特許第6065570号(P6065570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6065570非水電解質二次電池容器用積層体、及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池、及び接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065570
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池容器用積層体、及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池、及び接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20170116BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20170116BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170116BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170116BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20170116BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170116BHJP
   H01M 2/08 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   C09J123/00
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J5/00
   B32B15/08 E
   H01M2/08 K
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-273682(P2012-273682)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-120277(P2014-120277A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雅之
(72)【発明者】
【氏名】前田 諭志
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−287971(JP,A)
【文献】 特開2010−092703(JP,A)
【文献】 国際公開第12/090646(WO,A1)
【文献】 国際公開第09/087776(WO,A1)
【文献】 特開平05−025455(JP,A)
【文献】 特開2006−291138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 2/08
B32B 15/08
C09J 1/00−5/10
C09J 9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、
熱融着性フィルムと、
前記金属箔と前記熱融着性フィルムとを接合する接着剤層とを、少なくとも具備し、
前記接着剤層は、
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3〜10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、3級アミン(C)を1〜10モルとなる範囲で含有する、接着剤組成物から形成されたものである、非水電解質二次電池容器用積層体。
【請求項2】
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が0.01〜1.2mmol/gである、請求項1記載の非水電解質二次電池容器用積層体。
【請求項3】
多官能イソシアネート化合物(B)が、イソシアヌレート構造を有することを特徴とする請求1または2に記載の非水電解質二次電池容器用積層体。
【請求項4】
二次電池本体と、
前記二次電池本体を収容する電池容器と、
前記電池容器内に密封された電解質と、を具備し、
前記電池容器は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池容器用積層体を具備するものである非水電解質二次電池。
【請求項5】
下記(A)〜(C)を含有する接着剤組成物であって、
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3〜10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、3級アミン(C)を1〜10モルとなる範囲で含有する、接着剤組成物。
【請求項6】
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が0.01〜1.2mmol/gである、請求項5記載の接着剤組成物。
【請求項7】
非水電解質二次電池容器用の積層体を形成する用途に用いられることを特徴とする請求項5または6記載の接着剤組成物。
【請求項8】
金属箔または熱融着性フィルムの一方の面に、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の接着剤組成物を塗工・乾燥して未硬化の接着剤層を形成し、
前記金属箔、前記接着剤層、前記熱融着性フィルムの積層構造が形成されるように、前記未硬化の接着剤層の表面に前記熱融着性フィルム、若しくは前記金属箔を重ね、
前記未硬化の接着剤層を硬化し、前記金属箔と前記熱融着性フィルムとを貼り合わせる非水電解質二次電池容器用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池の電池容器形成用の積層体に好適に使用できる接着剤組成物に関する。また、その接着剤組成物を用いて形成した非水電解質二次電池の電池容器形成用の積層体およびその製造方法に関する。更に、その非水電解質二次電池容器用積層体を具備する非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯型パソコン等の電子機器の急速な成長により、軽量かつ小型の非水電解質二次電池の需要が増大している。なかでも、より軽量コンパクト化が可能な、アルミニウム箔に代表される金属箔を含むラミネートフィルムを用いてなる、袋状やトレイ状の電池容器を用いたものが注目を集めている。
【0003】
袋状やトレイ状の電池容器を用いた電池は、多くの場合、以下のようにして得る。
工程1: 袋状やトレイ状の電池容器に用いられる積層体を形成する。電池容器用積層体は、一般に、外装部材/金属箔/熱融着樹脂フィルムを積層した形態のものであり、各構成部材は接着剤により接着されている。
工程2: 前記積層体を用い、前記熱融着樹脂フィルムを内層とする、少なくとも一方の端が空いた状態の袋やトレイを形成する。
工程3: 前記袋や前記トレイに、電池本体、前記電池本体の正極・負極にそれぞれ接続されてなる複数の電極端子(前記電極端子の他の端部は前記袋や前記トレイから突出するように配する)、及び電解質を入れる。
工程4: そして、袋状の場合は、開放端近傍の前記熱融着樹脂フィルム同士を対向させ、開放端から電極端子の他の端部を袋外に突出させた状態で前記熱融着樹脂フィルムで挟み、開放端近傍を熱融着させることにより、電池本体及び電解質等を密封する。
トレイ状の場合は、トレイ縁部の前記熱融着樹脂フィルムに、平板状の積層体を構成する熱融着樹脂フィルムを対向させ、トレイ縁部からトレイ外部に電極端子の他の端部を突出させた状態で前記熱融着樹脂フィルムで挟み、トレイ縁部を熱融着させることにより、電池本体及び電解質等を密封する。
【0004】
従って、電池容器用積層体のうち、金属箔と熱融着樹脂フィルムとを貼り合わせるための接着剤には、主に以下の性能が要求される。
(1) 金属箔と熱融着樹脂フィルムとの接着強度が大きいこと。
(2) 上記の接着剤層が耐電解液性を有していること。即ち、電解質を電池容器内に密封しても、金属箔と熱融着樹脂フィルムとの接着強度が維持できること。
例えば、リチウム電池の電解質溶液は、六フッ化リン酸リチウムのようなリチウム塩と、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の溶剤とを含む。
電池容器に電解質溶液を入れると、電解質溶液が熱融着樹脂フィルムを通り抜け、接着剤層に達すし、熱融着樹脂フィルムと金属箔との接着力低下を引き起こす。さらに、電池容器外部から電解質溶液に水分が浸入すると、六フッ化リン酸リチウムのようなリチウム塩と水とが反応し、フッ酸が発生する。発生したフッ酸は熱融着樹脂フィルム及び接着剤層を通り抜け、金属箔にまで到達し、金属箔を腐食させ、この腐食が熱融着樹脂フィルムと金属箔との接着力を著しく低下させる。
そこで、熱融着樹脂フィルムと金属箔とを貼りあわせる接着剤層には、電解質溶液に対する耐性が求められる。
中でも耐電解液性は、電池の使用される用途が民生用途であるか、車載用途であるかにより要求される耐久性レベルが異なり、車載用途においてはより優れた耐電解液性が求められる。
【0005】
特許文献1(特開2001−236932号公報)には、金属箔とオレフィン系樹脂層との間に、受酸層であるハイドロタルサイトを含有する変性オレフィン系樹脂層を設けてなる電池の包材が開示されている。変性オレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸ポリプロピレンが開示されている。
【0006】
特許文献2(特開2003−123708号公報)には、酸変性熱可塑性エラストマー(A)及びカップリング剤(B)を含有する接着剤組成物を用い、未延伸ポリプロピレンフィルムと、ナイロンフィルムがラミネートされてなるアルミニウム箔とを貼り合わせ、未延伸ポリプロピレンフィルム/接着剤層/アルミニウム箔/ナイロンフィルムという構成の積層体を得、前記積層体を包装材として用い二次電池を得る旨、開示されている。さらに接着剤組成物に粘着付与剤を含み得ることも開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3(WO2004/041954号パンフレット)には、カルボキシル基含有熱可塑性エラストマー(A)、ポリオレフィンポリオール(B)、粘着付与剤(C)及び多官能イソシアネート(D)を含有する接着剤組成物が開示されている。そして、前記接着剤を用いて、アルミニウム箔やポリエチレンテレフタレートフィルムと、未延伸ポリプロピレンフィルムとを貼り合わせ旨記載されている。
また、特許文献4(特開2005−063685号公報)にも同様の接着剤が開示され、前記接着剤を用いて、アルミニウム箔と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせて、前記熱可塑性樹脂フィルムを内層とする電池ケース用包装材料として用い得る旨記載されている。
【0008】
特許文献5(WO2009/087776号パンフレット)には、酸変性ポリプロピレンなどのカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネートとを含有する接着剤組成物が開示されており、粘着付与剤の利用が開示されている。
また、特許文献6(特開2010−092703号公報)にも同様の接着剤が開示され、前記接着剤を用いて、アルミニウム箔と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせて、前記熱可塑性樹脂フィルムを内層とする電池ケース用包装材料として用い得る旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−236932号公報
【特許文献2】特開2003−123708号公報
【特許文献3】WO2004/041954号パンフレット
【特許文献4】特開2005−063685号公報
【特許文献5】WO2009/087776号パンフレット
【特許文献6】特開2010−092703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載される接着剤は使用される樹脂の融点が高いため高温にして溶融しないと十分な接着力が発現せず、高温にすることで熱融着樹脂フィルムが劣化してしまうという問題があった。
また、特許文献2〜4に記載される接着剤は、比較的低温のエージング温度で十分な接着強度を発現するが、長期の耐電解液試験では十分な接着強度を維持することができないという問題があった。
さらに、特許文献5、6に記載される接着剤は、主剤の経時安定性(シェルフライフ)が悪く、経時保存しておくと主剤が増粘し安定して優れた性能を発現するのが困難であるという問題があった。
このように、生産性の観点から、優れた主剤のシェルフライフを有し、安定して高い接着性、耐電解液性を発現する接着剤の開発が求められていた。
【0011】
本発明は、熱融着性フィルムと金属箔の接着において、高い接着強度を発現し、長期に亘り電解質溶液に浸漬されても接着強度を高レベルで維持できる積層体を形成でき、かつ長期シェルフライフを有した保存安定性に優れた接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)及び多官能イソシアネート化合物(B)と共に、特定量の3級アミン(C)を含有する接着剤組成物を用いることによって、前記課題を解決できた。
即ち、本発明は、
金属箔と、
熱融着性フィルムと、
前記金属箔と前記熱融着性フィルムとを接合する接着剤層とを、少なくとも具備し、
前記接着剤層は、
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3〜10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、3級アミン(C)を1〜10モルとなる範囲で含有する、接着剤組成物から形成されたものである、非水電解質二次電池容器用積層体に関する。
本発明において、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価は0.01〜1.2mmol/gであることが好ましく、
多官能イソシアネート化合物(B)は、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、二次電池本体と、
前記二次電池本体を収容する電池容器と、
前記電池容器内に密封された電解質と、を具備し、
前記電池容器は、前記の非水電解質二次電池容器用積層体を具備するものである非水電解質二次電池に関する。
【0014】
更に本発明は、下記(A)〜(C)を含有する接着剤組成物であって、
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3〜10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含有し、
前記のカルボキシル基の合計1モルに対して、3級アミン(C)を1〜10モルとなる範囲で含有する、接着剤組成物に関する。
本発明の接着剤組成物において、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価は0.01〜1.2mmol/gであることが好ましく、
本発明の接着剤組成物は、非水電解質二次電池容器用の積層体を形成する用途に用いられることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、金属箔または熱融着性フィルムの一方の面に、
前記本発明の接着剤組成物を塗工・乾燥して未硬化の接着剤層を形成し、
前記金属箔、前記接着剤層、前記熱融着性フィルムの積層構造が形成されるように、前記未硬化の接着剤層の表面に前記熱融着性フィルム、若しくは前記金属箔を重ね、
前記未硬化の接着剤層を硬化し、前記金属箔と前記熱融着性フィルムとを貼り合わせる非水電解質二次電池容器用積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接着剤組成物により、高い接着強度で熱融着性フィルムと金属箔とを貼り合わせた積層体を得ることができる。そして、前記積層体が電解質溶液に浸漬されてもその接着強度を高レベルで維持でき、耐電解液性に優れた二次電池用容器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用されるカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)について説明する。
本発明における「ポリオレフィン樹脂」とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーの単独重合、もしくはその他のモノマーとの共重合、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。これらは溶剤への溶解性に優れるという点から、非結晶性であることが重要である。
なお、本発明における「非結晶性」とは、トルエン:90gに樹脂:10gを加え、加熱(例えば還流状態で加熱し)、樹脂を溶解し、透明な溶液を得た後、室温、例えば、25℃に冷却し、同温で一週間静置しても、溶液が沈殿を生じないものを言う。
【0018】
前記非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)としては、例えば、エチレン重合体およびエチレン重合体のハロゲン化物、プロピレン重合体およびプロピレン重合体のハロゲン化物、イソプレン重合体、ブタジエン重合体およびこれらの水素化物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンーイソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ブロック共重合体およびこれら共重合体を部分的に水素化した共重合体、または完全に水素化した共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル重合体等が挙げられる。
【0019】
前記非結晶ポリオレフィン樹脂(A)は、金属基材への接着強度が優れ、後述の多官能イソシアネート化合物(B)と強固な架橋構造を形成するという理由から、構造中にカルボキシル基を有することが重要である。
非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)へのカルボキシル基の導入方法としては、前述の「非結晶性ポリオレフィン樹脂」を製造するためのモノマーの重合の際に、適量のマレイン酸や無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や前記不飽和カルボン酸の無水物を共重合させる方法や、「非結晶性ポリオレフィン樹脂」を合成した後に、適量のマレイン酸や無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や前記不飽和カルボン酸の無水物と過酸化物を用いてグラフト化反応させる方法が一般的である。
【0020】
本発明で使用されるカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)を得る際にモノマーとしてエチレン性不飽和カルボン酸の無水物を使用した場合、接着剤として使用する際にカルボン酸の無水物の状態で使用しても良いし、これらを水やアルコール、アルキルアミンなどで開環させた状態で使用しても良い。
【0021】
本発明で使用されるカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価は、0.01〜1.2(mmol/g)であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.2(mmol/g)である。カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が0.01(mmol/g)よりも低い時は、金属基材への接着強度が十分でなかったり、後述の多官能イソシアネート化合物(B)との反応により得られる架橋構造が不足し、十分な電解液耐性が得られない恐れがある。また、酸価が1.2(mmol/g)よりも高い時は、塗工時に溶液中で後述の多官能イソシアネート化合物(B)との反応が早く、極端な増粘が起こり接着剤のポットライフを悪化させる恐れがある。
【0022】
本発明で使用されるカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の市販品としては、例えば、株式会社クラレ製のクラプレンLIR−403、LIR−410(以上、カルボキシル基含有イソプレン共重合体)、日本曹達株式会社製のNISSO−PB C−1000、BN−1015(以上、カルボキシル基含有ポリブタジエン)、CN−1000(カルボキシル基含有水素化ポリブタジエン)、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテックM1911、M1913、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンFG1901(以上、カルボキシル基含有水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、日本製紙ケミカル株式会社製のスーパークロン822、842L(カルボキシル基含有プロピレン重合体の塩素化物)、アウローレン200、350S(以上、カルボキシル基含有プロピレン重合体のアクリル酸エステルグラフト物)等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0023】
本発明で使用されるカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)がスチレン系ブロック共重合体である場合、構造中にスチレン単位が5〜60重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%である。カルボキシル基を有するスチレン系非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)のスチレン単位が5重量%よりも少ない時は、十分な粘弾性が得られない恐れがあり、スチレン単位が60重量%よりも多い時は、ハードブロックであるスチレン単位が多すぎるため、基材への濡れ性が不足し接着力が損なわれる恐れがある。
【0024】
本発明では、発明の効果を損なわない範囲で、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の他に、カルボキシル基を有しない非結晶性ポリオレフィン樹脂を併用しても良い。
【0025】
本発明で使用されるカルボキシル基を含有しない非結晶性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、株式会社クラレ製のクラプレンLIR−30(イソプレン重合体)、LIR−200(水素化イソプレン重合体)、LBR−300(ブタジエン重合体)、日本曹達株式会社製のNISSO−PB BI−3000(水素化ブタジエン重合体)、株式会社クラレ製のセプトン2002、2004(以上、水素化スチレン−イソプレン−スチレン共重合体)、2104、4033、HG252(以上、水素化スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレン共重合体)、旭化成ケミカルズ株式会社製のアサプレンT−432、T−437、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンD1155(以上、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、ダイセル化学工業株式会社製のエポフレンドAT501(エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテックP1500、P2000、MP10(部分水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、H1052、H1043(以上、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、日本製紙ケミカル株式会社製のスーパークロンC(プロピレン重合体の塩素化物)等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0026】
本発明で使用されるカルボキシル基を含有しない非結晶性ポリオレフィン樹脂がスチレン系ブロック共重合体である場合、構造中にスチレン単位が10〜90重量%含まれることが好ましい。カルボキシル基を含有しない非結晶性ポリオレフィン樹脂のスチレン単位が10重量%よりも少ない時は、十分な粘弾性が得られない恐れがある。スチレン単位が90重量%よりも多い時は、前述のカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)との相溶性が悪化して、接着力が損なわれてしまう恐れがある。
【0027】
本発明の接着剤組成物は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基と反応することで架橋構造をつくり、高い接着力および耐電解液性を付与する目的で多官能イソシアネート化合物(B)を含む。
【0028】
本発明で使用される多官能イソシアネート化合物(B)としては、以下に限定されるものではないが、周知のジイソシアネートおよびこれらから誘導された化合物を好ましく用いることができる。
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、若しくは水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートおよびこれらから誘導された化合物、即ち、前記ジイソシアネートヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体等が挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせても使用しても良い。
【0029】
本発明で使用される多官能イソシアネート化合物(B)として、中でも耐電解液性が優れるという理由から、前記イソシアネートのヌレート体を有するものが好ましい。
【0030】
本発明で使用される多官能イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の数は、1分子中、平均して2〜7個が好ましく、さらに好ましくは2〜3.5個である。多官能イソシアネート化合物(B)1分子中のイソシアネート基の数が2個より少ないと、十分な架橋量を得ることができず、電解液耐性が悪化するおそれがある。また、多官能イソシアネート化合物(B)1分子中のイソシアネート基の数が7個より多いと、塗工時に接着剤溶液中で多官能イソシアネート化合物(B)1分子に対してカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)が複数個反応する可能性が高くなるため、塗工中に著しい増粘を生じ、塗工性が悪化してしまうおそれがある。
【0031】
本発明で使用される多官能イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の官能基量は、1.5〜6mmol/gの範囲が好ましく、さらに好ましくは2.0〜5.5mmol/gである。多官能イソシアネート(B)のイソシアネート基の官能基量が1.5mmol/gより少ないと、十分な架橋構造を形成することができず、電解液耐性が悪化するおそれがある。また、多官能イソシアネート(B)のイソシアネート基の官能基量が6mmol/gより多いと、接着剤の成分や溶剤との相溶性が悪化してしまうおそれがある。
【0032】
本発明の接着剤組成物は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基由来の活性水素1モルに対して、イソシアネート基が0.3〜10モルとなる範囲で多官能イソシアネート化合物(B)を含み、0.5〜7モルの範囲で含むことがより好ましい。
イソシアネート基が0.3モル未満だと、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基由来の活性水素に対してイソシアネート基の配合量が少ないために、十分な架橋構造が形成されず凝集力が不足し、接着強度が不足したり耐電解液性が不足したりする可能性がある。またイソシアネート基が10モルよりも多いと、未反応のポリイソシアネート(B)が過量に存在することで耐電解液性を悪化させる可能性がある。
【0033】
本発明の接着剤組成物には、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)を含む主剤(硬化剤としての多官能イソシアネート化合物(B)を配合する前のもの)の粘度を安定化させ、塗工性を維持させる目的のために3級アミン(C)を含む。
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン(A)が、カルボキシル基の前駆官能基として酸無水物基を有する場合、環境下に存在する水と酸無水物基とが徐々に反応し、酸無水物基が開環しカルボキシル基を生成する。生じたカルボキシル基の高い凝集力により、主剤および接着剤組成物は高粘度となってしまう。しかし、3級アミン(C)を主剤に配合しておくことで主剤の増粘を抑制し、シェルフライフの悪化を抑制することができる。つまり、カルボキシル基と3級アミン(C)とが塩を形成し、カルボキシル基に由来する凝集力を緩和させることにより、主剤および接着剤組成物の粘度上昇を抑制できる。
また、非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸無水物基ではなくカルボキシル基を有する場合にも、同様に3級アミン(C)を主剤に配合しておくことで、主剤の粘度を低下することができる。
さらに、3級アミン(C)を主剤に配合しておくことにより、接着力を向上することもできる。粘度の上昇を抑制したり、粘度を低下したりすることによって、基材、即ち金属箔または熱融着性フィルムに対する塗工性が向上し、その結果接着力を向上できたものと考察している。
【0034】
本発明で使用される3級アミン(C)は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と多官能イソシアネート化合物(B)の架橋反応を阻害しないという理由から、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有してないことが好ましい。多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基としては、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0035】
本発明で使用される3級アミン(C)としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0036】
本発明で使用される3級アミン(C)の含有量は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)由来のカルボキシル基1モルに対して、3級アミン(C)の当量比が1〜10モルの範囲であり、好ましくは1.5〜7モルである。(以下、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)由来のカルボキシル基に対する全3級アミン(C)の当量比をアミン/COOH比と呼ぶ。)アミン/COOH比が1モルより少ない時は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基に対して3級アミン(C)が不足しているため塩形成による塗工性の向上効果と接着力向上効果が十分に得られないおそれがある。また、アミン/COOH比が10モルより多い時は、乾燥過程、エージング過程の後も接着剤膜中に過量の3級アミン(C)が残り、接着剤の凝集力を損ねてしまう恐れがある。
【0037】
本発明の接着剤組成物において使用できる有機溶媒は、単独もしくは混合溶剤として本接着剤で使用する材料を溶解でき、多官能イソシアネート化合物(B)との反応性が不活性であり、接着剤塗工時の乾燥工程における過熱により揮発させて除去できるものであれば特に限定されない。これらの溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒、n−ヘキサン等の脂肪族系有機溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、本接着剤の有機溶剤成分として、上記したような3級アミン(C)を使用しても良い。
【0038】
本発明の接着剤組成物において、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて反応促進剤、粘着付与剤、可塑剤等の公知の添加剤(D)を配合しても良い。
【0039】
発明で使用される公知の添加剤(D)として、硬化反応を促進させたい場合、公知の反応促進剤を使用することができる。この場合、ポリイソシアネート(C)の配合に先んじて配合することが好ましい。
本発明で使用される反応促進剤としては、たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0040】
本発明で使用される反応促進剤の配合量としては、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)に対して、0.001〜0.2重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。反応促進剤の添加量が0.001重量部未満であると、硬化反応の十分な促進効果が得られない恐れがあり、0.2重量部よりも大きいと、硬化反応が早すぎるため接着剤のポットライフを損ねてしまう恐れがある。
【0041】
本発明で使用される公知の添加剤(D)として、接着剤組成物に粘着性を付与したい場合、公知の粘着付与剤や可塑剤を使用することができる。
本発明で使用される粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
また、本発明で使用される可塑剤としては、ポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴムやプロセルオイル等が挙げられる。
【0042】
本発明で使用される粘着付与剤および可塑剤の配合量としては、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)100重量%に対して、10重量%〜80重量%の範囲が好ましい。配合量が10重量%よりも少ない場合、十分な粘着性の付与効果が得られない恐れがあり、80重量%より多い場合、相対的にカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の量が少なくなるため耐電解液性が悪化する恐れがある。
【0043】
本発明の接着剤組成物は、金属箔と熱融着性フィルムとの積層に好適に使用される。
金属箔の金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらの金属箔は、各種表面処理を施したものであっても良い。表面処理の例としては、例えば、サンドブラスト処理、研磨処理などの物理的処理や蒸着による脱脂処理、エッチング処理、カップリング剤やコーティング剤を塗布するプライマー処理などの化学処理がある。
熱融着性フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられ、特に未延伸のフィルムが好適に用いられる。
【0044】
本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、例えば、以下のようにして得ることができる。
金属箔(又は熱融着性フィルム)の一方の面に、本発明の接着剤組成物を塗工し、溶剤を揮散させ(乾燥させ)、未硬化の接着剤層を形成し、60〜150℃、加圧下に前記未硬化の接着剤層の表面に、熱融着性フィルム(又は金属箔)を重ねた後、40〜80℃で3〜7日程度静置し、接着剤層を十分硬化させ(エージングとも称する)、金属箔と熱融着性フィルムとを貼り合わせる。
接着剤組成物の塗工には、コンマコーター等の一般的な塗工機を用いることができる。また、乾燥硬化時の硬化接着剤層の厚み(量)は、1〜30g/m2程度であることが好ましい。
【0045】
なお、金属箔は、他方の面(本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層が接していない面)に、他のシート状部材を具備することができる。
他のシート状部材は、予め接着剤組成物(本発明の接着剤組成物と同じであってもよいし、異なっていてもよい)を用いて、金属箔に積層されていてもよいし、本発明の接着剤組成物を用いて金属箔と熱融着性フィルムとの積層体を得た後、金属箔に他のシート状部材を積層することもできる。
用いられる他のシート状部材としては、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂(ナイロン)等の延伸フィルム等が挙げられ、この他のシート状部材は、積層体が電池容器となる際、外装部材となる。
【0046】
本発明の接着剤組成物を用いて、金属箔と熱融着性フィルムとを貼り合わせてなる積層体を用いてなる二次電池用電池容器について説明する。本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、二次電池、特に非水電解質二次電池の電池容器の形成に好適に用いられる。
二次電池は、電池本体と、前記電池本体の正極と負極にそれぞれ接合されてなる複数の端子と、電池容器と、電解質とを具備する。前記電池容器は、本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層を介して、金属箔と熱融着性フィルムとが積層されてなる積層体から得られるものであり、前記熱融着性フィルムが前記電解質に接する。
【0047】
電池容器には、袋状用の容器のパウチタイプと、金型を用いて平板状の積層体を成型加工してなるトレイ状容器タイプとがある。袋状用の容器の一形態が、特開2007−2794381号公報の図8に例示される。また、トレイ状容器の一形態が同公報の図9に示され、他の形態が図2に示される。本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、袋状、トレイ状、両方のタイプの容器の形成に使用できる。いずれの場合も、熱融着性フィルムが内側を向くように配し、複数の端子の先端部を外部に突出した状態で、熱融着性フィルムの一部を熱融着し、電池本体及び電解質溶液を密封する。
【0048】
電解質溶液は、熱融着性プラスチックシートから金属箔に向かって浸透し始めるが、本発明の接着剤組成物から形成された接着剤層は、電解質溶液に対する耐性に優れているので、熱融着性プラスチックシートと金属箔との間の接着強度は低下せず、液漏れ等の問題が発生しない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。なお、実施例中、部は重量部、%は重量%、酸価はmmol/gをそれぞれ示す。酸価は、還流させたキシレン中に秤量した試料を溶解させ、フェノールフタレインを指示薬とし、メタノール性水酸化カリウムを用いて滴定することにより測定を行った。指示薬の呈色が10秒間残留した時を滴定の終点とした。
【0050】
<主剤1>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS タフテックM1911(スチレン含量30重量%、酸価0.04mmol/g):70部、添加剤(D)として荒川化学工業株式会社製水添石油樹脂 アルコンP−125(軟化点125℃):30部、3級アミン(C)としてトリエチルアミンをアミン/COOH比が=5/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤1の溶液(固形分20%)を得た。
【0051】
<主剤2>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として日本製紙ケミカル株式会社製マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン スーパークロン892L(酸価0.34mmol/g):100部、3級アミン(C)としてトリエチルアミンをアミン/COOH比が1.2/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤2の溶液(固形分20%)を得た。
【0052】
<主剤3>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として三井化学株式会社製酸変性ポリプロピレン ユニストールP−401(酸価0.98mmol/g):80部、添加剤(D)として荒川化学工業株式会社製水添石油樹脂 アルコンP−125(軟化点125℃):20部、3級アミン(C)としてトリブチルアミンをアミン/COOH比が4/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤3の溶液(固形分20%)を得た。
【0053】
<主剤4>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS タフテックM1913(スチレン含量30重量%、酸価0.19mmol/g):70部、添加剤(D)としてヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロンP150(軟化点150℃):30部、3級アミン(C)としてトリブチルアミンをアミン/COOH比が4/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤1の溶液(固形分20%)を得た。
【0054】
<主剤5>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS タフテックM1913(スチレン含量30重量%、酸価0.19mmol/g):65部、添加剤(D)としてヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロンP150(軟化点150℃):35部、3級アミン(C)としてトリオクチルアミンをアミン/COOH比が3/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤5の溶液(固形分20%)を得た。
【0055】
<主剤6>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として三井化学株式会社製酸変性ポリプロピレン ユニストールP−401(酸価0.98mmol/g):100部、3級アミン(C)としてトリブチルアミンをアミン/COOH比が3/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤6の溶液(固形分20%)を得た。
【0056】
<主剤7>
主剤5で配合した旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS タフテックM1913(スチレン含量30重量%、酸価0.19mmol/g):65部を配合せずに、代わりに、ヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロンP150(軟化点150℃)の量を100部とした以外は、主剤5と同様の組成となるように溶液を調製し、主剤7の溶液(固形分20%)を得た。
【0057】
<主剤8>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)のかわりにカルボキシル基を有しない旭化成工業株式会社製水素化SBS タフテックH1053(スチレン含量30重量%、酸価0mmol/g):65部を配合した以外は主剤5と同様の組成となるように溶液を調製し、主剤8の溶液(固形分20%)を得た。
【0058】
<主剤9>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS タフテックM1913(スチレン含量30重量%、酸価0.19mmol/g):65部、添加剤(D)としてヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロンP150(軟化点150℃):35部となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤9の溶液(固形分20%)を得た。
【0059】
<主剤10>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として日本製紙ケミカル株式会社製マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン スーパークロン892L(酸価0.34mmol/g):100部となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤10の溶液(固形分20%)を得た。
【0060】
<主剤11>
カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)として旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS タフテックM1913(スチレン含量30重量%、酸価0.19mmol/g):65部、添加剤(D)としてヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロンP150(軟化点150℃):35部、3級アミン(C)ではなく、ジブチルアミンをアミン/COOH比が3/1となるように容器に入れ、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤10の溶液(固形分20%)を得た。
【0061】
<シェルフライフ試験>
得られた各主剤を40℃で1ヶ月放置し、主剤の粘度変化によりシェルフライフを判断した。結果を表3、4に示す。
◎ 実用上優れる:増粘がなく、接着剤性能の劣化なし。
○ 実用域:増粘はあるが、塗工可能。接着剤性能の劣化なし。
△ 実用下限:増粘はあるが、塗工可能。接着剤性能がやや劣化。
× 実用不可:大幅な増粘があり、塗工不可能。または、塗工可能だが接着剤性能が著しく劣化。
【0062】
<実施例1〜6>、<比較例1〜7>
得られた各主剤を配合した当日に、表1、2に示すNCO/COOH比となるように、各種主剤溶液に対して下記硬化剤を配合し、トルエンで希釈して固形分15%に調整した溶液を接着剤溶液とした。
【0063】
<硬化剤>
多官能シソアネート化合物(B)として、住化バイエルウレタン株式会社製ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体 スミジュールN3300(イソシアネート基の官能基量5.19mmol/g、官能基数3)を用い、これを硬化剤とした。
【0064】
厚み50μmのアルミニウム箔の片面に、前記接着剤溶液をバーコーターにて塗布し、100℃、1分間乾燥し、1.5〜2g/m2の接着剤層を得た。次いで、前記接着剤層に厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(以下CPPと呼ぶ)を重ね合わせ、60℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層体を得た。その後、得られた積層体を40℃で1日間および40℃で5日間の硬化(エージング)を行った。こうして、得られたアルミニウム箔/CPPラミネートフィルムを、以下「Al/CPP積層フィルム」と呼ぶ。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1、2中に示す略語は以下の通り。
【0068】
<カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)等>
・タフテックM1911:旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS(水素化スチレン−ブタジエン−スチレン)、スチレン含量:30重量%、酸価:0.04(mmol/g)
・タフテックM1913:旭化成工業株式会社製マレイン酸変性水素化SBS(水素化スチレン−ブタジエン−スチレン)、スチレン含量:30重量%、酸価:0.19(mmol/g)
・スーパークロン892L:日本製紙ケミカル株式会社製マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン、酸価:0.34(mmol/g)
・ユニストールP−401:三井化学株式会社製酸変性ポリプロピレン
・タフテックH1053:旭化成工業株式会社製水素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、スチレン含量:29重量%、酸価:0(mmol/g)
【0069】
<添加剤(B)>
・アルコンP125:荒川化学工業株式会社製水添C9樹脂、軟化点:125℃
・クリアロンP150:ヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂、軟化点:150℃、酸価:0(mmol/g)
【0070】
<多官能イソシアネート化合物>
・スミジュールN3300:住化バイエルウレタン株式会社製ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソシアネート基の官能基量:5.19(mmol/g)
【0071】
<3級アミン(D)等>
・TEA:トリエチルアミン、沸点:90℃、3級アミン量:9.9(mmol/g)
・TBA:トリブチルアミン、沸点:214℃、3級アミン量:5.4(mmol/g)
・TOA:トリオクチルアミン、沸点:366℃、3級アミン量:2.8(mmol/g)
・DBA:ジブチルアミン、沸点:160℃、3級アミン量:0(mmol/g)
【0072】
[耐電解液浸漬後剥離試験前の接着強度]
Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。アルミニウム箔/CPP間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示す。以下の基準にて評価した。
◎ 実用上優れる:7N/15mm以上
○ 実用域:5〜7N/15mm
△ 実用下限:2〜5N/15mm
× 実用不可:2N/15mm未満
【0073】
[耐電解液浸漬後剥離試験後の接着強度]
Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で2週間静置後、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、この試験片を下記の電解液に85℃で7日間浸漬させた。その後、試験片を取り出し約10分程度流水で洗浄し、ペーパーワイパーで水を十分に拭き取った後に十分に水分を乾燥させた。乾燥後の試験片の接着強度を、浸漬試験前の接着強度測定と同様にして求めた。
電解液:[6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)に溶解し、1mol/lの6フッ化リン酸リチウム溶液としたもの]
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
表4に示すように、比較例1の接着剤はカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)を含有しておらず、アルミ界面との接着性が不足し、多官能イソシアネート化合物との架橋構造も形成されないため、接着強度および電解液耐性が著しく低下した。
【0077】
比較例2の接着剤は、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の代わりに、カルボキシルを有さないポリオレフィン樹脂を含有しているため、アルミ界面との接着性が不足し、多官能イソシアネート化合物との架橋構造も形成されないため、接着強度および電解液耐性が著しく低下した。
【0078】
比較例3、4の接着剤は、3級アミン(C)を含有しないため、シェルフライフ試験において主剤が大幅に増粘してしまい、シェルフライフが著しく悪化した。
【0079】
比較例5の接着剤は、多官能イソシアネート化合物(B)と反応性を有しない3級アミン(C)の代わりに、多官能イソシアネート化合物(B)と反応性を有するアミンを含有しているため、接着剤調製の際に多官能ポリイソシアネート化合物(B)とアミンが反応し、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と多官能イソシアネート化合物(B)との反応を阻害していまい、接着性および耐電解液性が著しく悪化した。
【0080】
比較例6の接着剤は、多官能イソシアネート化合物(B)が過量に含有されているため、過量な多官能イソシアネート化合物(B)が未硬化なまま接着剤塗膜に存在している影響で接着力が不足し、耐電解液性が悪化した。
【0081】
比較例7の接着剤は、多官能イソシアネート化合物(B)を含有しないため、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)と多官能イソシアネート化合物の架橋構造が形成されず、接着力が不足し、耐電解液性が悪化した。
【0082】
一方、表3に示す実施例1〜6の接着剤は、カルボキシル基含有非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、多官能イソシアネート化合物(B)と反応する官能基を有さない3級アミン(C)をそれぞれ好適な量で含有しているので、主剤が優れたシェルフライフを有しており、Al/CPP積層フィルムにおいて、接着力、電解液耐性をすべてバランスよく満たしていた。
【0083】
これら実施例の接着剤の中でも、実施例5、6の接着剤がすべての試験で高い性能を示した
実施例5、6の接着剤は、実施例1の接着剤と比較するとカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が0.05〜1.2mmol/gという、より好適な範囲であるため、多官能イソシアネート化合物(B)の反応により密な架橋構造が形成し、優れた接着力、耐電解液性が得られた。
【0084】
また、実施例5、6の接着剤は、実施例2の接着剤と比較するとアミン/COOH比が1.5〜7/1という好適な範囲で3級アミン(C)が含有されているため、主剤のシェルフライフが優れていた。
【0085】
また、実施例5、6の接着剤は、実施例3、4の接着剤と比較すると、NCO/COOH比が0.5〜7/1という好適な範囲で多官能イソシアネート化合物が含有されているため、粘弾性のバランスに優れ、高い接着力、耐電解液性を示した。
【0086】
実施例5の接着剤は、比較例3の接着剤と比較すると3級アミン(C)を含有していることにより高い接着力が発現していることが分かる。この理由として、3級アミン(C)を含有することで基材との濡れ性が向上したことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の接着剤を用いれば、ポリオレフィン系樹脂と金属を高強度で接着することができ、耐薬品性に優れた積層体を得ることができる。このような特性を利用して、特に本発明の接着剤を用いることでポリオレフィン系樹脂/金属間の接着強度、耐電解液性の優れたポリオレフィン系樹脂非水電解質二次電池用ソフトパックを形成することができる。
本発明の接着剤を用いてなる非水電解質二次電池用ソフトパックは、非水電解質二次電池の安全性、寿命延長に寄与することが出来る。このような非水電解質二次電池の高品質化は、非水電解質二次電池の普及につながり、新規エネルギー材料としてエネルギーの高効率利用という観点から環境保全に寄与することにもなる。
【0088】
その他、本発明に係る接着剤組成物は、非水電解質二次電池用ソフトパックの他に、建築、医療、自動車など各種産業分野において、高接着強度、耐薬品性が求められるポリオレフィン系樹脂を用いた材料用の接着剤として好適である。