特許第6065883号(P6065883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065883
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】蔓性植物検知装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20170116BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H02G7/00
   G01D5/353 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-143440(P2014-143440)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-21788(P2016-21788A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】中村 里司
(72)【発明者】
【氏名】増川 一幸
(72)【発明者】
【氏名】領野 昌治
(72)【発明者】
【氏名】石谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梅木 達也
(72)【発明者】
【氏名】沖中 泰樹
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−061993(JP,A)
【文献】 特開2008−309497(JP,A)
【文献】 特開2003−314084(JP,A)
【文献】 特開2007−325420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
A01M 21/00−21/04
A01M 29/00−29/34
G01D 5/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蔓性植物検知装置であって、
一端部が電柱に固定され他端部が地面に固定されて斜めに延びる支線に装着される筒状のケース体と、
前記ケース体の内部に設けられ、ベース板と一対の回動部材と一対の回転軸とを備えるロック部と、
前記ケース体の内部に形成された凸部に当接させ、前記ケース体の内部壁面から離して前記支線に近づけるように設けられた湾曲自在の光ファイバと、
前記光ファイバの一端部に光を入力する発光部と、
前記光ファイバの他端部から出力される光を受光し、光電変換を行って受光量に応じた電気信号を出力する受光部と、
前記受光部の出力が予め設定した値より低くなった場合に検知信号を出力する検知部と、
当該検知部から出力された検知信号に前記電柱を特定するための情報を付加して外部出力する通信部と、を備え
前記ケース体は、少なくとも一方の端部に開口を有し、当該開口は、前記支線に前記ケース体が装着された場合に地面側に向けられ、
前記ロック部は、前記支線に前記ケース体が装着された状態において、前記ケース体の地面側への移動を規制し、前記電柱側への移動を許容することを特徴とする蔓性植物検知装置。
【請求項2】
前記ケース体は、前記端部に、前記開口を拡大する拡径部を有することを特徴とする請求項1記載の蔓性植物検知装置。
【請求項3】
前記ケース体は、透光性を有する部材によって構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の蔓性植物検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の支線に絡みついた蔓性植物を検知する蔓性植物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、葛などの蔓性植物が生えている場所に立設される電柱においては、その電柱を支える支線に蔓性植物が巻付いていくことが多い。この蔓性植物が、支線に絡みつきながら昇り、高圧配電線まで至ると、地絡事故を起こしたりまた架線作業に支障をきたしたりするおそれがある。このため、従来、支線に蔓巻防止装置を取り付けることにより、蔓性植物が電柱まで到達することを防止している。
【0003】
従来のこの種の技術としては、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1によれば、中心軸線上に支線を配置して装着される蔦などの巻き上がり防止装置であって、短筒状の周壁部と、周壁部の軸線方向の一方側の端部を塞ぐ底部と、周壁部の軸線方向の他方側の端部から外方に突出し、全周に延びるつば部とを含む、蔦などの巻き上がり防止装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−314084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような巻き上がり防止装置を支線に取り付けることにより、蔓性植物が支線に絡みつきながら昇っていくことを防止することができる。しかし、作業員が支線に絡みついた蔓性植物の除去や電柱周囲の草刈等を行わずにそのまま放置すると、いずれ蔓性植物が巻き上がり防止装置を乗り越え、再び支線に絡みついて支線を昇っていくおそれがある。そこで、作業員が電柱を定期的に巡視することによって、支線の状態を確認することが考えらえる。しかし、その場合、蔓性植物が絡みついていない支線も巡視することになるため効率が良くない、という問題点がある。
【0006】
このような問題点については、支線に蔓性植物を検知するために検知装置を設け、この検知装置が蔓性植物を検知した旨を、通信ネットワークを介して電力供給会社に送信することによって、作業員の巡視にかかる手間を省略することができる。しかし、検知装置は、支線上に絡みついて成長した蔓性植物を確実に検知できるような構造であり、しかも、蔓性植物以外の要因で動作しないものであることが望まれる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決し、支線に絡みつきながら昇っている蔓性植物を確実に検知するとともに、作業員等に報知することが可能な蔓性植物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0009】
(1) 一端部が電柱に固定され他端部が地面に固定されて斜めに延びる支線に装着される筒状のケース体と、当該ケース体の内部に設けられた湾曲自在の光ファイバと、前記光ファイバの一端部に光を入力する発光部と、前記光ファイバの他端部から出力される光を受光して光電変換する受光部と、前記受光部の出力が予め設定した値より低くなった場合に検知信号を出力する検知部と、当該検知部から出力された検知信号に前記電柱を特定するための情報を付加して外部出力する通信部と、を備え、前記ケース体は、片方の端部に開口を有し、当該開口は、前記支線に前記ケース体が装着された場合に地面側に向けられることを特徴とする蔓性植物検知装置。
【0010】
(1)によれば、蔓性植物が支線に絡みつきながら昇って行き、ケース体内に入り込むことによって、ケース体内の光ファイバの中央部が湾曲する。光ファイバが湾曲すると受光部における受光量が低下するため、受光部からの電気出力が低下する。そして、検知部が、受光部の電気出力が予め設定した値より低くなった場合に検知信号を出力し、この検知信号を通信部が電柱を特定するための情報を付加して外部出力する。通信部から送信された情報を電力供給会社が受信することによって、電力供給会社側で蔓性植物が絡みついている支線に対応する電柱を把握することが可能になり、蔓性植物の除去等の措置を早急に行うことが可能になる。
【0011】
(2) (1)において、前記ケース体は、前記端部に、前記開口を拡大する拡径部を有することを特徴とする蔓性植物検知装置。
【0012】
(2)によれば、支線に絡みつきながら昇って行った蔓性植物を、ケース体内に誘引することが可能になる。
【0013】
(3) (1)、(2)において、前記ケース体は、透光性を有する部材によって構成されていることを特徴とする蔓性植物検知装置。
【0014】
(3)によれば、ケース体の内部が暗い場合には、蔓性植物がケース体内に入ることを避けるおそれがあるが、ケース体は透光性を有するためにケース体の内部が明るくなるため、蔓性植物がケース体内に入るようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支線に蔓性植物が絡みつきながら昇っていることを確実に報知することが可能な蔓性植物検知装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における蔓性植物検知装置1の使用状態を示す説明図である。
図2】蔓性植物検知装置1の外観を示す斜視図である。
図3】蔓性植物検知装置1の内部構成を示す正面図である。
図4】ロック部30の構成を示す正面図である。
図5】検知ユニット50の概略構成を示す説明図である。
図6】蔓性植物検知装置1の内部に蔓性植物が侵入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における蔓性植物検知装置1の使用状態を示す説明図である。図1に示すように、蔓性植物検知装置1は、電柱200を支持するために設けられる支線210に設置され、蔦や葛のような蔓性植物が支線210に絡みついて昇っていった場合に、その蔓性植物を検知するものである。
【0019】
図2は、蔓性植物検知装置1の外観を示す斜視図、図3は、蔓性植物検知装置1の内部構成を示す正面図である。蔓性植物検知装置1は、ケース体10と、光ファイバ20と、ロック部30と、検知ユニット50と、を備えている。
【0020】
[ケース体の構造]
ケース体10は、内部に、蔓性植物の検知に用いられる光ファイバ20を収納するものであり、円筒部12と、拡径部14と、収納部16と、を備えている。ケース体10は、透光性を有する部材によって構成されている。円筒部12は、有底の円筒形状であり、一方の端部が円板状の底板12aによって閉鎖され、他方の端部に開口13が形成されている。また、底板12aの中心に、支線210を通すための孔部12bが形成されている。
【0021】
拡径部14は、截頭円錐形の筒状に形成されており、円筒部12の開口13を拡径させている。
収納部16は、円筒部12の一部を外側に突出するように形成されており、内部に、検知ユニット50を収納するためのスペースが形成されている。収納部16は、円筒部12における開口13寄りに形成されている。
【0022】
次に、ケース体10の詳細な構成について、図3を参照しながら説明する。
ケース体10は、一対の半円筒部材102、104と、蝶番部106とからなる。半円筒部材102は、半円筒部102aと、半円筒部102aの一端部を覆うように形成された板部102bと、半円筒部102aの他端部から斜め方向に広がるように形成された半拡径部102cと、を備えている。板部102bは半円形状であり、中心に半円形状の凹部が形成されている。半拡径部102cは、中空の截頭円錐を、軸方向に沿って二分割した形状である。
【0023】
半円筒部材104も、半円筒部材102と同様に、半円筒部104aと、半円筒部104aの一端部を覆うように形成された板部104bと、半円筒部104aの他端部から斜め方向に広がるように形成された半拡径部104cと、によって構成されている。板部104bは半円形状であり、中心に半円形状の凹部が形成されている。半拡径部104cは、中空の截頭円錐を、軸方向に沿って二分割した形状である。
【0024】
蝶番部106は、半円筒部材102と半円筒部材104とを開閉自在に連結するものである。ケース体10は、半円筒部材102の一方の長辺の縁部と半円筒部材104の一方の長辺の縁部とを蝶番部106によって連結した構成である。このため、ケース体10は開閉自在である。
【0025】
また、半拡径部102cにおける一方の長辺側の端部102dは、折り曲げ自在に形成されている。同様に、半拡径部104cにおける一方の長辺側の端部104dも、折り曲げ自在に形成されている。また、折り曲げ自在に形成された半拡径部102cの端部102dと、半拡径部104cの端部104dとは、例えば、粘着テープによって互いに開閉自在に連結されている。これにより、半円筒部材102と半円筒部材104とが開かれた場合に、端部102d、104dが折り畳まれ、半円筒部材102と半円筒部材104とが閉じられた場合に、端部102d、104dが開かれる。
【0026】
ケース体10は、半円筒部材102と半円筒部材104とを閉じ、両者を連結することによって組み立てられる。この時、一端側において板部102bと板部104bとの組合せによって底板12a及び孔部12bが形成される。また、他端側においては半拡径部102cと半拡径部104cとの組合せによって拡径部14が形成される。
【0027】
また、図2に示すように、半円筒部材102は、他方の長辺側に突出部102eを更に備えている。この突出部102eは、半円筒部102aの一部と、突出部102eの外壁とによって囲まれた凹状の収納スペースを備えている。半円筒部材104も、半円筒部材102と同様に、他方の長辺側に突出部104eを更に備えている。この突出部104eは、半円筒部104aの一部と、突出部104eの外壁とによって囲まれた凹状の収納スペースを備えている。
【0028】
また、突出部102eの内側における半円筒部102aの他方の長辺には切欠102fが2箇所形成されている。同様に、半円筒部104aの他方の長辺には切欠104fが2箇所形成されている。詳細については後述するが、切欠102f、104fには、光ファイバ20の両端部が嵌入される。
【0029】
そして、半円筒部材102と半円筒部材104とが組み合わされることによって、突出部102eと突出部104eとが一体となり、収納部16が形成される。収納部16の内部には、突出部102e及び突出部104eの収納スペースの組み合せによって閉スペースが形成される。
【0030】
半円筒部材102の内部には、3つのリブ108と、3つのリブ109とが立設されている。3つのリブ108は、半円筒部102aの一端部に、軸方向に一定の間隔を開けて配置されている。3つのリブ109は、半円筒部102aの他端部に、軸方向に一定の間隔を開けて配置されている。3つのリブ108と、3つのリブ109とは、互いに平行である。3つのリブ108の先端部の中央には、凹部108aが形成されている。3つのリブ109の先端部の中央には、凹部109aが形成されている。3つの凹部108a及び3つの凹部109aは同形であり、半円筒部材102を軸方向した場合、3つの凹部108a及び3つの凹部109aがそれぞれ一致する。
【0031】
半円筒部材104の内部には、3つのリブ110と、3つのリブ111とが立設されている。3つのリブ110は、半円筒部104aの一端部に、軸方向に一定の間隔を開けて配置されている。3つのリブ111は、半円筒部104aの一端部に、軸方向に一定の間隔を開けて配置されている。3つのリブ110と、3つのリブ111とは、互いに平行である。3つのリブ110の先端部の中央には、凹部110aが形成されている。3つのリブ111の先端部の中央には、凹部111aが形成されている。3つの凹部110a及び3つの凹部111aは同形であり、半円筒部材104を軸方向した場合、3つの凹部110a、3つの凹部111aがそれぞれ一致する。
【0032】
そして、半円筒部材102と半円筒部材104とが組み合わされることによって、凹部108a、109aと凹部110a、111aとが組み合わされてなる孔部が形成される。これらの孔部及び孔部12bは、円筒部12の中心軸上に位置している。また、開口13を軸方向視した場合、組み合わされた3つのリブ110と3つのリブ111の両側部が開放されており、蔓性植物は、この開放部分からケース体10の内部に進入可能である。
【0033】
また、半円筒部材102の内部における3つのリブ108の近傍に凸部120が形成されており、この凸部120の先端面にロック部30が固定される。また、この凸部120には、光ファイバ20を係止するための切り起こし(図示せず)が形成されている。
【0034】
[ロック部の構造]
図4は、ロック部30の構成を示す正面図である。図4に示すように、ロック部30は、一対の回動部材32、34と、回転軸36、38と、ベース板40と、を備えた構成である。ロック部30は、蔓性植物検知装置1が支線210に装着された状態において、蔓性植物検知装置の地面側への移動を規制し、電柱200側への移動を許容するものである。
【0035】
回動部材32は、偏心体32aと、回転伝達部材に相当するセクタ歯車32bとによって構成されている。偏心体32aは、基端部が円柱状の形成されており、偏心体32aの基端部32cの中心には、回転軸36が挿通される貫通孔(図示せず)が形成されている。また、基端部32cの一部に回転軸36に対して直角方向側に突出する突出部32dが形成されている。この突出部32dは、回転軸36に対して直角方向から逸れるように曲がって突出している。言い換えれば、偏心体32aは略勾玉形状をなしている。
【0036】
セクタ歯車32bは、回動部材32におけるベース板40に対向する面に固定される扇方をした板状の歯車である。セクタ歯車32bは、扇型の円弧部分に歯が形成されており、この扇型の中心には、貫通孔が形成されている。セクタ歯車32bは偏心体32aに対して、貫通孔同士が一致するように回動部材32に固定される。
【0037】
回動部材34は、偏心体34aと、セクタ歯車34bとによって構成されている。回動部材34は、回動部材32を鏡に映したように反転させた形状であり、偏心体34a及びセクタ歯車34bは、偏心体32a及びセクタ歯車32bを反転させた形状である。
【0038】
回転軸36は、回動部材32の基端部32cに形成された貫通孔(図示せず)に挿通され、回動部材32を回動自在に軸支する部材である。回転軸38は、回動部材34の基端部34cに形成された貫通孔(図示せず)に挿通され、回動部材32を回動自在に軸支する部材である。ベース板40は、略ホームベース形をした板状部材である。
【0039】
回動部材32、34は、ベース板40の板面上に回転軸36、38によって設置される。回動部材32と回動部材34とは、ベース板40の仮想二等分線を挟むように設置される。偏心体32aと偏心体34a及びセクタ歯車32bとセクタ歯車34bとは、ベース板40の仮想二等分線に対して線対称であり、セクタ歯車32bとセクタ歯車34bとは、ベース板40の仮想二等分線上で歯合する。このため、回動部材32と回動部材34とは連動する。すなわち、例えば回動部材32を回動させるとその動作がセクタ歯車32b及びセクタ歯車34bを介して回動部材34に伝達されて、回動部材34が回動部材32とは反対方向に回動する。このため、偏心体32aの突出部32dの先端と、偏心体34aの突出部34dの先端とは、回動部材32、34の回動によって当接したり離間したりするようになる。
【0040】
また、回動部材32の突出部分の先端と回動部材34の突出部分の先端とが、ベース板40の仮想二等分線上で当接した際、この当接位置は、二本の回転軸36、38同士を結ぶ線とベース板40の仮想二等分線との交点に対してリブ109(図3参照)側に変位した位置に設定されている。そして、半円筒部材102と半円筒部材104とが組み合わされた場合、回動部材32の突出部分の先端と回動部材34の突出部分の先端との当接位置が、円筒部12の中心軸上に位置している。
【0041】
なお、回動部材32は、図示しないばね部材によって、偏心体32aの突出部32dの先端と偏心体34aの突出部32dの先端が、ベース板40の仮想二等分線に近づく方向に回動するように付勢されている。このため、突出部32dの先端と突出部34dの先端が当接した状態で維持される。
【0042】
ロック部30が支線210に取り付けられた状態、すなわち蔓性植物検知装置1が支線210に装着された状態においては、支線210が突出部32dの先端と突出部34dの先端との間に挟まった状態で維持される。
【0043】
作業員が、ケース体10(蔓性植物検知装置1)を支線210の上方に移動させる場合には、突出部32d、34dの先端部が支線210に沿って摺動することにより、突出部32d、34dの先端部が支線210から離れる方向に回動する。これにより、突出部32d、34dの先端が下方に移動して突出部32d、34dの先端の間の幅が大きくなるため、支線210の上方へのケース体10の移動が許容される。
【0044】
また、ケース体10を支線210の下方に移動させる場合、突出部32d、34dの先端部が支線210の移動に抗する方向から摺動することにより、突出部32d、34dの先端部が支線210に近づく方向に回動する。これにより、突出部32d、34dの先端が上方に移動して突出部32d、34dの先端の間の幅が狭くなるため、支線210の下方へのケース体10の移動は規制される。このため、ケース体10が支線210の所定位置に位置付けられた場合、その位置より下がることがなくなる。
【0045】
[光ファイバの配置]
また、図2において、光ファイバ20は、ケース体10の内部で8の字が形成できる程度の長さを備えている。光ファイバ20の両端部は、半円筒部102aの切欠102f、102fと半円筒部104aの切欠104f、104fとの組合せによって形成される孔部に嵌入される。光ファイバ20の中央部は、円筒部12の内部に配置される。
【0046】
[検知ユニットの構成]
検知ユニット50は、各種の部品や回路を基板(図示せず)上に実装してなるものであり、この基板は半円筒部材102の突出部102e内に設置される。
図5は、検知ユニット50の概略構成を示す説明図である。検知ユニット50は、発光部52と、受光部54と、検知部56と、通信部58と、電源部60と、を備えている。
【0047】
発光部52は、例えばLEDからなり、突出部102eの内部に、光ファイバ20の一端面に対向するように設置される。受光部54は、光電変換素子からなり、突出部102eの内部に、光ファイバ20の他端面に対向するように設置される。発光部52からの光が、光ファイバ20によって受光部54に送られる。受光部54は、光ファイバ20の他端面から出力される光を受光し、受光量に応じた電気エネルギーの信号を出力する。
【0048】
検知部56は、受光部54の出力を監視し、出力が所定値以下になった場合に検知信号を発生するものである。通信部58は、検知信号に電柱200を特定するための情報を付加して外部出力するものである。
【0049】
電源部60は、例えば、電池からなり、発光部52、受光部54、検知部56及び通信部58に電源を供給する。
【0050】
そして、半円筒部材102と半円筒部材104とが組み合わされることによって、検知ユニット50は収納部16の内部に収納され、光ファイバ20が円筒部12の内部に収納される。
【0051】
[蔓性植物検知装置の装着作業]
次に、蔓性植物検知装置1を支線210に装着する作業について説明する。
まず、作業員は、ケース体10の半円筒部材102と半円筒部材104とを開き、光ファイバ20の片方の端部を切欠102fから抜き取る。次に、支線210に少なくとも1回巻き付けてから、再び光ファイバ20の片方の端部を切欠102fに嵌入する。更に光ファイバ20を、ロック部30が固定された凸部に形成されている切り起こし(図示せず)に係合させる。
【0052】
次に、回動部材32を回動させて、突出部32d、34dの先端間を広げた状態で維持しながら、板部102bの中央の凹部、3つの凹部108a及び3つの凹部109aの内部に支線210を載置するとともに、突出部32d、34dの先端間に、支線210を位置付ける。
【0053】
次に、作業員が、回動部材32の回動状態の維持を解除する。これにより、突出部32d、34dが支線210に当接する。そして、半円筒部材104を閉じて、半円筒部材102と半円筒部材104とを組み合わせることにより、蔓性植物検知装置1が支線210に装着される。
【0054】
[蔓性植物検知装置の動作]
次に、蔓性植物検知装置1の動作について説明する。
地上で成長した蔓性植物が支線210に到達すると、蔓性植物は支線210に絡みつきながら支線210に沿って電柱200側に延びていく。蔓性植物は、蔓性植物検知装置1に到達した後、拡径部14のガイドによって円筒部12の内部に誘引される。蔓性植物が更に成長すると、蔓性植物が円筒部12の内部の支線210に絡みついたり、円筒部12の内部が蔓性植物で満たされていったりする。これにより、光ファイバ20が、蔓性植物から圧力を受けて更に湾曲する。
【0055】
光ファイバ20が更に湾曲すると、曲げによる光損失が発生するため、受光部54における受光量が低下する。受光部54は、受光量に応じた電気エネルギーの信号を検知部56に出力する。そして、検知部56が、受光部54の出力が予め設定した値より低くなった場合に検知信号を出力する。検知信号を受信した通信部58は、検知信号に電柱200を特定するための情報を付加して外部出力する。
【0056】
通信部58から出力された検知信号は、情報ネットワーク(図示せず)を介して、電力供給会社に送られる。具体例として、電柱200から電力を引き込んでいる需要家の中にスマートメータ(図示せず)を配備している需要家がいる場合には、蔓性植物検知装置1からの検知信号をその需要家のスマートメータに送信し、スマートメータ経由で電力供給会社に検知信号を送る。
【0057】
電力供給会社においては、検知信号が発生した蔓性植物検知装置1が設置されている支線210に対応する電柱200を特定し、作業員を現地に派遣する。そして、作業員が支線210を調査し、蔓性植物が絡みついている場合には、支線210から蔓性植物を撤去する作業を行う。
【0058】
以上説明したように構成された本実施形態によれば、蔓性植物が支線210に絡みつきながら昇っていき、ケース体10内に入り込むことによって、ケース体10内の光ファイバ20が湾曲する。光ファイバ20が湾曲すると受光部54における受光量が低下するため、受光部54からの光電変換による出力が低下する。そして、検知部56が、受光部54の電気出力が予め設定した値より低くなった場合に検知信号を出力し、この検知信号を通信部58が電柱200を特定するための情報を付加して外部出力する。通信部58から送信された情報を電力供給会社が受信することによって、電力供給会社側で蔓性植物が絡みついている支線210に対応する電柱200を把握することが可能になり、蔓性植物の除去等の措置を早急に行うことが可能になる。
【0059】
また本実施形態によれば、ケース体10の端部に、開口13を拡大する拡径部14を有することにより、支線210に絡みつきながら昇っていった蔓性植物を、ケース体10の内部に誘引することが可能になる。
【0060】
また本実施形態によれば、ケース体10が透光性を有する部材によって構成されているためケース体10の内部が明るくなり、ケース体10の内部が暗いために蔓性植物がケース体10に入ることを避ける、といったことが防止できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態によれば、円筒部12と収納部16とを一体に構成されているが、円筒部12と収納部16とを別体として構成してもよい。また、検知ユニット50を円筒部12の内部に設けてもよい。
また、上述した実施形態によれば、光ファイバ20を支線210に巻き付けているが、支線210に巻き付けるか否かは、作業員が適宜決定してもよい。
【0062】
また、円筒部12の内部に、光ファイバ20を当接させ、光ファイバ20を円筒部12の内部壁面から離して支線210に近づけるような凸部を形成してもよい。これにより、ケース体10内に進入した蔓性植物によって光ファイバ20を確実に湾曲させることが可能になる。
【0063】
上述した実施形態においては、受光部54の受光量が予め設定した値より低くなった場合に、検知部56が検知信号を出力しているが、それに限らず、まず、作業員が、蔓性植物検知装置1の使用開始当初における受光部54の受光量を求め、この受光量を基準値として検知部56の記憶部(図示せず)に設定する。そして、検知部56が、基準値に対する受光量の低下率を求め、この低下率が予め設定した値より低くなった場合に検知信号を出力するようにしてもよい。上述した実施形態によれば、図1に示すように、光ファイバ20が初期状態においても湾曲しているが、複数の蔓性植物検知装置1がある場合に、全ての蔓性植物検知装置1の光ファイバ20が同じように湾曲しているとは限らない。このため、初期状態における受光部54の受光量が、個々の蔓性植物検知装置1において異なる場合がある。そこで、上述したように、蔓性植物検知装置1の使用開始当初に受光量の基準値を設定し、受光量の低下率に基づいて検知部56に検知信号を出力させることにより、光ファイバ20が、初期の湾曲状態から更に湾曲した場合に、検知部56に検知信号を出力させることが可能になる。
【符号の説明】
【0064】
1 蔓性植物検知装置
10 ケース体
12 円筒部
13 開口
14 拡径部
16 収納部
20 光ファイバ
30 ロック部
50 検知ユニット
52 発光部
54 受光部
56 検知部
58 通信部
60 電源部
200 電柱
210 支線
図1
図2
図3
図4
図5
図6