(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該シリコーン樹脂成形品の単位重量あたりの、ケイ素原子数が3〜5の環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量が、前記(B)表面処理済シリカゲルを含まない、対応するシリコーン樹脂組成物から得られる成形品の該アセトン抽出量に対して、50重量%以下であることを特徴とする請求項2に記載のシリコーン樹脂成形品。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
[シリコーン樹脂組成物]
本発明のシリコーン樹脂組成物は、(A)シリコーン樹脂と、該シリコーン樹脂100重量部あたり、以下の条件(1)〜(3)を満足するシリカゲルを表面処理してなる(B)表面処理済シリカゲルを0.1〜40重量部含有することを特徴とするが、好ましくは更に(C)硬化触媒を含有し、また必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
(1)最頻細孔径(D
max):1〜5nm
(2)細孔容積(PV):0.2〜1.5mL/g
(3)比表面積(SA):200〜1000m
2/g
【0022】
<(A)シリコーン樹脂>
シリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)とは、ケイ素原子が酸素原子を介して他のケイ素原子と結合した構造に有機基が付加している高分子物質を指す。ここで本発明に用いるオルガノポリシロキサンは、(B)表面処理済シリカゲルを分散させるのが容易である点で、常温常圧下において液体であることが好ましい。また、常温常圧下において液体のオルガノポリシロキサンであれば、半導体発光装置用の樹脂成形体を成形する際の材料の扱いも容易となる。常温常圧下において固体のオルガノポリシロキサンは、一般的に硬化物としての硬度は比較的高いが、破壊に要するエネルギーが小さく靭性が低いものや、耐光性、耐熱性が不十分で光や熱により変色しやすいものが多い傾向にある。
なお、上記常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性の有る状態をいう。
【0023】
上記オルガノポリシロキサンは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば以下に示す一般組成式(a)で表される化合物や、その混合物が挙げられる。
(R
1R
2R
3SiO
1/2)
M(R
4R
5SiO
2/2)
D(R
6SiO
3/2)
T
(SiO
4/2)
Q …(a)
ここで、上記式(a)中、R
1からR
6は独立して、有機官能基、水素原子から選択される。またM、D、T及びQは0以上1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0024】
主なオルガノポリシロキサンを構成する単位は、1官能型[R
3SiO
0.5](トリオルガノシルヘミオキサン)、2官能型[R
2SiO](ジオルガノシロキサン)、3官能型[RSiO
1.5](オルガノシルセスキオキサン)、4官能型[SiO
2](シリケート)であり、これら4種の単位の構成比率を変えることにより、オルガノポリシロキサンの性状の違いが出てくるので、所望の特性が得られるように適宜選択し、オルガノポリシロキサンの合成を行う。
【0025】
上記構成単位が1〜3官能型のオルガノポリシロキサンは、オルガノクロロシラン(一般式R
nSiCl
4-n(n=1〜3))と呼ばれる一連の有機ケイ素化合物をもとにして合成することができる。例えば、メチルクロロシランは塩化メチルとケイ素(Si)とをCu触媒下高温で直接反応させて合成することができ、また、ビニル基などの有機基を持つシラン類は、一般の有機合成化学の手法によって合成することができる。
単離されたオルガノクロロシランを、単独で、あるいは任意の割合で混合し、水により加水分解を行うとシラノールが生成し、このシラノールが脱水縮合するとシリコーンの基本骨格であるオルガノポリシロキサンが合成される。
【0026】
オルガノポリシロキサンは、硬化触媒の存在下で、熱エネルギーや光エネルギー等を与えることにより硬化させる事ができる。ここで硬化とは、流動性を示す状態から、流動性を示さない状態に変化することをいい、例えば、対象物を水平より45度傾けた状態で30分間静置しても流動性がある状態を未硬化状態といい、全く流動性がない状態を硬化状態として判断することができる。
【0027】
オルガノポリシロキサンは、硬化のメカニズムにより、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架橋タイプなどに分類されるが、本発明は、これらいずれのタイプのオルガノポリシロキサンにも適応できる。半導体発光素子用封止材やこれを用いる半導体発光素子用の用途には、これらの中でも、付加重合硬化タイプ(付加型オルガノポリシロキサン)、及び縮合硬化タイプ(縮合型オルガノポリシロキサン)が好適であり、特に、副生成物の発生が無く、また、反応が可逆性でないヒドロシリル化(付加重合)によって硬化するタイプのオルガノポリシロキサンがより好適である。これは、半導体発光素子等の成形加工時に副生成物が発生すると、成形容器の内圧を上昇させたり、硬化後の材料中に泡として残存したりする傾向にあるからである。
【0028】
<(B)表面処理済シリカゲル>
本発明で用いる(B)表面処理済シリカゲルは、以下の条件(1)〜(3)を満足するシリカゲルを表面処理してなるものである。
(1)最頻細孔径(D
max):1〜5nm
(2)細孔容積(PV):0.2〜1.5mL/g
(3)比表面積(SA):200〜1000m
2/g
【0029】
シリカゲルの最頻細孔径(D
max)が5nmより大きいと、環状シロキサンオリゴマーの揮散防止効果を十分に得ることができず、1nmより小さいとオリゴマー分子が細孔内に入ることが困難で、揮散防止効果が得られない。シリカゲルの最頻細孔径(D
max)は好ましくは1.5〜4nmである。
また、シリカゲルの細孔容積(PV)が1.5mL/gより大きいと、シリカゲルの機械的強度が低下して、シリコーン樹脂との混練時に細孔構造が破壊されて、オリゴマーの吸着能が低下し、揮散防止効果が不十分となる可能性があり、一方、0.2mL/gより小さいとシリカゲルの単位重量あたりのオリゴマー吸着量が少なくなるため、所望のオリゴマー揮散防止効果を得るためには、多量のシリカゲルを用いることが必要となって、シリコーン樹脂の柔軟性や透明性を阻害する可能性がある。シリカゲルの細孔容積(PV)は好ましくは0.3〜1.2mL/gである。
また、シリカゲルの比表面積(SA)が1000m
2/gより大きいと、シリカゲルの機械的強度が低下し、前記同様オリゴマー揮散防止効果が不十分となることがあり、200m
2/gより小さいとシリカゲルの単位重量あたりのオリゴマー吸着量が減少して、上記と同様シリコーン樹脂の柔軟性等を阻害する可能性がある。シリカゲルの比表面積(SA)は好ましくは300〜800m
2/gである。
【0030】
なお、シリカゲルの最頻細孔径(D
max)、細孔容積(PV)、比表面積(SA)は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0031】
このようなシリカゲルは、上記物性を満たす市販品を用いてもよく、また、必要に応じて自製してもよい。市販品としては、例えば、東ソー・シリカ株式会社製の「NIPGEL CY200」(最頻細孔径4.9nm、細孔容積0.93mL/g、比表面積690m
2/g)や富士シリシア株式会社製の「マイクロビーズ3A」(最頻細孔径3.5nm、細孔容積0.46mL/g、比表面積740m
2/g)などが挙げられる。自製する場合は、例えば、特許第3960759号公報に記載されたシリカゲルの製造方法等を適用することができる。
【0032】
(B)表面処理済シリカゲルは、表面処理により、メチル基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基が導入されていることが、環状シロキサンオリゴマーの揮散防止効果の面で好ましい。この理由は明らかではないが、これらの官能基が、シリコーン樹脂組成物中の環状シロキサンオリゴマーとの親和性が高く、吸着力が大きいか、これらの官能基がオリゴマーと反応して化学結合を形成し、シリコーン樹脂成形品からの環状シロキサンオリゴマーの揮散を有効に防止するためと考えられる。
【0033】
シリカゲルの表面処理方法、即ち上記の官能基導入方法は特に限定されないが、例えば、以下のような表面処理剤(官能基導入剤)を用いる方法が挙げられる。
【0034】
<メチル基導入剤>
メチル基導入剤は種々のものが挙げられる。それらによるシリカゲル修飾方法はさまざまであり、シリカゲルと直接反応させたり、加水分解後にシリカゲルと反応させたり、塩基の存在下シリカゲルと反応させるといった方法が挙げられるが、用いるメチル基導入剤の種類に応じて適切な方法を選ぶとよい。以下にメチル基導入剤の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
トリメチルシラン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、アセトキシトリメチルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、トリメチルシリルイミダゾール、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロメチルシラン等がメチル基導入剤として利用可能である。この中でもクロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシランが取り扱い性、コストなどの点でより好ましい。最も好ましくはヘキサメチルジシラザン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシランが挙げられる。
【0036】
<エポキシ基導入剤>
エポキシ基導入剤としては、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
<アミノ基導入剤>
アミノ基導入剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等が挙げられる。この中でも3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0038】
<ウレイド基導入剤>
ウレイド基導入剤としては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
<アクリロイル基導入剤>
アクリロイル基導入剤としては、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
<メタクリロイル基導入剤>
メタクリロイル基導入剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
これらの表面処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
このような表面処理剤によるシリカゲルの表面処理は、常法に従って行うことができ、例えば、シランカップリング剤と水、及び必要に応じて用いるアルコール類などの有機溶媒を、シリカゲルと共に攪拌し、固液分離・乾燥を経て表面処理済シリカゲルを得る方法が挙げられる。この時、反応促進等の目的で触媒を添加してもよい。触媒としては塩酸、硫酸、酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸類を用いるのが一般的であるが、アンモニア、有機アミン類、水酸化ナトリウムのような塩基性化合物も使用できる。
また、シリカゲルとシランカップリング剤もしくはヘキサメチルジシラザンのような官能基導入剤を直接混合して反応させてもよい。溶媒は使用しても使用しなくてもよい。
【0043】
シリカゲルの表面処理に用いるシランカップリング剤等の表面処理剤の量は、少な過ぎると十分な表面処理効果が得られず、多過ぎても使用量に見合う効果の向上が得られず経済的でないため、シリカゲルの乾燥重量に対して、表面処理剤の純分として0.001〜10重量倍、特に0.002〜8重量倍とすることが好ましい。
【0044】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、このような(B)表面処理済シリカゲルを、(A)シリコーン樹脂100重量部に対して0.1〜40重量部含有する。(B)表面処理済シリカゲルの含有量が少な過ぎると、シリコーン樹脂成形品からの環状シロキサンオリゴマーの揮散防止効果が十分でなく、多過ぎるとシリコーン樹脂本来の柔軟性や透明性が損なわれる可能性があるため好ましくない。(B)表面処理済シリカゲルの含有量は、(A)シリコーン樹脂100重量部に対して0.2〜30重量部であることがより好ましい。
【0045】
なお、本発明のシリコーン樹脂組成物は、(B)表面処理済シリカゲルの1種を含むものであってもよく、シリカゲルの物性や、用いた表面処理剤の種類が異なる表面処理済シリカゲルを2種以上含んでいてもよい。
【0046】
<(C)硬化触媒>
本発明のシリコーン樹脂組成物は(C)硬化触媒を含むことが好ましい。(C)硬化触媒とは、(A)シリコーン樹脂を硬化させる触媒であり、(A)シリコーン樹脂は触媒により重合反応が促進されて硬化する。この触媒は(A)シリコーン樹脂の硬化機構により付加重合用触媒、縮合重合用触媒がある。
【0047】
前述の如く、本発明で用いる(A)シリコーン樹脂は、好ましくは付加型オルガノポリシロキサンであることから、この硬化触媒としては、好ましくは付加重合用触媒が用いられる。
【0048】
付加重合用触媒としては、付加型オルガノポリシロキサン中のアルケニル基とヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加重合触媒の例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加重合触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として付加型オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基を有するケイ素含有化合物とヒドロシリル基を有するケイ素含有化合物との合計重量に対して通常1ppm以上、好ましくは2ppm以上であり、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。これにより触媒活性を高いものとすることができる。
【0049】
<その他の成分>
本発明のシリコーン樹脂組成物中には、上記(A)シリコーン樹脂、(B)表面処理済シリカゲル、及び(C)硬化触媒以外に、本発明の要旨を損なわない限り、必要に応じて他の成分の1種又は2種以上を任意の比率及び組み合わせで含有させることができる。
例えば、本発明のシリコーン樹脂組成物は、さらにその他の成分として硬化速度制御剤を含有していてもよい。ここで硬化速度制御剤とは、シリコーン樹脂組成物を硬化させて成形する際に、その成形効率を向上させるために硬化速度を制御するためのものであり、硬化遅延剤又は硬化促進剤が挙げられる。
【0050】
硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
【0051】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレエート等のマレイン酸エステル類等が例示される。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の中でも、三重結合を有する化合物が好ましい。
有機リン化合物としては、トリオルガノホスフィン類、ジオルガノホスフィン類、オルガノホスフォン類、トリオルガノホスファイト類等が例示される。
有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。
窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。
スズ系化合物としては、ハロゲン化スズ(II)2水和物、カルボン酸スズ(II)等が例示される。
有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレエート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0052】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用する(C)硬化触媒1モルに対する好ましい添加量の下限は10
-1モル以上、より好ましくは1モル以上であり、好ましい添加量の上限は10
3モル以下、より好ましくは50モル以下である。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0053】
硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂の硬化を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7・テトラフェニルボレート等が挙げられ、中でも高い反応促進性を示す点でイミダゾール類を用いるのが好ましい。
【0054】
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、商品名としては、2E4MZ、2PZ−CN、2PZ−CNS(四国化成工業株式会社)等がある。
【0055】
硬化促進剤は、(A)シリコーン樹脂と(C)硬化触媒との合計100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0056】
硬化速度制御剤の種類や配合量を上記のように設定とすることにより、シリコーン樹脂組成物の硬化時の成形が容易となる。例えば、金型への充填率が高くなったり、射出成形による成形時に金型からの漏れがなく、バリが発生しにくくなったりするメリットが得られる。
【0057】
また、シリコーン樹脂組成物の流動性コントロールの目的で、固体粒子を流動性調整剤として含有させることができる。流動性調整剤としては、含有させることでシリコーン樹脂組成物の粘度が高くなる常温から成形温度付近で固体の粒子であれば特に限定されない。
但し、半導体発光素子用封止材など光が透過する部材としてこのシリコーン樹脂組成物及びこれに基づく成形品を用いる場合は、発光素子からの光や蛍光体により波長変換された光を吸収する性質が無いか非常に小さく、材料の反射率を極端に低下させないもので、光や熱による変色、変質が小さく耐久性が高いものが好ましい。具体的には、アルミナ微粒子、石英ビーズ、ガラスビーズ、ガラス繊維などの無機物繊維、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0058】
また、組成物の熱硬化後の強度、靭性を高める目的で、ガラス繊維などの無機物繊維を含有させてもよく、また、熱伝導性を高めたるため、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミニウム、繊維状アルミナ、ガラスビーズ等を含有させることができる。
これらの添加量は、少なすぎると目的の効果が得られず、多すぎるとシリコーン樹脂組成物の粘度が上がり、加工性に影響するので、十分な効果が発現し、組成物の加工性を損なわない範囲で適宜設定されるが、通常、(A)シリコーン樹脂100重量部に対し500重量部以下、好ましくは200重量部以下である。
【0059】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物中には、その他、イオンマイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)防止剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、表面処理済シリカゲルの表面処理剤としてのシランカップリング剤以外のカップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを本発明の目的及び効果を損なわない範囲において含有させることができる。
【0060】
[シリコーン樹脂成形品]
本発明のシリコーン樹脂組成物は、常法に従って、成形・硬化させてシリコーン樹脂成形品を得ることができる。
【0061】
本発明のシリコーン樹脂組成物を成形、硬化させてなる本発明のシリコーン樹脂成形品は、その単位重量あたりの、ケイ素原子数が3〜5の環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量が、前記(B)表面処理済シリカゲルを含まない、対応するシリコーン樹脂組成物から得られる成形品の該アセトン抽出量に対して、50重量%以下であることが好ましい。
ここで、「(B)表面処理済シリカゲルを含まない、対応するシリコーン樹脂組成物」とは、(B)表面処理済シリカゲルを含まないこと以外は同配合としたシリコーン樹脂組成物をさす。また、「ケイ素原子数が3〜5の環状シロキサンオリゴマー」とは、主として、前述のヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンである。
【0062】
なお各種有機化合物を容易に溶解するアセトンを用いて該シリコーン樹脂成形品を抽出することで、該シリコーン樹脂成形品中のオリゴマーを短時間のうちに抽出することが可能となる。該シリコーン樹脂成形品の実際の使用環境で空気中にオリゴマーが揮散する速度は、アセトンで抽出される速度に比べると充分遅いと推測できるため、アセトンによる抽出は空気中でのオリゴマー揮散の加速試験と見なすことができる。よって、アセトン抽出のような過酷な条件でもシリコーン樹脂成形品中のオリゴマーを安定に吸着・保持できるような表面処理済シリカゲルであれば、空気中でのオリゴマー揮散をより抑制することができるものと合理的に推測できるので、このような評価方法が、空気中での長期使用の場合に対応した促進評価試験と考えることができる。
【0063】
このアセトン抽出量の割合が50重量%を超えると、環状シロキサンオリゴマーの揮散防止効果が十分でなく、本発明の目的を達成し得ない場合がある。
なお、このアセトン抽出量の割合は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定され、より好ましくは40重量%以下である。
【0064】
[半導体発光素子用封止材・半導体発光装置]
半導体発光素子用封止材は本発明のシリコーン樹脂組成物よりなるものであり、本発明の半導体発光装置は、このような本発明の半導体発光素子用封止材により封止された半導体発光素子と、リード電極及び反射材を含む半導体発光素子支持部材とを有するものである。
【0065】
本発明の半導体発光装置用シリコーン樹脂組成物の成形方法としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、及び射出成形法を例示することができる。これらのうち、好ましい成形方法としては、無駄な硬化物が発生せず二次加工が不要である(すなわちバリが発生しにくい)点から、樹脂成形体の成形工程の自動化、成形サイクルの短縮化、成形品のコスト削減が可能になる等大きなメリットがある、射出成形法、特に液状射出成形法(LIM成形)が挙げられる。LIM成形とトランスファー成形とを比較すると、LIM成形は、成形形状の自由度が高く、成形機及び金型が比較的安価であるというメリットがある。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0067】
[シリカゲル]
シリカゲルとしては、下記表1に示す物性のものを用いた。
以下のシリカゲルは、特許第3960759号公報に記載のシリカゲル製造方法に従って合成したものである。
なお、シリカゲルの各物性は、窒素ガス吸着法により測定した。具体的には、カンタクローム社製AS−1にて窒素吸着等温線(等温脱着曲線)を測定し、細孔容積(mL/g)、比表面積(m
2/g)
、最頻細孔径D
max(nm)を求めた。細孔容積は相対圧P/P
0=0.98のときの窒素吸着量を採用し、比表面積はP/P
0=0.1、0.2、0.3の三点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、最頻細孔径(D
max)が5nm以下のものについては、当業者に公知のHK法又はSF法で、5nm以上のものについてはBJH法で、それぞれ細孔分布曲線を求めることとした。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0068】
【表1】
【0069】
[表面処理剤]
シリカゲルの表面処理剤としては、以下のシランカップリング剤を用いた。
KBM−303:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
KBE−503:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
KBE−585:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
KBE−903:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
KBE−403:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(以上、信越化学工業株式会社製)
HMDS:ヘキサメチルジシラザン
これらの表面処理剤の構造式は以下の通りであり、各表面処理剤の有する官能基は下記表2に示す通りである。
【0070】
【化2】
【0071】
【表2】
【0072】
[シリカゲルの表面処理方法]
表面処理剤によるシリカゲルの表面処理は、以下の(A)〜(C)の方法で行った。
(A)KBM−303、KBE−503、KBE−585、KBE−403を表面処理剤として用いる場合:
(A1)表面処理剤である上記シランカップリング剤の1重量%アルコール溶液を調製する。溶媒(アルコール)としては、シランカップリング剤のアルコキシ基がメトキシ基のものはメタノールを、エトキシ基のものはエタノールをそれぞれ用いる。
(A2)シランカップリング剤のアルコール溶液2gに、酸触媒として1重量%酢酸水溶液20gを添加・混合する。
(A3)(A2)を室温で1時間撹拌する。
(A4)2gに秤量したシリカゲルを(A3)に添加し、室温で30分撹拌する。
(A5)(A4)を遠心分離した後、デカンテーションする。
(A6)(A5)に脱塩水を適量加えて攪拌する。
(A7)(A5)〜(A6)を2回繰り返して洗浄し、ウェットケーキを得る。
(A8)(A7)を常圧乾燥機で150℃まで昇温して乾燥した後、回収する。
(B)KBE−903を表面処理剤として用いる場合:
(B1)表面処理剤であるKBE−903の1重量%エタノール溶液を調製する。
(B2)上記エタノール溶液2gに、脱塩水20gを添加・混合する。
(B3)(B2)を室温で1時間撹拌する。
(B4)2gに秤量したシリカゲルを(B3)に添加し、室温で30分撹拌する。
(B5)(B4)を遠心分離した後、デカンテーションする。
(B6)(B5)に脱塩水を適量加えて攪拌する。
(B7)(B5)〜(B6)を2回繰り返して洗浄し、ウェットケーキを得る。
(B8)(B7)を常圧乾燥機で150℃まで昇温して乾燥した後、回収する。
(C)HMDSを表面処理剤として用いる場合:
(C1)シリカゲル10gにHMDS5.0mL(3.8gに相当)を添加する。
(C2)窒素雰囲気下、120℃で5時間加熱する。
(C3)(C2)の混合物を真空乾燥し、回収する。
【0073】
[シリコーン樹脂組成物の調製・成形・硬化]
以下の実施例においては、以下の配合で、下記手順に従って、シリコーン樹脂組成物の調製、成形、硬化を行った。
<シリコーン樹脂組成物配合>
シリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製「KE−106」):100重量部
表面処理済シリカゲル:10重量部
硬化触媒(信越化学工業業株式会社製「AT−RG」):1重量部
【0074】
(1) シリコーン樹脂3gと、乾燥させた表面処理済シリカゲル0.3gとを混合する。
(2) (1)に硬化触媒0.3gを添加して、さらに混合する。
(3) 金型に(2)の組成物を適量流し込み、脱泡する。
(4) (3)を常圧にて120℃で10分間処理し、硬化させて硬化物(成形品)を得る。
【0075】
[環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出・分析]
製造された成形品からの環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出・分析は、以下の手順で行った。
<環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出>
(1) 厚さ1mmのシート状成形品を約1.0g秤取する。これを約1mm角の小片に切断する。
(2) (1)にアセトン10mLを加える。
(3) (2)を50℃に加温して2時間加熱抽出する。
(なお、抽出時間を5時間に延ばしてもオリゴマー抽出量に殆ど変化はなかったことから、2時間の抽出でも十分な再現性が得られると判断される。)
【0076】
<抽出オリゴマーの分析>
(1) 抽出液を0.2μmポリテトラフルオロエチレン製メンブランフィルタで濾過する。
(2) 内部標準を用いたガスクロマトグラフィー法(GC−IS法)により、環状シロキサンオリゴマーの分析を行う。
(3) アセトン抽出量を、上記GC−IS法により求めた、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びデカメチルシクロペンタシロキサンの合計量として求める。
【0077】
[シリコーン樹脂成形品の外観評価]
実施例で得られたシリコーン樹脂成形品について、外観を目視観察し、表面処理済シリカゲルの分散性を下記基準で評価した。
○:表面処理済シリカゲルとシリコーン樹脂との境界を識別するのが困難な状態であり、表面処理済シリカゲルの分散性に優れる。
△:表面処理済シリカゲルの一部に凝集が見られ、表面処理済シリカゲルの分散性は若干劣るが実用上問題はない。
×:表面処理済シリカゲルのほぼ全量が凝集しており、表面処理済シリカゲルの分散性が著しく劣る。
【0078】
[シリコーン樹脂成形品のヘイズ]
実施例で得られた厚さ1mmのシリコーン樹脂成形品について、日本電色工業業株式会社製の色彩・濁度同時測定器COH400型を用いてヘイズ値を測定し、下記基準で評価した。
○:ヘイズ値5%以下
△:ヘイズ値5%超、10%以下
×:ヘイズ値10%超
【0079】
[実施例1〜11、比較例1]
表3に示すシリカゲルを同じく表3に示す表面処理剤で処理した表面処理済シリカゲルを用いて、シリコーン樹脂組成物の調製、成形、硬化を行った。前述の方法に従って、得られた成形品から環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量を求め、後掲の比較例2で得られた成形品の環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量を100%とした場合の相対値(百分率)を算出した。結果を表3に示す。
また、実施例3〜6、9〜11のシリコーン樹脂成形品については外観とヘイズの評価を実施した。結果を表3に併記する。
【0080】
[比較例2]
表面処理済シリカゲルを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物の調製、成形、硬化を行って、得られた成形品からの環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量を調べたところ、成形品重量に対して1302重量ppmであった。
【0081】
[比較例3〜5]
表面処理済シリカゲルに代えて、表3に示す表面処理されていないシリカゲルを用いたこと以外は、実施例1,7及び比較例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物の調製、成形、硬化を行い、得られた成形品からの環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量を測定し、同様に比較例2の成形品の環状シロキサンオリゴマーのアセトン抽出量に対する相対値(百分率)を算出した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表3より、表面処理済シリカゲルを配合することにより、シリコーン樹脂組成物から表面処理済シリカゲルを分離することなく、得られるシリコーン樹脂成形品からのアセトン抽出量を低減できることが判る。これはひいては環状シロキサンオリゴマーの揮散を防止することができるものと考えられる。
これに対して、表面処理を施していないシリカゲルでは、環状シロキサンオリゴマーの揮散防止効果がなく、また、表面処理を施しても、シリカゲルの最頻細孔径(D
max)が8nmと大きいもの(MPO8005)では、環状シロキサンオリゴマーの揮散防止効果が得られていない。
また、シリコーン樹脂成形品の外観、ヘイズの評価から、シリカゲルに適用する表面処理剤を選択することにより、表面処理済シリカゲルをシリコーン樹脂組成物中に残留させた状態でシリコーン樹脂成形品としても、その物性を損うことなく、良好な成形品が得られることが判る。