特許第6066188号(P6066188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本スピンドル製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6066188-ドライブース 図000002
  • 特許6066188-ドライブース 図000003
  • 特許6066188-ドライブース 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066188
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ドライブース
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   F24F7/06 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-41544(P2013-41544)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169815(P2014-169815A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅文
(72)【発明者】
【氏名】泉 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大西 辰明
(72)【発明者】
【氏名】増田 克洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−275233(JP,A)
【文献】 特開2007−132602(JP,A)
【文献】 特開平03−028482(JP,A)
【文献】 特開平09−222247(JP,A)
【文献】 特開平06−101881(JP,A)
【文献】 特開2003−287253(JP,A)
【文献】 特開2009−174828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブース本体の周壁を構成するカーテンを2重構造とし、該2重構造のカーテン間に形成された空間から強制的に排気を行うとともに、該排気された空気を除湿ユニットを介して、前記2重構造のカーテンの内側カーテンで仕切られたブース空間と、2重構造のカーテン間に形成された空間とに供給するようにしたドライブースであって、少なくとも人が出入りする箇所の前記2重構造のカーテンの間隔を、該カーテン間に形成された空間内に出入りする人が一旦留まれる寸法に設定してなり、かつ、2重構造のカーテン間に形成された空間の排気を行う排気部を、人が出入りする箇所の近傍を含む複数箇所に配設するとともに、人が出入りする際に、当該箇所の近傍の排気部からの排気量を、他の箇所の排気部からの排気量より増大させる制御機構を備えたことを特徴とするドライブース。
【請求項2】
人が出入りする際に、人が出入りする箇所の2重構造のカーテン間に形成された空間へ除湿ユニットを介して供給される空気量を、通常時より増大させる制御機構を備えたことを特徴とする請求項記載のドライブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の組立、実験等の各種作業を行う場所において、限られた必要箇所の雰囲気のみを所定の低湿度状態に保持するために用いられるドライブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の組立、実験等の各種作業を行う場所において、限られた必要箇所の雰囲気のみを所定の状態に保持するために、ブース空間を合成樹脂製のシートで外部空間と仕切るようにしたブースが汎用されている。
さらに、ブース空間の気密性や断熱性を高めるために、シートを2重構造としたものも提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−83104号公報
【特許文献2】特開2008−275233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のブースは、人の出入りの影響を極力排除することができるように、ブース空間を陽圧に保持し、ブース空間(及び2重構造のカーテン間に形成された空間)の空気が外部空間に流出するように設計されていた。
【0005】
このため、ブース空間に供給する空気量が多くなり、エネルギコストがかかるとともに、特に、溶剤、微粒子等の外部空間に流出することが好ましくない物質を扱う場合には、これらの物質の発生源の近傍の局所的な強制排気設備が必要になったり、ブースの使用に制約が生じる等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来のブースの有する問題点に鑑み、ブース空間に供給する空調した空気量を低減するとともに、ブース空間内の物質が外部空間に流出することを抑制しながら、人の出入りの影響を極力排除することができるようにしたドライブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のドライブースは、ブース本体の周壁を構成するカーテンを2重構造とし、該2重構造のカーテン間に形成された空間から強制的に排気を行うとともに、該排気された空気を除湿ユニットを介して、前記2重構造のカーテンの内側カーテンで仕切られたブース空間と、2重構造のカーテン間に形成された空間とに供給するようにしたドライブースであって、少なくとも人が出入りする箇所の前記2重構造のカーテンの間隔を、該カーテン間に形成された空間内に出入りする人が一旦留まれる寸法に設定してなり、かつ、2重構造のカーテン間に形成された空間の排気を行う排気部を、人が出入りする箇所の近傍を含む複数箇所に配設するとともに、人が出入りする際に、当該箇所の近傍の排気部からの排気量を、他の箇所の排気部からの排気量より増大させる制御機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、人が出入りする際に、人が出入りする箇所の2重構造のカーテン間に形成された空間へ除湿ユニットを介して供給される空気量を、通常時より増大させる制御機構を備えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドライブースによれば、ブース本体の周壁を構成するカーテンを2重構造とし、該2重構造のカーテン間に形成された空間から強制的に排気を行うとともに、該排気された空気を除湿ユニットを介して、前記2重構造のカーテンの内側カーテンで仕切られたブース空間と、2重構造のカーテン間に形成された空間とに供給するようにしたドライブースであって、少なくとも人が出入りする箇所の前記2重構造のカーテンの間隔を、該カーテン間に形成された空間内に出入りする人が一旦留まれる寸法に設定してなるようにすることにより、人が出入りする際に、内側カーテンと外側カーテンを同時に開かなくてもよくなり、かつ、2重構造のカーテン間に形成された空間の雰囲気が安定した状態で内側カーテンを開くようにすることができるため、ブース空間に供給する空調した空気量を低減することができ、エネルギコストを低廉にできるとともに、ブース空間内の物質が空気に乗って外部空間に流出することを抑制でき、安全かつ低コストでブースの使用を行うことができるようにしながら、人の出入りの影響を極力排除することができる。
【0010】
そして、人が出入りする箇所の近傍に2重構造のカーテン間に形成された空間の排気を行う排気部を配設したり、2重構造のカーテン間に形成された空間の排気を行う排気部を、複数箇所に配設するとともに、人が出入りする際に、当該箇所の近傍の排気部からの排気量を、他の箇所の排気部からの排気量より増大させる制御機構を備えたり、人が出入りする際に、人が出入りする箇所の2重構造のカーテン間に形成された空間へ除湿ユニットを介して供給される空気量を、通常時より増大させる制御機構を備えることにより、人が出入りする際に不安定となる2重構造のカーテン間に形成された空間の雰囲気を、速やかに安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のドライブースの一実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
図2】2重構造のカーテン間に形成された空間へ供給される空気量を調節する制御機構の説明図である。
図3】本発明のドライブースの運転状態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のドライブースの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1図3に、本発明のドライブースの一実施例を示す。
このドライブース1は、ブース本体2の周壁を構成するカーテン3を内側カーテン3aと外側カーテン3bの2重構造とし、この2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5から強制的に排気を行うとともに、排気された空気を除湿ユニット6を介して、内側カーテン3aで仕切られたブース空間4と、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5とに供給するようにしたものである。
【0014】
ブース本体2は、ブース本体2の頂部に配されるチャンバ20と、床面FL上に立設される4本の支柱23とを有し、チャンバ20の四隅が4本の支柱23の上端部に連結されて構成されている。
【0015】
チャンバ20は、除湿ユニット6からダクト7を介して接続される上流側チャンバ21と、その下流側に配される下流側チャンバ22とが組み合わされてなる。
上流側チャンバ21は、エアフィルタユニット21aを備え、除湿ユニット6からダクト7を介して送られてくる空気を清浄化して、下流側チャンバ22に供給するようにしている。
下流側チャンバ22は、拡散板22a及びスクリーンメッシュやパンチングメタル等の通気細孔を形成した吹出し面板22b及び通気孔を形成した吹出し面板22cを備え、除湿ユニット6から送られる乾燥した空気を、内側カーテン3aで仕切られたブース空間4と、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5とに、それぞれ均一に供給するようにしている。
なお、両空間4、5に供給する空気の割合は、吹出し面板22b及び吹出し面板22cに形成された通気細孔や通気孔の開口面積を閉鎖板(図示省略)等によって調節することによって、任意に調整することができる。
【0016】
また、除湿ユニット6は、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5から外側カーテン3bに配設された排気部8から強制的に排気された空気を導入し、乾燥した空気を放出できるものであれば、その方式は特に限定されず、従来公知の除湿ユニットを使用することができる。
なお、 除湿ユニット6には、必要に応じて、温調ユニットを併設したり、除湿機能と温調機能を有するユニットを用いることもできる。
【0017】
ところで、本実施例において、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5内の空気を排気するために排気部8を、ブース本体2の対角位置の外側カーテン3bの下部の位置に配設するようにしている。
このように、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の下部の複数箇所から排気を行うようにすることにより、カーテン3a、3b間に形成された空間5の気圧の偏りを少なくすることができ、ブース空間4に外部空間9の空気が流入することを確実に防止してブース空間4の雰囲気を所定の状態に安定して保持することができる。
なお、排気部8を設ける位置や個数は、任意に設定することができる。
【0018】
カーテン3a、3bは、それぞれ上端を上流側チャンバ21に接続するとともに、下端を床面FLにほぼ接する程度の長さに設定することにより、内側カーテン3aで仕切られたブース空間4及び2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の気密性が、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5及び外部空間9に対して、ある程度保持されるようにする。
内側カーテン3aと外側カーテン3bの間隔は、数cm〜数十cmの範囲で任意に設定することができるが、人が出入りする箇所の間隔は、出入りする人が2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5内に一旦留まれる寸法、具体的には、50cm以上に設定するようにする。
これにより、人が出入りする際に、内側カーテン3aと外側カーテン3bを同時に開かなくてもよくなり、かつ、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の雰囲気が安定した状態で内側カーテン3aを開くようにすることができるため、人の出入りの影響を極力排除することができる。
カーテン3a、3bは、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の合成樹脂製のシートから構成するほか、合成樹脂製のフィルムをラミネートした布等、通気性のない任意の素材で構成することができる。
【0019】
ところで、人が出入りする際には、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の雰囲気が不安定となり、これが、内側カーテン3aで仕切られたブース空間4の雰囲気に悪影響を与える。
これを防止するために、図1(b)に示すように、人が出入りする箇所Dの近傍に2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の排気を行う排気部8を配設するようにしたり(排気部8を配設した箇所の近傍を、人が出入りする箇所Dに設定したり)、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の排気を行う排気部8を、複数箇所に配設するとともに、人が出入りする際に、当該箇所の近傍の排気部8からの排気量を、他の箇所の排気部8からの排気量より増大させる制御機構81(この制御機構81は、例えば、人の出入りを感知するセンサー、センサーからの信号に基づいて排気部8からの排気量を調整できるバルブ等から構成することができる。)を備えたり、人が出入りする際に、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5へ除湿ユニット6を介して供給される空気量を、通常時より増大させる制御機構(この制御機構は、例えば、人の出入りを感知するセンサー、センサーからの信号に基づいて、吹出し面板22b及び吹出し面板22cから供給される空気量の割合を調整する調節機構)を備えたり、人が出入りする際に、人が出入りする箇所の2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5へ除湿ユニット6を介して供給される空気量を、通常時より増大させる制御機構(この制御機構10は、例えば、人の出入りを感知するセンサー、センサーからの信号に基づいて吹出し面板22cに形成された通気孔の開口面積を変化させて供給される空気量を調整する通気孔の開口面積の調節機構(例えば、図2(a)に示すように、人が出入りする箇所Dに対応する位置の吹出し面板22cに形成された通気孔の開口率を大きく形成しておき、通常時は、図2(b)に示すように、閉鎖板22dを移動させることによって開口率を他の箇所と同じになるようにする。)等から構成することができる。)を備えるようにすることができる。
これらの機構を備えることにより、人が出入りする際に不安定となる2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の雰囲気を、速やかに安定させることができ、人の出入りによる内側カーテン3aで仕切られたブース空間4の雰囲気に与える悪影響を極力排除することができる。
【0020】
この場合において、ブース空間4の気圧は、外部空間9の気圧(通常は大気圧)より若干高い、具体的には、外部空間9の気圧+数Pa程度、より具体的には、+2〜+3Pa程度の陽圧に保持されるようにすることが好ましい。
このため、各空間の気圧条件は、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5の気圧<外部空間9の気圧<ブース空間4の気圧の条件を満たすように、除湿ユニット6を含む空気の循環経路を構成する機器を運転するようにする。
これにより、ブース空間4及び外部空間9から、カーテン3a、3bの下端と床面FLの隙間を通って、2重構造のカーテン3a、3b間に形成された空間5に空気が流入することとなる。
【0021】
図3に、2重構造のカーテン3a、3bを用いたドライブース(実施例)と1重構造のカーテンを用いたドライブース(比較例)の空気の流入、流出量の収支と、ブース空間4内の空気の露点温度及び気圧の一例を示す。
これからも明らかなように、実施例のものは、比較例より、ブース空間4内の空気の露点温度を低く保持できるとともに、ブース空間4内を陽圧に保持できることを確認した。
【0022】
このように、このドライブース1によれば、2重構造のカーテン間に形成された空間5がブース空間4及び外部空間9に対して陰圧に保持されるようにすることにより、単にブース空間4を陽圧や陰圧に保持する場合と比較して、外部空間9の雰囲気や人の出入りの影響を受けにくくなり、例えば、ブース空間4内の空気の露点温度を低く保持するためにブース空間4に供給する空調した空気量を低減することができ、エネルギコストを低廉にできるとともに、ブース空間4及び外部空間9に対して陰圧に保持される2重構造のカーテン間に形成された空間5を介在することによって、ブース空間4内の物質が空気に乗って外部空間9に流出することを抑制でき、安全かつ低コストでブースの使用を行うことができる。
【0023】
以上、本発明のドライブースについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のドライブースは、ブース空間に供給する空調した空気量を低減するとともに、ブース空間内の物質が外部空間に流出することを抑制しながら、人の出入りの影響を極力排除することができる特性を有していることから、電子部品の組立、実験等の各種作業を行う場所において、限られた必要箇所の雰囲気のみを所定の状態に保持するために使用されるブースの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ドライブース
2 ブース本体
20 チャンバ
21 上流側チャンバ
22 下流側チャンバ
23 支柱
3 カーテン
3a 内側カーテン
3b 外側カーテン
4 ブース空間
5 2重構造のカーテン間に形成された空間
6 除湿ユニット
7 ダクト
8 排気部
9 外部空間
D 人が出入りする箇所
図1
図2
図3