(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066053
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】界面活性剤用増粘剤、洗浄剤組成物および毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20170116BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20170116BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20170116BHJP
C11D 1/88 20060101ALI20170116BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20170116BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20170116BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
C09K3/00 103H
C11D1/10
C11D3/34
C11D1/88
A61K8/46
A61K8/44
A61Q5/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-263987(P2012-263987)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108987(P2014-108987A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】松尾 諭
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 智喜
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−307771(JP,A)
【文献】
特開2000−119698(JP,A)
【文献】
特開2002−029941(JP,A)
【文献】
特開2002−003891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K,C11D,A61K,A61Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されることを特徴とする、界面活性剤用増粘剤。
【化2】
(式(1)中、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子、アンモニウム、有機アンモニウム、アミノ酸、アミノ酸アルカリ金属塩、タウリン、タウリンのアルカリ金属塩、N−メチルタウリン、またはN−メチルタウリンのアルカリ金属塩を示す。)
【請求項2】
前記界面活性剤がアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1記載の増粘剤。
【請求項3】
請求項1記載の増粘剤を0.01〜5質量%、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤を1〜40質量%含有し、前記増粘剤と前記アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤との含有割合が質量比で1/400〜1/1であることを特徴とする、洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1記載の増粘剤を0.01〜5質量%、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤を1〜40質量%および両性界面活性剤を1〜40質量%含有し、前記増粘剤と前記アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤との含有割合が質量比で1/400〜1/1であり、前記アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤と前記両性界面活性剤との含有割合が質量比で1/20〜20/1であることを特徴とする、毛髪洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤用増粘剤およびこれを含有する洗浄剤組成物に関し、詳しくは界面活性剤に対して優れた増粘効果を示し、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤の増粘に特に有用な界面活性剤用増粘剤、およびこれを含有し、使用時にぬめり感を与えず、使用後にしっとり感が得られる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやボディソープなどの洗浄剤組成物は、陰イオン性界面活性剤を主剤とし、様々な界面活性剤から構成されている。その特徴としては、洗浄力の高さや泡立ちの良さに加え、適度な粘度を有すること、低刺激性であることが求められる。シャンプーやボディソープといった洗浄剤に適度な粘度を与えるためには、種々の増粘剤を添加することが一般的である。その例としては塩化ナトリウム等の無機塩、キサンタンガムなどの水溶性高分子、脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤が知られている。しかしながら、これらの増粘剤を添加して粘度を上げたときに、使用時のぬめり感が強くなり、すすぎに時間がかかるといった問題が生じる場合がある。
【0003】
また、肌や頭皮への刺激を緩和する目的で、陰イオン性界面活性剤の中でも刺激性の低いアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤を洗浄剤組成物に混合することがある。ところが、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤は、肌や頭皮への刺激を比較的に抑えることはできるが、洗浄剤を使用した後のかさつき感やつっぱり感を抑えるという点では十分ではない。こうしたかさつき感やつっぱり感は、使用者の体質によっては、しばしば皮膚荒れや皮膚の炎症などを引き起こし、問題となってしまう。
【0004】
そのため、使用後にかさつき感やつっぱり感を感じず、しっとり感を感ずることができる洗浄剤組成物が求められている。さらに、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤は、配合時に粘度を高めることが難しい基材であることが知られているため、使用後のしっとり感だけでなく、適当な増粘剤を添加して粘度を増加させることが重要となる。
【0005】
したがって、上記の問題点を克服するために、特定の増粘剤を混合することで、使用時にぬめり感を感じず、使用後にしっとり感を感じることができる洗浄剤組成物が望まれている。
【0006】
アシルアミノ酸系界面活性剤と増粘剤を含んだ洗浄剤組成物としては、増粘剤であるプロピレングリコールN−ヤシ油アルキルカルバメート、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物が挙げられる(特許文献1)。この増粘剤を混合した洗浄剤組成物は、低温、室温安定性、起泡性が優れているという特徴を有するが、ぬめり感やしっとり感についての記載はない。
【0007】
また、増粘剤であるヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル化合物、含硫黄型陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物については、低温安定性、起泡性、使用感が損なわれないという特徴を有するが、ぬめり感やしっとり感について詳細に言及してはいない(特許文献2)。
【0008】
増粘剤であるラウリン酸ブチレングリコール、アシルアミノ酸型陰イオン性界面活性剤またはアルキルイミノジカルボキシレート型両性界面活性を含有する洗浄剤組成物については、泡質に優れ、使用時のぬめり感を感じないという特徴を有するが、しっとり感についての言及はない(特許文献3)。これらの洗浄剤組成物は、粘度の増加やぬめり感のなさという点で従来の問題は改善されているものの、使用後のしっとり感が得られないという点で改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-307771号公報
【特許文献2】特開2003‐096435号公報
【特許文献3】特開2005-200640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、界面活性剤、特にアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤に対して有効な新規な増粘剤を提供することであり、これによって、使用時にぬめり感を与えず、使用後にしっとり感が得られる洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記式(1)で示される化合物に増粘効果を確認した。さらに、該増粘剤を含有する洗浄剤組成物を使用した際にぬめり感を感じず、使用後にはしっとり感を感じることができるという特徴を見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]下記式(1)で示される界面活性剤用増粘剤:
【化1】
(式(1)中、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子、アンモニウム、有機アンモニウム、アミノ酸、アミノ酸アルカリ金属塩、タウリン、タウリンのアルカリ金属塩、N−メチルタウリン、またはN−メチルタウリンのアルカリ金属塩を示す。)
【0013】
[2] 前記界面活性剤がアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤である。
【0014】
[3] 前記増粘剤を0.01〜5質量%、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤を1〜40質量%含有し、前記増粘剤とアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤との含有割合が質量比で1/400〜1/1であることを特徴とする、洗浄剤組成物。
【0015】
[4] 前記増粘剤を0.01〜5質量%、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤を1〜40質量%および両性界面活性剤を1〜40質量%含有し、前記増粘剤と前記アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤との含有割合が質量比で1/400〜1であり、前記アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤と前記両性界面活性剤との含有割合が質量比で1/20〜20/1であることを特徴とする、毛髪洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、界面活性剤に対して優れた増粘効果を示し、特にアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤の増粘に有効な界面活性剤用増粘剤、およびこれを含有し、使用時にぬめり感を与えず、使用後にしっとり感が得られる洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(増粘剤)
式(1)中、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子、アンモニウム、有機アンモニウム、アミノ酸、アミノ酸アルカリ金属塩、タウリン、タウリンのアルカリ金属塩、N−メチルタウリン、またはN−メチルタウリンのアルカリ金属塩を示す。
【0018】
Mは、好ましくは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、1/2カルシウム原子、1/2マグネシウム等のアルカリ土類金属原子、アンモニア、アルカノールアミン等、また、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、グリシンナトリウム、グリシンカリウム、ザルコシンナトリウム、β−アラニンナトリウム等の中性アミノ酸、グルタミン酸二ナトリウム、グルタミン酸二カリウム、アスパラギン酸二ナトリウム等の酸性アミノ酸、タウリンナトリウム、タウリンカリウム等のタウリン塩、N−メチルタウリンナトリウム、N−メチルタウリンカリウム等のN−メチルタウリン塩であり、より好ましくは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、タウリンナトリウム、タウリンカリウム等のタウリン塩が挙げられる。
上記のMはプロトン化した様態で化合物1に含まれるSO
3−で示される官能基と塩を形成することができる。
【0019】
また、増粘剤とは、界面活性剤の粘度を上昇させる作用を有することを意味する。この粘度はB型粘度計によって測定できる。
【0020】
(界面活性剤)
本発明の増粘剤によって増粘作用が得られる界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤である。増粘剤は、陰イオン性界面活性剤に対して有用であり、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤に対して特に有用である。
【0021】
(アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤)
アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤とは、N−アシル基を有するアミノ酸塩構造を有する界面活性剤である。例えば、N−アシル−N−メチルタウリン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシル−β−アラニン塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグリシン塩等が挙げられる。アシル基は炭素数6〜20の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸由来の基であり、例えばラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基である。また、混合脂肪酸由来のアシル基を用いることができ、混合脂肪酸由来のアシル基としては、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基などが挙げられる。アシル基として好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基などが挙げられる。より好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。
【0022】
アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤の製造において、アルキル基を側鎖とする2級アミン型のアミノ酸誘導体は、側鎖を持たないものに比べて、アシル基との反応性が高いという特徴がある。そのため、耐圧釜のような特殊な設備を必要とせずに、工業的に生産することが可能である。工業的な生産が容易であるという観点から、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤として好ましくは、N−アシル−N−メチルタウリン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルサルコシン塩である。中でも増粘が難しいN−アシル−N−メチルタウリン塩を増粘させることは有用であることから、さらに好ましくは、N−アシル−N−メチルタウリン塩である。これらは一種または二種以上使用できる。
N−アシル−N−メチルタウリン塩としては、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリントリエタノールアミン、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリントリエタノールアミン、パーム核油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、パーム核油脂肪酸メチルタウリンタウリンナトリウム、パーム核油脂肪酸メチルタウリントリエタノールアミン等が挙げられる。
【0023】
(洗浄剤組成物)
本発明の一実施形態に係る洗浄剤組成物は、本発明の増粘剤((a)成分と呼ぶ)を0.01〜5質量%、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤((b)成分と呼ぶ)を1〜40質量%含有し、前記増粘剤とアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤との含有割合が質量比で1/400〜1/1である。
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、および残部としての水の合計質量を100質量%とする。
【0024】
本実施形態の洗浄剤組成物においては、(a)成分の含有量は、0.01〜5質量%である。(a)成分の含有量は、0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上が更に好ましい。また、(a)成分の含有量は、3質量%以下が好ましく、2.5質量%以下が更に好ましい。
【0025】
(b)成分の含有量は、1〜40質量%である。(b)成分の含有量が、1質量%未満の場合、適度な泡立ちや洗浄力といった洗浄剤組成物の基本性能が得られず、40質量%より多い場合は低温時に界面活性剤の析出などの問題が生じる可能性がある。(b)成分の含有量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は、30質量%以下が好ましい。
【0026】
本実施形態の洗浄剤組成物中の(a)成分と(b)成分の含有割合(a)/(b)は、質量比で、1/400〜1/1である。(a)/(b)が1/400以上で増粘効果を発揮し、使用後のしっとり感を感じることができる。(a)/(b)が1/1以下で、適度な泡立ちを示す良好な洗浄剤組成物が得られる。(a)成分と(b)成分の含有割合(a)/(b)は、質量比で、1/200以上が好ましく、1/20以上が更に好ましい。また、(a)成分と(b)成分の含有割合(a)/(b)は、質量比で、1/2以下が好ましく、1/10以下が更に好ましい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。このような成分として使用される成分は、以下を例示できる。
【0028】
例えば、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリン酸カリウムなどの陰イオン性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤、高級脂肪酸アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤、アミンオキシド型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤などの非イオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどのカチオン界面活性剤、高級脂肪酸、高級アルコールなどの増泡剤、ジステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコールなどのパール光沢付与剤、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースー2(ポリクオタニウムー10)、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸アミドとの共重合体(ポリクオタニウムー7)等の陽イオン性高分子化合物などの増粘剤、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、タンパク加水分解液などの保湿剤、スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、ヒマシ油、ラノリン、レシチンなどの油分、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体などのシリコーン誘導体、パラベンなどの防腐剤、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジンクピリチオン、ピロクトンオラミンなどの殺菌剤、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどのpH調整剤、エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸などの金属イオン封鎖剤、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、オキシベンゾン、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤、5−メチル−2−イソプロピルシクロヘキサノール、トウガラシチンキなどのトニック剤、ジブチルヒドロキシトルエン、酢酸トコフェロールなどの酸化防止剤、動植物由来の抽出エキス、色素、香料などを挙げることができる。
【0029】
(毛髪洗浄剤組成物)
本実施形態の毛髪洗浄剤組成物は、式(1)で示される増粘剤((a)成分と呼ぶ)とアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤((b)成分と呼ぶ)と両性界面活性剤(以下、(c)成分と呼ぶ)を含有する。
【0030】
すなわち、毛髪洗浄剤組成物は、前記増粘剤((a)成分)を0.01〜5質量%、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤((b)成分)を1〜40質量%および両性界面活性剤((c)成分)を1〜40質量%含有し、増粘剤とアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤との含有割合が質量比で1/400〜1/1であり、アシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤と両性界面活性剤との含有割合が質量比で1/20〜20/1である。
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、および残部の水の合計質量を100質量%とする。
【0031】
(a)成分、(b)成分は上記したものである。
(c)成分の両性界面活性剤は、コンディショニング効果の付与や陰イオン性界面活性剤の刺激性の緩和を目的として毛髪洗浄剤組成物に混合される。それと同時に、陰イオン性界面活性剤と組み合わせた場合、両性界面活性剤のカチオン性基と陰イオン性界面活性剤のアニオン性基が錯形成を起こし、線状ミセルの増加により、粘度の増加が起きることが知られている。陰イオン性界面活性剤の中でも(b)成分のアシルアミノ酸系陰イオン性界面活性剤は増粘させにくい化合物であるため、(a)成分の増粘剤と合わせて、適正な量の(c)成分を混合して粘度を増加させることができる。
【0032】
(c)成分の両性界面活性剤は、通常毛髪洗浄剤に使用されるものであれば特に限定されないが、ベタイン型両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなどがあげられ、イミダゾリン型両性界面活性剤としてはN−アシルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノジ酢酸ナトリウム、2-ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。これらは一種または二種以上使用できる。
【0033】
本実施形態の毛髪洗浄剤組成物においては、(a)成分の含有量は、0.01〜5質量%である。(a)成分の含有量は、0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上が更に好ましい。また(a)成分の含有量は、3質量%以下が好ましく、2.5質量%以下が更に好ましい。
本実施形態の毛髪洗浄剤組成物においては、(b)成分の含有量は、1〜40質量%である。(b)成分の含有量が、1質量%未満の場合、適度な泡立ちおよび洗浄力が得られず、40質量%より多い場合低温時に界面活性剤の析出などの問題が生じる可能性がある。(b)成分の含有量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましい。また、(b)成分の含有量は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0034】
(c)成分の含有量は、1〜40質量%である。(c)成分の含有量が、1質量%未満の場合、適度な泡立ちおよび洗浄力が得られず、40質量%より多い場合低温時に界面活性剤の析出などの問題が生じる可能性がある。(c)成分の含有量は、2質量%以上が好ましく,3質量%以上が更に好ましい。また、(c)成分の含有量は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0035】
毛髪洗浄剤組成物中の(a)成分と(b)成分の含有割合(a)/(b)は質量比で1/400〜1/1である。(a)/(b)は、が1/400以上で増粘効果を発揮し、使用後のしっとり感を感じることができる。(a)/(b)が1/1以下で適度な泡立ちを示す良好な毛髪洗浄剤組成物が得られる。(a)/(b)は、1/200以上が好ましく、1/20以上が更に好ましい。また,(a)/(b)は、1/2以下が好ましく、1/10以下が更に好ましい。
【0036】
また,毛髪洗浄剤組成物中の(b)成分と(c)成分の含有割合(b)/(c)は質量比で1/20〜20である。(b)/(c)が1/20未満の場合、適度な泡立ちが得られない。(b)/(c)が20より大きい場合、コンディショニング効果が得られないことや陰イオン性界面活性剤の刺激性を緩和できないなどの問題が生じる。(b)/(c)は、1/15以上が好ましく、1/10以上が更に好ましい。また、(b)/(c)は、15/1以下が好ましく、10/1以下が更に好ましい。
【0037】
(その他成分)
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。このような成分として使用される成分は、前記の洗浄剤組成物に適宜配合される成分の内、ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤を除いたものを例示できる。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0039】
(調整例1:増粘剤の製造)
40%メチルアミン水溶液800g(10.3モル)とイセチオン酸ナトリウム509g(3.4モル)を容量2リットルのオートクレーブに仕込み、200〜250℃、20kg/cm
2の加圧下で7時間反応を行った。冷却後、過剰のメチルアミンを蒸留により回収し、残留物を濃縮、蒸発乾固した。反応生成物をジメチルホルムアミドと水の混合溶媒2500g(重量比でジメチルホルムアミド/水=2/1)により晶析させることで式(1)の化合物を得た。収量は228gであった。
得られた式(1)の化合物においては、Mはナトリウムである。
【0040】
(実施例1〜8および比較例1〜8)
増粘剤、界面活性剤、カチオン化ポリマー、水を表1および表2に示す割合で混合した。
【0041】
試験には、下記の増粘剤、界面活性剤、カチオン化ポリマーを使用した。
(1)キサンタンガム
キサンタンクリアー80 〔ダニスコジャパン社製〕
(2)ヒドロキシエチルセルロース
HECダイセルSE900 〔ダイセルファインケム社製〕
(3)ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
パーソフトEF 〔日油社製〕
(4)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム
ダイヤポンK-SF 〔日油社製〕
(5)ラウロイルメチルアラニンナトリウム
エナジーコールL-30AN 〔ライオン社製〕
(6)ヤシ油脂肪酸グルタミン酸ナトリウム
アミソフトLS-11 〔味の素社製〕
(7)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン
ニッサンアノンBDF-R 〔日油社製〕
(8)ラウラミドジエタノールアミド
スタホームDL 〔日油社製〕
(9)ラウリン酸カリウム
ノンサールLK-2 〔日油社製〕
(10)ポリクオタニウム10
マーコート10 〔NALCO社製〕
【0042】
粘度および使用感を下記の方法により評価した。
(1)粘度
B型粘度計(株式会社東京計器製作所製)を用い、上記混合物を25℃に保持し、測定時間100秒で粘度を測定した。
【0043】
(2)しっとり感
男女各10名をパネラーとし、洗浄剤5gで毛髪を洗浄した後のしっとり感を評価した。タオルドライ後に、しっとり感を感じる場合を2点、ややしっとり感を感じる場合を1点、しっとり感が乏しい場合を0点として20名の合計点から、次の3段階で評価した。
合計点30点以上:○
合計点20点以上30点未満:△
合計点20点未満:×
【0044】
(3)ぬめり感
男女各10名をパネラーとし、洗浄剤5gで毛髪を洗浄した時のぬめり感を評価した。ぬめり感を感じなかった場合を2点、ややぬめり感が強いと感じた場合を1点、ぬめり感が強く、すすぎに時間がかかると感じた場合を0点として20名の合計点から、次の3段階で評価した。
合計点30点以上:○
合計点20点以上30点未満:△
合計点20点未満:×
【0045】
(1)粘度、(2)しっとり感、(3)ぬめり感について評価結果を表1および表2に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
比較例1、比較例2に対して、(a)成分を混合した実施例1、実施例2では、それぞれ粘度の増加が起きていることを確認した。
【0049】
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムを混合した実施例3、実施例4では、(a)成分を含んでいるため増粘効果が確認されるとともに、ぬめり感を与えず、しっとり感を感じることができる組成物であることが分かる。
【0050】
これに対し、比較例3は(a)成分を含んでいないため、粘度が低く、明白なしっとり感を感じることはできない。
比較例4のキサンタンガムを混合した洗浄剤、および比較例5のヒドロキシエチルセルロースを混合した洗浄剤は、増粘効果は確認されるものの、ぬめり感が強く、すずぎに時間がかかるという問題があり、使用感に満足できる洗浄剤組成物とはいえない。
【0051】
ラウリン酸カリウムを含んだ洗浄剤組成物である実施例5では、(a)成分を含んでいるため増粘効果が確認され、ぬめり感を与えず、しっとり感を感じることができる。
これに対し、比較例6では(a)成分を含んでいないため、粘度が低く、しっとり感に乏しい。
【0052】
ラウロイルメチルアラニンナトリウムを混合した実施例6では、(a)成分を含んでいるため増粘効果が確認されるとともに、ぬめり感を与えず、しっとり感を感じることができる組成物であることが分かる。これに対し、比較例7は(a)成分を含んでいないため、粘度が低く、明白なしっとり感を感じることはできない。
【0053】
ヤシ油脂肪酸グルタミン酸ナトリウムを含んだ実施例7では、(a)成分を含んでいるため増粘効果が確認されるとともに、ぬめり感を与えず、しっとり感を感じることができる組成物であることが分かる。
これに対し、比較例8は(a)成分を含んでいないため、粘度が低く、明白なしっとり感を感じることはできない。実施例8では、(a)成分の含有量が0.01質量%以上であり、増粘効果が確認されるとともに、ぬめり感を与えず、しっとり感を感じることができる組成物であることが分かる。