(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066056
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】車両のタンク構造
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20170116BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B60K15/063 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-273420(P2012-273420)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-118857(P2014-118857A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】志和池 博史
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−273372(JP,A)
【文献】
特開2011−021528(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0170616(US,A1)
【文献】
特開2011−033011(JP,A)
【文献】
特表2000−512245(JP,A)
【文献】
特開2003−285650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
B60K 15/03−15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの燃料及び前記エンジンの排気中の窒素酸化物を還元反応させて浄化する液体の還元剤のうちいずれか一方を貯留する第1のタンクと他方を貯留する第2のタンクとを車両の左右方向に並べて配置し、前記第1のタンク側の車両の左右側面に第1のタンク用補給口と第2のタンク用補給口が備えられた車両のタンク構造であって、
前記第2のタンクから前記第1のタンクを貫通して車両左右方向に延び、先端部が前記第2のタンク用補給口に接続され、前記第2のタンク用補給口から前記還元剤または前記燃料を前記第2のタンクに導入する導入管が備えられ、
前記第1のタンクと前記第2のタンクとの間には、前記車両の前後方向に延びるプロペラシャフトが備えられるとともに、前記プロペラシャフトに沿って前記車両の前後方向に延びる前記エンジンの排気通路が備えられ、
前記排気通路は、前記プロペラシャフトに対して、前記第1のタンク及び前記第2のタンクのうち前記還元剤が貯留されるタンク側に配置される
ことを特徴とする車両のタンク構造。
【請求項2】
前記第1のタンクは前記燃料を貯留するタンクであり、前記第2のタンクは、前記還元剤を貯留するタンクであることを特徴とする請求項1に記載の車両のタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたタンクの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたエンジンの排気浄化装置として、尿素水を用いた尿素還元式SCR(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元)装置が採用されているものがある。尿素還元式SCR装置は、排気通路に還元触媒を備え、還元触媒の上流側に還元剤である尿素水を噴射して、尿素水からアンモニアを発生させ、当該アンモニアと排気中のNOx(窒素酸化物)を還元触媒にて触媒還元反応させることにより窒素(N
2)と水(H
2O)に分解し無害化する。
【0003】
このような尿素還元式SCR装置において、尿素水は、車両に搭載された尿素水タンクに貯留される。
また、エンジンを備えた車両には、燃料を貯留する燃料タンクが搭載されている。このような尿素水タンクや燃料タンクは、車両に搭載される機器としては比較的大きいものであるため、従来からその配置に工夫がなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献1では、燃料タンクの上部に尿素水タンクを配置した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−62841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように尿素水タンクを燃料タンクの上部に配置した場合、燃料タンクの容量が尿素水タンクの容量分減少してしまう。また、尿素水タンクの容量も十分に確保できない虞がある。
乗用車では、通常、比較的スペースを大きく確保可能な後輪の前側のフロア下方に燃料タンクを配置することが多い。更に、FR車や四輪駆動車のようにフロア下方にプロペラシャフトが設置されている場合には、プロペラシャフトを挟んで左右に尿素水タンク及び燃料タンクを並べて設置することが、各タンクの容量を極力多く確保するのに有効である。
【0007】
また、車両に尿素水タンク及び燃料タンクを搭載した場合、例えばガソリンスタンドで尿素水及び燃料の両方を容易に補給できるように、燃料の補給口と尿素水の補給口を車両の左右いずれか同一側に設けることが望ましい。
したがって、上記のようにプロペラシャフトを挟んで左右に尿素水タンク及び燃料タンクを並べて設置すると、補給口から左右反対側のタンクへ尿素水または燃料を導入する配管を、補給口側のタンクを横切って配置しなければならなくなる。よって補給口側のタンクをこの導入用の配管より下方に配置せざるを得ず、補給口側のタンクの容量を大きく確保することが困難となるといった問題点がある。
【0008】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、還元剤を貯留するタンクと燃料を貯留するタンクが車両左右に並べて配置された車両において、補給の容易性を損なわずに、各タンクの容量を増加可能な車両のタンク構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両のタンク構造は、車両に搭載されたエンジンの燃料及びエンジンの排気中の窒素酸化物を還元反応させて浄化する液体の還元剤のうちいずれか一方を貯留する第1のタンクと他方を貯留する第2のタンクとを車両の左右方向に並べて配置し、第1のタンク側の車両の左右側面に第1のタンク用補給口と第2のタンク用補給口が備えられた車両のタンク構造であって、
第2のタンクから第1のタンクを貫通して車両左右方向に延び、先端部が第2のタンク用補給口に接続され、第2のタンク用補給口から還元剤または燃料を第2のタンクに導入する導入管が備えられ、第1のタンクと第2のタンクとの間には、車両の前後方向に延びるプロペラシャフトが備えられるとともに、プロペラシャフトに沿って車両の前後方向に延びるエンジンの排気通路が備えられ、排気通路は、プロペラシャフトに対して、第1のタンク及び第2のタンクのうち還元剤が貯留されるタンク側に配置されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の車両のタンク構造は、請求項1において
、第1のタンクは燃料を貯留するタンクであり、第2のタンクは、還元剤を貯留するタンクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、車両の左右方向に並べて第1のタンク及び第2のタンク、即ち還元剤タンクと燃料タンクを配置して、各タンクの容量を大きく確保するとともに、第1のタンク側の車両の左右側面に第1のタンク用補給口及び第2のタンク用補給口が備えられるので、還元剤及び燃料の補給を車両の左右同一側から行うことができ、還元剤及び燃料の補給性の向上を図ることができる。
【0013】
更に、第2のタンク用補給口から車両の左右反対側に位置する第2のタンクへ還元剤または燃料を導入する筒状の導入部が、第1のタンクを貫通して配置されるので、第1のタンクを導入部より下方に配置する場合よりも第1のタンクの容量を増加させることができ
、第1のタンクと第2のタンクとの間をプロペラシャフトに沿って車両の前後方向に延びる排気通路が、プロペラシャフトに対して、第1のタンク及び第2のタンクのうち還元剤が貯留されるタンク側に配置されるので、高熱となる虞のある排気通路と燃料タンクとを極力遠ざけ、安全性を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、第1のタンク用補給口及び第2のタンク用補給口に近い第1のタンクが燃料タンクであり、各補給口から遠い第2のタンクが尿素水タンクなので、燃料の補給経路を短くして安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の下面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る尿素水タンク及び燃料タンクの構造を示す上面図である。
【
図3】本実施形態に係る尿素水タンク及び燃料タンクの縦断面図である。
【
図4】本実施形態に係る燃料タンクの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両1の下面図である。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、走行駆動源としてディーゼルエンジン(以下、エンジン2という)を車体3の前部に搭載した乗用車であり、エンジン2の駆動力によって後輪4が駆動可能なように、車体3の左右中央部を前後方向に延びるプロペラシャフト5が備えられている。
【0017】
また、車両1には、エンジン2の排気浄化装置として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが搭載されている。
尿素SCRシステムは、エンジン2の排気通路(排気管7)に設けられたSCR触媒8と、SCR触媒8の上流側の排気管7内に尿素水(還元剤)を噴射する還元剤噴射弁10を備えている。
【0018】
排気管7内に噴射された尿素水は、加水分解してアンモニアを発生する。
SCR触媒8は、尿素水から発生したアンモニアにより排気中のNOx(窒素酸化物)を窒素と水に分解する機能を有する公知の触媒である。
SCR触媒8から排出された排気は、プロペラシャフト5に沿って設けられた排気管7を通過して車両後部に排出される。なお、排気管7は、プロペラシャフト5の車両右側に配置されている。
【0019】
還元剤噴射弁10には、車両1に搭載された尿素水タンク11(第2のタンク)に貯留された尿素水が供給される。尿素水タンク11は、車両1の後輪4の前側、かつ車室のフロア12の下方に搭載されている。
また、車両1の後輪4の前側、かつ車室のフロア12の下方には、エンジン2の燃料を貯留する燃料タンク13(第1のタンク)が搭載されている。
【0020】
尿素水タンク11及び燃料タンク13は、車両1のシャシフレームの間、詳しくは左右一対のサイドフレームの間で、プロペラシャフト5及び排気管7を左右に挟むように配置されている。
尿素水タンク11への尿素水の給水口14(第2のタンク用補給口)と燃料タンク13への燃料の給油口15(第1のタンク用補給口)は、車体3の左側面16に並べて、左後輪4aの上部に設けられている。
【0021】
尿素水タンク11の左側部には、尿素水タンク11内に尿素水を導入する尿素水配管17(導入管)が設けられ、当該尿素水配管17と給水口14とは給水ホース18により接続されている。また、燃料タンク13の左側部には、燃料タンク13内に燃料を導入する燃料配管19が設けられ、当該燃料配管19と給油口15とは燃料ホース20により接続されている。
【0022】
図2は、尿素水タンク11及び燃料タンク13の形状を示す上面図である。
図3は、尿素水タンク11及び燃料タンク13の縦断面図である。
図4は、燃料タンク13の左側面図である。
図2、3に示すように、尿素水配管17は、基端部が尿素水タンク11に接続され、燃料タンク13を貫通して、先端部17aが燃料タンク13を越えて車両右方に延び、当該先端部17aにて給水ホース18と接続されている。尿素水配管17は、先端部17aから尿素水タンク11に向かって下方へ傾斜している。したがって、尿素水配管17の先端部17aに尿素水が供給されると、尿素水配管17内を通過して、尿素水タンク11に導入されるようになっている。なお、尿素水配管17は、車両左側を下方とする許容角度の傾斜地に車両1を駐車した場合でも、尿素水が尿素水タンク11内に流入するように傾斜角が設定されている。
【0023】
尿素水配管17は、燃料タンク13の側壁の貫通部分に設けられたブラケット25、26を介して、燃料タンク13に2箇所で固定されている。
また、
図3、4に示すように、燃料タンク13の上面と尿素水タンク11の上面とは、上下方向で略同一に位置しており、フロア12の下面近傍まで上方に位置している。
以上のような構成により、本実施形態の車両1では、後輪4の前側のフロア11下部のスペースに尿素水タンク11及び燃料タンク13が搭載されている。尿素水タンク11及び燃料タンク13は、車両左右中央部を前後方向に延びるプロペラシャフト5を挟んで、左右に並ぶように配置されており、車両1の空いたスペースを利用して容量を大きく確保することが可能となっている。
【0024】
特に、本実施形態では、給水口14から車両左右反対側の尿素水タンク11へ尿素水を導入する尿素水配管17が設けられているので、上記のように尿素水タンク11及び燃料タンク13をプロペラシャフト5を挟んで車両の左右に並ぶように配置しているにもかかわらず、尿素水タンク11に尿素水を補給する給水口14と、燃料タンク13に燃料を補給する給油口15とを、車体3の左側面16に並べて配置することができる。これにより、尿素水と燃料の両方を車両1の左右同一側から補給することができ、補給性を向上させることができる。
【0025】
また、尿素水配管17が燃料タンク13を貫通して配置されるので、尿素水配管17を避けて燃料タンク13を尿素水配管17より下方に配置する場合よりも燃料タンク13の容量を増加させることができる。また、尿素水配管17がブラケット25、26を介して燃料タンク13に固定されるので、尿素水配管17を車体3に固定する支持部材を新たに設ける必要がなく、車体3の構造の簡素化を図ることができる。
【0026】
また、本実施形態では、車両左右方向に並んで配置された尿素水タンク11及び燃料タンク13のうち、給油口15に近い車両左側に燃料タンク13が配置されるので、可燃性の高い燃料の補給経路を短くして安全性を高めることができる。
更に、本実施形態の車両1では、プロペラシャフト5に沿って尿素水タンク11側である車両右側に排気管7が配置されている。これにより、高熱になる虞のある排気管7を燃料タンク13から極力遠ざけて、安全性を向上させることができる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、尿素水配管17が燃料タンク13の前後方向中央部を左右に貫通するように配置されているが、当該中央位置から前後にオフセットした位置で貫通するように尿素水配管17を配置してもよい。
また、上記実施形態では、給水口14及び給油口15側である車両左側に燃料タンク13を配置し、給水口14及び給油口15側とは反対側に尿素水タンク11を搭載しているが、尿素水タンク11と燃料タンク13とを左右逆に配置したものでもよい。このようにすれば、尿素水配管17が燃料タンク13を貫通するのではなく、燃料配管19が尿素水タンク11を貫通するような構成となるので、燃料タンク13の密閉の信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、FF車のようにプロペラシャフト5のない車両にも、本願発明を適用可能である。この場合、プロペラシャフト5のスペースを利用して燃料タンク13や尿素水タンク11を拡大し、更なる容量増加を図ってもよい。
また、以上の実施形態では、還元剤として尿素水を用いており尿素水タンク11を車両1に搭載しているが、尿素水以外の液体の還元剤を貯留するタンクを搭載する車両であっても、本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 車両
2 エンジン
5 プロペラシャフト
7 排気管(排気通路)
11 尿素水タンク(第2のタンク)
13 燃料タンク(第1のタンク)
14 給水口(第2のタンク用補給口)
15 給油口(第1のタンク用補給口)
17 尿素水配管(導入管)