【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、トンネル仕切り体を構成する天井や隔壁を迅速かつ安全にかつ経済性に優れた形で撤去可能なトンネル仕切り体の撤去方法を提供することを目的とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル仕切り体の撤去方法は請求項1に記載したように、トンネルの内部空間を上下に仕切る天井と該天井の上方に拡がる頂部空間をトンネル軸に直交する鉛直断面において左右に仕切る隔壁とからなるトンネル仕切り体を前記トンネルから撤去するトンネル仕切り体の撤去方法において、
前記トンネル仕切り体のうち、トンネル軸方向に沿った撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体の荷重を搬送台車で予め受け替え、
前記撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体を該トンネル仕切り体に属する天井の水平姿勢が保持され隔壁の起立姿勢が保持されるように前記トンネルの内面から切り離して撤去対象仕切り体として前記搬送台車に載置し、
前記搬送台車を前記トンネル内であって前記撤去対象区間から離間した位置に設けられ前記トンネルの内面近傍に解体用設備が配置された隔壁解体区間に向けて走行させることで、該隔壁解体区間に前記撤去対象仕切り体を移動させ、
前記撤去対象仕切り体を、該撤去対象仕切り体の天井を構成する天井板が水平姿勢を保持され隔壁を構成する隔壁板が起立姿勢から水平姿勢となるように前記解体用設備で解体して撤去対象天井板と撤去対象隔壁板に分離し、
前記撤去対象天井板が前記搬送台車に載置された状態で該搬送台車をあらたな撤去対象区間に戻し、前記受替え工程、前記切り離し工程、前記隔壁解体区間への移動工程及び前記解体分離工程を繰り返した後、前記搬送台車に前記撤去対象天井板が複数段にわたって載置された状態で該搬送台車を前記トンネルの外に走行させるものである。
【0016】
また、本発明に係るトンネル仕切り体の撤去方法は請求項2に記載したように、トンネルの内部空間を上下に仕切る天井と該天井の上方に拡がる頂部空間をトンネル軸に直交する鉛直断面において左右に仕切る隔壁とからなるトンネル仕切り体を前記トンネルから撤去するトンネル仕切り体の撤去方法において、
前記トンネル仕切り体のうち、トンネル軸方向に沿った撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体の荷重を受替え用搬送台車で予め受け替え、
前記撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体を該トンネル仕切り体に属する天井の水平姿勢が保持され隔壁の起立姿勢が保持されるように前記トンネルの内面から切り離して撤去対象仕切り体として前記受替え用搬送台車に載置し、
前記受替え用搬送台車を前記トンネル内であって前記撤去対象区間から離間した位置に設けられ前記トンネルの内面近傍に解体用設備が配置された隔壁解体区間に向けて走行させることで、該隔壁解体区間に前記撤去対象仕切り体を移動させ、
前記撤去対象仕切り体を、該撤去対象仕切り体の天井を構成する天井板が水平姿勢を保持され隔壁を構成する隔壁板が起立姿勢から水平姿勢となるように前記解体用設備で解体して撤去対象天井板と撤去対象隔壁板に分離し、
前記撤去対象天井板が前記受替え用搬送台車に載置された状態で該受替え用搬送台車をあらたな撤去対象区間に戻し、前記受替え工程、前記隔壁解体区間への移動工程及び前記解体分離工程を繰り返した後、前記受替え用搬送台車に前記撤去対象天井板が複数段にわたって載置された状態で該撤去対象天井板を前記受替え用搬送台車から運搬用搬送台車に所定の積替え地点で積み替え、
前記運搬用搬送台車に載置する形で前記撤去対象天井板を前記トンネルの外に搬出するものである。
【0017】
[第1の発明]
第1の発明に係るトンネル仕切り体の撤去方法においては、トンネルの内部空間に設置されたトンネル仕切り体を撤去するにあたり、まず、トンネル仕切り体のうち、トンネル軸方向に沿った撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体の荷重を搬送台車で予め受け替える。
【0018】
受替えにあたっては、必要に応じて搬送台車に備えられた昇降機構を駆動させて該搬送台車に設けられた載置台の上面を天井板の下面に当接させ、あるいは載置台と天井板との間にスペーサーを介在させるようにすればよい。
【0019】
次に、撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体を該トンネル仕切り体に属する天井の水平姿勢が保持され隔壁の起立姿勢が保持されるように、トンネルの内面から切り離して撤去対象仕切り体として搬送台車に載置する。
【0020】
トンネル仕切り体をトンネル内面から切り離す際には、切り離し後に隔壁が倒れないよう、必要に応じて隔壁の両側面にステーを張るなどの措置を予め講じる。
【0021】
次に、搬送台車を隔壁解体区間に向けて走行させることで、該隔壁解体区間に撤去対象仕切り体を移動させる。
【0022】
次に、撤去対象仕切り体を、該撤去対象仕切り体の天井を構成する天井板が水平姿勢を保持され隔壁を構成する隔壁板が起立姿勢から水平姿勢となるように、上述した解体用設備で解体して撤去対象天井板と撤去対象隔壁板に分離する。
【0023】
次に、上述した解体分離工程の後、トンネルの外にすぐに搬出するのではなく、撤去対象天井板が搬送台車に載置された状態で該搬送台車をあらたな撤去対象区間に戻し、上述した受替え工程、切り離し工程、隔壁解体区間への移動工程及び解体分離工程を繰り返した後、搬送台車に撤去対象天井板が複数段にわたって載置された状態で該搬送台車をトンネルの外に走行させる。
【0024】
このように、本発明に係るトンネル仕切り体の撤去方法によれば、撤去対象区間とは別に隔壁解体区間を同一トンネル内に設けて該隔壁解体区間に撤去対象仕切り体を移動させるとともに、撤去対象仕切り体を、隔壁板が起立姿勢から水平姿勢となるように隔壁解体区間に設けられた解体用設備で解体して撤去対象天井板と撤去対象隔壁板に分離するようにしたので、トンネル外に解体ヤードを設けずとも、さらには該解体ヤードまで微速走行を余儀なくされることなく、トンネル仕切り体を天井板と隔壁板に分離し、これらをトンネル外に速やかに搬出することが可能となる。
【0025】
加えて、解体用設備は、隔壁解体区間に設置しておけば足りるので、設備負担もわずかで済む。
【0026】
また、撤去対象天井板が搬送台車に載置された状態で該搬送台車をあらたな撤去対象区間に戻し、上述した受替え工程、切り離し工程、隔壁解体区間への移動工程及び解体分離工程を繰り返すようにしたので、より多くの撤去対象天井板をまとめてトンネル外に搬出することが可能となり、撤去効率が向上する。
【0027】
上述した構成において、最初の撤去対象区間に係る撤去対象天井板とその上に同じく最初の撤去対象区間に係る撤去対象隔壁板が積載された状態で2番目の撤去対象区間に戻し、該撤去対象区間で2番目の撤去対象仕切り体を受替え載置してから隔壁解体区間に移動させて解体し、次いで、分離された2番目の撤去対象天井板及び撤去対象隔壁板を、撤去対象天井板の上に撤去対象隔壁板が積載される形で、最初の撤去対象天井板とその上に積載された撤去対象隔壁板に段重ねし、以下、同様にして撤去対象隔壁板を間に挟み込みながら撤去対象天井板を搬送台車に複数段に載置する手順を適当な回数だけ繰り返した後、トンネル外に搬出する構成が典型例となるが、撤去対象天井板は左右2枚で一組であり、水平姿勢での配置幅が例えば10mとなるのに対し、撤去対象隔壁板は一枚構成であって水平姿勢での配置幅が例えば5mとなるため、撤去対象隔壁板を挟み込みながら撤去対象天井板を積み上げる手順だと、搬送上の安定性を確保するのに手間を要する場合が考えられる。
【0028】
その場合には、撤去対象隔壁板を別の場所に仮置きし、撤去対象天井板だけを複数段にわたって搬送台車に載置するようにすればよい。
【0029】
[第2の発明]
第2の発明に係るトンネル仕切り体の撤去方法においては、トンネルの内部空間に設置されたトンネル仕切り体を撤去するにあたり、まず、トンネル仕切り体のうち、トンネル軸方向に沿った撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体の荷重を受替え用搬送台車で予め受け替える。
【0030】
受替えにあたっては、必要に応じて受替え用搬送台車に備えられた昇降機構を駆動させて該受替え用搬送台車に設けられた載置台の上面を天井板の下面に当接させ、あるいは載置台と天井板との間にスペーサーを介在させるようにすればよい。
【0031】
次に、撤去対象区間内に位置するトンネル仕切り体を該トンネル仕切り体に属する天井の水平姿勢が保持され隔壁の起立姿勢が保持されるように、トンネルの内面から切り離して撤去対象仕切り体として受替え用搬送台車に載置する。
【0032】
トンネル仕切り体をトンネル内面から切り離す際には、切り離し後に隔壁が倒れないよう、必要に応じて隔壁の両側面にステーを張るなどの措置を予め講じる。
【0033】
次に、受替え用搬送台車を隔壁解体区間に向けて走行させることで、該隔壁解体区間に撤去対象仕切り体を移動させる。
【0034】
次に、撤去対象仕切り体を、該撤去対象仕切り体の天井を構成する天井板が水平姿勢を保持され隔壁を構成する隔壁板が起立姿勢から水平姿勢となるように、上述した解体用設備で解体して撤去対象天井板と撤去対象隔壁板に分離する。
【0035】
次に、上述した解体分離工程の後、トンネルの外にすぐに搬出するのではなく、撤去対象天井板が受替え用搬送台車に載置された状態で該受替え用搬送台車をあらたな撤去対象区間に戻し、上述した受替え工程、切り離し工程、隔壁解体区間への移動工程及び解体分離工程を繰り返した後、受替え用搬送台車に撤去対象天井板が複数段にわたって載置された状態で該撤去対象天井板を受替え用搬送台車から運搬用搬送台車に所定の積替え地点で積み替える。
【0036】
撤去対象天井板を受替え用搬送台車から運搬用搬送台車に積み替えるにあたっては例えば、受替え用搬送台車と運搬用搬送台車との載荷台の高さを揃えた上で、運搬用搬送台車に設置されたウィンチを作動させることにより、受替え用搬送台車に載置されている撤去対象天井板を運搬用搬送台車の上に牽引する構成を採用することが可能である。
【0037】
次に、運搬用搬送台車に撤去対象天井板が複数段にわたって載置された状態で該運搬用搬送台車をトンネルの外に走行させる。
【0038】
このように、本発明に係るトンネル仕切り体の撤去方法によれば、撤去対象区間とは別に隔壁解体区間を同一トンネル内に設けて該隔壁解体区間に撤去対象仕切り体を移動させるとともに、撤去対象仕切り体を、隔壁板が起立姿勢から水平姿勢となるように隔壁解体区間に設けられた解体用設備で解体して撤去対象天井板と撤去対象隔壁板に分離するようにしたので、トンネル外に解体ヤードを設けずとも、さらには該解体ヤードまで微速走行を余儀なくされることなく、トンネル仕切り体を天井板と隔壁板に分離し、これらをトンネル外に速やかに搬出することが可能となる。
【0039】
加えて、解体用設備は、隔壁解体区間に設置しておけば足りるので、設備負担もわずかで済む。
【0040】
また、撤去対象天井板が受替え用搬送台車に載置された状態で該受替え用搬送台車をあらたな撤去対象区間に戻し、上述した受替え工程、切り離し工程、隔壁解体区間への移動工程及び解体分離工程を繰り返すようにしたので、より多くの撤去対象天井板をまとめてトンネル外に搬出することが可能となり、撤去効率が向上する。
【0041】
また、撤去対象仕切り体の受替えは受替え用搬送台車で行い、解体された撤去対象天井板や撤去対象隔壁板の搬出は運搬用搬送台車で行うようにしたので、搬出作業の完了を待たずに、あるいは別の受替え用搬送台車をトンネル内に進入させることなく、積替え後の受替え用搬送台車を利用してあらたな撤去対象区間に対する撤去対象仕切り体の解体分離を行うことが可能となり、かくして解体分離と搬出とが分業され、全体の撤去工程をさらに短縮することができる。
【0042】
上述した構成においては、最初の撤去対象区間に係る撤去対象天井板とその上に同じく最初の撤去対象区間に係る撤去対象隔壁板が受替え用搬送台車に積載された状態で該受替え用搬送台車を2番目の撤去対象区間に戻し、該撤去対象区間で2番目の撤去対象仕切り体を受替え載置してから隔壁解体区間に移動させて解体し、次いで、分離された2番目の撤去対象天井板及び撤去対象隔壁板を、撤去対象天井板の上に撤去対象隔壁板が積載される形で、最初の撤去対象天井板とその上に積載された撤去対象隔壁板に段重ねし、以下、同様にして撤去対象隔壁板を間に挟み込みながら撤去対象天井板を受替え用搬送台車に複数段に載置する手順を適当な回数だけ繰り返した後、運搬用搬送台車に積み替える構成が典型例となるが、撤去対象天井板は左右2枚で一組であり、水平姿勢での配置幅が例えば10mとなるのに対し、撤去対象隔壁板は一枚構成であって水平姿勢での配置幅が例えば5mとなるため、撤去対象隔壁板を挟み込みながら撤去対象天井板を積み上げる手順だと、積替え時あるいは搬送時の安定性を確保するのに手間を要する場合が考えられる。
【0043】
その場合には、撤去対象隔壁板を別の場所に仮置きし、撤去対象天井板だけを複数段にわたって受替え用搬送台車に載置するとともに、これを運搬用搬送台車に積み替えるようにすればよい。
【0044】
[第1の発明及び第2の発明に共通する構成についての説明]
トンネル仕切り体は、横流換気方式における送排気ダクトの形成を目的とした構造体であって、プレキャストコンクリートで形成された矩形の天井板をトンネル軸に直交する方向に沿って2枚が隣り合うようにかつトンネル軸方向に沿って連続するように水平配置し、それらの対向縁部をトンネルの頂部に取り付けられた吊り金具の下端に連結するとともに、反対側縁部をトンネルの対向側壁に連結することで天井を構成するとともに、同じくプレキャストコンクリートで形成された矩形の隔壁板を、吊り金具が配置された鉛直面に沿ってトンネル軸線方向に連続配置することで隔壁を構成してなるものが主たる対象となるが、本発明のトンネル仕切り体は、天井に対して隔壁が起立したものであれば足り、吊り金具に代えて隔壁で天井を吊持するように構成されたものも含まれるし、トンネル換気用としては用いられていない場合や、トンネル照明設備の設置あるいは電気通信ケーブル等の敷設といったトンネル換気以外を目的としたものであってもかまわない。
【0045】
撤去対象区間は、トンネルからの切離しが一度に可能な長さ範囲として、トンネルの全区間をトンネル軸に沿って区割りして定めることが可能であり、搬送台車あるいは受替え用搬送台車の種類や機能に応じて例えば50m程度に設定することができる。
【0046】
搬送台車や受替え用搬送台車は、走行用の駆動機構を自ら備えたものであるかどうかは問わないが、例えばドーリーと呼ばれる自走式多軸台車を用いることが可能である。
【0047】
隔壁解体区間は、撤去対象区間と同じトンネル内であって、該撤去対象区間から離間した位置に設けられるとともに、トンネルの内面近傍に解体用設備を配置してあり、撤去対象仕切り体を隔壁解体区間に移動させるにあたっては、解体用設備の作業範囲に撤去対象仕切り体を位置決めする。
【0048】
解体用設備は、撤去対象仕切り体を解体したときに、隔壁板が起立姿勢から水平姿勢に移行される形で天井板から分離できるように構成する必要があるが、起立姿勢から水平姿勢への姿勢移行には必ずしも引上げ操作を伴うものではないので、その意味では揚重可能な設備である必要はない。
【0049】
解体用設備は、トンネル内面のうち、異なる角度位置に取り付けられた複数のウィンチで構成することが可能であるし、安全面で問題がないのであれば、頂部近傍のみに取り付けられた単体のウィンチで構成することも可能である。
【0050】
トンネル軸方向に沿った解体用設備の設置範囲、すなわち隔壁解体区間の長さは、撤去対象区間と同等の長さ、例えば50mとすることで、撤去対象仕切り体をまとめて解体することができるが、これを例えば5分の1に分割して10mとした上、撤去対象仕切り体をトンネル軸方向に10mずつずらしては解体する手順を繰り返す構成、さらには、トンネル軸方向に沿った天井板や隔壁板の長さ(奥行き)を基準としてこれを例えば1mとした上、撤去対象仕切り体をトンネル軸方向に1mずつずらしては解体する手順を繰り返す構成が可能であり、いずれを選択するかは、解体に要する時間と解体用設備の設置コストとの兼ね合いで適宜定めればよい。