特許第6065180号(P6065180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065180
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】化合物および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C07D487/04 146
   C07D487/04CSP
   A61K31/519
   A61P1/04
   A61P11/00
   A61P11/02
   A61P11/06
   A61P17/00
   A61P37/02
   A61P43/00 111
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-556587(P2012-556587)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-522182(P2013-522182A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】GB2011050477
(87)【国際公開番号】WO2011110858
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】1004178.8
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512236386
【氏名又は名称】キエシ ファルマシュティチ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】クラゴウスキ,ヤヌシュ
(72)【発明者】
【氏名】フィンチ,ハリー
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−514615(JP,A)
【文献】 特表2009−535389(JP,A)
【文献】 特表2011−519880(JP,A)
【文献】 特表2011−506503(JP,A)
【文献】 特表2009−541384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩:
【化1】
式中、
AはC−Rであり;
及びRは水素であり;
が、トリフルオロメチル、クロロ又はブロモであり、;
は水素であり;
は水素であり;
は−CO11であり;
−X−X− は−NR19−CO−であり;
11は、式−[Alk−[Q]−[Alk−Zの基を表し、ここで
p、qは、独立して0又は1であり、tが0であり;
Alk及びAlkは各々独立してC〜Cアルキレン基であり;
Zは、
(i)−N(R)(R)であって、式中、R及びRは独立して水素、又はC〜C−アルキルであり;又は
(ii)−N(R)(R)(R)であって、式中、R、R及びRは独立してC〜C−アルキルであり、;
19は水素、(C〜C)アルキルから選択される。
【請求項2】
−X−X−が−NR19−CO−であり、R19がメチルである、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−8−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,3,5,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボン酸2−ジメチルアミノエチルエステル、
{2−[5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−8−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,3,5,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボニルオキシ]エチル}トリメチルアンモニウムブロミドからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項5】
経口投与又は肺経路による投与に適合した請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
HNEが関与する疾患又は症状の治療に使用するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記疾患又は症状が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、肺線維症、肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺気腫、喫煙誘発性肺気腫又は嚢胞性線維症である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記疾患又は症状が、喘息、鼻炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、非アトピー性皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、又は過敏性腸疾患である、請求項6に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト好中球エラスターゼ阻害特性を有するピリミジン誘導体である複素環式化合物、及び治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト好中球エラスターゼ(HNE)は、好中球のアズール顆粒中に見出される32kDaのセリンプロテアーゼである。HNEは、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、III型及びIV型コラーゲン並びにエラスチンを包含する広範な細胞外マトリックスタンパク質の分解に関与する。(Bieth,G.In Regulation of Matrix accumulation,Mecham,R.P.(Eds),Academic Press,NY,USA 1986,217−306)。HNEは、組織構造タンパク質の分解による損傷組織の修復及び除去を通じてホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすと長く考えられてきた。さらに、細菌体の分解による細菌侵入に対する防御にも関与する。HNEは、マトリックス組織に対する影響に加え、IL−8遺伝子発現の上向き調節に関与し、さらには肺上皮細胞からのIL−8放出を誘発する。タバコ煙曝露によって誘発された慢性閉塞性肺疾患の動物モデルにおいて、HNEの小分子阻害剤及びタンパク質阻害剤の両方が炎症応答及び肺気腫発症を抑制する(Wright,J.L.et al. Am.J.Respir.Crit.Care Med.2002,166,954−960;Churg,A.et al.Am.J.Respir.Crit.Care Med.2003,168,199−207)。このように、HNEは、マトリックス破壊、及び好中球流入が特有の特徴である慢性呼吸器疾患における炎症応答増幅の両方に関与する可能性がある。実際、HNEは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺気腫、肺炎、肺線維症を包含するいつかの肺疾患に関与すると考えられる。さらに、組織の再構築が関与するいくつかの心血管疾患、例えば、心不全、及び急性心筋梗塞に続く虚血性組織損傷の発生にも関連する。
【0003】
COPDは、そのすべてが気流制限に寄与する3つの異なる病理学的症状、すなわち、慢性気管支炎、肺気腫及び小気道疾患を包含する包括的用語である。一般に、3つすべてが、COPDを呈する患者に様々な程度で存在し、COPD患者の気管支肺胞洗浄(BAL)液で観察される好中球数の増加によって裏付けられるように、3つすべてが好中球介在性の炎症によるものである可能性がある(Thompson,A.B.;Daughton,D.;et al. Am.Rev.Respir.Dis.1989,140,1527−1537)。COPDの主な発症決定因子は、プロテアーゼ・アンチプロテアーゼバランス(「エラスターゼ:アンチエラスターゼ仮説」としても知られている)であり、そこでは、HNEと、α1−アンチトリプシン(α−AT)、分泌型白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI)及びプレエラフィンなどの内因性アンチプロテアーゼとの不均衡が、COPDの種々の炎症性障害を招くと長く考えられてきた。プロテアーゼ阻害剤α1−アンチトリプシンの遺伝子欠損を有する個体は、時間経過に伴って重症度が増大する肺気腫を発症する(Laurrell,C.B.;Erikkson,S Scand.J.Clin.Invest. 1963 15,132−140)。したがって、過剰なHNEは破壊的であり、弾性の喪失を伴う肺形態の崩壊及び肺気道の肺胞接着の破壊(肺気腫)を招き、同時に、微小血管浸透性及び粘液分泌過剰を同時的に増大させる(慢性気管支炎)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、HNE阻害剤であって、HNE活性が関与する疾患又は症状の治療に有用である新規化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態において、本発明は式(I)の化合物を提供する:
【0006】
【化1】
【0007】
式中、
AはC−R又はNであり;
及びRは、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−S(O)、アミノ、モノ−又はジ−C〜C−アルキルアミノ、−NHCOR、−NH(C=O)NHR、−NHSO10、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ又はC〜C−アルケニルオキシから選択され、ここでC〜C−アルキル及びC〜C−アルコキシは、ハロゲン、ヒドロキシ及びC〜C−アルコキシからなる群より選択される1〜3個の同一又は異なる基でさらに置換されてもよく;
【0008】
nは0、1又は2であり;
は水素であり;
及びRは独立して、水素、ハロゲン及びハロゲンでさらに置換されてもよいC〜C−アルキルから選択され;
【0009】
はC〜C−アルキル、ヒドロキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、アミノ、モノ−又はジ−C〜C−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C〜C−シクロアルキル、フェニル又はC〜C−アルケニルであり;ここでC〜C−シクロアルキルはC〜C−アルキル、ヒドロキシル及びC〜C−アルコキシの1つ以上でさらに置換されてもよく、フェニルはハロゲン、シアノ、C〜C−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ及びC〜C−アルコキシの1つ以上で置換されてもよく;
【0010】
及びRは独立して、水素及びC〜C−アルキルから選択され、R10はC〜C−アルキルであり;
は−CO11、−CONR1213又は−COR14であり;
−X−X−は−CR15=N−又は−NR19−CO−であり;
12は水素又はC〜Cアルキルであり;
【0011】
11、R13、R14は各々独立して、式−[Alk−[Q]−[Alk−Zの基を表し、ここで
p、q及びtは、p、q及びtが同時に0でないという条件で、独立して0又は1であり;
Alk及びAlkは各々独立してC〜Cアルキレン基を表し;
Qは3〜9員で二価の単環式又は二環式の炭素環式又は複素環式基を表し;
【0012】
Zは、
(i)5若しくは6員の単環式複素環又は7若しくは8員の架橋複素環系であって、該環のヘテロ原子が窒素であり、前記単環又は架橋環系が環炭素を介して分子の残りの部分と連結しており、その際環窒素はC〜Cアルキル又はベンジルで置換されることで四級化されてもよく、後者は任意にそのフェニル環において置換されている;又は
【0013】
(ii)−N(R)(R)であって、式中R及びRは独立して水素、又はC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環において置換されたフェニル(C〜C)アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素と一緒になって、N、O及びSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有してもよい環原子が5〜7個の単環式複素環を形成する;又は
【0014】
(iii)−N(R)(R)(R)であって、式中
、R及びRは独立してC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環において置換されたフェニル(C〜C)アルキル基である;又は
はC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環において置換されたフェニル(C〜C)アルキル基であり、R及びRはそれらが結合する窒素と一緒になって、N、O及びSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有してもよい環原子が5〜7個の単環式複素環を形成する;又は
、R及びRはそれらが結合する窒素と一緒になって、7若しくは8員の架橋複素環を形成する;
【0015】
(iv)−NRC(=NR)NRであって、式中
、R、R及びRは独立して水素又はC〜C−アルキルである;又はR、R、R及びRのいずれか2つは独立して水素又はC〜C−アルキルであり、他の2つは一緒になってC〜Cアルキレン基を表す;又は
【0016】
(v)−C(=NR)NRであって、式中
、R及びRは独立して水素又はC〜C−アルキルである;又はR、R及びRのいずれか1つは水素又はC〜C−アルキルであり、他の2つは一緒になってC〜Cアルキレン基を表す;
【0017】
(vi)−NRC(=NR)Rであって、式中
、R及びRは独立して水素又はC〜C−アルキルである;又はR、R及びRのいずれか1つは水素又はC〜C−アルキルであり、他の2つは一緒になってC〜Cアルキレン基を表す;
【0018】
19は水素、(C〜C)アルキル、フェニル、5又は6個の環原子を有する単環式ヘテロアリール、フェニル(C〜C)アルキル、ヒドロキシ(C〜C)アルキル、及びトリフルオロメチルから選択され;
【0019】
15はフェニル(C〜C)アルキル、ニトリル(−CN)、NH−(C〜C)アルキル、NHR−(C〜C)アルキル、NR−(C〜C)アルキル、−COOH、−COR、−SO、−CONH、−CONHR、−SONHR、−CONR、及び−SONRから選択され、式中R及びRは独立して(C〜C)アルキル、フェニル又は環原子が5若しくは6個の単環式ヘテロアリールであり、又はR及びRは同じ窒素原子に結合した場合に環状アミノを形成する。
【0020】
上記の式(I)の化合物は、その塩、特に薬学的に許容可能な塩、N−オキシド、水和物及び溶媒和物の形態で調製されてもよい。本明細書の化合物に対するいかなる請求、又は「本発明の化合物」、「本発明が関係する化合物」、「式(I)の化合物」などの言及も、塩、N−オキシド、水和物又は溶媒和物の形態であるか否かにかかわらず、かかる化合物を包含する。
【0021】
本発明の化合物は、HNEが関与する疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、肺線維症、肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺気腫、喫煙誘発性肺気腫、及び嚢胞性線維症の治療又は予防に使用できる。
【0022】
したがって、本発明の別の態様は、(i)本発明の化合物と薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物;及び(ii)HNEが関与する疾患又は症状の治療又は予防のための薬物の製造への本発明の化合物の使用である。
【0023】
用語
本明細書で用いられるとき、用語「C〜C−アルキル」(ここでa及びbは整数である)はa〜b個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を指す。したがって、例えばaが1でありbが6である場合、該用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシルを包含する。
【0024】
本明細書で用いられるとき、用語「C〜C−アルケニル」(ここでa及びbは整数である)は、該当する場合にはE体又はZ体のいずれかの立体化学の二重結合を少なくとも1つ有し、a〜b個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルケニル部分を指す。したがって、例えばaが2でありbが6である場合、該用語は例えばビニル、アリル、1−及び2−ブテニル及び2−メチル−2−プロペニルを包含する。
【0025】
本明細書で用いられるとき、用語「C〜C−アルキニル」(ここでa及びbは整数である)は、a〜b個の炭素原子を有し、さらに1つの三重結合を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。したがって、例えばaが1でありbが6である場合、該用語は例えばエチニル(−C≡CH)、1−プロピニル、1−及び2−ブチニル、2−メチル−2−プロピニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル及び5−ヘキシニルを包含する。
【0026】
本明細書で用いられるとき、用語「二価のC〜C−アルキレン基」(ここでa及びbは整数である)はa〜b個の炭素原子及び2つの不飽和原子価を有する飽和炭化水素鎖を指す。
【0027】
本明細書で用いられるとき、用語「二価のC〜C−アルケニレン基」(ここでa及びbは整数である)は、a〜bの炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する二価の炭化水素鎖を指す。
【0028】
本明細書で用いられるとき、比限定的用語「炭素環式」は、そのすべてが炭素である最大で16個の環原子を有する単環式、二環式若しくは三環式基又は架橋した単環式又は二環式基を指し、アリール及びシクロアルキルを包含する。架橋炭素環式基は2個の環原子がアルキレン架橋によって結合した単環又は二環を有し、例えばビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.1.1]へプタン及びアダマンタンの基である。
【0029】
本明細書で用いられるとき、比限定的用語「シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を有する単環式飽和炭素環式基を指し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル及びアダマンタニルを包含する。
【0030】
本明細書で用いられるとき、比限定的用語「アリール」は、単環式、二環式又は三環式の炭素環式芳香族基を指し、共有結合によって直接連結する2つの単環式の炭素環式芳香族環を有する基を包含する。そのような基の例は、フェニル、ビフェニル及びナフチルである。
【0031】
本明細書で用いられるとき、比限定的用語「ヘテロアリール」は、S、N及びOから選択されるヘテロ原子を1つ以上含有する単環式、二環式又は三環式の芳香族基であり、共有結合により直接連結される2つのこのような単環式環を含有する基、又は1つのこのような単環式環と1つの単環式アリール環とを含有する基を包含する。そのような基の例は、チエニル、ベンズチエニル、フリル、ベンズフリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ベンズトリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル及びインダゾリルである。ヘテロアリール環がピリジン又はイミダゾールの場合のようにsp2窒素を含有する場合、当該窒素はピリジニウム又はイミダゾリウムの窒素のように第四級窒素であってもよい。
【0032】
本明細書で用いられるとき、比限定的用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式」又は「ヘテロシクロアルキル」は、上記で定義した「ヘテロアリール」を包含し、非芳香族基の意味においてはS、N及びOから選択されるヘテロ原子を1つ以上含有する単環式、二環式若しくは三環式又は架橋単環式又は二環式非芳香族基、並びに別のかかる基又は単環式炭素環式基に共有結合するかかるヘテロ原子を1個以上含有する単環式非芳香族基からなる基に関係する。架橋複素環式基は、少なくとも1つのS、N又はO環原子を、アルキレン架橋によって結合する2個の原子(例えば2個の環炭素、又は1個の環窒素と1個環炭素)と共に含有する単環式又は二環式の環を有し、例えば1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタンの基である。環窒素がこのように架橋している場合、当該窒素は第四級窒素中心としてさらに置換されてもよい。そのような基の例は、ピロリル、フラニル、チエニル、ピペリジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピリミジニル、モルホリニル、ピペラジニル、インドリル、モルホリニル、ベンズフラニル、ピラニル、イソオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、マレイミド、スクシンイミド及び1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタニル又は1メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタニル基である。
【0033】
用語が使われている文脈で特に明記されていない限り、本明細書中のあらゆる部分で用いられる用語「置換(された)」は、4つまでの共存可能な置換基で置換されていることを意味し、その各々は独立して、例えば、C〜C−アルキル、シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシル−C〜C−アルキル、メルカプト、メルカプト−C〜C−アルキル、C〜C−アルキルチオ、フェニル、5若しくは6個の環原子を有する単環式ヘテロアリール、ハロ(フルオロ、ブロモ及びクロロを包含する)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、ニトリル(−CN)、オキソ、−COOH、−COOR、−COR、−SO、−CONH、−SONH、−CONHR、−SONHR、−CONR、−SONR、−NH、−NHR、−NR、−OCONH、−OCONHR、−OCONR、−NHCOR、−NHCOOR−NRCOOR、−NHSOOR、−NRSOOH、−NRSOOR、−NHCONH、−NRCONH、−NHCONHR−、NRCONHR、−NHCONR、又は−NRCONRであり、ここでR及びRは独立してC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、フェニル又は5若しくは6個の環原子を有する単環式ヘテロアリールであるか、又はR及びRが同じ窒素原子に結合している場合にはピペリジニル、モルホリニル又はピペラジニルのような環状アミノを形成する。「任意の置換基」は上記の置換基のうちの1つであってもよい。
【0034】
本明細書で用いられるとき、用語「塩」は、塩基付加及び酸付加塩を包含する。酸性である本発明の化合物は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム及びカリウム);アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム、バリウム及びマグネシウム)のような塩基;有機塩基(例えば、N−メチル−D−グルカミン、コリントリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン、L−アルギニン、L−リジン、N−エチルピペリジン、ジベンジルアミンなど)と薬学的に許容可能な塩を包含する塩を形成することができる。塩基である本発明の化合物(I)は、無機酸(例えば、塩酸若しくは臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸又はリン酸など)、及び有機酸(例えば、酢酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、乳酸、及びマンデル酸など)と薬学的に許容可能な塩を包含する塩を形成することができる。第四級窒素を有する本発明の化合物(I)は、塩化物イオン、臭化物イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、コハク酸イオン、ヘミコハク酸イオン、ナフタレン−ビススルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、キシナホ酸イオンなどの薬学的に許容可能な対イオンと第四級塩を形成することもできる。
【0035】
1つ以上の実質的又は潜在的なキラル中心を含有する本発明の化合物は、不斉炭素原子が存在するために、各キラル中心においてR体又はS体の立体化学を有する多数のジアオステレオ異性体として存在することができる。本発明はそのようなジアオステレオ異性体及びその混合物をすべて包含する。
【0036】
本発明の化合物(I)では、いかなる共存可能な組合せにおいても:
Aを含有する環はフェニル又は3−ピリジル環である。
【0037】
及びRは、式(I)に関連して定義された置換基種のいずれかから選択され、水素、フルオロ及びクロロのようなハロゲン、ニトロ、シアノ、メタンスルホニルのようなS(O)(C〜Cアルキル)、アミノ、メチルアミノ及びジメチルアミノのようなモノ−又はジ−C〜C−アルキルアミノ、−NHCOCH、−NH(C=O)NHCH3、−NHSOCH、メチル、エチル、又はn−若しくはイソ−プロピルのようなC〜C−アルキル、ビニル又はアリルのようなC〜C−アルケニル、CH≡C−のようなC〜C−アルキニル、ヒドロキシル、メトキシ若しくはエトキシのようなC〜C−アルコキシ、又はアリルオキシのようなC〜C−アルケニルオキシを包含し、ここでC〜C−アルキル及びC〜C−アルコキシはフルオロのようなハロゲン、ヒドロキシ及びC〜C4−アルコキシからなる群より選択される1〜3個の同一又は異なる基でさらに置換されてもよい。
【0038】
本発明の組成物の1つの種類において、Aを含有する環はフェニルであり、Rは水素であり、Rは水素又は2−メタンスルホニルである。別の種類においては、Aを含有する環は3−ピリジルであり、Rは水素又は2−メタンスルホニルである。
【0039】
及びRも式(I)に関連して定義された置換基種のいずれかから選択されてもよく、例えば水素、フルオロ、クロロ又はブロモ、及びメチルのようなC〜C−アルキルであり、前記C〜C−アルキルはトリフルオロメチルの場合のようにハロゲンでさらに置換されてもよい。本発明の化合物の1つの種類において、Rは水素でありRは3−トリフルオロメチル、3−クロロ又は3−ブロモである。
【0040】
は−CO11、−CONR1213又は−COR14であり、ここでR11、R13、R14は各々独立して式−[Alk−[Q]−[Alk−Zの基を表し、式中
p、q及びtは、p、q及びtが同時に0でないという条件で、独立して0又は1であり;
Alk及びAlkは各々独立して−CH−、−CHCH−又は−CHCHCH−のようなC〜Cアルキレン基を表し;
Qは1,3−シクロペンチレン、1,4−シクロヘキシレン、1−4−フェニレン、2,5−ピリジニレン、1,4−ピペリジニレン、又は1,4−ピペラジニレン基のような3〜9員で二価の単環式又は二環式の炭素環式又は複素環式基を表し;
【0041】
Zは
(i)ピリジル又はイミダゾリル環のような5若しくは6員の単環式窒素複素環又は1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン環のような7若しくは8員の架橋窒素複素環系であり、前記単環式環又は架橋環系は環炭素を介して残りの分子と連結しており、その際環窒素はメチルのようなC〜Cアルキル、フェニル又はベンジルによる置換によって四級化されてもよく、後者はそのフェニル環において任意に置換されている;又は
【0042】
(ii)−N(R)(R)であって、式中R及びRは独立して水素、又はメチル、エチル又はn−若しくはイソプロピルのようなC〜C−アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシルのようなC〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環で置換されたベンジルのようなフェニル(C〜C)アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子をさらに含有してもよい環原子が5〜7個の単環式複素環(ピペリジン、ピペラジン若しくはモルホリン環のような)を形成する;又は
【0043】
(iii)−N(R)(R)(R)であって、式中
、R及びRは独立して、メチル、エチル又はn−若しくはイソプロピルのようなC〜C−アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシルのようなC〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環で置換されたベンジルのようなフェニル(C〜C)アルキル基である;又は
は、メチル、エチル又はn−若しくはイソプロピルのようなC〜C−アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシルのようなC〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環で置換されたベンジルのようなフェニル(C〜C)アルキル基であり、R及びRはそれらが結合する窒素と一緒になって、N、O及びSから選択されるヘテロ原子をさらに含有してもよい環原子が5〜7個の単環式複素環(ピペリジン、ピペラジン若しくはモルホリン環のような)を形成する;又は
、R及びRはそれらが結合する窒素と一緒になって、7若しくは8員の架橋複素環を形成する;
【0044】
(iv)−NRC(=NR)NRであって、式中
、R、R及びRは独立して水素又はメチルのようなC〜C−アルキルである;又はR、R、R及びRのいずれか2つは独立して水素又はC〜C−アルキルであり、他の2つは一緒になってCH−、−CHCH−又は−CHCHCH−のようなC〜Cアルキレン基を表す;又は
(v)−C(=NR)NRであって、式中
、R及びRは独立して水素又はメチルのようなC〜C−アルキルである;又はR、R及びRのいずれか1つは水素又はメチルのようなC〜C−アルキルであり、他の2つは一緒になってCH−、−CHCH−又は−CHCHCH−のようなC〜Cアルキレン基を表す;
【0045】
(vi)−NRC(=NR)Rであって、式中
、R及びRは独立して水素又はメチルのようなC〜C−アルキルである;又はR、R及びRのいずれか1つは水素又はメチルのようなC〜C−アルキルであり、他の2つは一緒になってCH−、−CHCH−又は−CHCHCH−のようなC〜Cアルキレン基を表す。
【0046】
より複雑なR置換基は、−CO11、−CONR1213又は−COR14によって表わされる置換基を包含し、ここでR11、R13及びR14は式−[Alk−[Q]−[Alk−Zを有し、式中−[Alk−[Q][Alk−は構造(IV)及び(V)より選択され、ここでV及びVは各々独立して0、1、2、3又は4であり、Xは3〜9員で二価の単環式又は二環式の炭素環式又は複素環式基、例えば1,4−シクロヘキシレン、1,3シクロペンチレン、1,4フェニレン、又は2,4ピリジニレンであり、Zは構造(VI)〜(XVI)より選択され、ここでR、R、R、及びRは式(I)に関連して定義された通りであり、V、V、及びVは各々独立して0、1、2、3又は4である。
【0047】
【化2】
(IV) (V)
【0048】
【化3】
(VI) (VII) (VIM)
【0049】
【化4】
(IX) (X) (XI)
【0050】
【化5】
(XII) (XIII) (XIV)
アミン及びピリジン窒素原子は、基(VI)〜(XIV)中に存在する場合、任意に置換されたC〜C−アルキル又はベンジル基で四級化されてもよい。
【0051】
本発明の化合物の1つの種類において、Rは式−CO11を有し、式中R11は式−Alk−Zの基を表し、式中Alk及びZは上記の定義による。例えばこの種類の化合物において、Alkは−CH−、−CHCH−又は−CHCHCH−であり、Zは−N(R)(R)又は−N(R)(R)(R)であり、ここでR、R及びRは独立してメチル、エチル又はn−若しくはイソプロピルのようなC〜C−アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシルのようなC〜C−シクロアルキル基、又は任意にそのフェニル環で置換されたベンジルのようなフェニル(C〜C)アルキル基である。したがって、Rは−COCHCHN(CH又は−COCHCH(CHであってもよい。
【0052】
−X−X−は−CR15=N−又は−NR19−CO−であって、式中R15及びR19は式(I)に関連する上記の定義による。したがって、
19は、例えば水素、メチル、エチル、n−又はイソ−プロピル、2−、3−又は4−ピリジル、2−又は3−チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ベンジル、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、又はトリフルオロメチルであってもよく;
【0053】
15は、例えばベンジル;ニトリル(−CN);アミノメチル;2−アミノエチル;NHR−(C〜C)アルキル(式中Rはメチル又はエチルであり、(C〜C)アルキルは−CH−又は−CHCH−である);NR−(C〜C)アルキル(式中R及びRは独立してメチル又はエチルであり、(C〜C)アルキルは−CH−又は−CHCH−である);−COOH;又は−COR、−SO、−CONH、−CONHR、−SONHR、−CONR、又は−SONR(式中R及びRは独立してメチル又はエチルであるか、又はR及びRは同じ窒素原子に結合する場合に環状アミノを形成する)であってもよい。
【0054】
具体的な基R〜Rの例としては、本明細書の実施例の化合物中に存在する基が挙げられる。
【発明の効果】
【0055】
本発明化合物の治療上の有用性は、ヒト好中球エラスターゼの作用が少なくとも部分的に介在することが知られているいかなる疾患にも関連する。例えば、本発明の化合物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺気腫、肺炎、及び肺線維症の治療に有益である。
【0056】
本発明は、活性成分として本発明の化合物を含む医薬製剤にも関する。肺の炎症性疾患の予防及び治療のために、他の化合物を本発明の化合物と組み合わせてもよい。したがって、本発明は、治療上有効な量の本発明の化合物と1つ以上のその他の治療薬とを含む、肺の炎症性疾患を予防及び治療するための医薬組成物にも関する。
【0057】
本発明の化合物との併用療法に適した治療薬には、(1)コルチコステロイド、例えば、フルチカゾン又はブデソニド、(2)β2−アドレナリン受容体作用薬、例えば、サルメテロール又はフォルメテロール、(3)ロイコトリエン調節薬、例えば、モンテルカスト又はプランルカスト、(4)抗コリン作用剤、例えば臭化チオトロピウムのような選択的ムスカリン−3(M3)受容体拮抗薬、(5)ホスホジエステラーゼ−IV(PDE−IV)阻害薬、例えば、ロフルミラスト又はシロミラスト、(6)鎮咳薬、例えば、コデイン又はデキストラモルファン、及び(7)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、イブプロフェン又はケトプロフェンが包含される。
【0058】
第1及び第2の活性成分の重量比は、変動してもよく、各成分の有効用量に依存する。一般には、それぞれの有効用量を使用する。
【0059】
本発明化合物の予防又は治療上の投与量の大きさは、当然、治療すべき症状の重症度の性質、並びに個々の化合物及びその投与経路で異なり、一般的に薬学分野で必要とされる臨床試験によって決定されるであろう。また、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても異なる。一般に、1日あたり投与量の範囲は、1回又は分割投与で、哺乳類の体重1kgにつき約0.001mg〜約100mg、好ましくは0.01mg〜約50mg/kg、最も好ましくは0.1〜10mg/kgの範囲内にある。一方、場合によっては、これらの限界を超えた投与量を用いることが必要な場合もある。
【0060】
本発明の別の態様は、本発明の化合物と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。用語「組成物」は、医薬組成物の場合、活性成分と担体を構成する不活性成分(薬学的に許容可能な賦形剤)とを含む製品、並びに、いずれかの2つ以上の成分の組合せ、複合若しくは凝集から、又は1つ以上の成分の解離から、又は1つ以上の成分のその他の種類の反応若しくは相互作用から、直接的又は間接的に生じるいかなる製品も包含することを意図する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と、さらなる活性成分と、薬学的に許容可能な賦形剤とを混合することによって作製されるいかなる組成物も包含する。
【0061】
本発明の医薬組成物は、活性成分としての本発明の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を含み、さらには薬学的に許容可能な担体及び任意にその他の治療用成分を含有してもよい。用語「薬学的に許容可能な塩」は、無機の塩基又は酸及び有機の塩基又は酸を包含する薬学的に許容可能な無毒性の塩基又は酸から調製される塩を指す。
【0062】
哺乳類、特にヒトに対して有効な投与量の本発明の化合物を提供するために、いかなる適切な投与経路も用いてもよい。治療上の使用では、活性化合物をいずれかの都合のよい、適切な又は有効な経路で投与してもよい。適切な投与経路は、当業者に既知であり、経口、静脈内、直腸、非経口、局所、眼内、鼻内、口腔内及び肺(吸入による)を包含する。
【0063】
吸入での投与に適した組成物は、既知であり、このような組成物での使用が知られている担体及び/又は希釈剤を包含してもよい。当該組成物は、0.01〜99重量%の活性化合物を含有してもよい。好ましくは、単位用量は、1μg〜10mgの量の活性化合物を含む。
【0064】
最も適切な投与量レベルは、当業者に既知であるいずれの好適な方法によって決定されてもよい。しかし、特定の患者に対する具体的な量は、使用する具体的な化合物の活性、患者の年齢、体重、食事、全身健康状態及び性別、投与時間、投与経路、排泄速度、他の薬剤の使用、治療中の疾患の重症度を包含する種々の要因によって決まることは理解されるであろう。
【0065】
吸入で送達する場合、活性化合物は、好ましくはミクロ粒子の形態である。ミクロ粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥及び微粉化を包含する種々の技術で調製できる。
【0066】
例を挙げれば、本発明の組成物は、ネブライザーから送達するための懸濁液として、又は、例えば加圧定量投与吸入器(PMDI)で使用するための液体噴射剤中のエアロゾルとして調製されてもよい。PMDIでの使用に適した噴射剤は、当業者に既知であり、CFC−12、HFA−134a、HFA−227、HCFC−22(CCl2F2)及びHFA−152(CH4F2及びイソブタン)を包含する。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)を使用する送達のための乾燥粉末形態である。多くの種類のDPIが知られている。
【0068】
投与による送達のためのミクロ粒子は、送達及び放出を助ける賦形剤と共に製剤化されてもよい。例えば、乾燥粉末製剤で、ミクロ粒子は、DPIから肺への流れを助ける大きな担体粒子と共に製剤化されてもよい。好適な担体粒子は既知であり、乳糖粒子が挙げられる。該粒子は90μmを超える空気力学的質量中位径を有してもよい。
【0069】
エアロゾルをベースにした製剤の場合、好ましい組成は次の通りである。
本発明の化合物 24mg/缶
レシチン、NF 液状濃縮物 1.2mg/缶
トリクロロフルオロメタン、NF 4.025g/缶
ジクロロジフルオロメタン、NF 12.15g/缶。
【0070】
本発明の化合物は、本発明化合物が有用である疾患又は症状の治療/予防/抑制又は改善で使用されるその他の薬剤と組み合わせて使用されてもよい。このようなその他の薬剤は、そのために通常的に使用される経路及び量で本発明の化合物と同時存在的に又は逐次的に投与されてもよい。本発明の化合物が1つ以上のその他の薬剤と同時存在的に使用される場合には、本発明の化合物に加えて、このようなその他の薬剤を含有する医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1つ以上のその他の活性成分も含有する組成物を包含する。
【0071】
本発明の薬剤は、吸入形態で投与されてもよい。エアロゾルの発生は、例えば加圧式噴霧器又は超音波噴霧器を用いて行うことができ、噴射剤式定量エアロゾルの使用、又は例えば吸入カプセル若しくはその他の「乾燥粉末」送達システムから微細化された活性化合物を噴射剤なしで投与するのが好ましい。
【0072】
活性化合物は、用いられる吸入システムに応じて記載通りに投与される。活性化合物に加えて、投与形態は、例えば噴射剤(定量エアロゾルの場合、例えばフリゲン(Frigen))、界面活性物質、乳化剤、安定化剤、保存剤、香料、充填剤(例えば粉末吸入の場合、ラクトース)のような賦形剤、又は適当な場合には他の活性化合物をさらに含有してもよい。
【0073】
吸入の目的で、患者に適した吸入技術を用いて、最適粒径のエアロゾルを発生及び投与できる多数のシステムを利用できる。定量エアロゾル用のアダプター(スペーサー、エクスパンダー)及び洋梨形の容器(例えば、Nebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標))並びに噴射スプレーを噴出する自動器具(Autohaler(登録商標))の使用に加えて、特に粉末吸入の場合には、多数の技術的な解決方法が利用可能である(例えば、Diskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)又はEP−A−0505321に記載の吸入器)。
【発明を実施するための形態】
【0074】
合成方法
−Xが−CR15=N−である本発明の例は、スキーム1〜4にしたがって調製できる。X−Xが−NR19−CO−である本発明の化合物は、スキーム5〜10にしたがって調製できる。基R11、基R13及び基R14は、式−[Y]−[Alk−[Q]−[Alk−Zの基又は後にそのように変換できる基である。X−Xが−CR15=N−又は−NR19−CO−である化合物の場合、前記基は、限定するものではないが例えばスキーム11にしたがって組み込まれてもよい。
【0075】
スキーム1において、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−シアノベンズアルデヒドのようなアルデヒド及びβ電子求引性基E(例えば、エステル、アミド又はケトン)を有するケトンは反応して中間体(1)を生成し、前記中間体は続いて銅触媒下で3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸のような好適なアリールボロン酸でアリール化されてタイプ(2)の例を与えることができる。前記反応は、塩基(例えば、ピリジン又はトリエチルアミン)の存在下で、ジクロロメタンのような溶媒の存在下又は不在下のいずれかで実施できる。反応はすべて、使用する試薬と共存可能な種々の溶媒中で実施され、種々の好適な温度(一般的には使用する溶媒に応じて0〜80℃)にて実施されてもよい。
【0076】
【化6】
EtN/DCM又はピリジン
スキーム1
【0077】
ラセミ混合物(1)又は(2)の鏡像異性体を、キラルHPLCによって分離することができた。別の方法として、限定するものではないが、例えば対応するエステルの開裂によって、カルボン酸を構造(1)又は(2)に組み込むことができる場合、キラル塩基を用いた結晶化によって分離を実施できた(スキーム2及び3)。
【0078】
【化7】
エステル i)キラル塩基を用いた結晶化
開裂 ii)HCl
R ’=H又はAr
R ’’=例えばアリル又はベンジル 単一の鏡像異性体
スキーム2
【0079】
【化8】
エステル i)キラル塩基を用いた結晶化
開裂 ii)HCl
R ’=H又はAr
R ’’=アルキル又はアリール 単一の鏡像異性体
スキーム3
【0080】
スキーム1の3成分反応は、所望の立体異性体を排他的に又はその鏡像異性体よりも過剰に与えるキラルルイス酸を用いる立体特異的な方法でも実施できる(スキーム4)(J.Am.Chem.Soc.,2005,127,16386−16387)。
【0081】
【化9】
ルイス酸
キラル配位子
スキーム4
【0082】
本発明のその他の実施例(6)は、スキーム5にしたがって調製できる。O−メチル尿素、アルデヒド、及びβ電子求引性基(例えば、エステル、アミド又はケトン)を有するケトンは、炭酸水素ナトリウムのような塩基の存在下で反応して中間体(3)を生成する。クロロギ酸4−ニトロフェニル又はクロロギ酸ペンタフルオロフェニルのような活性化されたクロロギ酸エステルとの反応は、(4)を生成する。その後、置換ヒドラジンを用いた閉環により、(5)を生成できる。(5)のアリール化は、3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸のようなアリールボロン酸を用いて、銅触媒下、及び塩基(例えばピリジン又はトリエチルアミン)の存在下で実施できる。前記反応は溶媒ありでもなしでも実施できる。基R ’は好適な条件下で取り除かれ、R ’=Hの場合、窒素原子は標準的な化学反応を用いてアルキル化又はアクリル化されてもよい。反応はすべて、使用する試薬と共存可能な種々の溶媒中で実施され、種々の好適な温度(一般的には使用する溶媒に応じて0〜80℃)にて実施されてもよい。
【0083】
【化10】
ピリジン、DCM
スキーム5 EtN/DCM又はピリジン
【0084】
ラセミ混合物(3)、(5)又は(6)の鏡像異性体は、キラルHPLCによって分離されてもよい。スキーム6〜9は、カルボン酸基をキラル中間体に組み込むことでキラル塩の結晶化による分離がいかにして可能になるかを示す。
【0085】
【化11】
エステル i)キラル塩基を用いた結晶化
開裂 ii)HCl
R ’=例えばアリル又はベンジル 単一の鏡像異性体
スキーム6
エステル i)キラル塩基を用いた結晶化
開裂 ii)HCl
R ’=H又はAr
R ’’=例えばアリル又はベンジル 単一の鏡像異性体
スキーム7
【0086】
【化12】
エステル i)キラル塩基を用いた結晶化
開裂 ii)HCl
R ’=アルキル又はアリール 単一の鏡像異性体
スキーム8
【0087】
【化13】
エステル i)キラル塩基を用いた結晶化
開裂 ii)HCl
R ’=H又はAr
R ’’=アルキル又はアリール 単一の鏡像異性体
スキーム9
【0088】
スキーム5の3成分反応は、より活性な鏡像異性体を排他的に又は鏡像異性体過剰に与える立体特異的な方法でも実施できる(J.Am.Chem.Soc.,2005,127,16386−16387)。
【0089】
【化14】
ルイス酸
キラル配位子
スキーム10
【0090】
スキーム1、3、4、5、8、9及び10において、基Eは種々の段階で標準的な化学的方法を用いて修飾されてもよい。スキーム11は、基Eがエステルである場合に、当業者が利用可能な化学反応を用いてこの官能基がいかに変換される可能性があるかを示す。
【0091】
【化15】
エステル化
例:HO−[Alk−[Q]−[Alk−Z
DIPEA、HATU、DMF
【0092】
【化16】
エステル 例:アリル又はベンジル
開裂
【0093】
【化17】
アミド化
例:HN−[Alk−[Q]−[Alk−Z
DIPEA、HATU、DMF
スキーム11
【実施例】
【0094】
全般的な実験の詳細
特記のない限り、反応は不活性雰囲気下で実施されなかった。分離がRediSep(登録商標)Siカートリッジを用いて実施された場合、自動化クロマトグラフィーシステム(CombiFlash(登録商標)companion) を平均粒径35〜70μm(230〜240メッシュ)のプレパックドポリプロピレン(RediSep(登録商業))カラムと共に使用した。「Isolute(登録商標)PE−AXカートリッジ」は、化学結合した第四級アンモニウム官能基を有するシリカベースの吸着剤を含有するプレパックドポリプロピレンカラムを指す。溶媒及び市販試薬は、すべて、受領したものをそのまま使用した。
【0095】
分取HPLCの条件
HPLCシステム1
C18−逆相エンドキャップカラム(250×21.2mmのGeminiカラム、粒径5μm)、A:水;B:アセトニトリル(0.1%ギ酸添加)のグラジエントを用い、典型的に18ml/分の流量及びBが1%/分で増加するグラジエントで溶出。254nmでUV検出。
【0096】
LC−MS分析条件
LC−MS方法1
C18−逆相カラム(30×4.6mmのPhenomenex Luna、粒径3μm)を備えたWaters Platform LC、A:水+0.1%ギ酸;B:メタノール+0.1%ギ酸で溶出。グラジエント:
検出−MS、ELS、UV
MSイオン化法−エレクトロスプレー(陽及び陰イオン)。
【0097】
LC−MS方法2
C18−逆相カラム(100×2.1mmのAcquity BEH、粒径1.7μm)を備えたWaters Micromass ZQ2000を40℃に保ち、A:水+0.1%ギ酸;B:アセトニトリル+0.1%ギ酸で溶出。グラジエント:
検出−MS、UV PDA
MSイオン化法−エレクトロスプレー(陽/陰イオン)。
【0098】
実験の節で使用される略語:
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジ−イソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA イソプロピルアルコール
RT 室温
Rt 保持時間
【0099】
中間体1
【0100】
【化18】
【0101】
7−(4−シアノフェニル)−5−メチル−4,7−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸アリルエステル
【0102】
3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(1.28mg、15.24mmol)及びトリエチルアミン(2.2ml、15.25mmol)をIPA(30ml)中90℃にて、固体の大部分が溶解するまで加熱した。4−シアノベンズアルデヒド(2.0g、15.27mmol)及びアセト酢酸アリル(2.17g、15.28mmol)を添加し、反応を90℃にて一晩加熱した。揮発性物質を蒸発させ、残留物を酢酸エチルと水との間に分配させた。固体物質を濾別し、酢酸エチル層を分離し、塩水で洗浄、乾燥(NaSO)して減量した。析出した固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、先に得た固体と合わせた。淡黄色の生成物を40℃で減圧乾燥した。
収量:1.42g(29%)
LC−MS(方法1):Rt=2.88分、m/z=322[M+H]
【0103】
中間体2
【0104】
【化19】
【0105】
7−(4−シアノフェニル)−5−メチル−4−(3−トリフルオロメチルフェニル)−4,7−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸アリルエステル
【0106】
中間体1(1.42g、4.42mmol)、3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(1.68g、8.85mmol)、酢酸銅(II)(1.08g、8.85mmol)及びトリエチルアミン(1.23ml、8.85mmol)をDCM(15ml)に溶解し、当該反応を大気中で7日間攪拌した。さらなる量のボロン酸、トリエチルアミン及び酢酸銅(II)を添加し、さらに7日間の後、当該混合物をDCM及び1M HCl(aq)で希釈し、Celite(登録商標)にて濾過した。有機層を分離し、塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)して、蒸発させた。粗生成物の茶色い油をメタノールに溶解し、メタノールでコンディショニングしたIsolute(登録商標)PE−AXカートリッジを通して溶出した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をRediSep(登録商標)Siカートリッジ(120g)にて5〜100%酢酸エチル/ペンタンで溶出した。生成物は黄色の泡状物として得られた。
収量:276mg(13%)
LC−MS(方法1):Rt=3.90分、m/z=466[M+H]
【0107】
中間体3
【0108】
【化20】
【0109】
7−(4−シアノフェニル)−5−メチル−4−(3−トリフルオロメチルフェニル)−4,7−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸
【0110】
中間体2(276mg、0.594mmol)、モルホリン(206mg、2.37mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(68mg、0.059mmol)をDCM(5ml)に溶解し、当該溶液を室温で1時間静置した。前記反応混合物をDCMで希釈し、水を加えた。固体物質を濾別した。
【0111】
DCMを、分離、乾燥(NaSO)し、蒸発させた。残留物をアセトニトリルで倍散し、より多くの固体を得た。HPLCシステム1を用いることで、母液からさらなる量の生成物を得た。
収量:183mg(72%)
LC−MS(方法2):Rt=4.26分、m/z=426[M+H]
中間体4
【0112】
【化21】
【0113】
4−(4−シアノフェニル)−2−メトキシ−6−メチル−1,4−ジヒドロ−ピリミジン−5−カルボン酸アリルエステル
【0114】
4−シアノベンズアルデヒド(13.1g、100mmol)をDMF(200ml)に溶解し、重炭酸ナトリウム(33.4g、400mmol)を添加した後、O−メチルイソ尿素ヘミ硫酸塩(14.8g、120mmol)及びアセト酢酸アリル(15.06g、110mmol)を添加した。前記混合物を窒素下、70℃で一晩加熱した。室温まで放置冷却した後、混合物を濾過し、濾液を蒸発させた。得られたオレンジ色の油を酢酸エチルと水との間で分配した。有機層を分離し、塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、蒸発させた。粗生成物を、0〜30%酢酸エチル/DCMで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製し、純粋な中間体を黄色の泡状物として得た。
収量:16.8g(53%)
LC−MS(方法1):Rt=2.18分、m/z=312[M+H]
【0115】
中間体5
【0116】
【化22】
【0117】
5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−2,3,5,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボン酸アリルエステル
【0118】
中間体4(2.15g、6.91mmol)及びピリジン(4.5ml)をDCM(20ml)に溶解し、該溶液を氷浴中で冷却した。クロロギ酸4−ニトロフェニル(1.38g、6.91mmol)を添加し、該反応を冷却しながら攪拌した。2時間後にメチルヒドラジン(550μl、10.4mmol)を添加し、10分後に反応をDCMで希釈し、水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、蒸発させた。微量のピリジンが共沸混合物としてトルエンと共に除去された。生成物を40〜80%酢酸エチル/シクロヘキサンで溶出するRediSep(登録商標)Siカラム(120g)で精製した。中間体5が黄色の固体として得られた。
収量:1.22g(50%)
LC−MS(方法1):Rt=2.79分、m/z=352[M+H]
【0119】
中間体6
【0120】
【化23】
【0121】
5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−8−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,3,5,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボン酸アリルエステル
【0122】
中間体5(1.01g、2.88mmol)、3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(1.09g、5.74mmol)、酢酸銅(II)(525mg、4.27mmol)及びピリジン(455mg、5.76mmol)をDCM(15ml)中、大気下、室温にて攪拌した。16時間後、トリエチルアミン(1.16g、11.5mmol)を添加し、反応をさらに3日間攪拌した。続いてピリジン(10ml)を添加し、反応を大気中、50℃にて7日間加熱した。冷却後、ピリジンを蒸発させ、残留物をDCMと1M HCI(aq)との間で分配した。当該二相混合物を、Celite(登録商標)で濾過し、有機層を分離、乾燥(NaSO)し、蒸発させた。残留物を酢酸エチルとペンタンの1:1混合物で処理し、固体を濾別した。濾液を蒸発させ、粗生成物を20〜100%酢酸エチル/ペンタンで溶出するRediSep(登録商標)Siカートリッジ(80g)で精製した。中間体6がオレンジ色のガムとして得られた。
収量:277mg(19%)
LC−MS(方法1):Rt=3.81分、m/z=496[M+H]
【0123】
中間体7
【0124】
【化24】
【0125】
5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−8−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,3,5,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボン酸
【0126】
中間体3についての記載と類似の方法を用いて、中間体7を中間体6から調製した。
LC−MS(方法1):Rt=3.20分、m/z=456[M+H]
【実施例1】
【0127】
【化25】
【0128】
7−(4−シアノフェニル)−5−メチル−4−(3−トリフルオロメチルフェニル)−4,7−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボン酸2−ジメチルアミノエチルエステル
【0129】
中間体3(50mg、0.118mmol)、N,N−ジメチルエタノールアミン(209mg、2.35mmol)及びHATU(53mg、0.141mmol)をDMF(1ml)に溶解し、当該溶液を室温で一晩静置した。溶媒を蒸発させ、生成物を、HPLCシステム1を用いて精製した。
収量:10mg(17%)
LC−MS(方法2):Rt=3.41分、m/z=497.18[M+H]
【実施例2】
【0130】
【化26】
【0131】
5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−8−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,3,5,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボン酸2−ジメチルアミノエチルエステル
【0132】
実施例1の合成に用いた方法と類似の方法を用いて、実施例2を中間体7から調製した。
LC−MS(方法2):Rt=3.46分、m/z=527.31[M+H]
【実施例3】
【0133】
【化27】
【0134】
{2−[5−(4−シアノフェニル)−2,7−ジメチル−3−オキソ−8−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,3,5,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリミジン−6−カルボニルオキシ]エチル}トリメチルアンモニウムブロミド
【0135】
実施例2(26mg、0.05mmol)をブロモメタンの30%アセトニトリル溶液(4ml)に溶解した。反応を室温で一晩静置した。揮発性物質を蒸発させた。残留物を水に溶解し、凍結乾燥して、実施例3を白色固体として得た。
収量:31mg(100%)
LC−MS(方法2):Rt=3.45分、m/z=541.31[M+H]
【0136】
生物学的アッセイ
実施例の化合物をHNE阻害活性について試験した。
【0137】
蛍光性ペプチド基質
アッセイは、96ウェルプレート中、100μlのアッセイ総容積で実施した。酵素(ヒト白血球エラスターゼ、シグマ(Sigma)E8140)の最終濃度は0.00036単位/ウェルであった。ペプチド基質(MeO−Suc−Ala−Ala−Pro−ValAMC、カルビオケム(Calbiochem)#324745)は、100μMの最終濃度で使用した。DMSOの最終濃度はアッセイ緩衝液(0.05M トリスHCl、pH7.5、0.1M NaCl、0.1M CaCl、0.0005%brij−35)中、1%であった。酵素を添加することによって酵素反応を開始した。酵素反応は室温で実施し、30分後に50μlの大豆トリプシン阻害剤(シグマ(Sigma)T−9003)を50μg/ウェルの最終濃度で添加することによって停止した。
380nmの励起フィルター及び460nmの発光フィルターを使用したFLEXステーション(モレキュラーデバイス(Molecular Devices))で蛍光を読み取った。1000nM〜0.051nMの範囲の10の濃度からなる濃度系列から、化合物の効力を測定した。結果は、それぞれ二重測定で実施した2つの独立した実験の平均値である。
【0138】
化合物は、1〜200nMの範囲で活性を有した。