特許第6066421号(P6066421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6066421癌の治療のための低酸素活性化プロドラッグおよび血管新生阻害剤の投与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066421
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】癌の治療のための低酸素活性化プロドラッグおよび血管新生阻害剤の投与方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4168 20060101AFI20170116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K31/4168
   A61P35/00
   A61P43/00 121
   A61K39/395 N
   A61K31/436
   A61K31/404
   A61K31/4412
   A61K31/506
【請求項の数】22
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-519747(P2013-519747)
(86)(22)【出願日】2011年7月11日
(65)【公表番号】特表2013-531038(P2013-531038A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】US2011043594
(87)【国際公開番号】WO2012009288
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】61/470,812
(32)【優先日】2011年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/470,412
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/363,610
(32)【優先日】2010年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512325406
【氏名又は名称】スレッショルド ファーマシューティカルズ、インク.
【氏名又は名称原語表記】THRESHOLD PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハート、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カード、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クロール、スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】サン、ジェシカ
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−502743(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/033041(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/139915(WO,A1)
【文献】 Current cancer drug targets,2009年,Vol.9, No.6,p.777-788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療用組成物の製造のためのTH−302の使用であって、
該TH−302が、血管新生阻害剤と組み合わせて投与され、
該血管新生阻害剤が、エベロリムス、ラパマイシン、テムセロリムス、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト、パゾパニブ、スニチニブ、およびソラフェニブからなる群から選択される、使用。
【請求項2】
前記TH−302が、週1回投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記血管新生阻害剤の投与が癌の低酸素比率の増加をもたらした後に初めて、前記TH−302の初回投与を行う、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記TH−302の初回投与が、前記血管新生阻害剤の初回投与の少なくとも7日後である、請求項に記載の使用。
【請求項5】
前記血管新生阻害剤が、ベバシズマブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、およびスニチニブからなる群から選択される、請求項に記載の使用。
【請求項6】
前記血管新生阻害剤がベバシズマブである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記癌が、乳癌、結腸直腸癌、神経膠芽腫、非扁平上皮非小細胞肺癌、および腎細胞癌からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記血管新生阻害剤がパゾパニブである、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記癌が、膵臓癌、腎細胞癌、および肉腫からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記血管新生阻害剤がソラフェニブである、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
前記癌が、肝細胞癌および腎細胞癌からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記血管新生阻害剤がスニチニブである、請求項5に記載の使用。
【請求項13】
前記癌が、消化管間質腫瘍、腎細胞癌、および膵神経内分泌腫瘍からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記癌の低酸素比率が、前記血管新生阻害剤の初回投与の前または後に測定される、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
再発神経膠芽腫の治療用組成物の製造のためのTH−302の使用であって、
該TH−302が、ベバシズマブと組み合わせて、週1回投与され、
患者が、以前にベバシズマブによる治療を受けている、使用。
【請求項16】
前記ベバシズマブが、2週間毎に1回10mg/kg〜25mg/kgの投与量で投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
癌の治療用組成物の製造のためのTH−302の使用であって、
該TH−302が、血管新生阻害剤と組み合わせて、週1回投与され、
該血管新生阻害剤が、エベロリムス、ラパマイシン、テムセロリムス、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト、パゾパニブ、スニチニブ、およびソラフェニブからなる群から選択され、
患者が、転移癌、難治性癌または1次治療、2次治療または3次治療に対して難治性である再発癌である、使用。
【請求項18】
前記患者が、以前に血管新生阻害剤で治療されたが癌が進行している、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記TH−302が、複数のサイクルで投与され、
各サイクルが、TH−302を投与する1週間又は連続した2週間若しくは3週間の後、TH−302を投与しない1〜3週間が続くように構成される、請求項1に記載の使用。
【請求項20】
前記TH−302が、複数のサイクルで投与され、
各サイクルが、TH−302を投与する1週間又は連続した2週間若しくは3週間の後、TH−302を投与しない1〜3週間が続くように構成される、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
前記TH−302が、240mg/m〜670mg/mの投与量で週1回投与される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記TH−302が、240mg/m〜670mg/mの投与量で週1回投与される、請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第61/363,610号(2010年7月12日出願);同第61/470,412号(2011年3月31日出願);および同第61/470,812号(2011年4月1日出願)の、米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張するものであり、前記出願のそれぞれの内容は、引用することにより本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、低酸素活性化プロドラッグおよび血管新生阻害剤の投与により、癌を治療する方法に関し、一般的に医学、薬理学、医薬品化学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
血管新生阻害剤は、種々の癌を治療するために使用されている。これらの薬剤の投与は、しばしば有望な無増悪生存期間(PFS)を示す。しかし、このような治療での癌患者の全生存期間(OS)は、多くの場合、血管新生阻害剤以外の薬剤を用いた治療に対して観察された生存期間と同程度である。例えば、乳癌における、Avastin(登録商標)ベバシズマブ(Roche)とパクリタキセルの併用、およびパクリタキセル単独に対するPFS中央値は、ある研究では、それぞれ11.3カ月と5.8カ月であった。しかし、ベバシズマブとパクリタキセルの併用およびパクリタキセル単独のOSは、それぞれ、24.8カ月と26.5カ月であった。
【0004】
別の例では、転移性腎細胞癌(mRCC)の研究からは、ベバシズマブとインターフェロン−αの併用およびプラセボとインターフェロンの併用のPFS中央値は、それぞれ、10.2カ月と5.4ヵ月であった。しかし、ベバシズマブとインターフェロンの併用およびプラセボとインターフェロンの併用に対するOSは、それぞれ21カ月と23カ月であった。第3の例では、RCCの研究から、Sutent(登録商標)スニチニブ(Pfizer)とIFN−αおよびIFN−α単独に対するPFS中央値は、それぞれ、11カ月と5カ月であった。しかし、スニチニブとIFN−αの併用およびIFN−α単独のOSは、それぞれ、26.4カ月と21.8カ月であった。別の例では、RCCの治療から、Nexavar(登録商標)ソラフェニブ(Bayer)およびプラセボに対するPFS中央値は、それぞれ、24週間および12週間であった。しかし、ソラフェニブおよびプラセボに対するOSは、それぞれ、17.8カ月と14.3カ月であった。
【0005】
血管新生阻害剤は、腫瘍組織の血管新生を阻害または標的とし、したがって、腫瘍の低酸素を増加させると予測することができ、それは予後不良と非常に関連している。腫瘍の低酸素は、長年にわたって癌治療研究で対象とされてきており、成功することなく、低酸素活性化プロドラッグが使用されている。最近では、TH−302(参照:PCT公開番号第2007/002931号、同第2008/083101号、および同第2010/048330号ならびにPCT出願US2011/042047)と呼ばれる低酸素活性化プロドラッグは、第2相臨床試験で有望な活性を示したが、現在まで低酸素活性化プロドラッグはFDAによって承認されていない。
【0006】
理論的には、低酸素活性化プロドラッグの有効性は、血管新生阻害剤の投与による腫瘍微小環境における低酸素の増加が、低酸素腫瘍ゾーンでの低酸素活性化プロドラッグの活性化を増大させることを予測することができるので、血管新生阻害剤との共投与により改善される可能性がある。しかし、逆に、特定の血管新生阻害療法の初期効果は、不十分な周皮細胞被覆に特徴付けられる未熟な脈管構造に対する、血管新生の最初の作用によって介在される血管の正常化であるという仮説が立てられている。これは、低酸素の減少および低酸素活性化プロドラッグの活性化の減少をもたらすであろう。この初期効果は、より大きな腫瘍低酸素につながる全体的な脈管阻害が続くと予測される。
【0007】
しかし、血管新生阻害療法の結果として、腫瘍血管新生の減少が低酸素活性化プロドラッグの低酸素ゾーンへの送達を減少させるであろうし、それは、低酸素活性化プロドラッグの効果の減少につながることを予測することもできる。さらに、血管新生阻害剤の投与は、腫瘍の低酸素を増加させ、攻撃的な固形腫瘍の表現型の出現につながり得る(ベバシズマブについては、参照:Rapisardaら、Mol.Cancer Ther.8:1867−77,2009;ソラフェニブについては、参照:Changら、Cancer Chemother.Pharmacol.59:561−574,2007;スニチニブについては、参照:Paez−Ribesら、Cancer Cell 15:220−231,2009およびEbosら、Cancer Cell 15:232−239,2009;モテサニブについては、参照:Kruserら、Clin.Cancer Res.16:3639−3647,2010,およびDC101については、参照:Francoら、Cancer Res.66:3639−3648,2006、これらのそれぞれは、引用により本明細書に組み込まれる)。これらのより攻撃的な表現型は、低酸素活性化プロドラッグ療法に対しても耐性であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、血管新生阻害剤を用いた癌の改善された治療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、低酸素活性化プロドラッグおよび血管新生阻害剤を共投与して癌を治療する方法を提供することによりこの必要性を満たす。
【0010】
本明細書では、癌を治療する方法であって、前記方法は、治療有効量の低酸素活性化プロドラッグを投与することおよび治療有効量の血管新生阻害剤を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記血管新生阻害剤の投与が、低酸素活性化プロドラッグの投与時に癌の低酸素比率が増加する、低酸素活性化プロドラッグの投与前に有効に行われる。種々の実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、一般式I:
【化1】
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、Yは、O、S、NR、NCOR、またはNSOであり、ここで、Rは、C−Cアルキル、C−Cヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;RおよびRは、2−ハロアルキル、2−アルキルスルホニルオキシアルキル、2−ヘテロアルキルスルホニルオキシアルキル、2−アリールスルホニルオキシアルキル、および2−ヘテロアルキルスルホニルオキシアルキルからなる群から独立して選択され;Rは、式L−Zを有し;Lは、C(Zであり;各Zは、独立して、水素、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C−Cシクロアルキル、ヘテロシクリル、C−Cアシル、C−Cヘテロアシル、アロイル、またはヘテロアロイルであり;またはLは、
【化2】
であり;Zは、
【化3】
から成る群から選択される式を有するバイオ還元性基であり、ここで、各Xは、
独立してNまたはCRであり;Xは、NR、SまたはOであり;各Rは、独立して、C−Cアルキル、C−Cヘテロアルキル、C−Cシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールであり;そして、Rは、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、CHF、CF、COH、アミノ、C−Cアルキル、C−Cヘテロアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、アリール、CON(R、C−Cアシル、C−Cヘテロアシル、アロイルまたはヘテロアロイル;またはそれらの薬学的に許容される塩である。本発明の種々の実施形態において、本発明で利用される化合物は、TH−281、TH−302、またはTH−308(構造は、以下に示す)である式Iの化合物である。
【0011】
1つの実施形態では、血管新生阻害剤は、ベバシズマブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、およびスニチニブからなる群から選択される。1つの実施形態では、ベバシズマブとTH−302または他の低酸素活性化プロドラッグは、ベバシズマブ単剤療法に耐性のある(すなわち、ベバシズマブによる治療を受けたにもかかわらず癌が進行している)癌患者に投与される。1つの実施形態では、TH−302または他の低酸素活性化プロドラッグおよびパゾパニブは、限定されるものではないが、腎細胞癌(RCC)、肉腫、および膵神経内分泌腫瘍(PNET)を初めとする膵臓癌からなる群から選択される癌を治療するために併用して投与される。1つの実施形態では、TH−302または他の低酸素活性化プロドラッグおよびソラフェニブは、肝細胞癌(HCC)およびRCCから成る群から選択される癌を治療するために組み合わせて投与される。1つの実施形態では、TH−302または別の低酸素活性化プロドラッグおよびスニチニブは、進行性RCCを始めとするRCC、限定されるものではないが、消化管間質腫瘍(GIST)を始めとする消化器癌、およびPNETを始めとする膵臓癌から成る群から選択される癌を治療するために組み合わせて投与される。
【0012】
これらの方法は、固形腫瘍を含む様々な癌の治療に有用である。本発明の種々の実施形態において、低酸素のバイオマーカーは、治療のために患者を選択するために、および/または低酸素活性化プロドラッグおよび血管新生阻害剤を含む治療に応答する患者を識別するために使用される。患者を選択するために使用する場合、これらの方法は、低酸素と共に増加するバイオマーカーの増加したレベル(または低酸素と共に減少するバイオマーカーの減少したレベル)が、患者が治療によく応答する可能性が増えることと相関することを提供する。治療を監視するために使用する場合、これらの方法は、低酸素に関連付けられるバイオマーカーの減少したレベルが有利な治療応答と相関することを提供する。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様ならびに実施形態は、以下にさらに詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施は、当該分野の技術内にある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の使用を含む。
【0015】
定義
以下の本明細書および特許請求の範囲において、以下の意味を有するように定義される多くの用語について言及する。全ての数値指定、例えば、範囲を含む、pH、温度、時間、濃度、および重量は、一般的に0.1、1.0、または10.0刻みで(+)または(−)に適宜変化し得る近似値である。全ての数値指定は、用語「約」が先行しているものとして理解することができる。本明細書中に記載の試薬は、例示的なものであり、それらの均等物は当該技術分野で公知であろう。
【0016】
文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、単数形の「1つ“a”」、「1つ“an”」および「それ“the”」は、複数の言及も含む。
【0017】
用語「含む“comprising”」は、任意の列挙要素が必然的に含まれており、他の要素が場合により含まれてもよいことを意味する。「から本質的になる“consisting essentially of”」は、任意の列挙要素が必然的に含まれており、列挙された要素の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与える要素は除外され、そして、他の要素は場合により含まれてもよいことを意味する。「〜からなる“consisting of”」は、列挙された要素以外の全ての要素が除外されることを意味する。これらの用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0018】
式Iに関連する特定の用語は、以下に定義される。
【0019】
「アシル」は、−CO−アルキルを意味し、ここでアルキルは本明細書で定義される。
【0020】
「アロイル」は、−CO−アリールを意味し、ここでアリールは本明細書で定義される。
【0021】
「アルコキシ」は、−O−アルキルを意味し、ここでアルキルは本明細書で定義される。
【0022】
「アルケニル」は、接頭辞で示された炭素原子数を有し、少なくとも1個の2重結合(しかし、3個以下の2重結合)を含む直鎖状の1価炭化水素基または分岐状の1価炭化水素基を意味する。例えば、(C−C)アルケニルは、エテニル、プロペニル、1,3−ブタジエニルなどを含む。アルケニルは、例えば、重水素(“D”)、ヒドロキシル、アミノ、モノもしくはジ(C−C)アルキルアミノ、ハロ、C−Cアルケニルエーテル、シアノ、ニトロ、エチニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、−COOH、−CONH、モノ−もしくはジ(C−C)アルキルカルボキサミド、−SONH、−OSO−(C−C)アルキル、モノもしくはジ(C−C)アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アルキルもしくはヘテロアルキルスルホニルオキシ、およびアリールもしくはヘテロアリールスルホニルオキシを含む置換基で場合により置換することができる。
【0023】
「アルキル」は、接頭辞で示された炭素原子数を有する、直鎖状の飽和1価炭化水素基または分岐状の飽和1価炭化水素基を意味する。(C−C)アルキルは、例えば、重水素(“D”)、ヒドロキシル、アミノ、モノもしくはジ(C−C)アルキルアミノ、ハロ、C−Cアルケニルエーテル、シアノ、ニトロ、エテニル、エチニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、−COOH、−CONH、モノ−もしくはジ(C−C)アルキルカルボキサミド、−SONH、−OSO−(C−C)アルキル、モノもしくはジ(C−C)アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロアルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシまたはヘテロアリールスルホニルオキシを含む置換基で場合により置換することができる。
【0024】
本開示で使用される場合、接頭辞(C−Cqq)、C1−qq,およびC−Cqq(ここで、qqは2〜20の整数である)は、同じ意味を有する。例えば、(C−C)アルキル、C1−6アルキル、またはC−Cアルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、などを含む。この中の定義の各々(例えば、アルキル、アルケニル、アルコキシ、その他)は、接頭辞がアルキル部分の主鎖炭素原子の数を示すために含まれていないときは、該基またはその部分は6個以下の主鎖炭素原子を有するものとする。
【0025】
「アルキルアミノ」またはモノ−アルキルアミノは、−NH−アルキルを指し、該アルキルは本明細書で定義される。
【0026】
「アルキニル」は、接頭辞で示された炭素原子数を有し、少なくとも1個の3重結合(しかし、2個以下の3重結合)を含む直鎖状の1価炭化水素基または分岐状の1価炭化水素基を意味する。例えば、(C−C)アルキニルは、エチニル、プロピニル、などを含む。アルキニルは、例えば、重水素(“D”)、ヒドロキシル、アミノ、モノもしくはジ(C−C)アルキルアミノ、ハロ、C−Cアルケニルエーテル、シアノ、ニトロ、エテニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、−COOH、−CONH、モノ−もしくはジ(C−C)アルキルカルボキサミド、−SONH、−OSO−(C−C)アルキル、モノもしくはジ(C−C)アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アルキルもしくはヘテロアルキルスルホニルオキシ、およびアリールもしくはヘテロアリールスルホニルオキシを含む置換基で場合により置換することができる。
【0027】
「アリール」は、6から10個の環原子を有する1価の単環式または2環式芳香族炭化水素基を意味し、これは、重水素(“D”)、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、COR(ここで、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、−(CR’R”)−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立して水素またはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)または−(CR’R”)−CONR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立して水素またはアルキルであり、そして、RおよびRは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルから独立して選択される)から選択される、1〜8個の置換基で、好ましくは、1個、2個、3個、4個、5個の置換基で、独立して置換されている。1つの実施形態では、RおよびRは一緒になって、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。具体的には、アリールという用語は、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、1−ナフチル、および2−ナフチル、ならびにそれらの置換形態を含む。
【0028】
「シクロアルキル」は、3〜7個の環炭素の1価の環状炭化水素基を意味する。該シクロアルキル基は、1つ以上の2重結合を有することができ、アルキル、場合により置換されたフェニル、または−C(O)R(ここで、Rは、水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、または場合により置換されたフェニルである)から選択される1個、2個、3個、または4個の置換基で独立して場合により置換されることができる。具体的には、シクロアルキルという用語は、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニルシクロヘキシル、4−カルボキシシクロヘキシル、2−カルボキサミドシクロヘキセニル、2−ジメチルアミノカルボニル−シクロヘキシル、などを含む。
【0029】
「ジアルキルアミノ」またはジ−アルキルアミノは、−N(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは本明細書で定義されている。
【0030】
「ヘテロアルキル」は、シアノ、−OR、−NR、および−S(O)(ここで、pは0から2の整数である)から独立して選択される1個、2個、または3個の置換基を有する、本明細書で定義されたアルキル基を意味し、ヘテロアルキル基の結合点は、該ヘテロアルキル基の炭素原子を介してであることが理解される。Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキサミド、またはモノ−もしくはジ−アルキルカルバモイルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリールまたはアラルキルである。Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキサミド、モノ−もしくはジ−アルキルカルバモイルまたはアルキルスルホニルである。Rは、水素(ただし、nは0である)、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル、アミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、またはヒドロキシアルキルである。代表的な例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−メトキシエチル、ベンジルオキシメチル、2−シアノエチル、および2−メチルスルホニル−エチルが挙げられる。上記のそれぞれについて、R、R、R、およびRは、アミノ、ハロ、フッ素、アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、OHまたはアルコキシでさらに置換されることができる。さらに、炭素原子の数を示す接頭辞(例えば、C−C10)は、シアノ、−OR,−NR、または−S(O)部分を除く該ヘテロアルキル基の部分の炭素原子の合計を意味する。1つの実施形態では、RとRは、一緒になって、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。
【0031】
「ヘテロアリール」は、N、O、またはSから選択される1個、2個、または3個の環ヘテロ原子を含む少なくとも1つの芳香環を有し、残りの環原子はCである、5〜12個の環原子の1価の単環式基、2環式基または3環式基を意味し、前記ヘテロアリール基の結合点が芳香環上であることが理解される。前記ヘテロアリール環は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(ここで、Rは、水素、アルキル、フェニルまたはフェニルアルキル、−(CR’R”)−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立して水素またはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、または−(CR’R”)−CONR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立して水素またはアルキルであり、そして、RおよびRは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)から選択される1〜8個の置換基、好ましくは1個、2個、3個または4個の置換基で独立して場合により置換される。1つの実施形態では、RとRは、一緒になってシクロアルキルまたはヘテロシクリルである。具体的には、ヘテロアリールという用語は、限定されるものではないが、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリルまたはベンゾチエニル、インダゾリル、ピロロピリミジニル、インドリジニル、ピラゾロピリジニル、トリアゾロピリジニル、ピラゾロピリミジニル、トリアゾロピリミジニル、ピロロトリアジニル、ピラゾロトリアジニル、トリアゾロトリアジニル、ピラゾロテトラジニル、ヘキサアザ−インデニル、およびヘプタアザ−インデニルならびにそれらの誘導体を含む。特に断りのない限り、環内のヘテロ原子の配置は、構成環原子の結合特性によって許されるどのような配置をも取ることができる。
【0032】
「ヘテロシクリル」または「シクロヘテロアルキル」は、3〜8個の環原子を有する飽和または不飽和の非芳香環基を意味し、ここで、1〜4個の環原子は、O、NR(ここで、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、P(=O)OR、または−S(O)(ここで、pは0〜2の整数である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、Cであり、ここで1個または2個のC原子は、場合によりカルボニル基で置換されることができる。ヘテロシクリル環は、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、−COR(ここで、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、−(CR’R”)−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立して水素またはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、または−(CR’R”)−CONR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立して水素またはアルキルであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)から選択される1個、2個、3個または4個の置換基で独立して場合により置換することができる。具体的には、用語ヘテロシクリルは、限定されるものではないが、ピリジル、テトラヒドロピラニル、N−メチル−ピペリジン−3−イル、N−メチルピロリジン−3−イル、2−ピロリドン−1−イル、フリル、キノリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1Δ−チオピラン−4−イル、テトラヒドロイミダゾ[4,5−c]ピリジニル、イミダゾリニル、ピペラジニル、およびピペリジン−2−オンイル、ならびにその誘導体を含む。炭素原子の数を示す接頭辞(例えば、C−C10)は、ヘテロ原子の数を除いたシクロヘテロアルキル基またはヘテロシクリル基の部分の炭素原子の総数を指す。
【0033】
「ヘテロアシル」は、−CO−ヘテロアルキルを意味し、ここで、ヘテロアルキルは本明細書に定義されている通りである。
【0034】
「ヘテロアロイル」は、−CO−ヘテロアリールを意味し、ここで、ヘテロアリールは、本明細書に定義されている通りである。
【0035】
「Rsulスルホニルオキシ」は、Rsul−S(=O)−O−を意味し、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロアルキルスルホニルオキシ、シクロアルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクリルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシおよびヘテロアリールスルホニルオキシを含み、ここで、Rsulは、それぞれ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールであって、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは本明細書で定義した通りである。アルキルスルホニルオキシの例として、Me−S(=O)−O−、Et−S(=O)−O−、CF−S(=O)−O−などが挙げられ、アリールスルホニルオキシの例として、
【化4】
(式中、Rarは、H、メチル、または臭素である)が挙げられる。
【0036】
「置換基」は、特に先の各基の定義において記載した置換基の他に、重水素、−ハロゲン、−OR’、−NR’R’’、−SR’、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NH−C(NH)=NH、−NR’C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NR’S(O)R’’、−CN、−NO、−R’、−N、パーフルオロ(C−C)アルコキシ、およびパーフルオロ(C−C)アルキルから選択される基であって、0から前記の基における開放原子価の総数までの範囲の数で置換され;そして、式中、R’、R’’およびR’’’は、水素、C1−8アルキル、C3−6シクロアルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、非置換アリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)−C1−4アルキル、および非置換アリールオキシ−C1−4アルキル、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、非置換C1−8アルキル、C1−8アルコキシもしくはC1−8チオアルコキシ基、または非置換アリール−C1−4アルキル基から独立して選択される。R’およびR’’が同じ窒素原子に結合する場合、それらは、窒素原子と一緒になって、3−、4−、5−、6−、または7−員環を形成することができる。例えば、−NR’R’’は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。他の適切な置換基として、1〜4個の炭素原子のアルキレンエーテルにより、環原子に結合する前記各アリール置換基を含む。アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の2個の置換基は、場合によっては、式:−T−C(O)−(CH−U−(式中、TおよびUは、独立して、−NH−、−O−、−CH−または単結合であり、qは0〜2の整数である)の置換基で置換されていてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の2個の置換基は、場合によっては、式:−A−(CH−B−(式中、AおよびBは、独立して、−CH−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−または単結合であり、rは1〜3の整数である)の置換基で置換されていてもよい。そのように形成された新しい環の単結合の1つは、場合によっては、2重結合で置換されていてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の2個の置換基は、場合によっては、式:−(CH−X−(CH−(式中、sおよびtは、独立して、0〜3の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−または−S(O)NR’−である)の置換基で置換されていてもよい。−NR’−および−S(O)NR’−中の置換基R’は、水素または非置換C1−6アルキルから選択される。
【0037】
本発明で利用される特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または2重結合を有しており、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体および個々の異性体(例えば、別個の鏡像体)は全て、本発明の範囲内に包含されるものである。また、本発明の化合物は、そのような化合物を構成する1個以上の原子で、原子同位体を非天然の割合で含んでもよい。例えば、化合物は、例えば、限定されるものではないが、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位元素で放射標識化されていてもよい。本発明の化合物の同位体変種は、放射性であるか、放射性でないかに関わらず、全て本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0038】
本発明に関連するその他の用語を以下に定義する。
【0039】
薬物を患者へ「投与すること」または患者への薬物「投与」(およびこの語句の文法的に同等のもの)は、医療専門家による患者への投与であってもよいし、あるいは自己投与であってもよい直接投与、および/または薬物を処方する行為である間接投与を意味する。例えば、薬物を自己投与することを患者に指示する、および/または患者に薬物の処方箋を提供する医者は、患者に薬物を投与している。
【0040】
「血管新生」は、既存の血管からの新たな血管の成長を指す。
【0041】
「血管新生阻害剤」は、血管新生を阻害することができる薬物または薬剤を意味し、限定されることなく、抗VEGF抗体、VEGF−トラップ、抗VEGFR抗体、VEGFR阻害剤、またはそれらの生物学的均等物;サリドマイド、またはサリドマイド誘導体;D114−Notch阻害剤;抗チューブリン血管破壊剤(VDA);アンジオポエチン−Tie2阻害剤;一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤;カチオン性ポリアミノ酸デンドリマー;ラパマイシン(シロリムス)またはラパマイシン誘導体(限定はされないがエベロリムスおよびテムセロリムスを含む);低分子量ヘパリン;SPARC(オステオネクチン)ペプチド;ベバシズマブ、Lucentis(登録商標)ラニビズマブ(Roche)、ラムシルマブ(Lilly)、Zaltrap(登録商標)アフリベルセプト、VEGF−トラップ(Regeneron)、インターロイキン17(IL−17)、またはそれらの生物学的均等物;DC101;スニチニブ;ソラフェニブ;Votrient(登録商標)パゾパニブ(GSK);Motesanib(登録商標)AMG706(Amgen);Recentin(登録商標)セジラニブ(AstraZeneca);Caprelsa(登録商標)バンデタニブ(AstraZeneca);Vargatef(登録商標)BIBF 1120(Boehringer−Ingelheim);Brivanib(登録商標)BMS−582664(BMS);Carbozantinib(登録商標)XL−184(Exelixis);Axitinib AG−013736(Pfizer);Tivozanib AV−951(Aveo、Astellas)、Revlimid(登録商標)レナリドミド(Celgene)、5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸(DMXAA);ナドロパリン、2,5−ジメチル−セレコキシブ、シクロホスファミド;Ca++/カルモジュリン拮抗薬4−{3,5−ビス[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−エチル]−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル}−安息香酸(HBC);およびタスキニモド(キノリン−3−カルボキサミド)。さらに、「メトロノーム投薬」(標準用量レベルよりも低用量で、標準的な投与に比べてより頻繁に投与)と呼ばれるような方法で投与されるドセタキセル、イリノテカン、トポテカン、およびテモゾロミドなどの従来の化学療法剤は、血管新生阻害剤である(参照:Wuら、Cancer Chemother Pharmacol.2011 Feb 3.[印刷版前のオンライン出版];Takanoら、J Neurooncol.2010 Sep;99:177−185,2010;Merrittら、Cancer Biol Ther.8:1596−1603,2009;Sarmientoら、Onkologie 31:161−162,2008;Kimら、Oncol Rep.16:33−39,2006;およびGilleら、J Dtsch Dermatol Ges.3:26−32,2005。これらは、引用により本明細書に組み込まれる。)。
【0042】
抗体またはその断片に関する「生物学的均等物」は、参照抗体または断片と、同じエピトープに結合するタンパク質またはペプチドを指す。
【0043】
「癌」は、無制限に増殖する可能性のある悪性の固形腫瘍、ならびに侵潤によって局所に、および転移によって全身に広がることがあり得る低酸素骨髄中の癌幹細胞に由来し得る様々な血液癌を意味する。癌の例としては、限定されないが、副腎、骨、脳、乳房、気管支、結腸および/または直腸、胆嚢、消化管、頭頸部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、神経組織、膵臓、前立腺、副甲状腺、皮膚、胃、ならびに甲状腺の癌が挙げられる。癌の他の例としては、腺癌、腺腫、基底細胞癌、子宮頚部異形成と上皮内癌、ユーイング肉腫、扁平上皮癌、巨細胞腫、多形性神経膠芽腫、有毛細胞腫瘍、腸管神経節細胞腫、過形成性角膜神経腫瘍、膵島細胞癌、カポジ肉腫、平滑筋腫、白血病、リンパ腫、悪性カルチノイド、悪性黒色腫、悪性高カルシウム血症、マルファン症候群様体質腫瘍、髄様癌、転移性皮膚癌、粘膜神経腫、骨髄異形性症候群、骨髄腫、菌状息肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨原性肉腫および他の肉腫、卵巣腫瘍、褐色細胞腫、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、小細胞肺腫瘍、潰瘍型および乳頭型の両方の扁平上皮細胞癌腫、精上皮腫、軟部組織肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、腎細胞腫瘍または腎細胞癌、細網細胞肉腫、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。また、癌の例としては、星状細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫や神経膠芽腫、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)、および膵神経内分泌癌が含まれる。
【0044】
「併用療法」または「併用治療」は、治療に2つ以上の薬物を使用することを指し、すなわち、癌を治療するために使用される1つまたは複数の血管新生阻害剤と一緒に、本明細書に記載の低酸素活性化プロドラッグを使用することが併用療法である。「併用」での投与は、両方の薬理作用が同時に患者で現れる任意の方法で2つの薬剤の投与(例えば、癌を治療するための低酸素活性化プロドラッグと血管新生阻害剤)を意味する。したがって、併用での投与は、単一医薬組成物、同一の剤形、または同一の投与経路までもを両薬剤の投与のために使用すること、あるいは2つの薬剤を正確に同時に投与することを必要とはしない。例えば、限定されるものではないが、血管新生阻害剤は、併用療法で本発明の低酸素活性化プロドラッグと一緒に投与することができると考えられる。
【0045】
「過剰増殖性疾患」は、細胞の過剰増殖(例えば、異常に増大した速度または量の細胞増殖)を特徴とする疾患を指す。癌は過剰増殖性疾患である。固形腫瘍以外の過剰増殖性疾患の例としては、限定されないが、アレルギー性血管炎および肉芽腫症(Churg−Strauss病)、石綿症、喘息、萎縮性胃炎、良性前立腺増殖症、水疱性類天疱瘡、セリアック病、慢性気管支炎および慢性閉塞性気道疾患、慢性副鼻腔炎、クローン病、脱髄性ニューロパシー、皮膚筋炎、湿疹(アトピー性皮膚炎を含む)、耳管疾患、巨細胞性動脈炎、移植片拒絶、過敏性肺炎、過敏性血管炎(Henoch−Schonlein紫斑病)、刺激性皮膚炎、炎症性溶血性貧血、炎症性好中球減少症、炎症性腸疾患、川崎病、多発性硬化症、心筋炎、筋炎、鼻ポリープ、鼻涙管の疾患、新生物性脈管炎、膵炎、尋常性天疱瘡、原発性糸球体腎炎、乾癬、歯周疾患、多嚢胞性腎臓疾患、結節性多発性動脈炎、多発性血管炎重複症候群、原発性硬化性胆管炎、関節リウマチ、血清病、手術による癒着、狭窄症または再狭窄、強膜炎、強皮症、胆管の狭窄、狭窄(十二指腸、小腸および結腸の)、珪肺症および他の形態の塵肺症、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、結合組織の障害に関連した脈管炎、補体系の先天的欠損症に関連した脈管炎、中枢神経系の脈管炎、ならびにWegner肉芽腫症が挙げられる。
【0046】
「低酸素活性化プロドラッグ」は、低酸素下または無酸素下に比べて、正常酸素下で弱い活性または非活性である薬物を指す。低酸素活性化プロドラッグは、さまざまな還元剤および還元酵素、例えば限定されないが、単一電子伝達酵素(シトクロムP450レダクターゼなど)および2電子伝達(またはヒドリド転移)酵素によって活性化される薬物が挙げられる(参照:米国特許出願公開第2005/0256191号、同第2007/0032455号および同第2009/0136521号、およびPCT特許出願公開番号WO2000/064864、同WO2004/087075および同WO2007/002931;これらは、それぞれ引用により本明細書に組み込まれる)。本発明の方法における有用な低酸素活性化プロドラッグは、式Iの化合物であるが、その式によって定義されるように、Zが2−ニトロイミダゾール部分である化合物を含むがこれに限定されるものではない。本発明の方法で有用な特定の低酸素活性化プロドラッグの例としては、限定するものではないが、TH−281、TH−302、およびTH−308が挙げられる。TH−302および式Iの他の化合物の合成方法、製剤化方法、および使用方法は、PCT特許出願公開番号WO2007/002931、同WO2008/083101、および同WO2010/048330、ならびにPCT特許出願番号US2011/042047に記載されており、これらのそれぞれは、引用により本明細書に組み込まれる。
【0047】
「低酸素比率」は、腫瘍、腫瘍セグメント、または癌の細胞総数に対して10mmHg以下の酸素分圧()を含む細胞の、腫瘍、腫瘍セグメント、または別の癌における割合を意味する。「低酸素比率」は、低酸素比率に100を乗じてパーセンテージで表現することができる。「増加した低酸素比率」は、例えば、低酸素比率における、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%の増加を意味する。あるいはまた、低酸素比率と増加した低酸素比率は、低酸素マーカーのレベルに対する相関関係によって測定することができる。この実施形態では、腫瘍、腫瘍セグメント、または別の癌における低酸素細胞の数または割合が測定されるのではなく、むしろ、そのような低酸素マーカーのレベルは、それに相当する低酸素比率を割り当てるために使用される。
【0048】
「患者」または「対象」は、哺乳動物、特にヒトを指すが、また、癌や他の過剰増殖性疾患を患っている、サル、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類などの獣医学および研究対象の動物を含む。
【0049】
「薬学的に許容される塩」は、例示としてのみであるが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウムなどの当該技術分野で周知の様々な有機および無機の対イオン由来の薬学的に許容される塩を意味し、そして、分子が塩基性の機能を有する場合は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、およびシュウ酸塩などの有機酸または無機酸との塩を意味する。適切な塩としては、StahlおよびWermuth編、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection,and Use;2002に記載されているものが含まれる。
【0050】
「QnD」または「qnd」は、n日毎に1回の薬物投与を意味する。例えば、QD(またはqd)は、毎日1回すなわち1日1回の投与を云い、Q2D(またはq2d)は、2日毎に1回の投与を云い、Q7Dは、7日毎に1回すなわち週1回の投与を云い、Q5Dは、5日毎に1回の投与を云う。
【0051】
1つまたは複数の症状の「低減」(およびこの語句の文法的相当語句)は、症状(1つもしくは複数)の重症度または頻度の減少、あるいは症状(1つもしくは複数)の解消を云う。
【0052】
「再発性または難治性」は、血管新生阻害剤などの薬剤による治療に耐性である癌の種類、あるいは薬剤の治療に応答するが、その薬剤に耐性であるかないかを問わず、再発する癌の種類を意味する。
【0053】
TH−281は、式:
【化5】
の化合物を指し、その薬学的に許容される塩を含む。
【0054】
TH−302は、式:
【化6】
の化合物を指し、その薬学的に許容される塩を含む。
【0055】
TH−308は、式:
【化7】
の化合物を指す。
【0056】
薬物または薬剤の「治療有効量」は、癌または他の過剰増殖性疾患を有する患者に投与した場合、その患者において意図される治療効果(例えば、患者の癌または別の過剰増殖性疾患の1つ以上の症状発現の緩和、改善、軽減または解消)を有する薬物または薬剤の量を云う。治療効果は、必ずしも1回の用量の投与ではもたらされず、一連の用量を投与してからようやくもたらされるものであり得る。したがって、治療有効量は、1回または複数の投与にて投与され得る。
【0057】
病状または患者を「治療すること」または「治療」は、臨床結果を始めとする有益な、または所望の結果を得るために取るステップをいう。本発明の目的のために、有益な、または所望の臨床結果としては、限定されないが、条件付き生存や腫瘍量または腫瘍体積の減少を含む、癌もしくは他の過剰増殖性疾患の1つ以上の症状の緩和もしくは改善;疾患の程度の低下;疾患進行の遅延もしくは遅滞;疾患状態の改善、軽減もしくは安定化;または他の有益な結果が挙げられる。
治療方法
【0058】
1態様では、本発明は、そのような治療の必要性のある癌患者の治療方法であって、前記方法は、治療有効量の低酸素活性化プロドラッグを投与することおよび治療有効量の血管新生阻害剤を投与することを含み、それにより癌を治療する方法を提供する。1つの実施形態では、併用療法は、以前に血管新生阻害剤で治療されたが、その治療にもかかわらず癌が進行している患者に投与されるか、あるいは治療が癌の進行のために中止されている患者に投与される。いくつかの実施形態では、併用療法で使用される血管新生阻害剤の投与は、低酸素活性化プロドラッグの投与の少なくとも24時間前から少なくとも7日前に開始される。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤の開始と低酸素活性化プロドラッグの初回投与の間に、2週間、1カ月、6週間、またはさらに長い期間を含むさらに長期間が介在する。低酸素活性化プロドラッグの初回投与後、血管新生阻害剤および低酸素活性化プロドラッグは、短期間で、あるいは介在期間なしで投与することが可能であり、すなわち、それらの両方を同じ日に投与してもよい。
【0059】
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、TH−281、TH−302、およびTH−308からなる群から選択される。1つの実施形態では、投与される低酸素活性化プロドラッグは、TH−302である。様々な実施形態では、TH−302または他の低酸素活性化プロドラッグは、1日1回、3日毎に1回、1週間毎に、または3週間毎に1回、投与される。1つの実施形態では、TH−302または他の低酸素活性化プロドラッグは、非経口的に投与される。
【0060】
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、TH−302であり、これは、毎日約120mg/m〜約460mg/mの投与量で投与される。いくつかの実施形態では、TH−302の毎日の投与量は、すなわち、治療の1週間サイクル当たり単回投与で5日間連続して投与され、続いてTH−302は2日間投与されない。そのような治療の1週間サイクルは、1〜3回のさらなるサイクルを繰り返し、続いて薬物を1〜3週間投与しないようにすることができ、この治療投与計画は1回または複数回繰り返すことができる。投与がより頻繁でないほど、低酸素活性化プロドラッグの1日投与量は、より多くなる可能性がある。1つの実施形態では、TH−302または他の低酸素活性化プロドラッグは、週に1回投与される。1つの実施形態では、TH−302の治療有効量は、約480mg/m〜約670mg/m、すなわち、575mg/mの投与量の週1回投与である。別の実施形態では、TH−302の治療有効量は、4週サイクルの3週間において、約240mg/mの投与量で週1回投与される。1つの実施形態では、TH−302の治療有効量は、約240mg/m〜約480mg/mの1日投与量が3週サイクルの1日目と8日目に投与される。
【0061】
本発明の方法の種々の実施形態では、血管新生阻害剤は、ベバシズマブ(Avastin)、パゾパニブ(Votrient)、ソラフェニブ(Nexavar)、およびスニチニブ(Sutent)からなる群から選択される。様々な実施形態において、癌は、脳、消化管、腎臓、肝臓、または膵臓の癌である。様々な実施形態において、癌は、星状細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫もしくは神経膠芽腫、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)、または膵神経内分泌癌である。
【0062】
本発明の方法のいくつかの実施形態によれば、血管新生阻害剤との併用で低酸素化プロドラッグを患者に最初に投与する場合、血管新生阻害剤が最初に投与され、低酸素化プロドラッグは、血管新生阻害剤がその抗血管効果を発揮し、腫瘍内の低酸素を増加(低酸素比率の増加)する時間まで投与されない。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、TH−302などの低酸素活性化プロドラッグが投与される1週前に投与されるであろう。他の実施形態では、血管新生阻害剤は、TH−302などの低酸素化プロドラッグが投与される少なくとも1日前に、3日前に、5日前に、または42日前に投与される。典型的には、低酸素活性化プロドラッグおよび血管新生阻害剤の追加投与があるであろうし、これら2つの薬物(治療のそれぞれの「サイクル」)のこれらのその後の投与のために、血管新生阻害剤の投与と低酸素活性化プロドラッグの次の投与との間の遅延は、血管新生阻害剤がすでに腫瘍内低酸素を増加しているので重要ではない。1つの実施形態では、TH−302または他の低酸素活性化プロドラッグは、本発明の方法に従い、治療のこれら第2サイクルおよびそれ以降のサイクルでの他の薬剤の少なくとも2時間前に投与される。引用により本明細書に組み込まれるPCT出願公開番号第2010/048330号を参照されたい。本発明の方法の他の実施形態では、低酸素活性化プロドラッグの最初(および/または1つまたは複数の後続の)の投与(複数回を含む)は、血管新生阻害剤の投与と同じ日に行われる。
【0063】
1つの実施形態では、治療される患者の癌は、転移癌あるいは難治性および/または1次治療、2次治療または3次治療に対して難治性である再発癌である。別の実施形態では、治療は、1次治療、2次治療または3次治療である。本明細書で使用される場合、「1次」または「2次」または「3次」という語句は、患者が受ける治療の順序を意味する。1次治療計画は、最初に与えられる治療であるのに対して、2次治療または3次治療は、1次治療の後に、または2次治療の後にそれぞれ与えられる。したがって、1次治療は、疾患または状態についての最初の治療である。癌患者では、主要な治療法は、手術、化学療法、放射線療法、あるいはこれらの治療法の組み合わせとすることができる。1次治療はまた、主要な治療法または主要な措置として当業者に付託されている。典型的には、患者が陽性の臨床応答を示さなかったり、1次治療に不顕性の応答を示すのみであったり、あるいは1次治療が中止になったとの理由から、患者はその後の化学療法計画を与えられる。
【0064】
本発明の特定の方法の実施によって達成される改善された治療結果は、低酸素活性化プロドラッグが最初に投与されるか、あるいは血管新生阻害剤の抗血管形成効果が腫瘍で発現する時点より前に投与される症例における同じ癌の低酸素比率に比べて、低酸素活性化プロドラッグが最初に投与される時点の増加した低酸素比率を有する癌に由来し、血管新生阻害剤の初回投与から生じることが本開示を考慮して理解されるであろう。
【0065】
別の態様において、本発明の治療法は、癌以外の過剰増殖性疾患を治療するために使用される。
【0066】
低酸素活性化プロドラッグの製造法および医薬組成物、ならびに式Iの様々な低酸素活性化プロドラッグを投与することによる癌を治療する他の方法は、Duanら、J.Med.Chem.2008,5I,2412−2420ならびにPCT公開番号WO2007/002931、同2008/083101、および同2010/048330に記載されており、これらの各々は引用により本明細書に組み込まれる。本発明の方法と組み合わせて使用することができる癌を治療する他の方法は、当業者に公知であり、例えば、Physician’s Desk Reference、Medical Economics Company,Inc.,Oradell,NJの2010年版またはもっと最近の版で見られる製品の記述;Goodman and Gilman’s The pharmacological basis of therapeutics.,Hardmanら編,McGraw−Hill.New York.(US)2011,第12版,および米国FDA(Food and Drug Administration)の刊行物ならびにNCCNのガイドライン(National Comprehensive Cancer Network)に記載されている。このような方法は、本発明の治療方法を実施するために本開示に鑑みて当業者であれば適切に変更することができる。
【0067】
1つの実施形態では、TH−302は、100mgのバイアルの凍結乾燥形態で提供され、D5Wに溶解され、約30〜60分かけて輸液ポンプを経由して静脈内(IV)に投与される。注入量は、注入の過程で与えられる総投与量(mg単位で)に依存する。約1000mg未満が注入される場合は、約500ccのD5Wが、注入のために使用される。総用量が1000を超える場合は、約1000ccのD5Wが注入のために使用される。
【0068】
次に、本発明の方法は、特定の血管新生阻害剤を含む併用療法との関連で説明される。
【0069】
ベバシズマブとの併用治療
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、脳腫瘍のために手術後2週間毎に1回のスケジュールで約240mg/m〜約480mg/mの投与量で約30分〜約60分かけて静脈内に投与されるTH−302であり、血管新生阻害剤は、2週間毎に1回10mg/kg(静脈内)の標準投与量で投与されるベバシズマブである。この実施形態は、以前にベバシズマブまたは別の血管新生阻害剤で治療された再発神経膠芽腫を含む再発膠芽腫の治療において特に有用である。治療することが考慮される他の癌は、転移性結腸直腸癌(ここで、標準ベバシズマブの投与量は、静脈内5−FU系治療との併用で2週間毎に5mg/kgまたは10mg/kgである);限定されないが、非扁平上皮非小細胞肺癌を含む肺癌(ここで、標準投与量は、カルボプラチンとパクリタキセルとの併用で3週間毎に1回の15mg/kgである);転移性乳癌を含む乳癌(ここで、標準投与量は、パクリタキセルとの併用で2週間毎に1回の10mg/kgである);および限定されないが、転移性腎細胞癌を含む腎細胞癌;を含む。これらの例の各々では、癌はベバシズマブまたは別の血管新生阻害剤による先の治療後に再発または進行した癌を含むことができる。必要に応じて、低酸素状態は、静脈内投与される約500mg/mのピモニダゾール塩酸塩(Hypoxyprobe−1)を使用して確認することができる。
【0070】
パゾパニブとの併用療法
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグはTH−302であり、これは約240mg/m、約340mg/m、約480mg/m、または約575mg/mの投与量で1週間に1回、約30分かけて静脈内に投与されるか、1週間休薬して、治療スケジュールに基づいて3週間続けるか、あるいは3週間続けて、1週間休薬し、そして、血管新生阻害剤はパゾパニブであり、これは、800mgという最大限の単剤投与量(経口投与)が1日1回投与される。したがって、本発明の方法の1つの実施形態では、パゾパニブが最初に投与され、治療の1週間後に、TH−302などの低酸素活性化プロドラッグが、毎週1週間遅れで、あるいは4週間スケジュールのうち3週間のいずれかに初めて投与される。本発明の方法の別の実施形態では、パゾパニブおよびTH−302は、最初に一緒に投与され、TH−302療法は、毎週または4週スケジュールの3週間にわたり施される。このスケジュールでのパゾパニブの他の適切な投与量は、毎日1回400mgおよび毎日1回200mgである。この治療投与計画は、限定されるものではないが、腎細胞癌(RCC)、肉腫、膵神経内分泌腫瘍を含む膵臓癌、または他の固形腫瘍の癌患者に本発明に従って投与することができる。
【0071】
ソラフェニブとの併用治療
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、TH−302であり、これは、28日サイクルの8日目、15日目および22日目に投与され、血管新生阻害剤は、ソラフェニブであって、これはこれらのサイクルの1日目〜28日目まで食物抜きで経口投与される。この実施形態では、限定されるものではないが、肝細胞癌(HCC)およびRCCを含む進行性固形腫瘍癌を治療することができる。ソラフェニブは、例えば、1日目〜28日目まで毎日2回経口で200mg投与(1日2回、2日投与量で400mgの総日数投与量)され、そして、TH−302は、28日間のサイクルの8日目、15日目および22日目に、約240mg/mを静脈内(例えば、30〜60で注入)に投与することができる。このスケジュールでのソラフェニブの他の適切な投与量は、1日2回の400mg(経口)、毎日1回の400mg(経口)、および2日に1回の400mg(経口)である。ソラフェニブ投与量は、治療関連毒性を管理するために、1日1回あるいは1日おきに1回の400mgに減少することができる。このスケジュールで、TH−302の他の適切な投与量は、静脈内投与で約180、約340、約480mg/mを含む。
【0072】
スニチニブとの併用治療
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグはTH−302であり、これは42日サイクルの8日目、15日目および22日目に投与され、血管新生阻害剤はスニチニブであって、これはこれらのサイクルの1日目〜28日目まで50mgが毎日、経口投与され、同じ42日サイクルで2週間休薬する。TH−302は、42日サイクルの8日目、15日目および22日目に、約240mg/mを静脈内(例えば、30〜60分の注入)に投与することができる。このスケジュールでのTH−302の他の適切な投薬量は、約120、約180、約340、および約480mg/m(静脈内投与)を含む。様々な実施形態において、本発明の併用療法は進行性RCCを含むRCC、限定されるものではないが、消化管間質腫瘍(GIST)を含む胃腸腫瘍、および膵神経内分泌腫瘍を含む膵臓癌からなる群から選択される癌患者に投与される。
【0073】
1つの実施形態では、血管新生阻害剤は、スニチニブの薬学的に許容される塩である。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩は、1日1回(QD)投与される。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与は、そのTH−302を投与する少なくとも約7日前に開始される。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩は、低酸素活性化プロドラッグを投与する約1週間〜約6週間前に投与される。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩は、約3週間〜約1年間、投与される。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、毎日約50mgの投与量である。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、約25mg、約37.5mg、約62.5mg、または約75mgの群から選択される量である。1つの実施形態では、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩は、経口的に投与される。
【0074】
低酸素マーカー
様々な本発明の実施形態では、低酸素マーカー(本明細書では「バイオマーカー」とも称される)は、治療する患者を選択するために、および/または治療に応答している(または応答していない)患者を識別するために使用される。低酸素マーカーは、低酸素がより攻撃的な固形腫瘍の表現型を促進し、放射線照射や多くの化学療法に対する耐性のみならず、腫瘍の浸潤や悪い患者生存率の可能性を伴うことを示す研究の過程で開発されてきた。特に、<10mmHgの酸素分圧における細胞は、放射線療法のイオン化効果と化学療法の細胞毒性効果に抵抗する。偽柵状構造の腫瘍細胞を有する低酸素壊死巣は、例えば、神経膠芽腫(GBM)を定義する特徴の一つである。したがって、種々の方法が異種移植片および患者の腫瘍における低酸素の程度を評価するために考案され、本発明に従ってこれらの方法は本明細書に記載されるように適切に修正され、実施されて、患者を選択し、治療に対する応答を評価するために本発明の方法の特定の実施形態で使用される。一般に、本発明は、低酸素活性化プロドラッグでの治療に適した患者を識別するための方法を提供し、そこでは、患者の癌が低酸素であるかどうかを識別するために低酸素マーカーが使用され、そして、そうであれば、患者を低酸素活性化プロドラッグで治療する。すなわち、低酸素の程度が高いほど、患者は低酸素活性化プロドラッグでの治療に応答する可能性がより高くなる。当業者は、本開示を考慮して、これらの方法はすべての癌に有用であることを理解する。
【0075】
伝統的に、低酸素測定のための標準基準は、ポーラログラフの酸素感受性プローブの使用であり、組織酸素分圧の直接測定を提供する。しかし、この方法には、生存巣と壊死巣とを区別することができないこと、骨髄の造血器腫瘍に関連するものを含む多くの腫瘍組織に到達しにくいこと、およびその技術を大規模に適用する実用的な手段が欠如していることなどの限界を有する。ピモニダゾールとEF5(両方共2−ニトロイミダゾール化合物である)は、ピモニダゾールまたはEF5のタンパク質付加物の免疫組織化学的な同定を通して、放射線生物学的に関連した低酸素の信頼できる評価をすることができる低酸素マーカーである。分子状酸素は、ピモニダゾール(およびEF5)の結合が、14マイクロモルより上の酸素濃度で効果的に阻害されるような方法で還元性均等物と競合する。この方法は、具体的に生存低酸素細胞を確実に特定する(壊死細胞は、ピモニダゾールまたはEF5を代謝することができない)。
【0076】
本発明の方法に従って使用するのに適している、前臨床試験で確認されているその他の低酸素マーカーとしては、GLUT−1、HIF−1a、CA−IX、LDH−A、オステオポンチン、VEGF、および限定されないが、miR−210を含むマイクロRNAマーカーが挙げられる。これらのタンパク質またはRNAの各々は、低酸素状態においてアップレギュレートされ、それらは腫瘍生検によって検出することができる。しかし、より好都合なことに、これらのマーカーの一部、すなわち、CA−IX、LDH−A、オステオポンチン、VEGF、および限定されないが、miR−210を含むマイクロRNAマーカーは、患者の血液、血清、または血漿で検出されて、腫瘍生検の代わりに簡単な血液検査を可能とし、低酸素活性化プロドラッグ療法のための患者を選択するために使用される。
【0077】
また、研究では、免疫組織化学によって評価される腫瘍の低酸素と、[18F]−FDGおよび[18F]−FMISOオートラジオグラフィーやPETイメージングの間の空間的関係を検討しており、これらの化合物および[18F]−EF5、[18F]−FAZA、および[18F]−HX4などの同様のPETトレーサーを、本発明の方法に従って使用することができる。例えば、銅[60Cu]、[61Cu]、[62Cu]または[64Cu]の陽電子放射性同位体で標識された銅(II)−ジアセチル−ビス(N−メチルチオセミカルバゾン)(Cu−ASTM)、ならびに[68Ga]−1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸−2−ニトロイミダゾール−N−エチルアミン(68Ga−NOTA−NI)および[68Ga]イソチオシアナトベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸−2−ニトロイミダゾール−N−エチルアミン(68Ga−SCN−NOTA−NI)もまた、本発明の方法に従って使用することができる。オートラジオグラフィーやPETイメージングに加えて、MRIやEPRIもまた、低酸素の検出(すなわち、腫瘍の低酸素比率を測定するか、またはそうでなければ、癌の低酸素状態の測定法を提供する)するために使用することができる。特に、動的コントラスト強調MRI(DCE−MRI)、血液酸素レベル依存性MRI(BOLD−MRI)、または拡散強調(DW MRI)は、低酸素の癌を識別するため、したがって、低酸素活性化プロドラッグでの治療のための理想的な患者を識別するために使用することができる。
【0078】
Hypoxyprobe(登録商標)−1(ピモニダゾール塩酸塩;Hypoxyprobe社によって市販されている)は、静脈内または経口的に投与された場合、脳を含む身体のすべての組織に送達されるが、14マイクロモル未満の酸素濃度(摂氏37度で10mmHgの酸素分圧に相当)を有する細胞内では、タンパク質付加体を形成するのみである。Hypoxyprobe−1MAb1は、低酸素細胞におけるHypoxyprobe−1のタンパク質付加体を検出するマウスIgG1モノクローナル抗体である。この試薬は、典型的には、各組織サンプルに加えられる。発色または蛍光2次抗体試薬は、次にHypoxyprobe−1付加体が低酸素組織のどこで形成されたかを明らかにするために本発明に従って使用される。
【0079】
本開示を考慮して、当業者はこれらの方法もまた、血管新生阻害剤が腫瘍の低酸素比率を増加させるためにそれにより治療される患者に作用する十分な時間を有したかどうかを決定するために、したがって、患者が低酸素活性化プロドラッグで何時、最初に治療される準備ができているかどうかを確認するために、本発明に従って使用することができることを理解する。この実施形態では、低酸素比率の増加は、前述の方法の1つにより確認されるように、低酸素活性化プロドラッグの投与を開始してもよいことを知らせる。
【0080】
また、これらの方法は、低酸素活性化プロドラッグでの治療に応答している患者を識別するために使用することができるが、それはそのような患者では低酸素活性化プロドラッグが低酸素比率で細胞を殺すにつれて腫瘍の低酸素比率が時間の経過とともに低下するからである。
【0081】
これらの低酸素マーカーに加えて、低酸素活性化プロドラッグ療法のための患者を選択するために使用できる他のマーカーがある。式Iによって定義される本発明の低酸素活性化プロドラッグは、レダクターゼによって活性化され、したがってPOR(P450オキシドレダクターゼ)、MTRR(メチオニンシンターゼレダクターゼ)、および/またはNOS(一酸化窒素シンターゼ)などの活性化レダクターゼの高レベルを有する患者を示す生検や血液検査は、患者が低酸素活性化プロドラッグ療法に応答する可能性が高いことを実証している。さらに、これらの低酸素活性化プロドラッグにより誘発されるDNAの損傷は、HDR(HRとしても知られている)系により修復され、患者の血液または腫瘍生検における、限定はされないがBRCA、FANC、XPF(ERCC4としても知られている)、XRCC2および/またはXRCC3を含むこの系でのタンパク質のレベルが低いほど、この系によって修復されるDNA損傷を負わせる低酸素活性化プロドラッグによる低酸素活性化プロドラッグ療法に患者がより応答する可能性が高くなる。
【0082】
従って、別の態様において、本発明は、低酸素活性化プロドラッグの投与を含む治療に適している可能性が高いか、またはそうでない癌患者を決定する方法を提供し、該方法は、
場合により血管新生阻害剤で治療された癌患者を含む癌患者から単離された癌検体の低酸素比率を決定すること、
低酸素比率を所定のレベルの低酸素比率と比較すること、を含み、
ここで、所定のレベルに比べて増加した低酸素比率は、場合により血管新生阻害剤と併用して低酸素活性化プロドラッグを投与することを含む治療に適している可能性が高い癌患者を示し、そして、
所定のレベルと比較して類似または減少した低酸素比率は、低酸素活性化プロドラッグを投与することを含む治療に適していない可能性が高い癌患者を示す方法である。
【0083】
本明細書で使用される場合、「治療に適している可能性が高い癌患者またはそうでない癌患者」は、治療を受けてきたか、受けているか、あるいは受け得る癌患者を指す。本明細書で使用される場合、「治療に適している」は、同じ病気を有し、同じ治療を受けているが、比較の目的のために考慮される異なる特性を有する患者と比較して、患者が1つ以上の望ましい臨床結果を示す可能性があることを意味する。1つの実施形態では、より望ましい臨床結果は、腫瘍量の縮小などの好ましい抗腫瘍効果の相対的に高い可能性である。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、比較的長い全生存率である。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、比較的長い、無増悪生存期間または腫瘍進行の時間である。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、比較的長い無病生存率である。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、腫瘍再発の除去または遅延である。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、転移の除去または減少である。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、より低い相対的リスクである。別の実施形態では、より望ましい臨床結果は、相対的に減少した毒性や副作用である。いくつかの実施形態では、複数の臨床結果が達成される。1つの実施形態では、特性を有する患者は、1つまたは複数の望ましい臨床結果を示し得るが、同時に1つまたは複数のあまり望ましくない臨床結果を示し得る。臨床結果は、その後、全体的に考慮され、患者が治療に適しているかどうかの判断は、患者の特定の状況とそれぞれの臨床結果の関連性を考慮して、それに応じてなされる。いくつかの実施形態では、無増悪生存率や全生存率は、そのような意思決定の際に、腫瘍応答よりもより重要視される。
【0084】
1つの実施形態では、所定の低酸素比率は、限定されるものではないが、血管新生阻害剤を含む任意の抗癌剤で治療する前に癌患者から採取された癌検体、の低酸素比率である。
【0085】
1つの実施形態では、本発明は、癌患者が低酸素活性化プロドラッグでの治療に適している可能性が低いと決定する方法を提供する;この実施形態では、この方法は、患者の癌が小さい低酸素比率あるいは非現実的な低酸素比率によって特徴づけられることを明らかにする。
【0086】
1つの実施形態では、本発明は、低酸素活性化プロドラッグを用いた治療に適している可能性が高い癌患者を決定する方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、さらに、患者が治療に効果的に応答する可能性が高いことを決定した後に低酸素活性化プロドラッグを投与することを含む。1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、TH−281、TH−302、またはTH−308である。1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、TH−302である。様々な実施形態では、TH−302は、毎日1回、3日毎に1回、週1回、または3週間毎に1回、投与され、場合により、その後1週間は休薬期間である。別の実施形態では、TH−302は、非経口的に投与される。1つの実施形態では、本方法はさらに、癌患者にTH−302または別の低酸素活性化プロドラッグを約120mg/m〜約460mg/mの投与量で毎日、投与することを含む。他の投与量、投与頻度、およびTH−302または他の低酸素活性化プロドラッグの投与期間は、本明細書に開示されるように、本態様の種々の実施形態においても有用である。
【0087】
種々の実施形態では、血管新生阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、パゾパニブ、またはソラフェニブである。上記に開示したように実施される治療法は、上記に特定される癌患者を治療するために用いられる。
【0088】
種々の実施形態では、癌は転移癌または1次、2次、または3次治療(これらのうちの1つは、血管新生阻害剤で治療され得る)に対して難治性の癌である。
【0089】
1つの実施形態では、低酸素活性化プロドラッグは、TH−281、TH−302、およびTH−308から成る群から選択される。1つの実施形態では、低酸素比率の所定の値は、同一または異なる患者からの同一または類似の癌検体の低酸素比率である(複数の患者または患者集団の研究によって測定される所定の値を含むが、これに限定されない)。1つの実施形態では、所定の値は、血管新生阻害剤で治療されていない患者または複数の患者からの癌検体を用いて測定される。
【0090】
前記したように、低酸素比率は、様々な公知のプローブおよび方法を使用して測定することができる。このような方法は、癌検体を分離し、それをhypoxyprobe−1(ピモニダゾール)、EF5、または別の2−ニトロイミダゾール誘導体などの低酸素の化学プローブで染色し、次いで免疫組織化学による工程を含むことができるか、または代わりに患者から血液、血清、または血漿の検体を採取し、その中に含まれる低酸素マーカーのレベルを測定する工程を含むことができる。例えば、HIF−1aまたは炭酸脱水酵素のレベルは、低酸素比率値を決定するために測定することができる。これらの遺伝子産物を同定するための方法は、当業者に知られている。他の適切な低酸素マーカーは上記に開示されている。他の方法としては、酸素濃度を測定するために、癌検体を単離するか、あるいは単離することなく、酸素電極を使用することを含む。本明細書で使用する場合、「単離すること」とは、患者由来の生物学的または細胞学的材料を得ることを意味する。
【0091】
要約して、そして詳細に記述された本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0092】
実施例1.A. 786−O異種移植腫瘍担持ヌードマウスでのスニチニブ誘発低酸素
低酸素活性化プロドラッグを用いた治療に腫瘍がより感受性となるように、腫瘍の低酸素の程度を測定し、そして血管新生阻害剤を用いて腫瘍の低酸素比率を増加させるための方法を説明するために、786−O RCC異種移植腫瘍担持ヌードマウスは、3群に無作為化された:ビヒクル(8匹のマウス)とスニチニブ(Sutent、Pfizer)(20mg/kgおよび40mg/kg)をQD(1日1回)×5の頻度でそれぞれ(各6匹)に経口投与した。最後のスニチニブを投与して71時間後に、ピモニダゾールを投与した。ヘキスト33342をピモニダゾールの投与1時間後に投与した。ヘキスト33342を投与1分後に、動物を屠殺し、組織を採取した。採取した組織の顕微鏡評価に基づいて、用量依存性の低酸素の増加と血流の減少が観察された。形態学的解析により、786−O異種移植腫瘍内の低酸素比率は、ビヒクル投与の場合の1.4±0.9%と比較して、20mg/kg投与の場合、1.6±0.9%、そして40mg/kg投与の場合、17.2±0.9%であった。40mg/kgのスニチニブを投与した場合には、有意な低酸素比率の増加が観察された。786−O RCC腫瘍は、CD31と、異種移植腫瘍における比較的小さな基本的な低酸素コンパートメント(<5%の体積)のヘキスト染色によって特徴づけられるよく血管新生した腫瘍である。しかし、スニチニブは、腫瘍の低酸素体積の用量依存的な増加とRCC腫瘍血管系の機能的な脈管構造の減少を誘発した。
【0093】
実施例1.B. H460異種移植腫瘍担持ヌードマウスでのスニチニブ誘発低酸素
低酸素活性化プロドラッグを用いた治療に腫瘍がより感受性となるように、腫瘍の低酸素の程度を測定し、そして血管新生阻害剤を用いて腫瘍の低酸素比率を増加させるための方法を説明するために、H460非小細胞肺癌(NSCLC)の異種移植腫瘍担持ヌードマウスに、20mg/kgおよび40mg/kgの投与量のスニチニブを、QD(1日1回)×5の頻度でそれぞれ(各5匹)に腹腔内投与し、ビヒクル処置動物(5匹のマウス)と比較した。次いで、ピモニダゾールとヘキスト33342を投与し、動物を上記のように屠殺し、その結果は、再度、低酸素における用量依存的な増加と血流の減少を示した。採取された組織の低酸素比率(%)は、形態計測学により分析された。NSCLC(H460)腫瘍は、7%のベースライン低酸素比率を示す。スニチニブは腫瘍の低酸素体積の用量依存的な増加(24±3.2%(40mg/kg)対7.3±3.8%(ビヒクル)、p<0.05)と腫瘍の微細血管系における対応する減少を誘発した。
【0094】
実施例1.C. 786−O RCC異種移植腫瘍担持ヌードマウスでのソラフェニブ誘発低酸素
同様の証明が、別の血管新生阻害剤のソラフェニブ(Nexavar(登録商標)ソラフェニブ)を使用して、786−O RCCで行われた。20mpk(kg当たりのmg)と40mpkのソラフェニブを経口で1日1回、7日間投与した。ピモニダゾールは、ソラフェニブの最後の投与後3時間に投与された。ヘキスト33342は、ピモニダゾールを投与して1時間後に投与された。ヘキスト33342を投与した1分後に、動物を屠殺し、組織を採取した。786−O(RCC)腫瘍は、0.8%のベースライン低酸素比率を示す。ソラフェニブは、腫瘍の低酸素体積の用量依存性増加を誘発した:ビヒクルの場合0.8±0.2%;20mg/kgのソラフェニブ投与の場合3.5±1.6%、および40mg/kgのソラフェニブの場合10±2.5%。有意に増加した低酸素体積が、40mg/kg治療群で観察された(p<0.05対ビヒクル)。
【0095】
実施例1.D. PLC/PRF/5異種移植腫瘍担持SCIDマウスでのソラフェニブ誘発低酸素
ソラフェニブ投与後に、別の癌すなわち肝細胞癌PLC/PRF/5の低酸素レベルも測定された。測定は、20または40mg/kgのソラフェニブを8日間毎日1回投与した以外は、上記と同様に行った。PLC/PRF/5(HCC)の腫瘍は、4.3%のベースライン低酸素比率を示す。ソラフェニブは、腫瘍の低酸素体積の用量依存性増加を誘発した:ビヒクルの場合4.3±0.4%;20mg/kgのソラフェニブ投与の場合6.5±0.6%、および40mg/kgのソラフェニブの場合9.3±0.7%。有意に増加した低酸素体積が、20mg/kg治療群(p<0.05対ビヒクル)および40mg/kg治療群(p<0.001対ビヒクル)で観察された。
【0096】
実施例2. TH−302による血管新生阻害剤の抗腫瘍活性の増強
TH−302の抗癌効果は、抗血管新生療法との組み合わせで実証された。異種移植腫瘍は、5×10の786−Oヒト腎細胞癌(RCC)細胞、5×10のA375メラノーマ細胞、または1×10のH460ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)細胞のヌードマウスの脇腹への皮下移植によって、あるいは5×10のPLC/PRF/5肝細胞癌(HCC)の重症複合免疫不全(SCID)マウスの脇腹への皮下移植によって確立された。腫瘍の低酸素は、ピモニダゾール免疫染色により検出され、形態学的分析が低酸素比率を測定するために行われた。腫瘍の大きさが約100〜150mmであったとき、スニチニブまたはソラフェニブを毎日投与した。20、40、または80mg/kgのスニチニブを経口で毎日3週間投与した(QD×21)。A375メラノーマモデルを利用する研究を除いて、これらの研究のすべてについては、TH−302の投与を血管新生阻害剤の投与後1週間に始めた。A375メラノーマモデルでは、TH−302の投与は、ソラフェニブ投与と同じ日に開始された。50mg/kgのTH−302は、毎日1回5日間と2日間の休薬(QD×5)の2週間、腹腔内に投与された。スニチニブは、両方の薬剤が与えられた日に、TH−302投与の4時間前に投与された。
【0097】
RCC腫瘍では、スニチニブの活性は、TH−302の併用療法で増強された:腫瘍増殖抑制率(TGI)は、40mg/kgのスニチニブ単剤療法の38%から50mg/kgのTH−302との共投与で75%に増加した。
【0098】
NSCLC腫瘍では、スニチニブ(80mg/kgのQD×21)の活性は、TH−302で増強された。TGIは、80mg/kgのスニチニブ単剤療法の78%から50mg/kgのTH−302の併用療法で97%に増加した。
【0099】
別の研究では、本発明の方法に従って、スニチニブを5週間投与し、TH−302をスニチニブ療法が開始された1週間後に開始して4週間投与した。この長期間の投与計画では、抗腫瘍活性が増加した。TH−302との併用による中用量のスニチニブ(40mg/kg)は、99%TGIに達し、腫瘍増殖を29日間で500mmに遅延させた。重要なことに、毒性の指標である体重減少は、これらの研究における血管新生阻害剤のいずれかとの併用によるTH−302では有意に増加しなかった。
【0100】
ソラフェニブとの併用によるTH−302(16日間毎日1回、すなわちQD×l6)の相補的効果もPLC/PRF/5 HCC、H460 NSCLC、およびA375メラノーマの異種移植片を含む複数の異種移植腫瘍でも観察された。例えば、NSCLC腫瘍のいずれかの単剤療法については80%未満のTGIであるのに対し、併用療法については94%のTGIが観察された。ソラフェニブの併用療法はまた、786−O RCC担持マウスにTH−302との併用で投与(QD×14)した場合に、TGIを増加させた(QD×5/週を2週間、50mg/kg)。
【0101】
別の研究では、エベロリムス(1日1回19日間投与、すなわちQD×19)との併用によるTH−302(50mg/kgを19日間毎日1回(QD×19)または第8日目から始めて50mpkを12日間投与のいずれか)の効果もまた、786−O RCC異種移植で観察された。例えば、エベロリムスの単剤療法について50%未満のTGIあるいはTH−302単剤投与群では16%のTGIであるのに対し、併用療法については84%のTGIが観察された。興味深いことに、ほぼ同じTGIが、両方のTH−302治療群で観察されたが、このことは、エベロリムスが腫瘍の低酸素比率を増加した後までTH−302の最初の投与を遅らせることは、増強された有効性(すなわち、投与されたTH−302の総量のほとんど3分の1の減少は、完全な投与量と同程度の有効性をもたらした)を提供したことを実証した。次の表は、上記の研究で得られたデータをまとめたものである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0102】
実施例3.進行性腎細胞癌、消化管間質腫瘍および膵神経内分泌腫瘍の治療のためのTH−302とスニチニブの臨床投与
臨床試験では、本発明の方法に従って腎細胞癌、消化管間質腫瘍および膵神経内分泌腫瘍の患者に投与されたスニチニブとの併用において、TH−302の安全性、忍容性および臨床関連疾患の応答性を証明している。スニチニブは、42日サイクルの1日目から28日目まで毎日、経口投与される。TH−302は、42日サイクルの8日目、15日目と22日目に、1週間に1回、30〜60分の静脈内に点滴投与される。深刻な治療関連毒性または進行性疾患の所見なしで6週間の治療サイクルを成功裏に完了した患者は、治療を継続し、最大6サイクルの治療を受けることができる。他の実施形態では、追加のサイクルを施してもよい。
【0103】
進行性腎細胞癌のある患者は、毎日50mgのスニチニブの投与量と240mg/mのTH−302の投与量を併用して治療されている。
【0104】
上述した実施例に、特定の実施形態が説明され記述されているが、変更および修正は以下の特許請求の範囲で定義されているようにその広い態様において、本発明から逸脱することなく当業者に従って上記のプロセスにおいて行うことができることが理解されるであろう。