特許第6066170号(P6066170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田 光治の特許一覧 ▶ 福井 啓介の特許一覧 ▶ 守時 正人の特許一覧

特許6066170二次電池の通電方法、通電装置、二次電池
<>
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000002
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000003
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000004
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000005
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000006
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000007
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000008
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000009
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000010
  • 特許6066170-二次電池の通電方法、通電装置、二次電池 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066170
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】二次電池の通電方法、通電装置、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20170116BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20170116BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01M10/44 A
   H01M10/12 M
   H01M10/42 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-202136(P2012-202136)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-56778(P2014-56778A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年9月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年3月15日〜17日に化学工学会第77年会にて発表 平成24年5月23日〜25日にACTS−2012にて発表 平成24年6月1日〜2日に分離技術会年会2012にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】512238689
【氏名又は名称】前田 光治
(73)【特許権者】
【識別番号】594130972
【氏名又は名称】福井 啓介
(73)【特許権者】
【識別番号】594117320
【氏名又は名称】守時 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】前田 光治
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓介
(72)【発明者】
【氏名】守時 正人
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−089292(JP,A)
【文献】 特開平04−220960(JP,A)
【文献】 特開2000−040537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/12
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池の通電方法であって、
前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を予め印加した状態とする印加ステップと、
前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部に通電することにより、当該電極部の化成処理、前記二次電池の充電、前記二次電池の放電、又は当該電極部の充電能力の再生のいずれかを行う通電ステップと
を備えることを特徴とする二次電池の通電方法。
【請求項2】
前記通電ステップは、前記電極部に通電することにより、前記水系電解液が大気圧の状態で通電された電極部に生成される電解質の結晶よりも緻密な固い結晶を電極部に生成させる
請求項1に記載の二次電池の通電方法。
【請求項3】
前記印加ステップは、ポンプの加圧部により前記水系電解液に当該水系電解液を導入することで当該水系電解液を直接加圧する方法、前記電槽容器の圧縮部により前記水系電解液の体積を機械的に圧縮することで当該水系電解液を直接加圧する方法、前記電槽容器の圧力変形部により当該圧力変形部を液体又は気体の加圧媒体で押下して当該圧力変形部が前記加圧媒体の圧力を前記水系電解液に伝えることで当該水系電解液を直接加圧する方法のいずれかにより高圧力を印加する
請求項1又は2に記載の二次電池の通電方法。
【請求項4】
前記高圧力は、0.3MPa以上である
請求項1−3のいずれか一項に記載の二次電池の通電方法。
【請求項5】
電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池であって、
前記水系電解液が、前記電槽容器内に密封され、且つ、大気圧よりも高い高圧力を予め印加された状態であり、
前記電極部は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で通電されることを特徴とする二次電池。
【請求項6】
電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池であって、
前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を予め印加した状態とする高圧力印加部を備え、
前記電極部は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で通電されることを特徴とする二次電池。
【請求項7】
電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池の通電装置であって、
前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を予め印加した状態とする高圧力印加部と、
前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部に通電する電流通電部と
を備えることを特徴とする二次電池の通電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の通電方法、二次電池、通電装置に関し、詳しくは、電極部の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に高速で充電することが可能な二次電池の通電方法、通電装置、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から存在する鉛蓄電池、ニッケルカドニウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、いずれも常温、常圧で充放電されている。
【0003】
ここで、前記二次電池を充電する場合、通常、当該二次電池の正極又は負極の電極部に比較的低い電流を流すように設定されている。これにより、前記二次電池における電解液中の電解質の結晶が前記電極部に緩やかに生成され、充電が穏やかに実施され、前記電極部の劣化を防止している。
【0004】
又、前記二次電池では、充電時における二次電池の容器の膨張を抑え、当該容器の厚さを維持するために、初期充電時に二次電池の容器の外から気体を加圧媒体として加圧して高圧にする発明が存在する。
【0005】
例えば、特開2004−139961号公報(特許文献1)には、外装部材に正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有する発電要素を収納した未充電の電池を予備充電する工程と、前記予備充電した密封状態の電池を高圧力の気体により加圧する工程と、加圧後の電池を本充電する工程とを含むことを特徴とする電池の製造方法が開示されている。これにより、厚さが薄く、初期及び充放電サイクルの繰返し後の放電容量が大きい電池の製造方法および電池を提供することができるとしている。
【0006】
又、特開2005−85627号公報(特許文献2)には、正極、負極およびセパレータで構成された電極群と非水電解液とをアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる外装部材に収納した非水電解質二次電池を用意する工程と、前記非水電解質二次電池をゲージ圧で0.5MPa〜10MPaの高圧力の気体で加圧処理しながら、初充電を行う工程とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法が開示されている。これにより、初充電後においても組み立て時の厚さ及び外観性を維持でき、同時に高容量化及び充放電特性の向上を図ることができるとしている。
【0007】
又、特開2011−108558号公報(特許文献3)には、正極材と負極材との間にリチウムイオン伝導性固体電解質が配置されるとともにこれら各極材の外面にそれぞれ集電体が配置されて成る積層体がパッケージ化され、且つそのパッケージ化されたままの無加圧状態で使用された全固体リチウム二次電池を再生する再生方法が開示されている。前記再生方法では、再生の際に、所定の圧力を付加しながら所定の電流密度でもって充放電を行うことを特徴とする。これにより、初期状態とほぼ同程度の容量に再生することができ、再度、高容量でサイクル充放電を行わせることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−139961号公報
【特許文献2】特開2005−85627号公報
【特許文献3】特開2011−108558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した二次電池のうち、特に、水系電解液(水)を用いる鉛蓄電池等は、通常、所定回数、充放電を繰り返し行うと、当該電極部が劣化し、やがて、充電出来なくなる。このような電極部の劣化の原因として、主に2つの原因が考えられる。
【0010】
第一の原因は、前記電極部で充放電を繰り返すと、当該充放電の繰り返し回数が増加するに従って、当該電極部に生成する電解液中の電解質の結晶が巨大化して、当該電極部を劣化させる点である。又、何らかの理由により、前記電極部に高電流が供給されると、充電に関係する電解質の結晶以外の不活性物質が生成され、当該電極部の充電性能を劣化させる場合もある。例えば、鉛蓄電池の場合、前記電極部の負極の鉛表面に白色硫酸鉛が生成され(サルフェーション)、当該負極の表面積を減らして発電効率を著しく低下させることが良く知られている。即ち、有用な物質の結晶成長が律速になっている。
【0011】
第二の原因は、前記電極部で充放電を繰り返し行うと、何らかの理由により、当該電極部に過剰な電流が流れて、当該電極部でガスが発生する点である。つまり、前記電解質の結晶の生成速度(成長速度)は、通常、電解液中の電解質の拡散速度が律速となるため、前記結晶生成に要する電流以上の過剰の電流が電極部に流れると、当該電極部で電解液の電気分解が誘起され、ガスが発生する。すると、前記ガスが電極部に機械的衝撃を与え、当該電極部の表面に生成した電解質の結晶を剥離(脱落)させる。又、前記結晶生成に要する電流以上の過剰な電流が流れることで、充電のエネルギー損失を招いてしまう。
【0012】
上述した特許文献1、2に記載の発明は、非水系電解液を用いた二次電池に関するものであり、上述した特許文献3に記載の発明は、固体電解質を用いた二次電池に関するものであり、前記水系電解液(水)を用いた二次電池の反応系と全く異なり、上述した問題を解決することは出来ない。
【0013】
一方、現在社会では、例えば、電気自動車、ノートパソコン、タブレット端末、携帯電話等の電気製品が巷に溢れており、これらの電気製品には、殆ど二次電池が使用されている。前記二次電池のうち、上述した水系電解液の二次電池は、非水系電解液又は固体電解質の二次電池と比較して古典的な二次電池であるものの、現在でも頻繁に使用されており、長期間使用可能となる技術は、現在社会においても待望されている。
【0014】
そこで、本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、電極部の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に高速で充電することが可能な二次電池の通電方法、通電装置、二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な二次電池の通電方法、通電装置、二次電池を完成させた。
【0016】
本発明に係る二次電池の通電方法は、電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池の通電方法であって、以下の構成を採用する。
【0017】
即ち、前記通電方法は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を予め印加した状態とする印加ステップと、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部に通電することにより、当該電極部の化成処理、前記二次電池の充電、前記二次電池の放電、又は当該電極部の充電能力の再生のいずれかを行う通電ステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
又、前記通電ステップは、前記電極部に通電することにより、前記水系電解液が大気圧の状態で通電された電極部に生成される電解質の結晶よりも緻密な固い結晶を電極部に生成させる。
【0019】
又、前記印加ステップは、ポンプの加圧部により前記水系電解液に当該水系電解液を導入することで当該水系電解液を直接加圧する方法、前記電槽容器の圧縮部により前記水系電解液の体積を機械的に圧縮することで当該水系電解液を直接加圧する方法、前記電槽容器の圧力変形部により当該圧力変形部を液体又は気体の加圧媒体で押下して当該圧力変形部が前記加圧媒体の圧力を前記水系電解液に伝えることで当該水系電解液を直接加圧する方法のいずれかにより高圧力を印加する。
【0020】
又、前記高圧力は、0.3MPa以上であるよう構成することが出来る。
【0021】
又、前記電流密度は、前記水系電解液が大気圧下である場合の前記電極部に供給可能な許容上限電流密度よりも高い高電流密度であるよう構成することが出来る。
【0022】
又、前記二次電池は、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池のいずれかであるよう構成することが出来る。
【0023】
又、本発明に係る二次電池は、電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池であって、以下の構成を採用する。
【0024】
即ち、前記二次電池は、前記水系電解液が、前記電槽容器内に密封され、且つ、大気圧よりも高い高圧力を予め印加された状態であり、前記電極部は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で通電されることを特徴とする。又、前記二次電池は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を予め印加した状態とする高圧力印加部を備え、前記電極部は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で通電されることを特徴とする。
【0025】
又、本発明に係る二次電池の通電装置は、電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える密封型の二次電池の通電装置であって、以下の構成を採用する。
【0026】
即ち、前記通電装置は、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を予め印加した状態とする高圧力印加部と、前記水系電解液が密封され、且つ、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部に通電する電流通電部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る二次電池の通電方法、通電装置、二次電池によれば、電極部の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に、高電流を流して高速で充電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る二次電池の第一の概念図である。
図2】本発明に係る二次電池の第二の概念図である。
図3】本発明に係る二次電池の通電装置の第一の概念図である。
図4】本発明に係る二次電池の通電装置の第二の概念図である。
図5】実施例1、2、比較例1におけるアンペア時効率の算出結果を示す図である。
図6】実施例1、比較例1における充放電終了後の正極の表面のSEM写真を示す図である。
図7】実施例3−5、比較例2における充放電終了後の正極の表面のSEM写真を示す図である。
図8】実施例6−8、比較例3におけるアンペア時効率の算出結果を示す図である。
図9】実施例9におけるアンペア時効率の算出結果を示す図である。
図10】実施例1−9、比較例1−3の結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る二次電池の通電方法、通電装置、二次電池の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0030】
<本発明に係る二次電池の通電方法>
本発明に係る二次電池の通電方法は、電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える二次電池の通電方法であって、以下の構成を採用する。
【0031】
即ち、前記通電方法は、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を印加するステップと、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部に通電するステップとを備える。そして、当該ステップにおいて、前記電極部の化成処理(慣らし、熟成、エイジング)を行ったり、前記二次電池を充電したり、前記電極部の充電能力を再生させたりすることを特徴とする。
【0032】
ここで、前記電極部の化成処理とは、製造直後の二次電池に所定回数の充放電を繰り返して、当該電極部における結晶の生成から溶解を介して再生成までのサイクルの安定化を促す処理のことである。前記電極部の化成処理は、通常、二次電池の電極部の製造を完成させる処理であり、二次電池の電極部を製造(製作)する場合に行う処理である。前記電極部の製造において、一般的に、最初、当該電極部に弱電流密度で充放電し、徐々に高電流密度で充放電することで、当該電極部の安定化を図る。本発明に係る二次電池の通電方法は、そのような電極部の製造方法に好適に利用できる。
【0033】
又、前記二次電池の充電とは、前記電極部における充電に関係する結晶を生成する処理のことである。又、前記電極部の充電能力の再生とは、当該電極部の表面に既に生成された不活性物質の脱落、分離、除去により、当該表面で充電に関係する結晶の生成を可能にして、前記電極部を修復させる処理のことである。前記電極部の充電能力の再生の指標として、例えば、充放電効率を示すアンペア時効率等が挙げられる。
【0034】
これにより、前記電極部の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に、高電流を流して高速で充電することが可能となる。
【0035】
つまり、通常、二次電池の電極部に電解質や酸化物の結晶を生成させることで、当該二次電池の充電(蓄電)を行うが、水系電解液の二次電池を長期間繰り返し充放電すると、前記結晶が巨大化して、前記電極部を劣化させる。
【0036】
又、前記電極部表面における結晶の成長速度は、上述したように、水系電解液中の電解質の拡散速度や結晶自身の成長速度が律速となるが、長期間の繰り返し充放電のうち、何らかの理由により前記拡散速度、成長速度よりも速い過剰な電流が前記電極部に流れ、前記水系電解液が電気分解する。その結果、ガスが発生して、前記電極部を劣化させる。
【0037】
そこで、本発明では、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を印加することで、当該水系電解液中における電解質のイオンへの解離度を高める。つまり、前記電解質のイオン濃度を増加させるのである。その結果、前記電極部表面における結晶の成長速度を高め、併せて水系電解液の電気分解によるガスの発生を確実に防止するのである。
【0038】
更に、高圧下の晶析技術に基づけば、前記電極部に生成される電解質の結晶は、緻密な固い結晶となる。ここで、前記緻密な固い結晶が形成されれば、充電時の結晶の巨大化は、もちろん、充放電時の結晶の脱落も、当然に生じない。従って、充放電において前記電極部を損傷することが無いから、通常、許容された許容電流であっても、高電流であっても、当該電極部の劣化を確実に防止するとともに長期間の繰り返し充放電を可能とするのである。
【0039】
ここで、上述で充電された二次電池の放電は、前記電解質の結晶が水系電解液に溶解することでなされる。その放電時の二次電池は、前記水系電解液に高圧力が印加された状態であっても、前記水系電解液が大気圧下の状態であっても、いずれの状態でも構わない。それは、放電時では、前記結晶が水系電解液に溶解すれば足り、当該水系電解液の圧力がその溶解を特に阻害することは無いからである。
【0040】
又、本発明は、高圧下の晶析技術を応用しているため、前記水系電解液において電極部に電解質の結晶を生成させる二次電池であれば、どのような二次電池の種類であっても、適用可能と思われる。
【0041】
ところで、本発明の水系電解液に高圧力を印加する方法(加圧方法)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無い。前記加圧方法として、例えば、前記水系電解液に当該水系電解液を導入するポンプ等の加圧部を接続して当該水系電解液を直接加圧する方法、前記水系電解液の体積を機械的に圧縮可能な圧縮部を設けて当該水系電解液の体積を圧縮して加圧する方法、前記電槽容器にフリーピストンやダイアフラム等の圧力変形部を設けて当該フリーピストンを液体又は気体の加圧媒体で押下して当該水系電解液を直接加圧する方法等の公知の方法が挙げられる。
【0042】
又、本発明の加圧方法において、液体の加圧媒体を採用する場合、当該液体加圧媒体として、例えば、前記水系電解液、水、油等が挙げられる。尚、前記水系電解液以外の液体加圧媒体を採用する場合には、上述した圧縮部、圧力変形部等の加圧媒体分離機構を前記電槽容器に設ける必要がある。又、気体の加圧媒体を採用する場合、当該気体加圧媒体として、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性気体が挙げられる。本発明では、前記液体加圧媒体を採用することで、前記水系電解液に簡単に高圧力を印加することが出来るとともに、当該水系電解液への無用な気体の溶解を回避し、装置全体として安全な構成とすることが可能となる。
【0043】
又、本発明の高圧力は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無い。前記高圧力として、下限であれば、高圧力印加の容易性、安全性、電極部の劣化防止の確実性の観点から、例えば、0.3MPa以上から100MPa以下の範囲内が好ましく、0.5MPa以上から10MPa以下の範囲内が更に好ましい。
【0044】
又、本発明の電流密度(mA/cm)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無い。前記電流密度として、例えば、前記水系電解液が大気圧下である場合の前記電極部に供給可能な許容電流密度でも良いし、当該許容電流密度のうち、上限である許容上限電流密度よりも高い高電流密度でも構わない。尚、前記電流密度は、前記水系電解液に接触している電極部の単位面積あたりに単位時間流れる電気量を示す。
【0045】
ここで、前記電流密度として、高電流密度を採用すると、上述した高圧下の晶析現象により前記電極部に生成する結晶の成長速度が更に向上して、品質の良い結晶を生成させることが可能となる。又、前記電流密度が高い分、充電に要する時間(充電時間)を短縮化出来て、高速充電を実現することが可能となる。
【0046】
尚、本発明の許容上限電流密度は、二次電池の種類、電極部の種類、サイズ、水系電解液の種類、量、電解質の種類、濃度等に応じて適宜決定される。前記許容上限電流密度の決定方法として、例えば、二次電池の水系電解液が大気圧下である場合で(水系電解液が大気圧の状態)当該二次電池の電極部を観察しながら、当該電極部に流す電流密度を適宜増加させて、当該電極部から結晶の遊離(剥がれ)の開始が確認された時点の電流密度を許容上限電流密度として決定する方法が挙げられる。
【0047】
又、本発明の高電流密度は、前記許容上限電流密度よりも高い電流密度であれば、特に限定は無い。前記高電流密度として、大気圧下の充電時間(充電速度)よりも数倍早ければ実用的であることから、例えば、前記許容上限電流密度の2倍以上、10倍以下の範囲内が好ましい。
【0048】
又、本発明において電極部に通電する方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無い。前記通電方法として、例えば、公知の電源装置を用意して、当該電源装置の一対の出力端子を二次電池の電極部にそれぞれ電気的に接続させて、当該電源装置からの電流を前記電極部に供給する方法が挙げられる。
【0049】
又、本発明の二次電池の種類は、二次電池として機能すれば、特に限定は無い。前記二次電池として、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池等が挙げられる。
【0050】
又、本発明の水系電解液、電極部の正極及び負極は、前記二次電池の種類に応じて適宜設定される。例えば、前記二次電池が鉛蓄電池であれば、前記水系電解液は希硫酸となり、前記電極部の正極は二酸化鉛となり、負極は鉛となる。又、前記二次電池がニッケル・水素畜電池であれば、前記水系電解液は水酸化カリウム水溶液となり、前記電極部の正極は水酸化ニッケルとなり、負極は白金黒触媒等の水素吸蔵合金となる。又、前記二次電池がニッケル・カドミウム畜電池であれば、前記水系電解液は水酸化カリウム水溶液となり、前記電極部の正極は水酸化ニッケルとなり、負極は水酸化カドミウムとなる。
【0051】
又、本発明の二次電池の構成は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無い。前記二次電池の構成として、例えば、単に水系電解液に正極及び負極の電極部を浸漬して電槽容器内に密封した構成や水系電解液に浸漬した正極と負極との間に両者の電気的接触を防止するためのセパレータを挿入した構成等が挙げられる。
【0052】
又、本発明の二次電池の構成は、前記電極部に通電する時に(充電時)に前記水系電解液に高圧力を印加可能な構成であれば、どのような構成でも良く、常時、前記水系電解液が密封された状態の構成(密閉型の二次電池)でも、充電時に前記水系電解液が密封された状態であり、放電時に前記水系電解液が大気圧下の状態(開放状態)である構成(開放型の二次電池)でも構わない。又、本発明の二次電池の構成は、単一セルであっても、複数セルであっても構わない。
【0053】
又、本発明の二次電池の構成は、充電容量を高めるために積層構成を採用しても、大面積の電極部を採用しても構わない。例えば、前記二次電池の構成として、正極、セパレータ、負極をこの順番で複数積層させて前記電槽容器内に収納し、その中に水系電解液を充填して、蓋材で密封する構成を採用できる。又、前記二次電池の構成として、前記正極、負極を大面積の板上に配置し、両者の間隔をいずれも位置でも一定とした構成を採用出来る。
【0054】
又、本発明の二次電池の電槽容器の材質は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無い。前記材質として、例えば、ステンレス、耐圧ガラス、高強度プラスチック、エンジニアリングプラスチック、繊維強化プラスチック等が挙げられる。又、前記電槽容器の内面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐食性のコーティング層を設けても、前記電槽容器の外面に耐圧性の高強度プラスチック層を設けても構わない。
【0055】
<本発明に係る二次電池>
次に、本発明に係る二次電池の二次電池について説明する。本発明に係る二次電池1は、図1に示すように、電槽容器2と、当該電槽容器2内に充填された水系電解液3と、当該水系電解液3に浸漬された正極4a及び負極4bの電極部4とを備える二次電池であって、以下の構成を採用する。
【0056】
即ち、前記二次電池1は、前記水系電解液3に大気圧よりも高い高圧力を印加する高圧力印加部5を備え、前記電極部4は、前記水系電解液3に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で電流を供給されることを特徴とする。
【0057】
これにより、上述した本発明に係る二次電池の通電方法と同様に、電極部4の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に、高電流を流して高速で充電することが可能となる。
【0058】
尚、前記電極部4に電流を供給する場合は、外付けされる電源装置6によりなされる。例えば、前記電源装置6で二次電池1を充電する場合、当該電源装置6の正極出力端子に、前記電極部4の正極4aが電気的に接続され、当該電源装置6の負極出力端子に、前記電極部4の負極4bが電気的に接続される。そして、前記電極部4の正極4aと負極4bとの間に所定の電圧が印加され、当該電極部4に所定の電流密度で電流が流れて、前記二次電池1が充電される。一方、前記二次電池1を放電する場合、当該二次電池1の正極4aと負極4bを、前記電源装置6の正極入力端子と負極入力端子にそれぞれ電気的に接続する。この場合、前記電源装置6が電気製品であっても良い。
【0059】
ここで、前記電槽容器2は、上方が開放された耐圧容器2aに蓋材2bをしてパッキン等の封止材2cで内部が密封される。これにより、前記電槽容器2の内部は密封状態に保持される。又、前記封止材2cは、前記水系電解液3に対応して耐食性を有するものが使用される。
【0060】
又、前記電槽容器2(図1では、蓋材2b)の所定の位置に水系電解液3を注入可能な注入口2dが開口され、前記電槽容器2に水系電解液3が満たされた後に、当該注入口2dに注排水バルブ2e1が接続され密着される。又、前記電槽容器2の所定の位置に内部圧力を適宜開放可能な圧力バルブ2e2が設けられる。
【0061】
又、前記電極部4は、前記電槽容器2(図1では、蓋材2b)の所定の位置に設けられた貫通孔2fを介して二次電池1の内部から外部に貫通される。前記貫通孔2fは、前記封止材2cにより密封されることで、前記電極部4と前記電槽容器2とは電気的に絶縁されるとともに、当該電槽容器2の内部は密封状態に維持される。
【0062】
又、前記高圧力印加部5には、所定の開口部5aを介して前記水系電解液3を電槽容器2の内部に注入するポンプ5bと、前記開口部5aを塞ぐ塞止栓5cとが設けられる。又、前記高圧力印加部5には、前記ポンプ5bにより内部に導入された水系電解液3の逆流を防止する逆止弁5dが内臓され、更に、前記ポンプ5bには、前記水系電解液3に印加する圧力を計測する圧力計5eが設けられる。
【0063】
前記高圧力印加部5で水系電解液3に高圧力を印加する場合、例えば、前記塞止栓5cを外して、前記ポンプ5bを電槽容器2の内部に接続し、前記圧力計5eにより所望の圧力まで水系電解液3を圧入する。そして、前記圧入後は、前記ポンプ5bを外し、前記塞止栓5cで栓をする。
【0064】
尚、図1に示す二次電池1の構成は、例えば、設置型の二次電池を想定したが、前記水系電解液3を高圧力で印加できる構成であれば、適宜設計変更することが出来る。
【0065】
例えば、二次電池の構成として、可搬型の二次電池を想定すると、図2に示すように、前記電槽容器2に内部の水系電解液3の体積(容積)を圧縮可能なネジ5fを設け、当該ネジ5fを所定の方向に回転させることで、当該ネジ5fの端部を水系電解液3に押下させ、当該水系電解液3の体積を減少させる。つまり、前記ネジ5fの回転操作により、前記水系電解液3の体積を増減可能とするのである。
【0066】
ここで、前記水系電解液3の圧縮率は、気体の圧縮率と比較して著しく小さいため、例えば、前記水系電解液3の体積を数%程度減少させると、当該水系電解液3の圧力は容易に高圧力(例えば、500MPa)に達する。上述した高圧力印加部5では、その現象を適切に利用し、前記水系電解液3の体積を減少させることで、当該水系電解液3の圧力を簡単に高めることが出来る。
【0067】
尚、前記ネジ5fの構成としては、例えば、当該ネジ5fと電槽容器2との隙間から水系電解液3が外部に漏れ出ないように、当該隙間にOリング等のシール部材5f1を適宜設けても良い。図2に示す二次電池1の高圧力印加部5では、電槽容器2と螺合されるネジ5fの螺合部5f2の外周径よりも、水系電解液3を押下するネジ5fの端部5f3の外周径を小さくし、当該端部5f3の外周径と、前記螺合部5f2と螺合される電槽容器2の螺合部2b1との隙間に密閉材5f1を設けて、前記水系電解液3の密閉状態を確保しつつ、高圧力を印加可能に構成している。
【0068】
又、本発明に係る二次電池1では、上述した二次電池の通電方法と同様に、充電後に、前記水系電解液3を高圧力のまま放電しても、前記水系電解液3を常圧(大気圧)に戻して放電しても構わない。
【0069】
又、図2に示す二次電池1であっても、注排水バルブ2e1、圧力バルブ2e2、前記電槽容器2に接続された圧力計5eが適宜設けられる。又、前記電極部4が挿通される電槽容器2の貫通孔は、前記封止材2cにより密封される。
【0070】
ところで、本発明に係る二次電池1では、前記水系電解液3に高圧力を印加した状態で前記電極部4に電流を供給して充電すると、当該水系電解液3の圧力が更に高くなる場合がある。又、前記二次電池1の環境温度が高くなるとその熱を受けた二次電池1の水系電解液3が高温になり、熱膨張して、当該水系電解液3の圧力が更に高くなる場合がある。
【0071】
従って、前記二次電池1の電槽容器2は、そのような水系電解液3の圧力に耐え得るだけの安全係数の耐圧容器に設計すると良い。又、前記水系電解液3の圧力が所望する高圧力よりも過剰に高圧となった場合に、当該過剰な圧力を放出するための逃し弁を前記電槽容器2に設けても良い。
【0072】
尚、前記二次電池1の電槽容器2を、例えば、内径が200mmであり材質が許容圧力200N/mmの高強度鋼である円筒型耐圧容器として、耐圧を100MPaに設定する場合に、当該電槽容器2の肉厚は約50mmに設計される。
【0073】
又、前記電槽容器2の内面は、水系電解液3に接触するとともに、当該水系電解液3の圧力に晒されるため、当該電槽容器2の材質は、例えば、電気絶縁性と耐圧性を有する材質が用いられる。前記電槽容器2は、例えば、金属性容器の内面に耐食性のコーティング層を設けた容器を用いても良い。
【0074】
又、前記電槽容器2の形状は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、前記電槽容器2の形状を円筒形状にして、内部圧力に対する強度を高めても良い。前記電槽容器2の構造は、二次電池1の大きさ、種類、使用目的等に応じて適宜設計変更することが出来る。又、本発明に係る二次電池1は、一の電極部4を採用したが、複数の電極部4を採用しても構わない。
【0075】
<本発明に係る二次電池の通電装置>
次に、本発明に係る二次電池の通電装置について説明する。本発明に係る二次電池1の通電装置10は、図3に示すように、電槽容器2と、当該電槽容器2内に充填された水系電解液3と、当該水系電解液3に浸漬された正極4a及び負極4bの電極部4とを備える二次電池の通電装置であって、以下の構成を採用する。
【0076】
即ち、前記通電装置10は、前記水系電解液3に大気圧よりも高い高圧力を印加する高圧力印加部5と、前記水系電解液3に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部4に電流を供給する電流通電部6とを備えることを特徴とする。
【0077】
これにより、上述した本発明に係る二次電池の通電方法と同様に、電極部4の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に、高電流を流して高速で充電することが可能となる。
【0078】
ここで、本発明に係る高圧力印加部5は、加圧媒体を用いて水系電解液3に高圧力を印加する構成であり、前記二次電池1を内部に収容可能な加圧容器5gと、当該加圧容器5gの内部に充填された気体又は液体の加圧媒体5hとを備える。又、前記高圧力印加部5は、当該加圧媒体5hと前記二次電池1の水系電解液3との間に設けられ、前記加圧媒体5hの圧力を水系電解液3に伝える分離膜5iと、前記加圧容器5gの供給部5aを介して当該加圧容器5gの内部に加圧媒体5hを供給するポンプ5bとを備える。
【0079】
これにより、前記分離膜5iを介して前記加圧容器5g内の加圧媒体5hの圧力と水系電解液3の圧力とを等しくし、前記ポンプ5bにより前記加圧媒体5hを介して水系電解液3を加圧することが可能となる。
【0080】
又、前記加圧容器5gは、上述した電槽容器2と同様に耐圧性であり、前記分離膜5iは、二次電池1の水系電解液3を密封状態に保持するとともに、前記加圧媒体5hが電槽容器2の内部に侵入出来ないように構成される。前記分離膜5iは、例えば、水系電解液3の上面を覆うフィルムを採用しても良いし、水系電解液3の上面を覆うとともに前記電槽容器2の上面開口部に固定される、可撓性又は弾性のフィルムやダイアフラムを採用しても良い。前記分離膜5iは、もちろん、水系電解液3に対して耐食性である。又、二次電池2の電極部4が分離膜5iを介して内部の水系電解液3に浸漬される場合は、当該分離膜5iに、前記電極部4が挿通可能な挿通孔が設けられる。
【0081】
又、前記二次電池1が、高圧力印加部5の加圧容器5gの内部に収納されると、当該二次電池1の電極部4を分離膜5i、加圧容器5gを介して外部へ延出させる。そして、前記延出された電極部4と外部の電流通電部6とを電気的に接続することで、当該電極部4に電流を供給可能とする。前記電流通電部6は、上述した電源装置6と同様である。
【0082】
ここで、前記加圧容器5gは、例えば、開口部を有する凹状の本体部5g1と、当該開口部の周端に設けられたフランジ部5g2とを備える。又、前記加圧容器5gは、当該フランジ部5g2に当接するとともに開口部に嵌合可能な凸状の加圧蓋5g3と、前記開口部の周端の内面に設けられ、前記加圧蓋5g3が本体部5g1の開口部に嵌合されると当該加圧蓋5g3と当該本体部5g1との隙間を封止する封止材5g4とを備える。前記フランジ部5g2と加圧蓋5g3の周端部とは、ボルト等の締結部材5g5により強固に固定される。これにより、前記本体部5g1の内部を密封状態とすることが出来るとともに耐圧性を持たせることが出来る。
【0083】
又、図3に示す二次電池1の通電装置10であっても、前記加圧容器5gに接続された注排水バルブ2e1、圧力バルブ2e2、圧力計5eが適宜設けられる。
【0084】
ところで、前記高圧力印加部5の構成は、前記水系電解液3を高圧力で印加できる構成であれば、適宜設計変更することが出来る。例えば、前記高圧力印加部5として、図4に示すように、二次電池1の電槽容器2の底面を開口し、当該開口部2gに、前記分離膜5iに対応するフリーピストンを嵌め合わせた構成とすることが出来る。
【0085】
前記フリーピストン5iは、前記電槽容器2を密閉状態にしながら、上下方向に昇降可能(摺動可能)に設けられる。この際、例えば、前記フリーピストン5iの周端部にOリング等のシール部材を設けると良い。
【0086】
又、前記加圧容器5gの底面の一部には、前記ポンプ5bと接続される供給部5aが設けられるとともに、当該加圧容器5gの上方の一部には、前記二次電池1の電槽容器2の本体が装着される装着口5jが設けられる。前記電槽容器2が加圧容器5gに装着されると、当該加圧容器5gの内部を密封状態として、当該内部に加圧媒体5hが充填される。
【0087】
上述のように構成することで、前記電極部4は、電槽容器2の蓋材2bにのみ貫通させる構成と出来るため、前記電槽容器2、加圧容器5hの密閉状態を維持しやすくなり、装置全体の構成を簡素化できる。
【0088】
又、図4に示す二次電池1の通電装置10であっても、前記加圧容器5gに接続された注排水バルブ2e1、圧力バルブ2e2、圧力計5eが適宜設けられる。
【0089】
尚、図3図4に示した本発明の通電装置10では、二次電池1と一体型であるが、当該二次電池1の水系電解液3に高圧力を印加可能な構成であれば、どのような構成でも良く、例えば、公知技術により、前記二次電池1の電槽容器2と加圧容器5gとを分離可能となるよう構成しても構わない。
【0090】
<実施例、比較例等>
以下、実施例、比較例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0091】
<実施例等に用いる二次電池と通電装置>
図4に示す二次電池1の充電装置10を用いて、水系電解液3の高圧下における充放電実験を行った。先ず、二次電池1の種類は鉛蓄電池とし、水系電解液3は27重量%の希硫酸とし、電極部4の正極4aは直径が2mmで長さが6cmの棒を渦巻きにして略円形とした鉛とし、負極4bは、前記正極4aと同様に、直径が2mmで長さが6cmの棒を渦巻きにして略円形とした鉛とした。又、前記電極部4の正極4aも負極4bも水系電解液3に浸漬した表面積は約3.76cmである。尚、前記電極部4は、50重量%のエタノールと蒸留水で洗浄した後に用いた。
【0092】
又、二次電池1の電槽容器2の内容積は、フリーピストン5iを装着した後で約5.0mLであり、その内部に希硫酸3を充填し、更に、電極部4の正極4aと負極4bとの間隔を5mmに保持した状態で希硫酸に浸漬して蓋材2bで密封した。この際、前記電極部4の正極4a及び負極4bの表面積は水系電解液3に約3.76cmだけ浸漬するよう固定した。
【0093】
又、二次電池1の電槽容器2を加圧容器5gに装着し、その内部に液体加圧媒体5hとして水を充填した。高圧力印加部5のポンプ5bとしての市販のプランジャーポンプを用い、電流通電部6としての電源装置は、横河メータアンドインスツルメンツ社製 ソールメジャーユニットGS610を用いた。尚、加圧時、充放電時の温度は、25度である。又、前記ポンプ5bと加圧容器5gとの間には、適宜、圧力弁、圧力計等を配置して、前記液体加圧媒体5hに所望の圧力を印加出来るように構成した。
【0094】
<許容上限電流密度の決定>
先ず、前記二次電池1の水系電解液3の圧力を大気圧(0.10MPa)として、前記電源装置6で二次電池1の電極部4に供給する電流を増加させていき、当該電極部4を観察した。その結果、電流が0.5mAである場合(電流密度133μA/cm)には、前記電極部4が劣化することなく正極4aで電解質の結晶(二酸化鉛)が生成したのに対し、電流が0.5mAを超えると、前記電極部4に生成した結晶が剥がれ始め、水系電解液3が濁り出した。そのため、前記二次電池1の許容上限電流密度を133μA/cmと決定した。尚、前記電流密度は、通電電流(充電電流)を電極部4の表面積で除算した値であるので、後述する実施例等の比較の基準では、便宜上、前記許容上限電流密度に対応して許容上限電流の0.5mAを用いる。
【0095】
<二次電池の電極部の化成処理に対応する充放電繰り返し試験>
実施例1、2、比較例1では、50回の充放電を繰り返し、そのアンペア時効率を算出するとともに、充放電終了後の正極4aの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで、二次電池1の電極部4の化成処理における充電効率の変化、電極部4の劣化具合等を確認した。
【0096】
ここで、前記アンペア時効率とは、放電時に得られた電気量から充電時に与えた電気量を除算した比であり、充電時に与えた電気量は、前記電極部4に流した電流と充電時間とを乗算することで得られる。又、放電時に得られた電気量は、放電開始から前記電極部4の放電電圧が起電圧(2.10V)の10%減である電圧(約1.89V)になるまでの電気量として算出した。
【0097】
<実施例1>
実施例1は、充電時において、水系電解液3に印加する圧力を10.0MPaとし、電極部4に供給する電流を前記許容上限電流(0.5mA)の20倍の10.0mAとし、充電時間を10分として充電した。又、放電時においては、前記圧力をそのままとして、充電後の二次電池1から0.5mAの電流で放電し、その際の電圧が1.89Vに低下するまで放電を継続した。これで、一回の充放電が完了する。この充放電を50回繰り返し、その時のアンペア時効率を算出した。又、全ての充放電終了後の正極4aの表面をSEMで観察した。
【0098】
<実施例2>
実施例2は、実施例1における水系電解液3の高圧力を10.0MPaから0.5MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様の条件により充放電を50回繰り返した。
【0099】
<比較例1>
比較例1は、実施例1における水系電解液3の高圧力を10.0MPaから0.10MPa(大気圧)に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件により充放電を50回繰り返した。
【0100】
<結果>
図5には、実施例1、2、比較例1におけるアンペア時効率の算出結果を示す。図5に示すように、充放電の繰り返し回数が1回から約28回までは、実施例1、2、比較例1のアンペア時効率が凸状に増加減少している。これは、通常の電極部4の化成処理に見られる傾向であり、これにより、当該電極部4の化成処理が行われていることが理解される。又、充放電の繰り返し回数が、約28回以降になると、実施例1、2のアンペア時効率が、比較例1のアンペア時効率と比較して急激に向上していることが理解される。
【0101】
又、実施例1では、電極部4に高電流を供給したにもかかわらず、当該電極部4の化成処理が進行した。更に、実施例2においては、極めてわずかに電極部4の剥離が見られたが、その後、化成処理は安定に進行した。一方、比較例1では、電極部4で多少のガスが発生するとともに、水系電解液3が濁っていた。そのため、28回以降における比較例1のアンペア時効率の低下は、前記ガスの発生や表面結晶の剥がれによる電極部4の劣化によると考察している。又、実施例1では、前記ガスの発生が無いとともに前記結晶の剥がれが無かったため、28回以降においてアンペア時効率が著しく向上したと考察している。これにより、実施例1では、電極部4の充放電サイクルの安定化を適切に行うことが可能となる。
【0102】
又、図6には、実施例1、比較例1における充放電終了後の正極4aの表面のSEM写真を示す。図6に示すように、比較例1では、硫酸鉛の結晶の粒子径が大きく粒子全体として大きく成長しているにもかかわらず、実施例1では、硫酸鉛の結晶が緻密な固い結晶となり、微結晶化していることが理解される。これは、実施例1では、水系電解液3に高圧力を印加することで、非常に大きな電流にもかかわらず、充電に伴う硫酸鉛の結晶が緻密に成長したと考察している。
【0103】
尚、通常、水系電解液3が大気圧での許容上限電流(0.5mA)で充電する場合では、充電時間は200分であるが、実施例1では、わずか10分で足りることになる。つまり、充電時間が飛躍的に短縮されていることが理解される。
【0104】
以上の結果により、本発明では、水系電解液3を高圧にすると、高電流であっても、前記電極部4の化成処理に有効であり、当該電極部4の製造に好適であることが理解される。又、電流(電流密度)を高めることで、高速充電が可能になることも理解される。
【0105】
又、充放電の繰り返し回数が約28回である場合に、実施例1、2、比較例1のアンペア時効率が下がった状態は、前記電極部4の充電不能状態に対応し、この時の電極部4は劣化した状況と理解される。更に、充放電の繰り返し回数が約28回以降の場合に、実施例1、2のアンペア時効率が急激に向上している。これにより、水系電解液3の圧力を10.0MPa又は0.5MPaにした場合に、適正な電流で前記電極部4に通電(充電)すれば、当該電極部4の充電能力の再生が可能になると理解される。
【0106】
<二次電池の充電に対応する第一の充放電繰り返し試験>
実施例3−5、比較例2では、60回の充放電を繰り返し、その充放電終了後の正極4aの表面をSEMで観察することで、二次電池1の充電における電極部4の劣化具合等を確認した。
【0107】
<実施例3>
実施例3は、充電時において、水系電解液3に印加する圧力を100.0MPaとし、電極部4に供給する電流を前記許容上限電流(0.5mA)とし、充電時間を10分として充電した。又、放電時においては、前記圧力をそのままとして、充電後の二次電池1から0.5mAの電流で1.89Vに低下するまで放電を継続した。これで、一回の充放電が完了する。この充放電を60回繰り返し、全ての充放電終了後の正極4aの表面をSEMで観察した。
【0108】
<実施例4>
実施例4は、実施例3における水系電解液3の高圧力を100.0MPaから200.0MPaに変更したこと以外は、実施例3と同様の条件により充放電を60回繰り返した。
【0109】
<実施例5>
実施例5は、実施例3における水系電解液3の高圧力を100.0MPaから300.0MPaに変更したこと以外は、実施例3と同様の条件により充放電を60回繰り返した。
【0110】
<比較例2>
比較例2は、実施例3における水系電解液3の高圧力を100.0MPaから0.10MPa(大気圧)に変更したこと以外は、実施例3と同様の条件により充放電を60回繰り返した。
【0111】
<結果>
図7には、実施例3−5、比較例2における充放電終了後の正極4aの表面のSEM写真を示す。図7に示すように、前記電極部4に供給する電流が許容上限電流(0.5mA)である場合に、水系電解液3に印加する圧力が高圧力になる程、前記正極4aの表面に形成される結晶粒子が小さくなり、当該正極4aの劣化を防止していることが理解される。これにより、本発明では、二次電池1の充電に有効であり、前記電極部4を劣化させることなく、前記許容上限電流よりも遥かに高い電流で、長期間充放電の繰り返しを可能にすることが理解される。
【0112】
<二次電池の充電に対応する第二の充放電繰り返し試験>
実施例6−8、比較例3では、10回の充放電を繰り返し、そのアンペア時効率を算出することで、二次電池1の充電における充電効率の変化等を確認した。
【0113】
<実施例6>
実施例6は、二次電池1の電極部4として、上述した実施例2における化成処理の完了後の電極部を採用した。又、充電時において、水系電解液3に印加する圧力を75.0MPaし、電極部4に供給する電流を前記許容上限電流(0.5mA)の10倍の5.0mA(許容上限電流密度の10倍)とし、充電時間を6.0分として充電した。又、放電時においては、前記圧力をそのままとして、充電後の二次電池1から0.5mAの電流で放電電圧が1.89Vに低下するまで放電を継続した。これで、一回の充放電が完了する。この充放電を10回繰り返し、その時のアンペア時効率を算出した。
【0114】
又、前記高圧下で、供給する電流を10.0mA(前記許容上限電流の20倍)とし、上述の充電時の電気量を一定にするために充電時間を3.0分とした条件の充放電を10回繰り返し、その時のアンペア時効率を算出した。
【0115】
更に、前記高圧下で、供給する電流を20.0mA(前記許容上限電流の40倍)とし、上述の充電時の電気量を一定にするために充電時間を1.5分とした条件の充放電を10回繰り返し、その時のアンペア時効率を算出した。
【0116】
<実施例7>
実施例7は、実施例6における水系電解液3の高圧力を75.0MPaから100.0MPaに変更したこと以外は、実施例6と同様の条件により充放電を10回繰り返した。
【0117】
<実施例8>
実施例8は、実施例6における水系電解液3の高圧力を75.0MPaから150.0MPaに変更したこと以外は、実施例6と同様の条件により充放電を10回繰り返した。
【0118】
<比較例3>
比較例3は、実施例6における水系電解液3の高圧力を75.0MPaから0.10MPa(大気圧)に変更したこと以外は、実施例6と同様の条件により充放電を10回繰り返した。
【0119】
<結果>
図8には、実施例6−8、比較例3におけるアンペア時効率の算出結果を示す。ここで、比較例1では、前記許容上限電流の0.5mAであっても、充放電の繰り返し回数がわずか2回で、アンペア時効率が完全に低下することが理解される。これに対して、実施例6−8、即ち、水系電解液3の圧力が、75.0MPa、100.0MPa、150.0MPaである場合では、高電流の充放電の繰り返し回数が増加しても、アンペア時効率が高いままであり、更に、高電流密度としても、アンペア時効率が高い値を維持したままであることが理解される。
【0120】
これは、水系電解液3に高圧力を印加することで、電極部4に高電流を流しても、当該電極部4が劣化せず、充電効率を高く維持することが出来ることを示している。又、前記二次電池1に蓄積される電気量は、どの電流(電流密度)でもほぼ同一であることから、電流を大きくし、充電時間を著しく短縮化することが出来ることを示している。
【0121】
<電極部の充電能力の再生に対応する充放電繰り返し試験>
実施例9では、以下の手順に従い、電極部4の充電能力の再生を確認した。先ず、水系電解液3の圧力を0.10MPa(大気圧)として高電流(20.0mA)で15回の充放電を繰り返し、電極部4を劣化させた。そして、当該劣化後の電極部4を用いて、水系電解液3の圧力を5.0MPaにして、高電流(20.0mA)で15回の充放電を繰り返し、その際のアンペア時効率を算出した。又、前記劣化後の電極部4を用いて、水系電解液3の圧力を10.0MPaにして、高電流(20.0mA)で15回の充放電を繰り返し、その際のアンペア時効率を算出した。
【0122】
<結果>
図9には、0.10MPa、10.0MPa、5.0MPaにおけるアンペア時効率の算出結果を示す。図9に示すように、0.10MPaにおけるアンペア時効率は、充放電繰り返し回数が増加すると、直に低下して、充電出来なくなっている。一方、当該充電出来なくなった電極部4を用いて、水系電解液3の圧力を高圧力にし、充放電を繰り返すと、そのアンペア時効率は回復していることが理解される。つまり、一度、充電出来なくなった電極部4であっても、水系電解液3の圧力を高圧力にして充放電を繰り返すと、その充電能力を再生することができ、当該電極部4を修復することができるのである。尚、5.0MPaにおける電極部4では、その充電能力が回復したものの、若干の脱落が見られた。
【0123】
さて、図10には、実施例1−9、比較例1−3の結果をまとめたグラフを示した。図10に示す横軸は、log軸で示した水系電解液3の圧力を示し、縦軸は、電極部4に供給した電流を示す。
【0124】
ここで、図10に示す丸印は、良質な電極部4が得られることを示し、図10に示す三角印は、電極部4での充電は出来るが水系電解液3が濁ることを示す。又、図10に示すバツ印は、電極部4で充放電出来ないことを示す。更に、図10に示す白色丸印、白色三角印、バツ印は、前記電極部4の化成処理時のデータを示し、黒色丸印は、化成処理終了後の電極部4のデータを示す。そして、図10に示す点線は、丸印の領域を示す良好域と、三角印の領域を示す不良域と、バツ印の領域を示す不能域とを区分している。
【0125】
図10に示すように、水系電解液3の圧力を高圧力にするほど、許容上限電流(許容上限電流密度)が増加することが一見して理解される。ここで、化成処理における充放電、通常使用における充放電、充電能力再生における充放電の間に区別は無く、いずれの充放電であっても同様の結果となっている。
【0126】
これにより、本発明は、水系電解液3の圧力を高圧力にすることが、二次電池1の高速充電に極めて有効であり、前記電極部4を劣化させることなく、長期間充放電の繰り返しを可能にし、更に、高速充電を可能にすることが明らかになった。
【0127】
尚、図10に示すグラフは、鉛蓄電池に基づいた結果であるものの、どのような水系電解液3の二次電池1であっても、同様な傾向が見られる。このことは、高圧力下の晶析現象に基づいた統一的な共通の原理で容易に説明することが出来る。
【0128】
このように、本発明に係る二次電池の通電方法は、電槽容器と、当該電槽容器内に充填された水系電解液と、当該水系電解液に浸漬された正極及び負極の電極部とを備える二次電池の通電方法であって、前記水系電解液に大気圧よりも高い高圧力を印加するステップと、前記水系電解液に高圧力が印加された状態で、所定の電流密度で前記電極部に電流を供給することにより、当該電極部の化成処理、前記二次電池の充電、当該電極部の充電能力の再生のいずれかをするステップとを備えることを特徴とする。
【0129】
これにより、電極部の劣化を伴うことなく、許容電流でも高電流でも長期間繰り返し充放電することが可能となる。尚、本発明に係る二次電池1であっても、通電装置10であっても、同様の作用効果を奏する。
【0130】
又、本発明は、今後、高圧力と高電流をコンセプトに大容量で軽量な二次電池の開発に繋げることが可能である。そして、本発明では、大電流で充放電を繰り返しても電極部4が劣化しないことから、コストが掛かる大規模発電基地の通電方法(充電方法)、二次電池、通電装置(充電装置)にも適用可能である。更に、太陽光発電、風力発電、地熱発電等の自然エネルギー発電における高速充電装置として期待出来る。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上のように、本発明に係る二次電池の通電方法、二次電池、通電装置は、電気自動車、ノートパソコン、タブレット端末、携帯電話等の水系電解液の二次電池を使用するあらゆる電気製品の分野に有用であり、電極部の劣化を防止するとともに長期間繰り返し充放電することが可能で、更に高速で充電することが可能な二次電池の通電方法、二次電池、通電装置として有効である。
【符号の説明】
【0132】
1 二次電池
2 電槽容器
3 水系電解液
4 電極部
4a 正極
4b 負極
5 高圧力印加部
6 電源装置(電流通電部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10