特許第6065293号(P6065293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6065293EMM−22分子篩材料、その合成および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065293
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】EMM−22分子篩材料、その合成および使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20170116BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20170116BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01J29/70 Z
   B01J35/10 301A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-526036(P2014-526036)
(86)(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公表番号】特表2014-524406(P2014-524406A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012047908
(87)【国際公開番号】WO2013028303
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】11183530.2
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/525,534
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】バートン アレン ダブリュー
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−502652(JP,A)
【文献】 特表2009−539747(JP,A)
【文献】 特開昭59−190213(JP,A)
【文献】 特表2012−505146(JP,A)
【文献】 特表2012−509828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01J 21/00−38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成したままの状態において、以下の表1に記載のピークを含むX−線回折パターンを有する、分子篩材料であって、
【表1】
以下の式で表されるモル関係:
23:(n)YO2
(式中、nは少なくとも20であり、XはB、Al、FeおよびGaの一種またはそれ以上から選ばれる三価の元素であり、かつYはSi、Ge、Sn、TiおよびZrの一種またはそれ以上から選ばれる四価の元素である)を有する組成を有する、分子篩材料。
【請求項2】
前記Xがアルミニウムを含み、かつ前記Yがケイ素を含む、請求項記載の分子篩材料。
【請求項3】
合成したままの状態において、以下の表2に示すピークを含むX−線回折パターンを有する、分子篩材料であって、
【表2】
以下の式で表されるモル関係:
mQ:X23:(n)YO2
(式中、0<m≦0.2であり、nは少なくとも20であり、Qは1,4−ビス(N−イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む有機構造指向剤であり、XはB、Al、FeおよびGaの一種またはそれ以上から選ばれる三価の元素であり、かつYはSi、Ge、Sn、TiおよびZrの一種またはそれ以上から選ばれる四価の元素である)、
を有する組成を有する、分子篩材料。
【請求項4】
前記Xがアルミニウムを含み、かつ前記Yがケイ素を含む、請求項記載の分子篩材料。
【請求項5】
更に、素物理吸着により測定された、0.24cc/gなる微小孔容積を有する、請求項1記載の分子篩材料。
【請求項6】
請求項1記載の分子篩材料の製造方法であって、
(i) 該分子篩材料を形成し得る合成混合物を調製する工程、ここで、該混合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(M)源、ゼオライトYを含むアルミニウム酸化物源、別のシリカ源、水、および1,4−ビス(N−イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む指向剤(Q)を含み、かつ、該混合物は、モル比で表して以下のような範囲内の組成:少なくとも20なるSiO2/Al23;15〜60なる範囲のH2O/SiO2;0.20〜0.60なる範囲のOH-/SiO2;0.05〜0.50なる範囲のM/SiO2;および0.03〜0.20なる範囲のQ/SiO2、を有し、、
(ii) 120℃〜200℃なる範囲の温度および1日〜28日間なる範囲の期間を含む結晶化条件下で、該分子篩材料の結晶が生成されるまで、該合成混合物を加熱する工程、および
(iii) 工程(ii)から該結晶性分子篩材料を回収する工程、
を含む、前記分子篩材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の分子篩およびバインダを含む触媒。
【請求項8】
請求項1記載の分子篩およびマトリックス材料を含む触媒。
【請求項9】
有機化合物を含有する供給原料を、転化生成物に転化する方法であって、
該供給原料と触媒とを触させる工程を含み、
前記転化が、前記有機化合物のクラッキング、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化又は異性化であり、
該触媒が、請求項1記載の分子篩材料含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は、2011年8月19日付で出願された米国特許出願第61/525,534号および2011年9月30日付で出願されたEP出願第11183530.2号に基く優先権を主張するものである。これら特許出願の内容全体を参考として本明細書に組入れるものとする。
本発明は、EMM-22と称する新規な分子篩材料、その合成、その吸着剤としての使用、および炭化水素転化用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然および合成両者由来の分子篩材料は、過去において、吸着剤として有用であり、また様々な型の炭化水素転化反応に対する触媒特性を有することが立証されている。幾つかの分子篩、ゼオライト、AIPOs、メソポーラス材料は、X-線回折(XRD)により決定された如き明確な結晶構造を有する、規則性のある多孔質結晶性物質である。該結晶性分子篩材料内部には、多数のチャンネルまたは孔によって相互に連通し得る莫大な数の空洞が存在する。これらの空洞および孔は、特定の分子篩材料内では、そのサイズにおいて均一である。これらの孔の寸法は、或る寸法を有する分子の吸着を容認し、一方でより大きな寸法を有する分子を排除するようなものであることから、これらの材料は「分子篩」として知られることとなり、また様々な工業的過程において使用されている。
【0003】
天然および合成両者由来のこのような分子篩は、広範囲に及ぶ正イオン-含有結晶性シリケートを含む。これらシリケートは、SiO4および元素周期律表13族元素の酸化物(例えば、AlO4)の剛性三次元構成組織として説明することができる。その四面体系は、酸素原子の共有によって架橋されており、これにより全13族元素(例えば、アルミニウム)およびケイ素原子対酸素原子の比は1:2である。該13族元素(例えば、アルミニウム)を含む該四面体のイオン原子価(electrovalence)は、カチオン例えばプロトン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンの該結晶中への混入(包接)によって釣合わされる。これは、該13族元素(例えば、アルミニウム)対様々なカチオン、例えばH+、Ca2+/2、Sr2+/2、Na+、K+、またはLi+の数の比が1に等しい場合と表現することができる。
【0004】
触媒における用途が見出されている分子篩は、あらゆる天然産または合成起源の結晶性分子篩を含む。これら分子篩の例は、大きな孔を有するゼオライト、中間的孔サイズのゼオライト、および小さな孔を有するゼオライトを包含する。これらのゼオライトおよびその同一構造型のものは、「ゼオライト構成組織型に関する図表(Atlas of Zeolite Framework Types」,編者:Ch. Baerlocher, L.B. McCusker, D.H. Olson, エルセビア(Elsevier)社刊,第6改訂版、2007に記載されている。この文献を参考としてここに組入れる。大きな孔を有するゼオライトは、一般的に少なくとも約7Åなる孔径を持ち、その例はLTL、MAZ、FAU、OFF、*BEAおよびMOR構成組織型のゼオライトを含む(ゼオライト命名法に係るIUPAC委員会(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature))。大きな孔を有するゼオライトの具体例は、マザイト、オフレタイト、ゼオライトL、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトオメガ、およびゼオライトベータを含む。中間的孔サイズのゼオライトは、一般的に約5Å〜約7Å未満なる範囲の孔径を持ち、その例はMFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWW、およびTON構成組織型のゼオライトを含む(ゼオライト命名法に係るIUPAC委員会)。中間的孔サイズを有するゼオライトの具体例は、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、シリカライト1およびシリカライト2を包含する。小さな孔径を有するゼオライトは、約3Å〜約5.0Å未満なる範囲の孔径を持ち、その例はCHA、ERI、KFI、LEVおよびLTA構成組織型のゼオライトを含む(ゼオライト命名法に係るIUPAC委員会)。小さな孔径を有するゼオライトの具体例は、ZK-4、SAPO-34、SAPO-35、ZK-14、SAPO-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、リョウ沸石、ゼオライトTおよびALPO-17を含む。
【0005】
SSZ-26およびSSZ-33は、既知の大きな孔を有するゼオライトであり、これは交叉する10-および12-リング状孔で構成される三次元孔系を含んでいる(例えば、Lobo等の「SSZ-26およびSSZ-33:交叉する10-および12-リング状孔を備えた2種の分子篩(SSZ-26 and SSZ-33: Two Molecular Sieves with Intersecting 10- and 12-Ring Pores)」, Science, Vol. 262. No. 5139, pp. 1543-1546, 1993年12月3日を参照のこと)。これら2種のゼオライトは、その2つの端部構成員が、ABAB配列またはABCABC配列状に層を積層することにより形成される、一群の材料の構成員として特徴付けることができる。該ABAB積層配列により形成される構成組織(「多形A」)は、斜方晶系対称型であり、また該ABCABC積層配列により形成される構成組織(「多形B」)は、単斜晶系対称型である。これら端部-構成員の多形間において、0%<p<100%なる欠陥確率「p」によって特徴付けることのできる材料の全体群(ここでは「SSZ-26/33群」と呼ぶ)がある。該欠陥確率がp=0%である場合、該端部構成員の多形Bが得られ、またp=100%である場合には、該端部構成員の多形Aが得られる。該アルミノシリケートSSZ-26および該ボロシリケートSSZ-33は、この不規則材料群の構成員であり、またCIT-1は、純粋なまたはほぼ純粋な多形Bに相当する(例えば、CONフレームワークデータシート(CON Framework Datasheet), Baerlocher等, ゼオライト構成組織型の図表(Atlas of Zeolite Framework Types),第6補遺版(2007)を参照のこと);同様にCON粉末パターンおよびSSZ33/SSZ96群、不規則な相互成長の多系A-多形B粉末パターンシミュレーション(CON powder pattern and SSZ33/SSZ96 family, polymorph A-polymorph B powder pattern simulations of disordered intergrowths), Treacy等, ゼオライトに関してシミュレートされたXRD粉末パターンのコレクション(Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites),第4版, アムステルダム:エルセビア(Amsterdam:Elsevier)(2001)をも参照のこと)。
【0006】
SSZ-26に係るX-線回折パターンは、本開示の添付図1(a)において見出すことができる。
【0007】
米国特許第7,648,694号は、1,5-ビス(N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオン、1,4-ビス(N-シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオンおよび1,4-ビス(N-シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンからなる群から選択される構造指向剤(SDA)を用いた、前記SSZ-26/33群のゼオライトを製造する方法を記載している。該米国特許第7,648,694号の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、今やゼオライトの前記SSZ-26/33群の実験的パターンおよびシミュレートされたパターン両者と類似し、しかもそれにも拘らずこれらとは全く異なるX-線回折パターンを有する新規なゼオライトが、構造指向剤として1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンおよびアルミニウム源としてゼオライトYを用いて製造し得ることを見出した。この新規なゼオライトは、0.24cc/gなる大きな微小孔容積を持ち、この値は、SSZ-26/33形のゼオライトに対して測定された、典型的な0.19〜0.21cc/gなる範囲の値よりも大きい。
一局面において、本開示はEMM-22と称される、焼成したままの形状において、以下の表1に記載のピークを含むX-線回折パターンを有する分子篩材料を提供する:
【0009】
【表1】
【0010】
有利には、上記焼成された分子篩材料は、以下の式で表されるモル関係で構成される組成を有する:
X2O3:(n)YO2
式中、nは少なくとも約20であり、Xは三価の元素、例えばB、Al、FeおよびGaの一種またはそれ以上、特にAlであり、Yは四価の元素、例えばSi、Ge、Sn、TiおよびZrの一種またはそれ以上、特にSiである。
本開示は、また合成したままの状態において、以下の表2に示すピークを含むX-線回折パターンを有する分子篩材料を提供する:
【0011】
【表2】
【0012】
様々な態様において、上記合成されたままの分子篩材料は、以下の式で表されるモル関係で構成される組成を有する:
mQ:X2O3:(n)YO2
式中、0<m≦0.2であり、nは少なくとも約20であり、Qは有機構造指向剤であり、Xは三価の元素、例えばB、Al、FeおよびGaの一種またはそれ以上、特にAlであり、またYは四価の元素、例えばSi、Ge、Sn、TiおよびZrの一種またはそれ以上、特にSiである。
有利には、Qは以下の式を有する1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む:
【0013】
【化1】
【0014】
更なる局面において、本開示は、ここに記載された分子篩材料の製造方法を提供するものであり、該方法は以下の各工程を含む:
(i) 該分子篩材料を形成し得る合成混合物を調製する工程(該混合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(M)源、ゼオライトYを含むアルミニウム酸化物源、別のシリカ源、水、および1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む構造指向剤(Q)を含み、かつ、該混合物は、モル比で表して以下のような範囲内の組成:少なくとも20なるSiO2/Al2O3;約15〜約60なる範囲のH2O/SiO2;約0.20〜約0.60なる範囲のOH-/SiO2;約0.05〜約0.50なる範囲のM/SiO2;および約0.05〜約0.20なる範囲のQ/SiO2、を有する)、
(ii) 約120℃〜約200℃なる範囲の温度および約1日〜約28日なる範囲の期間を含む結晶化条件下で、該分子篩材料の結晶が生成されるまで、該混合物を加熱する工程、および
(iii) 該工程(ii)から該結晶性材料を回収する工程。
【0015】
本開示は、また有機化合物を含有する供給原料を、転化生成物に転化する方法も提供するものであり、該方法は該供給原料と触媒とを、有機化合物転化条件にて接触させる工程を含み、該触媒は、本明細書に記載の分子篩材料の活性型を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、SSZ-26のX-線回折パターンを示す図である。図1(b)は、本開示に係る実施例4の焼成された分子篩材料のX-線回折パターンを示す図である。図1(c)は、本開示に係る実施例4の合成されたままの状態にある分子篩材料のX-線回折パターンを示す図である。図1(d)は、本開示に係る実施例3の焼成された分子篩材料のX-線回折パターンを示す図である。図1(e)は、本開示に係る実施例2の合成されたままの状態にある分子篩材料のX-線回折パターンを示す図である。
図2図2(a)〜2(d)は、様々な倍率における、本開示に係る実施例2において得た生成物の、走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここでは、EMM-22と称される新規な分子篩材料、構造指向剤としての1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンの存在下におけるその合成および吸着剤および有機転化反応用触媒としてのその使用が記載される。
特に、上記の新規な分子篩構造物としてのEMM-22は、該分子篩の焼成されたままの状態における、少なくとも以下の表1に示すピークを含む、X-線回折パターン、および該分子篩の合成されたままの形状における、少なくとも以下の表2に示すピークを含むX-線回折パターンによって特徴付けられる。
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
ここにおいて報告したX-線回折パターンは、銅のK-α輻射線を用いて、エックスセレレータ(X’Celerator)検出器を備えたパナリティカルエックス-パートプロ(PANalytical X-Pert Pro)回折装置を使用して集められた。これらの回折データは、2θの0.017°なる段階-走査により、また各段階に対して21秒間なる計数時間にて記録され、ここでθはブラッグの角である。その面間間隔、即ちd-間隔はÅ単位で計算され、またバックグラウンドを越える最も強いラインの強度の1/100である、これらラインの相対的ピーク面積強度:I/I0は、MDIジェード(Jade)ピークプロファイルフィッティングアルゴリズムによって決定した。これらの強度は、ローレンツ(Lorentz)および分極効果について未補正である。これらの相対的強度は、記号VS=極めて強い(60よりも大きく、100まで);S=強い(40よりも大きく、60まで)、M=中間(20よりも大きく40まで)、W=弱い(4〜20なる範囲)およびVW=極めて弱い(0〜4なる範囲)によって与えられる。
【0021】
単一のラインとしてこのサンプルについて列記された回折データが、多数の重なり合ったラインからなるものであり得、これが、結晶学的変化における差異等の幾つかの状況の下で、解像されたまたは部分的に解像されたラインとして現れる可能性があることを理解すべきである。典型的に、結晶学的変化は、構造における変化を伴うことなしに、単位格子パラメータにおける小さな変化および/または結晶の対称性における変化を含み得る。相対的な強度における変化を包含するこれらの小さな効果は、またカチオン含有率における差、構成組織の組成、孔充填の特徴およびその程度、結晶のサイズおよび形状、好ましい配向および熱および/または水熱履歴の結果として起る可能性もある。
【0022】
上記分子篩EMM-22は、その焼成された状態において、以下のようなモル関係で構成される化学的組成を有する:
X2O3:(n)YO2
式中、nは少なくとも約20、例えば少なくとも25、少なくとも30または少なくとも40であり、Xは三価の元素、例えばB、Al、FeおよびGaの一種またはそれ以上、特にAlであり、またYは四価の元素、例えばSi、Ge、Sn、TiおよびZrの一種またはそれ以上、特にSiである。nに対して許容された値から、EMM-22が完全に珪質形状で合成することができ、該珪質形状においては、該三価の元素Xが存在しないかまたは本質的に不在であることが理解されよう。
【0023】
上記分子篩EMM-22は、その合成したままおよび無水の状態において、以下のようなモル関係で構成される化学的組成を有する:
mQ:X2O3:(n)YO2
式中、0<m≦0.2であり、nは少なくとも約10、典型的には約20を越える値であり、Qは有機構造指向剤であり、Xは三価の元素、例えばB、Al、FeおよびGaの一種またはそれ以上、特にAlであり、またYは四価の元素、例えばSi、Ge、Sn、TiおよびZrの一種またはそれ以上、特にSiである。
有利には、Qは1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンであり、これは以下の式を有する:
【0024】
【化2】
【0025】
上記のQは、結晶化の際のその存在の結果として上記合成されたままの材料と結合しているが、このQは、従来の後-結晶化法により、あるいはオゾンで処理することにより(例えば、Parikh等, 微孔質およびメソポーラス物質(Microporous and Mesoporous Materials), 76 (2004) 17-22を参照のこと)、容易に除去される。
上記分子篩EMM-22は、熱的に安定であり、またその焼成された状態において、大きな表面積および有意な炭化水素収着能力を示す。
例示の態様において、アルミノシリケートEMM-22は、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の源、ゼオライトYを含む酸化アルミニウム源、シリカの別の源、および上記の如き構造指向剤(Q)を含む合成混合物から製造することができ、該合成混合物は、酸化物のモル比で表した、以下の範囲内の組成を有する:
【0026】
【表5】
【0027】
ゼオライトYに加えて、アルミニウムの適当な源は、水和アルミナ、水酸化アルミニウム、アルカリ金属アルミネート、アルミニウムアルコキシド、および水溶性アルミニウム塩、例えば硝酸アルミニウムを含む。適当なシリカ源は、シリカのコロイド状懸濁液、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、アルカリ金属シリケート、およびテトラアルキルオルトシリケートを含む。
【0028】
適当なQの源は、関連するジ-四級アンモニウム化合物の水酸化物および/または塩である。1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンは、N-イソペンチルピロリジンと1,4-ジブロモブタンとの反応によって容易に合成することができる。N-イソペンチルピロリジンは、イソバレルアルデヒドとピロリジンとの還元的アミノ化により、有利に製造し得る。
【0029】
EMM-22の結晶化は、適当な反応容器、例えばポリプロピレンジャー、またはテフロン(登録商標)をライニングしたまたはステンレススチール製のオートクレーブ内で、約100℃〜約200℃なる範囲の温度、例えば120℃〜160℃なる範囲の温度にて、該使用する温度にて結晶化を起こすのに十分な期間、例えば約1日〜約28日なる範囲の期間に渡り、静的条件下または攪拌条件下で実施し得る。従って、該結晶は該液体から分離し、回収される。
【0030】
所望の程度まで、また上記材料のモル比:Al2O3/SiO2に依存して、上記合成したままのEMM-22における任意のカチオンは、他のカチオンでイオン交換することにより、当分野において周知の技術に従って置換することができる。
【0031】
適当な置換用カチオンの例示的な例は、金属イオン、水素イオン、水素プリカーサ、例えばアンモニウムイオンおよびこれらの混合物を含む。特に好ましいカチオンは、幾つかの炭化水素転化反応に対して触媒活性を発揮させるカチオンである。これらは水素原子、希土類元素及び元素周期律表第2〜15族に属する金属を包含する。本明細書において使用する周期律表の群の番号付け方法は、ケミカル&エンジニアリングニューズ(Chemical and Engineering News), 63(5), 27 (1985)に記載されているようなものである。
【0032】
本開示に係る態様における前記分子篩材料は、またその合成において使用された上記有機指向剤Qの一部または全部を除去するための処理に掛けることも可能である。この処理は、熱処理を伴うことができ、該熱処理において、前記合成されたままの材料は、少なくとも約370℃なる温度にて、少なくとも約1分間、および一般的には20時間以下の期間に渡り加熱され、あるいは該処理は、Parikh等によって記載された如く、オゾンによる処理を伴うことができる。該熱処理のために減圧を利用することができるが、簡便であるという理由から、大気圧の使用が望ましい。該熱処理は、約925℃までの温度にて行うことができる。該熱処理された生成物、特にその金属、水素およびアンモニウム形のものは、幾つかの有機転化反応、例えば炭化水素の転化反応の触媒において特に有用である。
【0033】
本発明の分子篩は、水素添加成分、例えばモリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、または貴金属、例えば白金またはパラジウムと密に混ぜ合わせることができ、ここで水素添加-脱水素機能が発揮されることとなる。このような成分は、共結晶化によって該組成物中に存在させて、第IIIA族元素、例えばアルミニウムが、その構造内に存在し、その中に浸透し、あるいはこれと物理的に密に混合される程度まで、該組成物中で交換させることができる。このような成分は、白金の場合には、例えばシリケートを白金金属-含有イオンを含む溶液で処理することにより、該分子篩内にまたはその上に浸透または充満させることが可能である。即ち、この目的にとって適した白金化合物は、クロロ白金酸、塩化第一白金および白金-アミン錯体を含む様々な化合物を包含する。
【0034】
本発明の分子篩は、吸着剤または触媒の何れかとして使用した場合には、少なくとも部分的に脱水されるべきである。この脱水は、大気中、例えば空気、窒素ガス雰囲気等の中で、および大気圧、減圧または加圧下で、200℃〜約370℃なる範囲の温度まで、30分〜48時間なる範囲の期間に渡り、該分子篩を加熱することによって行うことができる。該脱水は、また室温にて、単に該EMM-22を真空中に配置することにより行うこともできるが、十分な脱水量を実現するためにはより長い時間が必要とされる。
【0035】
本発明の分子篩は、また吸着剤として、あるいは特にそのアルミノシリケート形状においては、現時点において商業的/工業に重要な多くのものを含む、広範囲に及ぶ有機化合物の転化工程に対して触媒作用を発揮する触媒として使用することができる。本開示の結晶性材料それ自体または1種またはそれ以上の、他の結晶性触媒を含むその他の触媒として活性な物質との組合せによって効果的に触媒される、化学的転化工程の例は、酸としての活性を有する触媒を必要とする転化工程を含む。EMM-22が触媒として機能し得る有機転化工程の例示的な例は、クラッキング(分解)、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化および異性化を含むが、これらに限定されない。
【0036】
多くの触媒の場合における如く、EMM-22に、有機転化工程において使用される温度およびその他の条件に対して抵抗性である他の物質を配合することが望ましい可能性がある。このような物質は、活性および不活性物質および合成または天然産のゼオライト、並びに無機物質、例えばクレー、シリカおよび/またはアルミナ等の金属酸化物を含む。後者は、天然産のまたはゼラチン状の沈殿またはゲル状態の何れかであり得、シリカおよび金属酸化物の混合物を含む。EMM-22との組合せ、即ち該EMM-22と結合した状態での、または活性である新規結晶の合成中に存在させることによるある物質の使用は、幾つかの有機転化工程における該触媒の転化率および/または選択性を変更する傾向がある。
【0037】
その上、不活性物質は、首尾よく希釈剤として機能して、反応速度を制御するための他の手段を使用することなしに、経済的かつ秩序立った様式で生成物を得ることを可能とするように、与えられた工程における転化量を調節する。このような不活性物質は、天然産のクレー、例えばベントナイトおよびカオリンに配合することができ、結果として工業的な稼働条件下での、該触媒の破裂強さを改善することを可能とする。該物質、即ちクレー、酸化物等は、該触媒のバインダとして機能する。良好な破裂強さを有する触媒を提供することが望ましい。というのは、工業的な使用においては、該触媒が破壊されて、粉末状の物質となってしまうのを防止することが望ましいからである。これらのクレーおよび/または酸化物バインダは、通常該触媒の破裂強さを改善するためにのみ使用されている。
【0038】
EMM-22と複合化し得る天然産のクレーは、モンモリロナイトおよびカオリン群を含み、これらの群は、通常ディキシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)、およびフロリダ(Florida)クレーまたは主な無機構成成分がハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトであるその他のクレーとして知られているサブベントナイト(subbentonites)、およびカオリンを含む。このようなクレーは、採掘されたままの未処理状態で使用することができ、または初めに焼成、酸処理または化学的な変性処理に掛けることができる。
【0039】
EMM-22と複合化するのに有用なバインダは、また無機酸化物、例えばシリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、およびこれらの混合物を含む。
【0040】
上記物質に加えて、EMM-22は多孔質マトリックス材料、例えばシリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、並びに三成分系組成物、例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシアおよびシリカ-マグネシア-ジルコニアと複合化することができる。
【0041】
EMM-22と上記無機酸化物マトリックスとの間の相対的な割合は、広い範囲に渡り変えることができ、該EMM-22の含有率は、該複合体を基準として、約1〜約90質量%なる範囲、およびより一般的に、特に該複合体がビーズ形状で製造される場合には、約2〜約80質量%なる範囲にある。
【実施例】
【0042】
以下において、本発明を、以下に与えられる非-限定的な実施例および添付した図面を参照しつつ、より具体的に説明する。
【0043】
実施例において使用される「α-値」とは、標準的なシリカ-アルミナ触媒と比較した、ゼオライト触媒の酸としての活性に関する尺度である。このα-テストは、米国特許第3,354,078号;the Journal of Catalysis, Vol. 4, p. 527 (1965)、Vol. 6, p. 278 (1966)、およびVol. 61, p. 395 (1980)に記載されている。これら文献各々を、該当する記載に関する参考として、ここに組入れる。ここで使用する該テストの実験条件は、the Journal of Catalysis, Vol. 61, p. 395において詳しく説明されているように、538°Cなる一定温度および変更し得る流量を含む。より高いα-値が、より活性の高いクラッキング触媒に相当する。
【0044】
実施例において報告されているXRDパターンは上述の如く記録され、一方でSEMデータはヒタチ(Hitachi) S4800顕微鏡を用いて集めた。元素分析は、高周波誘導結合プラズマ原子発光分析法により測定した。
【0045】
実施例1:1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンの製造
500mLのテトラヒドロフラン(THF)を、容量1Lの吸引フラスコに入れた。35.3gのイソバレルアルデヒド(0.41M)、次いで28.4gのピロリジン(0.40M)を、該THF中で混合した。次に、100gのナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(0.47M)粉末を、5-10g刻みで該溶液に添加した。この添加操作中に、激しい攪拌を利用して、該粉末が該フラスコの底部において凝集しないことを保証した。この凝集は、該懸濁液の効率的な混合を阻害するであろう。該ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド粉末の各添加後、該粉末の次の添加前に均一なスラリーを形成するように十分な時間を設けた。一日後、291gの27%KOH溶液を徐々に添加することによって、該懸濁液を冷却することにより、生成物を製造した。次に、この生成物を、得られた該溶液から、500mLのペンタンを用いて抽出した。次に、該有機画分を分液ロートで集め、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。次いで、上記THFおよびペンタンを減圧下でロータリーエバポレータにより蒸発させることによって、該N-イソペンチルピロリジン生成物を単離した。
【0046】
15.0gの上で得られたN-イソペンチルピロリジン(0.13M)を、容量125-mLのテフロン(Teflon)(登録商標)ライナー中の60mLのアセトニトリルに添加した。12.35gの1,4-ジブロモブタン(0.057M)を該混合物に添加した。次に、該ライナーにキャップを施し、パール(Parr)スチール製オートクレーブ内に封止し、次いで80℃にて4日間加熱した。次に、生成した固体沈殿物を濾過により集め、アセトンで洗浄した。該アセトンによる洗浄後、更なる生成物が該濾液内で沈殿した。次に、併合した固形分をエーテルで洗浄し、乾燥させた。清浄な生成物の全収量は19.5gであった。1Hおよび13C NMRはこの生成物が純粋であることを示した。次いで、このジブロミド塩を水に溶解し、ダウエックス(Dowex) LC NG水酸化物交換樹脂のカラムに通すことにより、該ジブロミド塩をイオン-交換して、水酸化物形とした。該水性溶液の濃度は、0.1N HClの標準溶液で滴定することにより決定した。
【0047】
実施例2:EMM-22の合成
モル比H2O/SiO2 = 38.3およびSi/Al = 18を有する合成ゲルを、以下の手順に従って製造した。
【0048】
実施例1における如く製造した、2.41gの1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンの水酸化物溶液([OH] = 0.85mM/g)を、容量23-mLのテフロン(登録商標)ライナー内で、2.33gの1N NaOH溶液および2.33gの脱イオン水と混合した。次に、0.48gのカボシル(Cabosil)M-5ヒュームドシリカ(カボット社(Cabot Corporation)から入手)および0.15gのナトリウム形のゼオライトY(Si/Al = 2.5であり、またコントラクトマテリアルズプロセッシング社(Contract Materials Processing, Inc)から入手した)を該溶液内で混合して、均一な懸濁液を作成した。次に、該ライナーにキャップを施し、容量23mLのスチール製パール(Parr)オートクレーブ内に封止した。該オートクレーブを、160℃にて転化オーブン内の細い棒上に置いた。該オートクレーブを、該加熱したオーブン内で17日間に渡る期間中、50rpmにて転動させた。次いで、該オートクレーブを取出し、室温まで冷却させた。次いで、該固体を濾過により回収し、脱イオン水(>250mL)、次にアセトン(約20mL)で十分に洗浄した。
【0049】
前記固体を100℃にて2時間に渡り、オーブン内で乾燥させた。得られたこの生成物を、粉末XRD法により分析したところ、痕跡レベルのゼオライトY反応体および痕跡レベルの方沸石を含むEMM-22であることが示された。該XRDパターンを、図1(e)に示す。図2(a)〜2(d)は、該生成物のSEM像を示すものである。
【0050】
実施例3:EMM-22の焼成
実施例2で作成した生成物の一部を、以下の手順に従って焼成した。
【0051】
前記ゼオライトを、マッフル炉内で、窒素ガス雰囲気下で、4℃/分なる昇温速度にて室温から400℃まで、次いで空気中で4℃/分なる昇温速度にて600℃まで加熱し、また空気中で2時間に渡り600℃に維持した。該焼成された材料のXRDパターンを図1(d)に示す。次いで、0.23gの該焼成された材料を、2.3gの硝酸アンモニウムを23gの脱イオン水中に溶解して得た溶液に添加した。この溶液を、98℃にて一夜に渡り、スチームボックス内で加熱した。次いで、該ゼオライトを濾過により回収し、60mLの脱イオン水で3回洗浄した。
【0052】
このサンプルを、次にオーブン内で乾燥させた。次いで、該サンプルを500℃まで加熱することにより焼成して、完全に酸形のゼオライトを得た。窒素物理吸着実験から、このサンプルが0.24〜0.25cc/gなる範囲の微小孔容積を有することが確認された。この微小孔容積は、ゼオライトβについて報告されている値と同様であり、またSSZ-26/33型のゼオライトについて挙げられている値(0.19-0.21cc/g)よりも大きい。
【0053】
実施例4:EMM-22の合成
以下の手順に従って、Si/Al = 15.5およびH2O/SiO2 = 38.3なるモル比を有する合成ゲルを製造した。
【0054】
実施例1における如く製造した、25.54gの1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンの水酸化物溶液([OH] = 0.96mM/g)を、21.49gの1N NaOH溶液、27.82gの脱イオン水、5.73gのカボシル(Cabosil)M-5ヒュームドシリカ、および1.79gのナトリウム形ゼオライトY(Si/Al = 2.5)と混合した。この反応体ゲルを、125mL容量のスチール製パール(Parr)オートクレーブ用のテフロン(登録商標)ライナー中に入れ、次いで該ライナーにキャップを施し、該スチール製パールオートクレーブ内に封止した。該オートクレーブを、160℃に加熱された転化オーブン内の細い棒上に置いた。
【0055】
上記オートクレーブを加熱されたオーブン内で、5日間に及ぶ期間に渡り50rpmにて転動させた。次いで、該オートクレーブを取出し、室温まで冷却させた。得られた該固体を、次に濾過により回収し、脱イオン水(>500mL)および次にアセトン(約40mL)で十分に洗浄した。該固体を、真空オーブン内で65℃にて一夜乾燥させた。
前記製造したままの生成物の収量は6.62gであった。この得られた生成物を粉末XRDにより分析したところ、痕跡レベルのゼオライトY反応体および痕跡レベルの方沸石を含むEMM-22であることが示された。実施例4の製造したままの生成物のXRDパターンは、図1(c)に見出すことができ、また該粉末回折ピークの強度および位置は、以下の表3において見出すことができる。
表3は以下の通りである。
【0056】
【表6】
【0057】
得られた上記生成物を、次に焼成し、アンモニウム-交換処理に付し、また実施例3において上述した手順に対応する手順を用いて再度焼成した。実施例4の該焼成されたままの材料のXRDパターンは図1(b)において見出すことができる。
【0058】
実施例5:EMM-22に関するテスト
前記実施例4の焼成された生成物を、90℃におけるn-ヘキサンの吸着能力および120℃における2,2-ジメチルブタンおよび2,3-ジメチルブタンの吸着能力についてテストした。結果を以下にまとめた:nヘキサン:99mg/g;2,2-ジメチルブタン:81mg/g;および2,3-ジメチルブタン:87mg/g。
【0059】
ICP分析により決定したSi/Alは15.5である。
【0060】
上記生成物のサンプルは、750なるα-値を示す。
【0061】
以上本発明を、特定の態様を参照しつつ説明並びに例証してきたが、当業者は、本発明が、必ずしも本明細書において例証されていない様々な変更を受け得るものであることを理解するであろう。故に、本発明の真の範囲を決定するためには、添付した特許請求の範囲のみを参照すべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕焼成したままの状態において、以下の表1に記載のピークを含むX-線回折パターンを有する、分子篩材料:
〔2〕更に、以下の式で表されるモル関係:
X2O3:(n)YO2
(式中、nは少なくとも約20であり、Xは三価の元素であり、かつYは四価の元素である)で構成される組成を有する、前記〔1〕記載の分子篩材料。
〔3〕前記Xがアルミニウムを含み、かつ前記Yがケイ素を含む、前記〔1〕記載の分子篩材料。
〔4〕更に、前記分子篩の孔中に、1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む、前記〔1〕記載の分子篩材料。
〔5〕合成したままの状態において、以下の表2に示すピークを含むX-線回折パターンを有する、分子篩材料:
〔6〕以下の式で表されるモル関係:
mQ:X2O3:(n)YO2
(式中、0<m≦0.2であり、nは少なくとも約20であり、Qは有機構造指向剤であり、Xは三価の元素であり、かつYは四価の元素である)、
で構成される組成を有する、前記〔5〕記載の分子篩材料。
〔7〕前記Xがアルミニウムを含み、かつ前記Yがケイ素を含む、前記〔6〕記載の分子篩材料。
〔8〕前記Qが1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む、前記〔6〕記載の分子篩材料。
〔9〕更に、任意の有機物質を除去するための焼成後に、窒素物理吸着により測定された、約0.24cc/gなる微小孔容積を有する、前記〔1〕記載の分子篩材料。
〔10〕前記〔1〕記載の分子篩材料の製造方法であって、
(i) 該分子篩材料を形成し得る合成混合物を調製する工程(該混合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(M)源、ゼオライトYを含むアルミニウム酸化物源、別のシリカ源、水、および1,4-ビス(N-イソペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオンを含む指向剤(Q)を含み、かつ、該混合物は、モル比で表して以下のような範囲内の組成:少なくとも20なるSiO2/Al2O3;約15〜約60なる範囲のH2O/SiO2;約0.20〜約0.60なる範囲のOH-/SiO2;約0.05〜約0.50なる範囲のM/SiO2;および約0.03〜約0.20なる範囲のQ/SiO2、を有する)、
(ii) 約120℃〜約200℃なる範囲の温度および約1日〜約28日間なる範囲の期間を含む結晶化条件下で、該分子篩材料の結晶が生成されるまで、該合成混合物を加熱する工程、および
(iii) 工程(ii)から該結晶性分子篩材料を回収する工程、
を含む、前記分子篩材料の製造方法。
〔11〕前記〔10〕記載の方法により作製されたものである分子篩材料。
〔12〕前記〔1〕記載の分子篩およびバインダを含む触媒。
〔13〕前記〔1〕記載の分子篩およびマトリックス材料を含む触媒。
〔14〕有機化合物を含有する供給原料を、転化生成物に転化する方法であって、
該供給原料と触媒とを、有機化合物転化条件にて接触させる工程を含み、
該触媒が、前記〔1〕記載の分子篩材料の活性型を含む、方法。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】