【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の給水加温システム1の実施例1を示す概略図である。
本実施例の給水加温システム1は、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムであり、ボイラ2への給水を貯留する給水タンク3と、この給水タンク3への給水を貯留する補給水タンク5と、この補給水タンク5から給水タンク3への給水を加温するヒートポンプ4と、このヒートポンプ4の熱源としての熱源水(たとえば廃温水)を貯留する熱源水タンク6とを備える。
【0025】
ボイラ2は、蒸気ボイラであり、給水タンク3からの給水を加熱して蒸気にする。ボイラ2は、典型的には、蒸気の圧力を所望に維持するように、燃焼量を調整される。また、ボイラ2は、缶体内の水位を所望に維持するように、給水タンク3からボイラ2への給水路またはボイラ2の内部に設けたポンプ7が制御される。ボイラ2からの蒸気は、各種の蒸気使用設備(図示省略)へ送られるが、蒸気使用設備からのドレン(蒸気の凝縮水)を給水タンク3へ戻してもよい。
【0026】
給水タンク3は、補給水タンク5から、ヒートポンプ4を介して給水路8により給水可能であると共に、ヒートポンプ4を介さずに補給水路9により給水可能である。給水路8に設けた給水ポンプ10と、補給水路9に設けた補給水ポンプ11との作動を制御することで、給水路8と補給水路9との内、いずれか一方または双方を介して、補給水タンク5から給水タンク3へ給水可能である。
【0027】
給水ポンプ10は、本実施例では、インバータにより回転数を制御可能とされる。給水ポンプ10の回転数を変更することで、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整することができる。一方、補給水ポンプ11は、本実施例では、オンオフ制御される。
【0028】
補給水タンク5は、給水タンク3への給水を貯留する。補給水タンク5への給水として、本実施例では軟水が用いられる。すなわち、軟水器(図示省略)にて水中の硬度分を除去された軟水は、補給水タンク5に供給され貯留される。補給水タンク5の水位に基づき軟水器からの給水を制御することで、補給水タンク5の水位は所望に維持される。
【0029】
ヒートポンプ4は、蒸気圧縮式のヒートポンプであり、圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14および蒸発器15が順次環状に接続されて構成される。そして、圧縮機12は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器13は、圧縮機12からのガス冷媒を凝縮液化する。さらに、膨張弁14は、凝縮器13からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器15は、膨張弁14からの冷媒の蒸発を図る。
【0030】
従って、ヒートポンプ4は、蒸発器15において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器13において、冷媒が外部へ放熱して凝縮することになる。これを利用して、本実施例では、ヒートポンプ4は、蒸発器15において、熱源水から熱をくみ上げ、凝縮器13において、給水路8の水を加温する。
【0031】
ヒートポンプ4は、さらに、凝縮器13と膨張弁14との間に、過冷却器16を備えるのが好ましい。過冷却器16は、凝縮器13から膨張弁14への冷媒と、凝縮器13への給水との間接熱交換器である。過冷却器16により、凝縮器13への給水で、凝縮器13から膨張弁14への冷媒を過冷却することができると共に、凝縮器13から膨張弁14への冷媒で、凝縮器13への給水を加温することができる。ヒートポンプ4の冷媒は、好適には、凝縮器13において潜熱を放出し、過冷却器16において顕熱を放出する。
【0032】
つまり、凝縮器13において、ガス冷媒は凝縮して液冷媒となり、その液冷媒が過冷却器16に供給されて、過冷却器16において、液冷媒はさらに冷却(過冷却)される。冷媒の凝縮用と過冷却用とで熱交換器を分けることで、熱交換器の設計が容易となり、熱交換器を簡易な構造で小型化でき、コスト削減を図ることができる。また、汎用の熱交換器の利用も可能となる。
【0033】
その他、ヒートポンプ4には、圧縮機12の入口側にアキュムレータを設置したり、圧縮機12の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器13の出口側(凝縮器13と過冷却器16との間)に受液器を設置したりしてもよい。
【0034】
ところで、ヒートポンプ4は、その出力を変更可能とされてもよい。たとえば、圧縮機12のモータの電源周波数ひいては回転数をインバータで変更することで、ヒートポンプ4の出力を変更することができる。
【0035】
給水加温システム1は、さらに、廃熱回収熱交換器17を備えるのが好ましい。この廃熱回収熱交換器17は、過冷却器16への給水と、蒸発器15を通過後の熱源水との間接熱交換器である。従って、給水路8の水は、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13へと順に通されることになる。一方、熱源水タンク6の熱源水は、熱源供給路18を介して、蒸発器15を通された後、廃熱回収熱交換器17に通される。
【0036】
ところで、給水タンク3内の貯留水は、過冷却器16および凝縮器13を順に通されつつ、これら熱交換器(16,13)との間で循環して加温可能とされている。そのために、廃熱回収熱交換器17から過冷却器16への給水路8と、給水タンク3とが循環路19で接続されており、その循環路19には循環ポンプ20が設けられている。また、廃熱回収熱交換器17から過冷却器16への給水路8と、給水タンク3からの循環路19とには、互いの合流部よりも上流側にそれぞれ逆止弁21,22が設けられている。
【0037】
このような構成であるから、循環ポンプ20を停止した状態で給水ポンプ10を作動させると、補給水タンク5からの水を、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13に順に通して給水タンク3へ給水することができる。一方、給水ポンプ10を停止した状態で循環ポンプ20を作動させると、給水タンク3内の貯留水を過冷却器16および凝縮器13に順に通して給水タンク3へ戻して、給水タンク3内の貯留水を循環させることができる。
【0038】
熱源水タンク6は、ヒートポンプ4の熱源としての熱源水を貯留する。熱源水とは、たとえば廃温水(工場などから排出される温水)である。なお、熱源水タンク6には、熱源水の供給路23が設けられると共に、所定以上の水をあふれさせるオーバーフロー路24が設けられている。
【0039】
熱源水タンク6の熱源水は、熱源供給路18を介して、ヒートポンプ4の蒸発器15を通された後、廃熱回収熱交換器17を通される。熱源供給路18には、蒸発器15より上流側に熱源供給ポンプ25が設けられており、この熱源供給ポンプ25を作動させることで、熱源水タンク6からの熱源水を、蒸発器15と廃熱回収熱交換器17とに順に通すことができる。
【0040】
蒸発器15を先に通した後に廃熱回収熱交換器17に熱源水を通すことで、廃熱回収熱交換器17を先に通した後に蒸発器15に熱源水を通す場合と比較して、蒸発器15における冷媒の蒸発温度(つまり蒸発圧力)を高めることができ、圧縮機12の圧力比を小さくすることができ、省エネルギーを図ることができる。
【0041】
給水路8には、凝縮器13の出口側に、出湯温度センサ26が設けられる。出湯温度センサ26は、凝縮器13を通過後の水温を検出する。出湯温度センサ26の検出温度に基づき、給水ポンプ10が制御される。ここでは、給水ポンプ10は、出湯温度センサ26の検出温度を設定温度(たとえば75℃)に維持するようにインバータ制御される。つまり、給水路8を介した給水タンク3への給水は、出湯温度センサ26の検出温度を設定温度に維持するように、流量が調整される。但し、場合により、このような出湯温度センサ26による流量調整制御を省略することもできる。
【0042】
給水タンク3には、水位検出器27が設けられる。この水位検出器27は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、給水タンク3には、長さの異なる複数の電極棒28〜30が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて保持されている。本実施例では、給水停止電極棒28、給水開始電極棒29および負荷切替電極棒30が、順に下端部の高さ位置を低くして、給水タンク3に挿入されている。さらに、図示例の場合、運転切替電極棒31も設けられているが、この運転切替電極棒31は、給水開始電極棒29と共用することで、設置を省略することもできる。各電極棒28〜31は、その下端部が水に浸かるか否かにより、下端部における水位の有無を検出する。
【0043】
給水タンク3には、さらに、給水タンク3内の貯留水の温度を検出する貯留水温度センサ32が設けられる。詳細は後述するが、貯留水温度センサ32の検出温度に基づき、循環ポンプ20が制御される。
【0044】
熱源水タンク6には、熱源水の有無を確認するために、水位検出器33が設けられる。この水位検出器33は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、熱源水タンク6には、低水位検出電極棒34が差し込まれており、熱源水の水位が設定を下回っていないかを監視する。
【0045】
熱源水タンク6には、熱源水の温度を検出する熱源温度センサ35が設けられる。但し、熱源温度センサ35は、熱源水タンク6から蒸発器15への熱源供給路18に設けてもよい。
【0046】
次に、本実施例の給水加温システム1の制御(運転方法)について説明する。以下に説明する一連の制御は、図示しない制御器を用いて自動でなされる。
【0047】
本実施例の給水加温システム1は、循環運転と通水運転とを切替可能とされている。基本的には、給水加温システム1の起動時に循環運転がなされ、給水タンク3の水位が所定水位を下回ると、通水運転へ移行する。通水運転への移行後、給水タンク3の貯留水の加温や保温が必要な場合に、手動で循環運転に切替可能とされる。但し、通水運転中、給水タンク3の水位との関係で、給水路8を介した給水タンク3への給水を制御するが、給水路8を介した給水タンク3への給水の停止に伴って、自動で循環運転に切替可能としてもよい。以下、各運転内容について、説明する。
【0048】
《循環運転》
朝一の冷態起動時(ボイラ2の運転前)などの初期加温や保温のために、循環運転がなされる。循環運転は、給水タンク3の水位が所定以上あることを前提に実施される。具体的には、本実施例では、運転切替電極棒31が水位を検知していることを前提に実施される。もし、給水タンク3内の水位が所定未満であれば、通水運転を実行する。
【0049】
循環運転では、給水ポンプ10および補給水ポンプ11を停止した状態で、循環ポンプ20を作動させる。これにより、給水タンク3内の貯留水は、過冷却器16および凝縮器13を順に通されて、これら熱交換器(16,13)との間で循環する。この際、熱源供給ポンプ25を作動させると共にヒートポンプ4を作動させておくことで、循環水の加温を図ることができる。
【0050】
循環運転では、圧縮機12は、吐出圧を設定値に維持するように、インバータ制御される。具体的には、ヒートポンプ4には、圧縮機12の出口側に、冷媒圧力を検出する圧力センサ36が設けられており、この圧力センサ36の検出圧力を設定値に維持するように、圧縮機12のモータの電源周波数をインバータにより変えることで、出力が調整される。なお、圧力センサ36に代えて温度センサを設け、圧縮機12の出口側の温度を設定値に維持するように制御してもよい。いずれにしても、凝縮器13における冷媒温度を安定させることで、循環水の加温に最適となる。
【0051】
給水タンク3内の貯留水の循環は、給水タンク3内の貯留水が上限温度(たとえば70℃)になるまで継続される。貯留水温度センサ32の検出温度が上限温度以上になると、循環ポンプ20を停止して待機し、所定温度まで下がると再び循環させればよい。
【0052】
循環運転中、給水タンク3内の水位が所定未満になると、通水運転へ移行する。具体的には、給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3の水位が下がり、運転切替電極棒31が水位を検知しなくなると、通水運転に移行する。詳細は後述するが、通水運転に移行すると、補給水タンク5の水が、給水路8を介して、ヒートポンプ4で加温されつつ給水タンク3へ供給される。この給水路8を介した給水は、給水タンク3の水位の基づき制御される。
【0053】
《通水運転》
通水運転では、補給水タンク5から給水タンク3へ給水する。給水タンク3には、給水路8を介して給水可能であると共に補給水路9を介しても給水可能であるが、給水路8を介した給水が優先されるように制御されるのが好ましい。たとえば、給水タンク3の水位を設定範囲に維持するように、給水路8を介した給水を制御するが、それでは給水タンク3の水位が設定範囲を維持できない場合には、補給水路9を介しても給水タンク3へ給水するのが好ましい。
【0054】
具体的には、本実施例では、次のように制御される。いま、給水停止電極棒28が水位を検知し、給水タンク3の水位が十分にある場合、給水タンク3への給水は不要であるから、給水ポンプ10を停止すると共に、補給水ポンプ11も停止している。給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3の水位が下がり、給水開始電極棒29が水位を検知しなくなると、給水ポンプ10を作動させる。これにより、給水路8を介して給水タンク3に給水されるが、給水停止電極棒28が水位を検知すると、給水ポンプ10を停止する。一方、給水ポンプ10を作動させても、給水タンク3の水位を回復できず、さらに低い所定の補給水開始水位を下回ると、補給水ポンプ11を作動させて、補給水路9を介しても給水タンク3に給水する。これにより、給水タンク3の水位が回復して、給水タンク3の水位が補給水停止水位を上回ると、補給水ポンプ11を停止して、補給水路9を介しての給水を停止する。なお、給水ポンプ10または循環ポンプ20の作動中、熱源供給ポンプ25も作動させる。
【0055】
給水路8を介した給水中、ヒートポンプ4を運転する。ヒートポンプ4は、その圧縮機12の作動の有無により、運転と停止が切り替えられる。また、ヒートポンプ4は、給水タンク3の水位に基づき出力を制御されるのがよい。本実施例では、給水タンク3の水位が下がり、給水開始電極棒29が水位を検知しなくなると、ヒートポンプ4を低負荷運転し、それでも水位が回復せず、負荷切替電極棒30が水位を検知しなくなると、ヒートポンプ4を高負荷運転に切り替える。そして、水位回復時には、給水開始電極棒29が水位を検知すれば、ヒートポンプ4を低負荷運転に切り替え、給水停止電極棒28が水位を検知すれば、ヒートポンプ4を停止させる。このように、本実施例では、ヒートポンプ4は、通水運転中、高負荷運転(典型的には全負荷運転=100%出力)、低負荷運転(たとえば50%出力)および停止(0%出力)の三位置で制御される。
【0056】
給水路8を介した給水中、給水ポンプ10は、出湯温度センサ26の検出温度を設定温度(出湯温度設定値)に維持するように、回転数をインバータ制御される。その結果、ヒートポンプ4の高負荷運転時は低負荷運転時よりも多い流量で、給水路8を介して給水タンク3へ給水可能となる。
【0057】
ヒートポンプ4を運転して、補給水タンク5から給水路8を介して給水タンク3へ給水する際、補給水タンク5からの給水は、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13により徐々に加温されて、所定温度で給水タンク3へ供給される。給水タンク3とヒートポンプ4(凝縮器13)との間で水を循環させる場合と比較して、補給水タンク5から給水タンク3への一回の通過(ワンススルー)で給水を加温するので、ヒートポンプ4を通過する前後の給水の温度差を確保して、ヒートポンプ4の成績係数(COP)の向上を図ることができる。また、各熱交換器をコンパクトに構成することもできる。
【0058】
また、ヒートポンプ4の運転中、つまり給水路8を介した給水タンク3への給水中、熱源水タンク6の水温を熱源温度センサ35で監視して、その温度に基づきヒートポンプ4の出力を調整してもよい。ヒートポンプ4の熱源としての熱源水の温度が高温なほど、ヒートポンプ4の出力を下げることができる。熱源水の温度を考慮してヒートポンプ4の出力を調整することで、熱源水の温度変化に拘わらず、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を安定させることができる。
【0059】
さらに、ヒートポンプ4の運転中、熱源水タンク6の水位が下がり、低水位検出電極棒34が水位を検知しなくなると、ヒートポンプ4の運転を停止すると共に、熱源供給ポンプ25を停止して蒸発器15への熱源水の供給を停止するのがよい。これにより、ヒートポンプ4を無駄に運転するのが防止される。また、同様に、ヒートポンプ4の運転中(つまり給水路8を介した給水タンク3への給水制御中)、万一、給水路8を通る給水の量が設定を下回ると、ヒートポンプ4の運転を停止すると共に、熱源供給ポンプ25を停止して蒸発器15への熱源水の供給を停止するのがよい。
【0060】
本実施例1の給水加温システム1によれば、初期起動時に給水タンク3内の低温水を加温することができる。また、循環運転と通水運転とを適宜切り替えることで、用途に合わせた運転を行うことができる。
【0061】
ところで、本実施例1では、循環運転において、給水タンク3内の貯留水は、過冷却器16および凝縮器13との間で循環されたが、二点鎖線Xで示すように、凝縮器13との間だけを循環されてもよい。あるいは、給水タンク3内の貯留水は、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13を順に通されつつ、これら熱交換器との間で循環されもよい。その場合、後述する実施例2と同様に、給水ポンプ10と循環ポンプ20とを共用して、循環ポンプ20の設置を省略することもできる。
【実施例2】
【0062】
図2は、本発明の給水加温システム1の実施例2を示す概略図である。
本実施例2の給水加温システム1も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を用いて説明する。
【0063】
本実施例2では、補給水タンク5から給水ポンプ10までの給水路8と、給水タンク3とが循環路19で接続される。そして、給水路8と循環路19との合流部には、三方弁37が設けられている。この三方弁37を切り替えることで、補給水タンク5の水を、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13を順に介して給水タンク3へ給水するか、給水タンク3の水を、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13を順に通して、これら熱交換器(17,16,13)との間で循環させるかを切替可能とされている。この三方弁37の切替えは、給水タンク3または循環路19に設けた貯留水温度センサ32の検出温度に基づき行われる。なお、このような切替えは、給水路8と循環路19との合流部に三方弁37を設けて行う以外に、その合流部より上流において、給水路8と循環路19とにそれぞれバルブを設け、そのいずれを開けるかにより行ってもよい。
【0064】
本実施例2の場合、循環ポンプ20は設置されない。また、給水タンク3の水位検出器27の検出信号に基づき、補給水ポンプ11を制御する。具体的には、補給水停止電極棒38と補給水開始電極棒39とが、順に下端部の高さ位置を低くして給水タンク3に挿入されており、補給水開始電極棒39が水位を検知しなくなると、補給水ポンプ11を作動させ、補給水停止電極棒38が水位を検知すると、補給水ポンプ11を停止する。
【0065】
給水タンク3には、さらに、高水位検出電極棒40が設けられている。後述するように、給水路8を介した給水タンク3への給水中、高水位検出電極棒40が水位を検知すると、圧縮機12を停止する。なお、高水位検出電極棒40による検出水位は、補給水停止電極棒38による検出水位よりも高水位とされる。但し、場合により、高水位検出電極棒40は、補給水停止電極棒38と共用することで、設置を省略することもできる。
【0066】
本実施例2の場合、基本的には、給水タンク3内の貯留水を循環させる。つまり、給水タンク3内の貯留水は、循環路19を介して、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13を順に通され、給水タンク3へ戻される(循環運転)。
【0067】
この循環中、貯留水温度センサ32の検出温度が第一設定温度(たとえば40℃)以下になると、圧縮機12を作動させて、ヒートポンプ4により循環水を加温する(循環加温運転)。なお、圧縮機12の発停と連動して、熱源供給ポンプ25の発停が制御される。
【0068】
このような循環加温運転中、圧縮機12は、吐出圧を設定値に維持するように、インバータ制御される。つまり、ヒートポンプ4には、圧縮機12の出口側に、冷媒圧力を検出する圧力センサ36が設けられており、この圧力センサ36の検出圧力を設定値に維持するように、圧縮機12のモータの電源周波数をインバータにより変えることで、出力が調整される。なお、圧力センサ36に代えて温度センサを設け、圧縮機12の出口側の温度を設定値に維持するように制御してもよい。いずれにしても、凝縮器13における冷媒温度を安定させることで、循環水の加温に最適となる。
【0069】
また、このような循環加温運転中、凝縮器13の出口側の水温を設定温度に維持するように通水量を調整する。つまり、出湯温度センサ26の検出温度を設定温度(出湯温度設定値)に維持するように、給水ポンプ10をインバータ制御する。
【0070】
このような循環加温運転により、給水タンク3内の貯留水が昇温し、貯留水温度センサ32の検出温度が第一設定温度より高い第二設定温度(たとえば45℃)以上になると、三方弁37を切り替えて、補給水タンク5から給水路8を介して給水タンク3へ給水する(通水運転)。この場合も、圧縮機12は、その吐出圧を設定値に維持するように制御される。また、給水ポンプ10をインバータ制御して、凝縮器13の出口側の水温を設定温度に維持するように通水量を調整する。
【0071】
通水運転による給水は、給水タンク3内の水位が上限水位に達するまで継続される。高水位検出電極棒40が水位を検知すると、圧縮機12を停止すると共に、三方弁37を切り替えて、給水タンク3内の貯留水を、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13に順に通して、これら熱交換器(17,16,13)との間で循環させる。この際、圧縮機12は停止しており、また給水ポンプ10は最低周波数で作動させるのがよい。
【0072】
このような圧縮機12を停止した循環運転中、再び、給水タンク3内の貯留水の水温が第一設定温度以下になれば、循環加温運転に移行する。その他の構成は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【0073】
ところで、本実施例2では、給水タンク3内の貯留水は、廃熱回収熱交換器17、過冷却器16および凝縮器13を順に通され、これら熱交換器(17,16,13)との間で循環されたが、この循環は、場合により、過冷却器16および凝縮器13との間、または凝縮器13だけとの間において行ってもよい。
【実施例3】
【0074】
図3は、本発明の給水加温システム1の実施例3を示す概略図である。
本実施例3の給水加温システム1も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を用いて説明する。
【0075】
本実施例3では、給水タンク3内の貯留水は、リヒータ41との間で循環される。つまり、本実施例3では、ヒートポンプ4は、凝縮器13と過冷却器16との間にリヒータ41を備える。このリヒータ41は、ヒートポンプ4の冷媒と給水タンク3内の貯留水との間接熱交換器である。そして、給水タンク3内の貯留水は、循環路19を介して、リヒータ41との間を循環する。
【0076】
この循環は、ヒートポンプ4の運転中、継続される。つまり、循環路19に設けた循環ポンプ20の発停は、ヒートポンプ4の圧縮機12の発停と連動する。但し、循環ポンプ20は、給水タンク3内の貯留水が上限温度を超えると停止される。
【0077】
本実施例3では、前記実施例1における通水運転と同様に、給水タンク3の水位に基づき、給水路8を介した給水タンク3への給水の有無とヒートポンプ4の出力が制御される。また、給水路8を介した給水タンク3への給水中、凝縮器13の出口側水温を設定温度に維持するように、給水ポンプ10をインバータ制御して通水量が調整される。
【0078】
本実施例3によれば、凝縮器13で奪えなかった冷媒の潜熱を、リヒータ41で奪うことができる。これにより、受液器を必要とせず、受液器がなくても、過冷却器16には確実に液冷媒を供給することができる。
【0079】
また、本実施例3では、万一、補給水タンク5から給水路8を介した給水タンク3への給水が断水しても、給水タンク3内の貯留水をリヒータ41との間で循環しているため、ヒートポンプ4の冷媒の急激な圧力上昇を抑えることができる。
【0080】
さらに、本実施例では、給水タンク3内の貯留水をリヒータ41との間で循環させることで、給水タンク3内の貯留水を比較的高温に保持することができる。その他の構成は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【0081】
本発明の給水加温システム1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、ヒートポンプ4で加温しつつ給水路8を介して給水タンク3へ給水可能であると共に、その給水タンク3内の貯留水をヒートポンプ4との間で循環して加温可能であれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0082】
また、前記実施例では、給水路8を介した給水タンク3への給水流量を調整するために、給水ポンプ10をインバータ制御したが、給水ポンプ10をオンオフ制御しつつ、給水路8に設けたバルブの開度を調整してもよい。つまり、出湯温度センサ26の検出温度に基づき給水路8を介した給水の流量を調整可能であれば、その流量調整方法は適宜に変更可能である。
【0083】
また、ヒートポンプ4は、単段に限らず複数段とすることもできる。ヒートポンプ4を複数段にする場合、隣接する段のヒートポンプ同士は、間接熱交換器を用いて接続されてもよいし、直接熱交換器(中間冷却器)を用いて接続されてもよい。後者の場合、下段ヒートポンプの圧縮機からの冷媒と上段ヒートポンプの膨張弁からの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器を備え、この中間冷却器が下段ヒートポンプの凝縮器であると共に上段ヒートポンプの蒸発器とされる。このように、複数段(多段)のヒートポンプには、一元多段のヒートポンプの他、複数元(多元)のヒートポンプ、あるいはそれらの組合せのヒートポンプが含まれる。
【0084】
また、給水タンク3に、凝縮器13を介して給水路8により給水可能であると共に、凝縮器13を介さずに補給水路9により給水可能であれば、給水路8や補給水路9の具体的構成は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、給水路8と補給水路9とは、それぞれ補給水タンク5と給水タンク3とを接続するように並列に設けたが、給水路8と補給水路9との一端部(補給水タンク5側の端部)と他端部(給水タンク3側の端部)の一方または双方は、共通の管路としてもよい。言い換えれば、補給水路9の一端部は、補給水タンク5に接続するのではなく、給水路8から分岐するように設けてもよいし、補給水路9の他端部は、給水タンク3に接続するのではなく、給水タンク3の手前において給水路8に合流するように設けてもよい。補給水路9の一端部を、補給水タンク5に接続するのではなく、給水路8から分岐するように設ける場合、その分岐部より下流において、給水路8に給水ポンプ10を設ける一方、補給水路9に補給水ポンプ11を設ければよいが、分岐部よりも上流側の共通管路にのみポンプを設けて、分岐部より下流の給水路8および/または補給水路9に設けたバルブの開度を調整することで、給水路8や補給水路9を通る流量を調整してもよい。
【0085】
また、前記実施例では、給水タンク3への給水を貯留するために補給水タンク5を設置したが、場合により補給水タンク5の設置を省略して、給水源から直接に給水路8および補給水路9に水を通してもよい。
【0086】
また、前記実施例では、給水路8および/または補給水路9を介して、補給水タンク5から給水タンク3へ給水可能としたが、これら給水は、軟水器から直接に行ってもよい。たとえば、
図1において、給水路8および補給水路9の基端部をまとめて軟水器に接続し、給水ポンプ10の設置を省略する代わりに給水路8に設けた電動弁(モータバルブ)の開度を調整し、補給水ポンプ11の設置を省略する代わりに補給水路9に設けた電磁弁の開閉を制御すればよい。
【0087】
また、前記実施例では、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムについて説明したが、給水タンク3の貯留水の利用先は、ボイラ2に限らず適宜に変更可能である。
【0088】
また、前記実施例では、ヒートポンプ4の熱源として熱源水を用いた例について説明したが、ヒートポンプ4の熱源流体として、熱源水に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。但し、熱源流体は、蒸発器15においてヒートポンプ4の冷媒に熱(顕熱)を与えつつ自身は温度低下を伴い、その後、廃熱回収熱交換器17において給水に熱(顕熱)を与えつつ自身は温度低下を伴う流体が好ましい。
【0089】
さらに、前記実施例では、ヒートポンプ4の圧縮機12は、電気モータにより駆動されたが、圧縮機12の駆動源は特に問わない。たとえば、圧縮機12は、電気モータに代えてまたはそれに加えて、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ(蒸気エンジン)に駆動されたり、ガスエンジンにより駆動されたりしてもよい。その場合、スチームモータへの給蒸量を調整したり、ガスエンジンへの供給ガス量を調整したりして、圧縮機12の出力を調整すればよい。