(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物、および、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、単に「本発明のゴム組成物」とも略す。)は、ジエン系ゴムと、シリカと、シランカップリング剤と、脂肪酸金属塩と、後述する式(I)で表されるアルキルトリアルコキシシランとを含有する。
ここで、上記ジエン系ゴムは、変性共役ジエン系ゴムを60質量%以上含有し、かつ、上記変性共役ジエン系ゴムの一部または全部に該当する特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含有するジエン系ゴムである。また、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は、−45〜−20℃である。
また、上記特定共役ジエン系ゴムは、後述する工程AとBとCとをこの順に備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであって、芳香族ビニル単位含有量が38〜48質量%であり、ビニル結合含有量が20〜35質量%であり、重量平均分子量が500,000〜800,000である、共役ジエン系ゴムである。
また、上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して60〜180質量部である。
同様に、上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して4〜20質量%である。
同様に、上記脂肪酸金属塩の含有量が、上記シリカの含有量に対して2〜8質量%である。
同様に、上記アルキルトリアルコキシシランの含有量は、上記シリカの含有量に対して0.1〜20質量%である。
【0013】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、タイヤにしたときにウェット性能、低転がり抵抗性および操縦安定性がいずれも良好となる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
すなわち、シリカ、アルコキシシラン、シランカップリング剤などを配合することで、低転がり抵抗性などの特性が向上することが知られているが、シリカが凝集しやすく、凝集により加工性などが劣ることが知られている。
一方、本発明では、変性共役ジエン系ゴムを60質量%以上含有し、かつ、この変性共役ジエン系ゴムの一部または全部に該当する特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含有するジエン系ゴムとともに、脂肪酸金属塩を用いることにより、シリカの含有量を増やしても凝集を抑制することができ、その結果、ウェット性能、低転がり抵抗性および操縦安定性がいずれも良好になったと考えられる。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0014】
〔ジエン系ゴム〕
本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムは、変性共役ジエン系ゴムを60質量%以上含有し、かつ、この変性共役ジエン系ゴムの一部または全部に該当する特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含有する。
ここで、変性共役ジエン系ゴムとは、窒素原子、酸素原子およびケイ素原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を有する官能基で変性された共役ジエン系ゴムをいい、例えば、アミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボニル基、アルコキシシリル基、シラノール基、及び一般式(1):−SiR
AR
B−O−(式中、R
A及びR
Bは、それぞれ、−CH
3又は−CH
2Vである。Vは、有機基である。)で表されるシロキサン基から成る群より選ばれる1種以上の官能基を有する官能基変性共役ジエン系ゴムが好適に挙げられる。
本発明においては、上記変性共役ジエン系ゴムの少なくとも一部が、後述する特定共役ジエン系ゴムであり、ジエン系ゴムに60質量%以上の割合で含まれる変性ジエン系ゴムの全部が、後述する特定共役ジエン系ゴムであってもよい。
また、ジエン系ゴム中の変性共役ジエン系ゴムの含有量(後述する特定共役ジエン系ゴムの含有量を含む)は、80質量%以上であることが好ましく、80〜90質量%であることがより好ましい。
【0015】
<特定共役ジエン系ゴム>
上述のとおり、上記特定共役ジエン系ゴムは、下記工程AとBとCとをこの順に備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであって、芳香族ビニル単位含有量が38〜48質量%であり、ビニル結合含有量が20〜35質量%であり、重量平均分子量が500,000〜800,000である、共役ジエン系ゴムである。
・工程A:イソプレンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物を重合することにより、イソプレン単位含有量が80〜95質量%であり、芳香族ビニル単位含有量が5〜20質量%であり、重量平均分子量が500〜15,000である、活性末端を有する重合体ブロックAを形成する工程
・工程B:上記重合体ブロックAと、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物とを混合して重合反応を継続し、活性末端を有する重合体ブロックBを、上記重合体ブロックAと一続きにして形成することにより、上記重合体ブロックAおよび上記重合体ブロックBを有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程
・工程C:上記共役ジエン系重合体鎖の上記活性末端に、後述する式(1)で示されるポリオルガノシロキサンを反応させる工程
以下、各工程について詳述する。
【0016】
(工程A)
工程Aでは、イソプレンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物を重合することにより、イソプレン単位含有量が80〜95質量%であり、芳香族ビニル単位含有量が5〜20質量%であり、重量平均分子量が500〜15,000である、活性末端を有する重合体ブロックAを形成する。
【0017】
上記単量体混合物はイソプレンおよび芳香族ビニルのみであってもよいし、イソプレンおよび芳香族ビニル以外の単量体を含んでもよい。
上記芳香族ビニルとしては特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
イソプレンおよび芳香族ビニル以外の単量体の例としては、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、および1,3−ヘキサジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記単量体混合物は、不活性溶媒中で重合されるのが好ましい。
上記不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであって、重合反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、および2−ブテンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、およびシクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。不活性溶媒の使用量は、単量体混合物濃度が、例えば、1〜80質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。
【0020】
上記単量体混合物は重合開始剤により重合されるのが好ましい。
上記重合開始剤としては、イソプレンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、有機アルカリ金属化合物および有機アルカリ土類金属化合物、ならびにランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、およびスチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、および1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、およびジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウムおよびガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、および有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物を用いることが好ましく、n−ブチルリチウムを用いることがより好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、単量体混合物100g当り、好ましくは4〜250mmol、より好ましくは6〜200mmol、特に好ましくは10〜70mmolの範囲である。
【0021】
上記単量体混合物を重合する重合温度は、例えば、−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜90℃の範囲である。
重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。また、結合様式としては、例えば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。
重合体ブロックAにおけるイソプレン単位中の1,4−結合含有量を調節する方法としては、例えば、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加し、その添加量を調整する方法などが挙げられる。極性化合物としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、および2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、その中でも、重合開始剤の金属とキレート構造を形成し得るものがより好ましく、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、およびテトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。
極性化合物の使用量は、目的とする1,4−結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1molに対して、0.01〜30molが好ましく、0.05〜10molがより好ましい。極性化合物の使用量が上記範囲内にあると、イソプレン単位中の1,4−結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0022】
重合体ブロックAにおけるイソプレン単位中の1,4−結合含有量は、10〜95質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましい。
なお、本明細書において、イソプレン単位中の1,4−結合含有量とは、重合体ブロックAが有する全イソプレン単位に対する、1,4−結合のイソプレン単位の割合(質量%)を指す。
【0023】
重合体ブロックAの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値として、500〜15,000である。なかでも、1,000〜12,000であることがより好ましく、1,500〜10,000であることがさらに好ましい。
重合体ブロックAの重量平均分子量が500に満たないと、所望の低発熱性とウェット性能が発現しにくくなる。
重合体ブロックAの重量平均分子量が15,000を超えると、所望の低転がりとウェット性能の指標となる粘弾性特性のバランスが崩れる可能性がある。
重合体ブロックAの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.0〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.3であることがより好ましい。重合体ブロックAの分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、特定共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。なお、MwおよびMnはいずれもGPCによって測定されるポリスチレン換算の値である。
【0024】
重合体ブロックAのイソプレン単位含有量は、80〜95質量%であり、85〜95質量%であることが好ましい。
重合体ブロックAの芳香族ビニル含有量は5〜20質量%であり、5〜15質量%であることが好ましく、5〜13質量%であることがより好ましい。
重合体ブロックAにおける、イソプレンおよび芳香族ビニル以外の単量体単位の含有量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(工程B)
工程Bでは、上述した工程Aで形成された重合体ブロックAと、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物とを混合して重合反応を継続し、活性末端を有する重合体ブロックBを、上記重合体ブロックAと一続きにして形成することにより、上記重合体ブロックAおよび上記重合体ブロックBを有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る。
【0026】
上記芳香族ビニルの具体例および好適な態様は上述のとおりである。
【0027】
上記単量体混合物は、不活性溶媒中で重合されるのが好ましい。
上記不活性溶媒の定義、具体例および好適な態様は上述のとおりである。
重合体ブロックBを形成する際の活性末端を有する重合体ブロックAの使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物100g当り、例えば、0.1〜5mmol、好ましくは0.15〜2mmol、より好ましくは0.2〜1.5mmolの範囲である。
重合体ブロックAと1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物との混合方法は、特に限定されず、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物の溶液中に活性末端を有する重合体ブロックAを加えてもよいし、活性末端を有する重合体ブロックAの溶液中に1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物を加えてもよい。重合の制御の観点より、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物の溶液中に活性末端を有する重合体ブロックAを加えることが好ましい。
1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルを含む単量体混合物を重合するに際し、重合温度は、例えば、−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。なかでも、回分式が好ましい。
重合体ブロックBの各単量体の結合様式は、例えば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニルの結合様式をランダム状にする場合、重合系内において、1,3−ブタジエンと芳香族ビニルとの合計量に対する芳香族ビニルの比率が高くなりすぎないように、1,3−ブタジエンと芳香族ビニルとを、連続的または断続的に重合系内に供給して重合することが好ましい。
【0028】
重合体ブロックBの1,3−ブタジエン単位含有量は特に制限されないが、55〜95質量%であることが好ましく、55〜90質量%であることがより好ましい。
重合体ブロックBの芳香族ビニル単位含有量は特に制限されないが、5〜45質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。
【0029】
重合体ブロックBは、1,3−ブタジエン単位および芳香族ビニル単位以外に、さらに、その他の単量体単位を有していてもよい。その他の単量体単位を構成するために用いられるその他の単量体としては、上述した「イソプレン以外の単量体のうち芳香族ビニル以外の例」のうち1,3−ブタジエンを除いたものや、イソプレンなどが挙げられる。
重合体ブロックBのその他の単量体単位の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
重合体ブロックBにおける1,3−ブタジエン単位中のビニル結合含有量を調節するためには、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。ただし、重合体ブロックAの調製時に、不活性溶媒に、重合体ブロックBにおける1,3−ブタジエン単位中のビニル結合含有量を調節するのに十分な量の極性化合物を添加している場合は、新たに極性化合物を添加しなくてもよい。ビニル結合含有量を調節するために用いられる極性化合物についての具体例は、上述の重合体ブロックAの形成に用いられる極性化合物と同様である。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1molに対して、好ましくは0.01〜100mol、より好ましくは0.1〜30molの範囲で調節すればよい。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、1,3−ブタジエン単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
重合体ブロックBにおける1,3−ブタジエン単位中のビニル結合含有量は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、特に好ましくは25〜70質量%である。
【0031】
工程AおよびBにより、重合体ブロックAおよび重合体ブロックBを有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。
上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、生産性の観点より、重合体ブロックA−重合体ブロックBで構成され、重合体ブロックBの末端が活性末端であることが好ましいが、重合体ブロックAを複数有していてもよいし、その他の重合体ブロックを有していてもよい。例えば、重合体ブロックA−重合体ブロックB−重合体ブロックA、および重合体ブロックA−重合体ブロックB−イソプレンのみからなるブロックなどの、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が挙げられる。共役ジエン系重合体鎖の活性末端側にイソプレンのみからなるブロックを形成させる場合、イソプレンの使用量は、初めの重合反応に使用した重合開始剤1molに対して、10〜100molであることが好ましく、15〜70molであることがより好ましく、20〜35molであることが特に好ましい。
上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合体ブロックAと重合体ブロックBとの質量比(重合体ブロックA、Bが複数ある場合は、それぞれの合計質量を基準とする)は、(重合体ブロックAの質量)/(重合体ブロックBの質量)として、0.001〜0.1であることが好ましく、0.003〜0.07であることがより好ましく、0.005〜0.05であることが特に好ましい。
上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましく、1.0〜2.2であることが特に好ましい。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、特定共役ジエン系ゴムの製造が容易となる。なお、MwおよびMnはいずれもGPCによって測定されるポリスチレン換算の値である。
上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中、イソプレン単位および1,3−ブタジエン単位の合計の含有量が50〜99.995質量%、芳香族ビニル単位の含有量が0.005〜50質量%であることが好ましく、イソプレン単位および1,3−ブタジエン単位の合計の含有量が55〜95質量%、芳香族ビニル単位の含有量が5〜45質量%であることがより好ましく、イソプレン単位および1,3−ブタジエン単位の合計の含有量が55〜90質量%、芳香族ビニル単位の含有量が10〜45質量%であることが特に好ましい。また、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖におけるイソプレン単位中および1,3−ブタジエン単位中のビニル結合含有量は、上述した重合体ブロックBにおける1,3−ブタジエン単位中のビニル結合含有量と同様である。
【0032】
(工程C)
工程Cは、工程Bで得られた共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、下記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンを反応させる工程である。
【0034】
上記式(1)中、R
1〜R
8は、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
1およびX
4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
2は、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であり、複数あるX
2は互いに同一であっても相違していてもよい。X
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X
3が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。
【0035】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R
1〜R
8、X
1およびX
4で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらのなかでも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の観点から、メチル基、およびエチル基が好ましい。
【0036】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
1、X
2、およびX
4で表される炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、およびブトキシ基などが挙げられる。なかでも、共役ジエン系重合体鎖の活性末端との反応性の観点から、メトキシ基、およびエトキシ基が好ましい。
【0037】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
1、X
2、およびX
4で表されるエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基としては、下記式(2)で表される基が挙げられる。
【0039】
上記式(2)中、Z
1は、炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Z
2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の炭化水素基である。上記式(2)中、*は結合位置を表す。
【0040】
上記式(2)で表される基において、Z
2が酸素原子であるものが好ましく、Z
2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z
1が炭素数1〜3のアルキレン基であり、Z
2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0041】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
1およびX
4としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、また、X
2としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましく、X
1およびX
4が炭素数1〜6のアルキル基であり、かつ、X
2がエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であることがより好ましい。
【0042】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
3、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記式(3)で表される基が好ましい。
【0044】
上記式(3)中、tは2〜20の整数であり、Pは炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。上記式(3)中、*は結合位置を表す。これらの中でも、tが2〜8の整数であり、Pが炭素数3のアルキレン基であり、Rが水素原子であり、かつ、Qがメトキシ基であるものが好ましい。
【0045】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは3〜200の整数であり、好ましくは20〜150の整数、より好ましくは30〜120の整数である。mが3以上の整数であるため、特定共役ジエン系ゴムはシリカとの親和性が高く、その結果、本発明のゴム組成物から得られるタイヤは優れた低発熱性を示す。また、mが200以下の整数であるため、ポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、本発明のゴム組成物の粘度は低くなる。
【0046】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200の整数であり、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。また、上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、kは0〜200の整数であり、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜130の整数である。
【0047】
上記式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、m、n、およびkの合計数は、3〜400であることが好ましく、20〜300であることがより好ましく、30〜250であることが特に好ましい。
【0048】
なお、上記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンにおいて、ポリオルガノシロキサン中のエポキシ基が共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する場合、ポリオルガノシロキサン中の少なくとも一部のエポキシ基が開環することにより、エポキシ基が開環した部分の炭素原子と共役ジエン系重合体鎖の活性末端との結合が形成されると考えられる。また、ポリオルガノシロキサン中のアルコキシ基が共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する場合、ポリオルガノシロキサン中の少なくとも一部のアルコキシ基が脱離することにより、脱離したアルコキシ基が結合していたポリオルガノシロキサンにおけるケイ素原子と共役ジエン系重合体鎖の活性末端との結合が形成されると考えられる。
【0049】
上記ポリオルガノシロキサン(以下、変性剤とも言う)の使用量は、重合に使用した重合開始剤1molに対する変性剤中のエポキシ基およびアルコキシ基の合計mol数の比が0.1〜1の範囲となる量であることが好ましく、0.2〜0.9の範囲となる量であることがより好ましく、0.3〜0.8の範囲となる量であることがさらに好ましい。
【0050】
上記共役ジエン系ゴムの製造方法では、上述した変性剤にて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を変性する他に、重合停止剤、上述した変性剤以外の重合末端変性剤、およびカップリング剤などを重合系内に添加することにより、一部の共役ジエン系重合体鎖の活性末端を、本発明の効果を阻害しない範囲で、不活性化してもよい。すなわち、特定共役ジエン系ゴムは、一部の共役ジエン系重合体鎖の活性末端が、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合停止剤、上述した変性剤以外の重合末端変性剤、およびカップリング剤などにより不活性化されていてもよい。
このときに用いられる重合末端変性剤およびカップリング剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、およびN−メチル−ε−カプロラクタムなどのN−置換環状アミド類;1,3−ジメチルエチレン尿素、および1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンなどのN−置換環状尿素類;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのN−置換アミノケトン類;ジフェニルメタンジイソシアネート、および2,4−トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類;N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのN,N−ジ置換アミノアルキルメタクリルアミド類;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドなどのN−置換アミノアルデヒド類1ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのN−置換カルボジイミド類;N−エチルエチリデンイミン、N−メチルベンジリデンイミンなどのシッフ塩基類;4−ビニルピリジンなどのピリジル基含有ビニル化合物;四塩化錫;四塩化ケイ素、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5−ビス(トリクロロシリル)ペンタン、および1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンなどのハロゲン化ケイ素化合物;などが挙げられる。1分子中に5以上のケイ素−ハロゲン原子結合を有するハロゲン化ケイ素化合物をカップリング剤として併用して得られる高分岐共役ジエン系ゴムを用いて得られるタイヤは、操縦安定性が優れる。これらの重合末端変性剤およびカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、上述した変性剤などを反応させる際、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、変性剤などを添加することが好ましく、反応を良好に制御する観点から、変性剤などを不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することがより好ましい。その溶液濃度は、1〜50質量%の範囲とすることが好ましい。
変性剤などを添加する時期は、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、好ましくは100ppm以上、より好ましくは300〜50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液に変性剤などを添加することが望ましい。変性剤などの添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、上述した変性剤などを反応させるときの条件としては、温度が、例えば、0〜100℃、好ましくは30〜90℃の範囲であり、それぞれの反応時間が、例えば、1分〜120分、好ましくは2分〜60分の範囲である。
共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤などを反応させた後は、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0052】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを重合溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより重合溶液から重合溶媒を分離して、得られる特定共役ジエン系ゴムを回収する。なお、重合溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、特定共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
特定共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHEINSTITUTEPETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100質量部に対して、例えば、5〜100質量部、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは20〜50質量部である。
【0053】
特定共役ジエン系ゴムは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、上述したポリオルガノシロキサンとを反応させることにより生じる、3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体(以下、「活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、上述したポリオルガノシロキサンとを反応させることにより生じる、3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体」を単に「3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体」とも言う)を、5〜40質量%含有していることが好ましく、5〜30質量%含有していることがより好ましく、10〜20質量%含有していることが特に好ましい。3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体の割合が上記範囲内にあると、製造時における凝固性、および乾燥性が良好となり、さらには、シリカを配合したときに、より加工性に優れるタイヤ用ゴム組成物、およびより低発熱性に優れたタイヤを与えることができる。なお、最終的に得られた特定共役ジエン系ゴムの全量に対する、3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体の割合(質量分率)を、共役ジエン系重合体鎖の3分岐以上のカップリング率として表す。これは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(ポリスチレン換算)により測定することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定により得られたチャートより、全溶出面積に対する、分子量の最も小さいピークが示すピークトップ分子量の2.8倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積比を、共役ジエン系重合体鎖の3分岐以上のカップリング率とする。
【0054】
上記特定共役ジエン系ゴムの芳香族ビニル単位含有量は38〜48質量%である。なかでも、40〜45質量%であることが好ましい。上記芳香族ビニル単位含有量が38質量%に満たないと、ウェット性能が不十分となる。また、上記芳香族ビニル単位含有量が48質量%を超えると、低転がり抵抗性が悪化する。
上記特定共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量は20〜35質量%である。なかでも、25〜30質量%であることが好ましい。上記ビニル結合含有量が20質量%に満たないと、低転がり抵抗性が悪化する。また、上記ビニル結合含有量が35質量%を超えると、粘度が上昇し加工性が悪化する。なお、ビニル結合含有量とは、特定共役ジエン系ゴムに含まれる共役ジエン単位のうち、ビニル結合が占める割合(質量%)を指す。
上記特定共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値として、500,000〜800,000である。なかでも、600,000〜700,000であることが好ましい。上記重量平均分子量が500,000に満たないと、摩耗性能が悪化する。また、上記重量平均分子量が800,000を超えると、加工性が悪化する。
上記特定共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.5であることがより好ましく、1.2〜2.2であることが特に好ましい。なお、MwおよびMnはいずれもGPCによって測定されるポリスチレン換算の値である。
上記特定共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、20〜100であることが好ましく、30〜90であることがより好ましく、35〜80であることが特に好ましい。なお、特定共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0055】
本発明においては、ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量は、30質量%以上であり、40〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。
ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量が30質量%に満たないと、ウェット性能および低転がり抵抗性ならびに操縦安定性が不十分となる。
なお、「ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量」とは、ジエン系ゴム全体に対する特定共役ジエン系ゴムの含有量(質量%)を指す。
【0056】
<その他のゴム成分>
上記ジエン系ゴムは、上述した変性共役ジエン系ゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を含んでいてもよい。そのようなゴム成分としては特に制限されないが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なお、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。
これらの他のゴム成分のうち、BR、SBRを用いるのが好ましく、BRを用いるのがより好ましい。
【0057】
本発明においては、このようなジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(Tg)は、−45〜−20℃であり、−40〜−25℃であるのが好ましい。なお、ジエン系ゴムの平均Tgは、各ゴムの成分のTgに各ゴム成分の質量%をそれぞれ掛け合わせて足し合わせたものである。また、各ゴムのTgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものである。
【0058】
〔シリカ〕
本発明のゴム組成物が含有するシリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明においては、ウェット性がより良好となる理由から、CTAB吸着比表面積が180m
2/g以上であることが好ましく、185〜215m
2/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJISK6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0060】
また、本発明においては、低転がり抵抗性がより良好となり、ウェット性能および耐摩耗性の両立の観点から、上記シリカが、CTAB吸着比表面積が144〜176m
2/gのシリカ(X)と、CTAB吸着比表面積が180〜220m
2/gのシリカ(Y)とを併用し、上記シリカ(X)と上記シリカ(Y)と質量比(X:Y)が4:1〜1:3であることが好ましい。
【0061】
本発明のゴム組成物において、シリカの含有量(上述したシリカ(X)およびシリカ(Y)を併用する場合はこれらの合計量)は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して60〜180質量部であり、80〜120質量部であることが好ましく、90〜110質量部であることがより好ましい。
【0062】
〔シランカップリング剤〕
本発明のゴム組成物が含有するシランカップリング剤は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシランカップリング剤を用いることができる。
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種または2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0063】
また、上記以外のシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオールなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランなどのチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3−チオシアネートプロピルトリエトキシシランなどのチオシアネート系シランカップリング剤;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種または2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0064】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニック・デグッサ社製]、Si75[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニック・デグッサ社製]等が挙げられる。
【0065】
本発明においては、上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカの含有量に対して4〜20質量%であるのが好ましく、6〜15質量%であるのがより好ましい。
【0066】
〔脂肪酸金属塩〕
本発明のゴム組成物が含有する脂肪酸金属塩は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意の脂肪酸金属塩を用いることができ、以下に具体例を記載する脂肪酸亜鉛塩を用いるのが好ましい。
【0067】
上記脂肪酸金属塩の好適例である脂肪酸亜鉛塩としては、具体的には、例えば、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、リノール酸亜鉛等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明においては、上記脂肪酸金属塩の含有量は、上記シリカの含有量に対して2〜8質量%であり、4〜6質量%であるのがより好ましい。
【0069】
〔アルキルトリアルコキシシラン〕
本発明のゴム組成物が含有するアルキルトリアルコキシシランは、下記式(I)で表されるアルキルトリアルコキシシランである。
【0070】
【化6】
(式(I)中、R
11は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R
12はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表す。)
【0071】
ここで、R
11の炭素数1〜20のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
これらのうち、上記ゴム成分との相溶性の観点から、R
11の炭素数は、7以上であるのが好ましく、具体的には、オクチル基、ノニル基であるのがより好ましい。
【0072】
本発明のゴム組成物において、上記アルキルトリアルコキシシランの含有量は、上記シリカの含有量に対して0.1〜20質量%であり、1〜5質量%であることが好ましい。
【0073】
〔任意成分〕
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤、芳香族変性テルペン樹脂、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などの各種添加剤などが挙げられる。
これらのうち、後述する芳香族変性テルペン樹脂を含有することが好ましい。
【0074】
<芳香族変性テルペン樹脂>
本発明のゴム組成物は、ウェット性能がより優れる理由から、さらに芳香族変性テルペン樹脂を含有するのが好ましい。
芳香族変性テルペン樹脂の軟化点は特に制限されないが、100〜150℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。
ここで、軟化点は、JIS K7206:1999に準拠して測定されたビカット軟化点である。
本発明のゴム組成物において、上記芳香族変性テルペン樹脂を含有する場合の含有量は特に制限されないが、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0075】
〔タイヤ用ゴム組成物の調製方法〕
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明のゴム組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100〜160℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0076】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いて製造した空気入りタイヤである。なかでも、本発明のゴム組成物をキャップトレッドに配置した空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0077】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明のゴム組成物により形成されている。
【0078】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
〔変性共役ジエン系ゴムの調製〕
<変性共役ジエン系ゴム1(特定共役ジエン系ゴム)の調製>
窒素置換された100mLアンプル瓶に、シクロヘキサン(35g)、およびテトラメチルエチレンジアミン(1.4mmol)を添加し、さらに、n−ブチルリチウム(4.3mmol)を添加した。次いで、イソプレン(21.6g)、およびスチレン(3.1g)をゆっくりと添加し、50℃のアンプル瓶内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロックAを得た。この重合体ブロックAについて、重量平均分子量、分子量分布、芳香族ビニル単位含有量、イソプレン単位含有量、および1,4−結合含有量を測定した。これらの測定結果を第1表に示す。
次に、撹拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン(4000g)、1,3−ブタジエン(474.0g)、およびスチレン(126.0g)を仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロックAを全量加え、50℃で重合を開始した。重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、次いで、下記式(4)で表されるポリオルガノシロキサンAを、エポキシ基の含有量が1.42mmol(使用したn−ブチルリチウムの0.33倍モルに相当)となるように、20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、特定共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を特定共役ジエン系ゴム100質量部に対して25質量部添加した後、スチームストリッピング法により固形状のゴムを回収した。得られた固形状のゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、固形状の特定共役ジエン系ゴムを得た。
【0081】
【化7】
【0082】
上記式(4)中、X
1、X
4、R
1〜R
3およびR
5〜R
8はメチル基である。上記式(4)中、mは80、kは120である。上記式(4)中、X
2は下記式(5)で表される基である(ここで、*は結合位置を表す)。
【0083】
【化8】
【0084】
なお、得られた特定共役ジエン系ゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、3分岐以上のカップリング率、芳香族ビニル単位含有量、ビニル結合含有量、および、ムーニー粘度を測定した。測定結果を第2表に示す。測定方法は以下のとおりである。
【0085】
(重量平均分子量、分子量分布および3分岐以上のカップリング率)
重量平均分子量、分子量分布および3分岐以上のカップリング率(特定共役ジエン系ゴムに対する「3以上の共役ジエン系重合体鎖が結合している構造体」の割合(質量%))については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりである。
【0086】
・測定器:HLC−8020(東ソー社製)
・カラム:GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した
・検出器:示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
・溶離夜:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
【0087】
ここで、3分岐以上のカップリング率は、全溶出面積(s1)に対する、分子量の最も小さいピークが示すピークトップ分子量の2.8倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積(s2)の比(s2/s1)である。
【0088】
(芳香族ビニル単位含有量およびビニル結合含有量)
芳香族ビニル単位含有量およびビニル結合含有量については、
1H−NMRにより測定した。
【0089】
(ムーニー粘度)
ムーニー粘度(ML
1+4、100℃))については、JIS K6300−1:2013に準じて測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
<変性共役ジエン系ゴム2の製造>
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4533g、スチレン338.9g(3.254mol)、ブタジエン468.0g(8.652mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン0.189mL(1.271mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.061mL(7.945mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.281g(0.318mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、上記式(4)で表されるポリオルガノシロキサンAを、エポキシ基の含有量が1.00mmol(使用したn−ブチルリチウムの0.13倍モルに相当)となるように、20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌し、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。得られた溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を共役ジエン系ゴム100質量部に対して25質量部添加した後、スチームストリッピング法により固形状のゴムを回収した。得られた固形状のゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた共役ジエン系ゴムを変性共役ジエン系ゴム2とする。
【0093】
<タイヤ用ゴム組成物の調製>
下記第3表に示す成分を、下記第3表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第3表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
なお、第3表中、特定共役ジエン系ゴム(変性共役ジエン系ゴム1)および変性共役ジエン系ゴム2の質量部は、伸展油を除いたゴムの正味の量(単位:質量部)である。
また、以下の「実施例1」、「実施例2」および「実施例3」との記載はそれぞれ、「参考例1」、「参考例2」および「参考例3」と読み替えるものとする。
【0094】
<評価>
得られたタイヤ用ゴム組成物について、以下の評価を行った。
【0095】
(操縦安定性)
得られたタイヤ用ゴム組成物を用いてタイヤのキャップトレッドを成形し、これを組み込んだ195/R15サイズの試験タイヤを作製した。次いで、排気量2Lの試験車両に4輪とも同じ仕様の試験タイヤを装着し、乾燥した舗装路面上おけるグリップレベルと操舵性をフィーリング評価し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど操縦安定性に優れることを示す。
【0096】
(ウェット性能)
得られたタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。
作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。
結果を第3表に示す(第3表中の「ウェット性能」の欄)。結果は比較例1のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにウェット性能に優れる。
【0097】
(低転がり抵抗性)
温度0℃の条件で測定する代わりに、温度60℃の条件で測定した以外は上述したウェット性能と同様の手順にしたがって、tanδ(60℃)を測定した。
結果を第3表に示す(第3表中の「低転がり抵抗性」の欄)。結果は比較例1のtanδ(60℃)を100とする指数の逆数で表した。指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく、タイヤにしたときに低転がり抵抗性に優れる。
【0098】
【表3】
【0099】
第3表中、各成分の詳細は以下のとおりである。
・特定共役ジエン系ゴム(変性共役ジエン系ゴム1):上述のとおり製造された特定共役ジエン系ゴム(ゴム100質量部に対して油展オイル25質量を含む)
・変性共役ジエン系ゴム2:上述のとおり製造された変性共役ジエン系ゴム2(ゴム100質量部に対して油展オイル25質量部を含む)(芳香族ビニル単位含有量:42質量%、ビニル結合含有量:32質量%、Tg:−25℃、Mw:750,000(測定方法はいずれも上述のとおり)
・ブタジエンゴム:NIPOL BR 1220(日本ゼオン社製)
・シリカX:Zeosil 1165MP(CTAB吸着比表面積:159m
2/g、Solvay社製)
・シリカY:Ultrasil 9000GR(CTAB吸着比表面積:197m
2/g、Evonik社製)
・カーボンブラック:シーストKHP(東海カーボン社製)
・アルキルトリアルコキシシラン:オクチルトリエトキシシラン(KBE−3083、信越シリコーン社製)
・シランカップリング剤:Si69(エボニック・デグッサ社製)
・脂肪酸金属塩:HT207(ストラクトール社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%、鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤:SANTOCURE CBS(FLEXSYS社製)
・芳香族変性テルペン樹脂:YSレジン TO−125(軟化点:125±5℃、ヤスハラケミカル社製)
【0100】
第3表から分かるように、シリカの配合量が所定の範囲外である比較例2および3のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物よりも操縦安定性は良好であったが、ウェット性能または低転がり抵抗性が劣ることが分かった。
また、ガラス転移温度が−45℃よりも低い比較例4のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物よりも操縦安定性およびウェット性能が劣ることが分かった。
また、脂肪酸金属塩を配合せずに調製した比較例5のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物よりも操縦安定性は良好であったが、低転がり抵抗性が劣ることが分かった。
また、アルキルトリアルコキシシランを配合せずに調製した比較例6のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物よりも低転がり抵抗性が劣ることが分かった。
【0101】
これに対し、変性共役ジエン系ゴムを60質量%以上含有し、かつ、特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含有するジエン系ゴムとともに、シリカ、シランカップリング剤、脂肪酸金属塩およびアルキルトリアルコキシシランを所定量配合した実施例1〜4のゴム組成物は、いずれも、ウェット性能、低転がり抵抗性および操縦安定性が良好となることが分かった。