特許第6065259号(P6065259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065259
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】光学活性アミン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/42 20060101AFI20170116BHJP
   C07D 265/36 20060101ALI20170116BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170116BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20170116BHJP
【FI】
   C07D241/42
   C07D265/36
   !C07B61/00 300
   !C07B53/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-197246(P2012-197246)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51458(P2014-51458A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年9月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 第24回万有札幌シンポジウム、P−7(平成24年7月7日)で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】大熊 毅
(72)【発明者】
【氏名】新井 則義
(72)【発明者】
【氏名】松村 和彦
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/008169(WO,A1)
【文献】 特開2011−246435(JP,A)
【文献】 新井則義他,ルテナビシクロ錯体触媒を用いたキノキサリン類の不斉水素化反応,第24回万有札幌シンポジウム,2012年 7月 7日,P−7
【文献】 Adv. Synth. Catal.,2003年,Vol. 345,195-201
【文献】 Adv. Synth. Catal.,2013年10月 9日,Vol. 355,2769-2774
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,2011年,Vol. 133,10696-10699
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)又は(4)
【化1】

(式中、P⌒Pは、下記一般式(6)で表される光学活性ジホスフィンを表し、
【化2】
〔式中、R1'、R2'、R3'及びR4'は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R5、R6及びR7のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R8、R9及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、R7とR8とで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、R7とR8は水素原子ではない。*は軸不斉を表す。〕
Xはアニオン性基を表す。Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC3〜C8シクロアルキル基、置換基を有してもよいC7〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RbとRcとで置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアルキレンジオキシ基を形成してもよい。Rd、Re、Rf、Rgはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基、C1〜C5ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいC3〜C8シクロアルキル基、三置換シリル基又は置換基を有してもよいC1〜C20アルコキシ基を表す。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC7〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC3〜C8シクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRaとで置換基を有してもよいアルキレン基を形成してもよい。)で表されるルテニウム錯体の存在下、プロキラルな炭素−窒素二重結合を不斉水素化する学活性アミン化合物の製造方法であって、
プロキラルな炭素−窒素二重結合を不斉水素化が、下記式(13)
【化3】
(式中、R24、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有してもよいC3〜C8シクロアルキル基、三置換シリル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R24またはR25のいずれかは水素原子ではない。*は不斉炭素を示す。)で示されるキノキサリン誘導体(E)を不斉水素化して光学活性アミン(F)を製造する反応であるか、又は
下記式(14)
【化4】
(式中、R30、R31、R32、R33、R34、R35およびR36はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有してもよいC3〜C8シクロアルキル基、三置換シリル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。*は不斉炭素を示し、R31とR32が同じ置換基の場合は結合している炭素原子は不斉炭素にならない。)で示される2H−1,4-ベンゾキサジン誘導体(G)を不斉水素化して光学活性アミン(H)を製造する反応であることを特徴とする光学活性アミン化合物の製造方法
【請求項2】
般式(6)におけるR1'、R2'、R3'及びR4'が、3,5−キシリル基である請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
塩基化合物の存在下で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学活性アミン化合物の製造方法に関するものである。さらには、ルテナビシクロ構造を有するルテニウム錯体の存在下に、プロキラルな炭素−窒素二重結合を不斉水素化して光学活性アミン化合物を製造する方法に関するものである。さらに詳しくは、医薬品の合成中間体として有用な、光学活性アミン化合物の実用性に優れた新しい製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性アミン化合物の入手法としては、天然由来のアミン化合物を用いるか、ラセミ体のアミン化合物を合成し、光学活性な有機酸を用いて光学分割する古典的な方法が多用されてきた。しかしながら、前者の方法は原料物質を入手する困難性の点で、また後者の方法は再結晶法によりその光学純度の改善が可能であるが、希望する化合物は光学分割する前に存在している量を超えることはできないという不都合さが残っていた。
それらの問題点を解決するために、近年プロキラルな炭素−窒素二重結合の触媒的不斉水素化反応による合成法が盛んに研究されてきた。最近の総説にはロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、チタンを中心金属とする錯体を用いる方法が述べられている(非特許文献1〜3参照)。これらの総説には高価なロジウム金属やイリジウム金属を用いた例は非常に多く、高収率で高立体選択的に光学活性アミン化合物が得られることが報告されている。しかしながら、比較的安価なルテニウム金属を用いた場合、生成するアミン化合物によりルテニウム錯体の活性が失われる場合があるため、広い基質適用性を有する炭素−酸素二重結合の不斉水素化反応に比べて、その利用は限られていると記載されている(非特許文献2)。
ルテニウム錯体と水素ガスを用いた炭素−窒素二重結合の触媒的不斉水素化反応の例として以下の文献が挙げられる。RuCl(diphosphine)(diamine)と塩基を用いて種々のプロキラルなイミンの不斉水素化反応では、非環式のイミンであるN−(フェニルエチリデン)アニリンは最高92%eeで不斉水素化されたが、環式のイミンである2−メチルキノキサリンでは69%ee に低下する(特許文献1又は非特許文献4)。RuCl[(S)−Hexahemp][(S,S)−DACH]を用いた2−メチルキノキサリンの不斉水素化反応では最高81%eeと、中程度の光学純度のアミンしか得られていない(特許文献2)。Ru(p−cymene)(monosulfonylated diamine)(BArF)を用いた2-メチルキノキサリンの不斉水素化では、1mol%の触媒量では98%eeの高い光学純度のアミンが得られているが、触媒量を0.1mol%まで減らすと93%eeまで低下する(非特許文献5)。
また、3-置換−2H−1,4−ベンゾキサジンの不斉水素化反応は、Ir−ジホスフィン錯体を用いた例があるが、価格が比較的安価なRu金属を用いた例は報告されていない(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2002/008169
【特許文献2】WO2001/094359
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Acc.Chem.Res.,2007年,第40巻,p.1357
【非特許文献2】Organic Reactions,2009年,第74巻,p.1
【非特許文献3】Chemical Review,2012年,第112巻,p.2557
【非特許文献4】Adv.Synth.Catal.,2003年,第345巻,p.195
【非特許文献5】Org.Lett.,2011年,第13巻,p.6568
【非特許文献6】Adv.Synth.Catal.,2012年,第354巻,p.483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、医農薬や生理活性物質の合成中間体として有用な光学活性アミン類を製造する際に、高効率でかつ不斉収率のよい触媒的不斉合成方法による光学活性アミン類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、プロキラルな炭素−窒素二重結合の不斉還元反応において、ルテナビシクロ構造を有するルテニウム錯体を触媒として用いることで、従来の触媒よりも高活性かつ高選択的に光学活性アミン類を得る方法を開発するに至った。
即ち、本発明は、ルテナビシクロ構造を有するルテニウム錯体を用いた不斉還元による光学活性アミンの製造方法を提供する。
本発明は以下の[1]〜[6]の内容を含むものである。
[1]下記一般式(1)又は(2)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、P⌒Pは光学活性ジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとで置換基を有してもよいアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとで置換基を有してもよいアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
で表されるルテニウム錯体の存在下、プロキラルな炭素−窒素二重結合を不斉水素化することを特徴とする光学活性アミン類の製造方法。
[2]ルテニウム錯体が、下記一般式(3)又は(4)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、P⌒Pは光学活性ジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。R、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、C〜Cハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、三置換シリル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜20アルコキシ基を表す。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとで置換基を有してもよいアルキレン基を形成してもよい。)
で表される前記[1]に記載の製造方法。
[3]P⌒Pで表される光学活性ジホスフィンが、下記一般式(5)
P−Q−PR (5)
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは不斉構造を有し、置換基を有していてもよい、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
で表されるジホスフィンである前記[1]又は[2]のいずれかに記載の製造方法。
[4]P⌒Pが、下記一般式(6)で表される光学活性ジホスフィンである前記[3]に記載の製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R1'、R2'、R3'及びR4'は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。*は軸不斉を表す。)
[5]一般式(5)におけるR、R、R及びR、並びに一般式(6)におけるR1'、R2'、R3'及びR4'が、3,5−キシリル基である前記[3]又は[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]塩基化合物の存在下で行われる、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、光学純度の高い光学活性アミン化合物を少ない触媒使用量で製造することができる。本発明の製造方法は、プロキラルな炭素−窒素二重結合の不斉水素化反応における反応性、及び転化率に優れ、またエナンチオあるいはジアステレオ選択性などの点においても優れており、工業的利用価値が極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
【化4】
【0016】
一般式(1)及び(2)のルテニウム錯体において、Arで表される、置換基を有していてもよいアリーレン基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の二価のアリーレン基、又は1個〜4個、好ましくは1〜3個又は1〜2個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3〜8員、好ましくは5〜8員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式の二価のヘテロアリーレン基が挙げられる。好ましいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ピリジンジイル基、チオフェンジイル基、フランジイル基等が挙げられるが、フェニレン基が特に好ましい。二価のアリーレン基の結合する位置は特に制限はないが、隣接する2個の炭素原子の位置(オルト位)が好ましい。 また、前記アリーレン基に置換する置換基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、及び三置換シリル基等が挙げられる。
【0017】
以下、アリーレン基に置換する置換基について説明する。
直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、該アルキル基はフッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、例えば炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜15、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基で、1又は2以上置換されていてもよい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0018】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられる。これらアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述したような炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
ヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む5員環又は6員環状の基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
三置換シリル基としては、前記したアルキル基やアリール基で三置換されたシリル基が挙げられ、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
【0019】
本発明の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるルテニウム錯体において、Xで表されるアニオン性基としては、H;Cl、Br及びI等のハロゲン;BH、BF、BPh、PF、アセトキシ基及びトリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の複合アニオンなどが挙げられる。この中でもハロゲン又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0020】
本発明の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるルテニウム錯体において、R、R、R、R、R、R、R、RN1、RN2、RN3及びRN4で表される基を以下に説明する。
〜C20アルキル基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。
〜C20アルケニル基としては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖状又は分枝状のアルケニル基が挙げられ、例えば、エテニル基、n−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、1−ブテン−2−イル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
〜C20アルコキシ基としては、前記した炭素数1〜20のアルキル基に酸素原子結合した基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などが挙げられる。
炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリクロロメチル基などが挙げられる。
【0021】
〜Cシクロアルキル基としては、炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられる。例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む5員環又は6員環状の基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
三置換シリル基としては、前記したアルキル基やアリール基で三置換されたシリル基が挙げられ、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
〜C20アラルキル基としては、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基に、前記した炭素数1〜19のアルキル基が結合した、炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15、炭素数7〜10のアラルキル基が挙げられる。例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0022】
また、前記C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、ヘテロアリール基、三置換シリル基、及びC〜C20アラルキル基に置換する置換基としては、前述したような直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、及び三置換シリル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。これらアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述したようなメチル基、イソプロピル基及びt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
【0023】
置換基を有していてもよいヘテロ環基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む飽和又は不飽和の5員環又は6員環状の基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。これらヘテロ環基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述したようなメチル基、イソプロピル基及びt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
【0024】
また、RとRとで形成するアルキレン基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、これらアルキレン基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。
とRとで形成するアルキレンジオキシ基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレンジオキシ基が挙げられる。例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等が挙げられる。
N1とRとで形成するアルキレン基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、これらアルキレン基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0025】
本発明の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるルテニウム錯体において、P⌒Pで表される光学活性ジホスフィン(ビスホスフィンということもある。)としては、ルテニウムに配位することができるジホスフィンであれば特に制限はないが、例えば下記一般式(5)で表されるものが挙げられる。
【0026】
P−Q−PR (5)
【0027】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは不斉構造を有し、置換基を有していてもよい、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
上記式中、R、R、R及びRで表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられる。
これらアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0028】
当該アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などが挙げられる。
【0029】
また、R、R、R及びRで表される、置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルキル基又はアルコキシ基などの置換基で、1又は2以上置換されていてもよい。
置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルコキシ基などの置換基で、1又は2以上置換されていてもよい。
【0030】
また、RとRとで及び/又はRとRとで形成してもよい環としては、R、R、R及びRが結合しているリン原子を含めた環として、四員環、五員環又は六員環の光学活性な環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環などが挙げられる。
【0031】
また、Qは、不斉構造を有し、置換基を有していてもよい、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、フェロセンジイル基などが挙げられる。
ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基及びビピリジンジイル基としては、軸不斉構造を有する1,1'−ビアリール−2,2'−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基及びビピリジンジイル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基;水酸基;アミノ基;又は置換アミノ基などで置換されていてもよい。
【0032】
パラシクロファンジイル基としては前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基などで置換されていてもよい。
また、フェロセンジイル基も置換基を有していてもよく、置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
これらの置換アミノ基としては、1個又は2個の炭素数1〜6のアルキルで置換されたアミノ基が挙げられる。
【0033】
一般式(5)で表される光学活性ジホスフィンの具体例としては、例えば公知の光学活性なジホスフィン類が挙げられ、そのうちの好ましい例の一つとして下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、R1'、R2'、R3'及びR4'は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。*は軸不斉を表す。)で表される光学活性ジホスフィンが挙げられる。
【0036】
一般式(6)における、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、アルキレン基、及びアルキレンジオキシ基は、いずれも前記したものが挙げられる。2個の基で形成される芳香環は、隣接する原子と共に6員の芳香環を形成する場合が挙げられる。これらの形成された芳香環は、アルキル基やアルコキシ基などで置換されていてもよい。
【0037】
前記した一般式(6)における好ましい例としては、例えば、R1'、R2'、R3'及びR4'は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で、単数又は複数置換されていてもよいフェニル基であって、RとRとでテトラメチレン基;炭素数1〜4のアルキル基若しくはフッ素原子などで置換されていてもよいメチレンジオキシ基;又は隣接する炭素原子と共にベンゼン環を形成し、RとRとでテトラメチレン基;炭素数1〜4のアルキル基若しくはフッ素原子などで置換されていてもよいメチレンジオキシ基;又は隣接する炭素原子と共にベンゼン環を形成する場合が挙げられる。
【0038】
さらに、本発明のより好ましい光学活性ジホスフィンの具体例としては、下記の一般式(7)又は一般式(8)で表される光学活性ジホスフィンが挙げられる。
【0039】
【化6】
【0040】
一般式(7)におけるRP1及びRP2の具体例、及び一般式(8)におけるRP3及びRP4の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基などが挙げられる。
【0041】
本発明の一般式(5)、(6)、(7)及び(8)で表される光学活性ジホスフィンの具体例としては、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル(binap)、2,2'−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル(tolbinap)、2,2'−ビス[ジ(m−トリル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル(xylbinap)、2,2'−ビス[ジ(p−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(p−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(シクロペンチル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス[ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ]−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル(xylyl-H8-binap)、2,2'−ビス(ジ−p−t−ブチルフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(segphos)、(4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)(dm-segphos)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル(xylyl-MeO-biphep)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2',6,6'−テトラメトキシ−4,4'−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3'−ビピリジン(xylyl-p-phos)、2,2',6,6'−テトラメトキシ−4,4'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3'−ビピリジン、2,2',6,6'−テトラメトキシ−4,4'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−3,3'−ビピリジン、2,2',6,6'−テトラメトキシ−4,4'−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−3,3'−ビピリジン、4,12−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、1,1'−ビス(2,4−ジエチルホスフォタノ)フェロセン、1,13−ビス(ジフェニルホスフィノ)−7,8−ジヒドロ−6H−ジベンゾ[f,h][1,5]ジオキソニン、1,13−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−7,8−ジヒドロ−6H−ジベンゾ[f,h][1,5]ジオキソニン(xylyl-C3-tunephos)、6,6'−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2,2',3,3'−テトラヒドロ−5,5'−ビ−1,4−ベンゾジオキシン(xylyl-synphos)等が挙げられる。
【0042】
上記以外にも、本発明で用いることのできる光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−1−[1',2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、N,N'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N'−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、シクロヘキシルアニシルメチルホスフィン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5−ノルボルネン、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン、1−[1',2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ジシクロペンタン、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1−ビナフチル−5,5'−ジスルホン酸ナトリウム、2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1−ビナフチル−5,5'−ジスルホン酸ナトリウム、1,1−(2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−6,6'−ジイル)ビス(メチレン)グアニジン、1,1−(2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−6,6'−ジイル)ビス(メチレン)グアニジン、(6,6'−ビス(トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シリル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(6,6'−ビス(トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シリル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイル)ジメタンアミン・臭化水素酸塩、(2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイル)ジメタンアミン・臭化水素酸塩、(4,4'−ビス(トリメチルシリル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ビス(トリメチルシリル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4'−ビス(トリイソプロピルシリル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ビス(トリイソプロピルシリル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイルジホスホン酸、2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイルジホスホン酸、テトラエチル2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイルジホスホネート、テトラエチル 2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイルジホスホネート、(4,4'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4'−ジクロロ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ジクロロ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4'−ジブロモ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ジブロモ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4'−ジメチル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ジメチル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)、(2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−4,4'−ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)、(4,4'−ビス(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘキサコサフルオロ−7−(ペルフルオロヘキシル)トリデカン−7−イル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4'−ビス(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘキサコサフルオロ−7−(ペルフルオロヘキシル)トリデカン−7−イル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(7,7'−ジメトキシ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(7,7'−ジメトキシ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、4,4'−ジ−tert−ブチル−4,4',5,5'−テトラヒドロ−3H,3'H−3,3'−ビジナフト[2,1−c:1',2'−e]ホスファピン、1,2−ビス(3H−ジナフト[2,1−c:1',2'−e]ホスファピン−4(5H)−イル)ベンゼン、3,3'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4'−ビフェナンスレン、3,3'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−4,4'−ビフェナンスレン、(3,3'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(メチレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(メチレン)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノオキシ)−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノオキシ)−1,1'−ビナフチル、(3,3'−ジメチル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3'−ジメチル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3'−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3'−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3'−ジフェニル−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)、N2,N2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジアミン、N2,N2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジアミン、(Sp)−1−[(S)−α−(ジメチルアミノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンジル]−2−ジフェニルホスフィノフェロセン、(Rp)−1−[(R)−α−(ジメチルアミノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンジル]−2−ジフェニルホスフィノフェロセン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジフェニルホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジフェニルホスフィン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジシクロホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジシクロホスフィン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(2−ノルボニル)ホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(2−ノルボニル)ホスフィン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(R)−1−{(Rp)−2−[2−[ビス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(S)−1−{(Sp)−2−[2−[ビス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、3,3',4,4'−テトラメチル−1,1'−ジフェニル−2,2',5,5'−テトラヒドロ−1H,1'H−2,2'−ビホスホール、1,1'−ジ−tert−ブチル−2,2'−ビホスホラン、2,2'−ジ−tert−ブチル−2,2',3,3'−テトラヒドロ−1H,1'H−1,1'−ビスイソホスホインドール、1,2−ビス(2,4−ジメチルホスフェタン−1−イル)エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)エタン、1,2−ビス(2,4−ジメチルホスフェタン−1−イル)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)ベンゼン、3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)フラン−2,5−ジオン、3,4−ビス(2,5−ジエチルホスホラン−1−イル)フラン−2,5−ジオン、3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−((1R,2S,4R,5S)−2,5−ジメチル−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−((2R,5S)−2,5−ジメチル−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゼン、1,1'−(ベンゾ[b]チオフェン−2,3−ジイル)ビス(2,5−ジメチルホスホラン)、(2,2',4,4'−テトラメチル−3,3',4,4'−テトラヒドロ−2H,2'H−6,6'−ビベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−7,7'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2',4,4'−テトラメチル−3,3',4,4'−テトラヒドロ−2H,2'H−6,6'−ビベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−7,7'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、((6R)−6,7−ジメチル−6,7−ジヒドロジベンゾ[e,g][1,4]ジオキソシン−1,12−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、((6
R)−6,7−ジメチル−6,7−ジヒドロジベンゾ[e,g][1,4]ジオキソシン−1,12−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4',5,5',6,6'−ヘキサメチルビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4',5,5',6,6'−ヘキサメチルビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4',5,5',6,6'−ヘキサメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4',5,5',6,6'−ヘキサメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5,5'−ジクロロ−4,4',6,6'−テトラメチルビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5'−ジクロロ−4,4',6,6'−テトラメチルビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5,5'−ジメトキシ−4,4',6,6'−テトラメチルビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5'−ジメトキシ−4,4',6,6'−テトラメチルビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシビフェニル−3,3'−ジオール、2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−6,6'−ジメトキシビフェニル−3,3'−ジオール、(3,3',6,6'−テトラメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3',6,6'−テトラメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3'−ジイソプロピル−6,6'−ジメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3'−ジイソプロピル−6,6'−ジメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(6,6'−ジメトキシ−3,3'−ビス(p−トリルオキシ)ビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(6,6'−ジメトキシ−3,3'−ビス(p−トリルオキシ)ビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシビフェニル−3,3'−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、2,2'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−6,6'−ジメトキシビフェニル−3,3'−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、(5,5'−ジクロロ−6,6'−ジメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5'−ジクロロ−6,6'−ジメトキシビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、6,6'−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイル ジアセテート、6,6'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイル ジアセテート、6,6'−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、6,6'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、6,6'−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイルビス(2−メチルプロパノエート)、6,6'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイルビス(2−メチルプロパノエート、6,6'−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイル ジシクロヘキサンカルボキシレート、6,6'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2'−ジイル ジシクロヘキサンカルボキシレート、(4,4',6,6'−テトラキス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4',6,6'−テトラキス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5−メトキシ−4,6−ジメチル−4',6'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5−メトキシ−4,6−ジメチル−4',6'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2,2',2'−テトラメチル−4,4'−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2,2',2'−テトラメチル−4,4'−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、6,6'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2',3,3'−テトラヒドロ−7,7'−ビベンゾフラン、6,6'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−2,2',3,3'−テトラヒドロ−7,7'−ビベンゾフラン、(2,2,2',2'−テトラフルオロ−4,4'−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2,2',2'−テトラフルオロ−4,4'−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5'−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2−(ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−[3,5−ジオサ−4−ホスファ−シクロヘプタ[2,1−a;3,4−a']ジナフタレン−4−イル]−1,2−ジヒドロキノリン、4,12−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、7,7'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−2,2',3,3'−テトラヒドロ−1,1'−スピロビインダン(Xyl-SDP)、7,7'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2',3,3'−テトラヒドロ−1,1'−スピロビインダン(SDP)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(DIOP)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィノ]エタン(DIPAMP)、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン(DEGUPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン(NORPHOS)、1−ターシャリーブトキシカルボニル−4−ジフェニルホスフィノ−2−(ジフェニルホスフィノメチル)ピロリジン(BPPM)、(2,2'−ビス−(ジベンゾフラン−3,3−ジイル)−ビス−ジフェニルホスフィン(BIBFUP)、2,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐3,3‐ビナフト[b]フラン(BINAPFu)、2,2'‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐3,3'‐ビ[ベンゾ[b]チオフェン](BITIANP)、N,N'−ジメチル−7,7'−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−3,3',4,4'−テトラヒドロ−8,8'−ビ−2H−1,4−ベンズオキサジン(Xyl-Solphos)2,3−ビス(ターシャリーブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(QuinoxP)、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、2,4−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ペンタン(XylSKEWPHOS)、4,4'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2',5,5'−テトラメチル−3,3'−ビチオフェン(TMBTP)、3,3'−ビス(ジフェニルホスホニル)−1,1'−2,2'−ビインドール(N-Me-2-BINPO)、(2,2',5,5'−テトラメチル−3,3'−ビチオフェン−4,4'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(BITIANP)、(4,4',6,6'−テトラメチル−3,3'−ビベンゾ[b]チオフェン−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(tetraMe-BITIANP)、1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3'−ジメチル−1H,1'H−2,2'−ビインドール(BISCAP)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3'−ビベンゾフラン(BICUMP)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビベンゾ[d]イミダゾール(BIMIP)などが挙げられる。
【0043】
本発明に用いられる一般式(1)〜(4)で示されるルテニウム錯体は、特開2011−246435号公報、J.Am.Chem.Soc.2011年,133巻,p.10696及び特願2011−84879号明細書等に記載の方法に従って製造することができる。具体的には、一般式(1)及び(3)で示されるルテニウム錯体は、一般式(A)で示されるルテニウム化合物にジアミン化合物を塩基、特に有機塩基の存在下に反応させることにより製造することができる。また、本発明のルテニウム錯体は、一般式(B)で示されるルテニウム化合物に、P⌒Pで表される光学活性ジホスフィン化合物を反応させた後にジアミン化合物を塩基、特に有機塩基の存在下に反応させることにより製造することができる。
[RuX'(L)(P⌒P)]X' (A)
(式(A)中、Ruはルテニウム原子を示し、X'はアニオン性基を示し、Lはアレーンを示し、P⌒Pは光学活性ジホスフィンを示す。)
[Ru(X')2(L)] (B)
(式(B)中、Ruはルテニウム原子を示し、X'はアニオン性基を示し、Lはアレーンを示し、mは2以上の自然数を示す。)
一般式(B)で示されるルテニウム化合物(以下、アレーン錯体ともいう。)は、市販されているもの、又は既報の方法に準じて製造することができる。また、一般式(A)で示されるルテニウム化合物(以下、アレーン−ホスフィン錯体ともいう。)は、市販されているもの、又は既報の方法に準じてP⌒Pで表される光学活性ジホスフィン化合物と、一般式(B)で示されるアレーン錯体とを反応させて製造することもできる。
【0044】
一般式(A)及び(B)におけるLで示されるアレーンとしては、ルテニウム原子に配位できる置換基を有してもよい炭素数6から20の炭素原子を有する芳香族化合物、好ましくは炭素環式芳香族化合物が挙げられる。好ましいアレーンとしては、ベンゼン;o−、m−、又はp−キシレン;o−、m−、又はp−シメン;メシチレンなどのトリメチルベンゼンなどが挙げられる。一般式(B)で示されるルテニウム化合物の好ましい例としては、例えば、[RuCl(benzene)]、[RuCl(p−cymene)]、[RuCl(mesitylene)]等の芳香族化合物が配位したルテニウム化合物が挙げられる。また、一般式(A)で示されるルテニウム化合物の好ましい例としては、例えば、[RuCl(benzene)(P⌒P)]Cl、[RuCl(p−cymene)(P⌒P)]Cl、[RuCl(mesitylene)(P⌒P)]Cl等の芳香族化合物が配位したルテニウム化合物が挙げられる。
【0045】
ジアミン化合物としては、末端に2つのアミノ基を有し、少なくとも一方のアミノ基のα位にアリール基が置換しているジアミン化合物が挙げられ、好ましいジアミン化合物としては、下記一般式(9)、
【0046】
【化7】
【0047】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとで置換基を有してもよいアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0048】
本発明で用いられる一般式(9)で表されるジアミン化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン(DPIPEN)、1−メチル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(DAMEN)、1−イソブチル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(DAIPEN)、1−フェニル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(DAEN)、1−イソプロピル−2,2−ビス(3−メトキシフェニル)エチレンジアミン(3−DAIPEN)等が挙げられる。上記のジアミン化合物は光学活性ジアミン化合物でも良い。光学活性ジアミン化合物の場合には、化合物の名称の前に(R)又は(S)などの光学活性であることを示す記号が付加される。
【0049】
本発明に用いる一般式(2)及び(4)は、下記反応式(10)に従い、一般式(A)で示されるルテニウム化合物にジアミン化合物を反応させたのち、金属塩と反応させることにより製造することができる。また、本発明のルテニウム錯体は、下記反応式(11)に従い、一般式(B)で示されるルテニウム化合物に、P⌒Pで表されるジホスフィン化合物を反応させた後にジアミン化合物を反応させ、金属塩と反応させることにより製造することができる。一般式(1)を単離して、金属塩と反応させることにより製造することもでき、単離せずに金属塩と反応させることにより製造することもできる。好ましくは一般式(1)を単離したのち、金属塩と反応させることにより製造を行う。
【0050】
【化8】
【0051】
本発明に用いられる一般式(1)〜(4)のルテニウム錯体は、市販品を用いても、自製したものを用いてもよい。ルテニウム錯体を触媒として用いる場合は、前記ルテニウム錯体合成の反応後に、例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、洗浄、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの手法により錯体の純度を高めてから使用してもよいが、錯体を精製することなく使用してもよい。
【0052】
一般式(1)〜(4)に示すいずれかのルテニウム錯体を不斉水素化触媒として用いることにより、プロキラルな炭素−窒素二重結合を不斉水素化して光学活性アミン類を製造することができる。特に本発明の製造方法は、エナンチオ選択性などの点においても優れ、プロキラルな炭素−窒素二重結合を有する化合物、例えばプロキラルなイミンから光学活性アミン化合物を製造する方法に適している。
以下、不斉水素化に関して説明する。
本発明のプロキラルな炭素−窒素二重結合の不斉水素化反応としては、式(12)
【0053】
【化9】
【0054】
(式中、R21及びR22は相異なり置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい(ヘテロ)アリール基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、式中R23は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。またR21とR22、R21とR23又はR22とR23とで非対称環式イミンを形成してもよい。*は不斉炭素を示す。)で示されるイミン化合物(C)を不斉水素化して光学活性アミン(D)を製造する反応が挙げられる。
上記化合物(C)及び(D)のR21、R22及びR23のアルキル基としては、例えば炭素数1〜8の炭素数のアルキル基が挙げられ、(ヘテロ)アリール基としては、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アラルキル基のアルキルとしては炭素数1〜12のものが挙げられる。この種の代表的なイミン基質は、N−(1−フェニルエチリデン)アニリンやN−(1−フェニルエチリデン)ベンジルアミン等が挙げられる。
【0055】
21とR22、R21とR23又はR22とR23とで環を形成しているイミンとしては、例えば、N−2,3−ジヒドロ−1H−インダン−2−イリデン、2H−ピロール、3,4−ジヒドロ−2H−ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、3H−インドール、3,4−ジヒドロキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン、キノキサリン、オキサジン、2H−1,4−ベンゾキサジン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、1H―インダゾール、イミダゾール、2H−イミダゾール、ベンゾイミダゾール、フタラジン、キナゾリン、2−イミダゾリン、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、テトラゾール、チアジン、ピリミジン、トリアジン、アクリジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、ナフチリジン、プリン、プテリジンを有する化合物等が挙げられる。これらの化合物はそれぞれ置換基を有しても良い。置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子及びアリール基等が挙げられる。より好ましいイミンとしては、キノキサリン誘導体や2H−1,4-ベンゾオキサジン誘導体等が挙げられる。
【0056】
キノキサリン誘導体の不斉水素化反応としては、式(13)
【0057】
【化10】
【0058】
(式中、R24、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、三置換シリル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R24またはR25のいずれかは水素原子ではない。*は不斉炭素を示す。)で示されるキノキサリン誘導体(E)を不斉水素化して光学活性アミン(F)を製造する反応が挙げられる。
【0059】
上記化合物(E)及び(F)のR24、R25、R26、R27、R28及びR29のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば炭素数1〜8の炭素数のアルキル基が挙げられ、(ヘテロ)アリール基としては、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、置換基としては炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アラルキル基のアルキルとしては炭素数1〜12のものが挙げられる。
【0060】
2H−1,4-ベンゾオキサジン誘導体の不斉水素化反応としては、式(14)
【0061】
【化11】
【0062】
(式中、R30、R31、R32、R33、R34、R35およびR36はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい(ヘテロ)アリール基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、三置換シリル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。*は不斉炭素を示し、R31とR32が同じ置換基の場合は結合している炭素原子は不斉炭素にならない。)で示される2H−1,4-ベンゾキサジン誘導体(G)を不斉水素化して光学活性アミン(H)を製造する反応が挙げられる。
【0063】
上記化合物(G)及び(H)のR30、R31、R32、R33、R34、R35及びR36のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば炭素数1〜8の炭素数のアルキル基が挙げられ、(ヘテロ)アリール基としては、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、置換基としては炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アラルキル基のアルキルとしては炭素数1〜12のものが挙げられる。
【0064】
本発明の製造方法は、無溶媒又は溶媒中で好適に実施することができるが、溶媒を使用することが好ましい。用いられる溶媒としては、基質及び触媒を溶解できるものが好ましく、単一溶媒あるいは混合溶媒が用いられる。具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。この中でもエーテル類又はアルコール類が好ましく、特に好ましい溶媒としては、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール又はtert−ブチルアルコールが挙げられる。溶媒の使用量は、反応条件等により適宜選択することができる。反応は必要に応じ撹拌下に行われる。
【0065】
触媒の使用量は、還元される基質、反応条件や触媒の種類等によって異なるが、通常、還元基質に対するルテニウム金属としてのモル比で0.00001モル%〜2モル%、好ましくは0.0001モル%〜1モル%の範囲である。
【0066】
また本発明の不斉水素化はさらに塩基化合物を加えて行われるのが好ましい。用いられる塩基化合物としては、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。無機塩基としては、炭酸カリウム(KCO)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)等が挙げられる。有機塩基としては、カリウムメトキシド(KOCH)、ナトリウムメトキシド(NaOCH)、リチウムメトキシド(LiOCH)、ナトリウムエトキシド(NaOCHCH)、カリウムイソプロポキシド(KOCH(CH)、カリウムtert−ブトキシド(KOC(CH)、カリウムナフタレニド(KC10)等のアルカリ・アルカリ土類金属の塩、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の有機アミン類が挙げられる。また本発明で使用される塩基は水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物類であってもよい。また、本発明で用いられる塩基には、アミン−ホスフィンルテニウムヒドリド錯体を発生させるものであれば、上記塩基に限定されることなく、水素等も使用可能である。これら塩基は夫々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。これら塩基化合物としては、無機塩基、アルカリ・アルカリ土類金属の塩等が好ましい。
【0067】
塩基化合物の使用量としては、ルテニウム錯体のモル数に対して、1〜10000当量、好ましくは10〜5000当量、若しくは水素化基質に対する塩基化合物のモル比で0.00001モル%〜100モル%、好ましくは0.0001モル%〜50モル%の範囲である。
【0068】
本発明の方法において、不斉水素化を行う際の反応温度は、−30℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、より好ましくは0℃〜60℃である。反応温度が低すぎると未反応の原料が多く残存する場合があり、また高すぎると、原料、触媒等の分解が起こる場合があり、好ましくない。
【0069】
本発明において、不斉水素化を行う際の水素の圧力は、本触媒系が極めて高活性であることから常圧で十分反応は進行するが、好ましくは0.1MPa〜15MPa、より好ましくは0.1MPa〜10MPaである。また反応時問は1分〜72時間、好ましくは30分から48時間で十分に高い原料転化率を得ることができる。
【0070】
反応終了後は、抽出、濾過、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等、通常用いられる精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的の光学活性アミン類を得ることができる。
【0071】
本発明の方法は、光学活性アミンを効率的に製造する手段を提供する。経済的に採算をとるためには、アミン(D)の光学純度が50%ee以上必要であり、好ましくは80%ee以上であることが重要である。必要な場合、eeの不足をアミンの再結晶、キラルあるいはアキラルな酸とアミンの塩を形成し結晶化して向上させることができる。本発明の方法の商業的な実施には、基質から生成物への転化率が70%以上、好ましくは80%以上であることが重要である。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の
実施例によって限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)2−メチルキノキサリンの不斉水素化
【0074】
【化12】
【0075】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](3.1mg,2.6μmol)、t−COK(14.1mg,0.126mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した2−メチルキノキサリン(355.4mg,2.47mmol)のトルエン(2.5 mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8 MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け13時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルショートパスカラム(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、(S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノキサリン(355.1mg,97%)を得た。ガスクロマトグラフィー(カラム:CHIRASIL−DEX CB)による分析を行った結果、このものの光学純度は99%ee以上であった。
【0076】
(実施例2〜9および比較例1)
実施例1において使用した触媒、基質と触媒のモル比、水素圧、反応温度、反応時間を表1に示すように変更した以外は、原料として2−メチルキノキサリンを用いて実施例1と同様の方法で反応を実施した。1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノキサリンの収率は、実施例1と同様に、反応後、水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をH NMRにて測定した。光学純度も実施例1と同様に、ガスクロマトグラフィー(カラム:CHIRASIL−DEX CB)を用いて測定した。反応結果を表1に示す。
実施例1〜9及び比較例1との比較から、比較例1の触媒活性は実施例1〜9の触媒活性の2分の1以下にとどまり、得られる生成物の光学純度も低いことを確認した。
【0077】
【表1】
【0078】
【化13】
【0079】
(実施例10) 2−エチルキノキサリンの不斉水素化
【0080】
【化14】
【0081】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](2.0mg,1.7μmol)、t−COK(9.2mg,0.082mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した2−エチルキノキサリン(269.4mg,1.70mmol)のトルエン(1.7mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け25時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1〜3:1〜1:1)で精製することにより、(S)−2−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン(264.3mg,96%)を得た。ガスクロマトグラフィー(カラム:CHIRASIL−DEX CB)による分析を行った結果、このものの光学純度は99%ee以上であった。
【0082】
(実施例11) 2−(1−プロピル)キノキサリンの不斉水素化
【0083】
【化15】
【0084】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](1.6mg,1.4μmol)、t−COK(8.0mg,0.071mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した2−(1−プロピル)キノキサリン(238.5mg,1.38mmol)のトルエン(1.4mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け28時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルショートパスカラム(酢酸エチル)で精製することにより、(−)−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−プロピル)キノキサリン(235.4mg,96%)を得た。ガスクロマトグラフィー(カラム:CHIRASIL−DEX CB)による分析を行った結果、このものの光学純度は99%ee以上であった。
【0085】
(実施例12) 2−イソブチルキノキサリンの不斉水素化
【0086】
【化16】
【0087】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](2.4mg,2.0μmol)、t−COK(11.9mg,0.106mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した2−イソブチルキノキサリン(378.3mg,2.03mmol)のトルエン(2.0mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け31時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1〜4:1〜1:1)で精製することにより、(S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−イソブチルキノキサリン(316.4mg,82%)を得た。ガスクロマトグラフィー(カラム:CHIRASIL−DEX CB)による分析を行った結果、このものの光学純度は98%eeであった。
【0088】
(実施例13) 2−ベンジルキノキサリンの不斉水素化
【0089】
【化17】
【0090】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](1.1mg,0.94μmol)、t−COK(5.4mg,0.048mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した2−ベンジルキノキサリン(207.4mg,0.942mmol)のトルエン(0.9mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け29時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、(S)−2−ベンジル−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン(203.7mg,97%)を得た。高速液体クロマトグラフィー(カラム:CHIRALCEL OD−H,移動相:ヘキサン:IPA=90:10,1mL/min)による分析を行った結果、このものの光学純度は99%ee以上であった。
【0091】
(実施例14) 6−クロロ−2−メチルキノキサリンの不斉水素化
【0092】
【化18】
【0093】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](4.3mg,3.7μmol),t−COK(14.1mg,0.196mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した6−クロロ−2−メチルキノキサリン(134.2mg,0.750mmol)のトルエン(2.5 mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け16時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルショートパスカラム(ジクロロメタン)で精製することにより、(−)−6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ-2-メチルキノキサリン(128.7mg,94%)を得た。高速液体クロマトグラフィー(カラム:CHIRALCEL OD−H,移動相:ヘキサン:IPA=90:10,1mL/min)による分析を行った結果、このものの光学純度は99%ee以上であった。
【0094】
(実施例15) 6,7−ジクロロ−2−メチルキノキサリンの不斉水素化
【0095】
【化19】
【0096】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](2.9mg,2.5μmol)、t−COK(14.0mg,0.125mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した6,7−ジクロロ−2−メチルキノキサリン(105.4mg,0.495mmol)のトルエン(1.0mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け16時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することにより、(−)−6,7−ジクロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノキサリン(102.2mg,95%)を得た。高速液体クロマトグラフィー(カラム:CHIRALCEL OB−H,移動相:ヘキサン:IPA=95:5,1mL/min)による分析を行った結果、このものの光学純度は98%eeであった。
【0097】
(実施例16) 6−メトキシ−2−メチルキノキサリンの不斉水素化
【0098】
【化20】
【0099】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](2.9mg,2.5μmol)、t−COK(15.4mg,0.137mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した6−メトキシ−2−メチルキノキサリン(95.7mg,0.549mmol)のトルエン(1.1mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け16時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をHNMRにて分析したところ、(−)−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチルキノキサリンが95%の収率で生成していた。高速液体クロマトグラフィー(カラム:CHIRALCEL OD−H,移動相:ヘキサン:IPA=90:10,1ml/min)による分析を行った結果、このものの光学純度は98%eeであった。
【0100】
(実施例17) 2,6,7−トリメチルキノキサリンの不斉水素化
【0101】
【化21】
【0102】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](3.7mg,3.2μmol)、t−COK(17.9mg,0.160mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した2,6,7−トリメチルキノキサリン(110.4mg,0.641mmol)のトルエン(1.3mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け16時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をHNMRにて分析したところ、(−)−1,2,3,4−テトラヒドロ−2,6,7−トリメチルキノキサリンが84%の収率で生成していた。高速液体クロマトグラフィー(カラム:CHIRALCEL OD−H,移動相:ヘキサン:IPA=90:10,1mL/min)による分析を行った結果、このものの光学純度は98%eeであった。
【0103】
(実施例18) 3−メチル−2H−1,4−ベンゾオキサジンの不斉水素化
【0104】
【化22】
【0105】
磁気攪拌子を装填しアルゴン置換したガラス製耐圧容器(100mL)に、RuCl[(R)−daipena][(R)−dm−segphos](4.2mg,3.6μmol)、t−COK(20.0mg,0.178mmol)を加え、再度アルゴン置換した。ここに、予め凍結脱気を施した3−メチル−2H−1,4−ベンゾオキサジン(102.3mg,0.710mmol)のトルエン(2.5mL)溶液をキャヌラを用いて圧送して加えた。この耐圧容器に水素を0.8MPaまで充填し開放する操作を10回繰り返し、内部を完全に水素で置換した後、水素を2.0MPaまで充填し、40℃の水浴に浸け3時間攪拌した。水素を開放した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をHNMRにて分析したところ、(S)−3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−1,4−ベンゾオキサジンが70%の収率で生成していた。ガスクロマトグラフィー(カラム:CHIRASIL−DEX CB)による分析を行った結果、このものの光学純度は97%eeであった。