特許第6065893号(P6065893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065893
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ツース固定部材
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/28 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   E02F9/28 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-222821(P2014-222821)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-89412(P2016-89412A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦春
(72)【発明者】
【氏名】若菜 健之
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−140802(JP,A)
【文献】 実開昭62−050263(JP,U)
【文献】 特開昭61−225430(JP,A)
【文献】 米国特許第03473841(US,A)
【文献】 米国特許第02368611(US,A)
【文献】 特公昭49−033121(JP,B1)
【文献】 特公平07−006218(JP,B2)
【文献】 特開平11−107329(JP,A)
【文献】 実開昭61−128020(JP,U)
【文献】 実公昭51−035121(JP,Y1)
【文献】 特開昭56−105032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のバケットに設けられているアダプタにツース部材を固定するためのツース固定部材であって、
対向する一対の長尺面と当該一対の長尺面を繋ぐ非長尺な一対の端面とを備える柱状部材であって一方の長尺面に第1係合部が形成された柱状部材と、前記柱状部材のうち前記第1係合部以外を包囲する弾性部材とを有する弾性ピンと、
前記第1係合部に係合する第2係合部を有するロックピンと、
を備え、
前記アダプタの凸部と前記ツース部材の凹部とが嵌合する状態において、前記凸部の凸方向に交差する方向に前記凸部を貫通する貫通孔と前記凹部の対向する2面を貫通する2つの貫通孔とが同軸上に配置されて挿通孔が形成され、
前記弾性ピンは前記挿通孔に取り付けられるとともに、前記ロックピンは前記弾性ピンが取り付けられた前記挿通孔に対して更に取り付けられるように構成され、
前記一対の端面の各々には、前記一方の長尺面から遠い側の端部において前記端面と交差する方向に突起する突起部が設けられており、
前記突起部の前記一方の長尺面の側には、圧縮変形部として前記弾性部材の一部が配置されることを特徴とするツース固定部材。
【請求項2】
請求項1に記載のツース固定部材において、
前記第1係合部は、前記一方の長尺面において突出する複数の突出部を有し、
前記第2係合部は、凹凸を繰り返す波形状に形成され、複数の凹部と複数の凸部とを有し、
前記複数の突出部と前記複数の凹部とがそれぞれ嵌合することにより、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合し、
前記第2係合部の両端に位置する両端凸部の凸方向への高さは、当該両端凸部の内側に位置する内側凸部の前記凸方向への高さよりも高いことを特徴とするツース固定部材。
【請求項3】
請求項2に記載のツース固定部材において、
前記柱状部材は、前記一方の長尺面の長手方向両端が長手方向において前記突起部の先端よりも内側に配置されるように形成されていることを特徴とするツース固定部材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載のツース固定部材において、
前記ロックピンは、第1面と当該第1面の反対側に配置される第2面とを備える柱状の部材であり、
前記第1面には、前記第2係合部が設けられ、
前記第2面の長手方向の両端には、面取部と角R部とのいずれか一方が形成されていることを特徴とするツース固定部材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のツース固定部材において、
前記柱状部材は、前記一対の長尺面及び前記一対の端面を繋ぐ他の一対の長尺面を有し、
前記他の一対の長尺面には、前記他の一対の長尺面を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とするツース固定部材。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のツース固定部材において、
前記柱状部材には、前記一対の長尺面及び前記一対の端面を繋ぐ他の一対の長尺面を有し、
前記他の一対の長尺面の各々には、長手方向に延伸する溝部が形成されていることを特徴とするツース固定部材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のツース固定部材において、
前記弾性部材には、長手方向に貫通する貫通孔と、前記長手方向に交差する方向に前記柱状部材に到達しない長さを有する非貫通孔とのいずれか一方が形成されていることを特徴とするツース固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツース固定部材に関し、より詳細には、作業機械のバケットに設けられているアダプタにツース部材を固定するためのツース固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ショベル系掘削機では、掘削作業や砕土作業等の対土作業において、バケット先端にアダプタを介してツース部材が装着される。このとき、アダプタとツース部材とは、弾性ピンやロックピン等の固定部材で固定される。
【0003】
例えば、特許文献1では、非金属製弾性部材(7)が横穴(5)の上面に押しつけられるように収納された後、取付軸(6)がハンマーにより叩打され、横穴(5)に挿通される。そして、取付軸(6)の波形凹凸部が硬質ゴム製の弾性部材(7)の波形凹凸部に圧接し、相互の凹凸部同士が噛み合うように掛止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3181586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、弾性ピンの中には、剛性の高い係合部と当該係合部を覆う弾性部材とを備えて構成されるものが存在する。
【0006】
かかる弾性ピンにおいては、ロックピンの脱着がハンマーによる叩打によって行われるため、剛性の高い係合部と弾性部材との接合部分に亀裂が生じ、係合部と弾性部材とが分離する可能性が有り、耐久性の面で改善の余地が有る。
【0007】
そこで本発明は、剛性の高い係合部と弾性部材とを備える弾性ピンの耐久性を向上させることが可能なツース固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械のバケットに設けられているアダプタにツース部材を固定するためのツース固定部材であって、対向する一対の長尺面と当該一対の長尺面を繋ぐ非長尺な一対の端面とを備える柱状部材であって一方の長尺面に第1係合部が形成された柱状部材と、前記柱状部材のうち前記第1係合部以外を包囲する弾性部材とを有する弾性ピンと、前記第1係合部に係合する第2係合部を有するロックピンとを備え、前記アダプタの凸部と前記ツース部材の凹部とが嵌合する状態において、前記凸部の凸方向に交差する方向に前記凸部を貫通する貫通孔と前記凹部の対向する2面を貫通する2つの貫通孔とが同軸上に配置されて挿通孔が形成され、前記弾性ピンは前記挿通孔に取り付けられるとともに、前記ロックピンは前記弾性ピンが取り付けられた前記挿通孔に対して更に取り付けられるように構成され、前記一対の端面の各々には、前記一方の長尺面から遠い側の端部において前記端面と交差する方向に突起する突起部が設けられており、
前記突起部の前記一方の長尺面の側には、圧縮変形部として前記弾性部材の一部が配置されることを特徴とするツース固定部材を提供している。
【0009】
また、前記第1係合部は、前記一方の長尺面において突出する複数の突出部を有し、前記第2係合部は、凹凸を繰り返す波形状に形成され、複数の凹部と複数の凸部とを有し、前記複数の突出部と前記複数の凹部とがそれぞれ嵌合することにより、前記第1係合部と前記第2係合部とが係合し、前記第2係合部の両端に位置する両端凸部の凸方向への高さは、当該両端凸部の内側に位置する内側凸部の前記凸方向への高さよりも高いのが好ましい。
【0010】
また、前記柱状部材は、前記一方の長尺面の長手方向両端が長手方向において前記突起部の先端よりも内側に配置されるように形成されているのが好ましい。
【0011】
また、前記ロックピンは、第1面と当該第1面の反対側に配置される第2面とを備える柱状の部材であり、前記第1面には、前記第2係合部が設けられ、前記第2面の長手方向の両端には、面取部と角R部とのいずれか一方が形成されているのが好ましい。
【0012】
また、前記柱状部材は、前記一対の長尺面及び前記一対の端面を繋ぐ他の一対の長尺面を有し、前記他の一対の長尺面には、前記他の一対の長尺面を貫通する貫通孔が形成されているのが好ましい。
【0013】
また、前記柱状部材には、前記一対の長尺面及び前記一対の端面を繋ぐ他の一対の長尺面を有し、前記他の一対の長尺面の各々には、長手方向に延伸する溝部が形成されているのが好ましい。
【0014】
また、前記弾性部材には、長手方向に貫通する貫通孔と、前記長手方向に交差する方向に前記柱状部材に到達しない長さを有する非貫通孔とのいずれか一方が形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のツース固定部材によれば、柱状部材の一対の端面の各々に突起部が設けられると共に、当該突起部の一方の長尺面の側に圧縮変形部が配置されるので、弾性ピンの耐久性を向上させることが可能である。
【0016】
請求項2記載のツース固定部材によれば、弾性ピンとロックピンとをより強固に固定することが可能である。
【0017】
請求項3記載のツース固定部材によれば、圧縮変形部を確実に確保することが可能である。
【0018】
請求項4記載のツース固定部材によれば、アダプタとツース部材との接続部分に段差が存在する場合に、第2面の両端に形成された面取部又は角R部を介して、ロックピンが段差をスムーズに上ることが可能である。
【0019】
請求項5記載のツース固定部材によれば、柱状部材に形成された貫通孔内に弾性部材を設けることにより、柱状部材と弾性部材との引っ掛かりを増やすことが可能である。
【0020】
請求項6記載のツース固定部材によれば、柱状部材の他の一対の長尺面の各々に溝部に弾性部材を設けることにより、柱状部材と弾性部材との引っ掛かりを増やすことが可能である。
【0021】
請求項7記載のツース固定部材によれば、弾性ピンが圧縮された場合に、弾性部材の逃げを確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを示す側面図。
図2】アタッチメント先端に装着されるバケットを示す斜視図。
図3】アダプタ、ツース及び固定部材を示す斜視図。
図4図3のIV矢視図。
図5】弾性ピンとロックピンとが係合した状態を示す斜視図。
図6図5のVI−VI線断面図。
図7】弾性ピンの柱状部材を示す(A)上面図及び(B)側面図。
図8】ロックピンを示す側面図。
図9】ロックピン挿入開始直後の様子を示す概念図。
図10】弾性ピンの弾性部材がロックピンにより圧縮される様子を示す概念図。
図11】ロックピンと弾性ピンとが係合する直前の様子を示す概念図。
図12】ロックピンと弾性ピンとが係合した様子を示す概念図。
図13】ロックピン取外開始直後の様子を示す概念図。
図14】弾性ピンの弾性部材がロックピンにより圧縮される様子を示す概念図。
図15】ロックピンが挿通孔から取り外された様子を示す概念図。
図16】第1変形例に係る柱状部材の形状を示す図。
図17】第2変形例に係る柱状部材の形状を示す図。
図18】第3変形例に係る柱状部材の形状を示す(A)上面図及び(B)側面図。
図19】第4変形例に係る柱状部材の形状を示す図。
図20】第5変形例に係る弾性部材の形状を示す(A)上面図及び(B)側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<1.実施形態>
<1−1.構成>
本発明の実施形態によるツース固定部材について図1乃至図15に基づき説明する。以下、作業機械の一例として、油圧ショベル1を例にとって説明する。また、ツース固定部材の一例として、弾性ピン8及びロックピン9を例にとって説明する。
【0024】
図1に示すように、油圧ショベル1は、ショベル系掘削機であり、クローラ式の下部走行体2と上部旋回体3とを備えて構成される。
【0025】
上部旋回体3は、下部走行体2上に搭載されており、下部走行体2に対して鉛直軸まわりに旋回することが可能である。上部旋回体3には作業アタッチメント4が設けられており、作業アタッチメント4の先端にはバケット5が装着されている。
【0026】
図2に示すように、バケット5の先端縁部5eには、アダプタ6(6a〜6e)を介してツース7(7a〜7e)が取り付けられる。
【0027】
図3に示すように、アダプタ6は、方向DR1に凸な凸部61を備えている。アダプタ6の凸部61には、方向DR1(凸方向)に交差する方向に貫通する貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、弾性ピン8に対応する形状を有する弾性ピン挿入孔63aと、ロックピン9に対応する形状を有するロックピン挿入孔63bとから構成され、全体としてかぎ穴形状を有している。
【0028】
図4に示すように、ツース7は、アダプタ6の凸部61を挿脱可能な凹部71を備えている。ツース7の凹部71には、互いに対向する上面72a及び下面72bをそれぞれ貫通する2つの貫通孔73a,73bが形成されている。
【0029】
アダプタ6の凸部61とツース7の凹部71とが嵌合すると、凸部61の貫通孔63(より詳細にはロックピン挿入孔63b)と凹部71の貫通孔73a,73bとが同軸上に配置され、弾性ピン8及びロックピン9を取り付けるための挿通孔10(図9参照)が形成される。なお、図5及び図12に示すように、弾性ピン8及びロックピン9は、挿通孔10に取り付けられた状態において互いに係合する。
【0030】
弾性ピン8は、図6の断面図に示すように、金属製の柱状部材81と、柱状部材81の大部分を包囲する弾性部材83とを備えて構成される。
【0031】
図7(A)(B)に示すように、柱状部材81は、一対の長尺面L1,L2、及び長尺面L1,L2を繋ぐ非長尺な一対の端面S1,S2を備えている。さらに、柱状部材81は、長尺面L1,L2及び端面S1,S2を繋ぐ一対の側面N1,N2を備えている。なお、図7(A)は柱状部材81の上面図であり、図7(B)は柱状部材81の側面図である。
【0032】
長尺面L1は平坦な面である。一方、長尺面L2には、その面に直交する方向に突出する円弧状の係合部813(813a〜813c)が形成されている。なお、柱状部材81のうち係合部813a〜813c以外は、図6に示す弾性部材83により包囲される。
【0033】
また、図7に示すように、端面S1,S2の各々には、突起部811,812が設けられている。突起部811,812は、長尺面L2から遠い側の端部に設けられており、端面S1,S2に対して直交する方向に突起している。
【0034】
続いて、ゴム製の弾性部材83について説明する。弾性部材83は、柱状部材81のうち係合部813a〜813以外を包囲するための部材である。図6に示すように、弾性部材83には、長手方向(ここでは図面上下方向)に直交する方向に柱状部材81に到達しない長さを有する非貫通孔831a〜831cが形成されている。これら3つの非貫通孔831a〜831cが形成されることにより、弾性ピン8が圧縮された場合に、弾性部材83の逃げを確保することが可能である。
【0035】
また、図6に示すように、突起部811の長尺面L2(図7)の側には、圧縮変形部84として弾性部材83の一部が配置されている。同様に、突起部812の長尺面L2(図7)の側にも、圧縮変形部85として弾性部材83の一部が配置されている。さらに、長尺面L1(図7)側には長手方向に延びる変形部86として弾性部材83の一部が配置されている。
【0036】
図5及び図8に示すように、ロックピン9は、係合部91を備える面L3と、面L3の反対側に配置される面L4とを備える柱状の部材である。
【0037】
係合部91は、4つの凸部911a〜911dと、3つの凹部912a〜912cとを備えて構成され、凹凸を繰り返す波形状を有している。
【0038】
図8に示すように、係合部91の両端に配置される両端凸部911a,911dの凸方向の高さは、両端凸部911a,911dの内側に配置される内側凸部911b,911cの当該凸方向における高さよりも高い。これにより、弾性ピン8及びロックピン9を挿通孔10に取り付けた際、両者を強固に係合させることが可能である。
【0039】
また、図8に示すように、ロックピン9の面L4の長手方向の両端には、面取部93,94がそれぞれ形成されている。なお、面取部93,94については、弾性ピン8及びロックピン9の脱着動作の説明で詳述する。
【0040】
<1−2.脱着動作>
次に、図9図15を参照しつつ、弾性ピン8及びロックピン9の脱着動作について詳細に説明する。なお、説明の都合上、図9図15では、アダプタ6及びツース7を断面図で表し、弾性ピン8及びロックピン9を側面図で表している。
【0041】
まず、図3に示すアダプタ6の弾性ピン挿入孔63aに対して弾性ピン8が取り付けられる。このとき、弾性ピン8は、柱状部材81の係合部813a〜813cが凸部61の凸方向(方向DR1)とは反対側を向くように装着される。その結果、弾性部材83の変形部86(図6)は、凸部61の凸方向側に配置される。
【0042】
その後、図9に示すように、アダプタ6の凸部61とツース7の凹部71とを嵌合し、弾性ピン8が取り付けられた挿通孔10に対してロックピン9が更に取り付けられる。
【0043】
具体的には、ロックピン9が挿通孔10に対して徐々に挿入されると、図10に示すように、ロックピン9の凸部911dが柱状部材81の係合部813aに当接し、柱状部材81がロックピン9に圧迫される。その結果、柱状部材81を包囲する弾性部材83が変形し、柱状部材81は図面左方向に傾斜する。このとき、圧縮変形部84は柱状部材81により図面上方向に圧縮され、圧縮変形部85は柱状部材81により図面右方向に圧縮される。このとき、変形部86も、柱状部材81の傾斜に伴って圧縮される。
【0044】
また、図10に示すように、アダプタ6とツース7との接続部分には段差UN1,UN2が存在するため、ロックピン9自体も若干図面左方向に傾斜した状態で挿入される。
【0045】
この後、ロックピン9を更に挿入していくと、柱状部材81の係合部813a〜813cに当接するロックピン9の係合部91の凹凸に応じて、弾性部材83が適宜変形し、柱状部材81の傾斜もその都度変更される。
【0046】
そして、ロックピン9の面L4の端部が下側の段差UN2に当接すると、図11に示すように、ロックピン9の端部に形成された面取部94を利用して段差UN2を上り、ロックピン9の傾斜が徐々に小さくなる。
【0047】
そして、最終的には、図12に示すように、柱状部材81の係合部813a〜813c(図7参照)と、ロックピン9の係合部91(図8参照)とが係合する。そして、アダプタ6の凸部61とツース7の凹部71とが固定される。
【0048】
その後、挿通孔10に取り付けられた弾性ピン8及びロックピン9を取り外す場合は、図12に示すロックピン9を図面上側からハンマーで叩打する。
【0049】
ロックピン9が叩打されると、図13に示すように、ロックピン9の凸部911a,911b,911c(図8)が柱状部材81の係合部813a,813b,813c(図7)にそれぞれ当接し、柱状部材81がロックピン9に圧迫される。その結果、柱状部材81を包囲する弾性部材83が変形し、柱状部材81は図面左方向に傾斜する。
【0050】
この後、図14に示すように、ロックピン9の凸部911aが柱状部材81の係合部813cに当接すると、今度は、柱状部材81が図面右方向に傾斜する。このとき、圧縮変形部84は柱状部材81により図面右方向に圧縮され、圧縮変形部85は柱状部材81により図面下方向に圧縮される。そして、最終的には,図15に示すように、ロックピン9が挿通孔10から完全に取り外される。
【0051】
<1−3.効果>
以上説明したように、本実施形態では、図7に示すように、柱状部材81の端面S1,S2の各々に突起部811,812が設けられている。また、図6に示すように、突起部811,812の長尺面L2側には、圧縮変形部84,85がそれぞれ配置されている。
【0052】
そのため、ロックピン9を徐々に挿入していくと、弾性部材83が圧縮されて変形して柱状部材81が傾斜し、ロックピン9を挿入するための挿入スペースを確保することが可能である。
【0053】
特に、本実施形態では、図6に示すように、長尺面L1側の変形部86のみならず、突起部811,812の長尺面L2側に圧縮変形部84,85が設けられている。そのため、ロックピン9の脱着時において、柱状部材81と弾性部材83との接合部分にかかる負荷が低減する。また、変形部86と共に圧縮変形部84,85が圧縮されることにより、柱状部材81をより柔軟に傾斜させ、ロックピン9を滑らかに脱着することが可能である。
【0054】
また、圧縮変形部84,85が存在することで、柱状部材81と、柱状部材81を包囲する弾性部材83との接合部分に亀裂や剥離が生じ難くなり、弾性ピン8の耐久性を向上させることも可能である。
【0055】
また、仮に、柱状部材81と弾性部材83との接合部分に亀裂が生じたとしても、突起部811,812が引っ掛かりとして機能するため、柱状部材81が弾性部材83から脱落せずに済む。
【0056】
また、本実施形態では、図8に示すように、ロックピン9の係合部91は、両端の凸部911a,911dの凸方向の高さが内側の凸部911b,911cの当該凸方向における高さよりも高くなるように形成されている。そのため、ロックピン9と弾性ピン8とを強固に係合することが可能である。
【0057】
また、本実施形態では、図8に示すように、ロックピン9の面L4の両端に面取部93,94が形成されている。そのため、図11に示すように、ロックピン9は、面取部94を介して、アダプタ6とツース7との接合部分に生じた段差UN2をスムーズに上ることが可能である。その結果、ロックピン9を挿通孔10に対して滑らかに挿入することが可能になる。
【0058】
また、本実施形態では、図6に示すように、弾性部材83には、長手方向(図面上下方向)に直交する方向(図面左右方向)に柱状部材81に到達しない長さを有する非貫通孔831a〜831cが形成されている。そのため、弾性ピン8が圧縮された場合に、弾性部材83の逃げを確保することが可能である。
【0059】
<2.変形例>
本発明によるツース固定部材は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、図7に示すように柱状部材81の端面S1,S2が長尺面L1,L2に対して直交する場合を例示したが、これに限定されず、ロックピン9の係合部の形状に応じて、端面の傾斜角度を変更するようにしてもよい。
【0061】
具体的には、図16に示すように、長尺面L1から長尺面L2に向かう方向において端面S11が上側に傾斜すると共に、同方向において端面S12が下側に傾斜するようにしてもよい。ただし、図16に示すように、長尺面L2の両端部H1,H2が長手方向において突起部811,812の先端よりも内側に配置されるのが好ましい。突起部811,812の長尺面L2の側に圧縮変形部84,85をそれぞれ確保するためである。
【0062】
また、上記実施形態では、図7に示すように、弾性ピン8の係合部813a〜813cが円弧状に突出する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図17に示すように、両端に配置される係合部814a,814cの円弧部分(湾曲部分)の一部が水平な端面S1,S2に沿って途中で切り落とされたような形状を有するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、図7に示すように、長尺面L1,L2及び端面S1,S2を繋ぐ側面N1,N2が平らな形状を有する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、長尺面L1,L2及び端面S1,S2を繋ぐ側面N11,N12の各々に対して長手方向に延伸する溝部M1,M2を形成するようにしてもよい。かかる変形例によれば、柱状部材と弾性部材との引っ掛かりが増えるので、柱状部材をより強固に保持することが可能である。そのため、柱状部材と弾性部材との接合部分に亀裂が生じた場合であっても、当該柱状部材の脱落を抑制することが可能である。
【0064】
あるいは、図19に示すように、側面N11,N12を貫通する3つの貫通孔K1〜K3を形成するようにしてもよい。かかる変形例においても、柱状部材と弾性部材との引っ掛かりが増えるので、柱状部材をより強固に保持することが可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、図6に示すように、弾性部材83に非貫通孔831a〜831cが形成される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図20に示すように、弾性部材83の長手方向に貫通する貫通孔832を形成するようにしてもよい。
【0066】
かかる変形例によれば、弾性ピン8が圧縮された場合に、弾性部材83の逃げを確保することが可能である。したがって、ロックピン9の脱着性が向上する。
【0067】
また、上記実施形態では、図8に示すように、ロックピン9の面L4に面取部93,94が形成される場合を例示したが、これに限定されず、角部が丸められた角R部が形成されるようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、弾性ピン8及びロックピン9を備えるツース固定部材がアダプタ6とツース7とを固定する場合を例示したが、これに限定されず、アダプタとツース盤とを固定するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、弾性部材83により包囲される部材として、略四角柱形状を有する柱状部材81(図7参照)を例示したが、これに限定されない。柱状部材81の係合部813a〜813c及び突起部811,812に相当する部分を備え、図7(A)の上下方向に比較的薄い板状部材を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように本発明にかかるツース固定部材は、例えば、作業機械のバケットに設けられたアダプタにツースやツース盤を固定するのに適している。
【符号の説明】
【0071】
1 油圧ショベル、2 下部走行体、3 上部旋回体、4 作業アタッチメント、
5 バケット、5e 先端縁部、6 アダプタ、7 ツース、8 弾性ピン、
9 ロックピン、10 挿通孔、61 凸部、63 貫通孔、71 凹部、
72a 上面、72b 下面、73a,73b 貫通孔、81 柱状部材、
83 弾性部材、84,85 圧縮変形部、86 変形部、91 係合部、
93,94 面取部、811,812 突起部、813a,813b,813c 係合部、
814a,814c 係合部、832 貫通孔、911a,911b,911c 凸部、
DR1 方向、H1,H2 端部、K1〜K3 貫通孔、L1,L2 長尺面、
L3,L4 面、M1,M2 溝部、N1,N2 側面、N11,N12 側面、
S1,S2 端面、S11,S12 端面、UN1,UN2 段差
図1
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