(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065717
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】グラシン紙
(51)【国際特許分類】
D21H 27/06 20060101AFI20170116BHJP
D21H 17/28 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
D21H27/06
D21H17/28
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-71766(P2013-71766)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196571(P2014-196571A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雅樹
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−287888(JP,A)
【文献】
特開平06−192992(JP,A)
【文献】
特開平04−209897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパルプ及びデンプンを含有するグラシン紙において、該デンプンが両性化デンプンであることを特徴とするグラシン紙。
【請求項2】
前記両性化デンプンの含有量が、全パルプ重量に対して1〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のグラシン紙。
【請求項3】
カチオン性薬品を含有することを特徴とする請求項1〜請求項2に記載のグラシン紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明度を向上させたグラシン紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラシン紙は、化学パルプを高度に粘状叩解した原料を紙に水分を持たせ、スーパーカレンダー等で仕上げした薄葉紙で、一般の紙より薄く透明性を有していることが大きな特徴である。このグラシン紙は、食品包装、薬包用、ラミネート加工紙などに広く使用されている。
【0003】
グラシン紙は、パルプ繊維間の空隙が一般の紙に比べて少ないことにより、紙内部での光の乱反射が抑えられるため、高い透明性を有している。グラシン紙の透明性を向上させる方法として、叩解度を上げたパルプ繊維を用いる方法があるが、ワイヤーパートでの脱水能低下による抄造難、地合不良、引裂強さの低下など問題が発生する。このため、グラシン紙の透明性を向上させる方法としては、表面を膨潤させたカチオン化デンプンを含有する方法(特許文献1)、未糊化デンプンを含有させる方法(特許文献2)などの澱粉を添加して、パルプ繊維の空隙部分に充填する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−208897
【特許文献2】特開平02−006682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グラシン紙は、セロファンなどのフィルム類に比べて、透明性が劣っており、更なる透明性を向上が求められている。また、カチオン化デンプンを含有させたグラシン紙は、パルプフロックが発生しやすく、地合不良となり、均一な透明性を得ることが困難になる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、高い透明性、良好な地合(均一な透明性)を有するグラシン紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[3]を提供する。
[1] 少なくともパルプ及びデンプンを含有するグラシン紙において、該デンプンが両性化デンプンであることを特徴とするグラシン紙。
[2] 前記両性化デンプンの含有量が、全パルプ重量に対して1〜10重量%であることを特徴とする[1]に記載のグラシン紙。
[3] カチオン性薬品を含有することを特徴とする[1]〜[2]に記載のグラシン紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い透明性、良好な地合(均一な透明性)を有するグラシン紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のグラシン紙は、高度に叩解したパルプと溶解した両性化デンプンを混合した原料を抄紙し、ウェットの状態で熱圧処理することで得ることができる。
【0010】
本発明のグラシンが優れた効果(高い透明性、均一な透明性)を発現する理由は次のように推測される。
溶解したデンプンを使用する主な目的として、パルプ繊維間の結合強化、微細繊維の歩留り向上剤として用いることであり、顆粒状デンプンはパルプ繊維間の空隙に充填することで高い透明度を得ることに用いる。溶解した両性化デンプンを使用することで、デンプン歩留りならびに微細繊維の歩留り向上を図ることができ、デンプンと微細繊維によりパルプ繊維間の充填が可能で高い透明度を得ることができる。また、カチオン基とアニオン基を有する両性化デンプンは、高度に叩解したパルプを強く凝集しないため均一な地合の形成においても効果がある。
【0011】
<パルプ>
本発明のグラシン紙を構成するパルプとして、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等の木材パルプ、亜麻パルプ、マニラ麻パルプ、ケナフパルプ等の非木材系パルプをパルプとして使用することが可能であるが、グラシン紙の透明性を向上させるためには、パルプ繊維間に生じる空隙が少ないパルプを使用することが好ましい。具体的には、針葉樹由来のパルプを使用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプを使用することがより好ましい。また、針葉樹クラフトパルプの中でも、晒クラフトパルプ(BKP)を使用することが好ましい。
【0012】
本発明のグラシン紙には、1g法ショッパーリグラー濾水度75°SR〜85°SRに叩解したパルプを使用することが好ましい。75°SR以下であると、十分な強度(引裂強度など)が発現するものの、高い透明性を得ることができない。一方、85°SR以上であると、高い透明性を得ることができるが、ワイヤーパートでの脱水不良が発生し、また、十分な引裂強さを得ることができない。
【0013】
パルプを1g法ショッパーリグラー濾水度に調成する方法は特に限定されるものではなく、クラフリン、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、ナイアガラビーター等を使用することができる。
【0014】
<両性化デンプン>
本発明において、両性化デンプンとは、4級アンモニウム(R3N+-;Nは窒素、Rは炭化水素)などのカチオン基と、カルボキシ基(―COOH)やリン酸基(―H2PO3)などのアニオン基の両方の官能基を有するデンプンである。両性化デンプンの具体例としては、タピオカ澱粉にリン酸基と4級アンモニウムを導入した両性化変性物、馬鈴薯澱粉の両性化変性物、コーン澱粉の両性化変性物などを挙げることができる。
【0015】
本発明において、両性化デンプンの配合量は、パルプ100重量%に対して、1〜10重量%であることが好ましく、2〜5重量%であることがより好ましい。添加量が1重量%未満であると十分な透明性を得ることができず、10重量%以上であると、引裂強さの低下、ドライパートのロール汚れ、ワイヤーパートの脱水性低下などの問題が発生する。
【0016】
<カチオン薬品、>
本発明のグラシン紙は、透明度の向上の点から、硫酸バンド、ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤などのカチオン性薬品を含有させることが好ましい。なお、カチオン性薬品の添加量(対パルプ絶乾重量)は、硫酸バンドであれば、0.01〜0.5重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤であれば、0.1〜2.0重量%程度であることが好ましい。
【0017】
<グラシン紙の製造>
本発明のグラシン紙の製造方法の一例としては、叩解したパルプと溶解した両性化デンプンを混合した原料を抄紙機で抄紙したシートをウェットの状態で熱圧処理することで得ることができる。
【0018】
本発明において、抄紙機は限定されるものではなく、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、コンビネーション抄紙機などを用いることができる。これらの中では、ワイヤーパートで大きな脱水能力が得られる点から長網抄紙機を使用することが好ましい。
【0019】
本発明において、熱圧処理するシートの水分量は限定されるものではないが、水分量として20〜35%であることが好ましく、より好ましくは25〜30%である。20%以下であると十分な透明性を得られることが困難であり、35%を越えると水分プロファイルの不安定化など操業上の問題を生じる。
【0020】
なお、熱圧処理するシートは、上記水分量の範囲に乾燥することで調整することができる他、上記水分量範囲以下に乾燥させたシートに水分を付与し調整することも可能である。なお、透明性の点からは、上記水分量の範囲以下にならないようにすることが好ましい。また、熱圧処理する温度、圧力は、温度:50℃〜120℃、圧力(トータル線圧):200〜6000kg/cm、熱圧処理に使用できる装置としては、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、熱プレスロール、多段スーパーカレンダーなどを使用することができ、中でも多段スーパーカレンダーを使用することが高い圧力の得られる点から好ましい。
【実施例】
【0021】
[実施例1〜6][比較例1〜2]
針葉樹晒クラフトパルプをクラフリン、ダブルディスクリファイナーで、1g法ショッパーディグラー濾水度で77°SRまで叩解し、希釈したパルプスラリー中に表―1に示す硫酸バンド、両性化デンプン(日本NSC社製)、ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤(星光PMC社製)を配合し、定法に従って米坪30.5g/m
2の手抄シートを作成し、105℃の回転ドライヤーで乾燥した後、23.5℃/50%RHの環境下で調湿し、調湿したシートを温度90℃、トータル線圧1560kgf/cm(325kgf/cm−2パス、455kgf/cm−2パス)のスーパーカレンダーで処理し、グラシン紙を製造した。
【0022】
<透明度の測定>
サーチユニットを反射型から透過型に変更したデンシトメーター MODEL TC-6MC (有限会社 東京電色、)を用いて、23℃、50%RHの条件下で調湿したグラシン紙1枚の透明度を測定した。
【0023】
<良好な地合(均一な透明性)>
紙裏より蛍光灯の光を当て、目視観察し、以下の基準で評価した。
○:パルプフロックがほとんど見られない。
△:パルプフロックが若干見られるが、実用上、問題を生じないレベル。
×:パルプフロックが多く見られ、実用上、問題を生じるレベル。
【0024】
【表1】