特許第6066428号(P6066428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066428
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】低輪郭の外科用万能アクセスポート
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   A61B17/34
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-509385(P2014-509385)
(86)(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公表番号】特表2014-519366(P2014-519366A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012036119
(87)【国際公開番号】WO2012151276
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/481,366
(32)【優先日】2011年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
【審査官】 小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/081105(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第19541041(DE,A1)
【文献】 米国特許第03185179(US,A)
【文献】 特開2010−214120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用アクセスデバイスであって、
近位端と遠位端との間に延びているルーメンを有する、細長い管状カニューレを有し、
前記カニューレは、前記カニューレの前記ルーメンに対して半径方向外方に離間した位置に設けられ、前記近位端に拡張ルーメンを形成する側壁と、前記カニューレの前記近位端で前記側壁を貫いて延びる開口部と、を有し、
前記拡張ルーメンにおける前記側壁は、円筒形であり、近位端と、遠位端と、当該拡張ルーメンにおける当該側壁の前記遠位端に形成された外方に延びるリッジとを有し、
前記アクセスデバイスは、前記カニューレの前記近位端に連結され且つ前記近位端と同軸であり、且つ、前記側壁に対して密閉状態で移動可能に構成されたシールハウジングをさらに有し、
前記シールハウジングは、該シールハウジングを貫いて延びるインフレーションポートを有しており、前記インフレーションポートは、該インフレーションポート及び前記開口部を前記カニューレルーメンと流体連結するために、少なくとも一部が前記側壁の前記開口部と整合するように構成され、
前記シールハウジングは、遠位端及び近位端を有する円筒形の本体を備え、この円筒形の本体から内方に延びる棚を備え、同軸の態様にて前記拡張ルーメンにおいて前記カニューレを取り囲み、当該シールハウジングの前記遠位端は、前記カニューレの前記リッジに接触し、
前記アクセスデバイスは、前記シールハウジング内に配置された少なくとも1つのシールを有するシールアセンブリと、前記シールハウジングの前記近位端に当接するキャップと、をさらに有し、
前記シールハウジングは、開形態と閉形態との間で、前記側壁に対して移動可能であり、
前記開形態では、前記インフレーションポートは、少なくとも一部が前記側壁の前記開口部と整合して、前記インフレーションポート及び前記開口部を前記カニューレルーメンと流体連結し、
前記閉形態では、前記インフレーションポートの前記ルーメンは、側壁の前記開口部からオフセットされて、前記インフレーションポートを前記側壁の前記開口部から流体的に隔絶する、ことを特徴とするアクセスデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのシールは、半径方向延長部分を含み、
前記少なくとも1つのシールは、前記半径方向延長部分が前記棚の上に載るように、前記シールハウジング内に配置され、
前記キャップは、前記シールハウジングの前記近位端を閉じ、前記シールアセンブリを前記シールハウジング内に固定し、前記ルーメンへの開口部を有する、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項3】
前記カニューレ側壁から半径方向外方に延びる第1の突起、及び前記カニューレ側壁から半径方向外方に延びる第2の突起をさらに含み、
前記アクセスデバイスは、前記第1又は第2の突起を前記インフレーションポートに対して移動させることで、前記開形態と前記閉形態との間で切り替え可能である、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項4】
前記第1の突起は、前記インフレーションポートの方の側に隣接し、
前記第2の突起は、前記インフレーションポートの反対側に隣接する、請求項3に記載のアクセスデバイス。
【請求項5】
前記カニューレ側壁から半径方向外方に延びる第1の突起、及び前記シールハウジング壁から半径方向外方に延びる第2の突起をさらに含み、
前記アクセスデバイスは、前記第1の突起を前記第2の突起に対して移動させることで、前記開形態と前記閉形態との間で切り替え可能である、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項6】
前記第2の突起は、前記インフレーションポートにより形成される、請求項5に記載のアクセスデバイス。
【請求項7】
近位端及び遠位端を有する弾性部材をさらに含み、
前記弾性部材は、前記シールアセンブリと前記シールハウジングとの間に配置され、前記少なくとも1つのシールを取り囲む、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項8】
前記弾性部材は、前記カニューレの長手方向軸線と同軸である長手方向軸線を有するバネから成る、請求項7に記載のアクセスデバイス。
【請求項9】
前記弾性部材は、狭い近位端及び広い遠位端を含むテーパー状バネから成る、請求項7に記載のアクセスデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つのシールは、半径方向延長部分を含み、前記カニューレ側壁は、前記ルーメンのまわりに半径方向に延びるカニューレベース床を含み、
前記弾性部材の前記狭い近位端は、前記少なくとも1つのシールの前記半径方向延長部分と接触し、前記弾性部材の前記広い遠位端は、前記カニューレベース床に接触する、請求項9に記載のアクセスデバイス。
【請求項11】
前記弾性部材は、前記少なくとも1つのシールと前記カニューレベース床との間に、低圧縮状態で収容される、請求項7に記載のアクセスデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのシールは、半径方向延長部分と、この半径方向延長部分から遠位に延びる垂下部分とを有し、
前記弾性部材は、前記少なくとも1つのシールの前記垂下部分を取り囲む、請求項7に記載のアクセスデバイス。
【請求項13】
前記弾性部材の前記近位端は、半径方向延長部分に接触する、請求項7に記載のアクセスデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つのシールは、半径方向延長部分と、この半径方向延長部分から遠位に延びる垂下部分とを有し、
前記弾性部材の前記狭い近位端は、前記半径方向延長部分に接触し、前記弾性部材の前記広い遠位端は、カニューレベース床に接触する、請求項9に記載のアクセスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2011年5月2日に出願された「低輪郭の外科用万能アクセスポート」という発明の名称の米国特許仮出願第61/481,366号についての優先権及び恩恵を主張し、該米国特許仮出願は、その全体をここに援用する。
【0002】
本発明は、外科用アクセスデバイスに関し、より詳しくは腹腔鏡の低侵襲手術トロカールに関する。
【背景技術】
【0003】
1つのタイプの外科用アクセスデバイスは、トロカールと一般に呼ばれている。典型的には、「トロカール」の用語は、カニューレ、カニューレシールハウジング及び閉塞具の組み合わせを記述するために用いられる。閉塞具は、典型的にはカニューレと関連した貫通器具であり、閉塞具の貫通先端部を遠位端で露出させるために、シールハウジングからカニューレのルーメン内へ挿入される。カニューレシールハウジングは、器具がカニューレのルーメン内及び腹腔内に挿入されている間、気腹圧力を維持するように機能する。「アクセスポート」及び「アクセスデバイス」の用語も、トロカールを参照するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腹腔鏡又は低侵襲外科手術の進歩は、アクセスデバイスに新たな要求を突きつけている。腹腔鏡下で現在行われている外科手術の高まる複雑性のために、そのような手術で使用される器具の開発はもちろんのこと、現在利用可能なアクセスデバイスの改良、アップグレード及び/又は再設計が望ましい。例えば、腹腔鏡検査の初期では、腹腔鏡的胆嚢摘出術は、複雑な手術と考えられており、典型的には3〜5のアクセスポートの設置及び約3つの異なる器具の使用を含んでいた。現在では、腹腔鏡的胆嚢摘出術は、日常的な外科手術と考えられており、患者のへその1箇所の切開を用いて実行される。他の腹腔鏡手術は、腸や胃や肺や子宮や脾臓や肝臓などの、より複雑な外科手術を含む。このような手術用に特別に開発された器具は、しばしば複雑且つ非対称形であり、例えば、アンダーカットと、サイドオープニングと、トロカールシールを傷つけること及び/又は破ることができる鋭い部位と、を含むことがある。広範囲なサイズの器具がアクセスポートから挿入される手術が、さらなる問題点を生じさせている。例えば、或る手術では、器具の直径は、約4.5mmから約15mmを超える範囲にある。このような手術では、小さな器具を、より大きな器具に適するように設計されたシールシステムの領域内で移動させるときに、気腹圧力を維持することが難しい。また、複雑な器具は、操作のための大きなスペース、及び、患者の内部及び外部での広い範囲の動きを要求する。
【0005】
さらに、器具が挿入されていないときに、患者に設置されたアクセスポートがバタバタ動く傾向を有することがあり、その結果、外科医が器具をアクセスポート内に挿入しようとするときに、アクセスポートの開口部が適切な場所にないことで、アクセスポートの再整列又は再配置を要する。改良のための他の領域は、器具が挿入される際及び取り除かれる際にシールが裂けること又は重なり合うことを防ぐ、シールを固定する構成を含む。本発明は、このような要求を満たす、新しい、改善されたトロカールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外科用アクセスデバイスを提供する。外科用アクセスデバイスは、近位端と遠位端との間に延びるルーメンを有する、細長い管状カニューレを含む。カニューレは、近位端で拡張ルーメンを形成する、カニューレの遠位端に対して半径方向外方に延びている側壁を有する。カニューレは、近位端で側壁を貫いて延びる開口部を含む。シールハウジングは、カニューレの近位端に連結されると共に近位端と同軸であり、且つ、側壁に対して密閉状態で移動可能に構成されている。インフレーションポートは、シールハウジングを貫いて延び且つ、インフレーションポート及び開口部をカニューレルーメンと流体連結するために、側壁の開口部と整合するように構成されている。シールアセンブリが、シールハウジング内に配置された少なくとも1つのシールを含む。シールハウジングは、開形態と閉形態との間で、側壁に対して移動可能である。開形態では、インフレーションポートは、側壁の開口部と整合し、それにより、インフレーションポート及び開口部をカニューレルーメンと流体連結する。閉形態では、インフレーションポートのルーメンは、側壁の開口部からオフセットされ、それにより、インフレーションポートを側壁の開口部から流体的に隔絶する。
【0007】
本発明の他の態様では、外科用アクセスデバイスが提供される。外科用アクセスデバイスは、近位端と遠位端との間に延びるルーメンを有する、細長い管状カニューレを含む。シールハウジングは、カニューレの近位端に連結される。シールアセンブリは、シールハウジング内に配置され、少なくとも1つのシールを含む。アクセスチャンネルは、シールアセンブリと、近位端から遠位端までのカニューレのルーメンとを貫いて延びる長手方向軸線に沿って構成される。デバイスは、近位端及び遠位端を有する弾性部材をさらに含む。弾性部材は、シールアセンブリとシールハウジングとの間に配置されている。
【0008】
本発明の他の態様では、方法が提供される。方法は、シールハウジングをカニューレに対して移動させるステップを含む。シールハウジングは、ほぼ円筒形であり、カニューレに移動可能に連結される。カニューレは、シールハウジングのルーメンと同軸である長手方向軸線に沿った中央ルーメンを構成する、ほぼ円筒形の側壁を有する。シールハウジングは、該シールハウジングがカニューレの側壁に対して移動できるように、カニューレの近位端で側壁に密閉状態で連結される。シールアセンブリは、少なくとも1つのシールを含み、近位端でシールハウジング内に配置されている。シールハウジングはインフレーションポートを含み、カニューレの側壁は開口部を含み、該開口部は、インフレーションポートと開口部との整合が、カニューレルーメン及びシールアセンブリのプレナム遠位部を、開口部を介してカニューレの外側とインフレーションポートを介してシールハウジングの外側とを流体連通させるように構成されている。シールハウジングは、開位置と閉位置との間で、カニューレに対して移動可能である。開位置では、開口部及びインフレーションポートは、少なくとも部分的な整合状態にある。閉位置では、開口部及びインフレーションポートは不整合にされ、シールハウジングとの流体連通を止める。方法は、シールハウジングのインフレーションポート及びカニューレの側壁の開口部を少なくとも部分的な整合にさせるステップをさらに含む。カニューレの側壁の開口部に対するシールハウジングのインフレーションポートの少なくとも部分的な整合の後に、流体を、圧力下で、カニューレのルーメンを通して移動させる。インフレーションポート及びカニューレの側壁の開口部は、開口部を通して側壁を横切る流体連通、及びインフレーションポートを通してシールハウジングを横切る流体連通を遮断するために、完全に不整合にされる。
【0009】
本発明の他の態様では、外科用アクセスデバイスが提供される。外科用アクセスデバイスは、近位端と遠位端との間に延びるルーメンを有する、細長い管状カニューレを含む。シールハウジングは、カニューレの近位端に連結される。シールハウジングは、カニューレのルーメンと同軸であるアクセスチャンネルを含む。シールハウジングは、内側壁に対して移動可能な、第1の開口部を有する外側壁を含み、内側壁は、第2の開口部を有する。少なくとも1つのシールが、シールハウジング内に配置される。第1及び第2の開口部は、カニューレルーメンをシールハウジングに流体連結するために、少なくとも一部分が整合するように構成され、且つ、整合から完全に移動するように構成されている。外側壁は、開形態と閉形態との間で、内側壁に対して移動可能である。開形態では、第1の開口部は、少なくとも一部分が第2の開口部と整合しており、それにより、カニューレルーメンをシールハウジングに流体連結する。閉形態では、第1の開口部は、第2の開口部からオフセットされ、それにより、シールハウジングとの流体連通を閉じる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ガス注入されていない状態での手術台に乗せられた外科患者の側面図である。
図2】腹部内に設置された複数のアクセスデバイスを含む、ガス注入された状態で手術台に乗せられた外科患者の側面図である。
図3】腹部内に設置された複数のアクセスデバイスを含む、ガス注入された外科患者の部分断面図である。
図4】体壁を貫通して第1の位置に設置された外科用アクセスポートの例の側面断面図である。
図5】体壁を貫通して第2の位置に設置された、図4に示した外科用アクセスポートの側面断面図である。
図6】アクセスポート内全体に延びている器具を含む、図4に示した外科用アクセスポートの側面断面図である。
図7】アクセスポート内全体に延びている器具を含む、本発明に係る外科用アクセスポートの側面断面図である。
図8】最も前方の状態での図4に示した外科用アクセスポートの例の側面図である。
図9】本発明に係る拡張された器具の範囲を示す、最も前方の状態での図7に示した外科用アクセスポートの例の側面図である。
図10】本発明に係る外科用アクセスポートの斜視図である。
図11】本発明に係る外科用アクセスポートの側面図である。
図12】本発明に係る外科用アクセスポートの正面図である。
図13】本発明に係る外科用アクセスポートの側面断面図である。
図14】本発明に係る外科用アクセスポートの底面図である。
図15】本発明に係る外科用アクセスポートの上面図である。
図16】本発明に係る外科用アクセスポートのカニューレ部分の上面斜視図である。
図17】本発明に係る外科用アクセスポートのカニューレ部分及びシールハウジング部分の分解上面斜視図である。
図18】本発明に係る外科用アクセスポートのカニューレ部分及びシールハウジング部分の他の分解上面斜視図である。
図19】本発明に係る外科用アクセスポートの分解側面図である。
図20】本発明に係る外科用アクセスポートの分解斜視図である。
図21】本発明に係る外科用アクセスポートの上面斜視図である。
図22】本発明に係る外科用アクセスポートの上面斜視図である。
図23】本発明に係る外科用アクセスポートの上面斜視図である。
図24】本発明に係る外科用アクセスポートの側面断面斜視図である。
図25】本発明に係る外科用アクセスポートの側面断面図である。
図26】本発明に係る外科用アクセスポートのシールハウジング及びテーパー状保持部材の底面斜視図である。
図27】本発明に係る外科用アクセスポートのテーパー状保持部材の底面斜視図である。
図28】本発明に係る外科用アクセスポートのシールハウジング及びテーパー状保持部材の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至3を特に参照すると、図1は、患者の腹部20の低侵襲手術に備えて、背臥位で手術台5上に乗せられた患者10の側面図である。図2では、患者10の腹部20は、腹壁15を膨張する注入ガスで膨らまされ、それにより、図3に部分断面図で示すように、妨げられない作業領域25を腹部20内に作る。適当な腹部の手術の例は、虫垂や、脾臓や、肝臓や、腎臓や、胃や、胆嚢や、腸管などの手術を含む。図2及び3に描かれているように、複数のアクセスポート40が、或る手術では、患者の腹壁15を貫通して設置されており、腹腔鏡器具100が、アクセスポート40の作業ルーメン42内に挿入されている。小さな作業ルーメン42にはめ込み、且つ非常に厚い腹壁15及び/又は非常に広い腹腔20を有する患者10にも順応する特殊な器具100が開発されてきた。
【0012】
全範囲の既存の腹腔鏡器具との互換性は、アクセスデバイス40の長さのため、しばしば妥協している。例えば、図3に示すように、短くて、低輪郭のアクセスポート150と比較して、長い及び/又は丈の高いシールハウジング41は、その中に挿入される或る器具100の手術範囲を制限する。さらに、腹壁15の外部から延びている、長い及び/又は丈の高いアクセスデバイス40は、倒れる傾向があり、及び/又は好適な場所にとどまらないといった傾向がある。さらに、不整合のアクセスポート40は、器具100をデバイス40の作業ルーメン42に導く前に、典型的には、外科医又は助手の追加の手によって位置決めされる又は安定化される。
【0013】
図4は、アクセスポート40が体壁15を貫いて置かれ、器具100が体腔20に到達している、側面図である。器具の手術する遠位部分45は、外科手術を行う意図した位置まで体腔20内へ延びている。或る場合には、厚い体壁15及び/又は大きく広がった体腔20は、或る器具100の到達及び/又は妨げのない使用を妨害する又は悪化させる。図5に示されているように、シールハウジング41の遠位端が腹壁の入口箇所16に当接するようにアクセスポート40を体壁15の方に移動させることは、アクセスポート40の移動性を危うくする。その結果、図5に示す状態で、そのようなアクセスポート40の作業ルーメン42内に挿入された器具100は、所望運動範囲を有しないことがある。図6及び8は、丈の高いシールハウジング41を有する典型的なアクセスポート40内に挿入された器具100の側面図である。図7及び9は、器具100が挿入された、短く、低輪郭のシールハウジングを有するアクセスポート150の例の側面図である。それらの図に示すように、図7及び9に描かれた低輪郭のアクセスポート150は、より大きな露出にて示されるように、器具100のための大きな機能範囲を提供し、それ故に、図6及び8に描かれた典型的なアクセスポート40と比較して、遠位端44での移動性、並びに器具100の近位端での移動性を提供する。
【0014】
図6及び7の両方を参照すると、カニューレ部分46の遠位端47は、カニューレ部分46を含む図6及び7の各々において、患者の内側でほぼ同じ深さであり、カニューレ部分46はほぼ同じ長さである。近位端48では、カニューレは、入口箇所16から同じ高さに延びている。しかしながら、器具の移動性が短縮される、図6に描かれた丈の高いシールハウジング41を有するアクセスポートと比較すると、アクセスポート150の低輪郭のおかげで、図7でわかるように、遠位端に同じ移動性を維持しながら、器具100が近位端で操作される余地がもっとある。図7では、器具100を、遠位方向にさらに移動させることができ、これに対して、図6の器具は、アクセスデバイスも遠位方向にさらに移動させないで遠位方向に移動させることはできず、それによって、器具100がシールハウジング41の近位端に当接するために遠位方向の移動性に影響を及ぼす。この制限された移動性は、採用され得るタイプの器具、特に、図示したように複雑な関節式の遠位端44を有する器具、又は近位端で操作されるべき大きな空間を要求する器具に、影響を及ぼす。
【0015】
図8及び9の両方を参照すると、低輪郭のシールハウジング150及び丈の高いシールハウジングが両方とも入口箇所16に当接して示されている。低輪郭のシールハウジング150は、図8の丈の高いシールハウジング41と比較すると、患者の内部のより深くに移動させるため、器具100のもっと大きい移動性を可能にする。もちろん、器具の遠位端44を、有利に、カニューレ部分46からもっと露出させる。
【0016】
これから図10乃至20を参照すると、本発明に係る低輪郭のシールハウジングを含むアクセスデバイス150の様々な図が提供されている。アクセスデバイス150が、近位端から遠位端まで延びる長手方向軸線を有する。シールハウジング200が、近位端に配置されている。カニューレ151が、シールハウジング200から遠位方向に延びている。器具アクセスチャンネルが、アクセスデバイス150の近位端から遠位端まで延び、図示した例の長手方向軸線と実質的に一致すると共に同軸である。カニューレ151及びシールハウジング200は、アクセスデバイス150が低輪郭及び/又は低い高さを有するように、寸法決めされ且つ構成される。また、アクセスデバイス150の或る例は、軽量及び簡易な構造のうちの少なくとも1つを示す。
【0017】
アクセスデバイス150の側面断面図である図13を特に参照すると、カニューレ151は、細長い部分158を有しており、細長い部分158は、体壁などの組織を貫通するように寸法決めされ且つ構成され、且つ、遠位端152から外に延びるようにルーメン153の中から挿入される閉塞具(図示せず)と合うようになっている。細長い部分158は、アクセスポート150が設計される器具の範囲に順応する大きさの内径を有する。カニューレ151は、遠位端152と、近位端157と、それらの間に延びており、且つ器具アクセスチャンネルが内部に延びるルーメン153と、を有する。図示した例では、遠位端152は、テーパーしており及び/又は傾斜しており、この遠位端152は、体壁を貫くアクセスデバイス150の設置を容易にする。カニューレ151の近位端157は、ルーメン153の断面積がカニューレ151の遠位部分よりも比較的大きい部分で広がっている。また、近位端157は、カニューレの近位端のベース部154内に形成された棚部で、シールハウジング200の遠位端に係合貫通ルーメン153は、カニューレの遠位端152から、近位端157のベース部154まで延びている。ルーメン153は、シールハウジング200内のオープンプレナム274と流体的に連結される。
【0018】
外科用アクセスデバイス150の或る例では、カニューレ151は、シールハウジング200に解放可能に連結されている。他の例では、カニューレ151は、シールハウジング200に解放可能に連結されない。例えば、或る例では、カニューレ151は、カニューレ151及びシールハウジング200が互いに連結された後、シールハウジング200から解放されるように設計されていない。或る例は、寸法範囲で複数のカニューレ151を有しており、それらの各々は共通のシールハウジング200に連結するような大きさである。例えば、或る例は複数のカニューレ151を有しており、それらの各々は異なる範囲の器具の直径、例えば、約5mmまで、約8mmまで、約11mmまで、約12mmまで、約15mmまでの範囲の器具の直径に適応する。或る例は、異なる作業長さのカニューレ151を有している。例えば、約55mm、約75mm、約100mm、約150mmの作業長さのカニューレ151を有している。互換性により、カニューレ部分151を殺菌して再利用する。
【0019】
図10乃至20をさらに参照すると、図示した例に係るシールハウジング200は、遠位端282と、近位端298と、中央部分284と、を具備する、ほぼ円筒形の本体201を有する。遠位端282は、カニューレの近位部分157と係合する。図20に示すように、シールハウジング200の中央部分284は、カニューレ151の同軸の近位円筒側壁136のまわりに、スライド可能に且つ回転可能に配置された円筒壁284から成る。図13及び17で最もよく分かるように、シールハウジング200の円筒壁284の遠位端282は、リッジ又は棚278に接触する。シールハウジング200の円筒壁284は、カニューレの近位円筒壁136に密閉可能に接触し、それにより、下記の説明から明らかになるように、円筒壁284と近位円筒壁136との間でのガスの流れを実質的に防ぐ。
【0020】
図17乃至20を特に参照すると、カニューレ151の近位のシールハウジング係合部分177は、大きな断面積を有する、カニューレ151の拡張部分である。この拡張部分177は、カニューレ151と一体に形成される、或いはカニューレ151に連結可能でもよい。近位のシールハウジング係合部分177は、円筒形であり、且つ、カニューレ151の拡張部分177を取り囲むシールハウジング200と同軸の仕方で、シールハウジング200と係合するように構成される。シールハウジング200は、拡張部分177上を滑動し、且つ、拡張部分177は、シールハウジング200に係合し、実質的に気密の構成を提供する。カニューレ151のシールハウジング係合部分177とシールハウジング200との間に配置されたOリング276は、戻り止め保持特性だけでなく、実質的に気密シールを提供する。シールハウジング200の遠位端282は、カニューレ151の凹部又はスロット278内に配置され、且つ、2つの構成要素の相対的な回転を可能とするように、凹部又はスロット278に連結するように構成される。例えば、凹部又はスロット278には、シールハウジング200に形成されたリップ(図示せず)とスナップ嵌めするアンダーカット(図示せず)が形成されている。図示した例では、Oリングは、カニューレの近位円筒壁136に配置された溝141内に捕捉される。また、Oリング276によって、カニューレ151を、シールハウジング200から手動で分離させることができる。シールハウジング200の円筒壁284は、円筒壁136と突起155、156との間の間隙142の中に、カニューレ151の近位円筒壁136のまわりに同心円状に配置される。突起155、156は、カニューレベース部154から半径方向外方に延び、且つ近位方向に延びている。
【0021】
アクセスデバイス150のそれぞれ分解側面図及び分解斜視図である、図19及び20で最もよく分かるように、複数のシール部材300及び320が、シールハウジング200の円筒壁284内に受け入れられ、且つ、シールハウジング200の円筒壁284の頂部を閉じるキャップ又は端部材270によって、円筒壁284の中に捕捉される又は閉じ込められる。図17、18、20に示すように、シールハウジング200は、該シールハウジング200の壁284から内方に延びる、リッジ又は棚279を有する。リッジ又は棚279の或る例は、シール部材300及び320に接触してこれらを固定する、けん引面及び/又は特性を有する。
【0022】
図示した例では、第1のシール部材320は、開口部322を有する、ほぼ円錐台形のエラストマー部材であり、開口部322は、挿入される器具のシャフトに合致し、且つ該シャフトまわりを密閉するように寸法決めされ且つ構成される。第1のシール部材320は、器具シールとも呼ばれる。第2のシール部材300は、器具が作業チャンネル又はルーメン153の中にないときに、アクセスポート150のルーメン153又はプレナム274を密閉するように寸法決めされ且つ構成された、エラストマーのチェックバルブ又はダックビルバルブから成る。第2のシール部材300は、ゼロシールとも呼ばれる。各シール部材320及び300は、それぞれ、半径方向延長部分321、301をさらに有し、半径方向延長部分321、301は、シール部材300及び320を、例えばアクセスポート150の作業チャンネル153の中に挿入された器具の動きに応答してこれに追従し、浮動及び/又は搖動させるように寸法決めされ且つ構成される。第1のシール部材320及び第2のシール部材300の1つ又はそれ以上の半径方向延長部分321、301は、キャップ270と棚279との間に捕捉され、シール300、320の垂下部分310、311はキャップ270及び棚279から搖動する。他の例は、異なる構成のシールを有する、例えば器具シール及びゼロシールの両方としての役割を果たすシングルシールを有する。そのようなシールの例は、ゲルシールである。
【0023】
図13、19及び21で最もよく分かるように、図示した例では、キャップ又は端部材270は、ほぼ平らな部材から成り、該部材は、シールハウジング200の近位部分に連結形式でスナップ嵌め及び/又は係合するように、且つ、関連したシール部材300及び320をアクセスポート150内の定位置で固定又は保持するように、寸法決めされ且つ構成される。キャップ又は端部材270は、シールハウジング係合部分272と、遠位方向に向いた面230と、近位方向に向いた面231と、中央ボア271を構成する、ほぼ円筒形の突起232と、を有する。中央ボア271は、外科用器具を通過させるように寸法決めされ且つ構成された貫通孔から成る。例えば、中央ボア271の或る例は、直径が約3.5ミリメートルから約16ミリメートルの器具に順応する。したがって、キャップ270の中央ボア271は、例えば少なくとも約16ミリメートルである。
【0024】
ガス供給源に連結するように寸法決めされ且つ構成された、連結ハブ又は取付部品203が、シールハウジングの中央部分284に配置される。図示した例では、ハブ203は、シールハウジング200から半径方向外方に延びている。他の例では、ハブ203は、例えば、長手方向に、接線方向に、或いは他の方向に延びている他の構成を有する。図10に示した例では、連結ハブ203は、標準的な雄型の連結部分205、例えば、ルアー継手及び貫通ルーメン204を有する。貫通ルーメン204は、後述するように、開形態にあるデバイスにて、貫通ルーメン204からのガスの流れの制限を低減する。
【0025】
図18で最もよく分かるように、シールハウジング200の遠位端282は、突起281を有しており、突起281は、カニューレのベース部154の凹部又はスロット278と対応し、凹部又はスロット278に嵌まる。組み立てられたアクセスポート150では、突起281は、凹部278に嵌り込み、凹部278は、突起281の角度幅よりも大きな角度幅を有し、それにより、シールハウジング200に、長手方向軸線を中心としてカニューレ151に対する回転角度を付与する。シールハウジング200は、第1位置と第2位置との間で回転可能である。第1位置又は開位置では、シールハウジングの中央部分284に配置されたインフレーションポート203の貫通ルーメン204は、カニューレの近位部分297で側壁136の側面の開口部又は穴206と整合し、それにより、インフレーションポート203をプレナム274と流体連結する。シールハウジング200を第2位置又は閉位置に回転させると、インフレーションポートのルーメン204は側開口部206からオフセットし、それにより、インフレーションポート203をプレナム274から流体的に隔絶する。その結果、第1位置と第2位置との間でのシールハウジング200の回転角度は、インフレーションポートのルーメン204及びカニューレの側壁の側開口部206によって範囲が定められた角度の大きさよりも大きい。シールハウジング200のインフレーションポート203及びカニューレの側壁の側開口部206は一緒になって流体バルブを構成し、流体バルブは、低輪郭を有するアクセスポートを作り出すシールハウジング200及びカニューレ151と一体化される。整合及び不整合のルーメン204及び開口部206の図示した構成は、嵩の大きい複雑なバルブ、栓などを排除すると共に、製造コストを低下させるだけでなく、短いシールハウジング、大きな動きの範囲及びアクセスポートの移動性を可能にする。
【0026】
図14乃至17に示すように、連結ハブ203は、別の部品をシールハウジング200と一緒に組み立てられるのではなく、アクセスポート150のシールハウジング200と一体に製造される。或る例では、カニューレ151及びシールハウジング200は、硬質プラスチックから成り、それにより、シールハウジング200の製造時に連結ハブ203を一体に成形することを容易にする。金属製のシールハウジング200から成る或る例では、連結ハブ203は、別個に製造され、引き続いてシールハウジング200に固定又は連結される。或る例では、連結ハブ203は調節可能である、例えば、シールハウジング200に対して旋回可能及び/又は回転可能である。
【0027】
当業者は、他の例が他の構成を有することを理解するであろう。例えば、或る例では、突起281は、カニューレ151に、凹部又はスロット278は、シールハウジング200に配置される。他の例は、突起155、156のような一対の止め具を有し、それらは、突起281と一緒に、シールハウジング200の回転を制限する。図18に示す例では、突起281は長手方向に延びている。或る例では、突起281は、半径方向内方に及び/又は外方に延びている。同様に、或る例では、側壁136は、シールハウジング200ではなく、カニューレ151の構成要素である。
【0028】
図示した例では、図16で最もよく分かるように、アクセスデバイス150は、第1の延長突起155及び第2の延長突起156を有し、それらの各々は、ベース部154に連結され、且つ、カニューレ151のベース部154から、その近位端に向かって、軸方向上方に延び、グリップ要素155、156とカニューレの円筒壁136との間の間隙142を形成する。シールハウジング200は、この間隙142内に挿入され、円筒壁136にぴったり合致し、且つ円筒壁136のまわりに回転するように構成される。アクセスデバイス150の上面図である図15で最もよく分かるように、それぞれの突起156、155の内方に向いた面143及び144は、組み立てられたシールハウジング200の円筒壁284から半径方向に離間されており、それにより、シールハウジング200がカニューレ151の長手方向軸線を中心に自由に回転することができる。突起155及び156は、後述するように、カニューレ151にけん引特性を提供するように寸法決めされ且つ構成される。例えば、ユーザの親指と人差し指とでつかむことにより、さもなければ突起155、156の一方及びインフレーションハブ203を一緒に圧する/押すことにより、突起155及び156の一方とインフレーションハブ203との間に、シールハウジング200の円筒壁284に対して接線方向の圧縮力又は力を付与することによって、シールハウジング200がカニューレ151に対して回転し、それにより、上述した開形態と閉形態との間で、アクセスデバイス150を切り替え、開口部206とインフレーションポートのルーメン204を整合させたりオフセットさせたりする。アクセスポート150のカニューレ151の側壁136の開口部206は、シールハウジング200のインフレーションポート203のルーメン204と整合するように調整される、及び/又は、シールハウジング200は、アクセスデバイス150を開形態に切り替えるときに、インフレーションポート203のルーメン204をカニューレ151の側開口部206と整合させるように調整される。整合されたルーメン204及び開口部206は、体腔のガス注入のためなどの、カニューレを介した流体の移動のために、インフレーションポート203に連結されるガス供給源を、カニューレ151の主ルーメン153と流体連結する。1つの例では、第2の突起は、カニューレと連結されないが、外方に延びるインフレーションポートによって形成され、且つシールハウジングと一致する。他の例では、第1及び第2の突起によって定められた角度は、それらの最大の分離度を成す90度未満である。また、他の例では、本発明は、インフレーションポートと開口部の整合を行う、シールハウジングとカニューレの相対回転に限定されない。例えば、シールハウジングがカニューレに対して上下にスライドして、シールハウジングのインフレーションポートを、流体をカニューレ及びシールハウジングを通してルーメン内に流させる開位置と、流体をカニューレ及びシールハウジングを通してルーメン内に流させない閉位置との間で、カニューレの開口部と整合させてもよい。もちろん、インフレーションポートと開口部の部分的な整合を行って、流体の流量を調整してもよい。
【0029】
図15に示す例は、しるし163及び164を有しており、これらは、一体のバルブの状態を指示し、及び/又は、バルブを開状態と閉状態との間で切り替えるときにユーザを手引きする。例えば、或る例では、しるしは、色コードされており、そのため、バルブの現在の状態、その結合又は流量を指示する。
【0030】
これから図21乃至23に移ると、カニューレ157の近位端のベース部154に連結された第1の突起155を示す、低輪郭のアクセスポート150の他の例が示されており、第1の突起155は、半径方向外方に突出し、且つ近位方向に延び、しかもカニューレ151の円筒壁136から離間されて、間隙14を形成する。上述したように、シールハウジング200は、円筒壁136と第1の突起155との間の間隙142内に保ち、且つ、先の例で述べたようなOリングなどのシールと一緒にリッジ又は棚と接触するカニューレとスナップ嵌めの嵌合を保つように、同軸の態様にてカニューレの円筒壁136をスライドする。第2の突起400が、シールハウジング200に形成される。第2の突起400は、シールハウジングの外面284から半径方向外方に延びている。図21中のしるし401で示されるように、側壁の開口部206は、連結ハブ用ルーメン203と整合しており、ハブ203のルーメンがシールハウジング200内のプレナムと流体連通し、且つガスがアクセスポートに流入する、第1の開位置をもたらす。一方の指を第1の突起155に、他方の指を第2の突起400に置いて、圧すること又は押すことによるような、第1の突起155と第2の突起400を共に押すことによって、シールハウジング200の円筒壁284に対して接線方向の圧縮力又は力を付与すると、シールハウジング200はカニューレ151に対して回転し、それにより、アクセルデバイス150を開形態から閉形態に切り替え、図23に示すように、突起155、400が互いに接近する。もちろん、再びバルブを開くために、力を加えて、突起155、400を離間させる。開口部402、403は、それぞれ、第1及び第2の突起155、400に形成され、且つ、開位置及び閉位置への突起のロボット制御及び操作に適している。図10乃至20に示す例とは対照的に、図21乃至23に示す例の第2の突起400は、連結ハブ203ではなく、シールハウジングに形成された別個の突起である。ハブ203との整合状態にある、しるし401で指示された開弁位置は、図21に示すように、第1の突起155と追加の第3の突起156との中間にある第2の突起400に対応してもよく、他の例では、ハブ203との整合状態にある、しるし401で指示された開弁位置は、図22に示すように、第3の突起156に隣接する第2の突起400と対応してもよい、若しくは、もちろん第1の突起155に隣接する第2の突起400と対応してもよい。どちらにしても、突起156、400を移動させて、シールハウジング200をカニューレ151に対して回転させて、図22に示すように力を付与してバルブを開き、これも他の例での閉位置に対応する。同様の力を付与して、突起400を他の2つの突起155、156の一方に対して移動させてもよい。もちろん、力を付与して、図22に示す位置から図21に示す位置まで、突起400、156を離間させる又は広げるようにしてもよい。
【0031】
他の例では、外科用アクセスデバイスは、開放近位端と開放遠位端との間に延びるルーメンを有する細長い管状カニューレを含む。シールハウジングが、カニューレの近位端に連結される。シールハウジングは、近位端に、アクセスチャンネルを含み、該アクセスチャンネルは、カニューレのルーメンと同軸になるように配置され、且つカニューレルーメンへのアクセスを提供する。シールハウジングは、内側壁に対して移動可能な第1の開口部を有する外側壁を含み、内側壁は、第2の開口部を有する。少なくとも1つのシールが、シールハウジング内に配置される。第1及び第2の開口部は、カニューレルーメンをシールハウジングを横切ってデバイス外部と流体連結するために、少なくとも一部が整合するように構成されている。第1の開口部の位置における外側壁の外面上のポートは、第1及び第2の開口部が少なくとも一部分が整合されるときに、流体をカニューレルーメンに及びカニューレルーメンから第1及び第2の開口部に沿って移送するために、圧力下の流体源に連結されるようになっている。流体連通の度合いは、第1及び第2の開口部の選択的な整合によって調整することができる。例えば、部分的な整合は、一致した大きさを有し、大きな流量を提供する、第1及び第2の開口部の完全な整合に比較して、低い流体流量を提供するであろう。外側壁は、開形態と閉形態との間で、内側壁に対して移動可能である。開形態では、第1の開口部は、少なくとも一部が第2の開口部と整合しており、それにより、カニューレルーメンをシールハウジングを横切って流体連結する。閉形態では、第1の開口部は、第2の開口部からオフセットされ、それにより、シールハウジングを横切る流体連通を閉じる。シールハウジングは、シールハウジング内に配置された少なくとも1つのシールよりも遠位のプレナムを含む。第1及び第2の開口部は、このプレナムとの流体連通のためにシールハウジングに沿って配置され、プレナムはカニューレルーメンと流体連通し、それにより、流体はシールハウジングを通してプレナム及びカニューレルーメンに流入する。シールハウジングの外側壁は、内側壁に対して、長手方向に移動でき、又は回転可能に移動できる。内側壁及び外側壁は、流体が、整合された第1及び第2の開口部を除いて第1の側壁と第2の側壁の間で漏れないように、例えばOリングシールによって密閉的に係合される。シールハウジングの頂部は、シールハウジングのアクセスチャンネルと同軸の開口部を含むキャップを含む。シールハウジングの内側に形成された内部レッジは、少なくとも1つのシールの半径方向外方に延びる部分を支持し、キャップは、その半径方向且つ外側に延びている部分をレッジとキャップとの間に捕捉する。少なくとも1つのシールは、シールハウジング内で自由に搖動する垂下部分を含み、バネが、シールの長手方向と横方向の両方の並進を付勢する。バネは、後述するようにテーパー状であるのがよい。
【0032】
図示した構成は、インフレーションポート203のための一体バルブを構成し、それにより、外付けバルブ又は栓を不要なものにし、したがって、シールハウジング200の半径方向寸法を縮小する。縮小された半径方向寸法は、例えば、大きな角度に傾けて、及び/又は、他の器具及び/又はアクセスデバイスに近付けて、アクセスデバイス150を位置決めするときに、大きな自由度を提供する。図示した例では、典型的に2つの手を用いる或る外付けバルブとは対照的に、一体バルブの開閉は片手の操作であり、そのため、ユーザは器具を操作している間にガスバルブを開開することができる。さらに、けん引特性により、ユーザは、ガスバルブを開いたり閉じたりしながら、例えば前進させたり、引き込めたり、回転させたり、傾けたりして、アクセスデバイス150を位置決めすることができる。
【0033】
当業者は、他の例において、シールハウジングが、カニューレの側壁のまわりではなく、カニューレの側壁の範囲内に配置され且つカニューレの側壁内で密閉状態で回転できることを理解するであろう。或る例では、連結ハブは、カニューレの側壁に配置され、側開口部は、シールハウジングに配置される。
【0034】
図24乃至28は、上述し、図10乃至23に示した例に似ている、アクセスデバイスの他の例を示す。図示した例は、シール部材300、320とカニューレ280とシールハウジング200との間に配置された、弾性支持部材350をさらに有する。図示した例では、弾性部材350は、シール部材300及び320のまわりに配置され、シール部材300及び320を取り囲む、テーパー状且つらせん状のつる巻きバネから成る。弾性部材350の小径の近位端355は、シール部材300及び320の近位部分305に接触し、且つ近位部分305を取り囲み、一方、大径の遠位端356は、カニューレベース床280の近位方向に向いた面271に接触し、且つ面271上に載っている。バネ350は、シールハウジング200内に設置されるときに、第1の端355と第2の端356との間で低圧縮荷重下に配置される。弾性部材350の近位端355は、シール部材300の半径方向延長部分301に当接し、一方で、半径方向延長部分301は、シール部材320の半径方向延長部分321に接触する。遠位端356は、カニューレベース床280の近位方向に向いた面271に当接する。使用中、器具が作業ルーメン内に挿入されたときに、器具とシールとの間の摩擦は、シールを器具と同じ方向に移動させ、且つ、半径方向延長部分301、321に沿った固定箇所付近で、又はシール300、320のどこでも、シール材料を伸長させ及び/又はシール材料をたわませる。弾性部材350について、狭い近位端355が、ルーメンの中へ遠位方向に垂下するシールの部分をぴったりと取り囲む。弾性部材350がシールハウジング内でわずかに圧縮されると、バネ付勢力が半径方向延長部分301、321に付与されて、挿入された器具から遠位方向に任意の力を付勢する。使用中、シール部材300及び320に器具を挿入すると、線形負荷がバネ350に付与され、それにより、バネ350を圧縮し、これは、それぞれのシール部材300、320の半径方向延長部分301、321の過剰な伸長を減じ又は防止する。また、器具を取り除くときに、つまり器具を近位方向に移動させるときに、シールと器具との間の摩擦は、器具と一緒にシールを近位方向に引っ張る傾向がある。弾性部材350の広い遠位端が、該遠位端でのシールの搖動を可能にするだけでなく、弾性部材350がルーメンの長手方向軸線に向う極端なたわみ又は揺動も付勢し、それにより、シールと器具との間の摩擦を低減する、又はシール材料の伸長及び潜在的な裂けを低減する。線形負荷が取り除かれた後、バネ350は、もとの低圧縮状態に戻り、それにより、シール部材300及び320が自由に搖動するようになる。当事者は、他の例において、弾性部材が、該技術で公知の他の構造、例えば、エラストマー要素、空気圧要素、水圧要素などを個々に又は組み合わせて、含むことを理解するであろう。
【0035】
例示的な例を参照して、特定の例を具体的に示して説明したが、次の特許請求の範囲によって定められる精神及び範囲から逸脱することなく、形式及び詳細の種々の変更がなされてもよいことが当業者によって理解されるだろう。
図1
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