を構成する重り部とを有し、アーム部と重り部は、それぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されており、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成であることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つが同一の単層材を共有している構成であるため、弾性手段と質量手段が連続的に構成されることから、弾性手段と質量手段との間に構造的境界はなく、アーム部の弾性と重り部の質量で動吸振器の吸振する周波数を容易に定めることができる。
【0019】
また、本発明に係るフレクシャにおいては、アーム部と重り部がそれぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されているため、外形形状だけでなく単層材の積層数を調整することでもアーム部の曲げ弾性と重り部の質量がそれぞれ独立して設定することが可能となることから、動吸振器の吸振する周波数の設定が広い周波数帯で行うことができる。
【0020】
好ましくは、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つは、フレクシャ基板、導体箔及び絶縁層のいずれかと共有している構成としてもよい。この場合、フレクシャの本体部、弾性手段及び質量手段が連続的に構成されることから、フレクシャの本体部と弾性手段と質量手段との間に構造的境界はなく、アーム部の弾性と重り部の質量で動吸振器の吸振する周波数を容易に定めることが可能となる。
【0021】
好ましくは、重り部の複数の単層材のうちアーム部の単層材と共有している少なくとも1つの単層材は、直線状、曲線状、円形状、又は多角形状のいずれかのパターン、あるいは当該パターンの組み合わせからなる幾何学模様のパターンを有する構成としてもよい。この場合、同量の寸法誤差により生じるアーム部の弾性と重り部の質量の変化における弾性と質量のそれぞれの変化率の差が緩和されることから、吸振する周波数の安定性が高い動吸振器を備えたフレクシャを得ることができる。また、当該パターンは、重り部およびアーム部の外形形成加工時に一括的に設けることができることから、新たな工程を追加することなく動吸振器を備えたフレクシャを得ることができる。
【0022】
好ましくは、アーム部を構成する複数の単層材の少なくとも1つと重り部を構成する複数の単層材の少なくとも1つは、粘弾性を有する材料で構成してもよい。この場合、別途粘弾性体を貼り付けることなく、減衰効果を得ることが可能となる。
【0023】
好ましくは、アーム部を複数備え、複数のアーム部は、それぞれ重り部に連結されている構成としてもよい。この場合、アーム部の弾性が広範囲に調整可能となるため、アーム部の弾性と重り部の質量から定まる動吸振器の吸振する周波数の設定範囲を広げることが可能となる。
【0024】
好ましくは、重り部は複数の質量調整パッドからなる質量調整機構をさらに備える構成としてもよい。この場合、重り部の質量が広範囲に調整可能となるため、アーム部の弾性と重り部の質量から定まる動吸振器の吸振する周波数の設定範囲を広げることが可能となる。
【0025】
本発明に係るヘッド支持機構は、ヘッド素子を有するスライダと、情報を書き込む対象である記録媒体のディスク面に対して荷重を与えるためのロードビームと、ロードビームの先端部に設けられた支点突起と、スライダを支点突起の周りに回動可能に支持するスライダ支持板と、スライダ支持板に回転力を付与する駆動素子と、弾性を有するフレクシャ基板に支持され、導体箔と絶縁層を積層したフレキシブル配線基板で構成されたフレクシャと、を備えたヘッド支持機構であって、フレクシャは、本体部と、本体部に設けられた開口部と、開口部内に配置された動吸振器と、を有し、アーム部と重り部は、それぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されており、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成であることを特徴としている。
【0026】
本発明によれば、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つが同一の単層材を共有している構成であるため、弾性手段及び質量手段が連続的に構成されることから、弾性手段と質量手段との間に構造的境界はなく、アーム部の弾性と重り部の質量から動吸振器の吸振する周波数を容易に定めることができる。
【0027】
また、本発明に係るヘッド支持機構においては、アーム部と重り部がそれぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されているため、アーム部と重り部の外形形状だけでなく単層材の積層数を調整することでもアーム部の曲げ弾性と重り部の質量がそれぞれ独立して設定することが可能となることから、動吸振器の吸振する周波数の設定が広い周波数帯で容易に行うことができる。
【0028】
好ましくは、フレクシャの本体部は、ロードビームに固着され、アーム部の複数の単層材の少なくとも1つと重り部の複数の単層材の少なくとも1つは、フレクシャ基板、導体箔及び絶縁層のいずれかと共有している構成としてもよい。この場合、フレクシャの動吸振器が固着部を介してロードビームに作用することができるとともに、フレクシャの本体部、弾性手段及び質量手段が連続的に構成されていることから、フレクシャの本体部と弾性手段と質量手段との間に構造的境界はなく、アーム部の弾性と重り部の質量で動吸振器の吸振する周波数を容易に定めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、容易に広い周波数帯で周波数の設定が可能な動吸振器、フレクシャ及びヘッド支持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構を備えた磁気ディスク装置の概略平面図である。
図2】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の斜視図である。
図3】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の分解斜視図である。
図4】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を有するフレクシャの分解斜視図である。
図5a】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したとヘッド支持機構が備える第1の駆動手段の平面図である。
図5b図5aにおけるA−A断面図である。
図5c図5aにおけるB−B断面図である。
図6】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の先端要部を上面側から見た平面図である。
図7】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の先端要部を下面側から見た平面図である。
図8a図6におけるC−C断面図である。
図8b図6におけるD−D断面図である。
図8c図6におけるF−F断面図である。
図9】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構における第1の駆動手段をフレクシャに接着した部分の断面を示した断面図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る動吸振器を有するフレクシャを備えるヘッド支持機構における動吸振器の拡大斜視図である。
図11図10におけるG−G断面を示す断面図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る動吸振器を簡素化したモデル図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る動吸振器を示す模式斜視図である。
図14図13における動吸振器の固有振動数とアーム部の寸法変化係数の関係を示す図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る動吸振器を示す模式斜視図である。
図16図15における動吸振器の固有振動数とアーム部の寸法変化係数の関係を示す図である。
図17】本発明の第4実施形態に係る動吸振器を示す模式斜視図である。
図18】本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の周波数応答特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるものや実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることができる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略や置換又は変更を行うことができる。
【0032】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器が搭載されたヘッド支持機構を備えたロード/アンロード方式の磁気ディスク装置(HDD装置)の全体構成を概略的に示した図である。図1より、磁気ディスク装置1は、ハウジング4、スピンドルモータにより軸5を中心にして回転駆動される磁気ディスク6、先端部にヘッド素子7を有するスライダ3が装着されているヘッド支持機構2、このヘッド支持機構2を先端部で支持する支持アーム8から構成されている。
【0033】
支持アーム8の後端部にはボイスコイルモータ(VCM)のコイル部が装着されており、支持アーム8は水平回動軸9を中心にして磁気ディスク6の表面と平行に回動可能となっている。VCMはこのコイル部(図示せず)とこれを覆うマグネット部10とから構成されている。磁気ディスク6のデータ領域の外側から磁気ディスク6の外側に渡ってランプ機構11が設けられており、その傾斜した表面にヘッド支持機構2の最先端に設けられたタブ12が乗り上げてスライダ3を磁気ディスク6から離間させアンロード状態となる。
【0034】
磁気ディスク装置1の動作時(磁気ディスクの高速回転中)に、スライダ3は磁気ディスク6の表面に対向して低浮上量で浮上しておりロード状態にある。一方、非動作時(磁気ディスクの停止中または起動及び停止時の低速回転中)においては、ヘッド支持機構2の先端部のタブ12がランプ機構11上にあるのでスライダ3はアンロード状態にある。
【0035】
図2は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の全体構成を概略的に示した斜視図である。なお、以降、説明の便宜上、図のZ軸正方向をヘッド支持機構2の上面側と呼び、Z軸負方向をヘッド支持機構2の裏面側、または、下面側と呼ぶこととする。スライダ3は、インダクティブ書込みヘッド素子と、巨大磁気抵抗効果(GMR)読出しヘッド素子又はトンネル磁気抵抗効果(TMR)読出しヘッド素子等のMR読出し薄膜磁気ヘッドからなるヘッド素子7をスライダ3の後端(トレーリングエッジ、図2のY軸正方向側)面に備えている。
【0036】
図2より、ヘッド支持機構2は、その主なる構成要素として、ベースプレート13、ロードビーム14、フレクシャ15、駆動素子16、及びスライダ3を備えている。また、ベースプレート13は支持アーム8の先端部に取り付けられるように構成されている。
【0037】
図2より、ロードビーム14は、ベースプレート13に複数の第一のビーム溶接ポイント17aなどにより固着されている。また、ロードビーム14には、板バネ18が形成されており、スライダ3が情報を書き込む対象である記録媒体のディスク面に対して荷重を与えるよう構成されている。さらに、ロードビーム14は、両サイドに折り曲げ加工部19を施し強度を高めた構造となっている。フレクシャ15は、ロードビーム14に複数の第二のビーム溶接ポイント17bなどにより固着されている。なお、図2において、スライダ3の姿勢角のピッチ方向はDp、ロール方向はDr、ヨー方向はDyで示してある。
【0038】
図3は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構を概略的に示した分解斜視図である。図4は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を有するフレクシャの構成を示した分解斜視図である。なお、図3では、ヘッド支持機構2をロードビーム14、フレクシャ15、ベースプレート13、駆動素子16、スライダ3に分解した状態を示している。
【0039】
図3より、スライダ3は、フレクシャ15に形成されたスライダ基板20上に接着固定される。ロードビーム14の先端部近傍の中心線上には支点突起21が一体的に突出形成されており、支点突起21が第1のアウトリガ22aと第2のアウトリガ22bによって支えられたスライダ基板20に点接触するピボット構造となるような構造を形成している。これにより、スライダ3は、ディスク面のうねりに対応して浮上姿勢をスムーズに追従できるように構成されている。言い換えれば、スライダ基板20は、スライダ3を支点突起21の周りに回動可能に支持していることとなる。
【0040】
フレクシャ15は、一般的に20μm程度の薄いステンレス鋼板からなる弾性を有するフレクシャ基板24上にコーティングした絶縁層41と、絶縁層41上に銅箔をめっきした素材を用いてヘッド素子配線25a(配線部)を形成する導体箔25を積層したフレキシブル配線基板で構成されている。ここで、フレクシャ基板24とヘッド素子配線25aを有するフレキシブル配線基板は、エッチングプロセスで外形形状及び配線構成を任意の形状に精密加工することができる。なお、図4では、本来一体としたフレクシャ15であるが解かりやすく示すため、ステンレス製フレクシャ基板24と絶縁層41上に形成したヘッド素子配線25a(配線部)を分離して表示した。
【0041】
駆動素子16は、薄膜圧電体素子であり、スライダ基板20に回転力を付与する機能を有している。具体的には、駆動素子16は、第1の駆動手段16a及び第2の駆動手段16bから構成され、それぞれ第1の圧電体支持部23a及び第2の圧電体支持部23b上に接着される。なお、第1の圧電体支持部23a及び第2の圧電体支持部23bは、フレクシャ15を形成している絶縁層41のみで形成されている。
【0042】
図5aは、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構が備える第1の駆動手段の平面図である。図5bは、図5aにおけるA−A断面を表し、図5cは、図5aにおけるB−B断面を表している。なお、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bの構造は同様のため、ここでは第1の駆動手段16aの構造のみ説明する。第1の駆動手段16aは、薄膜圧電体26の上面側に上部電極27aが形成され、下面側に下部電極27bが形成されて構成されている。この第1の駆動手段16aは、非常に薄くかつ破損しやすい構成であるので補強材として基台28が設けられている。
【0043】
第1の駆動手段16aは、薄膜圧電体26を保護するために素子全体がポリイミド製の絶縁カバー30で覆われている。なお、図5aのC部、D部では絶縁カバー30が一部除去されている。具体的には、C部では、下部電極27bが露出し第1の電極パッド29aと導通している。D部では、上部電極27aが露出しており第2の電極パッド29bと導通している。これにより、第1の電極パッド29a、第2の電極パッド29bに電圧印加することで第1の駆動手段16aの薄膜圧電体26を伸縮させることができる。薄膜圧電体26の分極方向を矢印で示している。第1の電極パッド29aにマイナス電圧を印加し、第2の電極パッド29bにプラス電圧を印加すれば、薄膜圧電体26は圧電定数d31により圧電膜の面内方向に収縮することになる。なお、第1の駆動手段16aと同様の構造を有する第2の駆動手段16bについては図示しないが、第1の電極パッド29aに相当する第3の電極パッド29cにマイナス電圧を印加し、第2の電極パッドに相当する第4の電極パッド29dにプラス電圧を印加すれば、薄膜圧電体26は圧電定数d31により圧電膜の面内方向に収縮する。
【0044】
図6は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の先端要部を上面側(スライダ側)から見た平面図である。図7は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構の先端要部を裏面側から見た平面図(図6のヘッド支持機構を裏面側から見た平面図)である。なお、説明の便宜上、ロードビーム14は図から除外している。スライダ3は、スライダ基板20上に接着され、ヘッド電極端子31に対応したヘッド素子配線25a(配線部)が設置され半田ボールによって接続される。
【0045】
図6において、スライダ基板20の両側に配置された第1及び第2のアウトリガ22a、22bには一部の第1の折り曲げ部32a、第2の折り曲げ部32bが形成されている。さらに左右の第1及び第2の折り曲げ部32a、32bのそれぞれの延長方向の交点が支点突起21に一致するように構成されている。また、スライダ基板20は、第1及び第2のアウトリガ22a、22bの中間位置に設けられた第1の折り曲げ部32a、第2の折り曲げ部32bの作用により支点突起21を中心に回動する構成となっている。
【0046】
スライダ基板20にはスライダ3を含む回動部分のヨー方向の慣性軸が支点突起21に一致するように設定されたカウンターバランス33が形成されている。また、スライダ基板20にはスライダ3をディスク上からアンロードする際にスライダ3を持ち上げるためのT型リミッタ部34が形成されておりロードビーム14に形成された孔部35に係合している。なお、通常動作時はT型リミッタ部34と孔部35は隙間を介して接触していない。
【0047】
ヘッド素子配線25a(配線部)はスライダ3を囲む形で配置され、その端部はスライダ3のヘッド電極端子31に接続されている。このヘッド素子配線25a(配線部)は第1及び第2のアウトリガ22a、22bが固着されているとともに(図6のC−C部)、スライダ基板20から延出した第1の駆動リブ36aと第2の駆動リブ36bにも同様に固着されている(図6のF−F部)。
【0048】
第1及び第2の駆動手段16a、16bは、第1、第2、第3、第4の電極パッド29a、29b、29c、29dに電圧を印加して駆動される。駆動配線37aは、第1の駆動手段16aの第1の電極パッド29aと第2の駆動手段16bの第4の電極パッド29dに入力をインプットするように配置され、第2の電極パッド29b、第3の電極パッド29cは、グランド配線37bでフレクシャ基板に接地される。これにより駆動配線37aに交番駆動信号をインプットすれば、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bとはお互い逆方向に伸縮運動することになる。
【0049】
図6図7)に示したフレクシャ15構成をいくつかの断面毎に図8a〜図8cを用いて示した。図8aは図6におけるC−C断面、図8bは図6におけるD−D断面、図8cは図6におけるF−F断面を示す断面図である。図8aより、第1のアウトリガ22aは、フレクシャ基板24で構成され、スライダ基板20に連結して配置されている。図8bより、ヘッド素子配線25aの裏面側にあるフレクシャ基板24がエッチングプロセスにより取り除かれ、スライダ基板20、第1のアウトリガ22a、及びヘッド素子配線25aは分離されている。図8cより、スライダ基板20から延出したフレクシャ基板24である第1の駆動リブ36aとヘッド素子配線25aの一部分が固着されている。
【0050】
図9は、本発明の好適な実施形態に係る動吸振器を搭載したヘッド支持機構において、第1の駆動手段のフレクシャに接着した部分の断面(図6におけるE−E断面)を示した図である。第1の駆動手段16aは、フレクシャ基板24を一部残して形成した第1のリンク39aに、その先端部を第1のリンク39aにオーバーラップした位置で第1の圧電体支持部23a上に接着されている。これは、薄膜圧電体26の変位を確実に第1のリンク39aに伝達するためである。なお、第1の駆動手段16aと同様の構造を有する第2の駆動手段16bについては図示しないが、第2の駆動手段16bは、フレクシャ基板24を一部残して形成した第2のリンク39bに、その先端部を第2のリンク39bにオーバーラップした位置で第2の圧電体支持部23b上に接着されており、薄膜圧電体の変位を確実に第2のリンクに伝達する構成となっている。
【0051】
図7において、第1のリンク39aは、第1のジョイント40aと第2のジョイント40bの間に連結して配置されている。第1のジョイント40a及び第2のジョイント40bは、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去したヘッド素子配線25a(配線部)で形成されており、フレクシャ基板24を含む構成となっている第1のリンク39aに比較して柔軟な構成となっており、第1の駆動手段16aが伸縮運動したとき、第1のリンク39aは第2のジョイント40bを中心に微小回動運動するように構成されている。同様に、第2のリンク39bは、第3のジョイント40cと第4のジョイント40dの間に連結して配置されており、第3及び第4のジョイント40c、40dは第1及び第2のジョイント40a、40bと同じ構造であるので、第2の駆動手段16bが伸縮運動したとき、第2のリンク39bは第4のジョイント40dを中心に微小回動運動する。
【0052】
なお、ヘッド支持機構2のベースプレート13やロードビーム14は、各図においてY軸方向に平行な中心軸に対して線対称としてある。また、第1のリンク39aと第2のリンク39b、第1のジョイント40a及び第2のジョイント40bと第3のジョイント40c及び第4のジョイント40d、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bなどの構造についても同様に各図においてY軸方向に平行な中心軸に対して線対称となっている。
【0053】
図6図7において、第1の駆動手段16aと第2のジョイント40b及びフレクシャ基板24とを分離する第1の分離溝44aが設けられており、さらにこの第1の分離溝44aは薄膜圧電体26の長手方向(図中X軸方向)の長さに相当する範囲に沿って形成される。この第1の分離溝44aにより薄膜圧電体26の変位をヘッド素子配線25a(配線部)を含む第2のジョイント40bとフレクシャ基板24の拘束から解放されて変位を最大化できる。なお、ヘッド支持機構2はY軸に平行な対称軸に線対称な形状であるので、図6より第2の分離溝44bについても同様である。
【0054】
(第1実施形態)
図10は、本発明の第1実施形態に係る動吸振器を有するフレクシャを備えるヘッド支持機構における動吸振器の拡大斜視図(図6における領域Hを拡大して示す拡大斜視図)である。図11は、図10におけるG−G断面を示す断面図である。フレクシャ15は、フレクシャ15の本体部15aと、開口部53と、動吸振器50と、を有する。本体部15aは、ロードビーム14に第二のビーム溶接ポイント17bにより固着されている。開口部53は、本体部15aに形成されている。具体的には、ロードビーム14と本体部15aが固着されるビーム溶接ポイント17bの近傍に設けられている。本実施形態では、開口部53は、六角形状であるがこれに限られることなく、円形、四角形状でもよい。
【0055】
動吸振器50は、開口部53の略中央に配置されて、重り部52と、アーム部51とから構成されている。本実施形態では、重り部52は、略正方形状のフレクシャ基板24と、フレクシャ基板24上に設けられている略正方形状の絶縁層41と、絶縁層41上に設けられている略正方形状の導体箔25から構成されている。つまり、重り部52は、弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されている。なお、本実施形態では、フレクシャ基板24はエッチングプロセスで加工され、重り部52は、エッチングプロセスにより除去せず残され、導体箔25で構成された正方形の島状のパターン25cが形成されている。また、フレクシャ基板24で構成された島状のパターン24aと導体箔25の島状のパターン25cは、一辺の長さが等しく、フレクシャ15の平面方向(XY面方向)の外形形状は同一となっているがこれに限られることなく、質量調整のためにフレクシャ基板24の島状パターン24aと導体箔25の島状のパターン25cはそれぞれ異なる形状にしてもよい。
【0056】
重り部52は、アーム部51で支えられている。具体的には、アーム部51は、重り部52を挟んで一方(ヘッド支持機構2の先端方向側)に伸びる第1のアーム部51aと第1のアーム部51aと反対側(ベースプレート側)に伸びる第2のアーム部51bを備えている。第1のアーム部51aは、一方端が重り部52に連結され、他方端がフレクシャ15の本体部15aに連結されている。同様に第2のアーム部51bは、一方端が重り部52に連結され、他方端が本体部15aに連結されている。つまり、動吸振器50は、中間に集中質量である重り部52を持つ両端固定梁と等価な構造となる。本実施形態では、第1及び第2のアーム部51a、51bは、それぞれの延在方向と直交する方向(図中X軸方向)の幅が、重り部52における第1及び第2のアーム部51a、51bの延在方向と直交する方向(図中X軸方向)の幅よりも狭くなっている。この第1及び第2のアーム部51a、51bは、矩形状の絶縁層41と、絶縁層41上に設けられている矩形状の導体箔25とから構成され、動吸振器50の弾性手段を構成している。つまり、第1及び第2のアーム部51a、51bは、弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されていることになる。これら第1及び第2のアーム部51a、51bを構成する絶縁層41、導体箔25は、エッチングプロセスにおいて除去せず残すことで形成する。一方、第1及び第2のアーム部51a、51bの絶縁層41の裏面側にあるフレクシャ基板24は、エッチングプロセスにより除去される。したがって、第1及び第2のアーム部51a、51bは、本体部15a及び重り部52に比べ曲げ弾性が低い。
【0057】
本実施形態では、第1及び第2のアーム部51a、51bと、重り部52は、絶縁層41及び導体箔25が共通の同一部材となっている。つまり、本実施形態では、第1及び第2のアーム部51a、51bの複数の単層材(絶縁層41、導体箔25)と重り部52の複数の単層材(フレクシャ基板24、絶縁層41、導体箔25)のうちの2つが同一の単層材を共有した構成である。言い換えれば、フレクシャ基板24は、第1及び第2のアーム部51a、51bにおいてはエッチングプロセスにより除去されるため、アーム部51a、51bと重り部52との間で共有しない構成の単層材となっている。なお、第1及び第2のアーム部51a、51bを構成する導体箔25と重り部52を構成する導体箔25は、配線カバー42により覆われている。また、本実施形態では、第1及び第2のアーム部51a、51bと重り部52の導体箔25及び絶縁層41は、フレクシャ15の本体部15aと同一の単層材を共有した構成となっており、フレクシャ15の外形形成工程において、フレクシャ15と一体的に外形形成加工することができる。したがって、本体部15a、弾性手段である第1及び第2のアーム部51a、51b及び質量手段である重り部52が連続的に構成されることから、本体部15aと弾性手段である第1及び第2のアーム部51a、51bと質量手段である重り部52との間に構造的境界はなく、第1及び第2のアーム部51a、51bの弾性と重り部52の質量で動吸振器50の共振周波数を容易に精度よく定めることが可能となり、且つフレクシャ15の外形形成工程に動吸振器50を設けるための追加工程を必要としない。
【0058】
さらに、本実施形態では、フレクシャ15の本体部15aが第1及び第2のアーム部51a、51bの他方端に連結され、第1及び第2のアーム部51a、51bを支持する第1及び第2のアーム支持部54a、54bを有している。具体的には、第1及び第2のアーム支持部54a、54bは、導体箔25から構成され、第1及び第2のアーム部51a、51bを構成する導体箔25と連結されている。この第1及び第2のアーム支持部54a、54bにおける第1及び第2のアーム部51a、51bの延在方向と直交する方向(図中X軸方向)の幅は、第1及び第2のアーム部51a、51bのそれぞれの延在方向と直交する方向(図中X軸方向)の幅よりも広くなっている。
【0059】
このように動吸振器50が、ロードビーム14で励起された振動を吸収することで制振性の高いヘッド支持機構2を実現することができる。そのため、ロードビーム14の振動モードの一つであるスウェイモードを効率よく抑制することができる。ここで、第1及び第2のアーム部51a、51bのばね定数は、第1及び第2のアーム部51a、51bのそれぞれの延在方向(図中Y軸方向)における長さと当該延在方向と直交する方向(図中X軸方向)における幅で調整し、重り部52の質量は、重り部52の面積で設定している。なお、本実施形態では、重り部52の中心がロードビーム14の中心線上に位置し、第1及び第2のアーム部51a、51bは、ロードビーム14の中心線に平行な対称軸(図中Y軸方向)に線対称となるように配置されている。
【0060】
さらに、絶縁層41及び配線カバー42は、粘弾性を有する材料で構成されていると好ましい。つまり、第1及び第2のアーム部51a、51bを構成する複数の単層材(絶縁層41、導体箔25)と重り部52を構成する複数の単層材(フレクシャ基板24、絶縁層41、導体箔25)の1つが粘弾性を有する材料で構成することにより、第1及び第2のアーム部51a、51bは、金属で構成される導体箔25と粘弾性を有する絶縁層41及び配線カバー42で構成されることから、非拘束型の制振板と同様の構造となり、別途粘弾性体を貼り付けることなく、減衰効果を得ることが可能となる。この粘弾性を有する材料としては、金属に比べ粘弾性の高いポリイミドなどの樹脂材料が挙げられる。
【0061】
図12は、本発明の第1実施形態に係る動吸振器を簡素化したモデル図である。動吸振器50は、重り部52を第1及び第2のアーム部51a、51bで二方向から支持しているので、上述したように中間に集中質量を持つ両端固定梁とみなすことができる。一般的に、動吸振器50が吸振する周波数は動吸振器50の共振周波数であり、動吸振器50の持つ固有振動数と同調する。このとき、動吸振器50の1次曲げの固有振動数は、固有振動数をω50、ばね定数(曲げ弾性)k、質量m、とすると以下の式(1)で表される。
【0062】
【数1】
【0063】
一方、ばね定数kは、両端固定梁の中間点に加える集中荷重をW、たわみをδとすると以下の式(2)で表される。
【0064】
【数2】
【0065】
また、たわみδは、両端固定梁の長さをL、梁のヤング率をE、梁の断面2次モーメントをIとすると以下の式(3)で表される。
【0066】
【数3】
【0067】
この式(3)を式に(2)に代入すると、以下の式(4)となる。
【0068】
【数4】
【0069】
そして、式(4)を式(1)に代入すると、動吸振器50の固有振動数ω50は、以下の式(5)で表される。
【0070】
【数5】
【0071】
すなわち、式(5)より、梁となる第1及び第2のアーム部51a、51bのヤング率Eと断面2次モーメントI及び質量mで動吸振器50の固有振動数ω50は調整できることとなる。なお、ここでは粘性係数を考慮していない。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る動吸振器50は、アーム部51の複数の単層材の少なくとも1つと重り部52の複数の単層材の少なくとも1つが共有している構成である。そのため、弾性手段と質量手段とが連続的に構成されることから、弾性手段と質量手段との間に構造的境界はなく、アーム部51の弾性と重り部52の質量で周波数を容易に定めることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る動吸振器50においては、アーム部51と重り部52がそれぞれ弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されているため、外形形状だけでなく単層材の積層数を調整することでもアーム部51の曲げ弾性と重り部52の質量がそれぞれ独立して設定することが可能となることから、吸振する周波数の設定が広い周波数帯で行うことができる。
【0074】
さらに、本実施形態に係る動吸振器50は、アーム部51を複数備え、複数のアーム部51a、51bは、それぞれ重り部52に連結されている。そのため、アーム部51a、51bの弾性が広範囲に調整可能となるため、アーム部51a、51bの弾性と重り部52の質量から定まる動吸振器50の吸振する周波数の設定範囲を広げることが可能になる。なお本実施形態では、第1及び第2のアーム部51a、51bはそれぞれ一本の構成を示したが、複数本のアーム部で構成されていてもよい。
【0075】
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態に係る動吸振器を示す模式斜視図である。本実施形態に係る動吸振器501は、重り部521と、第1および第2のアーム部51a、51bとから構成されている。重り部521は、略正方形状の絶縁層41と、絶縁層41上に設けられている導体箔251から構成され、動吸振器501の質量手段を構成している。つまり、重り部521は、弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されていることとなる。本実施形態では、重り部521は、複数の直線状のパターン25eから構成された導体箔251、絶縁層41で構成されている。これら複数の直線状のパターン25eは互いに間隔を空けて配置されている。なお、直線状パターンは、局部的に複数のつなぎ部25eで連結され一体化されている。すなわち本実施形態に係る動吸振器501は、上述の第1の実施形態に係る動吸振器50において、フレクシャ基板24を取り除いた点、ならびに島状パターン25cから構成された導体箔25を備えた重り部52に代えて、複数の直線状のパターン25eから構成された導体箔251を備えた重り部521とした点が相違点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一である。よって同一構成の部分については説明を割愛する。本実施形態では、絶縁層41の下部にフレクシャ基板24aを設けていないが、フレクシャ基板24aを設けてもよい。また、つなぎ部25eで直線状パターンを連結しているが、つなぎ部25eが無くてもよい。
【0076】
本実施形態では、複数の直線状のパターン25eは、アーム部51の延在方向(図中Y軸方向)と直交する方向(図中X軸方向)に伸びており、当該延在方向に沿って間隔を空けて配置されている。すなわち、導体箔251は、ストライプ状のパターンを呈している。また、直線状のパターン25eは、アーム部51の延在方向の幅をd、アーム部51の延在方向と直交する方向の長さをc、絶縁層41の平面に対する鉛直方向(図中Z軸方向)の厚みをtとし、第1及び第2のアーム部51a、51bは、延在方向の長さをL/2、延在方向と直交する方向の幅をb、絶縁層41の平面に対する鉛直方向の厚みをtとする。
【0077】
動吸振器501は、重り部521を第1及び第2のアーム部51a、51bで二方向から支持しているので、上述したように両端固定梁とみなすことができる。このとき、第1及び第2のアーム部51a、51bの延在方向と直交する方向の断面形状が幅b、厚みtの長方形形状となるため、水平方向の断面2次モーメントI51は、一般的に以下の式(6)で表される。
【0078】
【数6】
【0079】
アーム部51のばね定数(曲げ弾性)k51は、式(6)を式(4)に代入すると、以下の式(7)で表される。
【0080】
【数7】
【0081】
また、重り部521の質量m521は、導体箔251の比重をρ、直線状のパターン25eの本数をnとすると、以下の式(8)で表される。
【0082】
【数8】
【0083】
なお、導体箔251を支持している絶縁層41は、比重が低く、また層の厚みが薄いため重り部521の質量に対して支配的ではないので考慮しないものとする。そして、式(7)及び式(8)を前述の式(1)に代入すると、動吸振器501の固有振動数ω501は以下の式(9)で表される。
【0084】
【数9】
【0085】
一般的に、エッチング加工はエッチングレートにより加工量が変化する。そこで、第1及び第2のアーム部51a、51bの幅bに例えばエッチング加工によるばらつきに起因する変化率(α−1)を考慮する。すなわちエッチングバラつきによる寸法変化係数αを設定する。このとき、第1及び第2のアーム部51a、51bの幅bが図中破線で示したαbになるので、第1及び第2のアーム部51a、51bのばね定数(曲げ弾性)kα51は以下の式(10)で表される。
【0086】
【数10】
【0087】
一方、重り部521も第1及び第2のアーム部51a、51bと同様にエッチング加工によるばらつきに起因する(α−1)bの寸法誤差が生じる。このとき、重り部521の質量mα521は、係数βを用いて、直線状パターン25eの幅dをアーム部51の幅bのβ倍として、d=βbとすると以下の式(11)で表される。
【0088】
【数11】
【0089】
ところで、直線状のパターン25eの長さcが第1及び第2のアーム部51a、51bの幅bの比べ十分に大きい場合には、(α−1)bの寸法誤差は、cに比べで非常に小さく、ほとんど変化しないと見なせるので、簡略化して、質量mα521は以下の式(12)のように表すことができる。
【0090】
【数12】
【0091】
寸法誤差が生じた場合の動吸振器501の固有振動数ωα501は、式(10)と式(12)より、以下の式(13)で表される。
【0092】
【数13】
【0093】
エッチング加工によるばらつきに起因する変化率を(α−1)としたとき、式(9)と式(13)より、固有振動数の変化率ωα501/ω501は、以下の式(14)ように表すことができる。
【0094】
【数14】
【0095】
式(14)より、β=1、すなわち直線状パターン25eの幅dと、アーム部51の幅bが等しい場合は、動吸振器501の固有振動数は寸法変化係数αで変動することがわかる。また、寸法変化係数αに対する動吸振器501の固有振動数の変化率ωα501/ω501は、係数βの値によって定まることがわかる。つまり、重り部521の質量を定める直線状のパターン25eの本数n、直線状のパターン25eの長さc、及び直線状のパターン25eの厚さtは、固有振動数の変化率ωα501/ω501に影響を与えないことから、動吸振器501の固有振動数は、広い周波数帯で設定することができる。
【0096】
図14は、式(14)の係数βをパラメータとし、横軸に寸法変化係数α、縦軸に固有振動数の変化率ωα501/ω501を示した図である。本例においては、寸法変化係数αが0.9から1.1の範囲において、係数βの値が0.3から1.1までの場合におけるそれぞれの固有振動数の変化率ωα501/ω501の推移を示している。なお、図14の中のRefは、重り部521が寸法変化係数αによらず一定、すなわち、アーム部51のばね定数のみが変化した場合の固有振動数の変化率を示したものである。図14に示すように、係数βの値が小さくなる、すなわち、アーム部51の幅bに対して重り部521の複数の直線状パターン25eの幅dの値が小さくなると、動吸振器501の固有振動数が受ける影響が小さくなっており、β=0.34の時、固有振動数の変化率ωα501/ω501が最も小さく、寸法変化係数αにより動吸振器501の固有振動数が受ける影響が小さくなることがわかる。
【0097】
以上のように、本実施形態に係る動吸振器501は、重り部521の複数の単層材のうちアーム部51の単層材と共有している少なくとも1つの単層材は、直線状のパターン25eを有する構成としている。そのため、同量の寸法誤差により生じるアーム部51の弾性変化と重り部521の質量変化のそれぞれの変化の度合いが緩和されることから、吸振する周波数の安定性が高い動吸振器501を得ることができる。また、直線状のパターン25eは、重り部およびアーム部の外形形成加工時に一括的に設けることができることから、新たな工程を追加することなく動吸振器を設けることができる。
【0098】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態に係る動吸振器を示す模式斜視図である。本実施形態に係る動吸振器502は、重り部522と、第1および第2のアーム部51a、51bとから構成されている。重り部522は、複数の略正方形状のパターン25fから構成され、これら複数の略正方形状のパターン25fが互いに間隔を空けて配置され、それぞれの正方形状パターンはつなぎ部25fで連結され一体化されており、略正方形状の絶縁層41に設けられている。つまり、第1の実施形態同様に重り部522は、弾性及び比重の異なる単層材を複数積層して構成されている。すなわち本実施形態に係る動吸振器502は、上述の第1の実施形態に係る動吸振器50において、フレクシャ基板24を取り除いた点、ならびに島状パターン25cから構成された導体箔25を備えた重り部52に代えて、複数の略正方形状のパターン25fから構成された導体箔252を備えた重り部522とした点が相違点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一である。よって同一構成の部分については説明を割愛する。本実施形態では、絶縁層41の下部にフレクシャ基板24aを設けていないが、フレクシャ基板24aを設けてもよい。また、つなぎ部25fで直線状パターンを連結しているが、つなぎ部25eが無くてもよい。
【0099】
ここで、複数の略正方形状のパターン25fは、アーム部51の延在方向ならびに当該延在方向と直交する方向に沿って間隔を空けて配置されている。すなわち、導体箔252は、ドットマトリックス状のパターンを呈している。略正方形状のパターン25fは、一辺の長さがd、各正方形状のパターン25fの絶縁層41の平面に対する鉛直方向(図中Z軸方向)の厚みをtとし、実施形態1同様に第1及び第2のアーム部51a、51bの延在方向の長さをL/2、延在方向と直交する方向の幅b、絶縁層41の平面に対する鉛直方向の厚みをtとする。
【0100】
動吸振器502の固有振動数ω502は、アーム部51のばね定数(曲げ弾性)k51と重り部522の質量m522から求めることができる。質量手段となる重り部522を構成している導体箔252は、1つの大きさがd×dの正方形のパターン25fを任意の個数n個ドットマトリックス状に配置した構成となっている。任意の個数nは、動吸振器502により吸振させたい周波数に同調させるように重り部522の質量m522を調整することで定められ、その質量m522は以下の式(15)で表される。
【0101】
【数15】
【0102】
式(15)と式(7)のアーム部51のばね定数k51より、動吸振器502の固有振動数ω502は、以下の式(16)で表される。
【0103】
【数16】
【0104】
ここで、第1及び第2のアーム部51a、51bの幅bが寸法変化係数αで変動した場合、すなわち(α−1)bの寸法誤差が生じた場合の重り部522の質量mα522は以下の式(17)で表される。
【0105】
【数17】
【0106】
上述した第2実施形態と同様に、係数βを用いて長さdをアーム部51の幅bのβ倍とし、d=βbとすると、寸法誤差が生じた場合の動吸振器502の固有振動数ωα502は、式(17)と式(10)の寸法誤差が生じたアーム部のばね定数kα51より以下の式(18)で表される。
【0107】
【数18】
【0108】
式(16)と式(18)より、固有振動数の変化の比率ωα502/ω502は、以下の式(19)ように表すことができる。
【0109】
【数19】
【0110】
式(19)より、寸法変化係数αに対する動吸振器502の固有振動数の変化率ωα502/ω502は、係数βの値によって定まることがわかる。つまり、重り部522の質量を定める略正方形形状パターン25fの個数n、及び略正方形形状パターン25fの厚さtは、固有振動数の変化率ωα501/ω501に影響を与えないことから、動吸振器501の固有振動数は、広い周波数帯で設定することができる。
【0111】
図16は、式(19)において係数βをパラメータとし、横軸に寸法変化係数α、縦軸に固有振動数の変化率ωα502/ω502を示した図である。本例においては、寸法変化係数αが0.9から1.1の範囲において、係数βの値が0.5から1.2までの場合のそれぞれの固有振動数の変化率ωα502/ω502の推移を示している。なお、図16の中のRefは、重り部522が寸法変形係数αによらず一定、すなわち、アーム部51のばね定数のみが変化した場合の固有振動数の変化率ωα502/ω502を示したものである。
【0112】
図16に示すように、係数βの値が0.7の場合に動吸振器502の固有振動数に与える影響が最も少なることがわかる。このように、重り部522が、アーム部51の幅bに対して一辺の長さが0.7bの正方形を複数個配置したパターンで構成された場合には、動吸振器502の固有振動数の調整は正方形の個数で容易に調整でき、且つアーム部51での寸法誤差による動吸振器502の固有振動数の変動が小さい動吸振器を実現可能である。また、アーム部の幅に生じる寸法誤差は、一般的に例えばエッチング加工装置の工程能力や加工精度などに起因するが、寸法変化係数αは、同じ工程能力や加工精度でもアーム部の幅が小さいほど大きな変化率となる。このような場合においても、アーム部での寸法誤差による動吸振器の固有振動数の変動が小さい動吸振器を得ることができる。なお、重り部に設ける形状パターンは正方形に限るものではない。例えば、円形状パターンや、多角形形状を複数配置したパターンなどを用いてもよい。
【0113】
ここで、図14より、第2の実施形態における固有振動数の変化率ωα501/ω501は、係数βの値が0.34近傍を境に、それより大きい係数βの固有振動数の変化率推移と逆の挙動を示していることがわかる。また、図16の本実施形態の固有振動数の変化率ωα502/ω502は、係数βの値が0.7を下回ると、0.7以上の固有振動数の変化率推移と逆の挙動を示していることがわかる。すなわち、第2の実施形態では、係数βの値が0.34を下回るあたりで、本実施形態では係数βの値が0.7を下回るあたりでアーム部51のばね定数の変化率よりも重り部521、重り部522の変化率の方が大きいことを示している。したがって、この係数βの値の差を用いて、第2の実施形態のような直線状のパターン25eと本実施形態に示す略正方形形状パターン25fの組み合わせにより、動吸振器の固有振動数の変動を相殺し、アーム部での寸法誤差による動吸振器の固有振動数の変動が小さい動吸振器を実現することも可能である。
【0114】
以上のように、本実施形態に係る動吸振器502は、重り部522の複数の単層材のうちアーム部51の単層材と共有している少なくとも1つの単層材は、複数の略正方形形状のパターン25fを有する構成としている。そのため、同量の寸法誤差により生じるアーム部51の弾性変化と重り部522の質量の質量変化のそれぞれの変化率の差度合いが緩和されることから、吸振する周波数の安定性が高い動吸振器を得ることができる。また、略正方形形状パターン25eは、重り部522およびアーム部51の外形形成加工時に一括的に設けることができることから、新たな工程を追加することなく動吸振器502を設けることができる。
【0115】
(第4実施形態)
図17は、本発明の第4の実施形態に係る動吸振器を示す模式斜視図である。
本実施形態に係る動吸振器503は、第3の実施形態に係る動吸振器502において、重り部522に代えて、多角形状のパターン上の配線カバー層42に半田をつけるための穴(図示しない)を設けることで形成した質量調整機構55を備えた重り部523とした点が相違点であり、その他の構成は第3の実施形態と同一である。よって同一構成の部分については説明を割愛する。具体的には、複数の質量調整機構55は、略正方形状のパターン25fを覆うように形成している配線カバー42に穴42aを設けて露出させ、この部分に半田を付加することで質量調整を行うように構成されている。なお、質量調整機構55に用いる質量調整用材料は半田に限るものではない。例えば金ボールや銀ボールでもよく、比重の大きな接着剤などを用いてもよい。
【0116】
以上のように、本実施形態に係る動吸振器503は、重り部523が、複数の質量調整機構55を備えている。そのため、重り部523の質量が広範囲に調整可能となるため、アーム部51の弾性と重り部523の質量から定まる動吸振器503の吸振する周波数の設定範囲を広げることが可能になる。
【0117】
以下、フレクシャに設けられた動吸振器がロードビームのスウェイモードを抑制できることを実施例1として示す。なお、実施例1として第1実施形態に係る動吸振器50を有するフレクシャ15を備えたヘッド支持機構2を用いた。また比較例1として実施例1と特性比較をするために、ヘッド支持機構2において、フレクシャ15から動吸振器50を取り除いたヘッド支持機構を用いた。
【0118】
実施例1のヘッド支持機構2及び比較例1のヘッド支持機構のシーク動作時における周波数応答特性を図18に示す。シーク動作は、読み出すトラックをボイスコイルモータ(VCM)により支持アーム8を大きく水平回動軸9を中心に最大加速で回動させ最大加速で停止させる動作である。この動作によってサスペンションのロードビーム14が大きな共振を発生する。その中でもっとも大きな共振が図18中のスウェイモードfr1である。また、第1および第2の駆動手段によりスライダ3を回動駆動する機構によって、ヘッド素子の位置を微小調整する場合、その制御帯域が抑える必要のある共振周波数をカバーする帯域を有していれば問題ないが、制御帯域がカバーしていない場合には、その共振周波数のゲインが小さい方が望ましい。ヘッド支持機構2を備えた磁気ディスク装置1は、サンプリング周波数を48kHzに設定しており、この場合の制御帯域は6kHzとしている。この比較例の場合、スウェイモードfr1のピークが26kHz付近であり、制御帯域を超えている。よって、第一および第二の駆動手段では抑制できない。動吸振器50を取り付けることにより、比較例1ではスウェイモードのピークが26kHz付近で約34dBであるが、実施例1ではスウェイモードfr1のピークは約29dBに抑制されていることがわかる。つまり、実施例1では、シーク動作時におけるロードビーム14で励起されたスウェイモードによる振動が、動吸振器50により大きく抑制されたことを確認することができた。
【符号の説明】
【0119】
1…磁気ディスク装置、2…ヘッド支持機構、3…スライダ、4…ハウジング、5…スピンドルモータの軸、6…磁気ディスク、7…ヘッド素子、8…支持アーム、9…VCMの水平回動軸、10…マグネット部、11…ランプ機構、12…タブ、13…ベースプレート、14…ロードビーム、15…フレクシャ、15a…フレクシャの本体部、16a…第1の駆動手段(薄膜圧電体素子)、16b…第2の駆動手段(薄膜圧電体素子)、17a…第一のビーム溶接ポイント、17b…第二のビーム溶接ポイント、18…板バネ、19…折り曲げ加工部、20…スライダ支持板、21…支点突起、22a…第1のアウトリガ、22b…第2のアウトリガ、23a…第1の圧電体支持部、23b…第2の圧電体支持部、24,243…フレクシャ基板、24a…フレクシャ基板のパターン形状、24b…フレクシャ基板の矩形状パターン形状、25,251,252,253…導体箔、25a…ヘッド素子配線、25c…重り部の導体箔のパターン、25e…導体箔の直線パターン形状、25et,25ft…つなぎ部、25f…導体箔のドットマトリックスパターン形状、25g…導体箔の直線パターン形状、26…薄膜圧電体、27a…上部電極、27b…下部電極、28…基台、29a…第1の電極パッド、29b…第2の電極パッド、29c…第3の電極パッド、29d…第4の電極パッド、30…絶縁カバー、31…ヘッド電極端子、32a…第1の折り曲げ部、32b…第2の折り曲げ部、33…カウンターバランス、34…T型リミッタ部、35…ロードビームの孔部、36a…第1の駆動リブ、36b…第2の駆動リブ、37a…駆動配線、37b…グランド配線、39a…第1のリンク、39b…第2のリンク、40a…第1のジョイント、40b…第2のジョイント、40c…第3のジョイント、40d…第4のジョイント、41…絶縁層、42…配線カバー層、44a…第1の分離溝、44b…第2の分離溝、50,501,502,503…動吸振器、51a,51b…アーム部、52,521,522,523…重り部、53…開口部、54a,54b…アーム支持部、55…質量調整機構。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18