(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066340
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
A47J37/06 366
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-111944(P2014-111944)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-223457(P2015-223457A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】塩野 岳
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−066086(JP,A)
【文献】
特開2006−288778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫の横方向両側部の下部に、横方向内方に向けて開口する炎口を有する前後方向に長手の下火バーナが配置され、失火検知のために下火バーナの炎口に臨む熱電対が配置されると共に、グリル庫の横方向両側の各側壁の内面に、下火バーナの上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板が設けられたグリルであって、
グリル庫内に、被調理物の載置具として、焼網だけでなく板状であって横方向各側部が二次空気案内板の横方向内端の直上位置よりも横方向外方に張出すグリルプレートを収納自在とするものにおいて、
グリル庫内にグリルプレートが収納されているか否かを判別する判別手段を備え、この判別手段は、下火バーナの点火後所定時間内に熱電対の出力が所定の判定値以上に上昇しないときに、グリルプレートが収納されていると判断するように構成されることを特徴とするグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫内に、被調理物の載置具として、焼網だけでなく板状のグリルプレートを収納自在としたグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なグリルでは、グリル庫の横方向両側部の下部に、横方向内方に向けて開口する炎口を有する前後方向に長手の下火バーナが配置され、失火検知のために下火バーナの炎口に臨む熱電対が配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、グリル庫内にグリルプレートを収納してプレート調理を行う場合は、下火バーナの火力を弱くして、プレート温度をゆっくり上昇させることが必要になる。そのため、グリル庫内に焼網だけでなくグリルプレートを収納自在としたグリルでは、プレート調理モードと焼網調理モードとを選択自在とし、プレート調理モードでは下火バーナの火力を比較的弱くし、焼網調理モードでは下火バーナの火力を比較的強くする制御を行うことが望まれる。
【0004】
然し、グリル庫内に焼網を収納した状態で誤ってプレート調理モードを選択したり、グリル庫内にグリルプレートを収納した状態で誤って焼網調理モードを選択したりすることもあり、これではうまく調理できなくなる。そのため、グリル庫内にグリルプレートが収納されているか否かを判別できるようにすることが望まれる。また、コストアップ回避のため、上記判別を専用のセンサを用いずに行うことができるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−254245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、グリル庫内にグリルプレートが収納されているか否かを専用のセンサを用いることなく判別できるようにしたグリルを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、グリル庫の横方向両側部の下部に、横方向内方に向けて開口する炎口を有する前後方向に長手の下火バーナが配置され、失火検知のために下火バーナの炎口に臨む熱電対が配置され
ると共に、グリル庫の横方向両側の各側壁の内面に、下火バーナの上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板が設けられたグリルであって、グリル庫内に、被調理物の載置具として、焼網だけでなく板状
であって横方向各側部が二次空気案内板の横方向内端の直上位置よりも横方向外方に張出すグリルプレートを収納自在とするものにおいて、グリル庫内にグリルプレートが収納されているか否かを判別する判別手段を備え、この判別手段は、下火バーナの点火後所定時間内に熱電対の出力が所定の判定値以上に上昇しないときに、グリルプレートが収納されていると判断するように構成されることを特徴とする。
【0008】
ここで、グリル庫内にグリルプレートが収納されていると、グリルプレートの下に燃焼排ガスが滞留しやすく、下火バーナの点火初期は滞留する燃焼排ガスの影響で火炎がリフトして、熱電対の出力の立ち上がりが遅れ、下火バーナの点火後所定時間経過しても熱電対の出力は所定の判定値に上昇しない。本発明によれば、この現象に基づき、グリル庫内にグリルプレートが収納されているか否かを失火検知のための熱電対を用いるだけで専用のセンサを用いることなく判別することができ、コストアップを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態のグリルのグリルプレートを収納した状態の切断側面図。
【
図3】(a)グリル皿上にグリルプレートを支持した状態の斜視図、(b)グリル皿上に焼網を支持した状態の斜視図。
【
図4】グリル庫内に焼網を収納した場合とグリルプレートを収納した場合の点火後の熱電対の出力変化を示すグラフ。
【
図5】実施形態のグリルで実行する制御を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2を参照して、Aは、図示省略したガスコンロに組み込む本発明の実施形態のグリルを示している。このグリルAは、コンロ本体(図示せず)内に設置されるグリル庫1と、グリル庫1の前面開口を開閉するグリル扉2とを備えている。グリル庫1内には、グリル皿3と共に、被調理物の載置具として
図3(a)に示す板状のグリルプレート4又は
図3(b)に示す焼網5が収納される。グリル皿3は、グリル扉2に連結される皿支持枠31に支持されており、この皿支持枠31の前後に、グリルプレート4及び焼網5を支持する支持枠32が立設されている。そして、グリル扉2を前方に開くことで、グリル皿3とグリルプレート4又は焼網5が一緒にグリル庫1の前方に引き出されるようにしている。
【0011】
グリル庫1の天井部には、上火バーナ6が設けられ、更に、上火バーナ6を上方から覆うようにして遮熱カバー11が設けられている。上火バーナ6は、多数の炎孔(図示省略)を形成したセラミックス製の燃焼板61を有する表面燃焼式バーナで構成され、燃焼板61を下向きにした姿勢でグリル庫1の天井部に上火バーナ6を装着している。尚、上火バーナ6には、その後部に設けた混合管62から混合気が供給される。
【0012】
グリル庫1の横方向両側部の下部(グリルプレート4及び焼網5よりも低い部分)には、横方向内方に向けて開口する炎口71を有する前後方向に長手の下火バーナ7が配置されている。炎口71は、前後方向にスリット状に連続しており、前後複数個所に炎口の上下寸法を大きくした主炎口部71aが設けられている。
【0013】
下火バーナ7の後部には、点火プラグ72に対向するターゲット部72aが設けられており、点火プラグ72とターゲット部72aとの間の火花放電により下火バーナ7に点火される。また、下火バーナ7の失火検知のために、下火バーナ7の前部の主炎口部71aに臨ませて熱電対73を配置している。
【0014】
グリル庫1の横方向両側の各側壁12の内面には、下火バーナ7の上方位置で横方向内方に張出す二次空気案内板13と、下火バーナ7の下方位置で横方向内方に張出す、グリル皿3の加熱を抑制する遮熱板14とが設けられている。各側壁12には、二次空気案内板13の下側に二次空気を導入する空気取入れ口12aが開設されている。
【0015】
二次空気案内板13は、横方向内方に向けて下方に傾斜している。また、二次空気案内板13の横方向内端には、下方に屈曲する垂下板部13aが曲成されている。垂下板部13aには、その下縁から上方に凹入する凹欠部13bが下火バーナ7の複数の主炎口部71aに対応させて複数形成されている。ここで、空気取入れ口12aから吸引された空気(二次空気)は二次空気案内板13の下側を通ってグリル庫1内に流れるが、下火バーナ7の主炎口部71a以外の部分では、垂下板部13aにより庫内への空気の流れが規制され、主炎口部71aに対応する凹欠部13bから集中的に空気がグリル庫1内に流れる。そのため、主炎口部71aに対し高流速で二次空気が供給され、主炎口部71aに生ずる火炎が横方向内方に大きく伸び、グリルプレート4や焼網5の横方向中央部に載置する調理物も十分に加熱できる。
【0016】
遮熱板14は、横方向内方に向けて上方に傾斜している。遮熱板14の横方向内端には、下火バーナ7の各主炎口部71aに供給される二次空気の抜けが良くなるように、各主炎口部71aに対応する切欠き部14aが形成されている。
【0017】
また、グリルAは、グリル庫1の後端上部から後方にのびる排気通路15を備えている。排気通路15の後部は、コンロ天板の後部の排気口に向けて斜め上方に立ち上がる排気ダクト15aで構成されている。排気通路15の下面には、燃焼排ガス中に含まれる油煙を焼き切るアフターバーナ8が配置されている。アフターバーナ8は、多数の炎孔(図示省略)を形成したセラミックス製の燃焼板81を有する表面燃焼式バーナで構成され、燃焼板81を上向きにした姿勢で排気通路15の下面にアフターバーナ8を装着している。尚、アフターバーナ8には、その横方向一端部に設けた混合管82から混合気が供給される。
【0018】
グリルAは、更に、熱電対73の出力(起電圧)を入力する図外のコントローラを備えている。コントローラは、下火バーナ7が失火して、熱電対73の出力が所定の失火判定値以下に低下したとき、下火バーナ7に対するガス供給路に介設した電磁安全弁を閉弁させる安全制御を行う。また、本実施形態のグリルAでは、調理モードとしてプレート調理モードと焼網調理モードとをスイッチ操作で選択自在とし、プレート調理モードが選択されたときは下火バーナ7の火力を比較的弱くする制御を行い、焼網調理モードが選択されたときは下火バーナ7の火力を比較的強くする制御を行う。
【0019】
但し、グリル庫1内に焼網5を収納した状態で誤ってプレート調理モードを選択したり、グリル庫1内にグリルプレート4を収納した状態で誤って焼網調理モードを選択したりすることもあり、これではうまく調理できなくなる。そのため、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されているか否かを判別できるようにすることが望まれる。
【0020】
ここで、グリル庫1内に焼網5を収納した状態で下火バーナ7に点火した場合は、熱電対73の出力が
図4にa線で示す如く上昇する。一方、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されていると、グリルプレート4の下に燃焼排ガスが滞留しやすく、下火バーナ7の点火初期は滞留する燃焼排ガスの影響で火炎がリフトして、熱電対73の出力の立ち上がりが
図4にb線で示す如く遅れる。そして、点火後所定時間ts経過した時点での熱電対73の出力Vは、グリル庫1内に焼網5が収納されている場合には所定の判定値Vsを上回るのに対し、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されている場合には判定値Vsを下回る。
【0021】
そこで、本実施形態では、コントローラの機能的手段(プログラムで構成される手段)として、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されているか否かを上記現象に基づき判別する判別手段を備えている。即ち、判別手段は、下火バーナ7の点火後所定時間ts内に熱電対73の出力Vが判定値Vs以上に上昇しないときに、グリルプレート4が収納されていると判断するように構成される。
【0022】
以下、この判別手段について
図5を参照して詳述する。先ず、STEP1で上火バーナ6と下火バーナ7に点火した後、STEP2に進んで熱電対73の出力Vが判定値Vs以上になったか否かを判別する。V<Vsであれば、STEP3で点火してから所定時間ts経過したか否かを判別し、所定時間ts経過するまではSTEP2に戻ることを繰り返す。
【0023】
熱電対73の出力Vが判定値Vs以上にならないまま点火後所定時間ts経過したとき、即ち、点火後所定時間ts内に熱電対73の出力Vが判定値Vs以上に上昇しないときは、STEP4に進んで「プレート有り」、即ち、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されていると判断する。一方、点火後所定時間ts内に熱電対73の出力Vが判定値Vs以上に上昇したときは、STEP5に進んで「プレート無し」、即ち、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されていないと判断する。
【0024】
STEP4で「プレート有り」と判断されたときは、STEP6に進み、選択されている調理モードが焼網調理モードであるか否かを判別する。そして、焼網調理モードが選択されていれば、STEP8に進み、上火バーナ6及び下火バーナ7を消火すると共にエラー表示を行う。一方、プレート調理モードが選択されていれば、STEP9に進み、プレート調理モードに対応する上火バーナ6及び下火バーナ7の制御を行う。
【0025】
また、STEP5で「プレート無し」と判断されたときは、STEP7に進み、選択されている調理モードがプレート調理モードであるか否かを判別する。そして、プレート調理モードが選択されていれば、STEP8に進んで上記の如く上火バーナ6及び下火バーナ7を消火すると共にエラー表示を行う。一方、焼網調理モードが選択されていれば、STEP10に進み、焼網調理モードに対応する上火バーナ6及び下火バーナ7の制御を行う。
【0026】
本実施形態によれば、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されている状態で焼網調理モードに対応する制御が行われたり、グリル庫1内に焼網5が収納されている状態でプレート調理モードに対応する制御が行われたりすることを防止できる。また、グリル庫1内にグリルプレート4が収納されているか否かを失火検知のための熱電対73を用いるだけで専用のセンサを用いることなく判別することができ、コストアップを回避できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、STEP4で「プレート有り」と判断されたときに、自動的にプレート調理モードに対応する制御を行い、STEP5で「プレート無し」と判断されたときに、自動的に焼網調理モードに対応する制御を行うようにしてもよい。また、上記実施形態は、ガスコンロに組み込むグリルに本発明を適用したものであるが、ガスコンロに組み込まずに独立して設けられるグリルにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0028】
A…グリル、1…グリル庫、4…グリルプレート、5…焼網、7…下火バーナ、71…炎口、73…熱電対。