(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来では、パワー素子および制御ICを樹脂で封止する際、流動樹脂によって細径の金ワイヤに変形が生じると、金ワイヤ同士の短絡などの不具合が生じる懸念がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、制御ICに接続された金ワイヤの変形を抑えることができるパワー半導体モジュールおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るパワー半導体モジュールは、基板上の所定位置に配置されたパワー素子と、前記パワー素子と前記パワー素子に電力を供給する電力供給部とを接続するアルミワイヤと、前記基板上の所定位置に配置された制御ICと、前記制御ICと前記基板のリードとを接続する金ワイヤと、を封止樹脂内に備え、前記アルミワイヤの配置位置が、前記封止樹脂を形成するために注入した樹脂の流動を前記金ワイヤに対してブロックする位置にされていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るパワー半導体モジュールの製造方法は、基板上にパワー素子と制御ICとを配置して樹脂封止するパワー半導体モジュールの製造方法であって、前記パワー素子と前記制御ICとを前記基板上の所定位置にそれぞれ配置する素子配置工程と、前記制御ICと前記基板のリードとを金ワイヤで接続するとともに、前記パワー素子と前記パワー素子に電力を供給する電力供給部とをアルミワイヤで接続するワイヤ接続工程と、前記パワー素子、前記制御IC、前記アルミワイヤ、および、前記金ワイヤを樹脂封止する封止工程と、を備え、前記ワイヤ接続工程では、前記アルミワイヤの配置位置を、樹脂封止するために注入した樹脂の流動を前記金ワイヤに対してブロックする位置とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御ICに接続された金ワイヤの変形を抑えることができるパワー半導体モジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)〜(d)は、それぞれ、本発明の一実施形態のパワー半導体モジュールの平面図、側面図(第1側面図)、背面図、および、リード突出側の側面図(第2側面図)である(
図1(c)では、簡明化のため、封止樹脂から突出したリードを省略して描いている)。
【
図2】第1実施形態で、樹脂封止する際にゲートからキャビティ内(金型内)に流動樹脂を注入することを説明する模式的な平面図である。
【
図3】第1実施形態で、樹脂封止する際にゲートからキャビティ内(金型内)に流動樹脂を注入することを説明する模式的な側面図である(簡明化のため、第2アルミワイヤの描画を省略している)。
【
図4】第1実施形態で、パワー半導体モジュールの変形例を説明する模式的な平面図である。
【
図5】第1実施形態で、パワー半導体モジュールの変形例を説明する模式的な平面図である。
【
図6】第2実施形態で、樹脂封止する際にゲートからキャビティ内(金型内)に流動樹脂を注入することを説明する模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、すでに説明したものと同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。
【0012】
また、図面は模式的なものであり、寸法比などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法比などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0014】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1(a)〜(d)は、それぞれ、本実施形態のパワー半導体モジュールの平面図、側面図(第1側面図)、背面図、および、リード突出側の側面図(第2側面図)である。
図2は、本実施形態で、樹脂封止する際にゲートからキャビティ内(金型内)に流動樹脂を注入することを説明する模式的な平面図である。
図3は、本実施形態で、樹脂封止する際にゲートからキャビティ内(金型内)に流動樹脂を注入することを説明する模式的な側面図である。
【0015】
本実施形態のパワー半導体モジュール10では、封止樹脂12からリード14a〜fが突出している。そして、基板16上の所定位置に配置されたパワー素子18(MOS、IGBTなど)と、パワー素子18とリード14aとを接続する第1アルミワイヤ20pおよび第2アルミワイヤ20qと、基板16上の所定位置に配置された制御IC(制御素子)22と、制御IC22とリード14c〜fとをそれぞれ接続する金ワイヤ24c〜fと、を封止樹脂12内に備えている。また、制御IC22とパワー素子18とがゲートワイヤ26で接続されている。制御IC22は電気絶縁性の樹脂で基板上に接着されており、パワー素子18ははんだ付けで基板16に実装されている。
【0016】
本実施形態では、アルミワイヤはパワー素子18への電力供給用に2本配置されている。そして、パワー素子18の電極18u面における第1アルミワイヤ20pの配置位置は、封止樹脂12を形成するために注入した樹脂の流動を金ワイヤ24に対してブロックする位置にされている。具体的に説明すると、パワー素子18における制御IC22に近い側部18sの角部のうち上記流動の上流側となるIC側上流角部18kに接続された第1アルミワイヤ20pと、IC側上流角部18kに対して対角となる対角側角部18jに接続された第2アルミワイヤ20qと、が設けられている。そして、封止樹脂12を形成するために注入した樹脂が、パワー素子18のIC側上流角部18kで第1アルミワイヤ20pに当たってパワー素子18の対角側角部18jに向けて流動することで、流動樹脂がゲートG1から金ワイヤ24に直接に到達して金ワイヤ24を変形させることは回避される構造になっている。パワー素子18および制御IC22の上記所定位置は、このような回避がなされるように配慮して設定された位置である。なお、本明細書では、「パワー素子の角部」の領域(範囲)は、パワー素子を角部毎に等分した各領域(例えば、パワー素子が平面視で長方形状なら、各角部をそれぞれ含む四等分した各領域)をいう。
【0017】
図3に示すように、第1アルミワイヤ20pは、IC側上流角部18kに、パワー素子18の電極18u面(図示せず)に平行な接続部20p1で接続されている。そして、第1アルミワイヤ20pは、接続部20p1から斜め上方向(基板表面から離れる方向)に曲げられて延び出し、水平方向(基板表面に平行な方向)に向くように曲げられ、更に斜め下方向(基板表面に近づく方向)に曲げられ、リード14aに平行な接続部20p2でリード14aに接続されている。第2アルミワイヤ20qも同様である。
【0018】
そして、本実施形態では、IC側上流角部18kとリード14aとの距離が、対角側角部18jとリード14aとの距離よりも長いため、第1アルミワイヤ20pの長さが、第2アルミワイヤ20qに比べて長い。
【0019】
ゲートワイヤ26および金ワイヤ24は第1アルミワイヤ20pや第2アルミワイヤ20qに比べて細い。一例としては、第1アルミワイヤ20pや第2アルミワイヤ20qの径は何れも300〜500μmの範囲であり、金ワイヤ24c〜fの径は何れも30〜50μmの範囲である。
【0020】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果について説明する。
図3に示すように、本実施形態では、キャビティ内で流動樹脂が効果的に押し上げられるように、ゲートG1の高さ位置は、第1アルミワイヤ20pの接続部20p1の高さ位置h以下とされている。
【0021】
パワー半導体モジュール10を製造するには、まず、パワー素子18と制御IC22とを基板16上の所定位置にそれぞれ配置する素子配置工程を行う。本実施形態では、
図2に示すように、樹脂封止する際に用いる金型のゲートG1は、キャビティの角部に開口している。本実施形態では、パワー素子18および制御IC22を基板16上に配置する際、基板16を金型内に配置したときにゲートG1に近い側となる所定位置にパワー素子18を配置し、基板16を金型内に配置したときにゲートG1からパワー素子18を越えた位置となる所定位置に制御IC22を配置する。
【0022】
次に、制御IC22とリード14c〜fとをそれぞれ金ワイヤ24c〜fで接続するとともに、パワー素子18とリード14aとを第1アルミワイヤ20pおよび第2アルミワイヤ20qで接続するワイヤ接続工程を行う。このワイヤ接続工程では、第1アルミワイヤ20pおよび第2アルミワイヤ20qの配置位置を、樹脂封止するために注入した樹脂の流動を金ワイヤ24に対してブロックする位置とする。具体的には、第1アルミワイヤ20pをパワー素子18のIC側上流角部18kに接続し、第2アルミワイヤ20qをパワー素子18の対角側角部18jに接続する。また、制御IC22とパワー素子18とをゲートワイヤ26で接続する。
【0023】
その後、金型内に基板16をセットし、樹脂注入してパワー素子18および制御IC22を樹脂封止する封止工程を行う。
【0024】
この封止工程では、ゲートG1から注入された流動性の樹脂は、キャビティ内でIC側上流角部18kに到達しても、そのまま直接に金ワイヤ24(特に金ワイヤ24c)に向けて流れることは第1アルミワイヤ20pによって防止され、対角側角部18jに向けて流れるように流動方向が変更される。従って、金ワイヤ24が流動樹脂によって変形していわゆるつぶれが生じることを、部品点数を増やすことなく効果的に防止することができる。
【0025】
ここで、
図2に示すように、第1アルミワイヤ20pのゲート側の端部である接続部20p1に到達した流動樹脂は、矢印Dに示すように、ゲートワイヤ26により制御IC22のゲート側の縁部22tに案内される。そして、リード14c〜fに向けて流れ、金ワイヤ24c〜fの周囲では金ワイヤ24c〜fにほぼ沿った方向に流れる。従って、従来のように流動樹脂が金ワイヤ24c〜f(特に金ワイヤ24c)に側方から直接に当たることが回避されている。
【0026】
また、第1アルミワイヤ20pがIC側上流角部18kに接続され、第2アルミワイヤ20qが対角側角部18jに接続されているので、このような流動方向の変更を第1アルミワイヤ20pによって効率的に行うことができている。
【0027】
また、第1アルミワイヤ20pの長さは第2アルミワイヤ20qよりも長い。従って、第1アルミワイヤ20pと第2アルミワイヤ20qの線径が同じであっても、第1アルミワイヤ20pの電気抵抗が第2アルミワイヤ20qよりも大きいので、第1アルミワイヤ20pに流れる電流は第2アルミワイヤ20qに流れる電流よりも少ない。よって、第1アルミワイヤ20pが接続されているIC側上流角部18kで温度が上昇することを抑えることができるので、パワー素子18の発熱による制御IC22の温度上昇を抑えることができる。
【0028】
また、電極18u面上で第1アルミワイヤ20pの接続位置と第2アルミワイヤ20qの接続位置とが効率良く離れているので、パワー半導体モジュール10の使用時に、パワー素子18に局部的に電流集中が生じることを効率良く防止でき、パワー素子18での電流のON抵抗(入力抵抗)を効果的に抑えることができる。
【0029】
なお、
図4に示すように、制御IC22のゲート側の縁部22tの流動樹脂に対する上流側に、流動樹脂の流入を防止するブロック材28を配置してもよい。これにより、金ワイヤ24のつぶれ防止を更に効果的に行うことができる。ブロック材28としては、ダミー用のアルミワイヤであってもよい。
【0030】
また、パワー半導体モジュール10は、パワー半導体モジュール10の裏面側にパワー素子18を露出させるように封止樹脂12で封止したハーフモールドのモジュールであってもよいし、パワー素子18を封止樹脂12内に内包したフルモールドのモジュールであってもよい。
【0031】
また、
図5に示すように、第2アルミワイヤ20qの端部であってパワー素子18の電極18u面との接続部20q1の側に延長部30を設けることで、ゲートG1から注入された流動樹脂が、制御IC22のゲート側の縁部22tに案内される構成にしてもよい。これにより、本実施形態と同様、流動樹脂が金ワイヤ24c〜f(特に金ワイヤ24c)に側方から直接に当たることが回避されるので、金ワイヤ24が流動樹脂によって変形していわゆるつぶれが生じることが防止される。この場合、第1アルミワイヤ20pがIC側上流角部18kにまで延びていない構成にしてもよい。
【0032】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図6は、本実施形態で、樹脂封止する際にゲートからキャビティ内(金型内)に流動樹脂を注入することを説明する模式的な平面図である。
【0033】
本実施形態のパワー半導体モジュールでは、封止樹脂42から突出するリード44a〜fを備えている。そして、基板46上の所定位置に配置されたパワー素子48(MOS、IGBTなど)と、パワー素子48の電極(図示せず)と基板46上の配線49とを接続するアルミワイヤ50と、基板46上の所定位置に配置された制御IC(制御素子)52と、制御IC52とリード44a〜eとをそれぞれ接続する金ワイヤ54a〜eと、を封止樹脂42内に備えている。また、制御IC52とパワー素子48とが複数本の金ワイヤ56a〜dで接続されている。
【0034】
パワー素子48は第1実施形態のパワー素子18と同等の性能を有しており、制御IC52は第1実施形態の制御IC22と同等の性能を有する。アルミワイヤ50は、第1アルミワイヤ20pや第2アルミワイヤ20qと同様、パワー素子48への接続部50p1から斜め上方向に曲げられて延び出し、水平方向に向くように曲げられ、更に斜め下方向に曲げられ、配線49に平行なように曲げられてなる接続部50p2で配線49に接続されている。
【0035】
アルミワイヤ50の配置位置は、封止樹脂42を形成するために注入した樹脂の流動を金ワイヤ54、56に対してブロックする位置にされている。具体的には、流動樹脂に対し、金ワイヤ54、56の上流側にアルミワイヤ50が位置することにより、ゲートG2からの流動樹脂が金ワイヤ54、56に直接に到達して金ワイヤ54、56を変形させることは回避される構造になっている。パワー素子48および制御IC52の上記所定位置は、このような回避がなされるように配慮して設定された位置である。
【0036】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果を説明する。本実施形態では、樹脂封止する際に用いる金型のゲートG2は、流動樹脂にとって上流端側の金型壁の中央位置に開口している。本実施形態では、パワー素子48および制御IC52を基板46上に配置する際、基板46を金型内に配置したときにゲートG2に近い側となる所定位置にパワー素子18を配置し、基板46を金型内に配置したときにゲートG2からパワー素子18を越えた位置となる所定位置に制御IC22を配置する。
【0037】
次に、制御IC52とリード44a〜eとをそれぞれ金ワイヤ54a〜eで接続するとともに、パワー素子48と配線49とをアルミワイヤ50で接続するワイヤ接続工程を行う。このワイヤ接続工程では、上述したように、アルミワイヤ50の配置位置を、樹脂封止するために注入した樹脂の流動を金ワイヤ54、56に対してブロックする位置とする。
【0038】
その後、金型内に基板46をセットし、樹脂注入して、パワー素子48、アルミワイヤ50、制御IC52、金ワイヤ54、56、および、配線49を樹脂封止する封止工程を行う。
【0039】
この封止工程では、ゲートG2から注入された流動性の樹脂は、キャビティ内で制御IC52上に到達しても、そのまま直接に金ワイヤ54、56に向けて流れることはアルミワイヤ50によって防止され、アルミワイヤ50の両端部まで回り込んでから流れるように流動方向が変更される。従って、金ワイヤ54、56が流動樹脂によって変形していわゆるつぶれが生じることは、大きく防止される。