(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリテトラフルオロエチレン組成物は、ポリテトラフルオロエチレン粒子としてポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを含み、かつ、平均粒子径が100〜1000μmである請求項1、2又は3記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
ポリテトラフルオロエチレン組成物は、ポリテトラフルオロエチレン粒子としてポリテトラフルオロエチレンモールディングパウダーを含み、かつ、平均粒子径が1〜2000μmである請求項1、2又は4記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、依然として、フィブリル化性を有するポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーやモールディングパウダーの流動性を改善するための簡便かつ有効な方法が望まれている。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、フィブリル化性を有しながらも高い流動性を有するポリテトラフルオロエチレン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー又はモールディングパウダーに、無機化合物又は有機化合物の粉末を添加すれば、これらの流動性を向上できると推測した。
【0009】
フィブリル化性を有するポリテトラフルオロエチレン以外の材料からなる粒子の流動性を改善させるために、無機化合物又は有機化合物の粉末を添加する技術はいくつか知られている。
【0010】
例えば、特許文献3には、粉末ゴムの表面の少なくとも一部を、固結防止剤としてのタルクで覆うことにより、粉末ゴムどうしが固結することなく、粉末ゴムに流動性を与えてハンドリング性を向上することができることが記載されている。
【0011】
また、特許文献4には、薬効成分又は薬効成分と希釈剤からなる表面改質用粉体の表面に物理的に付着して、該粉体の流動性を向上させる表面改質基材として、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、デンプン、酸化チタン、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、含水二酸化ケイ素、炭酸カルシウム等が記載されている。
【0012】
また、特許文献5には、フッ素樹脂凝集防止材を使用して、フッ素樹脂自身の凝集やフッ素樹脂同士の凝集を顕著に緩和することが記載されている。上記フッ素樹脂は、メルトフローインデックスを有する溶融加工可能なフッ素樹脂であり、フィブリル化性を有するものではない。上記フッ素樹脂凝集防止材として、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、グラファイト、チタン酸カリウムウィスカー等とともに、シリカが例示されている。
【0013】
上記の公知技術をフィブリル化性を有するポリテトラフルオロエチレンに適用して検討したものの、フィブリル化性を有するポリテトラフルオロエチレンは、繊維化しやすいという他の化合物にはない特性を有するものであり、従来公知の粉末では、ポリテトラフルオロエチレン粒子の凝集を充分に防止できないことが判明した。
【0014】
更に、特許文献6には、スチレン−アクリロニトリル(SAN)共重合体等の重合体又は共重合体によって全体的又は部分的に封入されたテトラフルオロエチレン重合物を含有する自由流動性粉末の形態のポリマーブレンドが記載されている。しかし、テトラフルオロエチレン重合物に対して質量比で4割以上の重合体又は共重合体を使用する必要があり、テトラフルオロエチレン重合体が有する優れた特性を成形体に付与することが容易でない。また、SAN共重合体を含むことから、成形すると黄色に変色してしまうという欠点があった。
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を鋭意検討した結果、特定のシリカ粒子を使用すると、その使用量が少量であって、しかもポリテトラフルオロエチレンがフィブリル化性を有するものであっても、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー及びモールディングパウダーの流動性が格段に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。更に、特定のシリカ粒子を添加したポリテトラフルオロエチレン粒子を成形しても、製品には黄変が観られず、美麗な成形体を得ることができることも同時に見出された。
【0016】
すなわち、本発明は、フィブリル化性を有するポリテトラフルオロエチレン粒子及び合成非晶質シリカ粒子を含むポリテトラフルオロエチレン組成物であって、上記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー又はポリテトラフルオロエチレンモールディングパウダーであり、上記合成非晶質シリカ粒子は、乾式法で作られたものであり、平均一次粒子径が200nm未満であり、上記ポリテトラフルオロエチレン粒子の表面に上記合成非晶質シリカ粒子が付着していることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0017】
上記合成非結晶シリカ粒子は、表面に親水性基を有することが好ましい。
【0018】
上記合成非晶質シリカ粒子は、表面が疎水化処理されていることも好ましい。
【0019】
上記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、平均粒子径が100〜1000μmのポリテトラフルオロエチレンファインパウダーであることが好ましい。
【0020】
上記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、平均粒子径が1〜2000μmのポリテトラフルオロエチレモールディングパウダーであることも好ましい。
【0021】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、上記ポリテトラフルオロエチレン粒子として上記ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを含み、かつ、平均粒子径が100〜1000μmであることが好ましい。
【0022】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、上記ポリテトラフルオロエチレン粒子として上記ポリテトラフルオロエチレンモールディングパウダーを含み、かつ、平均粒子径が1〜2000μmであることも好ましい。
【0023】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、上記ポリテトラフルオロエチレン粒子及び上記合成非晶質シリカ粒子を、乾式混合又は湿式混合して得られるものであることが好ましい。
【0024】
上記ポリテトラフルオロエチレン粒子100質量部に対して上記合成非晶質シリカ粒子が0.01〜10質量部であることが好ましい。
【0025】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、粉体流動性評価において、ふるい通過量が50%以上に到達する時間が50秒以下であることが好ましい。
【0026】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、粉体流動性評価において、ふるい通過量が80%以上に到達する時間が30秒以下であることが好ましい。
【0027】
本発明は、上述のポリテトラフルオロエチレン組成物から得られることを特徴とする成形体でもある。
【0028】
本発明は、上述のポリテトラフルオロエチレン組成物、並びに、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする組成物でもある。
【0029】
本発明は、上述の組成物から得られることを特徴とする成形体でもある。
【発明の効果】
【0030】
本発明のポリテトラフルオロエチレン組成物は、上記構成を有することから、高い流動性を有している。また、本発明のポリテトラフルオロエチレン組成物は、少量のシリカ粒子を含む場合であっても高い流動性を有している。従って、ポリテトラフルオロエチレンに期待される優れた特性を充分に発揮する成形体を得ることができる。更に、本発明のポリテトラフルオロエチレン組成物を成形しても、黄変が生じず、美麗な成形体を得ることができる。
【0031】
本発明のポリテトラフルオロエチレン成形体は、ポリテトラフルオロエチレンの優れた特性を有しており、外観にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物は、PTFE粒子及び合成非晶質シリカ粒子を含み、上記PTFE粒子の表面に合成非晶質シリカ粒子が付着していることを特徴とする。上記PTFE粒子は、PTFEファインパウダー又はPTFEモールディングパウダーである。
【0035】
上記PTFE粒子の表面に上記合成非晶質シリカ粒子が付着していることは、上記PTFE組成物を電子顕微鏡を使用して観察することにより確認することができる。
【0036】
上記PTFE組成物は、製造が容易であり、流動性にも優れることから、上記PTFE粒子及び上記合成非晶質シリカ粒子を、乾式混合又は湿式混合して得られたものであることが好ましい。
【0037】
上記乾式混合する方法としては、乾燥されたPTFE二次粒子に乾燥した合成非晶質シリカ粒子を混合する方法、乾燥されたPTFE二次粒子に合成非晶質シリカ粒子水溶液をパウダー噴霧し更に乾燥する方法等を挙げることができる。
上記湿式混合する方法としては、水性分散液中のPTFEの一次粒子を凝析させて二次粒子にした後、乾燥させることなく、上記合成非晶質シリカ粒子を添加してPTFE粒子表面に合成非晶質シリカ粒子を付着させた後に、洗浄乾燥して粉末を得る方法等を挙げることができる。また、上記湿式混合する方法としては、上記合成非晶質シリカ粒子を含有する分散液にPTFEのファインパウダー又はモールディングパウダーを添加した後に凝析を行い粉末を得る方法等を挙げることができる。
【0038】
上記PTFEファインパウダーと合成非晶質シリカとの混合において、PTFEの一次粒子を含有する分散液に合成非晶質シリカ粒子を添加した後に凝析を行い粉末を得る方法、及び、PTFEの一次粒子を含有する分散液と合成非晶質シリカ粒子を含有する分散液とを混合した後に凝析を行い粉末を得る方法では、PTFEファインパウダーの二次粒子の内部に合成非晶質シリカ粒子がとり込まれたPTFE組成物が得られ、本発明のPTFE組成物を製造することができない。
【0039】
上記PTFE組成物は、流動性に優れることから、乾燥粉末であることが好ましい。
【0040】
上記PTFE組成物は、上記PTFE粒子として上記PTFEファインパウダーを含み、かつ、平均粒子径が100〜1000μmであることが好ましい。上記平均粒子径は、300μm以上であることがより好ましく、700μm以下であることがより好ましい。
【0041】
上記PTFE組成物は、上記PTFE粒子として上記PTFEモールディングパウダーを含み、かつ、平均粒子径が1〜2000μmであることも好ましい。上記平均粒子径は、1000μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることが更に好ましい。
【0042】
上記PTFE組成物の平均粒子径は、JIS K6891に準拠して測定する。
【0043】
上記PTFE組成物において、上記PTFE粒子100質量部に対して上記合成非晶質シリカ粒子が0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。上記合成非晶質シリカ粒子が少なすぎると、PTFE組成物の流動性が劣るおそれがある。上記合成非晶質シリカ粒子が多すぎると、PTFE組成物を成形して得られる成形体の物性を損なうおそれがある。
【0044】
上記PTFE組成物は、合成非晶質シリカ粒子を含む。シリカには天然品と合成品があり、合成品の中に結晶質のものと非晶質のものがある。その合成非晶質シリカには燃焼法やその副生成物から得られる乾式法により作られるものと、沈殿法やゲル法、またはゾルゲル法等の湿式法により作られるものがある。上記合成非晶質シリカは、乾式法からつくられたものでよい。上記乾式法で作られた合成非晶質シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ粒子が挙げられる。
【0045】
上記合成非晶質シリカ粒子は、平均一次粒子径が200nm未満であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、5nm以上であることが好ましい。平均一次粒子径が上記範囲内にあることにより、上記合成非晶質シリカ粒子が満遍なく上記PTFE粒子の表面に付着しやすく、より一層高い流動性を有するPTFE組成物が得られる。
【0046】
上記合成非晶質シリカ粒子の平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡にて撮影した画像を解析することにより測定することができる。
【0047】
上記合成非晶質シリカ粒子は、表面に親水性基を有するものであることが好ましい。上記親水性基としては、水酸基、シラノール基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。上記合成非晶質シリカ粒子の表面の親水性基は、合成非晶質シリカが本来有する親水性基であってもよいし、公知の方法で導入した親水性基であってもよい。
【0048】
上記合成非晶質シリカ粒子は、PTFE組成物の流動性がより一層優れることから、表面が疎水化処理されていることも好ましい。疎水化処理することにより、上記合成非晶質シリカ粒子の表面に疎水性基が導入される。疎水化処理は、全ての親水性基を疎水性基に変換するものであってもよいし、一部の親水性基を疎水性基に変換するものであってもよい。疎水化処理した合成非晶質シリカは、疎水化処理していない合成非晶質シリカ粒子よりも高い流動性が実現できる。
【0049】
疎水化処理の方法として、水を含む液状媒体中でシランカップリング剤及びオルガノシラザンによって合成非晶質シリカ粒子の表面を処理する方法、不活性ガス雰囲気下で処理剤を噴霧する方法、原体シリカ粉末を非反応性シリコーンオイルにより表面処理する方法等が挙げられる。原体シリカ粉末を非反応性シリコーンオイルにより表面処理する方法としては、特開2014−162681号公報に記載の方法が挙げられる。
【0050】
上記シランカップリング剤としては、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、エポキシトリメトキシシラン、メタクリルトリメトキシシラン、アミノトリメトキシシラン、ウレイドトリメトキシシラン、メルカプトトリメトキシシラン、イソシアネート及びアクリルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0051】
上記オルガノシラザンとしては、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン及びペンタメチルジシラザンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
上記合成非晶質シリカ粒子は、PTFE組成物の流動性がより一層優れることから、表面に疎水性基を有することが好ましい。上記疎水性基としては、炭素数1〜8のアルキル基、ジメチルポリシロキサン構造等が挙げられる。上記疎水性基は、上記の疎水化処理により導入することができる。
【0053】
上記合成非晶質シリカ粒子は、比表面積が10〜400m
2/gであることが好ましく、50〜380m
2/gであることがより好ましい。
【0054】
上記PTFE組成物は、上記PTFE粒子を含む。上記PTFE粒子は、PTFEファインパウダー又はPTFEモールディングパウダーである。上記PTFEファインパウダーは、テトラフルオロエチレン(TFE)を乳化重合することによりPTFE水性分散液を得た後、PTFE水性分散液中のPTFE一次粒子を凝集させて得られるパウダー(二次粒子)である。また、上記PTFEモールディングパウダーは、TFEを懸濁重合することにより得られるパウダーである。上記PTFEファインパウダー及び上記PTFEモールディングパウダーは、いずれも、重合により得た粒子を公知の方法により造粒して得られたものであってもよい。
【0055】
上記PTFE粒子は、フィブリル化性を有するPTFEからなる。上記フィブリル化性とは、容易に繊維化してフィブリルを形成する特性を指す。フィブリル化性を有するPTFE粒子からは、ペースト押出成形により、連続したペースト押出ビードが得られ、かつ、該ビード(未焼成ビード)に伸びが観察される。一方、フィブリル化性を有しないPTFE粒子をペースト押出しても、連続したペースト押出ビードが得られないか、又は、得られたとしても未焼成ビードの伸びはほとんどない。
【0056】
上記PTFE粒子は、数平均分子量が600000超であるPTFEからなることが好ましい。上記PTFEの数平均分子量が上記範囲内にあると、上記PTFE粒子がフィブリル化性を示す。
【0057】
上記数平均分子量の測定方法は、標準比重(SSG)から求める方法、又は、溶融時の動的粘弾性測定法(測定方法の詳細はS.Wuにより、Polymer Engineering & Science,1988, Vol.28,538、同1989,Vol.29,273で説明されている)により測定することができる。上記SSGの測定方法は後述する。
【0058】
上記PTFEは、フィブリル化性に加えて、非溶融加工性を有することが好ましい。非溶融加工性とは、ポリマーを溶融して加工できないことをいう。
【0059】
上記PTFE粒子は、平均粒子径が100〜1000μmのPTFEファインパウダーであることが好ましい。上記平均粒子径は、300μm以上であることがより好ましく、700μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が大きすぎると、成形や他の樹脂と混合することが困難になるおそれがあり、平均粒子径が小さすぎると、PTFE組成物の流動性が劣るおそれがある。
【0060】
上記PTFE粒子は、平均粒子径が1〜2000μmのPTFEモールディングパウダーであることも好ましい。上記平均粒子径は、1000μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径が大きすぎると、成形や他の樹脂と混合することが困難になるおそれがあり、平均粒子径が小さすぎると、PTFE組成物の流動性が劣るおそれがある。
【0061】
上記PTFE粒子の平均粒子径は、JIS K6891に準拠して測定する。
【0062】
上記PTFEとしては、TFEのみからなるホモPTFEであっても、変性PTFEであってもよい。変性PTFEは、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。
【0063】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン;ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0064】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF
2=CF−ORf
1 (1)
(式中、Rf
1は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0065】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rf
1が炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
【0066】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rf
1が炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf
1が下記式:
【0068】
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf
1が下記式:
【0070】
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)等が挙げられる。
【0071】
ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテルとしては、CF
2=CFORf
2CN(式中、Rf
2は2つの炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい炭素数が2〜7のアルキレン基を表す。)で表されるフッ素含有ビニルエーテルがより好ましい。
【0072】
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
【0073】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位が0.001〜2モル%の範囲であることが好ましく、0.001〜1モル%未満の範囲であることがより好ましい。
【0074】
本明細書において、PTFEを構成する各単量体の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0075】
上記PTFEは、融点が324〜360℃であることが好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0076】
上記PTFEは、標準比重〔SSG〕が2.20以下であるものが好ましい。上記SSGの好ましい下限は2.12、より好ましい下限は2.15であり、成形性の点でより好ましい上限は2.19である。上記SSGは、ASTM D−4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定した値である。
【0077】
上記PTFE組成物は、粉体流動性評価において、ふるい通過量が50%以上に到達する時間を50秒以下とすることができる。また、上記PTFE組成物は、粉体流動性評価において、ふるい通過量が80%以上に到達する時間を30秒以下とすることができる。ふるい通過量は、後述する方法により測定することができ、ふるい通過量が大きいほど、流動性が高いことを意味する。
【0078】
上記PTFE組成物は、特開平9−95583号公報に記載の方法より得られるようなPSやSAN等の樹脂を含んだものや、機械的強度を調整するための充填剤や助剤等を含むこともできる。ただし、PSやSAN等の樹脂を含んだものである場合には、流動性はより改善されるが、着色などの問題が残る懸念がある。
【0079】
上記PTFE組成物は、延伸膜用の材料、多孔体用の材料、加工助剤、ドリップ防止剤、未焼成テープ、電池用結着剤等としても好適に利用可能である。
【0080】
上記PTFE組成物は、成形して成形体とすることもできるし、PTFE以外の他のポリマーと混合したのち、成形して成形体とすることもできる。上記PTFE組成物から得られることを特徴とする成形体も本発明の一つである。
【0081】
他のポリマーとしては、PTFE以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、なかでも、熱可塑性樹脂であることが好ましい。上述のポリテトラフルオロエチレン組成物、並びに、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする組成物も本発明の一つである。更に、上述の組成物から得られることを特徴とする成形体も本発明の一つである。
【0082】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、アクリル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されず熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0083】
上記熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが,これらに限定されず熱硬化性樹脂を好適に用いることができる。
【0084】
上記組成物は、上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を100質量部としたときに、上記PTFE組成物を0.1〜10質量部含むことが好ましく、0.2質量部以上含むことがより好ましく、5質量部以下含むことがより好ましい。
【0085】
上記成形体は、上記PTFE組成物、又は、上記組成物を公知の方法により成形することによって製造できる。成形方法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられる。上記PTFE組成物は、流動性が高いことから、成形が容易であり、良好な外観を有する成形体を得ることができる。上記PTFE組成物を他のポリマーと混合せずに成形する場合には、従来公知のPTFEの成形方法が使用できる。
【0086】
上記成形体の形状は、シート状、フィルム状、ロッド状、パイプ状、繊維状のいずれであってもよいが、これらに限定されない。
【0087】
上記成形体としては、例えば、シール、フィルム、シート、フィルター、チューブ、パイプ、ホース、OA機器筐体、電線被覆、糸、ロープ、網等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0088】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
(A)PTFEファインパウダーの製造方法
TFEを乳化重合することによりPTFE水性分散液を得た後、PTFE水性分散液中の一次粒子を凝集させることにより二次粒子化し、それを乾燥させることによりフィブリル化性を有するPTFEファインパウダーを得た。
【0090】
PTFEファインパウダーの平均粒子径の測定方法
JIS K6891に準じて以下の方法で測定した。
10,20,32,48,60,83メッシュ及びフタと受け皿を備えたふるいに、試料を50g精秤し、10メッシュのふるいの上に入れ15分間ロータップでふるう。ふるった後、各メッシュオンと83メッシュパスの重量を秤量し、各々の重量%を算出し、50重量%の粒径を平均粒子径とした。
【0091】
合成非晶質シリカの平均一次粒子径の測定方法
走査電子顕微鏡にて撮影した画像を解析することにより求めた。具体的には、倍率10万倍の走査電子顕微鏡において、視野を変えて50の画像を撮影し、2500個の原体シリカ粉末についてその平均一次粒子径を画像解析し、個数平均を求めた。
【0092】
PTFE組成物の平均粒子径の測定方法
JIS K6891に準じて以下の方法で測定した。
10,20,32,48,60,83メッシュ及びフタと受け皿を備えたふるいに、試料を50g精秤し、10メッシュのふるいの上に入れ15分間ロータップでふるう。ふるった後、各メッシュオンと83メッシュパスの重量を秤量し、各々の重量%を算出し、50重量%の粒径を平均粒子径とした。
【0093】
ふるい通過量の測定
振動時間10秒毎のふるい通過量を(i)〜(vii)に示す方法により25℃の温度で測定した。
(i)SUS製円柱状カップ(内径:50mm(実測値:51.7mm),容量:150
ml)の底面に円形(直径50mm)の薬包紙を敷き、さらにカップ内側面にも薬包紙を
巻く。
(ii)PTFE組成物を10メッシュの篩で篩い、メッシュパスを上記円柱状カップに山盛りになるまで入れる。
(iii)円柱状カップに入れたPTFE組成物の粉面を定規ですり切って平滑にし、フタを閉める。
(iv)ホソカワミクロン社製パウダーテスターでタッピング操作を300回行う(タッピング高さ20mm)。
(v)タッピング後、上記円柱状カップ内でケーキングしたPTFE組成物を、ケーキを壊さないように10メッシュ篩の上に静かに置き、メッシュを通過したPTFE組成物の量を計量する。
(vi)10メッシュの篩の上に残っているPTFE組成物に対して、ホソカワミクロン社製パウダーテスターを用いて10秒間振動させる。振動振幅は0.05〜0.1mmとする。
(vii)10秒ごとに振動によって落下したPTFE組成物の質量を測定し、ふるい通過量を下記式により求める。
(ふるい通過量)=(振動によりふるいを通過したPTFE組成物の質量)/(PTFE組成物の全質量)×100(質量%)
【0094】
黄変観察
ポリカーボネート(PC)100質量部に対して、PTFE組成物のPTFE有効成分が0.5質量部となるように混合したものを、押出成形、射出成形を行うことにより成形体を得た。それらの成形体を目視により観察し、黄変が見られた場合はあり、黄変が見られなかった場合はなしと記載した。
【0095】
実施例1
上記(A)に示す製造方法により得られたPTFEファインパウダー(平均粒子径526μm、SSG2.177)と、親水性基を有するヒュームドシリカa(平均一次粒子径12nm)を表1に示す割合にて配合し、乾式混合により、PTFEファインパウダーの表面にヒュームドシリカaが付着しているPTFE組成物(平均粒子径486μm)を得た。ふるい通過量及び黄変観察の結果を表1に示す。
【0096】
実施例2
表面処理により疎水性基を有するヒュームドシリカb(平均一次粒子径12nm)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、PTFEファインパウダーの表面にヒュームドシリカbが付着しているPTFE組成物(平均粒子径490μm)を得た。ふるい通過量及び黄変観察の結果を表1に示す。
【0097】
比較例1
上記(A)に示す製造方法により得られたPTFEファインパウダーのふるい通過量及び黄変観察の結果を表1に示す。
【0098】
比較例2
上記(A)の製法中、PTFE水性分散液に疎水基をもつヒュームドシリカbを添加して混合溶液を作成した。その混合物を凝析、乾燥することにより、PTFEファインパウダーの表面にヒュームドシリカbが付着していないPTFE組成物を得た。ふるい通過量及び黄変観察の結果を表1に示す。
【0099】
比較例3
上記(A)に示す製造方法により得られたPTFEファインパウダーと平均一次粒子径が200nmであるヒュームドシリカcを用い、表1に示す割合にて配合し、実施例1と同様の方法により、PTFEファインパウダーの表面にヒュームドシリカcが付着しているPTFE組成物を得た。ふるい通過量及び黄変観察の結果を表1に示す。
【0100】
比較例4
複合タイプPTFE(PTFE/SAN=50/50(質量比))(サビック社製 商品名BLENDEX449)のふるい通過量及び黄変観察の結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
また、走査型電子顕微鏡を使用して、実施例2及び比較例3のPTFE組成物の電子顕微鏡写真(500倍、172μm×172μm)を撮影した。次に、PTFEファインパウダー粒子の表面に付着している1つのシリカ粒子と、その粒子に最短距離で隣接するシリカ粒子との距離を測定した。この測定を写真に写る全てのシリカ粒子について行った。最短距離に対するシリカ粒子数(存在率)のヒストグラムを
図1に示す。比較例3よりも実施例2のPTFE組成物の方が、お互いに短距離に位置するシリカ粒子が多く、シリカ粒子がPTFE粒子表面に均一に分散して付着していることが分かる。