(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記疑似補助電極は、前記透明電極の厚さに6μmを加えた厚さを超えない範囲で、前記透明電極の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極静電容量センサ。
前記疑似補助電極は、前記透明電極の厚さに4μmを加えた厚さを超えない範囲で、前記透明電極の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明電極静電容量センサ。
透明樹脂基材上に、印刷法を用いて同じ透明導電材料を2回以上塗布することで、透明電極と前記透明電極の外周の少なくとも一部に前記透明電極よりも厚みが厚い前記透明電極と同じ材料からなる疑似補助電極を形成する工程Fと、
前記疑似補助電極に接続した引出配線を形成する工程Gと、を備えることを特徴とする透明電極静電容量センサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサについて説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの上面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A矢視断面図であり、
図1(c)は
図1(b)の丸囲み部の拡大図である。
【0019】
透明電極静電容量センサ1は、基材11と、基材11の片面に設けられた透明電極12aと、透明電極12aの外周部に設けられた疑似補助電極12bと、疑似補助電極12bに一端が接続された引出配線13と、
図1(b)の上面に設けられた粘着層14と、を備える。
【0020】
図1(c)に示したように、疑似補助電極12bは透明電極12aより段差t
pの分だけ厚く設けられている。ここで、疑似補助電極12bと透明電極12aは同じ材料からなる。
【0021】
基材11は、光透過性を有する絶縁性材料によって形成されたフィルム状、シート状、若しくは板状の部材である。基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂などの硬質材料や、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、シリコーンゴムなどの弾性材料からなるものを好適に用いることができる。
【0022】
より具体的には、基材11の材料として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)などの樹脂材料を好適に用いることができる。これらの樹脂材料の中でも、強度等の点から、基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)が好ましい。また、基材11の材料として、ガラス、透明金属酸化物を採用することもできる。
基材11の厚さは10μm以上〜200μm以下であることが好ましい。基材11の厚さが10μm以上であれば、基材11が破断しにくく、基材11の厚さが200μm以下であれば、透明電極静電容量センサ1を薄くできる。
【0023】
透明電極12aは、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などや、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの透明性を有する導電性ポリマーなどの光透過性を有する導電性材料を用いて、印刷や塗布などにより基材11上に矩形状に形成されている。
なお、透明電極自体の形状は、矩形状に限定される必要はなく、円形や楕円形といった形状であっても良いので、この場合は、印刷や塗布などにより基材11上に円形や楕円形に形成される。
【0024】
導電性ポリマーの場合、透明電極12aの材料としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等を好適に用いることができる。水溶性高分子にポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いた水分散ポリチオフェン誘導体(PEDOT/PSS)は、水溶性であるために、単純な塗布工程で導電性ポリマーの塗膜を形成できるので好ましい。
【0025】
透明電極12aが印刷や塗布によって形成される場合、透明電極12aを構成する導電性塗膜の厚さは0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。導電性塗膜の厚さが0.05μm以上であれば、導電性を好適に確保でき、0.1μm以上であれば検出感度として十分な表面抵抗である600Ω/□が安定的に得られる。また導電性塗膜の厚さが5μm以下であれば、容易に塗膜を形成できる。
【0026】
引出配線13は、透明電極12aよりも低い電気抵抗を有する材料で構成され、Agペーストが好ましく用いられる。ここで、従来技術では、検出感度のばらつきを抑制するために引出配線に用いられるのと同一又は類似の材料抵抗を有する材料を補助電極材料とし、この補助電極を引出配線と透明電極との間に介在させている。
【0027】
従来技術では、抵抗値や意匠性等といった全体の状態を考慮して銀の補助電極とされる場合が多く、この銀の補助電極を形成するために、銀ペーストが使用される。この銀ペーストは高精細印刷のために銀粒子と樹脂バインダの固形分比が高く、溶剤等の揮発分が少ない材料である。このため印刷後の厚みの変化が少ない。一般的なSUSメッシュによるスクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷法では、通常、40μmから50μmの紗厚があり、さらに、紗厚を小さくすることを考えても、量産性を考慮すると、その1/4から1/5程度が限界となる。この抄厚によって印刷時の銀ペーストの塗布厚が決まり、銀ペーストは乾燥等の工程において、上述の通り、揮発成分が少ないため厚みがあまり薄くできない。
また、さらに、補助電極を薄くするために、薄い超ハイメッシュなどで抄厚を薄くすることができなくはないが、この場合、非常に取り扱いがデリケートになりハンドリング性が悪くなる。これらのことから、量産性を考慮すれば、透明電極と補助電極との間の段差を十分に小さくすることが難しい。
【0028】
一方、本発明では、材料を変更することなく、引き出し配線13と透明電極12aとの間に、透明電極12aと同じ材料からなり、透明電極12aよりも厚みを厚くした疑似補助電極12bを介在させることで検出感度のばらつきを抑制している。つまり、本発明では、透明電極12aと疑似補助電極12bとを同じ材料で形成しているため、材料の組成上の電気抵抗は同じである。しかしながら、
図1(c)に示したように、疑似補助電極12bを透明電極12aよりも段差t
p分だけ厚くしているので疑似補助電極12b部分としての電気抵抗は透明電極12a部分の電気抵抗よりも低くなる。但し、段差が大きくなると、気泡の問題があることや、透明電極12aと同じ材料であっても厚みの増加により透明性が低下するため、意匠性の低下につながることから、段差t
pは、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下がもっとも好ましい。
ここで、透明電極材料は、一般に、薄く印刷や塗布を行うことができる材料であることから、疑似補助電極12bの部分が透明電極12aより厚みがあるものとされるといっても、従来の銀ペーストなどにより形成される補助電極と比較すれば、十分に薄く構成することが可能であり、このため透明電極12aと疑似補助電極12bとの段差も十分に小さくすることができる。
【0029】
粘着層14は、透明電極12a、疑似補助電極12b、及び引出配線13を覆うように形成される保護等のための層である。粘着層14は、光透過性を有する樹脂フィルムの片面に粘着剤を有し、その粘着剤によって、透明電極12a、疑似補助電極12b、及び引出配線13上に添着された層である。また、粘着層14を、たとえば、感光性ドライフィルム、UV硬化型レジスト材、加熱硬化型レジスト材などを用いて形成することもできる。
【0030】
粘着層14を構成する樹脂フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、等の樹脂を材料として構成される。また、粘着層14は、樹脂フィルムに代えて、又は樹脂フィルムに加えて、ガラスや透明金属酸化物などによるフィルムを備えていてもよい。また、粘着剤の具体例としては、アクリル系樹脂を挙げることができる。
【0031】
ここで、従来技術の透明電極静電容量センサの構成について説明する。
図3(a)は、従来技術の透明電極静電容量センサの上面図であり、
図3(b)は
図3(a)のD−D矢視断面図であり、
図3(c)は
図3(b)の丸囲み部の拡大図である。
【0032】
従来技術の透明電極静電容量センサ4は、基材41と、基材41の片面に設けられた矩形の透明電極42と、透明電極42の矩形の1辺に設けられた補助電極43aと、補助電極43aに一端が接続された引出配線43bと、
図3(b)の上面に設けられた粘着層44と、を備える。
【0033】
図3(a)に示した従来技術の透明電極静電容量センサの上面図と、
図1(a)に示した第1実施形態の透明電極静電容量センサの上面図とは、従来技術の透明電極静電容量センサ4では透明電極42の矩形の1辺に補助電極43aが設けられているのに対し、第1実施形態の透明電極静電容量センサ1では透明電極12aの外周に疑似補助電極12bが設けられていること以外は、寸法的に同様である。
【0034】
従来技術の基材41、透明電極42、引出配線43b、粘着層44は、順に本発明の第1実施形態の基材11、透明電極12a、引出配線13、粘着層14と同様の材料から形成されている。
【0035】
従来技術の透明電極静電容量センサ4と第1実施形態の透明電極静電容量センサ1の主たる差異は、第1実施形態の透明電極静電容量センサ1では、透明電極12aと疑似補助電極12bをPEDOT/PSS等の同じ材料から形成しているのに対し、従来技術の透明電極静電容量センサ4では、透明電極42をPEDOT/PSS等から、補助電極43aを引出配線43bと同じ、電気抵抗の低いAgペースト等から形成している。
【0036】
従来技術の透明電極静電容量センサ4では、補助電極43aを、Agペーストを印刷して形成しているが、前述した通り、この場合、量産性を持って補助電極43aを薄くしていくには、技術的に限界が生じる。
図3(c)に示したように、補助電極43aは透明電極42より段差t
cの分だけ厚く設けられている。補助電極43aにAgペーストを、透明電極42にPEDOT/PSSを用いた場合、上記の通り、量産性を考えると、段差t
cを7μm以下に形成することは、技術的に難しい。
【0037】
また、透明電極42と異なる材料から形成した補助電極43aを備えた従来技術の透明電極静電容量センサ4では、タッチパネル等に使用したときに、補助電極43aの部分が目立って、意匠性が低下するという問題があった。さらに、透明電極42と補助電極43aの段差が7μmを超えるほどに大きいので、粘着層44を被覆するときに気泡が生じて寄生容量が増大してしまうという問題があった。
さらに、従来技術では、抵抗値や意匠性等といった全体の状態を考慮して銀のような高価な材料が補助電極に用いされることが多く、この場合、材料コストも高くなるという問題があった。
【0038】
これに対し、本発明の第1実施形態においては、透明電極12aと疑似補助電極12bを同じPEDOT/PSSを用いて構成しているため、タッチパネル等に使用したときに、疑似補助電極12bの部分が目立つことが少なく、従って意匠性の面で良好である。さらに、後ほど詳細に説明する手法によって、本発明の第1実施形態においては、上記のように、
図1(c)の段差t
pは6μm以下とすることができるので、粘着層44の被覆時の気泡発生の問題は解消し、寄生容量は低減される。
加えて、銀のような高価な材料を使用するのに比べて材料コストを低減することが可能である。
【0039】
また、
図1(a)では、疑似補助電極12bは、透明電極12aの外周全周にわたって形成されているが、本発明の透明電極静電容量センサ1をタッチパネル等に応用した場合、透明電極12aよりも厚さが厚い疑似補助電極12bの長さは、透明電極12aの外周の周長の1/7以上あれば十分であることが確認されている。疑似補助電極部の面積を減らすことにより、広いビューエリアが確保される。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法について
図1(a)、(b)、(c)、
図2、
図6により説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程を示すフロー図である。
【0041】
<ステップ1(S1)>
ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーの基材11の片面に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等の透明導電材料の透明電極12aを形成する。
【0042】
<ステップ2(S2)>
ステップ1(S1)で形成した、透明電極12aを片面に備えた基材11に低温乾燥処理を施して、PEDOT/PSS等からなる透明電極12aにコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、
図1(c)の段差t
pを生じるように、透明電極12aよりも厚さが厚い疑似補助電極12bを外周に形成する。ここで、
図2によりコーヒーリング(フレーミング)現象について説明する。
【0043】
図2は、本発明の第1実施形態に係るコーヒーリング(フレーミング)現象を説明する図である。ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる基材11の片面に、PEDOT/PSS等の塗料をインクジェット印刷又はスクリーン印刷により塗工して透明電極12aを形成した後、約60℃で低温乾燥硬化させると、PEDOT/PSS等の塗料は外周部へ移動する。これによって外周部分の厚みを厚くすることができる。この現象は、液体物が乾燥する過程で見られるコーヒーリング(フレーミング)と呼ばれる現象である。その後、約120℃で乾燥焼成を行い、透明電極12aの外周に透明電極12aと同じ材料からなる厚みの厚い疑似補助電極12bを有する部分の形成が完了する。
【0044】
上記の手法によれば、透明電極12aにPEDOT/PSSを用い、低温乾燥処理によってコーヒーリング現象を起させることで、透明電極12aと疑似補助電極12bを形成しているので、透明電極12aよりも厚さが厚いながらも、その厚みの差自体は十分に小さい疑似補助電極12bを形成することができる。具体的には、
図1(c)の段差t
pは、6μm以下、さらには、3μm以下に形成することが可能である。
【0045】
なお、PEDOT/PSS等からなる透明電極12aにコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、外周に疑似補助電極12bを形成した後に、さらに、この疑似補助電極12bの部分にPEDOT/PSS等の同じ材料をインクジェット印刷又はスクリーン印刷で塗布することにより、段差t
pを調製することもできる。この場合でも、透明電極に使用される材料は、従来の補助電極に使用されているような材料に比べ、比較的薄く形成可能な材料が多いため、透明電極12aとの段差を小さく抑えつつ、かつ、透明電極12aよりも厚みがある疑似補助電極12bとすることができる。なお、この場合でも、十分に3μm以下の段差に留めることが可能である。
【0046】
<ステップ3(S3)>
図1(a)に示したように、Agペースト等からなる引出配線13をスクリーン印刷により、一端が疑似補助電極12bと重なるようにして形成する。
【0047】
<ステップ4(S4)>
図1(a)、(b)に示したように、基材11、透明電極12a、疑似補助電極12b及び引出配線13を覆うようにして、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーを被覆して粘着層14を形成する。
【0048】
ここでは、ステップ1(S1)でPET等からなる基材11の片面に、PEDOT/PSS等からなる透明電極12aを形成し、これにステップ2(S2)で低温乾燥処理を施して疑似補助電極12bを形成した後、ステップ3(S3)で引出配線13を形成したが、PET等からなる基材11の片面に引出配線13を形成するステップを最初に行ってもよい。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
図1(a)、(b)、(c)の構成で、ポリエチレンテレフタレート(PET)の基材11の上に、PEDOT/PSSを用いて透明電極12a及び疑似補助電極12bを形成した後、Agペーストの引出配線13を形成した。
【0050】
厚さ50μmのPETフィルムに、粘度約10C
pのPEDOT/PSS溶液をインクジェット装置を用いて所定のパターンに塗布して透明電極12aを形成した。それを約60℃の熱板上でゆっくり乾燥させたのち、120℃で約5分焼成することでコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、透明電極12aの外周部にPEDOT/PSSの疑似補助電極12bを形成した。次いで、疑似補助電極12bの一部に重なる形で、透明電極12aより電気抵抗が低いAgペーストを用いて引出配線13を形成した後、粘着層14を全面に形成して透明電極静電容量センサ1を得た。
【0051】
(実施例2)
図1(a)、(b)、(c)の構成で、ポリエチレンナフタレート(PEN)の基材11の上に、PEDOT/PSSを用いて透明電極12a及び疑似補助電極12bを形成した後、Agペーストの引出配線13を形成した。
【0052】
厚さ75μmのPENフィルムに、粘度約10C
pのPEDOT/PSS溶液をインクジェット装置を用いて所定のパターンに塗布して透明電極12aを形成した。それを約60℃の熱板上でゆっくり乾燥させたのち、120℃で約5分焼成することでコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、透明電極12aの外周部にPEDOT/PSSの疑似補助電極12bを形成した。次いで、疑似補助電極12bの一部に重なる形で、透明電極12aより電気抵抗が低いAgペーストを用いて引出配線13を形成した後、粘着層14を全面に形成して透明電極静電容量センサ1を得た。
【0053】
(実施例3)
図1(a)、(b)、(c)の構成で、ポリカーボネート(PC)の基材11の上に、PEDOT/PSSを用いて透明電極12a及び疑似補助電極12bを形成した後、Agペーストの引出配線13を形成した。
【0054】
厚さ100μmのPCフィルムに、粘度約10C
pのPEDOT/PSS溶液をインクジェット装置を用いて所定のパターンに塗布して透明電極12aを形成した。それを約60℃の熱板上でゆっくり乾燥させたのち、120℃で約5分焼成することでコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、透明電極12aの外周部にPEDOT/PSSの疑似補助電極12bを形成した。次いで、疑似補助電極12bの一部に重なる形で、透明電極12aより電気抵抗が低いAgペーストを用いて引出配線13を形成した後、粘着層14を全面に形成して透明電極静電容量センサ1を得た。
【0055】
(実施例4)
図4(a)、(b)の構成で、ポリエチレンテレフタレート(PET)の基材21の上に、Agペーストの引出配線23を形成した後、PEDOT/PSSを用いて透明電極22a及び疑似補助電極22bを形成した。
【0056】
厚さ50μmのPETフィルムに、スクリーン印刷法によりAgペーストを用いて引出配線23を形成し、その末端部に約1mm重なる位置に粘度約10C
pのPEDOT/PSS溶液をインクジェット装置を用いて所定のパターンに塗布して透明電極22aを形成した。それを約60℃の熱板上でゆっくり乾燥させたのち、120℃で約5分焼成することでコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、透明電極22aの外周部にPEDOT/PSSの疑似補助電極22bを形成した後、粘着層24を全面に形成して透明電極静電容量センサ2を得た。透明電極22aの厚みは約0.2μmであり、疑似補助電極22bの厚みは約1.0μmである。
【0057】
(実施例5)
図5(a)、(b)の構成で、ポリエチレンテレフタレート(PET)の基材31の上に、Agペーストの引出配線33を形成し、その端部にカーボン印刷33aを施した後、PEDOT/PSSを用いて透明電極32a及び疑似補助電極32bを形成した。
【0058】
厚さ50μmのPETフィルムに、スクリーン印刷法によりAgペーストを用いて引出配線33bを形成し、その末端部約2mmにPAD印刷法によりカーボン印刷33aを施し、さらにそのカーボン印刷33a上に約1mm重なる位置に粘度約10C
pのPEDOT/PSS溶液をインクジェット装置を用いて所定のパターンに塗布して透明電極32aを形成した。なお、カーボン印刷部分は約100Ω/□程度の表面抵抗である。それを約60℃の熱板上でゆっくり乾燥させたのち、120℃で約5分焼成することでコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、透明電極32aの外周部にPEDOT/PSSの疑似補助電極32bを形成した後、粘着層34を全面に形成して透明電極静電容量センサ3を得た。
透明電極32aの厚みは約0.2μmであり、疑似補助電極32bの厚みは約1.0μmである。
【0059】
実施例1〜5から、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)の効果が得られることが明らかとなった。
(イ)実施例1、2、4においては、Agペースト等から形成された従来の補助電極と比べ、薄肉でかつ光透過性を有する疑似補助電極を形成することができ、
透明電極と補助電極の段差が大きく低減され、粘着層形成時の気泡発生が抑制され、静電容量センサとして寄生容量の低減を図ることができた。また、補助電極が目立たなくなり、意匠性向上も達成できた。
さらに、実施例2では、上記効果に加え、PENフィルムを基材と使用しているため、基材側のUV吸収性およびガスバリア性を向上させることができるので、基材側からのUVやガスによる影響を抑制することができた。
【0060】
(ロ)実施例3においては、PCフィルムを基材として使用することで、実施例1、2の共通の効果に加えて、複屈折が小さく光学特性に優れた透明電極静電容量センサを形成することができた。
【0061】
(ハ)実施例5では、実施例4の構成に、さらにPEDOT/PSSとAg引出配線の接続部にカーボン印刷を介在させている。PEDOT/PSS溶液は、酸性であるため、先に、Ag引出配線を形成するような場合には、この溶液とAg引出配線とが接触することで酸化される可能性がある。そこで、実施例5のように、この溶液と接触する部分にカーボン印刷を介在させることで、Ag引出配線が酸化することを避けることができ、この接続部の信頼性をさらに高めることができた。
【0062】
なお、疑似補助電極は、その厚み等によって変わるが、例えば、表面抵抗を約200Ω/□とすることができる。また、疑似補助電極は、透明電極よりも0.1μm以上、0.2μm以上、さらには、0.5μm以上厚い厚みを有するように形成されることが好適であり、このようにすることで、透明電極部分と疑似補助電極部分とが同じ材料でありながら、疑似補助電極部分の電気抵抗を低くできる。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの幾何学的構成及び構成材料は、第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの幾何学的構成及び構成材料と同様であるので説明を省略する。第2実施形態に係る透明電極静電容量センサも、
図1(a)、(b)、(c)に示した幾何学的構成を有する。
【0064】
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法について
図1(a)、(b)、(c)、
図7により説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程を示すフロー図である。
【0065】
<ステップ21(S21)>
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法においては、まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる透明ポリマーの基材11の片面に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等の透明導電材料の透明電極12aを形成する。
【0066】
<ステップ22(S22)>
透明電極12aの外周の少なくとも一部に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷で透明電極12aと同じPEDOT/PSS等の透明導電材料を1回以上塗布(重ね塗り)し、
図1(c)の段差t
pを生じるように、透明電極12aよりも厚さが厚い疑似補助電極12bを形成する。
【0067】
<ステップ23(S23)>
図1(a)に示したように、Agペースト等からなる引出配線13をスクリーン印刷により、一端が疑似補助電極12bと重なるようにして形成する。
【0068】
<ステップ24(S24)>
図1(a)、(b)に示したように、基材11、透明電極12a、疑似補助電極12b及び引出配線13を覆うようにして、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーを被覆して粘着層14を形成する。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法の変形例について
図1(a)、(b)、(c)、
図8により説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程の変形例を示すフロー図である。
【0070】
<ステップ31(S31)>
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法の変形例においては、まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる透明ポリマーの基材11の片面の疑似補助電極12bを形成する部分の少なくとも一部に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等を1回以上塗布する。
【0071】
<ステップ32(S32)>
疑似補助電極12bの部分及び透明電極12aの部分の両方にインクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等を1回以上塗布する。疑似補助電極12bの部分はPEDOT/PSS等の重ね塗り状態となり、
図1(c)の段差t
pが形成される。
【0072】
<ステップ33(S33)>
図1(a)に示したように、Agペースト等からなる引出配線13をスクリーン印刷により、一端が疑似補助電極12bと重なるようにして形成する。
【0073】
<ステップ34(S34)>
図1(a)、(b)に示したように、基材11、透明電極12a、疑似補助電極12b及び引出配線13を覆うようにして、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーを被覆して粘着層14を形成する。
【0074】
上記の、本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法、その変形例のいずれの方法によっても、
図1(c)の段差t
pは6μm以下とすることができ、さらに、3μm以下とすることも可能である。
【0075】
上記で説明してきたとおり、本発明は、従来技術と異なり、透明電極の外周の一部に設ける補助電極を透明電極と同じ材料からなる疑似補助電極で形成している。
このため、従来の補助電極に比べ、透明性があり目立たないので意匠性に優れる。
また、補助電極に銀などの高価な材料を使用しているものと比較すると、疑似補助電極は透明電極と同じ材料であるため材料コストを抑えることができる。
さらに、透明電極と同じ材料を用いて構成していることで透明電極よりも厚みが厚くされるといっても、従来の補助電極に用いられている材料と比較すれば、疑似補助電極は、かなり薄く形成できるので透明電極と疑似補助電極との段差は、極めて小さく、このため段差に起因する粘着層形成時の気泡の発生が抑制され、寄生容量の低減が可能である。
加えて、スクリーン印刷やインクジェット印刷で形成する場合には、疑似補助電極を形成する範囲に対する自由度も高いので疑似補助電極の面積を減らし、ビューエリアの拡大も好適に行うことができる。
【0076】
なお、上記でも説明してきたとおり、透明電極に使用される材料を何度か印刷することで透明電極と疑似補助電極が形成される場合がある。
この場合、各印刷(塗布)毎に用いられる材料は、基本的に同じ材料(同じ透明電極用材料)を用いるが、例えば、塗布し、乾燥工程が終わるまでの間に材料が塗布していないところに流れ出たりすることを防止するために粘度を調節する必要がある場合などがあり、このときには適切な粘度となるように希釈剤などの分量を調整しても良い。
希釈剤などは、基本的に、乾燥工程などで気化し、ほとんど残らないが微量に成分が残ることもあり得る。
しかしながら、この程度の差は、同じ材料と解されるものである。
【0077】
また、上記の具体的な説明は、インクジェット印刷法やスクリーン印刷法を例示して行ってきたが、それ以外にもPAD印刷法やフレキソ印刷法なども用いることができ、一般的な印刷法を用いることが可能であることは明らかである。
【0078】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。