特許第6065575号(P6065575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6065575タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065575
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20170116BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20170116BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20170116BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20170116BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20170116BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08K5/09
   C08K5/092
   C08K5/098
   C08L61/04
   B60C1/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-279565(P2012-279565)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-88535(P2014-88535A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-222709(P2012-222709)
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】清水 克典
(72)【発明者】
【氏名】野間口 強
(72)【発明者】
【氏名】古行 真梨子
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−157525(JP,A)
【文献】 特開昭52−043851(JP,A)
【文献】 特開昭51−059984(JP,A)
【文献】 特開昭57−137333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、サリチル酸トリメリト酸とを合計で0.2〜10質量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにフェノール系樹脂を0.1質量部以上5質量部未満および硬化剤を0.1〜10質量部配合してなる請求項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにコバルト量として0.1〜0.5質量部の有機酸コバルト塩を配合した請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤベルト層の被覆に用いた空気入りタイヤ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をカーカス層の被覆に用いた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、金属コードとの接着性を改善し、さらに硬度および引張特性を高めたタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤは、スチールコードのような金属コードを被覆したゴム組成物が使用されている。近年、タイヤの使用期間が長期化する中、金属コードによる補強効果を高め、耐久性を長期にわたり維持することが重要視されている。耐久性を向上させるには、金属コードとこれを被覆するゴム組成物との接着性を改善する必要があるが、その達成には困難性を伴う。一方当業界において、金属コードを被覆するゴム組成物に対し硬度および引張特性を向上させ、操縦安定性や耐破壊特性を改善することも強く求められている。
【0003】
下記特許文献1には、ワイヤとゴムとの接着性を改善することを目的として、ジエン系ゴムにアミノ安息香酸エステルを配合する技術が開示されている。
しかしながら、金属コードを被覆するゴム組成物、例えばタイヤベルト層の被覆またはカーカス層の被覆に用いられるゴム組成物に対し、上記のように近年さらなる接着性、硬度および引張特性の良化の要求があり、そのため当業界では種々の技術が検討されているが、提案されているゴム組成物ではその要求レベルに十分に応えることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−195240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、金属コードとの接着性を改善し、さらに硬度および引張特性を高めたタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、天然ゴムを含むジエン系ゴムに、特定の複数種類の芳香族化合物を併用し、これを特定量で配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.天然ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、分子中に1個以上のカルボキシル基および水酸基を有する芳香族化合物(1)と分子中に3個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物(2)とを合計で0.2〜10質量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
2.前記芳香族化合物(1)がサリチル酸であり、かつ前記芳香族化合物(2)がトリメリト酸である前記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
3.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにフェノール系樹脂を0.1質量部以上5質量部未満および硬化剤を0.1〜10質量部配合してなる前記1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにコバルト量として0.1〜0.5質量部の有機酸コバルト塩を配合した前記1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
5.前記1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤベルト層の被覆に用いた空気入りタイヤ。
6.前記1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をカーカス層の被覆に用いた空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天然ゴムを含むジエン系ゴムに、特定の複数種類の芳香族化合物を併用し、これを特定量で配合したので、金属コードとの接着層の形成が促進され、接着性を改善し、さらに引張特性および硬度を高めたタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤベルト層の被覆またはカーカス層の被覆に用いた場合、金属コードとの良好な接着性に基づく高い耐久性と、高い硬度および引張特性に基づく優れた操縦安定性や耐破壊特性を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)の使用を必須とする。また、NR以外にも、タイヤ用ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ジエン系ゴムはその分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル基等で末端変性されていてもよい。
本発明において、ジエン系ゴム全体を100質量部としたとき、NRは、50質量部以上であることが好ましく、100質量部であることがさらに好ましい。
【0010】
(分子中に1個以上のカルボキシル基および水酸基を有する芳香族化合物(1))
本発明で使用される芳香族化合物(1)は、分子中に1個以上のカルボキシル基および水酸基を有する芳香族化合物であり、例えば、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸及びトロパ酸等が挙げられる。
また、本発明で使用される芳香族化合物(2)は、分子中に3個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物であり、例えば、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、ナフタレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
中でも本発明の効果が高まるという観点から、芳香族化合物(1)はサリチル酸が、芳香族化合物(2)はトリメリト酸がそれぞれ好ましい。
なお、芳香族化合物(1)および芳香族化合物(2)の使用割合は、芳香族化合物(1)1モルに対し、芳香族化合物(2)は0.1〜1.5モルが好ましく、0.4〜0.8モルがさらに好ましい。
【0011】
(フェノール系樹脂)
本発明で使用されるフェノール系樹脂は、例えばフェノール、クレゾールまたはレゾルシンをアルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドを用いて縮合して得られるノボラック型フェノール系樹脂が挙げられ、好ましくは後述するメチレンドナーなどの硬化剤と反応して三次元架橋化したものであり、これらはいずれも公知の樹脂である。ノボラック型フェノール系樹脂は、オイルまたは脂肪酸で変性していてもよく、例えば、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸などのオイルで変性した樹脂を挙げることができる。
【0012】
(硬化剤)
本発明で使用される硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミンやメラミン誘導体等が挙げられる。メラミン誘導体は、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチロールメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサキス−(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N’’−トリメチル−N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’−(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N’’−トリブチル−N,N’,N’’−トリメチロールメラミンが挙げられる。特にヘキサメトキシメチロールメラミン若しくはペンタメトキシメチロールメラミンが好ましい。
【0013】
フェノール系樹脂および硬化剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、フェノール系樹脂が例えば0.1質量部以上5質量部未満、好ましくは1〜3質量部、硬化剤が例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。フェノール系樹脂および硬化剤を配合する場合、フェノール系樹脂の配合量が0.1質量部未満であると、硬度が低下し、操縦安定性が悪化する。また5質量部以上であると、硬度が過度に上昇し、発熱性と金属コードに対する接着性が悪化する。
【0014】
(有機酸コバルト塩)
本発明では、その効果の観点、とくに金属コードに対する接着性の観点から、有機酸コバルト塩を配合するのが好ましい。
本発明で使用する有機酸コバルト塩としては、例えばナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト、ホウ酸ネオデカン酸コバルト、アセチルアセトナートコバルト等を例示することができる。また、ホウ素を含む有機酸コバルト塩、例えばオルトホウ酸コバルト等も使用できる。
有機酸コバルト塩を使用する場合、その配合量はジエン系ゴム100質量部に対し、コバルト量として0.1〜0.5質量部が好ましく、0.15〜0.25質量部がさらに好ましい。
【0015】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、分子中に1個以上のカルボキシル基および水酸基を有する芳香族化合物(1)と分子中に3個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物(2)とを合計で0.2〜10質量部配合してなることを特徴とする。
芳香族化合物(1)および芳香族化合物(2)の合計の配合量が0.2質量部未満であると、添加量が少な過ぎて所望の効果が奏されない。逆に10質量部を超えると金属コードとの接着性が悪化する。
【0016】
さらに好ましい芳香族化合物(1)および芳香族化合物(2)の合計の配合量は、天然ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し2〜6質量部である。
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、シリカ、カーボンブラックなどの補強剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、金属コードとの良好な接着性に基づく高い耐久性と、高い硬度および引張特性に基づく優れた操縦安定性や耐破壊特性を達成していることから、とくにタイヤベルト層の被覆に用いるのが好適である。
これとは別に、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記のような金属コードとの良好な接着性に基づく高い耐久性と、高い硬度および引張特性に基づく優れた操縦安定性や耐破壊特性を達成していることから、カーカス層の被覆にも好適に用いられる。
前者のタイヤベルト層の被覆に用いる場合において、加硫剤としての硫黄は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5〜10質量部配合するのが好ましく、後者のカーカス層の被覆に用いる場合において、加硫剤としての硫黄は、ジエン系ゴム100質量部に対し、2〜5質量部配合するのが好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0020】
標準例1、実施例1〜3、比較例1〜5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えて混練し、タイヤ用ゴム組成物を得た。次に得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で170℃で15分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0021】
硬度:JIS 6253に準拠して、20℃で測定した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど硬度が高いことを示す。
引張特性:JIS K6251に準拠し、引張試験を行い、引張強さ(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。結果は、標準例1の値を100として指数で示した。指数が大きいほど引張特性に優れることを示す。
接着試験:ASTM-D-2に準拠してコードを引き抜き、その引き抜き時の引抜力とゴム付着量を評価した。結果は、標準例1の値を100として指数で示した。指数が大きいほどスチールワイヤとの初期接着力に優れることを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
*1:NR(TSR20)
*2:カーボンブラック(東海カーボン(株)製シースト300、CTAB比表面積=84m/g、NSA=76m/g、DBP吸油量=74cm/100g)
*3:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*4:老化防止剤(フレキシス社製サントフレックス6PPD)
*5:ステアリン酸コバルト(DIC(株)製)
*6:レゾルシン樹脂(田岡化学工業(株)製スミカノール620)
*7:HMMM(CYTEC INDUSTRIES製CYREZ 964RPC、ヘキサメトキシメチロールメラミン)
*8:サリチル酸(吉富製薬(株)製)
*9:トリメリト酸(DIC(株)製モノサイザーW−700)
*10:プロピオン酸(東京化成株式会社)
*11:硫黄(四国化成工業製ミュークロンOT−20)
*12:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーDZ)
【0024】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜3で調製されたタイヤ用ゴム組成物は、NRを含むジエン系ゴムに、特定の複数種類の芳香族化合物を併用し、これを特定量で配合しているので、従来の代表的な標準例1に対し、金属コードとの優れた接着性および高い硬度および引張特性が達成されている。
これに対し、比較例1は、分子中に1個以上のカルボキシル基および水酸基を有する芳香族化合物(1)のみを配合した例であるので、実施例1と比較すると、金属コードとの接着性および引張特性がいずれも劣る結果となった。
比較例2は、分子中に3個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物(2)のみを配合した例であるので、実施例1と比較すると、金属コードとの接着性および引張特性がいずれも劣る結果となった。
比較例3は、芳香族化合物(1)および(2)の合計の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、金属コードとの接着性、硬度および引張特性がいずれも改善されなかった。
比較例4は、芳香族化合物(1)および(2)の合計の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、金属コードとの接着性および引張特性が共に改善されなかった。
比較例5は、トリメリト酸の替わりにプロピオン酸を使用した例であるので、金属コードとの接着性および引張特性が共に改善されなかった。
【0025】
標準例2、実施例4〜8、比較例6〜9
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えて混練し、タイヤ用ゴム組成物を得た。次に得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で170℃で15分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0026】
硬度:JIS 6253に準拠して、20℃で測定した。結果は、標準例2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど硬度が高いことを示す。
引張試験(100%モジュラス(M100)、300%モジュラス(M300):JIS K6251に準拠して測定した。結果は、標準例2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど引張強度が高いことを示す。
発熱性:(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(60℃)を測定し、この値をもって発熱性を評価した。結果は標準例2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、低発熱性であることを示す。
接着力:JIS L1017に準拠し、未加硫ゴム組成物に処理コードを埋設し、170℃×10分加硫した後に、ゴムからコードを引き抜く接着力を測定した。結果は、標準例2の値を100として指数で示した。指数が大きいほどスチールワイヤとの接着力に優れることを示す。
結果を表2に併せて示す。
【0027】
【表2】
【0028】
*1:NR(TSR20)
*2:SBR(日本ゼオン(株)製NIPOL 1502)
*3:BR(日本ゼオン(株)製NIPOL BR 1220)
*4:カーボンブラック(THAIBLACK N660)
*5:ステアリン酸コバルト(DIC(株)製)
*6:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*7:老化防止剤(フレキシス社製サントフレックス6PPD)
*8:プロピオン酸(東京化成株式会社)
*9:サリチル酸(吉富製薬(株)製)
*10:トリメリト酸(DIC(株)製モノサイザーW−700)
*11:硫黄(四国化成工業製ミュークロンOT−20)
*12:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーDZ)
【0029】
上記の表2から明らかなように、実施例4〜8で調製されたタイヤ用ゴム組成物は、NRを含むジエン系ゴムに、特定の複数種類の芳香族化合物を併用し、これを特定量で配合しているので、従来の代表的な標準例2に対し、金属コードとの優れた接着性および高い硬度および引張特性が達成されている。また、発熱性を損なうこともない。
これに対し、比較例6は、芳香族化合物(1)および(2)の合計の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、金属コードとの接着性、硬度および引張特性がいずれも改善されなかった。
比較例7は、芳香族化合物(1)および(2)の合計の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、引張特性が改善されなかった。
比較例8は、サリチル酸の替わりにプロピオン酸を使用した例であるので、金属コードとの接着性および引張特性が共に改善されなかった。
比較例9は、分子中に1個以上のカルボキシル基および水酸基を有する芳香族化合物(1)のみを配合した例であるので、実施例4と比較すると、硬度および引張特性がいずれも劣る結果となった。