(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066114
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】色素増感型太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
H01G9/20 203A
H01G9/20 117
H01G9/20 119
H01G9/20 303A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-172146(P2014-172146)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-46495(P2016-46495A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
【審査官】
市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−146436(JP,A)
【文献】
特開2013−114778(JP,A)
【文献】
特開2012−256459(JP,A)
【文献】
特開2009−259485(JP,A)
【文献】
特開2011−238472(JP,A)
【文献】
特開2013−200960(JP,A)
【文献】
特開2013−016360(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/017610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01M 14/00
H01M 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に封止部を有する透光性の管状容器の内部に、光電極と、該光電極に当接して設けられた集電極と、前記光電極および前記集電極に対向する対向電極とを備え、
前記管状容器の内部には、電解液が充填されてなり、
前記管状容器の封止部には、前記集電極および前記対向電極にそれぞれ接続された金属製の外部リードが、前記管状容器の外部に突出するように封止されてなる色素増感型太陽電池が、
複数本直列に接続された色素増感型太陽電池モジュールにおいて、
前記外部リードが、管状部材からなり、隣接配置された色素増感型太陽電池同士で共有されているとともに、該管状部材により、隣接配置された色素増感型太陽電池同士が連通されていることを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する色素増感型太陽電池モジュールに関するものであり、特に、透光性の管状容器内に、集電極、光電極および対向電極が配設され、電解液が封入された色素増感型太陽電池モジュールに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として積極的な研究開発が進められている。中でも、光電変換効率が高く、低コストの太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されて、各種の提案がなされている。
【0003】
その一例が特許第4840540号公報(特許文献1)であり、その概略構造が
図4に示されている。
この色素増感型太陽電池30では、透光性の管状容器31内に電解液35を封入し、該容器31の内面に形成された集電極32と、これに積層形成されて色素を吸着させた多孔質半導体からなる光電極33と、これに対向する対向電極34とを配設し、前記光電極33に太陽光を入射させてこれを励起して電子を放出させることによって、対向電極34に接続された外部リード37と、集電極32に接続された外部リード38とから電気エネルギーとして外部に取り出すものである。なお、対向電極34と、集電極32に接続される外部リード38とは絶縁材39によって絶縁されている。
この種の色素増感太陽電池は、その製造のために高真空なチャンバーなどが不要であり、設備面での負担が少なく、安価に製造できるという利点があり、注目を集めている。
【0004】
ところで、現状では、複数本の色素増感太陽電池を直列に接続配置して電圧を高める太陽電池モジュールとして使用されている。
図5にその一態様が示されていて、隣接する個々の色素増感型太陽電池30、30の外部リード38、37同士をリード線40によって電気的に接続している。つまり、リード線40をそれぞれ太陽電池30、30の外部リード38、37に溶接により接続して電気的な導通をとっている。
このような色素増感型太陽電池は、本来的に基本的には屋外に設置されるため、電気系統の耐候性が問題となる。
上記のような色素増感型太陽電池モジュールにあっては、リード線40の溶接部が大気に曝されて酸化腐食が生じて電気的接続不良を起こすことがあり、更には、取扱いに際してリード線に無理な力が作用すると接続部の剥離といった問題も発生する。
加えて、リード線接続のために、直列方向でデッドスペースが生じてしまい、全体の小型化を妨げる要因となっている。
【0005】
また、色素増感型太陽電池としては、外部リードを管状部材で構成するものも開発されていて、特開2014−078387号公報(特許文献2)に開示されている。
図6(A)にその構造が示されていて、
図3に示す線状の外部リードに替えて、管状の外部リード41、42をそれぞれ対向電極34および集電極32に接続している。このような管状外部リードを採用することで、管状容器31内への電解液の充填がこの管状外部リード41、42を利用して行えるという利点がある。電解液の充填は終了したのちには、管状外部リード41、42の端部41a、42aを圧潰などにより封止するものである。
【0006】
また、同特許文献2には、対向電極34はコイル状のもの以外に、棒状や円筒状のものであってもよい旨の開示がなされていて、そのうちの円筒状対向電極を持つ構造を、
図6(B)に示す。円筒状の対向電極34は、その一端で管状外部リード41に支持されている。そして、他方の管状外部リード42は、集電端子43を介して集電極32に接続されている。
【0007】
これらのいずれの形態においても、複数本の色素増感型太陽電池を直列配置してモジュール化する場合には、
図4の構造と同様に、管状外部リード同士はリード線を溶接することにより電気的接続がとられていて、
図4の構造に基づく問題点は同様のものとして抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4840540号公報
【特許文献2】特開2014−078387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、両端部に封止部を有する透光性の管状容器の内部に、光電極と、該光電極に当接して設けられた集電極と、前記光電極および前記集電極に対向する対向電極とを備え、前記管状容器の内部には、電解液が充填されてなり、前記管状容器の封止部には、前記集電極および前記対向電極にそれぞれ接続された金属製の外部リードが、前記管状容器の外部に突出するように封止されてなる色素増感型太陽電池が、複数本直列に接続された色素増感型太陽電池モジュールにおいて、外気に曝されても隣接する色素増感型太陽電池間での電気的接続に不具合が生じず、太陽電池間にいたずらなデッドスペースを生むことのない構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る複数本の色素増感型太陽電池が直列に接続された色素増感型太陽電池モジュールは、隣接配置された色素増感型太陽電池同士の外部リードが、互いに共有されていることを特徴とする。
また、前記外部リードが管状部材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の色素増感型太陽電池モジュールによれば、隣接する色素増感型太陽電池間の外部リードが共有されていることにより、リード線による接続が必要なく、共通する外部リードによって電気的接続がなされるので、大気に曝されてリード線との接続部が腐食するといった事態に追い込まれることなく、その電気的接続が損なわれることがない。また、外力が作用してもリード線との接続が剥離して不良になることもない。更には、リード配線の省略により、いたずらなデッドスペースが生じることもなくなる。
また、共有する外部リードを管状部材によって構成することにより、連設された色素増感型太陽電池のすべての管状容器内への電解液の注入充填が該管状外部リードを介して作業できるので、作業が簡便化し効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の色素増感型太陽電池モジュールの断面図。
【
図5】従来の色素増感型太陽電池モジュールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の複数の色素増感型太陽電池1、1からなる色素増感型太陽電池モジュールの断面図である。
色素増感型太陽電池1における透光性のガラス製管状容器2の本体部3の管軸方向の両端は、封止部4,5が形成されて密封されている。この管状容器2の本体部3の内面には、透明導電膜からなる集電極6と、増感色素が吸着された半導体層からなる光電極7とが積層形成されるとともに、前記管状容器2内で集電極6および光電極7と離間して対向電極8が対向配置されている。この管状容器2内には電解質物質を備えた電解液9が密封・充填されている。
そして、前記管状容器2内で対向電極8に接続された外部リード11が、一端側の封止部4内で封止されて外部に導出され、また、集電極6に接続された外部リード12が、他端側の封止部5内で封止されて外部に導出されている。
【0014】
各色素増感型太陽電池1、1の構造は同一であり、隣接配置された一の色素増感型太陽電池1における集電極6に接続された外部リード12と、他の色素増感型太陽電池1における対向電極8に接続された外部リード11とが共有されていて共通部材から構成されている。つまり、1本の共通するリード部材が、隣接する太陽電池1、1のそれぞれの外部リード12と外部リード11とを構成している。
【0015】
図2は、
図6(B)に示すタイプの色素増感型太陽電池を直列配置したもので、外部リード15、16が管状部材からなり、また、対向電極8が管状部材からなるものである。
この例でも、一の色素増感型太陽電池1における集電極6に集電端子17を介して接続された管状外部リード16と、隣接する他の色素増感型太陽電池1における管状対向電極8に接続された管状外部リード15とが共有されて共通部材から構成されている。
この構成により、隣接する管状容器2、2同士は、この管状外部リード15(16)によって互いに連通している。
【0016】
ところで、以上の実施例においては、外部リードは、管状容器を加熱溶融し、これを圧潰することにより封止するものを示した。
図3に示す実施例では、封止部の溶融圧潰以外にガラス焼結体を用いたものが示されている。つまり、外部リードと一体的に焼結されたガラス焼結体が、管状容器の端部に溶着されたものである。
管状容器2の一端部に配置されたガラス焼結体21は、ガラス粉末を、対向電極8に接続された管状外部リード15を含んで一体的に加圧成型して、これを焼結したものである。他端部におけるガラス焼結体22も同様に、集電極6に集電端子17を介して接続された管状外部リード16を含んで一体的に焼結したものである。
そしてこの実施例においては、一の色素増感型太陽電池1における集電極6に集電端子17を介して接続された管状外部リード16と、他の色素増感型太陽電池1における対向電極8に接続された管状外部リード15とが共通化されているものである。
こうして共通化された管状外部リード15、16が一体的に焼結されたガラス焼結体21、22を管状容器2の端部に配置して、該管状容器2の端部を加熱してガラス焼結体21、22を溶着するものである。
【0017】
この
図3に示す実施例においては、ガラス焼結体21、22と外部リード15、16の材料は、その線膨張率が近い材料の組み合わせであることが好ましい。線膨張率に大きな相違がある材料であると、両者の熱溶着時にガラス焼結体21、22にクラックが入り損傷することがあるからである。
このため、好適には、両者の線膨張率の差が±5×10
−7/℃の範囲に収まる材料の組み合わせが望ましい。
このような形状とすることで、封止のために端部を溶融圧潰する
図1、
図2の実施例と比較して、管状容器の変形範囲および変形量が少なくて済み、管状容器の両端部におけるデッドスペースが少なくて済む。
また、光電極は、管状容器の加熱時の影響を受けるため加熱領域から退避した位置に設けることが必要になるが、ガラス焼結体を採用することで、溶着時の加熱範囲も小さくて済むので、光電極の加熱領域からの退避量も少なくてよく、その観点からもデッドスペースの減少に寄与している。
【0018】
ところで、本発明における上記実施例では、集電極6が管状容器2の内面に形成されて、その内面に光電極7が積層形成されたものを説明したが、例えばWO2013/031098で開示されているように、管状容器2の内面側に光電極を設け、更にその内面側に集電極を当接して設ける構造としたものであってもよい。
つまり、管状容器2内に、集電極と光電極が設けられ、これらの内側において対向電極が所定の間隔をもって対向配置されたものであればよい。
また、集電極6と外部リード16を接続する集電端子17は、特開2013−191342号公報に開示されたような、コイル状のもの、金属板を渦巻きバネ状に形成したものなど、集電極6に対して弾性力を用いて当接するものを採用することもできる。
なお、各実施例においては、色素増感型太陽電池を2本連結したものを例示したが、3本以上を接続するものであってよいことは勿論である。
【0019】
以上説明したように、本発明に係る、複数本の色素増感型太陽電池を直列に接続された色素増感型太陽電池モジュールは、管状容器から突出する外部リードを、隣接配置された色素増感型太陽電池間で共有することにより、外部リード管を電気的に接続するリード配線が不要になり、外気での使用でリード線と外部リードの接続部の酸化腐食による接続不良という問題がなく、長期にわたり確実な電気的接続が維持されるという効果を奏するものである。
そして、リード線がないことで、各管状容器管でのデッドスペースがなくなり、全体として省スペース化が図られる。
また、外部リードとして管状部材を用いることで、管状容器内への電解液の注入充填作業が簡便化されるという効果も奏せられる。
【符号の説明】
【0020】
1 色素増感型太陽電池
2 管状容器
3 本体部
4、5 封止部
6 集電極
7 光電極
8 対向電極
9 電解液
11,12 外部リード
15,16 管状外部リード
17 集電端子
21,22 ガラス焼結体