(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケーシングは、前記吹出口の前記下縁であって且つ前記第1姿勢をとった前記風向調整部材の前記下面の前記後端部に対向する位置に、前記風向調整部材の前記下面の形状に対応する後退部(72)が形成されている、
請求項1に記載の壁掛け式の空調室内機。
前記ケーシングは、前記吹出口の前記下縁であって且つ前記第1姿勢をとった前記風向調整部材の前記下面の前記後端部に対向する位置に、溝部(73)が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の壁掛け式の空調室内機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されている空調室内機では、吹出口から吹出される空気を下方に変更できるものの、風向調整部材の回動範囲が小さいことから風向調整部材を使った気流制御が制限されてしまい、快適な環境を提供する機能が十分ではない。
【0004】
本発明の課題は、壁掛け式の空調室内機において、気流制御の制限を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る壁掛け式の空調室内機は、設置側壁に後面部が固定され、調和空気を吹出す吹出口が後面部よりも前側に形成されているケーシングと、ケーシングの吹出口の下縁に設定されている回転中心に近い後端、回転中心から遠い前端、吹出口から吹出される吹出空気の風向を調整する上面及び上面に対して反対側にある下面を有し、下面の後端部に上に凹む窪み部が形成されている風向調整部材とを備え、風向調整部材は、吹出口よりも設置側壁の方向に向かう第1気流を生成するときには、上面が鉛直面に対して後方に回動して前端が後端よりも後方に位置する第1姿勢をとり、吹出口よりも前に向かう第2気流を生成するときには、上面が鉛直面に対して前方に回動して前端が後端よりも前側に位置する第2姿勢を取ることが可能に構成され、第1姿勢を取るときに窪み部に吹出口の下縁が入り込むように取り付けられている、ものである。
【0006】
この壁掛け式の空調室内機では、第1姿勢をとるときに風向調整部材の窪み部の窪んだところに吹出口の下縁が入り込むことから、回動動作の範囲を増やすことができる。
【0007】
本発明の第2観点に係る壁掛け式の空調室内機は、第1観点に係る空調室内機において、ケーシングは、吹出口の下縁であって且つ第1姿勢をとった風向調整部材の下面の後端部に対向する位置に、風向調整部材の下面の形状に対応する後退部が形成されている、ものである。
【0008】
この壁掛け式の空調室内機では、ケーシングの吹出口の下縁に設けられた後退部が風向調整部材の下面の形状に対応して設けられていることから、後退部が設けられていない場合に比べて風向調整部材の後側への回動範囲を大きくすることができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る壁掛け式の空調室内機は、第1観点又は第2観点に係る空調室内機において、ケーシングは、吹出口の下縁であって且つ第1姿勢をとった風向調整部材の下面の後端部に対向する位置に、溝部が形成されている、ものである。
【0010】
この壁掛け式の空調室内機では、ケーシングの吹出口の下縁に設けられた溝部が、風向調整部材とケーシングとの間の隙間に対向して形成されることから、風向調整部材とケーシングの隙間を流れる気流を攪拌することができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る壁掛け式の空調室内機は、第1観点に係る空調室内機において、風向調整部材及びケーシングは、第1姿勢を風向調整部材がとるときに互いに対向するそれぞれの箇所に、傾斜端面が形成されている、ものである。
【0012】
この壁掛け式の空調室内機では、風向調整部材の傾斜端面とケーシングの傾斜端面が、風向調整部材の第1姿勢のときに互いに対向することから、風向調整部材の後側への回動範囲を大きくすることができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る壁掛け式の空調室内機は、第1観点から第4観点のいずれかに係る空調室内機において、風向調整部材は、窪み部の側部にフランジを有し、ケーシングは、フランジを風向調整部材が上下方向に回動可能に軸支する、ものである。
【0014】
この壁掛け式の空調室内機では、風向調整部材の後端部の窪み部によって風向調整部材の後端部の強度が低下しているが、フランジを設けることにより風向調整部材が補強され、風向調整部材の後端部に窪み部を設けても風向調整部材の変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1観点に係る壁掛け式の空調室内機では、回動動作の範囲が増えることで、快適性の確保のための気流制御の制限を緩和することができる。また、風向調整部材の下面において窪み部が目立ち難く形成し易いことから、意匠性を良好に保つことができる。
【0016】
本発明の第2観点に係る壁掛け式の空調室内機では、風向調整部材の段差によって回動範囲が大きくなる分だけ気流制御の制限を緩和することができる。
【0017】
本発明の第3観点に係る壁掛け式の空調室内機では、溝部によって、風向調整部材とケーシングの隙間で結露が発生するのを抑制することができる。
【0018】
本発明の第4観点に係る壁掛け式の空調室内機では、風向調整部材及びケーシングの傾斜端面によって回動範囲が大きくなる分だけ気流制御の制限を緩和することができる。
【0019】
本発明の第5観点に係る壁掛け式の空調室内機では、風向調整部材の変形を抑制することにより、風向調整機能の低下を防止することができるとともに意匠性が悪くなるのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)空調室内機の構成
図1には、空調室内機10を前方右斜め下から見た外観が示されている。以下の説明における空調室内機10の上下、前後及び左右は、
図1の直交座標に示されている通りである。
図2には、空調室内機10の左右方向の略中央で左右方向に対して垂直な平面で切断した断面の主要な形状が示されている。この空調室内機10は、壁掛け式であり、後部が室内の設置側壁WLに取り付けられる。空調室内機10は、室内空間RSの冷房を行う冷房運転及び室内空間RSの暖房を行う暖房運転を行なうことができる。
【0022】
(2)詳細構成
図1及び
図2に示されているように、空調室内機10は、ケーシング11と、エアフィルタ12と、室内熱交換器13と、室内ファン14と、複数の垂直フラップ15と、第2補助フラップ30と、第1補助フラップ40と、風向調整部材50とを備えている。
【0023】
(2−1)ケーシング11
ケーシング11は、横方向(空調室内機10の左右方向(
図1の直交座標参照))に細長くかつ複数の開口を持つ箱形状を呈する。ケーシング11は、
図1及び
図2に示されているように、天面部11a、前面部11b、後面部11c、右側面部11d、左側面部11e及び底面部11fによって囲まれた立体空間を内部に有する。ケーシング11の天面部11a、前面部11b、右側面部11d、左側面部11e及び底面部11fは、化粧板20で覆われている。ケーシング11は、後面部11cにある背面板28によって設置側壁WLに取り付けられる。ケーシング11の立体空間内には、エアフィルタ12、室内熱交換器13、室内ファン14及び底フレーム16が収納されている。これらを立体空間内に収納するために、化粧板20は、前から後ろに向かって被せられる構成になっている。
【0024】
天面部11aは、ケーシング11の上端部に位置する。化粧板20の前面部11bは、上端が天面部11aにヒンジ(図示せず)で回動自在に支持されている前面板21で構成されている。この前面板21は、化粧板20の右側面部11dを構成する右側板22及び、化粧板20の左側面部11eを構成する左側板23から分離されている。
【0025】
背面板28は、ケーシング11の後面部11cを構成している。この背面板28が、室内の設置側壁WLに設置された取り付け板(図示せず)にビス止め等によって取り付けられることによって、空調室内機10が設置側壁WLに設置される。
【0026】
ケーシング11の天面部11aには、天面吸込口25が設けられている。室内ファン14が駆動することによって、この天面吸込口25近傍の室内空気が、この天面吸込口25からケーシング11の内部へと取り込まれる。天面吸込口25から取り込まれた室内空気は、室内熱交換器13を通過して室内ファン14へと送られる。
【0027】
ケーシング11の底面部11fには、底面吸込口26が形成されている。また、底面部11fには、吹出口27が形成されている。底面吸込口26は、吹出口27よりも後方に設けられている。底フレーム16の吸込流路16aによって、底面吸込口26とケーシング11内のエアフィルタ12の上部にある空間とが繋がっている。従って、室内ファン14の駆動によって、底面吸込口26近傍の室内空気が、底面吸込口26から吸込流路16aを通って室内熱交換器13に送られる。吸込流路16aは、底面吸込口26から底フレーム16の流路上面16c及び流路下面16dに沿って形成されている。吸込流路16aと後述するスクロール空気吹出流路16bとは、流路下面16dを間に挟んで互いに隣接している。底面吸込口26には、底面吸込口26の開閉を行うための開閉板17が設けられている。
【0028】
空調室内機10において、底面吸込口26よりも前に設けられている吹出口27は、スクロール空気吹出流路16bによってケーシング11の内部と繋がっている。天面吸込口25及び底面吸込口26から吸い込まれ室内空気は、室内熱交換器13にて熱交換された後、スクロール空気吹出流路16bを通って吹出口27から室内へと吹き出される。
【0029】
(2−2)風向調整のための構成
吹出口27は、左右に長く延びている上縁27a及び下縁27bを有している。吹出口27の上縁27aの側には、左右に長く延びている平板状の第2補助フラップ30と、左右に長く延びている第1補助フラップ40とが設けられている。また、吹出口27の下縁27bの側には、左右に長く延びている風向調整部材50が設けられている。第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、それぞれ第2補助フラップ上面31及び第2補助フラップ下面32、第1補助フラップ上面41及び第1補助フラップ下面42、並びに風向調整部材上面51及び風向調整部材下面52を有している。第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、中空構造になっており、第1補助フラップ40及び風向調整部材50の重量が軽減されている。
【0030】
第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、それぞれ、ケーシング11に回動可能に取り付けられている。第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、それぞれに対して設けられているフラップ駆動用モータ(図示せず)によってそれぞれ独立して、左右に延びるそれぞれの回転中心35,45,58(
図6参照)の周りで回動することができるように構成されている。
図3には、風向調整部材50を右斜め上から見た図が示されている。この風向調整部材50の被支持部53を結ぶ直線が、風向調整部材50の回転中心58になる。また、これらフラップ駆動用モータは、空調室内機10内に設けられている制御装置(図示せず)によって制御される。そして、これら第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、単独で又は互いに協力して、吹出口27から吹出される空気の風向きを上下に調整する。また、風向調整部材50は、吹出口27から空気を吹出す際に吹出口27を開き、運転停止時に吹出口27を閉じる機能を有している。さらに、第1補助フラップ40は、運転停止時には、ケーシング11に近づいてケーシング11の一部のような姿勢をとることができるように構成されている。運転停止時には、第1補助フラップ下面42及び風向調整部材下面52は、ケーシング11の化粧板20に同化して空調室内機10の意匠を構成する。
【0031】
吹出口27における第2補助フラップ30の奥には、左右方向に対して交差する平面を持つ複数の垂直フラップ15が設けられている。フラップ駆動用モータ(図示せず)によって、上下に延びる回転中心の周りで垂直フラップ15が左右に回動することができるように構成されている。垂直フラップ15を駆動するフラップ駆動用モータも、空調室内機10内に設けられている前述の制御装置によって制御される。そして、これら複数の垂直フラップ15は、吹出口27から吹出される空気の風向きを左右に調整する。
【0032】
(2−3)室内熱交換器13
室内熱交換器13は、複数のフィンと、複数のフィンを貫く複数の伝熱管とで構成されている。室内熱交換器13は、ケーシング11内部において、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、空調室内機10の運転状態に応じて蒸発器または凝縮器として機能し、伝熱管の中を流れる冷媒と室内熱交換器13を通過する空気との間で熱交換を行わせる。
【0033】
室内熱交換器13は、
図2に示されているように、側面視において両端が下方に向いて屈曲する略逆V字型の形状を有している。そして、室内熱交換器13は、上から室内ファン14を囲い込むように配置されている。
【0034】
(2−4)室内ファン14
室内ファン14は、
図2に示されているように、ケーシング11の内部の略中央部分に位置している。この室内ファン14は、空調室内機10の長手方向(左右方向)に細長い略円筒形状をしたクロスフローファンである。室内ファン14が回転駆動されることによって、室内空気が天面吸込口25及び底面吸込口26それぞれから吸い込まれてエアフィルタ12を通過した後に、室内熱交換器13を通過することで生成された調和空気が吹出口27から室内へと吹出される。
【0035】
(2−5)底フレーム16
底フレーム16は、上述のエアフィルタ12と室内熱交換器13と室内ファン14を支える役割を果たす。また、底フレーム16によって、吸込流路16a及びスクロール空気吹出流路16bが形成される。スクロール空気吹出流路16bは、室内ファン14の直下から前方斜め下に向かって延びている。このスクロール空気吹出流路16bは、流路上面16cと流路下面16dとの間に挟まれた空間である。
【0036】
図4には、
図2から第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50が取り除かれた状態が示されている。この
図4を用いて、スクロール空気吹出流路16bの形状について説明する。流路下面16dは、吹出口27の下縁27bから上方に延びており、室内ファン14の後部斜め上まで覆っている。この流路下面16dは、後方に膨らむように滑らかに湾曲している。左右方向に対して垂直な平面で流路下面16dを切断したときの流路下面16dの断面形状が渦巻き形状になっている。言い換えれば、このような流路下面16dの断面形状は、旋回するにつれて室内ファン14の回転中心から遠ざかる曲線である。
【0037】
吹出口27の上縁27aと流路上面16cの上面前端16fとの間には、左右に長く延びる凹み16gが形成されている。この凹み16gが形成されることにより、流路上面16cの上面前端16fの前に段差が形成されている。この凹み16gには、第2補助フラップ30を収納することができる。凹み16gに第2補助フラップ30が収納された状態では、第2補助フラップ下面32の後端部が流路上面16cと面一になるように構成されている。流路上面16cは、室内ファン14の下方に向かって、上面前端16fから後方斜め上にほぼ真っ直ぐに延びている。
【0038】
(2−6)エアフィルタ12
エアフィルタ12は、天面吸込口25及び底面吸込口26から吸い込まれた室内空気中の塵埃を捕集するためのものである。エアフィルタ12がケーシング11に装着された状態で、エアフィルタ12は、ケーシング11の天面部11aと室内熱交換器13との間に位置する。このエアフィルタ12が、室内熱交換器13の表面に室内空気中の塵埃が付着することを防いでいる。エアフィルタ12は、メンテナンスのためにケーシング11に取り付けたり、ケーシング11から取り出したりすることができるようになっている。
【0039】
(3)上下方向の風向調整
(3−1)第1風向
図1及び
図2に示されている第2補助フラップ30と第1補助フラップ40と風向調整部材50の姿勢は、第1風向で空気を吹出すときにとられる。第1風向は、室内空間RSの奥まで気流を循環させるときの風向である。室内空間RSの奥まで気流を循環させるためには、吹出口27で拡散させずに、速い風速を持つ層流を作り出すことが好ましい。このような層流を作り出すには、スクロール空気吹出流路16bを延長することが好ましい。しかし、スクロール空気吹出流路16bを延ばしたり縮めたりすることが難しいので、第2補助フラップ30と風向調整部材50の姿勢により、スクロール空気吹出流路16bを延長したのと同じ状況を擬似的につくっているのが
図1及び
図2の状態である。
【0040】
第1風向では、第2補助フラップ下面32がスクロール空気吹出流路16bの流路上面16cを前側に延長する姿勢を、第2補助フラップ30がとっている。また、この第1風向では、風向調整部材上面51がスクロール空気吹出流路16bの流路下面16dを前側に延長する姿勢を、風向調整部材50がとっている。
【0041】
図4に示されているように、流路上面16cを前側に延長すると、流路上面16cとほぼ平行に上面前端16fから始まる第1仮想面PL1が形成される。この場合、後方向及び上下方向に平行な断面で第1仮想面PL1を切断してできる第1仮想線が、スクロール空気吹出流路16bの流路上面16cの先端部の接線に一致することが好ましい。また、流路下面16dを前側に延長すると、流路下面16dの下面前端16hとほぼ平行に下面前端16hから始まる第2仮想面PL2が形成される。この場合、前後方向及び上下方向に平行な断面で第2仮想面PL2を切断してできる第2仮想線がスクロール空気吹出流路16bの流路下面16dの先端部の接線に一致することが好ましい。
【0042】
なお、第2補助フラップ下面32が多少湾曲する場合もあるが、その場合には、第2補助フラップ下面32の主面の後端部が第1仮想面PL1に一致することをもって、第2補助フラップ下面32が第1仮想面PL1に一致しているとみなす。また、第2補助フラップ下面32が多少湾曲する場合もあるが、その場合には、風向調整部材上面51の主面の後端部が第2仮想面PL2に一致することをもって、風向調整部材上面51が第2仮想面PL2に一致しているとみなす。なお、ここで主面とは、風向調整には寄与しない部分を除く、専ら風向調整に用いられる面をいう。例えば、凹部54は、ケーシング11にある出っ張りに対応して設けられたものである。この凹部54の部分は、風向調整部材50で吹出口27を閉じる際にケーシング11の出っ張りが邪魔にならないようにするための構造であり、風向調整にはあまり寄与していないことから、主面には含まれない。
【0043】
第2補助フラップ30は、回動するために、流路上面16cの上面前端16fから離して取り付けられている。同様の理由から、風向調整部材50も流路下面16dの下面前端16hから離して取り付けられている。しかし、第2補助フラップ30と流路上面16c及び風向調整部材50と流路下面16dが離れ過ぎていると、第2補助フラップ下面32及び風向調整部材50によるスクロール空気吹出流路16bの十分な延長効果が得られない。そこで、第1風向に設定されている状態において、第2補助フラップ30が回動可能である範囲において第2補助フラップ30の後端34から流路上面16cの上面前端16fまでの距離が5mm以下になるように構成され、風向調整部材50の後端56から流路下面16dの下面前端16hまでの距離L1が5mm以下になるように構成されている(
図5参照)
第1補助フラップ40は、第2補助フラップ30の下流側に設けられていることから、延長されたスクロール空気吹出流路16bの吹出口である第2補助フラップ30の前端33と風向調整部材50の前端55とで囲まれた部分から吹出される空気の風向きを上下に微調整する。
図2に示されている状態では、第1補助フラップ40が、吹出される空気に対して抵抗ができるだけ低くなる姿勢をとりながら、水平よりも少し下を向いたスクロール空気吹出流路16bから吹出される空気の風向きを少し上に持ち上げる姿勢をとっている。
【0044】
(3−2)第2風向
図6に示されている第2風向は、空調室内機10の後面部11cが取り付けられている壁に沿う気流をつくりだすときの風向である。第2風向で空気を吹出すように設定された第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、吹出口27よりも後面部11cの方向に向かう気流を生成する。このとき、風向調整部材50は、風向調整部材上面51が前後方向に対して垂直な鉛直面よりも後方に回動して、前端55が後端56よりも後方に位置している。同様に、第1補助フラップ40も、第1補助フラップ上面41が前後方向に対して垂直な鉛直面よりも後方に回動して、前端43が後端44よりも後方に位置している。同様に、第2補助フラップ30も、第2補助フラップ上面31が前後方向に対して垂直な鉛直面よりも後方に回動して、前端33が後端34よりも後方に位置している。
【0045】
第2風向のときの第2補助フラップ30と第1補助フラップ40は、正面視において、第2補助フラップ30と第1補助フラップ40が重なる姿勢をとることで、第2補助フラップ30と第1補助フラップ40の間の隙間から前方に空気が流れるのを防いでいる。
【0046】
第2風向として、
図8(a)及び
図8(b)に示されている姿勢を、第2補助フラップ30と第1補助フラップ40がとることもできる。
図8(a)に示されている第2補助フラップ30と第1補助フラップ40は、第1補助フラップ下面42に第2補助フラップ上面31が接触する姿勢をとっている。また、
図8(b)に示されている第2補助フラップ30と第1補助フラップ40は、第2補助フラップ30の前端33が第1補助フラップ40に接近して、第2補助フラップ下面32と第1補助フラップ下面42が一列に並んで続いている姿勢をとっている。
【0047】
(3−3)第3風向
図9(a)に示されている第3風向は、最大風量で空気を吹出すときの風向である。第3風向で空気を吹出すように設定されたとき、第2補助フラップ30は、流路上面16cの前にある凹み16gに収納されている。第3風向では、第1補助フラップ40の前端43が第1風向のときよりも少し上に移動して、第1補助フラップ40が吹出口27から吹出される気流を上に広げる姿勢をとっている。第3風向では、風向調整部材50の前端55が第1風向のときよりも少し下に移動して、風向調整部材50が吹出口27から吹出される気流を下に広げる姿勢をとっている。つまり、第1補助フラップ40及び風向調整部材50は、前方にいくほど広がって、最大風量で吹出された空気を室内空間RSに送り込みやすい姿勢をとっている。
【0048】
(3−4)第4風向
図9(b)に示されている第4風向は、前方下向きに空気を吹出すときの風向きである。第4風向で空気を吹出すように設定されたとき、第2補助フラップ30は、流路上面16cの前にある凹み16gに収納されている。第4風向では、第1補助フラップ40の前端43が第1風向のときよりも少し下に移動して、第1補助フラップ40が吹出口27から吹出される気流を下に押下げる姿勢をとっている。つまり、このときの第1補助フラップ下面42は、前方に行くほど下に下がる割合が第1仮想面PL1よりも大きく、第1仮想面PL1よりも前下がりになっている。第4風向では、風向調整部材50の前端55が第1風向のときよりも少し下に移動して、風向調整部材50が吹出口27から吹出される気流を下に誘導する姿勢をとっている。つまり、このときの風向調整部材上面51は、前方に行くほど下に下がる割合が第2仮想面PL2よりも大きく、第2仮想面PL2よりも前下がりになっている。
【0049】
(3−5)第5風向
図9(c)に示されている第5風向は、冷房時に、第2補助フラップ30を使って前方下向きに空気を吹出すときの風向きの一例である。第4風向で空気を吹出すように設定されたとき、第2補助フラップ30は、前端33が下に移動するように回動して凹み16gから出て前下がりの姿勢をとっている。このとき、第2補助フラップ下面32は、流路上面16cと第1補助フラップ下面42とを結ぶ面に近い位置にあって、流路上面16cから第1補助フラップ下面42に向かう気流がスムーズになるように、吹出される空気を中継する。
【0050】
第5風向では、第1補助フラップ40の前端43が第1風向のときよりも少し下に移動しているものの前端43が第4風向のときよりも少し上に移動した状態であり、第1補助フラップ40が吹出口27から吹出される気流を少し下に押下げる姿勢をとっている。また、第5風向では、風向調整部材50の姿勢が第4風向と同じである。このような姿勢を第2補助フラップ30、第1補助フラップ40及び風向調整部材50がとることで、吹出された空気を第4風向に比べて前方の遠い場所にまで運ぶことができる。
【0051】
(3−6)第1補助フラップ40、第2補助フラップ30及び風向調整部材50の移動
図6から
図8(b)に示されている第2補助フラップ30の前端33の位置は、第1補助フラップ40の回転中心45よりも下にある状態である。それに対して、凹み16gに収納されているとき第2補助フラップ30の位置は、第1補助フラップ40の回転中心45よりも上にある状態である。
図6から
図8(b)に示されている第2補助フラップ30の位置に第2補助フラップ30が回動してくるには、第2補助フラップ30が回動する軌道上にある
図6から
図8(b)の位置にある第1補助フラップ40が邪魔になる。つまり、凹み16gに第2補助フラップ30が収納されているときに、
図6から
図8(b)に示されている位置に第1補助フラップ40があったのでは、第1補助フラップ40に当たってしまって第2補助フラップ30が
図6から
図8(b)に示されている位置にまで回動することができない。そこで、例えば、第1補助フラップ40がケーシング11に最も近くなるように前方に回動した状態、言い換えるとケーシング11に第1補助フラップ40が沿う状態で、先に凹み16gに収納されている第2補助フラップ30を
図6から
図8(b)に示されている位置まで後方に回動させる。続いて、第1補助フラップ40を
図6から
図8(b)に示されている位置まで後方に回動させる。このように第2補助フラップ30と第1補助フラップ40が互いに干渉を避ける回動動作を行うことにより、第2補助フラップ30の前端33が第1補助フラップ40の回転中心45よりも上にある状態と下にある状態とを入れ換えることができる。
【0052】
(4)風向調整部材の構造
図10(a)には、
図3のI−I線で切断した風向調整部材50の端面が示されている。
図10(b)には、右側から見た風向調整部材50の側面が示されている。
図11には、風向調整部材50の中央部分で破断して右上方から見た状態が示されている。風向調整部材50は、風向調整部材上面51を構成する板状部材と風向調整部材下面52を構成する板状部材が融着された中空構造を有している。中空構造であるために、風向調整部材上面51及び風向調整部材下面52で応力の集中が起きると、風向調整部材50の変形の原因になる。風向調整部材50が変形すると、例えば、運転停止時に風向調整部材50とケーシング11の間に大きな隙間ができて見栄えが悪くなる。
【0053】
このような応力の集中を防ぐために、風向調整部材50の中央軸支部分の凹部60に被支持部53が設けられている。
図12に示されているように、ケーシング11の吹出口27の上縁27aと下縁27bの間に架け渡された支持部71によって中央軸支部分の被支持部53が回動可能に支持されている。また、風向調整部材50の右端部61及び左端部62(
図3参照)には、風向調整部材50の厚みよりも幅のあるフランジ59が取り付けられている。そして、これらフランジ59に被支持部53が設けられている。これらフランジ59の被支持部53は、ケーシング11に設けられている支持部(図示せず)に回動可能に嵌めこまれる。
【0054】
次に、風向調整部材50に設けられている窪み部57について説明する前に、風向調整部材50の姿勢と気流の関係について説明する。空調室内機10は、
図13(a)に示されているように、例えば第2風向のときに設置側壁WLに沿う気流を生じさせるが、このような気流を第1気流CL1と呼ぶ。第1気流CL1が生じているときには、風向調整部材上面51が鉛直面に対して後方に回動して、風向調整部材50の前端55が後端56よりも後方に位置した姿勢をとるが、このような姿勢を第1姿勢と呼ぶ。
【0055】
また、
図13(b)に示されているように、例えば第1風向、第3風向又は第5風向のときに、吹出口27よりも前に向かう気流を生じさせるが、このような気流を第2気流CL2と呼ぶ。このような第2気流CL2が生じているとき、風向調整部材50は、風向調整部材上面51が鉛直面に対して前方に回動して、風向調整部材50の前端55が後端56よりも前側に位置した姿勢をとるが、このような姿勢を第2姿勢と呼ぶ。
【0056】
図14には、風向調整部材50が第1姿勢をとっている状態の吹出口27の下縁27bの周囲が拡大して示されている。窪み部57は、風向調整部材下面52の段差で形成されている。左右方向に対して垂直な面で風向調整部材50を切断した断面形状において、風向調整部材下面52の前側が下に凸の曲線を描くのに対し、後側が上に凸の曲線を描いている。このような風向調整部材下面52の構造により、風向調整部材下面52の上に凸の曲線を描く後側が上に窪んで段差を形成しており、この上に凹んだ段差部分が窪み部57である。
【0057】
第1姿勢をとっている第2風向のときに、風向調整部材下面52に形成されている窪み部57に吹出口27の下縁27bが入り込むように、風向調整部材50が取り付けられている。従って、風向調整部材下面52に窪み部57がない場合に比べて、窪み部57に下縁27bが入り込む分だけ、風向調整部材50の前端55をより後に移動させることができる。その結果、窪み部57がない場合に比べて窪み部57があることにより、より高い位置から設置側壁WLに気流を沿わせることができる。
【0058】
(5)吹出口27の下縁27bの構造
図14に示されているように、下縁27bには、後方に後退した後退部72が形成され、後方に凹んだ溝部73が形成されている。下縁27bを真っ直ぐ鉛直に切り落としたような形状にしたり、下縁27bの形状を下方に行くに従って前方に突き出たように形成したりする場合に比べて、後退部72が形成されることで、風向調整部材50の前端55をより後方に移動させることができる。言い換えれば、風向調整部材上面51が鉛直面に対して後方に回動した姿勢をとることができるということである。その結果、第2風向において、風向調整部材50が、後退部72が形成されない場合に比べて、より高い位置から設置側壁WLに気流を沿わせる第1姿勢をとることができる。
【0059】
第1姿勢をとったときに、下縁27bと風向調整部材下面52との間には、隙間ができる。この隙間に冷風が流れると、環境条件によっては、下縁27b及び風向調整部材50に結露が生じることがある。溝部73は、この隙間に生じる気流を乱す役割を果たす。隙間に生じる気流が乱されて空気がかき混ぜられることにより、結露が生じ難くなる。
【0060】
(6)変形例
(6−1)変形例A
上記実施形態では、風向調整部材下面52に窪み部57が段差で形成されている場合について説明したが、
図15及び
図16に示されている風向調整部材50Aの傾斜端面57Aのように、窪み部を傾斜端面57Aで形成することもできる。左右方向に対して垂直な面で風向調整部材50Aを切断した断面形状において、風向調整部材下面52Aの前側が下に凸の緩やかな曲線を描くのに対し、後側が傾斜の大きな直線を描いている。このような風向調整部材下面52Aの構造によって、風向調整部材下面52Aの後側に窪み部が傾斜端面57Aにより形成されている。
【0061】
風向調整部材50Aが第1姿勢をとるときに、この窪み部の傾斜端面57Aに対向する吹出口27の下縁27bにも傾斜端面74が形成されている。窪み部の傾斜端面57Aと下縁27bの傾斜端面74とは、風向調整部材50Aが後方に回動して前端55が最大限後方に移動したときに、互いに平行になるように構成されることが好ましい。なお、この下縁27bの傾斜端面には、上記実施形態で説明した溝部73が形成されてもよい。
【0062】
(7)特徴
(7−1)
本実施形態の壁掛け式の空調室内機10によれば、風向調整部材50,50Aが第1姿勢をとるときに風向調整部材50,50Aの窪み部57,57Aの窪んだところに吹出口27の下縁27bが入り込む。例えば、
図10及び
図16に示されている二点鎖線と風向調整部材下面52,52Aとで囲まれた空間が窪み部57,57Aの窪んだところである。窪み部57,57Aの窪んだところに下縁27bが入り込むことにより、回動動作の範囲を増やすことができることから、快適性の確保のための気流制御の制限を緩和することができる。また、空調室内機10では、風向調整部材下面52,52Aにおいて窪み部57,57Aが目立ち難く形成されているので、意匠性を良好に保つことができている。なお、二点鎖線で示された平面は、例えば、窪み部57,57Aの前後の平面を延長して形成されている。
【0063】
(7−2)
図14に示されているように、空調室内機10のケーシング11は、吹出口27の下縁27bであって且つ第1姿勢をとった風向調整部材50の風向調整部材下面52の後端部に対向する位置に、風向調整部材下面52の形状に対応する後退部72が形成されている。この後退部72が風向調整部材下面52の形状に対応して設けられていることから、後退部72が設けられていない場合に比べて風向調整部材50の後側への回動範囲を大きくすることができる。その結果、回動範囲が大きくなる分だけ空調室内機10の気流制御の制限を緩和することができる。
【0064】
(7−3)
図14に示されているように、ケーシング11の吹出口27の下縁27bに設けられた溝部73が、風向調整部材50とケーシング11との間の隙間に対向して形成されている。その結果、風向調整部材50とケーシング11の隙間を流れる気流を攪拌することができ、溝部73によって、風向調整部材50とケーシング11との間にできる隙間で結露が発生するのを抑制することができる。
【0065】
(7−4)
図15及び
図16に示されているように、風向調整部材50Aの窪み部の傾斜端面57Aとケーシング11の傾斜端面74が、風向調整部材50Aの第1姿勢のときに互いに対向することから、風向調整部材50Aの後側への回動範囲を大きくすることができる。風向調整部材50及びケーシング11のこれら傾斜端面によって回動範囲が大きくなる分だけ空調室内機10の気流制御の制限を緩和することができる。
【0066】
(7−5)
風向調整部材50に窪み部57を設けない場合に比べて、風向調整部材50の後端部の窪み部57によって風向調整部材50の後端部の強度が低下している。窪み部57の側部にフランジ59を設けることにより、フランジ59によって風向調整部材50が補強され、風向調整部材50の後端部に窪み部57を設けても風向調整部材50の変形を抑制することができる。フランジ59によって風向調整部材50が補強されることにより、風向調整部材50の変形による風向調整機能の低下を防止することができるとともに風向調整部材50の変形によって意匠性が悪くなるのを防止することができる。
【解決手段】風向調整部材50は、風向調整部材下面52の後端部に上に凹む窪み部57が形成されている。風向調整部材50は、吹出口27よりも設置側壁の方向に向かう第1気流を生成するときには、上面が鉛直面に対して後方に回動して前端が後端56よりも後方に位置する第1姿勢をとる。風向調整部材50が、第1姿勢を取るときに窪み部57に吹出口27の下縁27bが入り込むように取り付けられている。