(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066191
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】排ガス中の水銀回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20170116BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20170116BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20170116BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20170116BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20170116BHJP
C02F 1/62 20060101ALI20170116BHJP
C22B 7/02 20060101ALI20170116BHJP
C22B 43/00 20060101ALI20170116BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
B01D53/64 100
B01D53/86 230
B01D53/82
B01D53/78
B01D47/06 AZAB
C02F1/62 D
C22B7/02 B
C22B43/00 102
C22B3/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-47683(P2013-47683)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-171986(P2014-171986A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】中野 修一
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−187372(JP,A)
【文献】
特開平08−332343(JP,A)
【文献】
特開2006−075670(JP,A)
【文献】
特開平11−169662(JP,A)
【文献】
特開2002−284510(JP,A)
【文献】
特開2011−148681(JP,A)
【文献】
特開2005−000757(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/005025(WO,A1)
【文献】
特開2007−185558(JP,A)
【文献】
米国特許第07048779(US,B1)
【文献】
米国特許第05405812(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 47/00−47/18
C02F 1/58− 1/64
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性コークスを用いた燃焼排ガスの乾式脱硫脱硝装置に付設されている活性コークス再生塔から排出されたガスを水で洗浄することで、該ガスに含まれるダストと水銀とを前記水に回収すると共に該ダストで該水中の水銀を吸着し、
前記水銀を吸着したダストと残りの水銀とを含む水に水銀吸着剤を添加して該残りの水銀を吸着し、
該水銀吸着剤が添加された水を固液分離することで、前記水銀を吸着したダストと水銀吸着剤とを固体側に回収することを特徴とする排ガス中の水銀回収方法。
【請求項2】
前記活性コークス再生塔から排出されたガスに水を噴霧することにより、該ガスを洗浄することを特徴とする請求項1に記載の排ガス中の水銀回収方法。
【請求項3】
前記乾式脱硫脱硝装置は、発電用ボイラ、高炉又はエコセメントを焼成するセメントキルンの排ガスを処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス中の水銀回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の水銀回収方法に関し、特に、活性コークスを用いた乾式脱硫脱硝装置を利用して燃焼排ガス中の水銀を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラ、高炉又は焼成炉等からの排ガス等を処理する装置として、吸着塔内に導入された活性コークスに排ガスを接触させ、SOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)等といったガス中の有害物質を活性コークスに吸着させて除去する乾式脱硫脱硝装置が知られている。この装置では、排ガス中のSOxは、硫酸として活性コークス(炭素質触媒)に吸着されて除去される。また、前処理として排ガス中にアンモニアを注入した場合には、SOxはアンモニウム塩として吸着されるとともに、NOxは窒素に還元されて無害化される。さらに、排ガス中に水銀のような重金属を含有する場合にも、活性コークスに吸着される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−075670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、乾式脱硫脱硝装置において排ガス中の水銀を活性コークスに吸着させて回収することができるが、水銀が環境に与える影響を極力小さくするため、また、水銀をより低コストで回収するため、さらに効率よく水銀を回収する方法の開発が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、活性コークスを用いた乾式脱硫脱硝装置を利用して燃焼排ガス中の水銀を回収するにあたって、さらに効率よく水銀を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、排ガス中の水銀回収方法であって、活性コークスを用いた燃焼排ガスの乾式脱硫脱硝装置に付設されている活性コークス再生塔から排出されたガス
を水で洗浄することで、該ガスに含まれるダストと水銀とを前記水に回収すると共に該ダストで該水中の水銀を吸着し、前記水銀を吸着したダストと残りの水銀とを含む水に水銀吸着剤を添加して該残りの水銀を吸着し、該水銀吸着剤が添加された水を固液分離することで、前記水銀を吸着したダストと水銀吸着剤とを固体側に回収することを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、従来廃棄するか、原料や燃料の一部として再利用されていた、活性コークス再生塔から排出されたガスに含まれるダストを回収し、該ダストから水銀(金属水銀)を回収するため、従来より水銀を効率よく低コストで回収することができる。
また、活性コークス再生塔から排出されたガスに含まれるダストを、このガスを洗浄して得られた廃液に含まれるイオン性水銀を吸着した吸着物と共に回収することができる。
【0008】
前記
活性コークス再生塔から排出されたガスに水を噴霧することにより、
該ガスを洗浄することができ、簡単な装置で容易に水銀を含むダストを回収することができる。
【0010】
前記乾式脱硫脱硝装置は、発電用ボイラ、高炉又はエコセメントを焼成するセメントキルンの排ガスを処理することができ、これらの装置から低コストで水銀を回収することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、活性コークスを用いた乾式脱硫脱硝装置を利用して燃焼排ガス中の水銀を回収するにあたって、さらに効率よく水銀を回収する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る排ガス中の水銀回収方法を適用したエコセメントキルン排ガスの処理装置を示す全体構成図である。
【
図2】
図1のエコセメントキルン排ガスの処理装置の排ガス洗浄工程を示す全体構成図である。
【
図3】
図1のエコセメントキルン排ガスの処理装置の水銀回収工程を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明に係る方法を、エコセメントを焼成するセメントキルンに付設された乾式脱硫脱硝装置に適用した場合を例にとって説明する。
【0014】
図1は、エコセメントキルン排ガスの処理装置を示し、この排ガス処理装置1は、ロータリキルン2からのキルン排ガスを冷却する冷却塔3と、冷却塔3からの排ガスG1を固気分離するサイクロン4と、サイクロン4からの排ガスG2に含まれる微粉を回収する第1バグフィルタ5と、第1バグフィルタ5からの排ガスG3に消石灰粉等の酸性ガス処理剤GTを添加した後にダストを回収する第2バグフィルタ6と、第2バグフィルタ6の排ガスG4を脱硫・脱硝する脱硫塔8及び脱硝塔9と、脱硫塔8から排出された活性コークスACを加熱再生する再生塔11と、再生塔11の排ガスG7を洗浄する排ガス洗浄工程12と、洗浄後の排ガスから水銀を回収する水銀回収工程13と、高濃度の塩化物を含有するダストD1〜D3をゼロエミッション思想に基づいて処理するHMX処理工程14と、最終排水処理工程15とで構成される。
【0015】
サイクロン4は、排ガスG1に含まれる粗粉ダストを回収するために備えられ、回収されたダストD1は、HMX処理工程14に送られる。
【0016】
第1バグフィルタ5は、サイクロン4からの排ガスG2に含まれる微粉ダストを回収するために備えられ、回収されたダストD2は、HMX処理工程14に送られる。
【0017】
第2バグフィルタ6は、排ガスG3に脱硫剤としての消石灰粉等の酸性ガス処理剤GTを添加した後、この排ガスG3に含まれるダストD3を回収するために備えられ、回収されたダストD3は、HMX処理工程14に送られる。
【0018】
脱硫塔8は、活性コークスACに排ガスG4を接触させ、排ガスG4に含まれるSOxを活性コークスACに吸着させて除去するために設けられる。排ガス中のSOxは、硫酸として活性コークスACに吸着されて除去される。
【0019】
脱硝塔9は、脱硫塔8からの排ガスG5にアンモニアガス(NH
3)を注入した後、活性コークスACに排ガスG5を接触させ、NH
3によってNOxを窒素に還元して無害化すると共に、排ガスG5に残留するNOxを活性コークスACに吸着させて除去するために設けられる。
【0020】
再生塔11は、活性度が低下した活性コークスACを再生するために備えられ、硫酸、アンモニウム塩等の吸着物質を熱風によって加熱して脱離させて活性度を元に戻す。加熱再生の際には、活性コークスACからの脱離物をパージするため窒素ガスが供給される。
【0021】
排ガス洗浄工程12は、再生塔11からの排ガスG7を洗浄するために備えられ、
図2に示すように、排ガスG7を循環水CWを用いて冷却するガス冷却塔21と、ガス冷却塔21の排ガスG8を循環水CWで洗浄する第1洗浄塔22と、第1洗浄塔22の排ガスG9をさらに循環水CWで洗浄する第2洗浄塔23等で構成される。
【0022】
ガス冷却塔21は、再生塔11での加熱により温度上昇した排ガスG6に循環水CWを噴霧して冷却するために備えられる。
【0023】
第1洗浄塔22は、ガス冷却塔21の排ガスG7に循環水CWを噴霧して排ガスG7に含まれる活性コークスACのダストを回収するために備えられ、固液分離能力に優れたミュースクラバー等が設置される。
【0024】
第2洗浄塔23は、第1洗浄塔22の排ガスG9に循環水CW及び水酸化ナトリウム溶液を噴霧して排ガスG9に含まれる硫酸又は亜硫酸を中和するために備えられる。
【0025】
図3に示すように、水銀回収工程13は、排ガス洗浄工程12からの廃液W1に含まれる水銀を回収するために備えられ、廃液W1のpHを調整するpH調整槽31と、pH調整後の廃液W3中の水銀を含む重金属を沈降させる沈降槽32と、沈降槽32からの廃液W3に水銀キレート剤CHを添加して撹拌する反応槽33と、沈降槽32の沈降物及び反応槽33での反応生成物からなるスラリーS1を貯留する汚泥槽34と、汚泥槽34からのスラリーS2を固液分離する繊維ろ過器35と、繊維ろ過器35で分離されたろ液を貯留する処理水槽36と、繊維ろ過器35で分離された濃縮汚泥(水銀汚泥)を貯留する濃縮槽37等で構成される。
【0026】
図1に戻り、HMX処理工程14は、高濃度の塩化物を含有するダストD1〜D3から、塩化物及びアルカリを除去し、鉛や亜鉛等を非鉄金属精錬原料として回収すると共に、カルシウムを主成分とした回収後の残渣も同時にセメント原料として再利用することができるように処理してゼロエミッションを図る工程である。
【0027】
次に、上記構成を有する排ガス処理装置1の動作について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0028】
ロータリキルン2の燃焼排ガスは、まず、冷却塔で冷却し、サイクロン4によって排ガスG1に含まれる粗粉(ダストD1)を回収し、第1バグフィルタ5によってサイクロン4からの排ガスG2に含まれる微粉(ダストD2)を回収する。
【0029】
次に、第1バグフィルタ5からの排ガスG3に脱硫剤として消石灰粉等の酸性ガス処理剤GTを添加して排ガスG3中のSOx濃度を低下させ、第2バグフィルタ6によって排ガスG3に含まれるダストD3を回収する。
【0030】
上記回収されたダストD1〜D3は、HMX処理工程14において、塩化物及びアルカリを除去した後、鉛や亜鉛等を非鉄金属精錬原料として回収し、カルシウムを主成分とした回収後の残渣をセメント原料として再利用する。
【0031】
一方、脱硫塔8において、活性コークスACに第2バグフィルタ6からの排ガスG4を接触させ、排ガスG4に含まれるSOxを活性コークスACに硫酸として吸着させて除去する。さらに、脱硫塔8からの排ガスG5にアンモニアガス(NH
3)を注入し、NH
3によってNOxを窒素に還元して無害化すると共に、活性コークスACに排ガスG5を接触させ、排ガスG5に残留するNOxを活性コークスACに吸着させて除去する。この際、排ガスG4に含まれる水銀も活性コークスACに吸着される。清浄化された排ガスG6は、煙突から大気へ放出される。
【0032】
次に、再生塔11に熱風を導入し、脱硫塔8から排出された活性コークスACを加熱再生する。これによって、活性コークスACから硫酸、水銀、アンモニウム塩等が脱離する。また、活性コークスACは、脱硫塔8と再生塔11との間を循環移動するが、その際摩耗して活性コークスACの一部がダスト状となり、排ガスG6と共に再生塔11から排出される。
【0033】
次いで、再生塔11から硫酸、水銀、アンモニウム塩等を含む排ガスG7を排ガス洗浄工程12に導入し、
図2のガス冷却塔21で排ガスG7を冷却した後、第1洗浄塔22で排ガスG8に水を噴霧して排ガスG7に含まれている水銀と活性コークスACのダストが廃液W1へ移行して、廃液W1内で水銀が活性コークスACのダストへ吸着する。これによって、廃液W1に水銀を吸着した活性コークスACのダストが回収される。一方、第1洗浄塔22の排ガスG9には、第2洗浄塔23において、循環水CW及び水酸化ナトリウム溶液を噴霧し、排ガスG9に含まれる硫酸又は亜硫酸を中和した後、排ガスG10としてロータリキルン2の排ガス処理系に戻す。
【0034】
次に、第1洗浄塔22から排出された廃液W1に、
図3に示すように、pH調整槽31においてアルカリ(NaOH等)を添加し、廃液W1に含まれる、SO
2が水に溶けて生じた亜硫酸又は硫酸による後段の装置の腐食を防止し、沈降槽32において、活性コークスACのダストを沈降させる。
【0035】
反応槽33において、沈降槽32からの廃液W3に水銀キレート剤CHを添加して撹拌し、沈降槽32の沈降物及び反応槽33での反応生成物からなるスラリーS1を汚泥槽34に貯留し、汚泥槽34からのスラリーS2を繊維ろ過器35で固液分離する。繊維ろ過器35で分離されたろ液を処理水槽36に貯留し、分離された濃縮汚泥(水銀汚泥)を濃縮槽37に貯留する。処理水槽36に貯留したろ液は、繊維ろ過器35において再利用する。また、繊維ろ過器35での水銀キレートを含む逆洗水RWは、濃縮槽37に貯留し、水銀汚泥W4として系外で処理する。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、活性コークスACを用いた脱硫塔8に付設されている再生塔11から排出された排ガスG7に含まれるダストを回収し、回収したダストに含まれる水銀(金属水銀)を回収することができる。
【0037】
尚、上記実施の形態においては、エコセメントキルンの排ガス中の水銀を回収する場合を例示したが、本発明は、上記脱硫塔8及び脱硝塔9を標準装備している発電用ボイラ、高炉等にも適用することができ、従来廃棄するか、原料や燃料の一部として再利用されていた、活性コークス再生塔から排出されたガスに含まれるダストを回収し、該ダストから水銀(金属水銀)を回収することで、従来より水銀を効率よく低コストで回収することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 排ガス処理装置
2 ロータリキルン
3 冷却塔
4 サイクロン
5 第1バグフィルタ
6 第2バグフィルタ
8 脱硫塔
9 脱硝塔
10 煙突
11 再生塔
12 排ガス洗浄工程
13 水銀回収工程
14 HMX処理工程
15 最終排水処理工程
21 ガス冷却塔
22 第1洗浄塔
23 第2洗浄塔
31 pH調整槽
32 沈降槽
33 反応槽
34 汚泥槽
35 繊維ろ過器
36 処理水槽
37 濃縮槽
AC 活性コークス
CH 水銀キレート剤
CW 循環水
D1〜D3 ダスト
G1〜G9 排ガス
GT 酸性ガス処理剤
S1〜S4 スラリー
RW 逆洗水
W1〜W4 廃液