(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モールド金型の少なくとも一方の金型クランプ面にワークが吸着保持され、ワークの外形より大きなキャビティ凹部が形成されており、クランプした前記モールド金型内で前記ワークの一方の面を樹脂封止する樹脂封止方法であって、
型開きした前記モールド金型の少なくともいずれか一方の金型クランプ面を覆う第1リリースフィルムを吸着保持する工程と、
前記第1リリースフィルムが吸着保持された後で、当該第1リリースフィルムに孔開け治具を用いてワーク吸着孔を孔開けする孔開け工程と、
前記ワークをモールド金型に搬入して前記一方の金型クランプ面に設けられたワーク載置面に前記ワーク吸着孔を介して前記ワークの他方の面を吸着保持すると共に、前記ワークを樹脂封止するためのモールド樹脂を金型内に供給する工程と、
前記モールド金型を型閉じしてキャビティ凹部内に収容された前記ワークを前記モールド樹脂を介してクランプして加圧加熱する工程と、を含むことを特徴とする樹脂封止方法。
前記一方の金型クランプ面にワーク吸着孔が設けられた第1リリースフィルムが吸着保持され、キャビティ凹部を含む他方の金型クランプ面に第2リリースフィルムが吸着保持される工程を有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の樹脂封止方法。
モールド金型の少なくとも一方の金型クランプ面にワークが吸着保持され、ワークの外形より大きなキャビティ凹部が形成されており、クランプした前記モールド金型内で前記ワークの一方の面を樹脂封止する樹脂封止装置であって、
少なくともいずれか一方の金型クランプ面にフィルム吸着孔が穿孔され当該フィルム吸着孔とは別途形成されたワーク吸引孔に、ワーク吸着孔が穿孔されたリリースフィルムの当該ワーク吸着孔が連通するように吸着保持されるとともに、モールド樹脂が充填される前記キャビティ凹部が形成された前記モールド金型と、
前記ワークを前記モールド金型に搬入して前記リリースフィルムの前記ワーク吸着孔を通じて前記ワークの他方の面を前記一方の金型クランプ面に吸着保持させ、成形後の成形品をモールド金型より搬出するワーク搬入・搬出手段と、
前記モールド金型を型開きして前記成形品に貼り付いた前記リリースフィルムを当該成形品から剥離させる剥離手段と、を備え、
前記一方の金型のワーク載置面には、前記ワークの外周をガイドすることで位置決めするガイド部材が前記ワーク載置面より進退動可能に設けられていることを特徴とする樹脂封止装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る樹脂封止装置及び樹脂封止方法の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。本実施例では、樹脂封止装置として圧縮成形装置を例示して説明するものとする。また、ワークとしては、半導体ウエハを例示して説明するものとする。
【0020】
先ず、樹脂封止装置(圧縮成形装置)の概略構成について
図1乃至
図3を参照して説明する。以下では、モールド金型をクランプしてワークの外周(面)を含んで樹脂封止する圧縮成形装置の構成について説明する。
図1において、モールド金型1の下型2の下型クランプ面にワークWが吸着保持され、上型3の上型クランプ面にワークWの外形より大きなキャビティ凹部4が形成されている。本実施例では、下型2が可動プラテンに取り付けられた可動型、上型3が固定プラテンに取り付けられた固定型として説明する。樹脂封止装置の開閉機構は
図2に示すように下型2の傾斜(換言すれば、下型2と上型3との平行度)を調整可能に構成されることでワークWとして大型の半導体ウエハを使用する場合であっても均一な成形厚で成形が可能となる。
【0021】
具体的には、
図2に示すように、本実施の形態の樹脂封止装置100は、基盤101と可動プラテン102との間にボールねじ106を備えた複数組(例えば4組)の加圧手段を備えたプレス部を有する。このプレス部は、基盤101の四隅に立設された複数本(例えば4本)のタイバー103を有している。タイバー103の上端には固定プラテン104が固定されている。このタイバー103には可動プラテン102が摺動自在に取り付けて形成されている。また、タイバー103には、圧力センサ103a(圧力検知手段)が取り付けられている。圧力センサ103aは樹脂モールド動作(型開閉動作)の際にタイバー103に作用する圧力を検知する。圧力センサ103aの出力は金型クランプ時に圧力差が生じた際に加圧手段の圧力を調節させる等の圧力制御をするために用いられる。
【0022】
固定プラテン104には上型3が取り付けられている。上型3は、製造するパッケージによって任意に取り替え可能に構成された上型チェイス111と、上型チェイス111を収容可能な上型ベース13とを備えている。上型チェイス111の表面には、金型ID111aが外部から読取り可能に設けられている。上型ベース13には、ID読取部13aが設けられている。ID読取部13aは上型チェイス111の金型ID111aを読取って制御部120に出力する。一方、可動プラテン102には下型2が上型3と対向するように取り付けられている。下型2は、製造するパッケージによって任意に取り替え可能に構成された下型チェイス110と、下型チェイス110を収容可能な下型ベース5とを備えている。下型チェイス110の表面には、金型ID110aが外部から読取り可能に設けられている。下型ベース5には、上型ベース13と同様のID読取部5aが設けられている。ID読取部5aは下型チェイス110の金型ID110aを読取って制御部120に出力する。
【0023】
ボールねじ106は、タイバー103の軸線方向と平行に軸線の回りに回動可能に基盤101に立設されている。ボールねじ106は、4本のタイバー103を頂点とする矩形領域における対角線上にこの矩形形状と相似形をなす頂点位置に各々配置されている。これらのボールねじ106は、その上部側で、可動プラテン102の下面に取り付けられたナット部107に各々螺合している。また、各ボールねじ106が制御部120の制御下でサーボモータ108によって各々正逆回転駆動されることで、可動プラテン102の昇降と傾斜調整が可能となっている。すなわち、ボールねじ106、ナット部107及びサーボモータ108は、固定プラテン104に対する可動プラテン102の傾斜を調整しながら可動プラテン102を固定プラテン104に向けて加圧する加圧手段を構成する。なお、可動プラテン102の昇降にサーボモータ108を用いているため、可動プラテン102の昇降速度を任意に設定可能となっている。このため、例えば金型クランプ時において速度調整することで金型内で押し広げられる樹脂のフローフロントの移動速度を一定にしたり、樹脂の硬化状態に応じて速度を調整したりすることも可能となっている。
【0024】
例えば、所定の金型の組合せを最初に使用するときには、まず、下型チェイス110及び上型チェイス111を下型ベース5及び上型ベース13にそれぞれセットすることで、ID読取部5a,13aにより金型ID110a,111aが読み取られて制御部120に出力される。この際に、テスト用のワークWを封止する封止テストを行って、封止済みのワークWにおける厚みを任意箇所で測定し成形厚の補正量(成形量オフセット)を算出する。なお、このような1つのワークWにおける部位ごとの厚みのばらつきは金型自体の厚みや可動プラテン102の厚みにより異なるため、金型の組合せ毎に補正する必要がある。
【0025】
次いで、制御部120は、補正量が入力部121から入力されると、成形厚の補正量に基づいて、ボールねじ106の駆動量の補正値(ボールねじ補正値)を算出して記憶部122に記憶させる。具体的には、記憶部122には、各ボールねじ106を所定量ずつ予め駆動させることで成形厚を均一にさせるために要する各ボールねじ106の駆動量(すなわち補正値)が金型ID110a,111aに紐付けして記憶される。この際、ボールねじ補正値は成形厚の補正量及びワークWの大きさに基づいて制御部120で算出される。例えば、ボールねじ106の駆動量により可動プラテン102の傾斜を調整するような構成であるため、ボールねじ106の補正値が同一であっても、ワークWの外形寸法(大きさ)に比例してワークWの成形厚が補正される量も大きくなる。このため、ワークWの成形厚の補正量とボールねじ補正値との関連式をワークWの外形寸法毎に用意して算出することで簡易な構成で確実に補正が可能となる。続いて、制御部120がボールねじ補正値に基づいて各ボールねじ106を駆動することで、上型3に対する下型2の平行度が補正されて1個のワークW内における成形厚の誤差を極めて小さくすることができる。これにより、2つ目以降のワークWの成形においては、各ボールねじ106を均一に駆動させて型開閉することで成形厚を均一にすることができる。また、ワークWのクランプ前に各ボールねじ106を補正値に応じて予め駆動しておくことで、クランプしながら成形厚を調整する必要はなく制御を簡素化することができる。また、型締め過程におけるフラッシュばりの発生やワークWの破損も防止可能となる。
【0026】
また、所定の金型の組合せを樹脂封止装置100で再度使用するときには、ボールねじ補正値を記憶部122から読み込んで使用することができるため、設定を簡易化して作業効率を向上させることもできる。すなわち、金型の2回目以降の使用の際には、上型チェイス111及び下型チェイス110をセットすることで出力される金型ID110a,111aに基づき、その金型ID110a,111aに紐付けされたボールねじ補正値を記憶部122から読み出して使用することができる。これにより、読み出したボールねじ補正値を用いて各ボールねじ106を補正値に応じて駆動することができるため、ボールねじ補正値の設定のための工程を省いて、金型セット時の設定作業を簡易化して作業効率を向上させると共に作業ミスの発生も防止することができる。
【0027】
なお、ボールねじ補正値は下型チェイス110及び上型チェイス111の組合せ毎に記憶することにより交換頻度の多いチェイス交換を簡易化できるが、上型ベース13及び下型ベース5を含む下型2及び上型3の組合せに対して設定することもできる。また、下型チェイス110及び上型チェイス111の表面に読み取り可能に配置された金型ID110a,111aを、ID読取部5a,13aにより読み込む方式とすることで、ボールねじ補正値の再設定工程のために入力操作を省いて入力ミスを防止することができるが、設定した金型の組合せに応じて入力部121からボールねじ補正値を入力することも可能である。
【0028】
次に、モールド金型1の詳細な構成について
図1乃至
図3を参照して説明する。
下型2には、下型ベース5に固定された下型ブロック6とその周囲に下型コイルばね7を介して下型クランパ8がフローティング支持されている。下型クランパ8の下型ブロック6との摺動面にはOリング9が設けられて隙間がシールされている。下型ブロック6の上面はワーク搭載部であり、下型クランパ8の上面との段差によりワーク板厚を吸収するようになっている。
【0029】
下型ブロック6には、その上面にフィルム吸着孔6aとそれに連通するフィルム吸引路6bが形成されている。また、下型ブロック6の上面には、フィルム吸着孔6a及びフィルム吸引路6bとは別にワーク吸引孔6cとそれに連通するワーク吸引路6dが形成されている。ワーク吸引孔6cの孔径は、ワーク吸引路6dの孔径より小さくなるように形成されている。後述する孔開け治具の孔開け針によりリリースフィルムに孔開けする際にリリースフィルムの伸びを防ぐためである。
【0030】
また、下型ブロック6の外周縁部近傍の上面には、キャビティ内を減圧するための減圧用吸引孔6eとこれに連通する減圧用吸引路6fが設けられている。
フィルム吸引路6b、ワーク吸引路6d、減圧用吸引路6fは、下型ブロック6から下型ベース5を通じて形成されており図示しない吸引装置(減圧装置)に各々接続されている。
【0031】
また、下型ブロック6には、ワークWの外周をガイドすることで位置決めするガイド部材10がワーク載置面P(下型ブロック6の上面)に対して進退動可能に設けられている。
図1では下型ベース5との間に設けられた押圧ばね11によって常時
下型ブロック6の上面より突出するように付勢されている。ガイド部材10は、押圧ばね11に代えてシリンダ、ソレノイド等の駆動源よりワークWの位置決めに合わせて任意のタイミングで進退動させてもよい。
下型クランパ8の上面には、フィルム吸着孔8a1及びこれに連なるフィルム吸引路8b1、下型ブロック6に臨む内周面にもフィルム吸着孔8a2及びこれに連なるフィルム吸引路8b2が各々形成されている。フィルム吸着孔8a1は、その端面が下型クランパ8の内周面から所定の距離に形成された円形溝に接続されてクランパ全周で吸引可能となっている。
【0032】
下型クランプ面には、下型リリースフィルム12(第1リリースフィルム)が吸着保持される。下型リリースフィルム12は、長尺状のフィルムが用いられ、供給ロール12aから下型2のクランプ面に供給されて巻取りロール12bに巻き取られるようになっている。供給ロール12aの巻き軸及び巻取りロール12bの巻き軸は、図示しない駆動源により各々正逆回転駆動することが可能になっている。
【0033】
また、供給ロール12aから供給された下型リリースフィルム12は、供給側ガイドローラ12c、供給側テンションローラ対12dを経て下型クランプ面に供給され、巻取り側テンションローラ対12e、巻取り側ガイドローラ12fを経て巻取りロール12bに巻き取られるようになっている。供給側テンションローラ対12d及び巻取り側テンションローラ対12eの高さ位置は可変であり、供給ロール12aや巻取りロール12bの巻径に応じて変化するフィルムテンションを調整するようになっている。
【0034】
下型リリースフィルム12は、下型2が上昇して下型クランプ面に形成されたフィルム吸着孔6a,8a1,8a2に各々吸着されて下型クランプ面を覆って吸着保持される。また、ワークWは、後述するように
下型ブロック6のワーク吸引孔6cと下型リリースフィルム12に穿孔されるワーク吸着孔12gとが連通した状態で下型クランプ面に吸着保持されるようになっている。
【0035】
下型リリースフィルム12は、耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。
【0036】
上型3には、上型ベース13に固定された上型ブロック14とその周囲に上型コイルばね15を介して上型クランパ16が吊り下げ支持されている。上型クランパ16の上型ブロック14との摺動面にはOリング17が設けられて隙間がシールされている。上型ブロック14の下面はキャビティ底面であり、上型クランパ16の内周側クランプ面はそれ以外のクランプ面に比べて下方に突出したクランパ突出部16aが形成されている。このクランパ突出部16aと上型ブロック14との段差によりキャビティ凹部4が形成されている。モールド金型1を型閉じすると、上型クランパ16のクランパ突出部16aは、上型リリースフィルム18及び下型リリースフィルム12を介して下型ブロック6の外周側上面に突き当たり、上型クランパ16と下型クランパ8とが上型リリースフィルム18及び下型リリースフィルム12を介して互いに噛み合うようになっている(
図6(B)参照)。また、クランパ突出部16aの下面には減圧用吸引路6fに対応する位置に空気のみを排出可能な程度の深さのエアーベント溝が構成されることで、クランプ状態でも減圧可能となる。
【0037】
上型クランパ16のクランプ面にはフィルム吸着孔16a1とこれに連通するフィルム吸引路16b1が形成され、上型ブロック14の外周に臨むフィルム吸着孔16a2とこれに連通するフィルム吸引路16b2が各々形成されている。
【0038】
上型クランプ面には、上型リリースフィルム18(第2リリースフィルム)が吸着保持される。上型リリースフィルム18は、長尺状のフィルムが用いられ、供給ロール18aから上型3のクランプ面に供給されて巻取りロール18bに巻き取られるようになっている。供給ロール18aの巻き軸及び巻取りロール18bの巻き軸は、図示しない駆動源により各々正逆回転駆動することが可能になっている。
【0039】
また、供給ロール18aから供給された上型リリースフィルム18は、供給側ガイドローラ18c、供給側テンションローラ対18dを経て上型クランプ面に供給され、巻取り側テンションローラ対18e、巻取り側ガイドローラ18fを経て巻取りロール18bに巻き取られるようになっている。供給側テンションローラ対18d及び巻取り側テンションローラ対18eの高さ位置は可変であり、供給ロール18aや巻取りロール18bの巻径に応じて変化するフィルムテンションを調整するようになっている。
【0040】
上型リリースフィルム18は、供給側テンションローラ対18d及び巻取り側テンションローラ対18e間でテンションが保たれた状態で上型クランプ面に形成されたフィルム吸着孔16a1,16a2に各々吸着されてキャビティ凹部18を含む上型クランプ面を覆って吸着保持される。上型リリースフィルム18は、耐熱性を有し、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもので下型リリースフィルム12と同様のものが用いられる。
【0041】
図3において、下型クランプ面のうち下型クランパ8の四隅には上型ブロック14との位置合わせをするための下型ロックブロック19が各々形成されている。対向する上型クランパ16の上型クランプ面にも下型ロックブロック19と噛み合う上型ロックブロック(図示せず)が設けられている。尚、
図3で下型2の四隅にあるのは、上型3と下型2とが固定された各プラテンを連結し可動プラテンの昇降を案内するガイドポスト29である。
【0042】
尚、モールド金型1の上型3と下型2の構成を反対にしてもよい。即ち、上型3は上型ブロック14を覆う上型リリースフィルム18を介してワークWを吸着保持することができる。この場合、下型2は下型ブロック6と下型クランパ8とで形成されるキャビティ凹部4にモールド樹脂24が供給される。また、上型ブロック14の上型クランプ面にフィルム吸着孔が設けられるほか、上型リリースフィルム18にワーク吸着孔が形成され、上型ブロック14にこれに連通するワーク吸引孔が穿孔される。
【0043】
ワークWをモールド金型1へ搬入搬出するローダー20(搬入手段),オフローダー21(搬出手段;
図8参照)は、これらの機能を併有する搬送部200を下型ロックブロック19と位置合わせすることによりワークWをワーク載置面P(
図1参照;下型ブロック6の上面)の正確な載置位置にて受け渡すことが可能に構成されている。ローダー20はワークWをモールド金型1に搬入して下型リリースフィルム12のワーク吸着孔12gを介して下型クランプ面に吸着保持させ(
図6(A)参照)、オフローダー21は成形後の成形品25をモールド金型1より搬出する(
図10参照)。
【0044】
また、
図3において、下型ブロック6の下型リリースフィルム12の搬送方向両側には、一対の剥離バー22(剥離手段)が下型クランプ面と平行方向に移動可能に設けられている。剥離バー22は、モールド金型1を型開きして成形品25に貼り付いた下型リリースフィルム12にテンションが付与された状態で下型ブロック6の上方に両側より移動させられる。これにより、剥離バー22が当該下型リリースフィルム12と成形品25との間に差し込まれて浮き上がって屈曲した下型リリースフィルム12を成形品25から強制的に剥離させるようになっている(
図9(B)参照)。尚、剥離バー22は、必ずしも一対設ける必要はなく片側だけでもよい。
【0045】
また、剥離バー22は、下型リリースフィルム12と成形品25との間に差し込まれることで下型リリースフィルム12を剥離させることができれば
図3のような構成でなくてもよい。例えば、
図3の左右方向(下型リリースフィルム12の送り方向)に延在する剥離バー22を金型の左右方向の少なくともいずれかに配置し、この方向に駆動させることで成形品25の下方に進入させることで下型リリースフィルム12を剥離させることもできる。この場合、下型リリースフィルム12の突き抜けないように剥離バー22の先端には幅を持たせたほうが好ましい。
【0046】
次に孔開け治具23の構成について説明する。
孔開け治具23は、搬送部200の一部に設けられて下型ブロック6に対して位置決め可能になっている。孔開け治具23は、
図4(A)に示すように、平板状の治具本体23aのフィルム対向面23bに孔開け針23cが複数突設されている。孔開け針23cの治具本体23aに対するレイアウトは、下型ブロック6の対向面に設けられたワーク吸引孔6cの配置に対応したレイアウトになっている。具体的には、孔開け針23cは、下型ブロック6の対向面に設けられたワーク吸引孔6cと同一の間隔に設けられている。
【0047】
図4(A)において、型開きしたモールド金型1に進入した孔開け治具23は、
図3に示す下型ロックブロック19と搬送部200の位置決め部材とを嵌め合わせることで位置合わせして孔開け針23cの直下にワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eが配置される位置で位置決めされる。なお、同図及び後述する図において各孔に対して矢印が付けられているときにはその孔を介した吸引(減圧)を行っていることを意味し、敢えて説明をしない場合もある。そして、
図4(B)に示すように、下型クランプ面にフィルム吸着孔6a,8a1,8a2、ワーク吸引孔6c、減圧用吸引孔6eより吸引されて吸着保持された下型リリースフィルム12に対して、孔開け治具23の孔開け針23cをワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eに挿入することによりワーク吸着孔12gを各々穿孔する。孔開け直後の状態を
図5(A)に示す。
【0048】
尚、孔開け治具23、ローダー20及びオフローダー21を、搬送部200に設け一括して位置決めをする構成としたが、各々を別個にモールド金型1へ進退動する構成でもよい。また、孔開け治具23は、下型ブロック6内に昇降可能に内蔵して位置合わせ不要としてもよい。この場合には、孔開け治具23の孔開け針23cは、下型クランプ面に吸着保持された下型リリースフィルム12に対してワーク吸引路6dを通じてワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eを貫通して突出することで下型リリースフィルム12にワーク吸着孔12g及び吸引孔12hを各々穿孔する。この場合、孔開け治具23の孔開け針23cの外径をワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eの内径よりも十分に小さくしておけば、フィルムを確実に吸着して下型リリースフィルム12を下型ブロック6から剥がすことなく穿孔後に孔開け針23cの引き抜き可能となるほか、孔開け針23cがワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6e内に存在していても吸引力を発揮することができる。また、孔開け針23cをワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6e内に配置したままで吸引するときには、ワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eにおける孔開け針23cの先端の手前位置に横穴を設けてその横穴から吸引するようにしてもよい。これにより、ワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6e内に配置した孔開け針23cによって下型リリースフィルム12の吸着力を低下させるおそれがなくなる。
また、上型2と下型3との構成が反対の場合には、孔開け治具23の孔開け針23cの向きを上向きにして上型リリースフィルム18に孔開けするようにしてもよい。
【0049】
また、ローダー20は、
図5(B)に示すように、モールド樹脂24(顆粒樹脂、液状樹脂、シート樹脂、タブレット樹脂、ゲル状樹脂等)を載置したワークWの外周縁をチャックハンド20aで掴んだまま、型開きしたモールド金型1へ進入する。このときローダー20と下型2のワーク載置部との位置合わせは、
図3に示す下型ロックブロック19を通じて行われる。
【0050】
そして、
図6(A)に示すように、ローダー20が下降して、下型リリースフィルム12を介して下型ブロック6の上面より突出したガイド部材10に外周がガイドされたままワークWを受け渡す。これにより、ワークWは下型ブロック6の所定の位置に正確に固定が可能となる。ワークWは、下型リリースフィルム12に穿孔されたワーク吸着孔12g、ワーク吸引孔6c及びこれに連続するワーク吸引路6dを通じた吸引動作により下型ブロック6上(ワーク載置面P)に吸着保持される。
【0051】
尚、ローター20は、吸着パッドによりワークWを吸着保持するようになっていてもよい。また、ワークW上にモールド樹脂24を供給してからワークWを搬入するようになっているが、ワークWとモールド樹脂24を各々供給する機能を備えていてもよい。
【0052】
図10に示すように、オフローダー21は、成形後型開きしたモールド金型1より成形品25を吸着保持して取り出す。オフローダー21と下型2のワーク載置部との位置合わせは、例えば
図3に示す下型ロックブロック19を通じて行われる。オフローダー21には、成形品25の対向面に複数の吸着孔21a及びこれらに連なる吸引路21bが形成されている。
【0053】
図9(A)に示すように、オフローダー21により成形品25吸着保持したまま上方引き上げることで当該成形品25に貼り付いた下型リリースフィルム12にテンションが付与される。この状態で、
図9(B)に示すように、ワークWと平行に移動する一対の剥離バー22を互いに近接する向きに移動させて下型リリースフィルム12を剥離させる。
【0054】
尚、成形品25の上面側に貼り付いた上型リリースフィルム18は、例えば
図7(B)に示すように、供給ロール12aと巻取りロール18a(
図1参照)に互いに巻き取る向き(反対方向)にテンションを作用させると成形品25から剥離する。仮にこの巻取り動作で剥離しない場合には、上型3側にも下型2と同様の剥離バー22を設けてもよい。
【0055】
次に、樹脂モールド方法の一例について
図1乃至
図10を参照して説明する。
図1に示すように型開きしたモールド金型1の下型クランプ面を覆い、
図4(a)に示すように下型リリースフィルム12を吸着保持し、キャビティ凹部4を含む上型クランプ面を覆って上型リリースフィルム18を吸着保持する。下型リリースフィルム12は、下型ブロック6のフィルム吸着孔6a及び下型クランパ8のフィルム吸着孔8a1,8a2より吸引されてワーク載置面Pを覆って吸着保持される。上型リリースフィルム18は、上型クランパ16に形成されたフィルム吸着孔16a1,16a2より吸引されてキャビティ凹部4を覆って吸着保持される。
【0056】
下型クランプ面を覆って下型リリースフィルム12が吸着保持された後で、
図4(A)〜
図5(A)に示すように下型リリースフィルム12に孔開け治具23を用いてワーク吸着孔12g及び吸引孔12hを孔開けする。即ち、
図4(A)に示すように孔開け治具23を下型ブロック6と位置合わせして、
図4(B)に示すようにワーク載置面に形成されたワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eに孔開け治具23の孔開け針23cを挿入するまで下降する。これにより、
図5(A)に示すようにモールド金型1内で下型リリースフィルム12にはワーク吸着孔12g及び吸引孔12hが孔開けされる。この場合、下型リリースフィルム12のワーク吸着孔12gの周縁部は、ワーク吸引孔6cで吸引されているため、当該ワーク吸引孔6cの内周面に沿って引き込まれた状態となり、ワーク吸引孔6cはふさがれることなくワークWは確実に吸着保持される。
【0057】
次いで、
図5(B)に示すように、モールド樹脂24がワークW上に供給されたワークWをローダー20のチャックハンド20aに外周縁をチャックされたまま下型ブロック6のワーク載置面Pに受け渡される。
図6(A)に示すように、ローダー20は、モールド金型1内で下型ブロック6に形成された下型ロックブロック19により位置合わせし、ワークWをガイド部材10により外周をガイドされた状態で受け渡す。ワークWは、下型リリースフィルム12に穿孔されたワーク吸着孔12g及びこれに連通するワーク吸引孔6cの吸引動作により吸着保持される。このときガイド部材10は、押圧ばね11により付勢されておりワーク載置面Pより突出した状態にある。また、下型リリースフィルム12にワーク吸着孔12gと共に穿孔された吸引孔12hに連通する減圧用吸引孔6e及びこれに連続する減圧用吸引路6fより、モールド金型1内のエアー吸引を開始する。
【0058】
次に、モールド金型1を型閉じしてモールド樹脂24とワークWをキャビティ凹部4内に収容したままクランプして加圧加熱する。この際には、先ず、各ボールねじ106を所定量ずつ均一に駆動することで、
図6(B)に示すように、上型2との平行を維持したまま下型3を上昇させて上型クランパ16に下型クランパ8を押し当て、下型ブロック6の外周縁部をクランパ突出部16aに押し当てる。このとき、ガイド部材10は押圧ばねの付勢に抗して下型ブロック6内に押し戻される。このようにガイド部材10を可動構造としたことにより、ワークWの位置決めのための構造に封止形状を制限されることはない。
また、キャビティ凹部4が閉じられた状態になる減圧空間が形成される。このとき、上型リリースフィルム18と下型リリースフィルム12間に形成されるエアーベントによりキャビティ凹部4内のエアーが吸引孔12hに連通する減圧用吸引孔6e及びこれに連続する減圧用吸引路6fより排気される。
【0059】
更に下型3が上昇して、キャビティ凹部4にモールド樹脂24が充填されて最終パッケージ厚になった状態を
図7(A)に示す。この状態で、モールド樹脂24が加熱硬化する(キュア)。
【0060】
次に、上型クランパ16のフィルム吸着孔16a1,16a2により吸引されていた上型クランプ面に吸着保持されていた上型リリースフィルム18の吸引動作を解除してからモールド金型1を型開きする。このとき、吸引孔12h及び減圧用吸引孔6eを通じた吸引動作は停止する。次いで、上型クランプ面に貼り付いていた上型リリースフィルム18は、
図7(B)に示すように下型2が下動すると硬化したモールド樹脂24により貼り付いた成形品25の下降に伴い上型クランプ面より剥がされる。下型3のワーク載置面(下型リリースフィルム12)にワークWを吸着したまま型開きしながら、供給ロール18a及び巻取りロール18b(
図1参照)を互いに巻き取り方向に駆動して成形品25に貼り付いた上型リリースフィルム18にテンションを付与する。これにより、
図8(A)に示すように、上型リリースフィルム18は、成形品25より剥がされる。
【0061】
次に、
図8(B)に示すように、型開きしたモールド金型1にオフローダー21が進入し、成形品25を吸着して取り出す。このとき、下型クランプ面のフィルム吸着孔6a,8a1,8a2、及びワーク吸着孔12gの吸引動作は予め停止しておく。
図9(A)に示すように、ワーク載置面Pを覆う下型リリースフィルム12が成形品25に貼り付いたまま当該成形品25をオフローダー21で吸着保持してワーク載置面Pより持ち上げる。オフローダー21の吸着孔21aに成形品25を吸着したまま上昇すると、成形品25に貼り付いた下型リリースフィルム12がそのまま持ち上げられる。このときワーク載置面Pにはガイド部材10が押圧ばね11(
図1参照)の復元力によって突出する。
【0062】
この成形品25に貼り付いた下型リリースフィルム12にテンションが付与された状態で、
図9(B)に示すように成形品25に貼り付いた下型リリースフィルム12を一対の剥離バー22を近接する向きにワークWの下方に移動させることで下型リリースフィルム12と成形品25との間に差し込まれて下型リリースフィルム12をワークWから剥離させる。
【0063】
図10に示すように、下型リリースフィルム12が剥離された成形品25はオフローダー21に吸着保持されたままモールド金型1より取り出され後工程へ移送される。
【0064】
上述した樹脂封止方法及び樹脂封止装置によれば、下型クランプ面を覆って吸着保持される下型リリースフィルム12のワーク吸着孔12gを通じてワークWが下型クランプ面に吸着保持されるので、ワークW外周をクランプしていなくてもワークW下面と下型クランプ面との隙間は下型リリースフィルム12によって埋められるため、モールド樹脂24の侵入を防止でき、ワークW下面及び下型面がモールド樹脂24で汚れることなくワークWを下型面に位置決め固定したまま樹脂封止することができる。
また、成形品25がワークWの外周を含んで樹脂封止されていても、モールド金型1を型開きして成形品25に貼り付いた下型リリースフィルム12にテンションが付与された状態で剥離バー22を移動させるため当該下型リリースフィルム12を確実に剥離させることができ、剥離動作を安定させることができる。
【0065】
なお、この成形品25はワークWの外周を含んで樹脂封止されているため、樹脂封止後の工程、すなわち再配線層やバンプの成形といった工程で位置決めを行うために使用されるワークWの外周及びワークWの切欠き部(シリコンウエハにおけるフラットまたはノッチ)もモールド樹脂24により覆われている。このため、ワークWの位置を外周により確認することが困難となってしまう。この場合、例えば、ワークWが露出する面においてワークWの外周及び切欠き部に対してエネルギー波(可視光線や赤外線など)を照射して形状を測定し、成形品25の外周に対するワークWの外周の位置(ズレ量)を算出し成形品25のデータとして紐付けしておく。これにより、樹脂封止後の工程ではこのデータを利用し成形品25の外周形状からワークWの外周位置を算出して正確な位置決めをすることができる。また、切欠き部の確認が困難なときに、レーザを用いてワークW外周(特徴部を含む)の樹脂24を昇華してワークW外周を露出させてもよい。これにより、本実施例のような外周を露出させない封止方法であっても樹脂封止後の工程において正確な位置決めを行うこともできる。
【0066】
なお、
図11に示すように、ワークWの切欠き部Mを押圧した状態で封止することで切欠き部Mを露出させることもできる。具体的には、上型ブロック14において切欠き部Mに対応する位置に押圧ピン140を配置し、これを型閉じ時に上型ブロック14より突出させることでワークWを押圧可能な構成となっている。この場合、ワークWの切欠き部Mを露出させるように樹脂封止することができるため、切欠き部Mの確認が容易となる。なお、シリコンウエハにおけるフラットまたはノッチのような切欠き部Mに替えて、半導体チップを搭載したキャリアのようなワークにおいて、その向きを確認するために凹凸などにより形状に特徴を持たせた特徴部を露出させるようにしてもよい。
【0067】
次に、フィルム孔開け治具23の他例について
図12を参照して説明する。
本例におけるフィルム孔開け治具23はストリッパーを備えている。具体的には、孔開け治具23は、治具本体23の下方にガイドプレート23d(ガイド部材)を吊り下げばね23eにより吊り下げ支持している。このガイドプレート23dには、孔開け針23cが挿通する挿通孔23f及びその進退動をガイドするガイド筒23gが下方に向って突設されている。
【0068】
孔開け治具23を下型ブロック6と位置合わせして、治具本体23aを下降させてガイドプレート23dのガイド筒23gによって下型リリースフィルム12を押さえる。そして、更に治具本体23aを下降させてワーク載置面に形成されたワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eに治具本体23aの孔開け針23cを挿入するまで下降する。これにより、モールド金型1内で下型リリースフィルム12にワーク吸着孔12g及び吸引孔12hを孔開けする。このとき、ガイド筒23gにより孔開けされる部分の外周を押さえてワーク吸着孔12g,吸引孔12hの周縁部の弛みや破れを防ぐとともに、孔開け針23cを下型リリースフィルム12より引き抜く際に、下型リリースフィルム12のかえりを抑えて下型リリースフィルム12が伸びたり下型クランプ面から剥離したりすることなく孔開けすることができる。
【0069】
次に、剥離手段の他例について
図13を参照して説明する。
図13(A)において、オフローダー21は吸着孔21aのほかにワークWの外周縁部を掴んで落下を防止するチャックハンド21cを備えている。また、剥離手段として、剥離バー22のほかに剥離用チャック26を備えている。剥離用チャック26は下型リリースフィルム12の送り出し上流及び下流方向の両側を掴んだまま昇降動作するようになっている。例えば、下型リリースフィルム12の上下からクランプ可能な一対のハンドを待機時には金型外に待機させ使用時には金型間に進入させると共にこの構成を昇降させる機構を設けることで、下型リリースフィルム12において同図に示すような位置を掴んで昇降することができる。
【0070】
図13(A)において、ワーク載置面を覆う下型リリースフィルム12は、成形品25をオフローダー31で吸着保持したままワーク載置面より持ち上げる。このとき、下型リリースフィルム12の両側に進入させた剥離用チャック26により下型リリースフィルム12をチャックする。
そして、
図13(B)に示すように、剥離用チャック26を下降させて下型リリースフィルム12にテンションを作用させて外周を剥離させるとともに、成形品25とこれに貼り付いた下型リリースフィルム12の隙間にチャックハンド21cを差し入れて保持する。
この状態でテンションが作用した下型リリースフィルム12に、剥離バー22を成形品25の下方に移動させることで、下型リリースフィルム12を成形品25から確実に剥離させることができる。尚、樹脂の種類などにより剥離用チャック26のみで剥離が可能であれば、剥離バー22による剥離動作は行わなくてもよい。
【0071】
また、オフローダー21は、吸着パッドによりワークWを吸着保持してワーク載置面より持ち上げるようにしてもよい。この場合、剥離用チャック26で下型リリースフィルム12の幅方向両側を掴んで下降する際に、下型リリースフィルム12の下方に図示しない成形品受け台を配置することが好ましい。下型リリースフィルム12を成形品25より剥離させる際にオフローダー21から成形品25が落下するのを防ぐためである。
【0072】
剥離手段の他例について
図14を参照して説明する。
オフローダー21により成形品25を吸着保持する際、下型クランプ面のワーク吸引孔6c及び減圧用吸引孔6eの吸引動作を解除し、フィルム吸着孔6a,8a1,8a2の下型リリースフィルム12の吸引動作を維持したままオフローダー21を上昇させるようにしてもよい。この場合、下型リリースフィルム12は、下型ブロック6の吸着より成形品25との粘着力により成形品25に貼り付いたまま持ち上げられ、下型クランパ8のフィルム吸着孔8a1の溝に引き込まれるように吸着している。このため、下型リリースフィルム12は成形品25に貼り付いたままテンションが付与された状態となる。この状態で、剥離バー22を成形品25の下方に移動させて下型リリースフィルム12を成形品25から剥離させる。
【0073】
次に他例に係る樹脂封止装置の構成について
図15乃至
図18を参照して説明する。本実施例は、
図15(A)(B)及び
図16に示すように、モールド金型1の上型3と下型2の構成が
図1と反対に構成された場合を例示している。また、上型リリースフィルム18は供給ロール18aと巻取りロール18bに各々巻かれた長尺状フィルムが用いられるが、下型リリースフィルム12は短冊状フィルムが用いられる場合を例示している。
【0074】
図15(A)において、上型3は、上型ブロック14を覆う上型リリースフィルム18を介してワークWが吸着保持される。上型リリースフィルム18は、上型ブロック14のクランプ面に形成されたフィルム吸着孔14a及びこれに連続するフィルム吸引路14bに吸着されて上型クランプ面を覆って吸着保持される。上型リリースフィルム18には、
図4(A)と同様に孔開け治具23により孔開け針23cをワーク吸引孔14cに挿入することでワーク吸着孔18g及び吸引孔18hが穿孔されている。
図15(B)に示すようにワークWは、上型ブロック14のワーク吸引孔14cとこれに連続するワーク吸引路14dから吸引され、上型リリースフィルム18に穿孔されたワーク吸着孔18gを通じて上型クランプ面に吸着保持される。また、
図15に示すように上型クランプ面には、吸引孔18hに連通する減圧用吸引孔14e及びこれに連続する減圧用吸引路14fが設けられている。
【0075】
また、下型2は、下型ブロック6と下型クランパ8とで形成されるキャビティ凹部4に下型リリースフィルム12がフィルム吸着孔8a1これに連続するフィルム吸引路8b1、フィルム吸着孔8a2及びこれに連続するフィルム吸引路8b2を通じて吸着保持され、該下型リリースフィルム12を介してモールド樹脂24が供給される。
【0076】
ローダー20は、上型クランプ面と対向する上面側に設けた支持部20bにワークWを支持し、下型クランプ面と対向する下面側にモールド樹脂24(顆粒状樹脂、液状樹脂等)が供給された下型リリースフィルム12を吸着孔20cに吸着保持したまま、型開きしたモールド金型1に搬入する(
図15(A)参照)。ローダー20と上型ブロック14及び下型ブロック6との位置合わせは、例えば
図3と同様のロックブロック19を用いて行われる。
【0077】
次いで、ワークWを上型クランプ面に受け渡してワーク吸着孔18gを通じて吸着保持させる。また、ローダー20は、モールド樹脂24が供給された下型リリースフィルム12をキャビティ凹部4へ受け渡して下型リリースフィルム12をフィルム吸着孔8a1,8a2を通じて吸着保持させる(
図15(B)参照)。
【0078】
次に
図16に示すように、モールド金型1を型閉じして、下型2を上昇させてパッケージ部の厚さが最終成形厚となるまでクランプしてモールド樹脂24を加熱硬化させる(キュア)。このとき、上型リリースフィルム18と下型リリースフィルム12間に形成されるエアーベントによりキャビティ凹部4内のエアーが吸引孔18hに連通する減圧用吸引孔14e及びこれに連続する減圧用吸引路14fより排気される。この場合、上述した実施形態と同様に吸引やローラによりテンションをかけてモールド金型1内で上型リリースフィルム18を剥離してもよい。また、下型リリースフィルム12が短冊フィルムであるため、上述の構成と同様に吸着やロールによってテンションを加えて上型リリースフィルム18を剥離させた後に、成形品25をモールド金型1外へ搬出してから下型リリースフィルム12を剥離させてもよい。
【0079】
尚、下型リリースフィルム12には予めモールド樹脂24が供給された状態でローダー20により下型2へ搬入されるようになっているが、先に下型リリースフィルム12をキャビティ凹部4を含む下型クランプ面に吸着保持させておき、その後にモールド樹脂24を下型リリースフィルム12が吸着されたキャビティ凹部4へ供給するようにしてもよい。
【0080】
次に、樹脂モールド装置の他例について
図17を参照して説明する。
本実施例はモールド金型1の概略構成が
図15(A)(B)と同様であるが、上型リリースフィルム18及び下型リリースフィルム12の双方が短冊状フィルムを用いている点が異なる。上型リリースフィルム18には、ワーク吸着孔18g及び吸引孔18hが予め穿孔されている。
また、
図17(A)において、ローダー20と上型ブロック14との位置合わせは、ローダー20に突設された位置決めピン20dを対向する上型ブロック14のクランプ面に形成された位置決め穴14hに嵌め込むことにより行われる。これにより、
図17(B)に示すようにワーク吸着孔18gとワーク吸引孔14c及びこれに連続するワーク吸引路14d、吸引孔18hと減圧用吸引孔14e及びこれに連通する減圧用吸引路14f各々が連通するようになっている。
【0081】
ローダー20は、上型クランプ面と対向する上面側にワークWと、その上に重ねわせて上型リリースフィルム18を位置決めピン20dに位置決め孔を嵌め込んで支持し、下型クランプ面と対向する下面側にモールド樹脂24(顆粒状樹脂、液状樹脂等)が供給された下型リリースフィルム12を吸着孔20cに吸着保持したまま、型開きしたモールド金型1に搬入する(
図17(A)参照)。ローダー20と上型ブロック14との位置合わせは、位置決めピン20dを位置決め穴14hに嵌め込むことで行われる。このときワークWを上型クランプ面に受け渡してワーク吸着孔18g及びワーク吸引孔14cを通じて吸着保持させる。
【0082】
なお、リリースフィルム12を介して保持されたモールド樹脂24は、その形状を保持するためにフィルム底部に板状の支持部材50を用いてモールド金型1に搬入してもよい。支持部材50としては、下型ブロック6よりも小さい金属薄板などで形成された板状部材が好適に用いられる。一例として、
図21(A)(B)に示すように、ローダー20に保持されたリリースフィルム12に支持部材50を底部としてモールド樹脂24が載置されたままキャビティ凹部4へ供給される。この場合、樹脂モールド後に支持部材50を除去して成形品25の表面を露出させるようにしてもよい。さらに、樹脂モールド後にこの支持部材50を除去することなく成形品25と一体となったままとして、ヒートシンクとして用いてもよい。またリリースフィルム12に保持されたモールド樹脂24の下方を支持部材50で支持し、支持部材50ごと下型2に供給してもよい。この場合、支持部材50がリリースフィルム12の底部を支持したまま、即ちモールド樹脂24の形状を保持したまま下型2に供給されるため、リリースフィルム12内におけるモールド樹脂24の偏りを防止でき、モールド樹脂24の流動を極力減らすことができる。
【0083】
なお、
図22(A)(B)に示すように、ローダー20に、リリースフィルム12の直下で開閉可能に構成されたシャッター51を設け、リリースフィルム12を支持するようにしてもよい。ローダー20がモールド金型1へモールド樹脂24を搬入するときにはシャッター51を閉じてリリースフィルム12の底部を支持する(
図22(A)参照)。ローダー20からモールド金型1ヘモールド樹脂24を供給するときには、シャッター51を開くことでリリースフィルム12を介してモールド樹脂24をキャビティ凹部4に供給することができる(
図22(B)参照)。
【0084】
また、モールド樹脂24が供給された下型リリースフィルム12をキャビティ凹部4へ受け渡して下型リリースフィルム12をフィルム吸着孔8a1,8a2(図示せず)を通じて吸着保持させる(
図17(B)参照)。
【0085】
この後、モールド金型1を型閉じして、下型2を上昇させてパッケージ部の厚さが最終成形厚となるまでクランプしてモールド樹脂24を加熱硬化させる(キュア)動作は
図15と同様である。この場合、上述した実施形態と同様にモールド金型1内でリリースフィルムを剥離してもよい。或いは、上下のリリースフィルムが短冊フィルムであるため、いずれのリリースフィルムも剥離させずに成形品25をモールド金型1外へ搬出してから剥離させてもよい。
【0086】
尚、上型リリースフィルム18とワークWは各々搬入しても良いし、先に下型リリースフィルム12をキャビティ凹部4を含む下型クランプ面に吸着保持させておき、その後にモールド樹脂24を下型リリースフィルム12が吸着されたキャビティ凹部4へ供給するようにしてもよい。
【0087】
次に樹脂封止装置の更なる他例について
図18を参照して説明する。
図17(A)(B)に示すように、上型ブロック14に短冊状の上型リリースフィルム18を用いる場合、当該上型リリースフィルム18に穿孔されたワーク吸着孔18gと、上型ブロック14のワーク吸引孔14c、吸引孔18hと減圧用吸引孔14eが各々位置ずれした場合には、ワークWを上型クランプ面に吸着保持することや減圧空間を形成することができないおそれがある。
【0088】
そこで、
図18(A)に示すように、上型ブロック14の上型クランプ面に形成されるワーク吸引孔14cに代えて多孔質部材27及びこれに連続するワーク吸引路14d、減圧用吸引孔14eに代えて多孔質部材27及びこれに連続するワーク吸引路14fを各々設けてもよい。これにより、ワーク吸着孔18gや吸引孔18hと多孔質部材27を精密に位置合わせする必要もなくワーク吸引路14d、減圧用吸引路14fにつながり易く確実にワークWを保持することができる。しかも多孔質部材27を通じて型閉じしたモールド金型1内のエアーを確実に排気して減圧空間を形成することができる。
【0089】
また、
図18(B)に示すように、上型ブロック14の上型クランプ面のうちワークWを吸着保持するエリア内でワークサイズより小さい多孔質部材28を設けてもよい。この場合には、ワーク吸引路14dは多孔質部材28と1対1のレイアウトで設けなくても良いため、多孔質部材28と連通するワーク吸引路14dのレイアウト上の制約はなく、上型リリースフィルム18に穿孔されるワーク吸着孔18gとの位置合わせは不要となるため、上型リリースフィルム18の上型ブロック14の上型クランプ面への吸着保持が簡略化して行える。
【0090】
上述した各実施形態では、上型3及び下型2のクランプ面に、上型リリースフィルム18、下型リリースフィルム12を吸着保持する場合について説明したが、例えば、モールド樹脂24が供給されたワークWを吸着保持する下型クランプ面のみに下型リリースフィルム12を吸着保持し、ワークWを収容する下型キャビティ凹部を下型クランパ8と共に閉止する上型クランプ面に離型性の良い金型(例えばセラミックス型)を用いることで、上型リリースフィルム18を省略することも可能である。
【0091】
また、上述したモールド金型1は、上型3を固定型、下型2を可動型としたが、上型3と下型2のいずれを固定型とし、いずれを可動型とするかは任意に設定することができる。また、上述した実施例においてはワークとしてモールド樹脂により一括成形するシリコンウエハを想定して説明したが、半導体装置を多数個取りする樹脂基板、リードフレーム等のワークWにも適用することができる。
【0092】
また、
図19に示すような種々のワークW(破線は封止後の外形状を示す)も考えられる。
図19(A)はウエハ30上に複数のバンプ31が実装されたワークWである。
図19(B)はウエハ(基板)30上に複数の半導体チップ32またはTSV(Through Silicon Via)の積層チップが実装されたワークWである。この場合、キャリア上にTSVによるチップを固定装されたワークWとすることもできる。
図19(C)はウエハ(基板)30上に複数の発光素子や受光素子のような光半導体素子33が実装されたワークWである。
図19(D)はウエハ30上に複数のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップ34が実装されたワークWである。
図19(E)はインターポーザ基板35上に複数の半導体チップ32とバンプまたはビアなどの基板端子36が実装されたワークWである。
図19(F)は基板30上にバンプ36を介して複数のチップが積層された積層チップ37が実装されると共にビア38が形成されたワークWである。
図19(G)はキャリア(例えばステンレス、ガラス、ウエハ)39上に熱剥離シートなどの剥離シート40を介して複数の半導体チップ32が固定されたeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)成形用のワークWである。上述の各実施形態によれば、これらに同図に破線で示すような形状のパッケージに類似する形状にモールド樹脂24を供給することもできる。
【0093】
また、モールド金型1の少なくとも一方の金型クランプ面にワークWを吸着保持する構成であればよく、例えば
図20(A)(B)に示すように下型2のみならず上型3のクランプ面にもワークWを吸着可能な構成としてもよい。
図20(A)において、上型ブロック14には、
図1に示す下型ブロック6と同様にその下面にフィルム吸着孔14aとそれに連通するフィルム吸引路14bが形成されている。また、上型ブロック14の下面には、フィルム吸着孔14a及びフィルム吸引路14bとは別にワーク吸引孔14cとそれに連通するワーク吸引路14dが形成されている。ワーク吸引孔14cの孔径は、ワーク吸引路14dの孔径より小さくなるように形成されている。フィルム吸引路14b、ワーク吸引路14dは、上型ブロック14から上型ベース13(
図1参照)を通じて形成されており図示しない吸引装置(減圧装置)に各々接続されている。
【0094】
また、
図20(A)において、上型リリースフィルム18は、上型ブロック14のフィルム吸着孔14a及び上型クランパ15のフィルム吸着孔16a1,16a2より吸引されてワーク吸着面を覆って吸着保持される。尚、上型リリースフィルム18も上型クランプ面に吸着保持された後に、
図4(A)(B)に示す孔開け治具23と同様の構成の孔明け治具を用いて孔開け針23cにより孔開けされてワーク吸着孔18gが形成することができる。尚、上型リリースフィルム18が上型クランプ面に吸着保持される前に同様の構成の孔明け治具を用いて孔開けしておいてもよい。第二ワークW2は、上型リリースフィルム18に穿孔されたワーク吸着孔18g及びこれに連通するワーク吸引孔14cの吸引動作により上型プランプ面に吸着保持される。
【0095】
この場合、
図20(A)に示すように、モールド樹脂24が載せられた第一ワークW1を搬入して下型クランプ面に吸着保持すると共に上型クランプ面に第二ワークW2を吸着保持する。そして、
図20(B)に示すようにモールド金型1を型閉じすることで、一対のワークW1,W2によりモールド樹脂24を挟み込んだ状態で樹脂封止することができる。これにより、例えば一対のeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)成形用のワークWでモールド樹脂24を挟んだ構造となるように封止した後にリリースフィルム12,18(キャリア)を剥離することで成形品であるパッケージの両面に半導体チップを露出させるような構成とすることができる。これにより、1つのパッケージに複数の半導体チップを積層した状態で樹脂封止することでパッケージサイズを拡げることなく多数のチップをパッケージに内蔵することができるうえに、半導体チップを複数積層した積層チップを樹脂封止するのに好適なパッケージ構造とすることもできる。
【0096】
また、一方の金型に
図19(B)〜
図19(G)のような各種チップが実装されたワークWを吸着し、他方の金型に機能部材のワークWを吸着した状態で樹脂封止することもできる。例えば、放熱部材や、外部と電気的に接続するための配線構造体や、レンズアレイや偏光板といった光学部材や、成形時の反り防止のための板部材といった板状の機能部材を用いることで高付加価値なパッケージを成形することもできる。一例として、一方の金型に光半導体素子を吸着すると共に、他方の金型に光学部材を吸着した状態で樹脂封止することで高付加価値な光学機能を有するパッケージを製造するといったように必要に応じて組合せを変えることで任意の形態のワークWを樹脂封止することができ、汎用性が向上する。更に、ワーク吸着孔12gとしては孔開け針23cにより円形に孔開けする他にもスリット形や十字形に切断して設けるようにしてもよい。