(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように貫通孔にも他の部位と同等の厚さにて耐火被覆を施すと、小口面を被覆する耐火被覆材により、貫通孔が、直径方向に被覆の厚さの2倍だけ内径が狭められてしまう。このため、貫通孔の実質的な有効径が小さくなってしまい、所望の直径をなすダクトや設備配管等を挿通することができないおそれがあるという課題がある。
【0004】
本発明はかかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造部材に設けられた貫通孔の有効径をより大きく確保するとともに耐火性能をも確保することが可能な耐火被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の耐火被覆構造は、貫通孔を備えた構造部材を耐火被覆材にて被覆する耐火被覆構造であって、
前記貫通孔の小口面は、前記耐火被覆材にて被覆されることなく、当該小口面より反射率が高い高反射率材が設けられ
ており、
前記小口面に設けられている前記高反射率材は、金属製の箔のみであり、前記小口面に貼り付けられていることを特徴とする耐火被覆構造である。
このような耐火被覆構造によれば、貫通孔の小口面は耐火被覆材にて被覆されていないので、貫通孔の有効径をより大きく確保することが可能である。また、小口面には、反射率が当該小口面より高い高反射率材が設けられてい
るので、たとえ火炎等に晒されても小口面側にて熱線が反射される。このため、耐火被覆材により被覆されていなくとも小口面から熱が伝達されにくいので、構造部材に設けられた貫通孔の有効径をより大きく確保するとともに耐火性能をも確保することが可能である。また、小口面に厚みの薄い金属製の箔を貼り付けるだけで小口面から熱が伝達されにくくなるので、簡単で安価な方法にて耐火性能を確保することが可能である。また、小口面に貼り付けるのは厚みの薄い金属製の箔なので、貫通孔の有効径をより大きく確保することが可能である。
【0007】
また、本発明の耐火被覆構造は、貫通孔を備えた構造部材を耐火被覆材にて被覆する耐火被覆構造であって、
前記貫通孔の小口面は
、前記小口面の反射率が高くなるように加工または処理が施されており、
前記小口面は、反射率が高くなるような研磨、反射率が高い塗料の塗布、金属材料の溶着、のいずれかの加工または処理が施されていることを特徴とする耐火被覆構造である。
このような耐火被覆構造によれば、小口面に、反射率が高くなるような研磨、反射率が高い塗料の塗布、金属材料の溶着のいずれかの加工または処理を施すだけで小口面から熱が伝達されにくくなり、小口面には何ら設けられないので、貫通孔の有効径を大きく確保することが可能である。
【0008】
かかる耐火被覆構造であって、前記構造部材における前記貫通孔が設けられている部位の当該貫通孔の周囲において、前記貫通孔が貫通する貫通方向における少なくとも一方側の表面に、当該構造部材を被覆する前記耐火被覆材より熱容量が大きな高熱容量材が前記構造部材と熱伝導可能に設けられていることが望ましい。
このような耐火被覆構造によれば、貫通孔の周囲には、構造部材の、貫通孔が設けられている部位の少なくともいずれか一方側の表面に高熱容量材が設けられているので、貫通孔の小口面から伝達された熱が高熱容量材に吸収されるため、貫通孔が設けられている部位の昇温を抑制することが可能である。
【0009】
かかる耐火被覆構造であって、前記高熱容量材は、前記一方側の表面と他方側の表面とにそれぞれ設けられていることが望ましい。
このような耐火被覆構造によれば、貫通孔が設けられている部位の、貫通孔が貫通する方向における両方の表面にそれぞれ高熱容量材が設けられているので、小口面から伝達される熱は、両表面に設けられた高熱容量材に吸収され、貫通孔が設けられている部位の昇温をさらに抑制することが可能である。
【0010】
かかる耐火被覆構造であって、前記高反射率材は、前記高熱容量材を覆っていることが望ましい。
このような耐火被覆構造によれば、高熱容量材は高反射率材に覆われて外部に露出せず、また、高熱容量材を覆っている高反射率材により熱線が反射されるので、高熱容量材は加熱されにくい。このため、高熱容量材にて小口面から伝達される熱を効率良く吸収させることが可能である。
【0011】
かかる耐火被覆構造であって、前記高熱容量材は、前記小口面に沿って設けられていることが望ましい。
このような耐火被覆構造によれば、貫通孔の小口面から伝達される熱は、構造部材の、貫通孔から離れた位置に伝達される前に、小口面に沿って小口面とほぼ面一に設けられた高熱容量材に吸収されるので、構造部材が加熱される領域をより小さく抑えることが可能である。
【0012】
かかる耐火被覆構造であって、前記高熱容量材は、前記耐火被覆材より熱拡散率が低い低熱拡散率材に覆われていることが望ましい。
このような耐火被覆構造によれば、低熱拡散率材が高熱容量材を覆っているので、高熱容量材は外部に露出しない。このため、高熱容量材は外気や火炎等により直接加熱されないので高熱容量材にて小口面から伝達される熱を効率良く吸収させることが可能である。
【0013】
かかる耐火被覆構造であって、前記高熱容量材は、前記構造部材から突設された突部が熱伝導可能に接触していることが望ましい。
このような耐火被覆構造によれば、高熱容量材は構造部材から突設された突部が熱伝導可能に接触されているので、突部にて、より広い面積にて熱が高熱容量材に吸収される。このため、高熱容量材はより効率良く熱を吸収することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造部材に設けられた貫通孔の有効径をより大きく確保するとともに耐火性能をも確保することが可能な耐火被覆構造を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に用いられている鉄骨梁を示す正面図である。
【
図3】貫通孔が設けられた鉄骨梁に耐火被覆を施した状態を示す縦断面図である。
【
図4】小口面が耐火被覆された鉄骨梁の熱の伝達を示す図である。
【
図5】第1実施形態の耐火被覆構造を示す縦断面図である。
【
図6】第2実施形態の耐火被覆構造を示す縦断面図である。
【
図7】第3実施形態の耐火被覆構造を示す縦断面図である。
【
図8】第3実施形態の耐火被覆構造の第1変形例を示す縦断面図である。
【
図9】第3実施形態の耐火被覆構造の第2変形例を示す縦断面図である。
【
図10】第3実施形態の耐火被覆構造の第3変形例を示す縦断面図である。
【
図11】第3実施形態の耐火被覆構造の第4変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
以下の実施形態では、本発明の耐火被覆構造を、鉄骨構造建物の構造部材としての鉄骨梁に適用した例について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に用いられている鉄骨梁を示す正面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。以下の説明においては、鉄骨梁10を、
図1のように正面から見たときに上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または長手方向、紙面に対し直交しフランジの幅方向となる方向を単に幅方向または貫通孔の貫通方向として示す。
【0018】
<鉄骨梁の耐火構造>
図1、
図2に示すように、本実施形態の鉄骨梁10は、スラブ20の下に設けられており、上下に間隔を隔てるとともに互いに対向する板状の上フランジ12及び下フランジ14と、上フランジ12と下フランジ14とを、幅方向の中央にて上下に繋ぐ板状のウエブ16とが一体をなすH型鋼である。ウエブ16には、空調用または換気用のダクトや配管用スリーブ等を挿通するために、幅方向、すなわちウエブ16の一方側の表面16aから他方側の表面16aまで貫通する貫通孔18が設けられている。本実施形態の貫通孔18の直径は、鉄骨梁10の高さ、所謂梁せいHの半分H/2とした場合の例を示している。
【0019】
貫通孔を有する鉄骨梁に、耐火被覆を施す際には、貫通孔の小口面にも建築基準法による規定厚さの被覆を施さなければならない。たとえば、耐火被覆材30が吹付けロックウール(以下、ロックウールという)の場合には、1時間耐火の場合25mm、2時間耐火の場合45mm、3時間耐火の場合60mmの厚さにて被覆することが規定されている。
【0020】
図3は、貫通孔が設けられた鉄骨梁に耐火被覆を施した状態を示す縦断面図である。
図4は、小口面が耐火被覆された鉄骨梁の熱の伝達を示す図である。
図4では、熱が伝わる方向を矢印にて示し、熱の大きさを矢印の大きさにて示している。
【0021】
上記鉄骨梁10に、規定通りの耐火被覆を施すと、
図3に示すように、貫通孔18の小口面18aにも他の部位と同じ厚さ(例えばd)の耐火被覆が形成される。この場合には、鉄骨梁10が火炎等に晒されると、貫通孔18の小口面18aにおいて、
図4に示すように、熱は耐火被覆材を介してウエブ16に伝達される。このとき、耐火被覆材30を介することによりウエブ16に伝達される熱が低減されウエブ16の温度上昇が抑制される。しかしながら、貫通孔18は、全周に渡って小口面18aが耐火被覆材30で被覆されているので、形成されている貫通孔18の内径より耐火被覆材30の厚みの約2倍分、有効径Dが小さくなってしまう。貫通孔18の有効径Dが小さくなってしまうと、挿通する配管の径を小さくするとともに貫通孔18の数を増やさなければならず、配管本数が増えてしまう。また、貫通孔18の小口面18aに他の部位と同じ厚さの耐火被覆が形成されている状態で有効径Dを大きく確保しようとすると、貫通孔18の径を大きくする必要があるため、鉄骨梁10を構造的に補強する必要が生じる。このように、耐火性能を確保しつつ貫通孔18の有効径Dを大きくすることが困難であった。そこで、本発明に係る耐火被覆構造は、貫通孔18の有効径Dをより大きく確保するとともに耐火性能をも確保するものである。
【0022】
<第1実施形態>
図5は、第1実施形態の耐火被覆構造を示す縦断面図である。
図5に示すように、第1実施形態の耐火被覆構造は、スラブ20の下に設けられた鉄骨梁10の、貫通孔18の小口面18aに、全周にわたって反射率が高い高反射率材56(例えば、アルミ箔やステンレス箔等の金属製の箔)が貼り付けられている。また、高反射率材56が貼り付けられた小口面18aを除き、スラブ20の下側から鉄骨梁10の下フランジ14の下面までが耐火被覆材としてのロックウール30にて被覆されている。本実施形態では、例えば、建築基準法における3時間耐火の規格に対応して約60mmの厚さをなすロックウール30が被覆されている。
【0023】
このような耐火被覆構造は、工場等において鉄骨梁10に貫通孔18を形成すると共に、小口面18aに高反射率材56を貼り付けておいてもよいし、鉄骨建て方後に、鉄骨柱と接合された鉄骨梁10に高反射率材56を貼り付けてもよく、あるいは小口面18aを除いてロックウール30を吹き付けた後に、小口面18aに高反射率材56を貼り付けてもよい。
【0024】
第1実施形態の耐火被覆構造によれば、ロックウール30に被覆されていない、貫通孔18の小口面18aは反射率が高い高反射率材56が貼り付けられているので、火炎等に晒されたときに高反射率材56により熱線が反射される。このため、ロックウール30に被覆されていなくとも小口面18aから熱が伝達されにくいので、鉄骨梁10のウエブ16に設けられた貫通孔18の有効径Dをより大きく確保するとともに耐火性能をも確保することが可能である。
【0025】
また、小口面18aに高反射率材56を貼り付けるだけで小口面18aから熱が伝達されにくくなるので、簡単で安価な方法にて耐火性能を確保することが可能である。また、小口面18aに貼り付けるのは高反射率材56なので、貫通孔18の有効径Dをより大きく確保することが可能である。
【0026】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の耐火被覆構造を示す縦断面図である。
第2実施形態の耐火被覆構造は、
図6にて一点鎖線を付した小口面18aが、全周にわたって反射率が高くなるように研磨された上に反射率を低下させない防錆処理が施されている。尚、小口面18aには、研磨と防錆処理に替えて、例えば、反射率が高い塗料が塗布される処理、あるいは反射率が高い金属が溶着される処理が施されていてもよい。
【0027】
また、上記のような加工または処理が施された小口面18aを除き、スラブ20の下側から鉄骨梁10の下フランジ14の下面までが耐火被覆材としてのロックウール30にて被覆されている。本実施形態では、例えば、建築基準法における3時間耐火の規格に対応して約60mmの厚さをなすロックウール30が被覆されている。
【0028】
このような耐火被覆構造は、工場等において鉄骨梁10に貫通孔18を形成すると共に、小口面18aに反射率が高くなるような加工または処理を施した後に、ロックウール30を吹き付けて小口面18aを除いて被覆を施す。
【0029】
第2実施形態の耐火被覆構造によれば、ロックウール30に被覆されていない、貫通孔18の小口面18aは反射率が高くなるように加工または処理が施されているので、火炎等に晒されたときに熱線が反射される。このため、ロックウール30に被覆されていなくとも小口面18aから熱が伝達されにくいので、鉄骨梁10のウエブ16に設けられた貫通孔18の有効径Dをより大きく確保するとともに耐火性能をも確保することが可能である。
【0030】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の耐火被覆構造を示す縦断面図である。
図7に示すように、第3実施形態の耐火被覆構造は、貫通孔18の小口面18aに高反射率材56が貼り付けられた鉄骨梁10の、貫通孔18が設けられているウエブ16の両面、すなわち、貫通孔18が貫通している貫通方向における両側の表面16aに、貫通孔18の縁に沿って小口面18aとほぼ面一に設けられ、当該貫通孔18を囲むように、耐火被覆材としてのロックウール30より熱容量が大きな高熱容量材50が設けられている。ここで、高熱容量材50としては、表1に示すように、例えば、モルタルや石膏などが挙げられる。
【0031】
そして、高反射率材56が貼り付けられている部位と高熱容量材50の、貫通孔18の中央側の面を除いて、ロックウール30に被覆されている。
【0032】
表1は、各種材料の一般的な熱物性値(高温時)を示す表である。
【0033】
第3実施形態の耐火被覆構造によれば、小口面18aを覆う高反射率材56により小口面18aから伝達される熱が低減されるとともに、貫通孔18の周囲には、鉄骨梁10の貫通孔18が設けられているウエブ16の、貫通孔18が貫通している貫通方向における両方の表面16aにそれぞれ高熱容量材50が設けられているので、小口面18aから伝達される熱は、両表面16aに設けられた高熱容量材50に吸収され、貫通孔18が設けられているウエブ16の昇温を抑制することが可能である。また、高熱容量材50は、貫通孔18を囲むように設けられているので、小口面18aの全周において伝達される熱を高熱容量材50にて吸収し、貫通孔18が設けられているウエブ16の昇温を効果的に抑制することが可能である。このとき、高熱容量材50が、小口面18aに沿って小口面18aとほぼ面一に設けられているので、貫通孔18の小口面18aから伝達される熱がウエブ16の、貫通孔18から離れた位置に伝達される前に高熱容量材50に吸収される。このため、ウエブ16が加熱される領域をより小さく抑えることが可能である。
【0034】
図8は、第3実施形態の耐火被覆構造の第1変形例を示す縦断面図である。
図9は、第3実施形態の耐火被覆構造の第2変形例を示す縦断面図である。
図10は、第3実施形態の耐火被覆構造の第3変形例を示す縦断面図である。
図11は、第3実施形態の耐火被覆構造の第4変形例を示す縦断面図である。
【0035】
上記第3実施形態では、高反射率材56を小口面18aのみに貼り付ける例について説明したが、
図7のように高熱容量材50が露出されていると、例えば火炎等に晒された際に高熱容量材50自身が直接加熱されてしまい、ウエブ16の熱を吸収する効率が低下する虞がある。このため、
図8に示すように、高熱容量材50の、貫通孔18の中央側の面50aにも、小口面18aと同様に高反射率材56を貼り付けておくことが望ましい。この場合には、高反射率材56が小口面18aと高熱容量材50とを覆っているので、小口面18aとともに高熱容量材50も外部に露出しない。このため、高熱容量材50も外気や火炎等により直接加熱されず、また、小口面18a以外から伝達される熱により加熱されることが抑制されるので、小口面18aからの熱の伝達を抑えるとともに高熱容量材50にて小口面18aから伝達される熱をより効率良く吸収させることが可能である。
【0036】
このように、ウエブ16の両表面16aに、貫通孔18の縁に沿って当該貫通孔18を囲むように高熱容量材50を設け、小口面18aと高熱容量材50の表面とを高反射率材56にて覆うことにより、小口面18aを覆うようにロックウール30にて被覆しなくとも、他の部位と同様にロックウール30にて被覆した状態と同等の耐火性能を備えることが可能である。このため、貫通孔18の有効径をより大きく確保するとともに耐火性能をも確保することが可能である。
【0037】
第3実施形態の第1変形例においては、高熱容量材50の、貫通孔18の中央側の面50aに、小口面18aと同様に高反射率材56を貼り付けた例について説明したが、これに限るものではない。例えば、
図9に示すように、高熱容量材50を貫通孔18の縁より外側に配置し、高熱容量材50の貫通孔18側に、耐火被覆材30より熱拡散率が低い低熱拡散率材52を設けてもよい。この場合には、低熱拡散率材52が高熱容量材50を覆っているので高熱容量材50が外部に露出しない。このため、高熱容量材50も外気や火炎等により直接加熱されず、また、小口面18a以外から伝達される熱により加熱されることが抑制されるので、小口面18aからの熱の伝達を抑えるとともに高熱容量材50にて小口面18aから伝達される熱をより効率良く吸収させることが可能である。このとき、低熱拡散率材52の、貫通孔18の中央側の面に、小口面18aと同様に高反射率材56をさらに貼り付けてもよい。
【0038】
また、
図10に示す第3実施形態の第3変形例のように、高熱容量材50を貫通孔18の縁より外側に配置し、高熱容量材50の貫通孔18側をロックウール30にて被覆してもよい。この場合には、小口面18aに高反射率材56を貼り付け、高熱容量材50を貫通孔18の縁より外側に配置した鉄骨梁10にロックウール30を吹き付けるだけで、高熱容量材50の貫通孔18側にロックウール30を設けることが可能であるため、施工が容易である。そして、高熱容量材50の貫通孔18側にロックウール30が設けられているので、高熱容量材50が外気や火炎等により直接加熱されず、また、小口面18a以外から伝達される熱により加熱されることが抑制されるので、高反射率材56により小口面18aからの伝達が抑えられた熱を高熱容量材50にてより効率良く吸収させることが可能である。
【0039】
また、
図11に示す第3実施形態の第4実施例のように、小口面18aに高反射率材56が貼り付けられたウエブ16の両表面16aに幅方向に突出する突部としての環状突部54を熱伝導可能に設け、環状突部54が高熱容量材50であるモルタル内に埋設されるように構成してもよい。この場合には、環状突部54を設けることにより、高熱容量材50と接触する面積が広がるため、小口面18aからウエブ16に入った熱が高熱容量材50に伝達されやすくなるので、単に高熱容量材50を設けた場合より、高熱容量材50がより効率良く熱を吸収して耐火性能が向上する。このため、小口面18aに貼り付けられた高反射率材56により小口面18aからの熱の伝達を低減すると共に、小口面18aから伝達される熱を環状突部54により効率良く高熱容量材50に吸収させてウエブ16における熱の伝達を抑制することが可能である。ここで、鉄骨梁10に設ける突部を環状としたが、これに限らず、貫通孔18の中心から放射状に配置されたリブや、棒状の突起など、熱伝導可能であり高熱容量材50との接触面積を広げることが可能な形態であれば構わない。
【0040】
上記第3実施形態および各変形例においては、いずれも小口面18aに高反射率材56を設けた例について説明したが、第2実施形態のように、小口面18aは反射率が高くなるように加工または処理した構成であっても構わない。
【0041】
上記第3実施形態および各変形例においては、ウエブ16の両表面に高熱容量材50を設けた例について説明したが、小口面18aにも鉄骨梁10の他の部位と同様にロックウール30を設けた場合と同様の耐火性能が得られる場合には、高熱容量材50はウエブ16の一方の表面のみに設けても構わない。
【0042】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては構造部材を鉄骨梁10としたが、これに限らず、表面を耐火被覆しなければならず、且つ、貫通孔を有する構造部材であれば構わない。例えば、ステンレスやアルミニウム合金などの金属材料を用いた他の耐火被覆構造部材にも適用可能である。また、上記実施形態においては、構造部材の形状をH形としたが、これに限らず、I形やT形であっても良い。
【0043】
また上記実施形態においては耐火被覆材30を吹付ロックウールとしたが、これに限らず、セラミック系や石膏系など他の耐火被覆材料や、フェルト状材料の巻付け工法や左官塗り工法など吹付け以外の施工方法による耐火被覆材であっても良い。
【0044】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。