(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1電極は、前記可変抵抗部と前記SiC半導体層との間に配置され、前記SiC半導体層と接するコンタクト部を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のスイッチングデバイス。
前記MISトランジスタ構造は、前記SiC半導体層に形成されたゲートトレンチを含み、前記ゲート電極が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲートトレンチに埋め込まれたトレンチゲート構造を含む、請求項10に記載のスイッチングデバイス。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のスイッチングデバイスは、電圧のオン/オフ制御によって負荷のスイッチング動作を行うためのスイッチングデバイスであって、前記電圧のオン制御によって電流パスが形成されるSiC半導体層と、前記SiC半導体層に接するように配置された第1電極と、前記SiC半導体層に接するように配置され、前記電流パスの形成によって前記第1電極と導通する第2電極とを含み、前記第1電極は、所定の高温条件下で抵抗値が増加する材料からなり、前記電流パスに過電流に流れたときに、その電流密度を所定値以下に制限する可変抵抗部を有
し、前記可変抵抗部は、前記所定の高温条件になったときの抵抗値の増加割合が相対的に高い高抵抗部と、当該増加割合が前記高抵抗部よりも低い低抵抗部とを含む(請求項1)。
【0005】
この構成によれば、SiC半導体層を介して第1電極と第2電極との間に過電流が流れ、その過電流による発熱に起因して可変抵抗部が高温条件になったときに、可変抵抗部の抵抗値を増加させることができる。この可変抵抗部の抵抗値の増加は、第1電極−第2電極間に流れる過電流の密度を低下させる。したがって、第1電極−第2電極間が短絡して過電流が流れても、時間の経過に伴って電流密度が所定値以下に低下する。その結果、過電流が流れ続けてデバイスが熱破壊することを防止することができる。つまり、デバイスの短絡耐量を向上させることができる。
【0006】
前記可変抵抗部は、前記第1電極の厚さ方向中央に対して前記SiC半導体層に近い側に配置されていることが好ましい(請求項2)。
この構成によれば、過電流による発熱が主にSiC半導体層内で起こる場合に、その熱を可変抵抗部により早く伝えることができる。そのため、可変抵抗部の抵抗値が増加し始めるまでの時間を短縮することができる。その結果、より短時間で過電流の密度を低下させることができる。
【0007】
前記可変抵抗部は、導電性を有するチタン酸バリウム系化合物からなることが好ましい(請求項3)。
前記高抵抗部は、前記低抵抗部よりも薄く、前記低抵抗部に対して前記SiC半導体層に近い側に配置されていることが好ましい(請求項4)。
【0008】
この構成によれば、可変抵抗部に低抵抗部が設けられ、さらに高抵抗部が薄く形成されている。そのため、通常使用時に可変抵抗部が高温に晒される事態が生じても、可変抵抗部全体の抵抗値が高くなり過ぎることを防止することができる。一方、短絡時には、可変抵抗部の高抵抗部が主となって、過電流の密度を良好に十分に低下させることができる。つまり、オン抵抗の上昇を抑えながら、過電流の密度を良好に低下させることができるスイッチングデバイスを提供することができる。
【0009】
前記半導体装置は、前記SiC半導体層上に形成された層間絶縁膜をさらに含み、前記可変抵抗部は、前記層間絶縁膜を覆うように形成されていることが好ましい(請求項5)。
前記可変抵抗部は、前記SiC半導体層と接していてもよい(請求項6)。
この構成によれば、過電流による発熱が主にSiC半導体層内で起こる場合に、その熱を可変抵抗部に直接伝えることができる。
【0010】
また、前記可変抵抗部が、前記SiC半導体層に選択的に接している場合、前記第1電極は、前記可変抵抗部とは異なる部分でSiC半導体層に接するコンタクト部を含んでいてもよい(請求項7)。
また、前記第1電極は、前記可変抵抗部と前記SiC半導体層との間に配置され、前記SiC半導体層と接するコンタクト部を含んでいてもよい(請求項8)。
【0011】
この構成によれば、SiC半導体層に対して第1電極を良好にオーミック接触させることができる。この場合、前記コンタクト部の厚さは、1μm以下であることが好ましい(請求項9)。
前記スイッチングデバイスは、前記SiC半導体層に接して形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極とを含む、MISトランジスタ構造を有し、前記ゲート電極への電圧のオン/オフ制御によって、前記SiC半導体層の前記ゲート絶縁膜との界面近傍に前記電流パスが形成されるものであってもよい(請求項10)。
【0012】
この構成によれば、たとえば、スイッチングデバイスの短絡開始と、ゲートのオフ制御(電流パスの遮断制御)による短絡復帰との間にタイムラグがある場合でも、前記短絡復帰までの間に過電流の密度を十分低下させることができる。
前記MISトランジスタ構造は、前記SiC半導体層に形成されたゲートトレンチを含み、前記ゲート電極が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲートトレンチに埋め込まれたトレンチゲート構造を含んでいてもよい(請求項11)。
【0013】
トレンチゲート構造の場合、プレーナゲート構造に比べてチャネル抵抗が小さくオン抵抗が低くなる傾向がある。低オン抵抗のデバイスほど過電流の密度が高くなり易いため、デバイスが過電流に長時間耐えることが難しく、短絡開始から短絡復帰まで間に熱破壊を起こす虞がある。そこで、本発明のように第1電極に可変抵抗部を設けることによって、トレンチゲート構造のMISトランジスタにおいても、熱破壊を良好に防止することができる。
【0014】
また、前記SiC半導体層が、前記SiC半導体層の表面側に露出するように形成され、前記ゲートトレンチ
の側面の一部を形成するソース層を含む場合、前記第1電極は、前記ソース層に接するソース電極を含んでいてもよい(請求項12)。
また、前記スイッチングデバイスが、前記SiC半導体層の前記表面から前記ソース層を貫通するように形成されたソーストレンチをさらに含む場合、前記可変抵抗部は、前記ソーストレンチに入り込むように形成されていることが好ましい(請求項13)。
【0015】
この構成によれば、過電流による発熱が主にSiC半導体層内で起こる場合に、当該主な発熱領域と可変抵抗部との距離が近くなる。その結果、当該発熱領域で発生する熱を、効率よく可変抵抗部に伝えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態
および参考形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1
参考形態に係るスイッチングデバイスの模式的な断面図である。
スイッチングデバイス1は、SiCが採用されたトレンチゲート型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を含む。スイッチングデバイス1は、SiC基板2と、SiC基板2上に形成されたSiCエピタキシャル層3とを含む。SiC基板2およびSiCエピタキシャル層3の導電型は、いずれも第1導電型としてのn型である。具体的には、SiC基板2は、n
+型(たとえば、濃度が1×10
18〜1×10
21cm
−3)であり、SiCエピタキシャル層3は、SiC基板2よりも低濃度のn
−型(たとえば、濃度が1×10
15〜1×10
17cm
−3)である。なお、この
参考形態では、SiC基板2およびSiCエピタキシャル層3を、本発明のSiC半導体層の一例として示している。
【0018】
SiC基板2の厚さは、この
参考形態では、たとえば、30μm〜400μmである。一方、SiCエピタキシャル層3の厚さは、この
参考形態では、たとえば、3μm〜100μmである。
SiCエピタキシャル層3には、ゲートトレンチ4が形成されている。ゲートトレンチ4は、この
参考形態では、たとえば、格子状に形成されている。ただし、ゲートトレンチ4の形状は、格子状に限らず、ストライプ状、ハニカム状等であってもよい。
【0019】
この
参考形態では、格子状のゲートトレンチ4が形成されることにより、SiCエピタキシャル層3にはゲートトレンチ4で取り囲まれた各窓部分に単位セル5が複数形成されている。
また、ゲートトレンチ4は、側面41と底面42とが交わるコーナ部43が湾曲面となるように断面U字状に形成されている。ゲートトレンチ4は、たとえば、SiCエピタキシャル層3をドライエッチングしてゲートトレンチ4の外形を形成した後、その内面をウエットエッチングすることにより形成されている。これにより、ゲートトレンチ4の側面41の平坦性を改善することができる。その結果、ゲートトレンチ4の側面41に沿って電流が流れる際、電子同士の衝突を低減することができるので、チャネル移動度を高くすることができる。
【0020】
ゲートトレンチ4の内面(側面41、底面42およびコーナ部43)には、その全域を覆うように、SiO
2等の絶縁材料からなるゲート絶縁膜6が形成されている。
また、ゲートトレンチ4には、ポリシリコン等の導電材料からなるゲート電極7が埋め込まれている。ゲート電極7は、ゲート絶縁膜6を介してSiCエピタキシャル層3に対向している。
【0021】
各単位セル5の中央部にはソーストレンチ8が形成されている。この
参考形態では、ソーストレンチ8の深さはゲートトレンチ4と同じである。ソーストレンチ8もゲートトレンチ4と同様に、側面81と底面82とが交わるコーナ部83が湾曲面となるように断面U字状に形成されている。
各単位セル5には、SiCエピタキシャル層3の表面側から裏面側へ向かって順にソース層9、チャネル層10およびドリフト層11が形成され、これらの層9〜11は互いに接している。こうして、ソース層9とドリフト層11とが、SiCエピタキシャル層3の表面に垂直な縦方向にチャネル層10を介して離間して配置された、トレンチゲート型のMISトランジスタ構造が構成されている。これらの層9〜11の導電型は、ソース層9およびドリフト層11が第1導電型としてのn型であり、チャネル層10は第2導電型としてのp型である。具体的には、ソース層9は、n
+型(たとえば、濃度が1×10
18〜1×10
21cm
−3)であり、チャネル層10は、p型(たとえば、濃度が1.0×10
16cm
−3〜1.0×10
19cm
−3)であり、ドリフト層11は、ソース層9よりも低濃度のn
−型(たとえば、濃度が1×10
15〜1×10
17cm
−3)である。
【0022】
ソース層9は、ゲートトレンチ4の側面41の一部およびソーストレンチ8の側面81の一部を形成している。チャネル層10も同様に、ゲートトレンチ4の側面41の一部およびソーストレンチ8の側面81の一部を形成している。そして、ドリフト層11は、ゲートトレンチ4のコーナ部43および底面42、ならびにソーストレンチ8のコーナ部83および底面82を形成している。
【0023】
また、SiCエピタキシャル層3には、ソース耐電圧保持層12が形成されている。ソース耐電圧保持層12の導電型は、第2導電型としてのp型(たとえば、濃度が1.0×10
16cm
−3〜1.0×10
19cm
−3)である。
ソース耐電圧保持層12は、ソーストレンチ8の底面82からソーストレンチ8のコーナ部83を経て、コーナ部83直上のチャネル層10に至るように形成されている。
【0024】
各ソーストレンチ8の底面82には、ソース耐電圧保持層12の表層部にチャネルコンタクト層13が形成されている。チャネルコンタクト層13の導電型は、第2導電型としてのp型である。具体的には、チャネルコンタクト層13は、p
+型(たとえば、不純物濃度が1.0×10
18cm
−3〜2.0×10
21cm
−3)である。
SiCエピタキシャル層3上には、ゲート電極7を被覆するように、SiO
2等の絶縁材料からなる層間膜14が積層されている。
【0025】
層間膜14には、ソーストレンチ8よりも大径のコンタクトホール15が形成されている。これにより、コンタクトホール15内には、各単位セル5のソーストレンチ8の全体およびSiCエピタキシャル層3におけるソーストレンチ8の周縁部が露出している。当該周縁部において、ソース層9の上面および側面が露出している。
層間膜14上には、本発明の第1電極の一例としてのソース電極16が形成されている。ソース電極16は、SiCエピタキシャル層3側から順に積層された可変抵抗層17と、表面電極層18とを含む。
【0026】
可変抵抗層17は、この
参考形態では、導電性を有するチタン酸バリウム系化合物からなる。当該チタン酸バリウム系化合物は、たとえば、チタン酸バリウムを主成分とし、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)等の希土類金属を微量に添加することによって得ることができる。このような導電性チタン酸バリウム系化合物は、所定の高温条件になったことを感知し、その温度上昇と共に抵抗値が増加する導電材料である。
【0027】
可変抵抗層17は、所定の厚さの単層構造で形成されていて、ソーストレンチ8の側面81および底面82に倣う(沿う)ように配置されている。可変抵抗層17の厚さは、この
参考形態では、たとえば、0.5μm〜2μmである。これにより、ソーストレンチ8には、可変抵抗層17に囲まれた空間19が形成されている。可変抵抗層17は、コンタクトホール15から露出するSiCエピタキシャル層3の全域に接している。具体的には、可変抵抗層17は、各単位セル5において、ソーストレンチ8の底側から順にチャネルコンタクト層13、ソース耐電圧保持層12、チャネル層10およびソース層9に接触している。
【0028】
表面電極層18は、この
参考形態では、可変抵抗層17との接触側から順にチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)およびアルミニウム(Al)を積層した構造(Ti/TiN/Al)を有している。表面電極層18は、ソーストレンチ8内の空間19を埋め戻すように配置されている。
SiC基板2の裏面には、本発明の第2電極の一例としてのドレイン電極20が形成されている。ドレイン電極20は、この
参考形態では、SiC基板2側から順にチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)および銀(Ag)を積層した構造(Ti/Ni/Au/Ag)を有している。ドレイン電極20は、SiC基板2の裏面全域を覆っている。つまり、ドレイン電極20は、すべての単位セル5に対して共通の電極となっている。
【0029】
このスイッチングデバイス1によれば、ゲート電極7に電圧を印加しない状態を継続することによって(オフ制御)、n型のソース層9とn型のドリフト層11との間が、p型のチャネル層10によって電気的に絶縁される。つまり、ソース−ドレイン間に電流パスが形成されず、スイッチオフの状態となる。一方、ソース層9とドリフト層11との間にドレイン電圧を印加した状態でゲート電極7に閾値電圧以上の電圧を印加することによって(オン制御)、ゲートトレンチ4の側面41に沿って垂直方向に電流を流す電流パス(チャネル)が、チャネル層10に形成される。これが、スイッチオンの状態に相当する。
【0030】
そして、スイッチングデバイス1は、たとえば、
図2に示すようなインバータ回路に組み込んで使用することができる。
図2は、前記スイッチングデバイス1が組み込まれたインバータ回路図である。
図3(a)(b)は、デバイス短絡時のドレイン電流Idの波形を示す図である。
インバータ回路21は、負荷の一例としての三相モータ22に接続される三相インバータ回路である。インバータ回路21は、直流電源23およびスイッチ部24を含む。
【0031】
直流電源23は、この
参考形態では、たとえば、700Vである。直流電源23には、その高圧側に高圧側配線25が接続され、その低圧側に低圧側配線26が接続されている。
スイッチ部24は、三相モータ22のU相22U、V相22VおよびW相22Wのそれぞれの相に対応する3つのアーム27〜29を備えている。
【0032】
アーム27〜29は、高圧側配線25と低圧側配線26との間に並列に接続されている。アーム27〜29は、それぞれ高圧側のハイサイドトランジスタ(スイッチングデバイス1)30H〜32Hと、低圧側のローサイドトランジスタ(スイッチングデバイス1)30L〜32Lとを備えている。各トランジスタ30H〜32Hおよび30L〜32Lには、それぞれ回生ダイオード33H〜35Hおよび33L〜35Lが、低圧側から高圧側に順方向電流が流れるような向きで並列に接続されている。
【0033】
各トランジスタ30H〜32Hおよび30L〜32Lのゲートには、それぞれハイサイドゲートドライバ36H〜38Hおよびローサイドゲートドライバ36L〜38Lが接続されている。
インバータ回路21では、各アーム27〜29のハイサイドトランジスタ30H〜32Hおよびローサイドトランジスタ30L〜32Lのオン/オフ制御を交互に切り替えることによって、つまり、一方のトランジスタがスイッチオンで、他方のトランジスタがスイッチオフである状態を交互に切り替えることによって、三相モータ22に交流電流を流すことができる。一方、両方のトランジスタをスイッチオフの状態にすることによって、三相モータ22への通電を停止することができる。このようにして、三相モータ22のスイッチング動作を行う。
【0034】
一般的なインバータ回路では、スイッチング制御信号がローサイドからハイサイド、あるいはハイサイドからローサイドに切り替わるタイミングで、回路内で発生するノイズが重畳し、スイッチオフの状態のトランジスタの閾値電圧を超える場合がある。たとえば、
図2のインバータ回路21で言えば、本来スイッチオフの状態であるべきトランジスタ(たとえば、ローサイドトランジスタ30L)が誤動作してスイッチオンの状態となる。このとき、当該アーム27のハイサイドトランジスタ30Hはスイッチオンの状態になっているため、ハイサイドおよびローサイドが共にスイッチオンの状態となって短絡(アーム短絡)する。
【0035】
アーム短絡時、高圧側配線25と低圧側配線26との間には高電圧(たとえば、700V)が印加されているため、誤動作したローサイドトランジスタ30Lには定格値(たとえば、100A)を超える過電流(ドレイン電流Id)が流れる。たとえば、
図3(a)に示すように、Siデバイス等のオン抵抗R
onが高いデバイス(高オン抵抗デバイス)では、過電流によってデバイスが発熱(主にSiCエピタキシャル層3の発熱)すると、時間の経過に伴って抵抗が増加して電流が減少するが、当該抵抗の増加はデバイスの発熱に起因するものである。そのため、電流が見かけ上減少していても発熱が収まっているわけではなく、そのまま放置すると、たとえば時間t
1でデバイスの熱破壊が生じる。一方、SiCデバイス等のオン抵抗R
onが低いデバイス(低オン抵抗デバイス)では、高オン抵抗デバイスに比べて大きな過電流が短時間で流れるので、デバイスの熱が高温まで急激に上昇する。そのため、高オン抵抗デバイスに比べて短時間(たとえば、t
2<t
1)で熱破壊が起きてしまう。
【0036】
そこで、この
参考形態では、スイッチングデバイス1に過電流が流れた場合に、ローサイドゲートドライバ36Lによって過電流を検知して、ゲートのオフ制御をするようにしている。ゲートのオフ制御に関しては、ノイズ等による誤動作の防止のため、1μsec程度の短絡検知期間が設けられている。すなわち、この短絡検知期間を過ぎても過電流が流れていると検知されてはじめて、ローサイドゲートドライバ36Lによってゲートのオフ制御が行われてゲート電圧V
gが下げられる。しかしながら、低オン抵抗デバイスでは、熱破壊が起きるまでの時間t
2が非常に短いため、短絡検知期間が時間t
2よりも短い場合(たとえば、短絡検知期間t
3の場合)は問題にならないが、短絡検知期間が時間t
2よりも長いと(たとえば、短絡検知期間t
3´の場合)、スイッチングデバイス1の熱破壊を防止できない。
【0037】
この
参考形態のスイッチングデバイス1によれば、
図1に示すように、ソース電極16が可変抵抗層17を含んでいる。そのため、過電流によるSiCエピタキシャル層3内での発熱に起因して可変抵抗層17が高温条件になったときに、可変抵抗層17の抵抗値を増加させることができる。その結果、
図3(b)に破線に示すように、可変抵抗層17の働きによって、過電流のピーク電流を下げることができる。これにより、スイッチングデバイス1の急激な温度上昇を防止することができるので、熱破壊が起きるまでの時間をt
2からt
2´(>t
2)まで延ばすことができる。つまり、短絡耐量を向上させることができる。この場合でも、過電流をそのまま放置すると、時間t
2´でスイッチングデバイス1の熱破壊が生じるが、従来の低オン抵抗デバイスに比べて時間的な余裕があるため、熱破壊に至る時間t
2´よりも短絡検知期間t
3´´を確実に短くすることができる。その結果、十分な余裕をもって時間t
3´´経過後にゲートのオフ制御を行ってゲート電圧V
gを下げ、時間t
4で電流をオフにすることができる。
特に、この
参考形態のスイッチングデバイス1のようなトレンチゲート構造の場合、プレーナゲート構造に比べてチャネル抵抗が小さくオン抵抗が低くなる傾向がある。低オン抵抗のデバイスほど過電流の密度が高くなり易いため、スイッチングデバイス1が過電流に長時間耐えることが難しく、短絡開始から短絡復帰まで間に熱破壊を起こし易い。したがって、この
参考形態の可変抵抗層17の構成は、トレンチゲート構造のスイッチングデバイス1において、特に優れた熱破壊の防止効果を発揮する。
【0038】
さらに、この
参考形態では、可変抵抗層17がSiCエピタキシャル層3に接するように配置されているので、過電流によって発生するSiCエピタキシャル層3内の熱を、可変抵抗層17に直接伝えることができる。そのため、可変抵抗層17の抵抗値が増加し始めるまでの時間を短縮することができる。その結果、より短時間で過電流の密度を低下させることができる。
【0039】
また、トレンチゲート構造のスイッチングデバイス1において主な発熱領域は、電流パスが形成されるゲートトレンチ4の直下の位置である。この
参考形態の可変抵抗層17は、SiCエピタキシャル層3の表面から掘り下がったソーストレンチ8に入り込み、側面81および底面82に倣うように配置されている。これにより、可変抵抗層17と主な発熱領域との距離が近くなる。その結果、当該発熱領域で発生する熱を、効率よく可変抵抗層17に伝えることができる。
【0040】
図4は、本発明の第2
参考形態に係るスイッチングデバイスの模式的な断面図である。
図4において、前述の
図1に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
第2
参考形態に係るスイッチングデバイス51において、ソース電極16は、可変抵抗層17とSiCエピタキシャル層3との間に配置され、SiCエピタキシャル層3と接するコンタクト層39をさらに含む。
【0041】
コンタクト層39は、SiCエピタキシャル層3との間にオーミック接触を形成する金属からなる。たとえば、この
参考形態では、コンタクト層39は、Ti/TiN/Alからなる。また、コンタクト層39は、1μm以下の厚さを有し、好ましくは、0.5μm〜1μmの厚さを有している。
このスイッチングデバイス1によれば、ソース電極16のSiCエピタキシャル層3と接する部分がコンタクト層39であるため、SiCエピタキシャル層3に対してソース電極16を良好にオーミック接触させることができる。むろん、スイッチングデバイス1と同様の効果を達成することもできる。
【0042】
図5は、本発明の第3
参考形態に係るスイッチングデバイスの模式的な断面図である。
図5において、前述の
図1に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
第3
参考形態に係るスイッチングデバイス61において、ソース電極16は、コンタクトホール15から露出するSiCエピタキシャル層3の全域に接する可変抵抗層17に代えて、SiCエピタキシャル層3に選択的に接する可変抵抗層40を含む。
【0043】
可変抵抗層40は、この
参考形態では、コンタクトホール15から露出するソーストレンチ8の周縁部(具体的には、ソース層9の上面)に接している。これにより、ソーストレンチ8の側面81および底面82には、可変抵抗層40が接しておらず、ソーストレンチ8を埋め戻す表面電極層18が接するように配置されている。つまり、この
参考形態では、表面電極層18が、SiCエピタキシャル層3に接するコンタクト部の役割を担っている。
【0044】
このスイッチングデバイス61によっても、スイッチングデバイス1と同様の効果を達成することもできる。
なお、可変抵抗層40は、たとえば、ソース層9の上面および側面、ソーストレンチ8の側面81のみ、ソーストレンチ8の底面82のみに選択的に接していてもよい。
図6は、本発明の
一実施形態に係るスイッチングデバイスの模式的な断面図である。
図6において、前述の
図1に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示す。
【0045】
この実施形態に係るスイッチングデバイス71において、ソース電極16は、単層構造の可変抵抗層17に代えて、複層構造の可変抵抗層44を含む。
可変抵抗層44は、所定の高温条件(たとえば、過電流による発熱等)になったときの抵抗値の増加割合が相対的に高い高抵抗部45と、当該増加割合が高抵抗部45よりも低い低抵抗部46とを含む。
【0046】
高抵抗部45は、低抵抗部46よりも薄く、低抵抗部46に対してSiCエピタキシャル層3に近い側に配置されている。この実施形態では、高抵抗部45は、ソーストレンチ8の側面81および底面82に倣う(沿う)ように配置されており、その高抵抗部45上に低抵抗部46が配置されている。これにより、ソーストレンチ8には、可変抵抗層44に囲まれた空間47が形成されている。高抵抗部45は、コンタクトホール15から露出するSiCエピタキシャル層3の全域に接している。また、高抵抗部45の厚さは、たとえば、0.1μm〜0.3μmであり、低抵抗部46の厚さは、たとえば、0.5μm〜1.0μmである。表面電極層18は、ソーストレンチ8内の空間47を埋め戻すように配置されている。
【0047】
このスイッチングデバイス71によれば、可変抵抗層44に低抵抗部46が設けられ、さらに高抵抗部45が薄く形成されているので、通常使用時に可変抵抗層44が高温に晒される事態が生じても、可変抵抗層44全体の抵抗値が高くなり過ぎることを防止することができる。一方、短絡時には、可変抵抗層44の高抵抗部45が主となって、過電流の密度を良好に十分に低下させることができる。つまり、オン抵抗の上昇を抑えながら、過電流の密度を良好に低下させることができるスイッチングデバイスを提供することができる。むろん、スイッチングデバイス1と同様の効果を達成することもできる。
【0048】
以上、本発明の実施形態
および参考形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、可変抵抗層17,40,44は、所定の高温条件になったことを感知し、その温度上昇と共に抵抗値が増加する導電材料であれば、導電性を有するチタン酸バリウム系化合物以外のものであってもよい。
また、可変抵抗層17,40,44は、ドレイン電極20に設けられていてもよい。この場合、ソース電極16にも可変抵抗層を併設してもよいし、ドレイン電極20のみに可変抵抗層を設けてもよい。
【0049】
また、スイッチングデバイス1,51,61,71の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、スイッチングデバイス1において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
また、スイッチングデバイス1,51,61,71に形成された機能素子は、トレンチゲート型のMISトランジスタ以外に、プレーナゲート型のMISトランジスタ、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。
【0050】
本発明のスイッチングデバイスは、たとえば、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、電車、産業用ロボット等の動力源として利用される電動モータを駆動するための駆動回路を構成するインバータ回路に用いられるパワーモジュールに組み込むことができる。また、太陽電池、風力発電機その他の発電装置(とくに自家発電装置)が発生する電力を商用電源の電力と整合するように変換するインバータ回路に用いられるパワーモジュールにも組み込むことができる。
【0051】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。