(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の縦割り筒状面が並列に形成されるとともに、隣接する前記縦割り筒状面の一方の側部どうしの間で谷部を形成した振動体と、該振動体の前記谷部の深さ方向に沿う振動と該振動に対応する電気信号との変換を行う変換部とを備え、前記振動体の前記谷部は、前記一対の縦割り筒状面が互いに接合する接合部分を介して形成され、該接合部分に、前記谷部の延在方向に沿って補強部が設けられており、前記変換部は、前記補強部の長さ方向の途中位置に接続され、前記補強部には、前記変換部の一部を嵌合可能なキャップが一体に設けられており、該キャップに前記変換部の一部が係合されて固定されていることを特徴とする電気音響変換器。
前記変換部の前記補強部との接続部は、前記振動体の谷部の延在方向に沿う帯状に形成されており、該接続部と前記補強部とが重ね合わされて固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気音響変換器。
前記変換部に、前記振動体の谷部の延在方向に沿う凹溝部が設けられており、前記振動体は、該凹溝部に前記補強部を係合させて固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気音響変換器。
【背景技術】
【0002】
リッフェル型スピーカは、一対の長方形の湾曲板により振動板が構成され、中高音域での指向性がよく、また、振動板の湾曲方向に沿う横方向に音が広がり、縦方向にはほとんど広がらないという特性を有する。
【0003】
このようなリッフェル型スピーカとして、従来、例えば特許文献1又は特許文献2に開示されたものがある。
特許文献1には、高分子樹脂フィルムの中央部分にボイスコイルとしての導電体パターンをプリント形成し、その中央部分を折り返し加工して接着することによって、導電体パターンを有する平板状の部分と、湾曲形状の第1,第2の振動部とを一体化して備える振動板が形成されており、この振動板の平板状の部分は磁気回路内の磁気ギャップ内に配置され、両振動部の先端は支持部材に固定された構造のスピーカが開示されている。
特許文献2には、振動板中央部が凹部を形成した状態で折り返され、その凹部内に、長円の環状に巻回された偏平なボイスコイルが配置され、そのボイスコイルを上下に離間した二つの磁気ギャップ内に配置した構造のスピーカが開示されている。このスピーカにおいても、振動板の外周部は、環状のフレーム上に固定されている。
また、特許文献3には、略断面V字型の振動板の谷底に導体を挟持し、この導体を磁界内に設置した構造のスピーカが開示されている。
さらに、特許文献4には、折曲形成された振動板の折曲部を圧電素子に直接結合した構造のスピーカが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から3に記載されるスピーカは、振動板の中央の折り返し部分に、その長さ方向に沿う長尺状のボイスコイルを取り付けて、そのボイスコイルの駆動力によって振動板を一体に駆動する構成とされていることから、ボイスコイルが特殊な形状とされ、高価になる傾向がある。
一方、特許文献4に記載されるスピーカは、振動板中央の折曲部を圧電素子に結合した構造とされており、汎用的な圧電素子をアクチュエータとして使用することができる。ところが、振動板を折り曲げただけでは、振動板とアクチュエータとの接続部に十分な剛性が確保できないため、振動板の応答性が低下してアクチュエータから振動板への駆動力の伝達が損なわれるおそれがある。
このため、特許文献4記載のスピーカでは、その第2図に示すように振動板の長さと圧電素子の直径とをほぼ同じ大きさにするか、又は、第4図に示すように多数の圧電素子を一列に並べて、その列の上に振動板を固定するようにしている。第2図に示すスピーカでは振動板が圧電素子に対応して限られた大きさのものしかできず、また、第4図に示すスピーカでは多数の圧電素子が必要になる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、一対の湾曲形成された振動面を有する振動体とボイスコイルモータ等の変換部との間で、振動体の長さ方向の全体にわたって確実に振動を伝達することができる安価な電気音響変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気音響変換器は、一対の縦割り筒状面が並列に形成されるとともに、隣接する前記縦割り筒状面の一方の側部どうしの間で谷部を形成した振動体と、該振動体の前記谷部の深さ方向に沿う振動と該振動に対応する電気信号との変換を行う変換部とを備え、前記振動体の前記谷部は、前記一対の縦割り筒状面が互いに接合する接合部分を介して形成され、該接合部分に、前記谷部の延在方向に沿って補強部が設けられており、前記変換部は、前記補強部の長さ方向の途中位置に接続され
、前記補強部には、前記変換部の一部を嵌合可能なキャップが一体に設けられており、該キャップに前記変換部の一部が係合されて固定されていることを特徴とする。
【0008】
この電気音響変換器は、振動体の接合部分に、谷部の延在方向に沿って補強部が設けられていることにより、谷部の剛性が高められている。このため、この谷部の長さ方向の途中位置に変換部が接続された構造であるにもかかわらず、谷部にたわみ等を生じることなく、振動体と変換部との間で振動体の谷部の長さ方向の全体にわたって安定して振動を伝達させることができる。したがって、本発明の電気音響変換器をスピーカに適用する場合は、変換部の駆動を振動体の長さ方向の全体にわたって確実に伝達することができ、また、本発明の電気音響変換器をマイクロホンに適用する場合も、振動体の振動を変換部に確実に伝達することができる。しかも、変換部として汎用のボイスコイルモータ等を適用することが可能であり、安価に製造することができる。
また、変換部の一部と嵌合可能なキャップを一体に形成することで、振動体と変換部とを強固に接合することができ、振動を正確かつ確実に伝達することができる。
【0009】
この場合、前記補強部は、前記一対の縦割り筒状面の一方の側部どうしを接着又は溶着することにより形成することができる。
また、前記補強部に、前記谷部の延在方向に沿って補強具を取り付けることもできる。この場合、補強部の剛性をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明の電気音響変換器において、前記変換部の前記補強部との接続部は、前記振動体の谷部の延在方向に沿う帯状に形成されており、該接続部と前記補強部とが重ね合わされて固定されているとよい。
あるいは、前記変換部に、前記振動体の谷部の延在方向に沿う凹溝部が設けられており、前記振動体は、該凹溝部に前記補強部を係合させて固定されているとよい。
これらの構造とすることにより、変換部と振動体の補強部とが強固に接続され、振動体と変換部との間で振動を正確かつ確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気音響変換器は、振動体の接合部分を谷部の延在方向に沿って補強する補強部が設けられているので、その補強部の長さ方向の途中位置に接続した変換部との間で、振動体の長さ方向の全体にわたって確実に振動を伝達することができ、しかも、変換部として汎用のボイスコイル等を適用することが可能であり、安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電気音響変換器をスピーカに適用した実施形態について図面を参照して説明する。
図1〜
図6は、本発明の第1実施形態のスピーカを示す。
この実施形態のスピーカ(電気音響変換器)は、振動体1と、この振動体1を往復駆動するアクチュエータ(変換部)2と、これら振動体1及びアクチュエータ2を支持するための支持枠3と、振動体1を支持枠3に往復移動自在に支持するエッジ部4とを備えている。
なお、
図1において、エッジ部4が設けられている側を上、アクチュエータ2が設けられている側を下とするように上下方向を設定し、後述するように矩形状に形成されている支持枠3の長辺方向を縦方向又は長さ方向、短辺方向を横方向とする。また、上方を向く面を表面、下方を向く面を裏面とし、さらに、図示したように、縦方向(長さ方向)をx方向、横方向をy方向、上下方向をz方向と称する場合もあるものとする。
【0015】
振動体1は、一対の縦割り筒状面5が並列に形成されるとともに、隣接する縦割り筒状面5の一方の側部どうしの間で谷部6を形成した表面形状とされている。図示例の振動体1は、縦割り筒状面5に沿って湾曲形成された一対の湾曲板11と、これら湾曲板11を連結する連結板12とにより構成されており、両湾曲板11の谷部6を形成している側部どうしが接合されている。連結板12は、その谷部6の両端に、谷部6全体を塞ぐように設けられている。
なお、この振動体1においては、谷部6の延在方向が縦方向又は長さ方向、これと直交する方向が横方向である。
この振動体1は、その材質が限定されるものではなく、スピーカの振動板として一般的に用いられる合成樹脂、紙、金属等の材料を用いることができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなるフィルムを真空成形することにより、比較的容易に成形することができる。
【0016】
また、湾曲板11の縦割り筒状面5は、必ずしも単一円弧面でなくてもよく、複数の曲率を連続させたもの、縦割り筒状面5の周方向(横方向)に沿う断面が放物線形状やスプライン曲線など曲率が一定ないし連続的に変化するもの、角筒状面としたもの、階段状に複数の段差部を有する形状としたものなどを採用することができ、一方向(縦割り筒状面5の周方向:横方向)に湾曲し、その一方向と直交する方向(縦割り筒状面5の縦方向)へは直線状となっている。そして、一対の湾曲板11が、その凸となる方向を同じ表面側に向けて並列に配置されるとともに、隣接する側部どうしが、接線方向を共通にして接合されている。したがって、谷部6は、両湾曲板11の間に、縦割り筒状面5の縦方向に沿う直線状に形成されている。この両湾曲板11の接合部分が補強部13となっており、この補強部13は、例えば、
図6に示すように、両湾曲板11の一側部どうしを接着することにより、谷部6の延在方向に沿う帯状に形成される。そして、この補強部13の長さ方向(縦割り筒状面5の縦方向)の途中の位置(好ましくは中央の位置)に、後述するアクチュエータ2が接続される。
また、均一な音源を得るために、
図5及び
図6に示すように、両湾曲板11を谷部6の接線Lに対して線対称に形成することが好ましい。
【0017】
アクチュエータ2は、例えばボイスコイルモータが用いられ、湾曲板11の補強部13の長さ方向の途中位置に接合されたボイスコイル20と、支持枠3に固定された磁石機構21とにより構成される。
図1及び
図2に示す例では、湾曲板11の補強部13の長さ方向に間隔をおいて2個のアクチュエータ2が設けられている。
ボイスコイル20は、円筒状のボビン20aの回りにコイル20bが巻回されたものであり、その直径方向に湾曲板11の補強部13が配置されるように、ボイスコイル20の上端と補強部13の下縁とが接着剤等を介して固着されている。そして、このボイスコイル20の外周部がダンパー22を介して支持枠3に支持されており、ボイスコイル20は支持枠3に対してボイスコイル20の軸方向に沿って往復移動自在である。ダンパー22は一般的なダイナミックスピーカに用いられる材料のものが適用される。
磁石機構21は、環状の磁石23と、この磁石23の一方の極に固定されたリング状のアウターヨーク24と、他方の極に固定されたインナーヨーク25とを備えており、インナーヨーク25の中心のポール部25aの先端部がアウターヨーク24内に配置されることにより、これらアウターヨーク24とインナーヨーク25との間に、環状に磁気ギャップ26が形成され、この磁気ギャップ26内にボイスコイル20の端部が挿入状態に配置されている。
【0018】
支持枠3は、例えば金属材により成形され、図示例では、矩形の枠状に形成されたフランジ部30と、フランジ部30の下方に延びる複数のアーム部31と、これらアーム部31の下端に形成された一対(アクチュエータ2の個数分)の環状フレーム部32とを備えている。そして、そのフランジ部30内の空間に、谷部6がフランジ部30の長辺方向と平行となるように振動体1が配置され、振動体1の周縁部、つまり両湾曲板11の補強部13とは反対側の側部及び連結板12の上端部がエッジ部4を介してフランジ部30の上面に支持されている。したがって、エッジ部4は、振動体1の外周部に対応して矩形の枠状に形成される。このエッジ部4も、一般的なダイナミックスピーカに用いられている材料のものを適用することができる。
この実施形態では、支持枠3とエッジ部4によって、振動体1を谷部6の深さ方向(z方向)に振動可能に支持する支持部35が構成されている。
【0019】
また、上記の第1実施形態の湾曲板11の補強部13は、両湾曲板11の一側部どうしを接着して帯状に形成する形態としたが、
図7〜
図15に示すように、その他の構成により振動体の補強部を形成することもできる。
図7〜
図15は、本発明の他の実施形態に用いられる振動体を示しており、これらの実施形態において、振動体以外の構成要素(アクチュエータ、支持枠、エッジ部等)は、第1実施形態と同じものが用いられるので、図示を省略し、また、各図において、第1実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する。なお、
図9及び
図11〜
図15においては、振動体と1個のアクチュエータとの接続部付近のみを示している。
図7に示す振動体1では、湾曲板11の一側部の間に他の帯板状の補強具41を介在させて接着することにより、その接着部分を直線状に保持する補強部13を形成している。この場合、湾曲板11の一側部どうしを直接接着した場合と比較して、補強具41による増強効果が得られるので、さらに補強部13の剛性を高めることができる。
この実施形態の場合は、両湾曲板11は、谷部13において補強具41の厚さ分、離間するので、それぞれ接線L1,L2を有するが、これら接線L1、L2は相互に平行であり、また、両接線L1,L2の間の中心を通る線Mを中心として線対称に形成されている。この場合、補強具41の厚さは例えば1mm以下とすることができ、縦割り筒状面5の間の平坦面の幅を小さくすることができる。あるいは、谷部6に臨む補強具41の側面を例えば横断面V字の溝状に形成することにより、縦割り筒状面5の一部を補強具41によって形成するようにしてもよい。
なお、帯板状の補強具31に代えて、ワイヤ等の補強具を両湾曲板11の接合部分に沿って固定することにより、接合部分を直線状に保持する構成としてもよい。
【0020】
また、
図8に示す振動体1では、
図8(a)に示すように、一枚のフィルムの中央部を折り返し状態(断面V字状)に成形しておき、その中央部の湾曲板11の側部どうしを、
図8(b)に示すように、加熱しながら押圧することによって溶着することにより、補強部13を直線状に形成している。
【0021】
その他、
図9及び
図10に示す振動体1のように、一対の縦割り筒状面5(湾曲板11)の一方の側部どうしを外側から一括して覆うように、横断面U字状の補強具42を両湾曲板11の接合部分11aに取り付けることにより、補強部13を形成することもできる。この場合、補強具42による増強効果が得られるので、補強部13の剛性をさらに向上させることができる。
【0022】
このように構成されたスピーカは、振動体1に固定されたアクチュエータ2のボイスコイル20にオーディオ信号に応じた駆動電流が流れると、その駆動電流によって生じる磁束変化と、磁気ギャップ26内の磁界とにより、ボイスコイル20に駆動電流に応じた駆動力が作用し、磁界と直交する方向(ボイスコイル20の軸方向、
図5では矢印で示す上下方向)にボイスコイル20を振動させる。これにより、このボイスコイル20に接続されている振動体1が、谷部6の深さ方向に沿って振動し、その縦割り筒状面5から振動による再生音が放射される。
この場合、縦割り筒状面5が振動面となるので、リッフェル型スピーカに用いられている振動板と同様に、縦割り筒状面5の周方向に沿う横方向への音の指向性が広く、縦方向には狭いという特性を有する。また、リッフェル型スピーカと同様に中高音域で広い指向性を有している。
【0023】
また、上記実施形態では、振動体1は、その外周部がエッジ部4により支持枠3に支持されているので、補強部13から外周部までの全体がアクチュエータ2によって一様に振動し、いわゆるピストンモーションによる振動が生じる。このため、ダイナミックスピーカと同様に、低音域においても高い音圧を有する。
したがって、1本のスピーカユニットにより低音域から中高音域までの可聴帯域の全域で広い指向性で再生可能なフルレンジスピーカユニットを実現することができる。このスピーカを振動体1の谷部6を連続させるように縦列状態に複数並べることにより、ラインアレイスピーカシステムを構築することができ、線音源の理想的な音空間を提供することができる。
【0024】
また、振動体1の谷部6の底部には、その谷部6の延在方向に沿って補強部13が設けられており、谷部6の剛性が高められている。そして、アクチュエータ2の円筒状のボイスコイル20の上端部と振動体1の補強部13とを固着している。このように、アクチュエータ2のボイスコイル20は、剛性が確保された補強部13を駆動する構成とされていることから、補強部13の長さ方向の途中にアクチュエータ2が接続された構造であるにもかかわらず、このアクチュエータ2の往復運動による補強部13のたわみ等を低減し、アクチュエータ2の往復運動を安定して振動体1に伝達させることができる。したがって、周波数の高い高音域においても、アクチュエータ2の駆動を振動体1に確実に伝達することができ、高音域で高い音圧を得ることができる。
しかも、本実施形態のスピーカには、アクチュエータ2として、通常のダイナミックスピーカに用いられているものを適用することができ、安価に製造することができる。
更に、前述したように両縦割り筒状面5は、その谷部6において接線Lを共通にした形状として形成されるとともに、この谷部6の接線Lと同じ方向に沿って往復振動するアクチュエータ2が接続される。このため、アクチュエータ2の往復運動を、湾曲板11の端部に効率よく印加することができ、湾曲板11を応答速度が速く、伝達時の損失も少なく駆動することができる。
また、谷部6の両端が開放状態であると、振動板1により放射された音波の一部が、その開放された空間を通って湾曲板11の裏面側に抜けていくが、連結板12により谷部6の両端が塞がれた状態となっているので、音波の湾曲板11の裏面側への抜けを防止し、振動体1の前面の全体から効率的に放音することができる。
【0025】
図11〜
図15は、本発明のスピーカを構成する振動体とアクチュエータのその他の実施形態を示している。これらの図において、第1実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
図11に示す振動体1においては、ボイスコイル20の上端部に設けられる接続部43が、振動体1の谷部6の延在方向(振動体1の長さ方向)に沿う偏平な帯状に形成されている。このボイスコイル20は、前述したように、紙等からなるボビン20aの周囲にコイル20bが巻きつけられており(
図1参照)、コイル20bよりも上方部分のボビン20aを半径方向に潰すことにより偏平な接続部43がボイスコイル20の直径方向に形成されている。そして、この接続部43と振動体1の補強部13とが重ね合わされて接着等の方法により固定されており、これら接続部43と補強部13とが面で強固に接続されることにより、振動体1にアクチュエータの駆動力を正確かつ確実に伝達することができる。
【0026】
また、
図12に示すアクチュエータのボイスコイル20は、全体が円筒形であるが、その上端部に、振動体1の谷部6の延在方向に沿う凹溝部44がボイスコイル20の直径方向に設けられており、この凹溝部44に振動体1の補強部13を係合させて固定されている。この場合、凹溝部44に補強部13を係合させているので、凹溝部44のない単なる円筒形のボイスコイルの上端に補強部13を載置して接合する場合と比べて、凹溝部44の深さの分だけ振動体1とボイスコイル20との接続面積を大きくして、これらを強固に接続することができる。
【0027】
図13及び
図14に示すアクチュエータのボイスコイル20には、ボイスコイル20の開口部を塞ぐダストキャップ51が設けられており、このダストキャップ51に振動体1を固定する構成とされる。ダストキャップ51の上面には、振動体1の谷部6の延在方向に沿う凹溝部51bが設けられ、この凹溝部51bに振動体1の補強部13を係合させて固定している。
凹溝部51bによって、ダストキャップ51に振動体1の補強部13を面によって強固に接続できるとともに、ダストキャップ51自体もボイスコイル20の開口部に面によって強固に接続できることから、振動体1にアクチュエータの駆動力を正確かつ確実に伝達することができる。
【0028】
一方、
図15に示す振動体1のように、湾曲板11の一側部が接合された補強部13に、ボイスコイル20の上端部と嵌合可能なキャップ52を一体に形成し、このキャップ52にボイスコイル20の上端部を係合して固定することによっても、アクチュエータと振動体1とを面によって強固に接続することができ、アクチュエータの駆動力を振動体1に正確かつ確実に伝達することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1実施形態における振動体を湾曲板と連結板とにより構成したが、連結板は必ずしもなくてもよい。また、連結板を設ける場合も、湾曲板の間を全面的に連結するものでなくともよく、高さ方向の上端部、下端部あるいは中間部のみを連結するものであってもよい。
また、均一な音源を得るためには両湾曲板は、谷部の中心(接線L又は中心線M)に対して線対称に形成したが、本発明においては、必ずしも線対称でなくてもよい。
上記実施形態では振動体をエッジ部により支持枠に往復移動自在に支持したが、本発明においては、エッジ部を有しないものも含むものとする。エッジ部を設けない場合は、連結板をなくした状態、あるいは谷部の下端部のみに連結板を設けた状態とし、両湾曲板の接合部分とは反対側の側部を支持枠に固定する。その固定部分では、湾曲板の側部を剛体ではなく柔軟な材質のもので挟んだ状態に固定するとよく、そのような固定構造とすることにより、湾曲板の振動が固定部分で反射することを低減することができる。
さらに、振動体を往復駆動する変換部として、ボイスコイルモータを適用したが、ボイスコイルモータに代えて、圧電素子等を用いてもよい。
また、前述の実施形態では、
図1等に示すように振動体の補強部の長さ方向(x方向)に間隔をおいて二箇所に変換部を設けたが、変換部は2個に限らず、振動体の補強部の長さ方向(x方向)の中央部に1個、あるいは補強部の長さ方向に間隔をおいて3個以上配置してもよい。
さらに、上記実施形態ではいずれも本発明をスピーカに適用したが、本発明をマイクロホンに適用することも可能である。本発明をスピーカに適用する場合は、ボイスコイルモータ等の変換部が、音声信号に基づく電気信号を振動体の振動に変換するが、本発明をマイクロホンに適用する場合も、変換部としてボイスコイルモータ等を用いることができ、その場合の変換部は、音波を受けて振動する振動体の振動を電気信号に変換する。そして、本発明を適用したマイクロホンは、縦割り筒状面が振動面であり、その振動体に補強部が設けられていることにより、その振動が確実に伝達され、感度を維持しながら指向性が良好となり、低音域から高音域まで広い周波数帯域に亘って広い指向性で収音することができる。