(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、昇降式足場装置は、
図11に示すように、建築物が立設された地盤G上において例えばマスト51が立設され、マスト51に沿って上下方向に昇降可能な昇降部52が設けられている。昇降部52には、作業床を有する足場部53が連結されている。足場部53は、複数の枠組部材(図略)からなり、それらが側方方向に延びるようにして連設されている。
【0004】
昇降部52には、モータ54、55がそれぞれ配設されている。モータ54、55は、それらが回転駆動することにより、昇降部52をマスト51に沿って昇降移動させるものである。モータ54、55は、それに付随するピニオン(図略)がマスト51に設けられたラック56に歯合されることによりマスト51に連結され、モータ54、55が回転駆動されることにより昇降部52が昇降される。足場部53は、昇降部52が昇降されることにより、ほぼ水平を維持したまま建築物の壁面に沿って昇降される。
【0005】
この昇降式足場装置では、上記したように建築物が通常のビルやマンション等のように壁面が平面状である建物の場合、その平面状の壁面に沿って上下移動される。そのため、昇降式足場装置の配置を適切に行えば、建築物と昇降式足場装置との間は適切な間隔を有することになる。そのため、作業者は所定の高さ位置で足場部53を停止させ、上記高さ位置で良好に作業を行うことができる。
【0006】
ところが、建築物が例えばタンクのように壁面が湾曲状であったり、建築物が例えば煙突のように略円筒状であったりした場合には、昇降式足場装置を建築物に沿わして設置したとしても、昇降式足場装置と建築物との間に必要以上に隙間ができる箇所が生じる。そのため、作業者がその隙間から作業中に落下したり、工具等が落下したりするおそれがある。
【0007】
従来では、そのような隙間が生じた場合には、その隙間部分に例えば昇降式足場装置から複数のパイプ材を水平方向に延ばし、それらのパイプ材に足場板を配置して簡易の作業床を布設するようにしていた。
【0008】
しかしながら、上記の簡易の作業床を布設する作業は、高所作業となるため危険がともなうだけでなく、煩わしい作業である。さらに、例えば塔のように建築物の壁面が高さに応じて変わるような(上方に向かうほど細くなるような)建物に対して、作業床の高さ位置を変えながら作業を行う場合には、上記したパイプ材等による簡易の作業床を撤去したり新たに布設し直したりする必要があり、面倒な作業が発生する。
【0009】
このように、従来の昇降式足場装置では、その足場部53が略直線状に延びているため、上記したように壁面が湾曲状あるいは円筒状の建築物に不向きであった。また、昇降式足場装置と建築物との隙間を小さくするために簡易の作業床を布設する場合には、煩わしい作業が発生するといった問題点があった。
【0010】
夲発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、例えば建築物の壁面が湾曲状であっても煩わしい作業を発生させずに可及的に建築物との隙間を小さくすることができる昇降式足場装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって提供される昇降式足場装置は、上下方向に延びたマスト部と、前記マスト部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、前記昇降部の側方側に設けられ、前記昇降部が昇降することにともなって昇降する足場部とを備え、前記昇降部の側方には、前記昇降部の前記足場部側端部の所定部位を支点にして前記足場部を水平方向に回動させるための足場部回動機構が設けられ
、前記足場部回動機構は、作業者の手動操作により回動する作動バーと、前記作動バーに取付けられ、前記作動バーの回動により回動する略円盤状のピニオン部材と、一端が前記昇降部に支持され、かつ前記ピニオン部材に歯合されるラック部材と、前記作動バーを支持しつつ前記ラック部材の長手方向に沿って移動可能であって前記足場部の前記昇降部側基端部に連結され可動体とによって構成され、作業者の手動操作により前記作動バーが回動されると、前記ピニオン部材が回動され、前記ピニオン部材の回動によって前記ピニオン部材がそれに歯合された前記ラック部材に沿って移動することにともなって前記可動体が前記ラック部材に沿って移動され、前記可動体の移動により前記足場部に対して押圧力が加わり、この押圧力により前記足場部が前記昇降部の前記足場部側端部の所定部位を支点にして水平方向に回動されることを特徴としている。
【0013】
本発明の昇降式足場装置において、前記足場部回動機構には、前記足場部の回動を禁止するロック機構が設けられ、前記ロック機構は、前記昇降部に連接された第1連接部材と、前記足場部に連接された第2連接部材と、それらをともに締結自在な締結部材とによって構成されているとよい。
【0014】
本発明の昇降式足場装置において、前記昇降部は、前記マスト部に沿って昇降する昇降本体部と、前記本体部の前後方向にかつ水平方向に移動自在な水平移動部とによって構成され、前記水平移動部の側方に前記足場部回動機構が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、昇降部の側方に昇降部の足場部側端部の所定部位を支点にして足場部を水平方向に回動させるための足場部回動機構が設けられているので、この足場部回動機構によって足場部を回動させることができる。そのため、例えば壁面が湾曲状の建築物に対して作業を行う場合でも、足場部を壁面に接近させて配することができる。したがって、従来の構成のように簡易の作業床を布設するといった煩わしい作業を発生させずに、可及的に建築物との隙間を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る昇降式足場装置(以下、単に「足場装置」という)を示す正面図である。この足場装置は、例えば建築工事の仮設足場に用いられるものであり、特に作業床が昇降する昇降式のものである。
【0019】
足場装置は、
図1に示すように、所定の高さを有するマスト1と、このマスト1に支持された昇降移動可能な足場部2とを備えている。なお、以下の説明では、構成が共通する部材については同符号で示す。
【0020】
マスト1は、これを支持するためのベース部3を有している。ベース部3は略平板状に形成されており、ベース部3の角部には複数のジャッキ機構4が設けられている。ジャッキ機構4は、地盤Gに対してそれぞれの高さが調整されることにより、ベース部3を水平状態に維持するものである。
【0021】
マスト1は、外形が略直方体の枠状に形成された枠組部材5が複数個連接された構成とされている。具体的には、マスト1は、ベース部3の中央部において最下段の枠組部材5が取付けられ、その枠組部材5の上方に他の枠組部材5が積み重ねられて構成される。
【0022】
マスト1の各枠組部材5の内部空間には、上下方向に延びたラック6が設けられている。ラック6は、長尺状に形成され、
図2(b)に示すように、その一方側端面に歯合部6aが形成されている。歯合部6aには、2つのピニオン7がそれぞれ歯合され、ピニオン7は、後述する第1モータ9及び第2モータ10の回動軸9a,10aにそれぞれ設けられている。
【0023】
マスト1には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた昇降本体部8が設けられている。昇降本体部8は、高さ方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。昇降本体部8は、図略のガイドローラを介して枠組部材5の外表面に沿って昇降される。
【0024】
昇降本体部8には、
図1及び
図2に示すように、これを昇降させるための第1モータ9及び第2モータ10が上下に並設されて配置されている。第1及び第2モータ9,10は、誘導モータとされ、その回転を停止させるブレーキ機構がそれぞれ備えられている。第1及び第2モータ9,10は、一方のモータが故障した場合等に他方のモータを使用するといった非常時の安全性を考慮したものとされている。
【0025】
昇降本体部8には、それを覆うように配置され、前後方向(
図1において紙面の手前又は奥行き方向)に水平移動自在な水平移動部11が設けられている。水平移動部11は、前後方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。水平移動部11は、昇降本体部8が昇降することによりともに昇降される。
【0026】
足場部2は、水平移動部11に対して左方向に延びた左方足場部12と、水平移動部11に対して右方向に延びた右方足場部13と、水平移動部11の前方方向で左方足場部12と右方足場部13とを結ぶ中央足場部14とによって構成されている。左方足場部12と水平移動部11との間には、左方足場部12を後方側に回動させるための足場部回動機構15(後述)が設けられている。
【0027】
また、左方足場部12には、左方向に進退自在とされた左方進退部16が設けられている。一方、右方足場部13には、右方向に進退自在とされた右方進退部17が設けられている(
図1は、左方進退部16及び右方進退部17がそれぞれ進出した状態を示している。)。
【0028】
上記構成により、第1及び第2モータ9,10が駆動されて昇降本体部8が昇降されることにより水平移動部11が昇降され、その結果、足場部2も昇降される。また、水平移動部11が前後方向に移動されると、足場部2も前後方向に移動される。
【0029】
なお、足場部2は、機能別に左方足場部12、右方足場部13及び中央足場部14等に分類されるが、共通する部材構成としては、略直方体の枠状に形成された複数の枠組部材と、各枠組部材の上面に配され作業者の踏み床となる作業床と、各枠組部材に立設され、作業者の転落を防止するための複数の手摺19とを有する。
【0030】
図3に示すように、例えば左方足場部12では作業床12aを有し、中央足場部14では作業床14aを有し、作業床12aと作業床14aとの間には、足場部回動機構15の一部として構成される連接支持板18が設けられている。このように、作業床14aや連接支持板18が設けられることにより、足場部2の作業床は、左端に配される左方進退部16から右端に配される右方進退部17にわたってほぼ面一とされる。したがって、足場部2に搭乗した作業者は、左方進退部16から右方進退部17に一旦足場部2から降りることなく移動することができる。なお、
図3では、中央足場部14の手摺19が省略されている。
【0031】
図1に戻り、マスト1には、左方足場部12及び右方足場部13を担持支持するための担持機構20がそれぞれ設けられている。例えば左方足場部12が足場部回動機構15によって回動されるとき、左方足場部12は担持機構20によって担持されながら回動される。
【0032】
右方足場部13の手摺19には、第1及び第2モータ9,10等を駆動制御したり、図略のリミットスイッチからの信号を入力することにより足場部3の昇降停止を制御したりするための制御盤21が設けられている。制御盤21は、図示しない電源ケーブルが地上から延びて接続され、図示しない動力ケーブルが第1及び第2モータ9,10に接続されている。
【0033】
ここで、本実施形態の特徴部分である足場部回動機構15について説明する。
【0034】
足場部回動機構15は、左方足場部12と水平移動部11との間に設けられている。足場部回動機構15は、水平移動部11の左方端部(左方足場部12の基端部)を支点にして左方足場部12の先端を後方側に回動させるためのものである。より詳細には、左方足場部12は、その基端部の後方側の上端部及び下端部に位置する連結部24(
図4参照)を支点にして水平移動部11に対して回動自在とされている。
【0035】
左方足場部12と中央足場部14との間には、
図3に示すように、上述した連接支持板18が備えられている。連接支持板18は、略扇状に形成され、一端部が水平移動部11の左側面部に沿うようにして固定されている。連接支持板18は、中心が異なる円弧状に形成された2つの第1案内孔25及び第2案内孔26を有している。
【0036】
第1案内孔25は、第2案内孔26より後方側に形成されている。第1案内孔25は、左方足場部12を回動させるための作動バー27(
図5参照)を案内するためのものである。なお、
図5は、足場部回動機構15の主要部分を後方側から見た斜視図である。第2案内孔26は、後述するように、左方足場部12の回動を補助する補助バー28(
図3及び
図4参照)を案内するためのものである。
【0037】
作動バー27は、
図5に示すように、断面視六角形状の棒状に形成され、上下方向に延びて可動体29(後述)によって回動自在に支持されている。作動バー27は、その上端にこれを回動させるための汎用の工具(例えばラチェットR)が作業者によって装着され、このラチェットRの作業者による手動操作により回動される。
【0038】
作動バー27の他端には、可動体29が設けられている。可動体29は、作動バー27を支持するとともに、左方足場部12の枠組部材を構成する角柱材30に連結部材31を介して水平方向に回動自在に支持されている。可動体29は略直方体形状に形成され、可動体29には一対の支持片29aが形成されている。一対の支持片29aは、可動体29の上部及び下部から水平方向に延び、両支持片29aの間には、周縁に歯部32aを有する円盤状のピニオン部材32が回動自在に支持されている。可動体29の一対の支持片29aが延びた側の側面には、長孔29bが形成されている。ピニオン部材32は、この長孔29bに沿うようにして作動バー27の下端近傍に取付けられている。
【0039】
可動体29には、軸心方向に貫通するように中空部29cが形成され、中空部29cには、この中空部29c内を移動可能とされたラック部材33が挿通されている。ラック部材33は、断面視略円形の棒状に形成されており、長手方向に沿う円弧部分にピニオン部材32の歯部32aと歯合される歯合部33aが形成されている。歯合部33aは、その一部が可動体29の長孔29bから外部に臨まれ、この臨まれた歯合部33aの一部がピニオン部材32の歯部32aと歯合される。
【0040】
ラック部材33は、その基端が水平移動部11の左方端部に支持される一方、先端側が無接続とされ、いわゆる片持ち状態となっている。より詳細には、ラック部材33の基端は、水平移動部11に設けられた支持受け34(
図4及び
図5参照)により水平方向に可動自在に支持されている。
【0041】
ピニオン部材32は、水平方向に回動するように作動バー27の下端部に取付けられているので、作動バー27が回動されることにともない回動される。ピニオン部材32が回動すると、その回動力は、それに歯合されているラック部材33に伝えられる。すなわち、上記したピニオン部材32とラック部材33とで、ラック&ピニオン機構が構成され、この機構により、作動バー27の回動運動が可動体29の直線運動に変換される。例えば作動バー27がラチェットRによって反時計周りに回動されると(
図5の矢印A参照)、可動体29は
図5に示す矢印Bで示される方向に移動される。
【0042】
可動体29を連結支持するための連結部材31は、角柱材30を包み込むように略筒状に形成され、連結部材31には、可動体29を上下から挟み込むように支持する一対の支持片31aが形成されている。可動体29は、これと一対の支持片31aとを貫通するボルト(図略)によって左方足場部12の角柱材30に連結される。
【0043】
また、連結部材31の上記側面と反対側の側面には、斜め上方向に延びた補強部材35が設けられている。補強部材35の上端は、左方足場部12の上面とほぼ面一になるように設けられた扇状部材36(
図3及び
図4参照)に固着されている。
【0044】
連接支持板18の第2案内孔26に案内される補助バー28は、断面視円形状の棒状に形成され上下方向に延びている。補助バー28は、上端部先端が第2案内孔26から上方に露出され、その下部が左方足場部12の枠組部材の連結片37(
図4参照)に支持されている。また、補助バー28は、下端部先端が案内枠38(後述)によって案内され、その上部が左方足場部12の枠組部材の連結片40に支持されている。
【0045】
案内枠38は、略円弧状に形成され、内側に案内孔39が形成されている。案内孔39は、第2案内孔26と同一軌跡を有する円弧状に形成されている。案内枠38の一端は、水平移動部11の枠組部材に固定された連結片41に回動自在に支持される一方、他端は無接続とされていわゆる片持ち状態となっている。
【0046】
補助バー28は、左方足場部12が回動されることにより、第2案内孔26及び案内孔39に案内され、左方足場部12とともに移動される。
【0047】
補助バー28には、左方足場部12の回動動作を禁止するためのロック機構が設けられている。すなわち、作業者が補助バー28の上端のボルト28aを例えば時計周りに回動させると、連接支持板18(特許請求の範囲に記載の「第1連接部材」に相当)及び扇状部材36(特許請求の範囲に記載の「第2連接部材」に相当)がボルト28aと図示しないナットに挟み込まれるようにして締め付けられる。そのため、左方足場部12は、所望の角度位置まで回動された後、停止された位置で固定支持される。
【0048】
なお、このロック機構を解除するためには、補助バー28の上端のボルト28a(
図3参照)を作業者が例えば反時計周りに回動させるようにすればよい。
【0049】
左方足場部12の作業床12aの縁部には、可動自在とされた幅木42が設けられている。幅木42は長尺状の平板からなり、幅木42の一端は中央足場部14の左方足場部12側端部における固定部材43によって固定され、左方足場部12の作業床12aの縁部に設けられた案内部材44によって摺動支持されている。幅木42は、上記足場部回動機構15により左方足場部12が回動された場合であっても、一端が固定部材43に固定されているので、作業床12aの縁部を適切に遮蔽することができる。そのため、左方足場部12が回動した場合でも例えば工具等の落下を防止することができる。
【0050】
次に、足場部回動機構15の作用について説明する。
【0051】
ここで、
図6に示すように、左方足場部12が回動されていない状態であるとする。なお、
図6及び
図7では連接支持板18が省略されている。まず、作業者は、例えばラチェットRを作業バー27の先端に装着し、ラチェットRを反時計周りに回動させる(
図6の矢印A参照)。これにより、作業バー27の下端部に取付けられたピニオン部材32が同方向に回動する。
【0052】
この場合、ピニオン部材32は、可動体29に支持され、かつラック部材33に歯合されており、ラック部材33の一端は、水平移動部11の支持受け34に支持されているため、可動体29は水平移動部11に対して離れる方向に力が加わり、すなわち、可動体29はラック部材33に沿って移動される(矢印B参照)。
【0053】
可動体29は、連結部材31を介して左方足場部12の角柱材30に連結されているため、可動体29がラック部材33に沿って移動すると、左方足場部12に押圧力が加わり、左方足場部12は水平移動部11から離れる方向に移動しようとする。左方足場部12は、連結部24において水平移動部11に連結されて支持されているので、左方足場部12は、
図7に示すように、その先端が後方側に移動するように回動される(矢印C参照)。
【0054】
この場合、補助バー28は、左方足場部12の上端部の連結片37及び下端部の連結片40に連結されているため、左方足場部12とともに移動する。すなわち、補助バー28の上端部は、連接支持板18の第2案内孔26に案内されるとともに、下端部は、連結枠38の案内孔39にそれぞれ案内される。
【0055】
ここで、作業者は、任意の回動角度位置で左方足場部12を回動させないようにロックすることができる。すなわち、ラチェットRの回動操作により左方足場板12を任意の回動角度位置に停止させ、その後、ラチェットRを第1案内孔26に案内されている補助バー28のボルト28aに装着する。そして、ラチェットRを回動操作させることにより、ボルト28aを締め付ける。これにより、連接支持板18及び扇状部材36がボルト28aと図示しないナットに挟み込まれ、左方足場板12の回動動作が禁止される。そのため、左方足場部12を任意の回動角度位置で固定させることができる。
【0056】
このように、本実施形態に係る足場部回動機構15によれば、作業者の例えば汎用のラチェットRによる手動操作によって左方足場部12を水平移動部11の連結部24を支点にして容易に回動させることができる。そのため、
図8に示すように、建築物Sの壁面が湾曲状に形成されている場合であっても、その壁面に接近させて足場装置の足場部2を配置することができる。したがって、従来の構成のように簡易の作業床を布設するといった煩わしい作業を発生させずに、可及的に建築物との隙間を小さくすることができる。よって、作業者は、工具等を落下させるおそれを極力抑制でき、建築物Sに接近した場所で良好に作業を行うことができる。
【0057】
また、この足場回動機構15によれば、補助バー28をロックさせることにより、左方足場板12を任意の位置に固定することができるので、作業時に作業床が安定し、確実な作業を行うことができる。
【0058】
また、この足場回動機構15によれば、左方足場部12を回動させたりロックさせたりする場合には、汎用の工具であるラチェットRで容易に行うことができる。しかも足場部2の作業床上でラチェットRを操作することができるので、効率的に作業を行うことができる。
【0059】
また、この足場部回動機構15によれば、左方足場部12を回動させるとき、モータ等の駆動力を用いずに作業者による手動操作によって行なうことができるため、左方足場部12を回動させる場合の電力消費の低減化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る足場装置は、水平移動部11が昇降本体部8に対して前後方向に移動可能であるので、
図9に示すように、左方足場部12が回動され(矢印C参照)、その後、水平移動部11が昇降本体部8に対して移動されると(矢印D参照)、建築物Sと足場部2との間をより接近させるといった微調整が可能である。そのため、作業者は、より一層適切な位置で作業を行うことができる。
【0061】
また、足場部回動機構15は、左方足場部12側だけでなく、右方足場部13側にも設けることができる。このように左方足場部12及び右方足場部13の両方に足場部回動機構15を設ければ、
図10に示すように、建築物Sが例えば煙突等のような略円筒状、もしくは略円柱状であっても、建築物Sの形状に沿って足場装置を配置することができ、良好に作業を行うことができる。
【0062】
また、例えば塔のように建築物の壁面が高さに応じて変わるような(上方に向かうほど細くなるような)建物に対して、足場部2の作業床の高さ位置を変えながら作業を行う場合にも、足場部2を昇降させた後に、逐次建築物に接近するように足場部2を移動させることができる。そのため、従来の構成のように、パイプ材等による簡易の作業床を撤去したり新たに布設し直したりする必要がなくなり、面倒な作業が発生することもない。
【0063】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態の説明においては、足場部回動機構15は、左方足場部12にのみ設けられていたが、これに代えて、右方足場部13にのみ設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、足場部2は後方側に回動するように構成されたが、これに代えて、足場部2は手前側に回動するように構成されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態における足場部回動機構を構成する部材の数、形態、大きさ及び構成等は、上記実施形態に限るものではない。また、マスト1、足場部2、昇降本体部8、水平移動部11並びに第1及び第2モータ9,10等の構成は、適宜設計変更可能である。また、上記実施形態の足場装置は、1つのマストで構成されていたが、マストの数は2以上で構成されていてもよい。