【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明によれば、軸の長手方向において、有利には一列で軸に平行に配置されており、且つ、軸に関して位置固定されて配置されている少なくとも二つのセンサ素子を備えた線形センサと、軸が回転運動する際に、別個に評価可能なセンサ素子の内の少なくとも一つにおいて、回転角に依存する測定信号の一義的な変化を生じさせる発生器とを備えたセンサ装置によって解決される。
【0014】
本発明によるセンサ装置の一つの有利な実施の形態によれば、センサ装置が、少なくとも二つのセンサ素子に対応付けられており、且つ、少なくとも二つのセンサ素子の各々を別個に評価することができる測定電子装置を有している。この場合、発生器は軸に配置されており、この軸と共に可動且つ回転可能である。また、この発生器を用いることにより、少なくとも二つのセンサ素子においてそれぞれ信号を形成することができ、この信号は長手方向における軸の移動及び軸の回転位置を特徴付ける一義的な信号経過を有している。
【0015】
以下では本発明によるセンサ装置のセンサ素子について説明する。
【0016】
有利には、センサのセンサ素子は機械的なセンサであるか、磁気的なセンサであるか、又は、容量性のセンサであり、また、座標測定機(CMM)、コイル、誘導性センサ素子、渦電流センサ素子、有利には、磁気的にプリロードされたホールセンサ、容量性センサ素子等として構成されている。
【0017】
本発明による解決手段の基礎は、センサ素子において再現可能な測定信号変化を生じさせることができる発生器がいかなる場合にも設けられていることである。
【0018】
発生器は、ある対象に固く結合されており、この対象は別の対象に関連付けられて検出されるべき位置を有している。またセンサもこの別の対象と固く結合されている。
【0019】
マニュアルトランスミッションの場合には、発生器はシフト軸と固く結合されている。センサはトランスミッションケーシングと固く結合されている。従って、この配置構成においては、トランスミッションケーシングを基準としてシフト軸の位置が求められる。
【0020】
発生器のセンサ素子への再現可能な作用、従って測定信号変化を内容とする測定信号への作用を、当業者には公知である種々のやり方で達成することができる。
【0021】
機械的にサンプリングするセンサ素子を使用する場合には、サンプリングを行なう位置における、発生器の輪郭部とサンプリングを行なうセンサ素子との間隔は、測定信号を変化させる発生器の特性を表す。
【0022】
強磁性の発生器と誘導性のセンサ素子との組み合わせを使用する場合、強磁性の発生器の構造様式によって測定信号に影響を及ぼすための種々の可能性が存在する。
【0023】
位置に依存して、発生器の間隔及び/又は効果的な材料量を変化させることができる。透磁率が異なる複数の材料を所期のように組み合わせることによっても、センサ素子において検出される測定信号の所望の位置に依存する変化を生じさせることもできる。
【0024】
考えられる一つの実施の形態は、回転角に依存する、センサ素子との間隔の変化である。間隔が大きくなるにつれ、誘導性のセンサ素子に対する発生器の強磁性の影響は低下していき、従って、センサ素子において検出される測定信号も小さくなる。
【0025】
別の実施の形態によれば、例えば発生器の幅が一定でないことによって、誘導性のセンサ素子又はコイルの磁界領域における強磁性の材料の量が回転角に依存して変化するように発生器は構成されている。強磁性材料の量が多くなると測定信号も大きくなる。
【0026】
更には、上述の二つの実施の形態を組み合わせることも可能である。
【0027】
センサ素子のインダクタンスの変化又は磁束の変化が測定される、強磁性の発生器と誘導性のセンサとを組み合わせる代わりに、導電性の発生器と誘導性の渦電流センサの組み合わせも適用することができる。通常の場合、この渦電流センサでは発振回路の種々の減衰が測定される。測定信号への作用はやはり発生器の材料の導電性に依存する。本発明による用途に関しては、(この場合には導電性の)発生器がやはり、位置に依存する測定信号への作用が生じるように構成されている。この位置に依存する作用は、発生器と渦電流センサ素子及び/又は発生器の作用面との間隔が渦電流センサ素子の検出領域において位置に依存して変化することによって達成される。
【0028】
本発明によるセンサ装置の基本機能は、測定経路に沿って配置されている別個に評価可能な複数のセンサ素子と、回転運動の際に回転角に依存する一義的な測定信号変化を別個に評価可能なセンサ素子の内の少なくとも一つにおいて生じさせるように構成されている発生器とから構成されている線形センサによって実現される。
【0029】
本発明による装置は、別個に評価可能な少なくとも二つのセンサ素子が、軸に固定されている少なくとも一つの発生器の軸方向の移動を検出するよう構成されている。
【0030】
軸方向の移動を検出できるようにするために、発生器は、軸方向の移動に対応する種々の測定信号が別個に評価可能なセンサ素子において形成されるように構成されている。
【0031】
発生器として、例えば軸における突起部が考えられる。センサ素子が複数設けられている場合、発生器は個々のセンサ素子を通過するように移動する。別個の測定値の処理から、軸の軸方向の位置を算出することができる。
【0032】
軸の回転運動を検出するために、本発明によれば、発生器が回転対称に構成されているのではなく、少なくとも測定技術的に検出可能な角度領域において、周囲角にわたり変化する部分を有することによって、基本機能を実現する線形センサ装置が拡張される。
【0033】
例えば、検出すべき角度領域において発生器の高さを角度に依存して変化させることができる。従って、各高さに一つの角度を一義的に対応付けることができる。
【0034】
自動車の分野において、状況によっては困難な周囲環境においても確実な測定を保証するために、センサ素子において検出される少なくとも二つの個々の測定信号の組み合わせから、絶対的な測定値の評価を省略して、軸の軸方向の位置も回転角も検出できるように発生器が構成されている場合には有利である。
【0035】
例えば、ST37鋼から製造されている強磁性の発生器の透磁率は−40℃から150℃の温度範囲において約23%変化する。この特性をセンサ内の温度の測定によって補償することができるが、しかしながら、センサケーシング内の温度がマニュアルトランスミッション内の発生器の温度に対応していることは必ずしも保証されていない。それどころか、相応の一致はむしろ起こりえない。更なる測定エラーは、センサ素子及び評価電子装置の温度依存性によって生じる。
【0036】
前述の問題は、本発明によるセンサ装置においては、センサ装置が角度位置を求めるために一つ又は複数の基準面を有しており、この基準面を用いて温度の影響を検出及び補償することによって解決される。
【0037】
このために、センサ装置の別個に評価可能なセンサ素子の内の少なくとも一つのセンサ素子を用いて基準値を検出できるように、少なくとも一つの基準面が配置及び構成されている。特に、付加的なセンサ装置を使用する必要はない。
【0038】
これに関して、少なくとも一つの基準面が、発生器から軸方向において一定の既知の間隔を置いて、軸に固く固定されている。
【0039】
発生器の軸方向の位置が検出されると、基準面の位置も自動的に一緒に検出される。何故ならば、発生器の位置と基準面の位置との間隔は機械的に不変に設定されており、既知だからである。
【0040】
同様に、基準面の軸方向の位置を求め、そこから発生器の位置を導出することも勿論可能である。
【0041】
基準面の内の少なくとも一つが、軸の種々の回転位置が検出されるべき軸の回転角領域にわたり、センサに対して十分に一定の間隔を有している場合には有利である。
【0042】
有利な実施の形態においては、基準面はセンサに対して実質的に一定の間隔を有しているが、別個にサンプリングすべき別の輪郭部よりも常に小さい間隔を有している。この場合、基準面の位置の検出は、比較的簡単な最大値探索アルゴリズムもしくは最小値探索アルゴリズムを用いて行なわれる。
【0043】
この設計によって、離散的なセンサ素子の測定信号からこの基準面に対応付けることができる信号を求める手間は比較的少なくて済む。
【0044】
基準面に対応付けられている測定信号と、角度に依存する可変の間隔を有する少なくとも一つの発生器の輪郭に対応付けられた測定信号との比率から、評価電子装置は例えば事前に算出されたルックアップテーブルを介して軸の回転角を検出することができる。
【0045】
基準面を検出するセンサ素子の温度変化、並びに、角度に依存する可変の間隔を有する少なくとも一つの発生器輪郭部の信号を検出するセンサ素子の温度変化は等しいので、センサ値の比率は強磁性の発生器材料の温度及び透磁率に依存しない。
【0046】
一つの別の実施の形態において、発生器が、軸の種々の回転位置が検出されるべき軸の角度領域において相互に反対方向に変化するセンサまでの間隔を備えた二つの測定面を有している場合には、反対方向の二つの測定信号が生成され、これによって軸の回転角のより良好な分解能が実現されるか、又は、安全性が重要な用途では信号の冗長性、従って、評価におけるより高い信頼性が達成される。
【0047】
発生器が二つの測定面を有することも考えられ、それら二つの測定面のうち、軸の種々の回転位置が検出されるべき軸の回転角領域の第1の部分領域における第1の測定面又は第2の部分領域における第2の測定面のいずれかはセンサに対して十分に一定の間隔を有している。この構成では、その都度一つの基準信号を取得することができ、一方の測定面の信号は、他方の測定面の信号が一定に保たれるセンサまでの間隔を有する領域において変化するか、又は、他方の測定面の信号は、一方の測定面の信号が一定に保たれるセンサまでの間隔を有する領域において変化する。またこの構成では、付加的な基準面を省略することができる。
【0048】
発生器の一つ又は複数の測定面がマニュアルトランスミッションのアイドリング位置においてセンサまでの最短の間隔を有している場合、信号分解能に対して最も高い要求が課され、且つ、センサ装置の精度が要求される、マニュアルトランスミッションのアイドリング位置の領域においては信号分解能が最大となる。
【0049】
更には、発生器が回転角にわたり一定に実施されているのではなく、比較的高い分解能が必要とされる領域においては、比較的低い分解能しか必要とされない領域に比べて顕著な変化を有するように構成されている場合には有利である。
【0050】
マニュアルトランスミッションにおいては、ニュートラル位置の領域において高い分解能が必要とされる。ギアの最終的な位置の領域においては、非常に低い分解能しか必要とされない。従って有利には、回転角にわたる変化はニュートラル位置の領域においては、ギアの最終的な位置の領域よりも大きくなるように実施されている。
【0051】
一つの別の有利な実施の形態によれば、マニュアルトランスミッションのシフト軸の各主軸方向位置又はシフトゲートには、センサの少なくとも一つのセンサ素子が対応付けられている。
【0052】
センサ装置又はセンサの信号処理の有利な実施の形態は、センサ装置又はセンサを用いて、例えばセンサ装置又はセンサに対応付けられているプロセッサを用いて、一方では発生器とセンサの間隔の非線形の依存性を線形化することができ、他方では特徴的な信号経過をプログラム技術的に線形化することができる場合に達成される。
【0053】
センサが複数の誘導性のセンサ素子から構成されている場合には、測定中にそれぞれ二つの誘導性のセンサ素子が相互に反対方向に直列に接続されていることは好適であり、これにより、外部磁界によって誘導される障害電圧が相殺される。
【0054】
発生器の配置の測定にとって重要でない磁界の少なくとも一部において、強磁性のコイル体及び導体を通るように磁界が案内される場合には、障害に対するより高い安全性及びより高い信号分解能が達成される。
【0055】
有利には、信号処理部には、例えば事前に準備されたルックアップテーブルの形態のアルゴリズムがインストールされている。このアルゴリズムを用いて、測定値を軸の回転位置に換算することができる。
【0056】
個々のセンサ素子間の位置に関しても回転角を検出できるようにするために、信号処理部にインストールされたアルゴリズムが有利には三次元のルックアップテーブルの形態に拡張されている場合には好適である。この実施の形態においてメモリスペースの要求が低減されるべき場合、ルックアップテーブルの数を限定し、中間位置に関してはルックアップテーブル間の補間を実施することが考えられる。
【0057】
本発明によるセンサ装置は任意のプロトコルを介して、軸方向の位置及び回転角を別の制御装置に伝送することができる。
【0058】
有利には、既にセンサにおいて瞬時位置の分類が行なわれる。それらの離散的な情報は比較的好適でロバストなPWMインタフェース又はシリアルインタフェースを介して別の制御装置に伝送することができる。
【0059】
一例としての6ギアトランスミッションにおいては以下の区分の分類が提案される。
【0060】
最終位置リバースギア、ニュートラル、最終位置ギア1、最終位置ギア2、最終位置ギア3、最終位置ギア4、最終位置ギア5、最終位置ギア6、中間位置ニュートラル−最終位置ギア1、中間位置ニュートラル−最終位置ギア2、中間位置ニュートラル−最終位置ギア3、中間位置ニュートラル−最終位置ギア4、中間位置ニュートラル−最終位置ギア5、中間位置ニュートラル−最終位置ギア6、中間位置ニュートラル−最終位置リバースギア。
【0061】
有利には、信号を出力する前にセンサ信号の完全性が検査される。このことは、別個に検出可能な複数のアナログセンサ素子を有するセンサにおいては比較的簡単である。発生器の構成に依存して、センサ素子の連続的な問い合せは、位置に依存する典型的な信号経過を生じさせる。これを許容誤差と共にセンサに格納することができる。連続的に求められるセンサ値がこの所定の許容誤差内に無いことがプログラム技術的な検査によって明らかになると、センサはエラー通知を出力する。
【0062】
以下では、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。