特許第6065366号(P6065366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通セミコンダクター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000002
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000003
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000004
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000005
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000006
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000007
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000008
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000009
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000010
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000011
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000012
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000013
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000014
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000015
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000016
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000017
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000018
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000019
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000020
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000021
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000022
  • 特許6065366-半導体装置の製造方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065366
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20170116BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170116BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20170116BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20170116BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01L21/324 X
   H01L29/78 301Y
   C30B29/06 B
   C30B33/02
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-16282(P2012-16282)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-157425(P2013-157425A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年10月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308014341
【氏名又は名称】富士通セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087479
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 好人
(72)【発明者】
【氏名】田村 直義
(72)【発明者】
【氏名】西ヶ谷 啓太
(72)【発明者】
【氏名】堀 充明
(72)【発明者】
【氏名】川村 宏枝
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−269221(JP,A)
【文献】 特開2002−128593(JP,A)
【文献】 特開2010−272798(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008087(WO,A1)
【文献】 特表2007−536738(JP,A)
【文献】 特開2004−152965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/336
H01L 29/78
C30B 29/06
C30B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板を、希ガスを含む第1の雰囲気中、第1の圧力において、第1の温度で熱処理し、前記シリコン基板の表面の酸化膜を除去し、前記酸化膜を除去した後、前記シリコン基板の前記表面のシリコン原子を再配列してステップ・テラス構造を形成し、前記シリコン基板を平坦化する第1のステップと、
前記第1のステップの後、水素を含む第2の雰囲気中、前記第1の圧力より高い第2の圧力において、前記第1の温度よりも低い第2の温度で熱処理を行い、前記シリコン基板の前記表面を水素終端する第2のステップとを含み、
前記第1のステップは、前記表面からの前記酸化膜の離脱を促進する前記第1の圧力で処理を行うステップと、前記表面からのシリコン原子の離脱が抑制される前記第1の圧力よりも高い前記第2の圧力で処理を行うステップとを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のステップでは、前記シリコン基板の前記表面のC型欠陥を修復する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の温度は、350℃〜500℃である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置に製造方法において、
前記第1の温度は、950℃〜1200℃である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板表面の平坦性は、その後に形成するデバイスの特性に多大な影響を与える。このため、より平坦なシリコン表面を得るための技術が模索されている。
【0003】
シリコン基板の表面を平坦化する方法としては、例えば、真空中や水素雰囲気中で熱処理を行う平坦化熱処理が知られている。この方法は、真空中又は水素雰囲気中で、900℃〜1200℃程度の温度で熱処理を行い、シリコン基板表面のシリコン原子を再配列させて平坦化を行うのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−243266号公報
【特許文献2】特開平07−165410号公報
【特許文献3】特開平11−176828号公報
【特許文献4】特開2005−142445号公報
【特許文献5】特開2005−150398号公報
【特許文献6】特許第2689985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願発明者等がシリコン基板の平坦性とデバイス特性との関係について鋭意検討を行ったところ、従来の平坦化熱処理では原子レベルの平坦性が十分ではなく、これが原因して低周波ノイズが増加することが初めて明らかとなった。
【0006】
本発明の目的は、シリコン基板表面の原子レベルの平坦性を改善して半導体装置の特性を向上しうる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一観点によれば、シリコン基板を、希ガスを含む第1の雰囲気中、第1の圧力において、第1の温度で熱処理し、前記シリコン基板の表面の酸化膜を除去し、前記酸化膜を除去した後、前記シリコン基板の前記表面のシリコン原子を再配列してステップ・テラス構造を形成し、前記シリコン基板を平坦化する第1のステップと、前記第1のステップの後、水素を含む第2の雰囲気中、前記第1の圧力より高い第2の圧力において、前記第1の温度よりも低い第2の温度で熱処理を行い、前記シリコン基板の前記表面を水素終端する第2のステップとを含み、前記第1のステップは、前記表面からの前記酸化膜の離脱を促進する前記第1の圧力で処理を行うステップと、前記表面からのシリコン原子の離脱が抑制される前記第1の圧力よりも高い前記第2の圧力で処理を行うステップとを含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の半導体装置の製造方法によれば、シリコン基板表面における原子レベルの平坦性をより高めることができる。また、シリコン原子の未結合手の水素終端をより確実に行い、シリコン基板表面の安定性を向上することができる。これにより、MOSトランジスタの低周波ノイズを低減することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図2図2は、第1実施形態による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフ(その1)である。
図3図3は、第1実施形態による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフ(その2)である。
図4図4は、シリコン基板の温度とシリコン原子の移動量との関係を示すグラフである。
図5図5は、シリコン基板の温度とシリコン原子の昇華レートとの関係を示すグラフである。
図6図6は、シリコン原子の移動量が格子定数に相当する量となる温度及び昇華されるシリコン原子の数が1個となる温度と1000℃から600℃までの降下時間との関係を示すグラフである。
図7図7は、熱処理後におけるシリコン基板の表面をFT−IR ATR法により分析した結果を示すグラフである。
図8図8は、熱処理後のシリコン基板の表面粗さを示す二次元パワースペクトルである。
図9図9は、第1実施形態の変形例による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフである。
図10図10は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図11図11は、第2実施形態による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフ(その1)である。
図12図12は、第2実施形態による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフ(その2)である。
図13図13は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
図14図14は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
図15図15は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
図16図16は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
図17図17は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その5)である。
図18図18は、第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その6)である。
図19図19は、第2実施形態の製造方法により製造された半導体装置について低周波ノイズ測定を行った結果を示すグラフである。
図20図20は、第3実施形態による半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図21図21は、参考例による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフである。
図22図22は、参考例の製造方法により製造された半導体装置について低周波ノイズ測定を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態による半導体装置の製造方法について図1乃至図9を用いて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図2及び図3は、本実施形態による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフである。図4は、シリコン基板の温度とシリコン原子の移動量との関係を示すグラフである。図5は、シリコン基板の温度とシリコン原子の昇華レートとシリコン基板の温度との関係を示すグラフである。図6は、シリコン原子の移動量が格子定数に相当する量となる温度及び昇華されるシリコン原子の数が1個となる温度と1000℃から600℃までの降下時間との関係を示すグラフである。図7は、熱処理後におけるシリコン基板の表面をFT−IR ATR法により分析した結果を示すグラフである。図8は、熱処理後のシリコン基板の表面粗さを示す二次元パワースペクトルである。図9は、本実施形態の変形例による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフである。
【0012】
まず、(100)面を主表面とするシリコン基板10を薬液処理し、シリコン基板10の表面に形成されたシリコン酸化膜(図示せず)を除去する。この薬液処理には、半導体装置製造プロセスの初期段階においてシリコン基板10上の金属汚染等を除去する目的で行われる洗浄処理や、シリコン基板10上に所定のシリコン酸化膜(例えばゲート絶縁膜)を形成する際に既存のシリコン酸化膜を除去するための前処理等が該当する。
【0013】
この薬液処理後、シリコン基板10の表面には、薬液処理に伴い形成される化学酸化膜や、薬液処理後の大気放置等により形成される自然酸化膜などのシリコン酸化膜12が形成される。本願明細書では、このようなシリコン酸化膜12を半導体装置の構成部分に用いられるシリコン酸化膜(例えばゲート絶縁膜)と区別する観点から、化学酸化膜をも含めて「自然酸化膜」と表現することもある。
【0014】
このように形成されたシリコン酸化膜12とシリコン基板10との界面には、例えば図1(a)に凹凸で示すような荒れが存在する。シリコン基板10表面の荒れはシリコン基板10の購入時において既に存在するものであり、シリコン酸化膜12が形成された後もシリコン基板10とシリコン酸化膜12との界面に残存する。なお、図1(a)には界面の凹凸を周期的な形状で示しているが、実際には周期的ではなく、凹凸の段差も一定ではない。表面が荒れたシリコン基板10上に形成されたシリコン酸化膜12の膜厚も、必ずしも均一ではない。
【0015】
次いで、シリコン酸化膜12が形成されたシリコン基板10を熱処理炉内に搬入し、図2に示すプロファイルを用いて熱処理を行う。熱処理炉は、所定の圧力のガス雰囲気中でシリコン基板10の熱処理が可能なものである。また、生産性の向上等の観点からは、短時間熱処理が可能な熱処理炉が好ましく、例えばランプアニール装置を適用することができる。
【0016】
図2に示す熱処理プロファイルは、大別して、ステップS11〜ステップS16の6つのステップに分けられる。
【0017】
ステップS11は、シリコン基板10の面内の温度均一性を高めるためにシリコン基板10を予備加熱するための工程である。ステップS11の処理温度は、ステップS13の処理温度よりも低ければ特に限定されるものではなく、例えば550℃とする。ステップS11の処理時間は、シリコン基板10の温度が安定する程度の時間であれば特に限定されるものではなく、例えば30秒とする。
【0018】
ステップS12は、ステップS11の処理温度からステップS13の処理温度へ昇温するステップである。ステップS11の処理温度からステップS13の処理温度への昇温レートは、特に限定されるものではなく、例えば80℃/秒とする。
【0019】
ステップS13は、シリコン酸化膜12を除去するとともに、シリコン基板10表面のシリコン原子の再配列を促進して表面を平坦化するステップである。ステップS13の処理温度は、950℃〜1200℃程度が好ましく、例えば1000℃とする。
【0020】
還元性雰囲気、例えば水素雰囲気中で950℃〜1200℃程度の熱処理を行うことにより、シリコン基板10表面のSi−O結合が切断されて酸素原子及びシリコン原子が脱離し、結果としてシリコン酸化膜12が除去される。シリコン酸化膜12が除去されると、シリコン基板10の表面のシリコン原子が移動できるようになる。そして、よりエネルギー的に安定な状態となるように表面シリコン原子が再配列され、シリコン基板10の表面はSi(001)の2×1構造となり、シリコン基板10の表面にはステップ・テラス構造が形成される。ステップ・テラス構造とは、平面(テラス)と1原子層高さの段差(ステップ)が連続して形成された表面構造であり、原子層レベルで平坦な表面を有している。これにより、シリコン基板10の表面が原子層レベルで平坦化される(図1(b)参照)。
【0021】
ステップS14は、ステップS13の処理温度からステップS15の処理温度へ降温するステップである。ステップS13の処理温度からステップS15の処理温度への降温レートは、−2℃/分程度以上であれば特に限定されるものではなく、例えば−75℃/秒とする。降温レートは必ずしも一定である必要はなく、降温過程で降温レートを変化してもよい。降温レートを−2℃/分程度以上とする理由については、後述する。
【0022】
ステップS15は、シリコン基板10表面のシリコン原子を再配列して表面を平坦化するとともに、シリコン基板10表面のシリコン原子の未結合手を水素終端するステップである。
【0023】
ステップS13による表面シリコン原子の再配列によってシリコン基板10の表面は平坦化されるが、シリコン原子の移動には、シリコン基板10の表面における二次元的な移動のみならず、三次元的な移動、すなわちシリコン基板10からのシリコン原子の脱離も含まれる。シリコン基板10からのシリコン原子の脱離が生じると、シリコン原子が脱離した部分には欠陥(C型欠陥)が発生し、その欠陥がシリコン基板10表面の平坦性を損なう原因となる。
【0024】
そこでステップS15において、シリコン原子の三次元的な移動よりも二次元的な移動が支配的になる温度で熱処理を行い、脱離により生じた欠陥をシリコン原子の二次元的な移動により修復し、シリコン基板10表面の平坦性を向上する。また、この際の熱処理温度をSi−H結合の解離エネルギーに相当する温度よりも低くすることで、表面シリコン原子の未結合手を水素によって確実に終端することができ、シリコン基板10表面における化学的安定性を向上することができる。
【0025】
このような観点から、ステップS15における熱処理温度は、350℃〜500℃程度が好ましく、例えば400℃とする。処理時間は、シリコン原子が移動して欠陥を埋めるに十分な時間とする。例えば、400℃の熱処理では、処理時間を少なくとも30秒以上とすることが望ましい。
【0026】
ステップS16は、処理を行ったシリコン基板10を熱処理炉から取り出すためにステップS15の処理温度から室温へ降温するステップである。
【0027】
ステップS11〜S15は水素雰囲気中で行われ、ステップS16は不活性ガス雰囲気中、例えば窒素雰囲気中で行われる。炉内の圧力は、各ステップにおける上記目的を達成しうる範囲で適宜選択される。例えば、ガス流量を1リットル/minとし、ステップS11〜S16を通して炉内の圧力を20Torr一定とする。
【0028】
次に、ステップS14とステップS16との間にステップS15を行う意義についてより詳しく説明する。
【0029】
ステップS15を行うことの効果を説明するにあたり、図3に示すような熱処理プロファイルを想定する。この熱処理プロファイルは、ステップS13を1000℃の温度で行った後、ステップS14において、−40℃/秒の降温レートで600℃まで降温し、続いて−10℃/秒の降温レートで400℃まで降温し、ステップS15を400℃の温度で30秒間行うものである。
【0030】
シリコン表面におけるシリコン原子の二次元的な実効移動量は、単量体シリコンを想定すると、以下のように記述することができる。ここで、Lはシリコン原子の実効移動量、qは電荷素量、Dは拡散定数、kはボルツマン定数、Eは活性化エネルギーである。
【0031】
L=Σ2√(D×Δt)
=D×exp(−q・E/k
=1×10−3[cm/s]
=2.0 [eV]
上記の式に基づきステップS14におけるシリコン基板の温度とシリコン原子の移動量との関係を求めた結果が図4である。図4の結果から、ステップS14におけるシリコン原子の合計移動量は、35.9nmと見積もられた。また、700℃における移動量は、シリコンの格子定数である0.543nm程度であると見積もられた。また、ステップS15のみにおけるシリコン原子の移動量は、0.536nmと見積もられた。
【0032】
シリコン原子の移動によってC型欠陥を修復することを考慮すると、シリコン原子はシリコンの格子定数程度移動することが望ましいと考えられる。上述の結果から、ステップS15のみにおけるシリコン原子の移動量はシリコンの格子定数程度であり、ステップS15における熱処理がC型欠陥を修復するに十分な原子移動を伴うものであることが理解される。
【0033】
一方、シリコン原子の三次元的な移動、すなわち、水素によるSi−Si結合の切断に伴うシリコン原子の昇華レートRは、以下のように記述することができる。
【0034】
=R×exp(−q・E/k
=4.0 [eV]
上記の式に基づきステップS14におけるシリコン基板の温度とシリコン原子の昇華レートとの関係を求めた結果が図5である。図5の結果から、シリコン原子を1E6個(1000個×1000個の領域を想定)とした場合、シリコン原子の昇華によるC型欠陥の生成は650℃程度の温度まで生じることが判る。
【0035】
前述のように、700℃程度まではシリコン原子の移動量はシリコンの格子定数程度あるが、700℃よりも低温におけるシリコン原子の移動量はシリコンの格子定数未満である。すなわち、700℃〜650℃の間では、C型欠陥の修復よりもC型欠陥の発生が支配的となる。このため、ステップS15を行わずにそのまま室温まで降温すると、C型欠陥の修復が不十分でC型欠陥が残存したままとなり、シリコン基板表面の平坦性が低下することになる。
【0036】
したがって、ステップS15を行うことにより、ステップS14においてC型欠陥が発生した場合にもこのC型欠陥をを修復することができ、シリコン基板の表面の平坦性を向上することができる。
【0037】
次に、ステップS14における降温レートの影響について説明する。
【0038】
図6は、シリコン原子の移動量が格子定数に相当する量となる温度及び昇華されるシリコン原子の数が1個となる温度と、1000℃から600℃までの降下時間との関係を示すグラフである。
【0039】
図6に示すように、1000℃から600℃までの降下時間が10000秒(2.7時間、降温レート換算で−2.4℃/分)でも、昇華されるシリコン原子の数が1個となる温度が、シリコン原子の移動量が格子定数に相当する量となる温度を上回ることはない。すなわち、温度の降下時間が10000秒程度までは、ステップS14において生成されたC型欠陥が完全に修復されることはない。
【0040】
降下時間が20000秒を超えるとようやく、シリコン原子の移動量が格子定数に相当する量となる温度が、昇華されるシリコン原子の数が1個となる温度を上回る。このときの温度は500℃程度であり、このときの降温レートは−1.2℃/分となる。すなわち、ステップS14における降温レートが−2.0℃/分程度以上よりも早い場合には、シリコン原子の移動によるC型欠陥の修復よりもC型欠陥の発生が支配的となる。
【0041】
半導体装置の生産性を考慮すると、ステップS14における降温レートは、−2.0℃/分よりも早いレートに設定することが望ましいと考えられる。この場合、シリコン原子の移動によるC型欠陥の修復は不十分であると考えられ、ステップS15を行いC型欠陥を修復することがきわめて重要であることがわかる。
【0042】
図7は、熱処理後におけるシリコン基板の表面をFT−IR ATR法により分析した結果を示すグラフである。図中、上段が本実施形態による熱処理方法を用いた場合の結果(実施例)であり、下段がステップS14の後にステップS15を行わずに直ちにステップS16に移行する熱処理方法を用いた場合の結果(比較例)である。
【0043】
図7に示すように、本実施形態の熱処理を用いた場合には、ステップS15を行わない比較例の場合と比較して、平坦性向上の指標となるSi(001)2×1構造を表すモノハイドライド結合のピーク強度が大幅に増加している。この結果から、本実施形態による熱処理を用いることによりシリコン基板表面の平坦性を向上できることが確認された。
【0044】
図8は、熱処理後のシリコン基板の表面粗さを示す二次元パワースペクトルである。図8には、本実施形態による熱処理方法を用いた場合のスペクトル(実施例)と、ステップS14の後にステップS15を行わずに直ちにステップS16に移行する熱処理方法を用いた場合のスペクトル(比較例)を示した。
【0045】
図8に示すように、本実施形態の熱処理を用いた場合には、ステップS15を行わない比較例の場合と比較して、短周期側の強度が低くなっている。このことは、短周期の表面粗さが減少していることを表しており、ステップS15の実施によってC型欠陥の修復が進んでいることを表している。
【0046】
図2に示す熱処理プロファイルでは、ステップS11〜ステップS14を実施する際の雰囲気を水素雰囲気としているが、水素の代わりに希ガスを用いてもよい。希ガスとしては、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)等が挙げられる。なお、窒素は、シリコン基板の表面が窒化される虞があるため好ましくない。
【0047】
ステップS11〜ステップS14の処理雰囲気に希ガスを用いる場合の熱処理プロファイルとしては、例えば図9に示すものを適用することができる。
【0048】
この場合、希ガス自身にはSi−O結合を切断する作用はないため、ステップS13においてシリコン酸化膜12を除去する際には、シリコン酸化膜12の蒸気圧に近づけるべく熱処理炉内の圧力を低げ、シリコン酸化膜12の除去を促進する。この際の圧力は、シリコン酸化膜12を除去できる範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば5Torr以下、例えば3Torrとする。
【0049】
ただし、熱処理炉内の圧力を下げた状態でステップS13の熱処理を継続するとシリコン酸化膜12が除去された後も表面シリコン原子が除去され続けるため、シリコン酸化膜12の除去が完了した頃に熱処理炉内の圧力を増加することが望ましい。熱処理炉内の圧力を増加した状態でステップS13の熱処理を継続することにより、表面シリコン原子の脱離を防止しつつ、表面シリコン原子の再配列を促進することができる。表面シリコン原子の再配列を行う際の熱処理炉内の圧力は、表面シリコン原子の脱離を十分に抑制できる範囲であれば特に限定されるものではなく、例えば20Torrとする。
【0050】
他のステップは、図2に示す熱処理プロファイルの場合と同様である。
【0051】
このように、本実施形態によれば、ステップS13の熱処理の後にステップS15の熱処理を行うので、シリコン基板表面における原子レベルの平坦性をより高めることができる。また、シリコン原子の未結合手の水素終端をより確実に行い、シリコン基板表面の安定性を向上することができる。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態による半導体装置の製造方法について図10乃至図19を用いて説明する。図1乃至図9に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様の構成には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0053】
図10は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図11及び図12は、本実施形態による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフである。図13乃至図18は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図19は、本実施形態による製造された半導体装置について低周波ノイズ測定を行った結果を示すグラフである。
【0054】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、ウェーハプロセスの初期段階、すなわち素子分離絶縁膜やウェル等を形成する前に、第1実施形態に示した表面平坦化のための熱処理(平坦化熱処理)を行うものである。
【0055】
すなわち、図10に示すように、処理対象のシリコン基板を用意し(ステップS21)、平坦化熱処理(ステップS22)を行った後、STI形成(ステップS23)、ゲート絶縁膜形成(ステップS24)、ゲート電極の形成(ステップS25)、その後の通常のFET工程(ステップS26)等を経て、半導体装置を製造する。
【0056】
次に、図10のステップに沿った具体的な半導体装置の製造方法について図11乃至図18を用いて説明する。
【0057】
まず、半導体装置を形成するシリコン基板10を用意する(ステップS21)。
【0058】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングを行い、シリコン基板10表面の自然酸化膜(図示せず)を除去する。
【0059】
次いで、シリコン基板10を、例えば図11に示す熱処理プロファイルを用いて熱処理し、シリコン基板10の表面を平坦化する(ステップS22)。
【0060】
まず、ステップS11において、例えば550℃、30秒間の熱処理を行う。次いで、ステップS12において、例えば80℃/秒の昇温レートで550℃から1000℃まで昇温する。次いで、ステップS13において、例えば1000℃、10秒間の熱処理を行う。次いで、ステップS14において、例えば−75℃/秒の降温レートで1000℃から400℃まで降温する。次いで、ステップS15において、例えば400℃にて30秒間の熱処理を行う。その後、ステップS16において、400℃から室温まで冷却し、シリコン基板10を熱処理炉内から取り出す。熱処理雰囲気は、ステップS11〜ステップS15までを水素雰囲気とし、ステップS16を窒素雰囲気とする。熱処理炉内には、例えば1リットル/分の流量でガスを導入し、ステップS11〜ステップS16を通してプロセス圧力を例えば20Torrとする。
【0061】
図11に示す熱処理プロファイルの代わりに、例えば図12に示す熱処理プロファイルを用いてもよい。この場合には、まず、ステップS11において、例えば550℃、30秒間の熱処理を行う。次いで、ステップS12において、例えば80℃/秒の昇温レートで550℃から1000℃まで昇温する。次いで、ステップS13において、例えば1000℃、25秒間の熱処理を行う。次いで、ステップS14において、例えば−75℃/秒の降温レートで1000℃から400℃まで降温する。次いで、ステップS15において、例えば400℃にて30秒間の熱処理を行う。その後、ステップS16において、400℃から室温まで冷却し、シリコン基板10を熱処理炉内から取り出す。熱処理雰囲気は、ステップS11〜ステップS14までを例えばHe雰囲気とし、ステップS15を水素雰囲気とし、ステップS16を窒素雰囲気とする。熱処理炉内の圧力は、ステップS13の途中までは例えば3Torrとし、その後例えば5秒間で20Torrまで昇圧してステップS13の残りの熱処理を行い、その後ステップS16まで20Torr一定とする。
【0062】
ステップS22を行う前のシリコン基板10の表面には荒れが存在し、熱処理炉内に導入するまでの過程でシリコン酸化膜12が形成される(図1(a)参照)。ステップS22の熱処理を行うことにより、シリコン酸化膜12を除去してシリコン基板10の表面を原子レベルで平坦化するとともに、シリコン基板10表面のシリコン原子の未結合手を水素終端する(図1(b)参照)。
【0063】
次いで、平坦加熱処理後のシリコン基板10に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により、素子分離絶縁膜20を形成する(ステップS23)。
【0064】
まず、シリコン基板10上に、例えば熱酸化法により、例えば膜厚10nmのシリコン酸化膜14を形成する。
【0065】
次いで、シリコン酸化膜14上に、例えばCVD法により、例えば膜厚112nmのシリコン窒化膜16を形成する(図13(a))。
【0066】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、シリコン窒化膜16、シリコン酸化膜14及びシリコン基板10を異方性エッチングし、シリコン基板10の素子分離領域に、深さが例えば300nmの素子分離溝18を形成する(図13(b))。
【0067】
次いで、例えば熱酸化法により、素子分離溝18の内壁にライナー膜として、例えば膜厚3nmのシリコン酸化膜を形成する。
【0068】
次いで、例えば高密度プラズマCVD法により、例えば膜厚600nmのシリコン酸化膜を堆積し、ライナー膜が形成された素子分離溝18をシリコン酸化膜によって埋め込む。
【0069】
次いで、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、シリコン窒化膜16上のシリコン酸化膜を除去する。こうして、いわゆるSTI法により、素子分離溝18に埋め込まれたシリコン酸化膜により、素子分離絶縁膜20を形成する(図14(a))。
【0070】
次いで、例えば窒素雰囲気中で900℃の熱処理を行い、素子分離絶縁膜20を緻密化する。
【0071】
次いで、例えばホットリン酸を用いたウェットエッチングにより、シリコン窒化膜16を除去する。
【0072】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜14を除去する。
【0073】
次いで、素子分離絶縁膜20により画定されたシリコン基板10の活性領域上に、例えば熱酸化法により、例えば膜厚10nmのシリコン酸化膜22を形成する(図14(b))。
【0074】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、シリコン基板10の各トランジスタ形成領域にウェルイオン注入及びチャネルイオン注入等を行い、所定のウェル24を形成する(図15(a))。
【0075】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜22を除去する(図15(b))。
【0076】
次いで、素子分離絶縁膜20により画定されたシリコン基板10の活性領域上に、例えば熱酸化法により、例えば膜厚8nmのシリコン酸化膜を形成し、シリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜26を形成する(図16(a)、ステップS24)。
【0077】
次いで、全面に、例えばLPCVD法により、例えば膜厚100nmの多結晶シリコン膜28を堆積する(図16(b))。
【0078】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、多結晶シリコン膜28をパターニングし、各トランジスタ形成領域にゲート電極30を形成する(ステップS25)。
【0079】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、各トランジスタ形成領域に、ゲート電極30をマスクとして所定の導電型の不純物をイオン注入し、エクステンション領域となる不純物層32、ポケット領域となる不純物層34等、必要な不純物層を形成する(図17(a))。
【0080】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えばシリコン酸化膜を堆積後、このシリコン酸化膜を異方性エッチングし、ゲート電極30の側壁部分にサイドウォールスペーサ36を形成する。
【0081】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、各トランジスタ形成領域に、ゲート電極30及びサイドウォールスペーサ36をマスクとして所定の導電型の不純物をイオン注入し、不純物層38を形成する。こうして、不純物層32,34,38により、例えばポケット付きのソース/ドレイン領域40を形成する。こうして、シリコン基板10上に、ゲート電極30及びソース/ドレイン領域40を有するMOSトランジスタを形成する(図17(b)、ステップS26)。
【0082】
次いで、サリサイドプロセスにより、ゲート電極30上及びソース/ドレイン領域40上に、金属シリサイド膜42、例えばコバルトシリサイド膜を形成する(図18(a))。
【0083】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えばシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とを堆積し、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜構造の層間絶縁膜44を形成する。
【0084】
次いで、層間絶縁膜44内に、金属シリサイド膜42に接続されたコンタクトプラグ46を形成する(図18(b))。
【0085】
この後、所定のバックエンドプロセスを行い、半導体装置を完成する。
【0086】
図19は、上述の製造方法により製造したMOSトランジスタについて低周波ノイズ測定を行った結果を示すグラフである。
【0087】
RTN(ランダム・テレグラフ・ノイズ)とは、ゲート絶縁膜中の欠陥やゲート絶縁膜/シリコン基板界面近傍の欠陥にキャリアが捕獲されたり欠陥からキャリアが解放されたりすることにより生じるドレイン電流のノイズ成分である。RTNは、パワースペクトル密度が1/fの傾きを持つローレンツ型を示すことが特徴である。図19の低周波ノイズは、このRTNの重ね合わせで表現できることを示している。
【0088】
図19に示すように、本実施形態による半導体装置では、パワースペクトル密度がおよそ1/fの傾きを有しており、低周波領域においてもRTN成分の顕著な増加は認められない。
【0089】
これに対し、後述する参考例に示すように、ステップS15を行わずステップS14の後に直ちにステップS16に移行する熱処理プロファイルで熱処理を行った後に製造したMOSトランジスタでは、図22に示すように、低周波領域に1/fの傾きを持つノイズ成分(低周波ノイズ)が認められる(図中、矢印部分)。
【0090】
これらのことから、本実施形態による半導体装置の製造方法におけるステップS21の熱処理を適用することにより、ゲート絶縁膜26中及びゲート電極/ゲート絶縁膜26界面の欠陥を低減し、低周波ノイズを大幅に低減できることが理解される。
【0091】
このように、本実施形態によれば、ステップS13の熱処理の後にステップS15の熱処理を行うので、シリコン基板表面における原子レベルの平坦性をより高めることができる。また、シリコン原子の未結合手の水素終端をより確実に行い、シリコン基板表面の安定性を向上することができる。これにより、MOSトランジスタの低周波ノイズを低減することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0092】
[第3実施形態]
第3実施形態による半導体装置の製造方法について図20を用いて説明する。図1乃至図19に示す第1及び第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様の構成には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0093】
図20は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0094】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、ゲート絶縁膜の形成直前に、第1実施形態に示した表面平坦化のための熱処理(平坦化熱処理)を行うものである。
【0095】
すなわち、図20に示すように、処理対象のシリコン基板を用意し(ステップS31)、STI形成(ステップS32)、平坦化熱処理(ステップS33)を行った後、ゲート絶縁膜形成(ステップS34)、ゲート電極の形成(ステップS35)、その後の通常のFET工程(ステップS36)等を経て、半導体装置を製造する。
【0096】
具体的には、まず、例えば図13(a)乃至図15(b)に示す第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、素子分離絶縁膜20、ウェル24等を形成後、イオン注入の際の保護膜としてのシリコン酸化膜22を除去する(ステップS31〜ステップS32)。
【0097】
次いで、例えば図11又は図12の熱処理プロファイルを用いて、平坦加熱処理を行う(ステップS33)。
【0098】
次いで、例えば図16(a)乃至図18(b)に示す第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体装置を完成する。
【0099】
本実施形態の製造方法により製造したMOSトランジスタにおいても、第2実施形態による半導体装置の製造方法の場合と同様、低周波ノイズを大幅に低減できることが確認された。
【0100】
このように、本実施形態によれば、ステップS13の熱処理の後にステップS15の熱処理を行うので、シリコン基板表面における原子レベルの平坦性をより高めることができる。また、シリコン原子の未結合手の水素終端をより確実に行い、シリコン基板表面の安定性を向上することができる。これにより、MOSトランジスタの低周波ノイズを低減することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0101】
[参考例]
参考例による半導体装置の製造方法について図21及び図22を用いて説明する。図1乃至図20に示す第1乃至第3実施形態による半導体装置の製造方法と同様の構成には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0102】
図21は、本参考例による半導体装置の製造方法における熱処理プロファイルを示すグラフである。図22は、本実施形態による製造された半導体装置について低周波ノイズ測定を行った結果を示すグラフである。
【0103】
本参考例による半導体装置の製造方法は、ステップS22における熱処理プロファイルが異なるほかは、第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様である。
【0104】
本参考例では、ステップS22を、図21に示す熱処理プロファイルで行う。
【0105】
まず、ステップS41において、例えば550℃、30秒間の熱処理を行う。次いで、ステップS42において、例えば80℃/秒の昇温レートで550℃から1000℃まで昇温する。次いで、ステップS43において、例えば1000℃、10秒間の熱処理を行う。次いで、ステップS44において、例えば−75℃/秒の降温レートで1000℃から400℃まで降温する。その後、ステップS45において、400℃から室温まで冷却し、シリコン基板10を熱処理炉内から取り出す。熱処理雰囲気は、ステップS41〜ステップS44までを水素雰囲気とし、ステップS45を窒素雰囲気とする。熱処理炉内には、例えば1リットル/分の流量でガスを導入し、ステップS41〜ステップS45を通してプロセス圧力を例えば20Torrとする。
【0106】
図21に示す熱処理プロファイルが図11に示す熱処理プロファイルと異なる点は、ステップS44の後に、ステップS15に相当するステップを行わずに直ちに、ステップS16に相当するステップS45を行う点である。
【0107】
ステップS22にこのような熱処理プロファイルを用いて製造された半導体装置について低周波ノイズ測定を行った結果を、図22に示す。
【0108】
図22に示すように、本参考例の製造方法を用いて製造したMOSトランジスタでは、低周波領域に1/fの傾きを持つノイズ成分(低周波ノイズ)が検出された(図中、矢印部分)。
【0109】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0110】
例えば、上記実施形態では、(100)シリコン基板を用いた場合の例を示したが、必ずしも(100)シリコン基板である必要はなく、その他の面方位の基板、例えば(111)シリコン基板を用いてもよい。或いは、所定の面方位に対して所定方向に所定角度傾けたオフセット基板を用いてもよい。
【0111】
また、上記第2及び第3実施形態では、1つのトランジスタを代表して半導体装置の製造方法を説明したが、複数種類のトランジスタを含む半導体装置においても同様に適用することができる。例えば、ゲート絶縁膜の膜厚の異なる複数種類のトランジスタを有する半導体装置の製造方法では、ゲート絶縁膜を形成する一連の工程の前に上記熱処理を行うことにより、同様の効果を得ることができる。スタックゲート構造のメモリトランジスタを有する半導体装置でも同様である。
【0112】
また、上記実施形態に記載した半導体装置の構造、構成材料、製造条件等は、一例を示したものにすぎず、当業者の技術常識等に応じて適宜修正や変更が可能である。
【0113】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0114】
(付記1) シリコン基板を、第1の雰囲気中において第1の温度で熱処理し、前記シリコン基板の表面の酸化膜を除去する第1のステップと、前記第1のステップの後、水素を含む第2の雰囲気中において前記第1の温度よりも低い第2の温度で熱処理を行い、前記シリコン基板の前記表面を水素終端する第2のステップとを含む熱処理工程を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0115】
(付記2) 付記1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のステップでは、前記シリコン基板の前記表面のC型欠陥を修復する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0116】
(付記3) 付記1又は2記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の温度は、前記シリコン基板の前記表面におけるシリコン原子の三次元的な移動よりも二次元的な移動が支配的になる温度である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0117】
(付記4) 付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の温度は、Si−H結合が解離するエネルギー相当する温度よりも低い温度である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0118】
(付記5) 付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の温度は、350℃〜500℃である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0119】
(付記6) 付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2のステップは、30秒以上行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0120】
(付記7) 付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のステップでは、前記酸化膜を除去した後、前記シリコン基板の前記表面のシリコン原子を再配列してステップ・テラス構造を形成し、前記シリコン基板を平坦化する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0121】
(付記8) 付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置に製造方法において、
前記第1の温度は、950℃〜1200℃である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0122】
(付記9) 付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の雰囲気は、水素を含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0123】
(付記10) 付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の雰囲気は、希ガスを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0124】
(付記11) 付記10記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のステップは、第1の圧力で処理を行うステップと、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力で処理を行うステップとを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0125】
(付記12) 付記1乃至11記載の半導体装置の製造方法において、
前記熱処理工程の後、前記シリコン基板を熱酸化してシリコン酸化膜を形成する工程を更に有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0126】
(付記13) 付記12記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリコン酸化膜は、ゲート絶縁膜である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0127】
(付記14) 付記1乃至12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記熱処理工程の後に、前記シリコン基板に素子分離絶縁膜を形成する工程を更に有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0128】
(付記15) 付記1乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記熱処理工程は、前記第2のステップの後、窒素を含む第3の雰囲気中において前記第2の温度から室温まで冷却する第3のステップを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0129】
(付記16) 付記1乃至15のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記熱処理は、ランプアニール装置により行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0130】
(付記17) 付記11記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の圧力は、前記表面からの前記酸化膜の離脱を促進する圧力であり、前記第2の圧力は、前記表面からのシリコン原子の離脱が抑制される圧力である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0131】
10…シリコン基板
12,14,22…シリコン酸化膜
16…シリコン窒化膜
18…素子分離溝
20…素子分離絶縁膜
24…ウェル
26…ゲート絶縁膜
28…多結晶シリコン膜
30…ゲート電極
32,34,38…不純物層
36…サイドウォールスペーサ
40…ソース/ドレイン領域
42…金属シリサイド膜
44…層間絶縁膜
46…コンタクトプラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22