(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼器ライナと、該燃焼器ライナの外周に設けられたフロースリーブとを備え、前記燃焼器ライナと前記フロースリーブとで伝熱媒体が流通する環状流路を形成したガスタービン燃焼器において、
前記フロースリーブの内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ縦渦を発生させる複数の渦発生手段を備え、
前記複数の渦発生手段は、発生させる渦の回転方向が互いに逆向きとなる前記渦発生手段が対となって配置されており、
前記フロースリーブにおける前記渦発生手段の伝熱媒体の流れ方向の下流位置であって、対となって配置された前記縦渦発生器によって形成される縦渦の回転方向と前記インピンジ冷却孔から流入する伝熱媒体の噴流の方向とが一致する位置に、インピンジ冷却孔が配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フロースリーブ内側表面に伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器の断面図である。
【
図2】フロースリーブ内側表面に伝熱装置を備えた具体例である。
【
図3】部材表面に渦発生手段を成型加工した伝熱装置の例である。
【
図4】渦発生手段を成型加工し、円筒形状に曲げ加工した後、フロースリーブ内周側に挿入した伝熱装置の例である。
【
図5】燃焼器ライナ外側表面に乱流促進手段を設けたガスタービン用燃焼器の断面図である。
【
図6】伝熱装置を備えたフロースリーブにインピンジ冷却孔を設けた例である。
【
図7】他の実施例に係わるフロースリーブ内側表面に内向きガイドベーンを備えたガスタービン用燃焼器の断面図である。
【
図8】他の実施例に係わる部材表面に内向きガイドベーンを成型加工し、円筒形状に曲げ加工した後、フロースリーブ内周側に挿入した伝熱装置の例である。
【
図9】他の実施例に係わる燃焼器ライナ外側表面に乱流促進手段を狭い間隔で多数設けたガスタービン用燃焼器の断面図である。
【
図10】フロースリーブ内側表面に並設した渦発生手段の設置位相を列毎に変えた伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器の断面図である。
【
図11】渦発生手段の設置位相を列毎に変えて生成した縦渦の流線を示した図である。
【
図12】従来の伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器の断面図である。
【
図13】渦発生手段と乱流促進手段の流線と伝熱促進概念を示した図である。
【
図14】ガスタービン用燃焼器を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明する本発明の各実施例は、伝熱装置を備えたガスタービン燃焼器に係わり、特に強制対流による流体と部材の間の伝熱を促進する装置、すなわち、部材の表面に沿って伝熱媒体を流通させ、部材と伝熱媒体間で熱授受を行うようにした伝熱装置を備えたガスタービン燃焼器に関するものである。
【0015】
強制対流伝熱においては、効率向上のため、伝熱促進に対して圧力損失の増大を抑制することが必要である。例えば、ガスタービンの効率向上のためには、燃焼ガス温度を高くする必要があり、それに伴い、ライナ冷却強化が求められるが、更なる冷却促進法では圧力損失増大を避ける必要がある。そのような中で、衝突噴流冷却(インピンジ冷却)においては、噴流速度の増加に伴い圧力損失が大きくなることがある。また、フィン冷却では、フィンの増加とともに圧力損失が大きくなる傾向がある。リブによる乱流促進は圧力損失増加が少ないものの、リブ間隔を狭くしても大幅な冷却性能向上が望めないため、リブを増やすことによる冷却促進には限界がある。
【0016】
そのため、圧力損失の増大を抑制しつつ伝熱性能の向上を図るために伝熱装置を備えた燃焼器ライナが多数提案されている。その具体例の一つが燃焼器ライナ外側表面に板状の渦発生手段とリブ状の乱流促進手段を設けることにより、少ない圧力損失で冷却性能を向上させるものである。このような技術の基本構造は伝熱装置を温度が高温側となる燃焼器ライナ表面に設置するものとなっているため、燃焼器ライナ表面に付加する部品や溶接カ所が増加し、製造コストの増加および熱的強度の関係から製品信頼性の確保に多くのコスト・時間を要することとなる。
【0017】
次に、特許文献6では、燃焼器ライナ外側表面とフロースリーブ内側表面にそれぞれガイドフィンを設ける具体例が示されている。特許文献6に記載された燃焼器の基本構造は、燃焼器ライナとフロースリーブで形成される環状流路の断面積をガイドフィンの設置によって狭める(減少)ことにより、通過する空気(伝熱媒体)の流速を速めて伝熱効果向上を図るものである。しかし、流速の増加は圧力損失を増大させ、ガスタービン全体の効率低下を招く一因になる。
【0018】
そこでこれらの事情を考慮し、製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制する機器の伝熱装置を提供する。例えば、その一つであるガスタービン燃焼器においては、ガスタービン効率の低下を最小限に抑えた圧力損失で必要な冷却性能を維持し、構造強度の信頼性を向上させ、予混合燃焼空気を増加させて低NOx化を図るとともに、伝熱性能(冷却効果)をより向上させる機器構成とした渦発生手段を供する。
【0019】
より具体的な例としては、伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器構成の中で、伝熱媒体の環状流路を形成する内周側の燃焼器ライナと外周側のフロースリーブとを備え、外周側のフロースリーブの内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる渦発生手段を設ける。
【0020】
また他の具体的な例としては、環状流路を形成する内周側の燃焼器ライナと外周側のフロースリーブにおける、フロースリーブの内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる渦発生手段を設け、かつ、燃焼器ライナ外側表面に伝熱媒体に生ずる境界層を破壊する乱流促進手段を設ける。
【0021】
また更に他の具体的な例としては、部材表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる渦発生手段を成型加工し、円筒形状に曲げ加工した後、フロースリーブ内周側に挿入することでフロースリーブ内側表面に、前記渦発生手段を形成する。
【0022】
また更に他の具体的な例としては、渦発生手段を設けたフロースリーブに、渦発生手段下流位置にインピンジ冷却孔を付加する。
【0023】
また更に他の具体的な例としては、軸方向に並設した渦発生手段の設置位相を列毎に変えて設置する。
【0024】
このような構成によれば、フロースリーブ内側表面に伝熱装置を備えることにより、製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制できる。また、燃焼器ライナに取り付ける部品の減少により溶接カ所を低減できることから、燃焼器ライナの信頼性向上、それに伴う長寿命化が図れる。また、溶接カ所の低減は燃焼器ライナ変形も抑制できる。更に、フロースリーブ内側表面に渦発生手段を設けたことにより、燃焼器ライナ外側表面に設置する乱流促進手段の取付け自由度が増え、局所的な冷却効果向上を図れる。
【0025】
以下、図示した実施例に基づき本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、伝熱装置を備える機器に対して適用範囲は広いが、特に、ここでは高温状態で使用され、かつ流れが乱流場であるガスタービン燃焼器を主な例として説明する。
【0026】
図14は、ガスタービン燃焼器の断面を示したものである。燃焼器は主に、燃焼器ライナ1、トランジションピース3、フロースリーブ2がケーシング4内に収められた構成となっている。燃焼器の上流端中央部には拡散燃焼用バーナ7が配置され、その外周には環状の予混合用燃焼用バーナ8が配置されている。燃焼器ライナ1とフロースリーブ2は、ほぼ同心円状の二重円筒構造となっており、フロースリーブの直径を燃焼器ライナより大きくすることで環状流路を形成している。
【0027】
この環状流路の中を伝熱媒体である空気5が流れる。すなわち、圧縮機から供給される伝熱媒体(空気5)は、燃焼器ライナ1とフロースリーブ2の間の環状流路内を流れる際、燃焼器ライナ1の冷却流体として使用される。その後、予混合燃焼用空気6と拡散燃焼用空気9に分かれて燃焼器ライナ内へ供給され、それぞれ燃焼用空気として用いられる。燃焼ガス31は、燃焼器ライナ1内部を通り、トランジションピース3を経てタービンに供給される。
【0028】
図13に、各実施例に係わる渦発生手段10と乱流促進手段11の流線と伝熱促進の概念を示す。渦発生手段10は、伝熱媒体流通側表面から突き出した板状の突出部により構成されている。そして、この突出部は、伝熱媒体の主流方向に対して一定の仰角γを有しているため、流れ方向に回転軸を持つ縦渦が発生し、流路内の伝熱媒体(空気5)を大きく撹拌しながら縦渦を形成して下流に向かって流れる。
【0029】
この伝熱媒体が大きく撹拌しながら流れるということは、例えば、ガスタービン用燃焼器に適用して考えると、燃焼器ライナとフロースリーブで形成される環状流路内に渦発生手段を設けた場合、温められた空気と冷たい空気が縦渦により交換される。その結果、燃焼器ライナ表面に常に低温の伝熱媒体が供給されることから、燃焼器ライナ表面の対流冷却を効率良く行うことができることとなる。
【0030】
更に、燃焼器ライナ表面に設けた乱流促進手段11の長軸方向が、伝熱媒体の主流方向に対して交差させることにより、ライナ壁面近傍にはく離渦が発生する。このはく離渦は、壁面近傍に生ずる伝熱媒体の境界層を破壊する効果が大きいため、渦発生手段と併用することによってより大きな冷却促進効果が得られる。この乱流促進手段11の高さhは、はく離渦のライナ再付着距離を考慮して決められる。
【0031】
一般的に、再付着距離L=10h(高さの10倍)であることが定性的に知られていることから、本発明の各実施例における乱流促進手段11の高さhは1〜数mm程度の大きさを基本として想定している。また、渦発生手段10の仰角γおよび高さHは、仰角γが10°〜20°を持ち、かつ、高さHが伝熱媒体の流通する流路の1/4〜1/2に形成されるものを想定している。
【0032】
各実施例の中で、ガスタービンの全体構成や燃料ノズルを含む燃焼器の詳細な作用についての説明は除くこととし、それらについては、特許文献1の内容を参照されたい。また、フロースリーブとは、燃焼器に供給される空気の流速や偏流を調節するために、燃焼器ライナ外周側に設ける円筒形状の構造体である。
【実施例1】
【0033】
図1は、本実施例のフロースリーブ2内側表面に伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器の構成を示す例である。燃焼器ライナ1とフロースリーブ2は、ほぼ同心円状の二重円筒構造となっており、フロースリーブの直径を燃焼器ライナより大きくすることで環状流路を形成し、この環状流路の中を伝熱媒体である空気5が流れる。このフロースリーブ2内側表面に、伝熱媒体の流れ方向に回転軸を持つ縦渦を発生させる渦発生手段10を流通方向に並設する。ここで述べている渦発生手段の並設とは、発生する渦の回転方向が互いに逆向きとなるような仰角を持たせた渦発生手段10を対とし、対の渦発生手段を複数等間隔でフロースリーブ内側の周方向に設けて列を成し、その列を流通方向に対して一定の間隔を保ちながら並べるように設置することである。
【0034】
また、
図2中の拡大詳細図に示すように、渦発生手段10は、隣接する渦発生手段と対になって構成されており、発生する渦の回転方向が互いに逆向きとなるような仰角を持たせて設置している。更に、フロースリーブ2内側表面に並設した渦発生手段の間隔は、前段の渦発生手段によって発生する渦が消滅する位置より短い距離間隔とし、常に燃焼器ライナ1とフロースリーブ2の間隙内で縦渦が存在するように設けることとする。
【0035】
このように発生させる渦の回転方向が互いに逆向きとなる渦発生手段10を対にして配置することにより、逆回転の縦渦同士が互いに作用しあうため、効率よく縦渦を形成して保持することができる。そのため、少ない圧力損失で十分な冷却を行なう事が可能となり、製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制することができる。また、対の渦発生手段をフロースリーブ2の周方向に複数配置して列を形成し、この列をフロースリーブ2の軸方向に複数列配置することにより、燃焼器ライナ全体を効果的に冷却することが可能となる。
【0036】
図2に、フロースリーブ2内側表面に渦発生手段10を設置した本実施例の具体例を示す。ここでは、個々の渦発生手段10をフロースリーブ2内側表面に溶接もしくはスポット溶接にて固定したものを示している。また、従来の伝熱装置を備えたガスタービン燃焼器の例を
図12に示す。従来の伝熱装置では、燃焼器ライナ外側表面に渦発生手段と乱流促進手段の両方を備えたことを特徴としており、高温となる燃焼器ライナ側に伝熱装置を設置する構造となっている。
【0037】
これに対し本実施例のようにフロースリーブ2内側表面に渦発生手段10を設置することのメリットは、低温部材側であるフロースリーブ2に設置することにより渦発生手段10溶接部の熱疲労が少ないため、伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器としての製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制できる点にある。また、燃焼器ライナに取り付ける部品の減少により溶接カ所を低減できることから、コスト低減が図れ、かつ、燃焼器ライナ変形も抑制できる。すなわち、フロースリーブは燃焼器ライナと異なり、伝熱媒体が流れる環状流路を形成するためのものであるため常に低温状態であり、冷却を必要としない。そのため、フロースリーブを製作する材質は炭素鋼など安価な材料で良い。
【0038】
更に、フロースリーブ側に渦発生手段を設置することで、燃焼器ライナを交換しても伝熱装置である渦発生手段をそのまま継続して使用することができ交換する必要もない。フロースリーブに対して燃焼器ライナの主な作用は、高温の燃焼ガス31と伝熱媒体である空気5を仕切ることであるため、常に一定温度以下に冷却する必要がある。この燃焼器ライナで溶接による変形が生じると、局所的に冷却用空気のバランスが崩れ、冷却空気量不足による燃焼器ライナの焼損が考えられる。しかし、本発明では、燃焼器ライナに取り付ける部品の減少により溶接カ所を低減できることから燃焼器ライナ変形も抑制でき、製品信頼性が向上する。
【0039】
他に、特許文献6には、「燃焼筒外筒に設置するガイドフィンだけで、環状流路の流れを燃焼筒の近くで増速させ、熱伝達率を向上させる効果」が示されている。すなわち、フロースリーブ内側表面に主流方向に対して30°〜60°の角度でそれぞれ断続するガイドフィンを設けることにより、環状流路の断面積を狭め(減少)、通過する空気(伝熱媒体)の流速を速めて伝熱効果(冷却効果)向上を図るものであるが、流速の増加は圧力損失を増大させることとなる。
【0040】
また、発生する渦に着目した場合、特許文献6で示されている燃焼器ライナ外側表面の周方向に断続するガイドフィンを設けた構造は、伝熱媒体(空気)がガイドフィン両端の隙間を通過する際、燃焼器ライナ表面上で横渦(平面渦)を生成する構造である。この横渦(平面渦)によれば、燃焼器ライナ表面の境界層を破壊できるため、冷却効果は局所的に向上する。しかしながら、この横渦(平面渦)は下流方向に流れるに従って温度が高くなるため、徐々に伝熱特性(冷却性能)が低下する。
【0041】
これに対し本実施例では、主流方向に対する渦発生手段10の角度が10°〜20°と鋭角であるため、ほとんど環状流路内の断面積を減少させることがなく、圧力損失の増加を抑制できる。更に、並設した渦発生手段により、環状流路内で常に縦渦が存在しているため、流路内全域にて、冷たい伝熱媒体(空気)が撹拌され冷却特性の低下を防げる。
【実施例2】
【0042】
図3は、実施例2における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。シート状の部材19の表面に、伝熱媒体の流れ方向に回転軸を持つ縦渦を発生させる渦発生手段10を一体成型で加工し、それを円筒形状に曲げた後、フロースリーブ2内側表面に挿入し、スポット溶接にて固定して製作するものである。
図4に、シート状の部材19を成型加工して製作した伝熱装置をフロースリーブ2内周側に挿入した具体例を示す。
【0043】
ここで、渦発生手段10を持つ伝熱装置の製造方法について簡単に説明する。シート状の部材19において、流通方向に対して一定の仰角を持たせた渦発生手段10をプレス機等により成型加工し、成型された渦発生手段10を持つ複数の部材19を流通方向に並設する。この渦発生手段は、隣接する渦発生手段によって発生する渦の回転方向が互いに逆向きとなるように仰角を持たせて成型する。
【0044】
この製造方法であるならば、金型を作ることによって、シート状の部材19に一体成型で簡単に渦発生手段を備えた伝熱装置を加工することができ、かつ、製造方法の簡素化によりコスト低減も図れる。
【実施例3】
【0045】
図5は、実施例3における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、燃焼器ライナ1外側表面に乱流促進手段11を設置したものである。このように、伝熱媒体の流れ方向と交差させるように設置した乱流促進手段11の作用は、燃焼器ライナ1壁面近傍にはく離渦を発生させる。この渦は、渦発生手段10のような流路全体を大きく撹拌するような効果は持たないが、燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊する効果が大きいため、フロースリーブ内側表面に設けた渦発生手段10と併用することにより、冷却促進効果は相乗的に大きくなる。
【0046】
これは、乱流促進手段11によって形成されるはく離渦が燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊することにより、フロースリーブ2側から縦渦によって運ばれる低温の空気を燃焼器ライナ1の冷却に有効に利用できるためである。そのため、渦発生手段10と燃焼器ライナの外側表面に伝熱媒体に生ずる境界層を破壊する乱流促進手段11を同時に備えた本実施例の構成によれば、冷却効率を更に向上させることが可能となるため、より顕著な製品信頼性の向上効果及び圧力損失増大の抑制効果を得る事ができる。
【実施例4】
【0047】
図6は、実施例4における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、内側表面に渦発生手段10を備えたフロースリーブ2にインピンジ冷却孔20を設けたものである。このインピンジ冷却孔20は、渦発生手段10の下流側位置に設けている。すなわち、渦発生手段10の下流側直後の領域では、縦渦12が徐々に発達しながら流れるため縦渦による撹拌効果が十分得られない領域が生じることとなる。そのため、渦発生手段10下流側直後にインピンジ冷却孔20を設けることにより、インピンジ冷却孔より流入した伝熱媒体により縦渦12を破壊することなく短い距離で燃焼器ライナ側へ押し付ける効果が得られるため、燃焼器ライナ全域を効果的に冷却するものである。
【0048】
すなわち、
図6中の拡大詳細図で示すように、渦発生手段10下流側直後の領域では十分に発達した縦渦12が生成されないため、撹拌作用が小さく対流冷却効果が得られない。そのため、本実施例では、この渦発生手段10下流側直後の領域にインピンジ冷却孔20を設け、そのインピンジ冷却と併用することで冷却効果向上を図っている。本実施例の構成によれば、発達した縦渦12が生成されない渦発生手段10下流側直後の領域をインピンジ冷却によって冷却することが可能となるため、製品信頼性を向上させる事が可能である。
【0049】
また、従来のインピンジメント冷却による冷却構造と比較した場合、本実施例の構成であれば、渦発生手段10によって形成される縦渦との相乗効果により、インピンジ冷却孔20の設置数をむやみに増加させること無く十分な冷却性能を実現できるため、圧力損失の増大を抑制する事ができる。
【0050】
さらに、
図6の矢視図に示すように、対となった渦発生手段10によって形成される縦渦12の回転方向とインピンジ冷却孔20から流入する伝熱媒体の噴流14の噴射方向とが一致するようにインピンジ冷却孔20を配置することにより、インピンジ冷却孔20から流入する伝熱媒体の噴流14によって縦渦12を強化することができる。また、縦渦12にインピンジ冷却孔20から流入した低温の伝熱媒体を取り込む事ができる。これにより冷却性能をさらに向上させることができるため、製品信頼性の向上しつつ、圧力損失の増大を抑制する事ができる。
【実施例5】
【0051】
図7は、他の実施例に係わる伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、フロースリーブ2内側表面において、初段の渦発生手段前方(上流側)に伝熱媒体の流れが強制的に内周方向(内向き)に向きを変える内向きガイドベーン21を設けたものである。この内向きガイドベーン21よって、低温の伝熱媒体の流れの一部が燃焼器ライナ表面側へ供給される。
【0052】
特に冷却効果を必要とする局所的な領域に内向きガイドベーン21と渦発生手段10を併用することによって、燃焼器ライナ1の冷却を効果的に向上することができる。この内向きガイドベーン21は渦発生手段と比較して流体抵抗が大きいため圧力損失の増加させることとなるが、強制的に伝熱媒体の流れの向きを変える内向きガイドベーン21を設けることによって、燃焼器ライナ全体を効果的に冷却するものである。
【0053】
また、
図8に、シート状の部材19を成型加工して製作した伝熱装置をフロースリーブ2内周側に挿入した具体例を示す。シート状の部材19の表面に、伝熱媒体の流れが内周方向(内向き)に向きを変える内向きガイドベーン21を一体成型で加工し、それを円筒形状に曲げた後、フロースリーブ2内周側に挿入し、スポット溶接にて固定して製作するものである。この製造方法であるならば、金型を作ることによって、シート状の部材19を一体成型で簡単に内向きガイドベーン21を加工することができ、かつ、製造方法の簡素化によりコスト低減も図れる。
【実施例6】
【0054】
図9は、実施例3に係わる他の伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。フロースリーブ2内側表面に渦発生手段10を設置することにより、燃焼器ライナ外側表面に設ける乱流促進手段11の本数、間隔の自由度が増加するという利点が生じる。これにより、特に冷却を強化したい燃焼器ライナ下流側領域(トランジションピース3側)表面に乱流促進手段11を他の領域より狭い間隔で多数設置することが可能となる。
【0055】
この乱流促進手段11は燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊する効果が大きいため、フロースリーブ内側表面に設けた渦発生手段10と併用することにより冷却促進効果はより大きくなる。
【実施例7】
【0056】
図10は、実施例1に係わる他の伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、フロースリーブ2内側表面に、並設して設けた渦発生手段10の位相を列毎に変えて設置したものである。具体的には
図11に示すように、渦発生手段の位相が前後の列で異なるように設置することにより、上流側の縦渦発生手段によって生成された縦渦を、下流側の縦渦発生手段によって生成された縦渦で巻き込むことによって撹拌効果が得られ、燃焼器ライナ壁面の冷却特性領域を拡大するものである。
【0057】
本実施例の構成によれば、上流側の縦渦発生手段によって生成された1A渦と1B渦の対の縦渦は下流側に流れ、やがて、下流側の縦渦発生手段によって生成された縦渦の3B渦に巻き込まれて撹拌される。この作用は、下流に流れるに従って縦渦発生手段の列毎に繰り返されることになる。そのため、環状流路内で位相が異なる縦渦が形成されるため、より大きな撹拌効果が得られ、燃焼器ライナの冷却効果向上を図ることができる。