(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065244
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】一種のグラフェンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/15 20170101AFI20170116BHJP
C01B 32/18 20170101ALI20170116BHJP
C01B 32/182 20170101ALI20170116BHJP
【FI】
C01B31/02 101Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-175208(P2015-175208)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-56087(P2016-56087A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】201410454395.2
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516367109
【氏名又は名称】深▲せん▼市本征方程石墨▲しー▼技▲術▼股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲剣▼洪
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼黔玲
(72)【発明者】
【氏名】何▲伝▼新
(72)【発明者】
【氏名】徐▲堅▼
(72)【発明者】
【氏名】胡超
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102169985(CN,A)
【文献】
特表2013−507500(JP,A)
【文献】
特表2014−504436(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0027678(US,A1)
【文献】
特開2012−025653(JP,A)
【文献】
E.FiZER et al.,Optimization of Stabilization and Carbonization Treatment of PAN Fibers and Structural Characterization of the Resulting Carbon Fibers,Carbon,1986年,vol.24,No.4,p.387-395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップを含み、
A、液体アクリロニトリルオリゴマー(LPAN)溶液を80〜300℃の温度で8〜72時間撹拌して、部分的に環化したLPAN溶液を得て、
B、部分的に環化したLPAN溶液を200〜300℃の温度で1〜10時間撹拌して、ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマーを得て、
C、熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマーを研磨・ふるい落として、室温で乾燥させ熱酸化前駆体を得て、
D、熱酸化前駆体を不活性ガスの保護で、ガスフロー10〜500ml/min、温度400〜1000 ℃の条件で1〜24時間か焼して、低温炭化前駆体を得て、
E、低温炭化前駆体を不活性ガスの保護で、ガスフロー10〜500ml/min、温度1000〜 3000℃の条件で1〜10時間か焼して、グラフェン材料を得ることを特徴とする一種のグラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記のステップAが、更に、部分的に環化したLPAN溶液にドーパントを入れて十分に混合しLPAN溶液のドーピング改質を行うことを含むことを特徴とする請求項1に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記のドーパントが金属ドーパント又は非金属ドーパントであり、金属ドーパントの場合は、錫、銅、銀、アルミ、クロム、鉄、チタン、マンガン、ニッケル、コバルト及びその金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属弗化物、金属臭化物、金属硫化物又は金属有機化合物の一種もしくは多種の混合物であり、非金属ドーパントの場合は、シリコン、リン、窒素、炭素、硫黄及びその化合物の一種もしくは多種であることを特徴とする請求項2に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【請求項4】
前記の混合方式が撹拌、超音波又はボールミルによるグラインダー加工であることを特徴とする請求項2に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記のLPAN溶液の溶質が液体アクリロニトリルオリゴマーで、その相対分子量が106〜100000、溶剤が水、メチルアルコール又はエチルアルコールの一種又は二種の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【請求項6】
前記の液体アクリロニトリルオリゴマーがアクリロニトリルのホモポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記の液体アクリロニトリルオリゴマーがアクリロニトリルと他のビニルモノマとの共重合体であり、他のビニルモノマがスチロール、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリル酸又はメチレンコハク酸であることを特徴とする請求項5に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【請求項8】
ステップDとEのか焼に使う不活性ガスが窒素ガス又はアルゴンガスであることを特徴とする請求項1に記載の一種のグラフェンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料分野、特に一種のグラフェ
ンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、2004年に発見された新型の2次元平面ナノメートル材料で、その特殊な単原子層構造により豊富かつ新奇な物理性質を持っている。近年、グラフェンは注目される国際先端科技と話題になった。グラフェンの研究と応用では、その良い性質を十分発揮させ、成形加工性を改善する(分散性と溶解性等)ために、グラフェンを機能化しなければならない。研究人員はこの分野で積極的且つ有効的な仕事を展開している。しかし、グラフェンの機能化に関する研究がまだ探求段階で、各種機能化の方法や効果についてシステム的な認識は足りない。どうして実際のニーズによりグラフェンに所期且つ制御可能な機能化をできるのかは、
現在のチャンスとチャレンジである。
【0003】
グラフェンとは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシート。その基本構造ユニットが有機材料の中で最も安定したベンゼン環であり、理論的な厚さが約0.35nm、
現在発見された2次元材料の中で最も薄いものである。グラフェンは他の
グラファイト材料の基本ユニットであり、零次元のフラーレンになったり、1次元のCNTs(カーボンナノチューブ)や3次元のグラファイトになったりできる。その特殊な構造が豊富且つ奇妙な物理現象を含んでいるため、グラフェンは多くの優れた物理・化学性質を表現する。例えば、グラフェンは強度が測定された材料の中で最も高いもの、130GPaに達し、鋼の100倍以上である。キャリア易動度は1.5x10
4cm
2V
-1S
-1に達し、
現在知られたキャリア易動度の最も高いインジウムアンチモンの2倍、商用シリコンチップの10倍以上である。特定の条件(低温急冷等)で、易動度が2.5×10
5cm
2V
-1S
-1に達
する。グラフェンの熱伝導性が5x10
3Wm
-1K
-1に達し、ダイヤモンドの3倍である。また、グラフェンには量子ホール効果(Hall Effect)及び室温強磁性等の特殊性質がある。これらの優れた特性により科技業界の新たな「カーボン」研究風潮が引き起こされた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
現在グラフェンを製造する主要な方法
は実験段階に止まっている。機械的剥離法、酸化グラフェン還元法、化学気相成長法、エピタキシー成長法、電気化学法とアーク法等があるが、これらの方法は実験室の少量製造に限
られ、グラフェンの品質を確保できず、大規模量産・産業化生産に使うことができない。
【0005】
その故、現有の技術には改進・発展の
余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は一種のグラフェン及びその製造方法を提供する。現有方法が大規模量産・産業化生産に適さず、グラフェンの品質を確保できない問題を解決することを目指している。
【0007】
本発明の技術計画は下記の通り
【0008】
一種のグラフェンの製造方法
であって、下記ステップを含む。
【0009】
A、
液体アクリロニトリルオリゴマー(LPAN
)溶液を80〜300℃の温度で8〜72時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得る。
【0010】
B、
部分的に環化したLPAN溶液を200〜300℃の温度で1〜10時間撹拌して、
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマーを得る。
【0011】
C、熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマーを研磨・ふるい落として、室温で乾燥させ熱酸化前駆体を得る。
【0012】
D、熱酸化前駆体を不活性ガスの保護で、ガスフロー10〜500ml/min、温度400〜1000 ℃の条件で1〜24時間か焼して、低温炭化前駆体を得る。
【0013】
E、低温炭化前駆体を不活性ガスの保護で、ガスフロー10〜500ml/min、温度1000〜3000℃の条件で1〜10時間か焼して、グラフェン材料を得る。
【0014】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記のステップ
Aは、
部分的に環化したLPAN溶液にドーパントを入れて十分
混合しLPAN溶液のドーピング改質を行うこと
を含む。
【0015】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記のステップAのドーパントが金属ドーパント又は非金属ドーパントである。金属ドーパントの場合は、錫、銅、銀、アルミ、クロム、鉄、チタン、マンガン、ニッケル、コバルト及びその金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属弗化物、金属臭化物、金属硫化物又は金属有機化合物の一種もしくは多種の混合物である。非金属ドーパントの場合は、シリコン、リン、窒素、炭素、硫黄及びその化合物の一種もしくは多種である。
【0016】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記の
混合方式は撹拌、超音波又はボール
ミルによるグラインダー加工である。
【0017】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記のLPAN溶液の溶質は液体アクリロニトリルオリゴマーで、相対分子量が106〜100000で、溶剤が水、メチルアルコール又はエチルアルコールの一種又は二種の組合
である。
【0018】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記の液体アクリロニトリルオリゴマーはアクリロニトリルのホモポリマーである。
【0019】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記の液体アクリロニトリルオリゴマーはアクリロニトリルと他のビニルモノマとの
共重合体である。他のビニルモノマはスチロール、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリル酸又はメチレンコハク酸である。
【0020】
前記したグラフェン製造方法に
おいて、前記のステップDとEのか焼に使う不活性ガスは窒素ガス又はアルゴンガスである。
【0021】
削除
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施により、下記の有益効果がある。
【0023】
本発明の方法により製造されたグラフェンには高い導電率がある。その製造プロセスが比較的に簡単で、制御も便利である。グラフェンの炭素層の構造が比較的に完全
で、グラフェンの品質が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明における一種のグラフェンの製造方法の良い実施例の流れ図である。
【
図2a】実施例1
で製造されたグラフェンのRamanスペクトルである。
【
図2b】実施例1
で製造されたグラフェンのTEMスペクトルである。
【
図3a】実施例2
で製造されたグラフェンのRamanスペクトルである。
【
図3b】実施例2
で製造されたグラフェンのTEMスペクトルである。
【
図4a】実施例3
で製造されたグラフェンのRamanスペクトルである。
【
図4b】実施例3
で製造されたグラフェンのTEMスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、一種のグラフェン及びその製造方法を提供する。本発明の目的、技術計画及び効果がより明確的になるようにするため、次は本発明について詳説する。ここで説明した具体的な実施例が本発明を解釈するだけで、本発明を限定するのではない。
【0026】
図1をご参照ください。
図1は本発明における一種のグラフェンの製造方法の良い実施例の流れ図である。図の通り、下記ステップを含む。
【0027】
S101、LPAN溶液を80〜300℃の温度で8〜72時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得る。
【0028】
S102、
部分的に環化したLPAN溶液を200〜300℃の温度で1〜10時間撹拌して、
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマーを得る。
【0029】
S103、熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマーを研磨・ふるい落として、室温で乾燥させ熱酸化前駆体を得る。
【0030】
S104、熱酸化前駆体を不活性ガスの保護で、ガスフロー10〜500ml/min、温度400〜1000℃の条件で1〜24時間か焼して、低温炭化前駆体を得る。
【0031】
S105、低温炭化前駆体を不活性ガスの保護で、ガスフロー10〜500ml/min、温度1000〜3000℃の条件で1〜10時間か焼して、グラフェン材料を得る。
【0032】
本発明では、まずステップS101で液体アクリロニトリルオリゴマー(LPAN)溶液を
部分的に環化したLPAN溶液にし、その条件は80〜300℃で8〜72時間撹拌すること。このステップでは
部分的に環化する前処理を行う。その目的は、高温炭化の際に完全熱分解されないように線形のLANO分子を安定した耐熱
ラダー構造にし、高い炭素残留率と物理化学的性質を保ち、最後にグラファイト類似構造を持つ炭素を得ることである。
【0033】
その中、液体アクリロニトリルオリゴマー溶液の溶質は液体アクリロニトリルオリゴマーで、液体アクリロニトリルオリゴマーの相対分子量が106〜100000、
最も好ましい範囲が150〜25000である。溶剤は水、メチルアルコール又はエチルアルコールの一種又は二種の組合で、三種の組合溶剤でも良い
。本発明では、薄められた液体アクリロニトリルオリゴマーではなく、直接液体アクリロニトリルオリゴマーを使う。その原因は、当該ポリマーは分子量が大きく、炭素含量の高い長鎖分子であり、後のグラファイト化の程度の高いグラフェンの製造に構造基礎を提供できる。
【0034】
その中、液体アクリロニトリルオリゴマーはアクリロニトリルのホモポリマー
が最も好ましい。前記の液体アクリロニトリルオリゴマーはアクリロニトリルと他のビニルモノマとの
共重合体でも良い。他のビニルモノマはスチロール、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリル酸又はメチレンコハク酸等である。
【0035】
更に好ましいのは、部分的に環化したアクリロニトリルオリゴマー溶液にドーパントを入れて十分
混合し、アクリロニトリルオリゴマー溶液をドーピング改質したものである。その
混合方式は撹拌、超音波又はボール
ミルによるグラインダー加工である。
部分的に環化したLPAN溶液は
官能基を大量含有しているため、ドーパントや炭素材料と緊密に結合できる。一部のLPAN
官能基がドーパントと配位錯化できるため、分子レベルの相容れ及びクラッドができる。撹拌やボール
ミルによるグラインダー加工された後、LPAN溶液はドーパントともっと十分に混合・接触できる。
【0036】
前記のドーパントは金属ドーパントで良
く、又は非金属ドーパントでも良い。その中、金属ドーパントの場合は、錫、銅、銀、アルミ、クロム、鉄、チタン、マンガン、ニッケル、コバルト及びその金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属弗化物、金属臭化物、金属硫化物又は金属有機化合物の一種もしくは多種の混合物である。非金属ドーパントの場合は、シリコン、リン、窒素、炭素、硫黄及びその化合物の一種もしくは多種である。
【0037】
質量比で計算すると、ドーパントと液体アクリロニトリルオリゴマーの
比は0.1〜0.9:1。例えば、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1又は0.9:1等である。
【0038】
ステップS102では、
部分的に環化したアクリロニトリルオリゴマー溶
液(LPAN溶液)を200-300℃の温度で1〜10時間熱処理して、
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を得る。その目的は、高温炭化の際にポリアクリロニトリルオリゴマーが完全に熱分解されず、高い炭素残留率と物理化学的性質を保つことである。
【0039】
ステップS103では、ふるい落とす時に使う網目板の網目は200〜400個である。
【0040】
ステップS104、S105では、本発明の製造方法でか焼する時に使う不活性ガスは窒素ガス又はアルゴンガスである。
【0041】
以下は実施例を通して、本発明の特徴と顕著な進歩性を更に説明する。この実施例は本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0042】
20gの液体アクリロニトリルオリゴマー溶液(分子量4000)を240℃の温度で60時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得た。
部分的に環化したLPAN溶液を240℃の温度で3時間熱処理して、一定の
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を
得て、サンプルに対して遊星ボールミルでグラインダー加工を行った。球料比は15:l、400rad/minで8時間グラインダー加工した。加工が終わったら、ふるい落として、室温で乾燥させて熱酸化前駆体を得た。熱酸化前駆体を磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー100ml/min、温度900℃の条件で8時間か焼して、室温まで冷却した後、研磨・ふるい落とした。このようにして得た低温炭化サンプルを再び磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー100ml/min、温度2500℃の条件で1時間か焼してグラフェン材料を得た。産物の構造は
図2a(ラマンスペクトル)、
図2b(透過型電子顕微鏡分析図)の示した通りである。
図2aは得た材料が単層グラフェン材料ではなく、多層グラフェン材料であることを明瞭に示した。透過型電子顕微鏡分析図もこれを明瞭に説明した。
【実施例2】
【0043】
20gの液体アクリロニトリルオリゴマー溶液(分子量4000)を150℃の温度で70時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得た。
部分的に環化したLPAN溶液を220℃の温度で5時間熱処理して、一定の
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を
得て、サンプルに対して遊星ボールミルでグラインダー加工を行った。球料比は15:l、400rad/minで8時間グラインダー加工した。加工が終わったら、ふるい落として、室温で乾燥させて熱酸化前駆体を得た。熱酸化前駆体を磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー100ml/min、温度900℃の条件で8時間か焼して、室温まで冷却した後、研磨・ふるい落とした。このようにして得た低温炭化サンプルを再び磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー100ml/min、温度2500℃の条件で2時間か焼してグラフェン材料を得た。産物の構造は
図3a(ラマンスペクトル)、
図3b(透過型電子顕微鏡分析図)の示した通りである。
図2aによって、保温時間の延長に伴い、グラフェン材料のグラファイト化の程度が大きくなり、層数が少なくなることが分かった。透過型電子顕微鏡分析図により、当該グラフェンが単層グラフェンの構造に近いことが分かった。
【実施例3】
【0044】
20gの液体アクリロニトリルオリゴマー溶液(分子量4000)を120℃の温度で50時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得た。
部分的に環化したLPAN溶液を260℃の温度で8時間熱処理して、一定の
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を
得て、サンプルに対して遊星ボールミルでグラインダー加工を行った。球料比は15:l、400rad/minで8時間グラインダー加工した。加工が終わったら、ふるい落として、室温で乾燥させて熱酸化前駆体を得た。熱酸化前駆体を磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー100ml/min、温度900℃の条件で8時間か焼して、室温まで冷却した後、研磨・ふるい落とした。このようにして得た低温炭化サンプルを再び磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー100ml/min、温度2900℃の条件で3時間か焼してグラフェン材料を得た。産物の構造は
図4a(ラマンスペクトル)、
図4b(透過型電子顕微鏡分析図)の示した通りである。か焼温度と保温時間はグラフェンの構造に大きい影響を及ばす。か焼温度が上がった後、ラマンスペクトルによって、このグラフェンが単層グラフェンであることが分かった。透過型電子顕微鏡分析図を通して、単層のラメラ構造がはっきり観察できる。
【実施例4】
【0045】
20gの液体アクリロニトリルオリゴマー溶液(分子量2000)を80℃の温度で72時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得た。
部分的に環化したLPAN溶液を250℃の温度で5時間熱処理して、一定の
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を
得て、サンプルに対して遊星ボールミルでグラインダー加工を行った。球料比は15:l、400rad/minで8時間グラインダー加工した。加工が終わったら、ふるい落として、室温で乾燥させて熱酸化前駆体を得た。熱酸化前駆体を磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー10ml/min、温度1000℃の条件で8時間か焼して、室温まで冷却した後、研磨・ふるい落とした。このようにして得た低温炭化サンプルを再び磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー500ml/min、温度1000℃の条件で10時間か焼してグラフェン材料を得た。
【実施例5】
【0046】
20gの液体アクリロニトリルオリゴマー溶液(分子量8000)を300℃の温度で8時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得た。
部分的に環化したLPAN溶液を300℃の温度で1時間熱処理して、一定の
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を
得て、サンプルに対して遊星ボールミルでグラインダー加工を行った。球料比は15:l、400rad/minで8時間グラインダー加工した。加工が終わったら、ふるい落として、室温で乾燥させて熱酸化前駆体を得た。熱酸化前駆体を磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー500ml/min、温度400℃の条件で24時間か焼して、室温まで冷却した後、研磨・ふるい落とした。このようにして得た低温炭化サンプルを再び磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー10ml/min、温度3000℃の条件で1時間か焼してグラフェン材料を得た。
【実施例6】
【0047】
20gの液体アクリロニトリルオリゴマー溶液(分子量6000)を220℃の温度で50時間撹拌して、
部分的に環化したLPAN溶液を得た。
部分的に環化したLPAN溶液を200℃の温度で10時間熱処理して、一定の
ラダー構造を持つ熱酸化ポリアクリロニトリルオリゴマー(OPAN)を
得て、サンプルに対して遊星ボールミルでグラインダー加工を行った。球料比は15:l、400rad/minで8時間グラインダー加工した。加工が終わったら、ふるい落として、室温で乾燥させて熱酸化前駆体を得た。熱酸化前駆体を磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー250ml/min、温度900℃の条件で12時間か焼して、室温まで冷却した後、研磨・ふるい落とした。このようにして得た低温炭化サンプルを再び磁製ボートに入れて、不活性ガスの保護で、ガスフロー200ml/min、温度2000℃の条件で5時間か焼してグラフェン材料を得た。
【0048】
以上の実施例を通して、優良性能を持つグラフェン材料の製造方法の中では、この方法が従来の製造方法と比べて改進があり、製造
の流れを簡単化するだけではなく、グラフェン材料の量産も可能にさせたことが分かった。
【0049】
上述の実施形態はただ本発明に関する優れた実施方式の一例であり、当業者は本発明の原理から離れない状態で、若干の修正及び変更を行うことができるが、このような修正及び変更も本発明の特許の保護範囲に属するべきである。