(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065416
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】回転体
(51)【国際特許分類】
F16C 3/12 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
F16C3/12
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-128931(P2012-128931)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-253635(P2013-253635A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】桐原 直之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆広
(72)【発明者】
【氏名】山口 和導
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6062180(US,A)
【文献】
特開2005−140170(JP,A)
【文献】
特開2011−17399(JP,A)
【文献】
特開2012−117630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線(A1)を中心に回転可能なクランクシャフト(12)に取付けられる回転体(36)であって、
前記クランクシャフト(12)は、前記回転軸線(A1)上に配置されるシャフト部(24)と、前記シャフト部(24)から前記回転軸線(A1)と垂直な第1の垂直方向(A2)に延びるウェブ部(26)とを有し、
前記回転体(36)は、前記回転軸線(A1)及び前記第1の垂直方向(A2)と垂直な第2の垂直方向(A3)に間隔をあけて配置される1対のブロック要素(38)と、前記1対のブロック要素(38)を連結し且つ前記ウェブ部(26)に取付けられる板要素(40)と、を有し、
前記1対のブロック要素(38)の各々は、前記板要素(40)から前記第1の垂直方向(A2)に突出する突出部分(48)を有し、前記突出部分(48)は、前記突出部分(48)に作用する遠心力により、前記板要素(40)に対して撓み可能であり、前記突出部分(48)と前記板要素(40)の接続隅部(54)及び/又はその近傍に切欠き(56)が設けられることを特徴とする回転体(36)。
【請求項2】
前記切欠き(56)は、前記ブロック要素(38)を前記回転軸線(A1)方向に貫通することを特徴とする請求項1に記載の回転体(36)。
【請求項3】
前記切欠き(56)は、前記ブロック要素(38)を前記回転軸線(A1)方向に貫通しないことを特徴とする請求項1に記載の回転体(36)。
【請求項4】
前記切欠き(56)は、細長い溝であることを特徴とする請求項1に記載の回転体(36)。
【請求項5】
前記切欠き(56)は、複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の回転体(36)。
【請求項6】
前記切欠き(56)は、孔であることを特徴とする請求項1に記載の回転体(36)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトに取付けられる回転体に関し、例えば、エンジンのクランクシャフトに取付けられる回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
チェンソー、刈払機、ブロワなどの多くの小型作業機械に、2サイクルエンジンが採用されている。
【0003】
2サイクルエンジンでは、ピストンが上昇する間、燃焼室内の燃料と空気の混合ガスを圧縮すると共に、クランク室内が負圧になり、吸入通路が前記クランク室に通じると、燃料と空気の混合ガスが前記吸入通路を通って前記クランク室内に充填される。次いで、前記燃焼室内の爆発により前記ピストンが下降する間、排気通路が前記燃焼室に通じると、燃焼ガスが前記排気通路から排気される。また、前記クランク室内に充填された混合ガスが圧縮され、掃気通路を介して前記クランク室と前記燃焼室が通じると、混合ガスが前記クランク室から前記掃気通路を介して前記燃焼室内に流入する。
【0004】
前記2サイクルエンジンにおいて、前記クランク室内の容積を小さくすると、前記クランク室内における混合ガスの圧縮比が大きくなり、前記エンジンの出力性能、加速性能、エミッション(炭化水素等の大気汚染物質の排出)の低減を向上させることができることが知られている。また、前記クランク室内の容積を小さくするために、クランクシャフトのウェブ(アーム)の両側に生じる空間を埋める1対のブロック要素を前記ウェブに取付けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−140170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記1対のブロック要素が板要素によって連結され、回転体として一体化されるとき、前記板要素と前記ブロック要素の接続箇所に応力が集中することがある。前記回転体の耐久性の向上のために、かかる応力の集中を軽減させることが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、板要素とブロック要素の接続箇所に集中する応力を軽減することができる回転体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による回転体は、回転軸線を中心に回転可能なクランクシャフトに取付けられる回転体であって、前記クランクシャフトは、前記回転軸線上に配置されるシャフト部と、前記シャフト部から前記回転軸線と垂直な第1の垂直方向に延びるウェブ部とを有し、前記回転体は、前記回転軸線及び前記第1の垂直方向と垂直な第2の垂直方向に間隔をあけて配置される1対のブロック要素と、前記1対のブロック要素を連結し且つ前記ウェブ部に取付けられる板要素と、を有し、前記1対のブロック要素の各々は、前記板要素から前記第1の垂直方向に突出する突出部分を有し、前記突出部分と前記板要素の接続隅部及び/又はその近傍に切欠きが設けられることを特徴としている。
【0009】
このように構成された前記回転体では、前記回転体を高速回転させると、前記突出部分に作用する遠心力により、前記突出部分が前記板要素に対して撓み、前記突出部分の前記接続隅部に応力が集中する傾向がある。これに対して、前記突出部分の前記接続隅部に切欠きを設けると、前記突出部分が前記切欠きの周りで撓み、結果として、遠心力による応力集中が前記切欠きの周りに分散される。すなわち、前記板要素と前記突出部分の接続箇所(前記切欠き)に集中する応力が軽減される。また、突出部分の接続隅部近傍に切欠きを設けると、突出部分が切欠きの周りで撓み、結果として、遠心力による応力集中が前記切欠きと前記接続隅部に分散され、前記板要素と前記突出部分の接続箇所(前記接続隅部)に集中する応力が軽減される。
【0010】
前記切欠きは、前記ブロック要素を前記回転軸線方向に貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。また、前記切欠きは、細長い溝であってもよいし、孔であってもよい。前記切欠きは、複数設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したとおり、本発明による回転体は、板要素とブロック要素の接続箇所に集中する応力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による回転体を有するエンジンの正面断面図である。
【
図2】本発明による回転体を有するエンジンの側面断面図である。
【
図4】クランクシャフトに取付けられた本発明による回転体の斜視図である。
【
図6】本発明による変形例の回転体の側面図である。
【
図7】本発明による変形例の回転体の側面図である。
【
図8】本発明による変形例の回転体の側面図である。
【
図9】本発明による変形例の回転体の側面図である。
【
図10】本発明による変形例の回転体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明による回転体の実施形態を説明する。本実施形態は、2サイクルエンジンのクランクシャフトに取付けられる回転体の実施形態である。
【0014】
図1及び
図2に示すエンジン1は、例えば、チェンソー、刈払い機、ブロワなどの小型作業機械に用いられる1気筒の2サイクルエンジンである。前記エンジン1は、クランク室2、シリンダ4及び燃焼室6を構成するシリンダブロック8と、前記シリンダ4内に摺動自在に設けられたピストン10と、前記クランク室2に配置されるクランクシャフト12と、前記ピストン10と前記クランクシャフト12を連結するコンロッド14を有している。また、前記シリンダブロック8には、燃料と空気の混合ガスを前記クランク室2及び前記シリンダ4に供給する吸入通路16と、燃焼ガスを排気する排気通路18と、前記ピストン10が下降したときに前記ピストン10の上に位置する前記シリンダ4と前記クランク室2とを連通する掃気通路20が設けられている。
【0015】
前記クランクシャフト12は、回転軸線A1を中心に回転可能であり、前記回転軸線A1上に配置され且つベアリング22によって回転可能に支持された1対のシャフト部24、24と、前記シャフト部24、24から前記回転軸線A1と垂直な第1の垂直軸線A2の方向に延びる1対のウェブ部(アーム部)26、26と、前記1対のウェブ部26、26の間を前記回転軸線A1と平行に延び且つ前記回転軸線A1からオフセットされた連結ピン部28を有している。前記連結ピン部28には、前記コンロッド14が回転可能に取付けられている。前記クランクシャフト12の一方の端部に、フライホイール30、リコイルスタータ32が取付けられ、他方の端部にクラッチ機構33が取付けられている
。前記ウェブ部26、26は、前記連結ピン部28と反対側にウエイト34を有することが好ましい。前記クランクシャフト12は、一体式に形成されてもよいし、組立式であってもよい。前記クランクシャフト12は、SCM材等の金属で作られるのがよい。また、本発明による回転体36が、前記クランクシャフト12に取付けられている。
【0016】
図3に示すように、前記回転体36は、前記回転軸線A1及び前記第1の垂直方向A2と垂直な第2の垂直方向A3に間隔をあけて配置される1対のブロック要素38、38と、前記1対のブロック要素38、38を連結し且つ前記ウェブ部26に取付けられる板要素40を有している。前記回転体36は、ナイロン樹脂で作られるのがよい。
【0017】
前記板要素40は、前記ウェブ部26と前記ベアリング22の間に配置されている(
図1参照)。前記板要素40は、前記シャフト部24を受入れる孔42と、前記連結ピン部28との干渉を回避するように前記第2の垂直方向A3に延びる縁部44を有している。前記板要素40の厚さは、例えば、1〜5mmである。
【0018】
前記1対のブロック要素38、38の各々は、前記板要素40に連結された連結部分46と、前記板要素40から前記第1の垂直方向A2に突出する突出部分48を有している。
図4に示すように、前記連結部分46と前記突出部分48は、前記ウェブ部26に隣接して配置され、前記ウェブ部26と同じ前記回転軸線方向A1の厚さを有していることが好ましい。また、前記回転軸線方向A1に見たとき、前記ウエイト34を含む前記ウェブ部26と前記1対のブロック要素38、38を組合せた輪郭が円形になることが好ましい。
【0019】
図3及び
図4に示すように、前記1対のブロック要素38、38は各々、前記板要素40の反対側において、前記回転軸線A1方向に延びる突起50、50を有している。また、前記1対のブロック要素38、38の前記突起50、50に、それらの間を延びる係止部材52が取付けられている。かくして、前記回転体36は、前記ウェブ部26を前記板要素40と前記係止部材52で挟むようにして、前記ウェブ部26に取付けられている。前記突起50、50及び前記係止部材52の形態は任意である。本実施形態では、前記突起50、50は、円筒形溝50aを有するピンであり、前記係止部材52は、前記円筒形溝50aに係合可能なリング部52a、52aを有するS字形ワイヤである。
【0020】
前記シリンダブロック8は、前記クランクシャフト12の前記ウェブ部26、26に近接するように形成されているが、後述するように、前記シリンダブロック8と前記突出部分48との間には所定の隙間が必要である。
【0021】
図5に示すように、前記突出部分48と前記板要素40の接続隅部54は、前記回転体36が前記クランクシャフト12と一緒に回転するときに応力が集中する箇所である。かかる箇所は、一般的には、前記回転軸線A1の方向に見て、前記突出部分48の前記ウェブ部26側の面と前記板要素40の前記縁部44が実質的に鋭角をなすような箇所である。本実施形態では、前記接続隅部54に切欠き56が設けられている。前記切欠き56は、前記板要素40の前記縁部44を前記ブロック要素38の内部に延長するように設けられている。また、前記切欠き56は、前記ブロック要素38を前記回転軸線A1方向に貫通する溝の形態をなしている。
【0022】
次に、本発明による回転体の作用を説明する。
【0023】
前記クランクシャフト12と前記回転体36を高速回転させると、前記突出部分48に作用する遠心力により、前記突出部分48が前記板要素40に対して撓み、前記突出部分48の前記接続隅部54に応力が集中する傾向がある。これに対して、前記突出部分48の前記接続隅部54に前記切欠き56を設けると、前記突出部分48が前記切欠き56の周りで前記回転軸線A1方向及び前記第2の垂直方向A3に撓み、結果として、遠心力による応力集中が前記切欠き56の周りに分散される。すなわち、前記板要素40と前記突出部分48の接続箇所(前記切欠き56)に集中する応力が軽減される。
【0024】
前記接続隅部54の応力集中を軽減する従来方法は、前記接続隅部54を肉厚にしたり、前記接続隅部54の丸みを大きくしたりすることによって、前記接続隅部54の剛性を大きくする方法である。このため、かかる従来方法は、前記回転体36を大きくし、前記回転体36の周りの部品との干渉を引起こすことがある。これに対して、本発明による前記回転体36では、前記切欠き56を設けることによって、従来方法とは逆に前記突出部分48の剛性を弱め、僅かに撓ませることによって、遠心力によって生じたひずみエネルギーを吸収する。本発明による前記回転体36では、前記切欠き56が設けられるので、前記回転体36を拡大させることなしに、前記接続隅部54の応力集中を軽減させることができる。したがって、既存のエンジン等に前記回転体36を追加する場合に有利である。
【0025】
本発明による前記回転体36は、発明者が行った数値解析によるシミュレーションによって、前記接続隅部54における応力が軽減されていることが確認されている。したがって、本発明による切欠き56付きの回転体36の耐久性は、切欠きなしの回転体の耐久性よりも向上することが明らかである。前記回転体36を2サイクルエンジンに取付ける場合には、前記エンジンの出力性能、加速性能、エミッション(炭化水素等の大気汚染物質の排出)の低減を、今まで以上に長期にわたって維持することが可能である。
【0026】
図6〜
図10に、前記切欠き56の変形例を示す。
【0027】
図6に示すように、前記切欠き56は、細長い溝の形態ではなく、孔の形態であってもよい。
【0028】
また、
図7〜
図10に示すように、前記切欠き56は、前記接続隅部54の近傍の前記突出部分48に設けられてもよい。この場合、突出部分48が切欠き56の周りで撓み、結果として、遠心力による応力集中が前記切欠き56と前記接続隅部54に分散され、前記板要素40と前記突出部分48の接続箇所(前記接続隅部)に集中する応力が軽減される。
【0029】
前記切欠き56は、前記ブロック要素38を前記回転軸線A1方向に貫通していてもよいし(
図7及び
図8参照)、貫通していなくてもよい(
図10参照)。また、前記切欠き56は、真っ直ぐな細長い溝であってもよいし(
図7参照)、曲がった細長い溝であってもよい(
図8参照)。また、前記切欠き56は、複数設けられてもよい(
図9参照)。なお、前記接続隅部54の応力集中を軽減させる観点では、
図7〜
図10に示すように前記接続隅部54の近傍に設けられた切欠き56と、前記接続隅部54を肉厚にしたり前記接続隅部54の丸みを大きくしたりする上記従来方法とを組合せてもよい。
【0030】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0031】
上記実施形態では、前記回転体36が2サイクルエンジン1のクランクシャフト12に取付けられる場合を説明したが、本発明による回転体36は、回転するクランクシャフトに取付けられて板要素40とブロック要素38の接続箇所に集中する応力を軽減することができるかぎり、任意のクランクシャフトに適用可能である。
【0032】
上述した回転体36の前記クランクシャフト12のウェブ部26への取付けは例示であり、その他の取付け方を採用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
12 クランクシャフト
24 シャフト部
26 ウェブ部
36 回転体
38 ブロック要素
40 板要素
48 突出部分
54 接続隅部
56 切欠き
A1 回転軸線
A2 第1の垂直方向
A3 第2の垂直方向