(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の複合コード。
前記複合コードが正方形または長方形断面輪郭を有するようで、且つ前記ゴムシースが前記輪郭の3つの辺に沿って配置されているような、請求項1〜11のいずれか1項記載の複合コード。
クラウン補強材を含むクラウンとトレッドとを含む空気式タイヤであって、前記トレッドが、少なくとも1つの円周方向内部空洞内に、請求項1〜14のいずれか1項記載の複合コード(8)を含むことを特徴とする前記空気式タイヤ。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、大型車両用の空気式タイヤにおけるトレッドパターンは、直線形、ジグザク形または波形の
円周方向の溝を有しており、これらの溝は、横方向の溝および/または切込みによって連結することが可能である。これらの
円周方向の溝は、一般に、磨耗標識を含み、これらの標識は、これらの溝の底部を一定の
円周方向の長
さに亘って覆っている加硫ゴム混合物の小プラットフォームである;上記標識は、使用中のトレッド上に法的に残存しなければならない最低のパターン深を表示する。大型車両用のパターンは、再溝付け(新たな溝を再度くりぬくことができる作業)可能であり、そのようなパターンを有する空気式タイヤは、その側壁上に、表示“Regroovable (再溝付け可能)”または符号“U”を付している。再溝付けは、一方では大型車両空気式タイヤのグリップ力を延命し、他方では、タイヤ寿命(キロメートルで表す)を有意に(場合によって、15%〜30%)増大させることを可能にする;このことは、再トレッド形成の実施可能性を損なうことなく達成され、さらにまた、このことは、大型車両空気式タイヤの本質的な特徴でもある。
【0003】
それ自体知られている通り、溝の再溝付けは、多くの場合作業者によって取扱われる円形の加熱ブレードを使用して実施し得る。このブレードは、トレッド表面上に支持されているフレームに連結して、手作業によって、トレッド表面上の溝の線を直線に従ってない溝の場合でさえも信頼性高く追跡するように使用し得る。しかしながら、この再溝付け作業は、多くの予防措置を必要とする。これらの予防措置のうちの第1は、再溝付け作業を、約2mmの溝深が残存しているときに実施することからなる;この深さは、トレッド表面と溝底部に置かれた磨耗標識の半径方向外側表面間で測定する。この予防措置は、パターンデザインを容易に可視化し、ひいてはパターンデザインを大きな困難もなく再現することを可能にする。残存パターン深および空気式タイヤの製造業者が推奨する再溝付け深さを知ることによって、再溝付け用ブレードの高さを調整し設定することが可能である。
【0004】
一般的に表示されている再溝付け深は、理論的深さである。これらの深さは、多くの場合、満足し得るもので、ブレード高を理論的に設定して、再溝付けした溝底部とクラウン補強材の半径方向上面間にほぼ一定厚のゴムを得ることができるものの、過度に深く再溝付けするリスクは無視し得ない。実際に、過度に強い再溝付けは、損傷を生じさせ得、経済的な再トレッド形成、即ち、トレッドのみを変換する再トレッド形成の可能性も危うくし得る。また、過度に強い再溝付けは、極端な場合、再溝付け後の新たな溝の底部において、半径方向の下に位置するクラウン補強材のパイルを露出させ得る;このことは、施行中の法制によって一般に許されない。
【0005】
クラウン補強材の半径方向外表面上において空気式タイヤの製造業者が設定した最小厚のゴムの存在に正確に従う再溝付けを実施することを可能にすると共に、タイヤ寿命(キロメートルで表す)をできる限り増大させることを可能にするために、特許US 6 003 576号は、少なくとも1枚のプライの補強用素材から形成されたクラウン補強材が半径方向上に存在するラジアルカーカス補強材と再溝付けし得る溝を設けたトレッドとを含む空気式タイヤにおいて、深さ標識を有する上記再溝付け可能な溝の半径方向下に位置するトレッド部分を設け、各標識が有効な再溝付けのために達すべき最小深さと越える状況にあってはならない最大深さとを表示する少なくとも1つの手段を含むことを推奨している。
【0006】
深さ標識は、好ましくは、上記溝の方向に平行して、該方向に垂直にまたはこれら平行および垂直の双方同時に溝底部に配置した小さいがゼロではない幅を有する切込みの形で設け、上記最小および最大深さを表示する上記手段は、その場合、深さ表示切込みを有する幾何学的底部形状である。
【0007】
トレッドの再溝付け技術および方法において莫大な進歩をもたらしているものの、上記再溝付け標識は、自動化および広範囲の機械化にもかかわらず、クラウン補強材のプライに極めて近い切抜き用ブレードの通過のリスクを排除していない;これらの標識は、深さ調整における人的存在を排除していない。さらにまた、上記再溝付けは、元の溝の半径方向下で実施され、新たなトレッド厚に応じて設計され、厚さが大いに低減され且つ最適パターンデザインが、必ずしも、標準のトレッド厚において構想されたデザインではないトレッドに応じていない。
【0008】
また、新品空気式タイヤのトレッド内に、このトレッドの内側に円周方向に配置した複数のコードを組込む対策もなされている(US 2 148 343号)。トレッドの磨耗がコードに達すると直ぐに、コードは、遠心力によって排出され、新たな溝がそのようにして形成される。
【0009】
文献EP 1 392 497 B1号は、中間層を内部に含み、その外壁が、子午断面において見られるように、形成すべき再溝付け溝の壁輪郭と同一の輪郭を部分的に有するところのトレッドを提供している。これらの中間層は、トレッドのゴム混合物とは非粘着性である特性を有している。これらの中間層は、空気式タイヤのブランクの成形中に、形成すべき再溝付け溝の材料とトレッドの残余物間にゴム混合物のブリッジを生成させるためのオリフィスを備えている。これらのゴムブリッジは、地面と接触するときのトレッドの磨耗による形成すべき再溝付け溝の材料の排出を阻止すると共に作業者がこれらのゴム混合物のブリッジを破壊することによって抜き出すことを可能にする。
しかしながら、このトレッドの製造方法は、特に、トレッドブランク内に、中間層を、次いで、再溝付け用コードに相応するゴム形状化要素を連続して配置することが必要であることから、長たらしくて、複雑で且つ費用高である。
【0010】
以下において、用語“コード”または“ストリング”は、本質的な接触断面を有し且つ他の如何なる寸法よりもはるかに大きい幅を有するゴム形状化要素を意味するものと理解されたい、また、用語“再溝付け用コード”は、製造中のタイヤのトレッドの内部空洞内に挿入し、次いで、稼動中のトレッドの磨耗後に、抜き出して
円周方向の再溝付け溝を形成することを意図するゴム形状化要素を意味するものと理解されたい。再溝付け用コードは、トレッド内に挿入後、連続円周環を形成する。この環は、必要に応じて、直線形、ジグザク形または波形であり得る。
【発明の概要】
【0011】
本発明の主題は、ゴムコアと該コアを少なくとも部分的に取囲んでいるゴムシースとを含み、上記コアと上記シースの配合が異なる複合コードであって、上記ゴムコアが、少なくとも、下記:
・ジエンエラストマー;および、
・30phrよりも多いAで示す充填剤(この充填剤の粒子は500nmよりも小さい(質量)平均径を有するナノ粒子である);
をベースとすることを特徴とし、さらに、上記ゴムシースが、少なくとも、下記:
・上記第1のものと同一または異なるジエンエラストマー;
・0〜30phr未満の、上記充填剤Aと同一または異なる充填剤A' (この充填剤の粒子は500nmよりも小さい質量平均径を有するナノ粒子である);および、
・70phrよりも多いBで示す充填剤(この充填剤の粒子は1μmよりも大きい質量メジアン(中央値)径を有する微小粒子である);
をベースとすることを特徴とする上記複合コードである。
【0012】
この複合コードは、空気式タイヤのトレッドの再溝付け用コードとして使用し得る。
上記ゴムシースは、上記複合コードが走行中に排出されないための上記複合コードの十分な機械的な固着を確保し且つこの複合コードのトレッド残余物に対しての何らかの相対運動を阻止することを可能にする;この運動は、摩擦作用、ひいては界面での熱放出の源である。
【0013】
また、上記ゴムシースは、上記コードが空気式タイヤのトレッドの磨耗によって目に見えるようになった時点で特定の工具なしで手作業によって取外すことができる、従って、上記複合再溝付け用コードの容易で且つ正確な引抜きを可能にすると共に特に亀裂に対してより耐性である上記ゴムコアを完全なままに保つという利点を有する。
【0014】
好ましくは、各ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0015】
好ましい局面によれば、充填剤Aまたは充填剤A'は、カーボンブラックを含む。
また、充填剤Aまたは充填剤A'は、カーボンブラックに加えてまたは代替物として、シリカのような無機充填剤も含み得る。
有利には、上記ゴムシース中の充填剤A'の量は、10phrよりも少なく、極めて好ましくは5phrよりも少ない。
【0016】
有利には、上記ゴムシース中の充填剤Bの量は、100phrよりも多く、極めて好ましくは200phrと600phrの間の量である。
有利には、充填剤Bは、1μmと200μmと間、極めて好ましくは5μmと100μmと間のメジアン粒径を有する。
充填剤Bは、好ましくは、チョーク、合成炭酸カルシウム、カオリンおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれ得る。
【0017】
本発明の1つの実施態様に従うコードは、その最大寸法が、あらゆる断面において、3mmと20mmの間、好ましくは5mmと15mmの間の寸法であるようなコードである。
これらのコード寸法は、上記コードをトレッドから取出した後、3mmと15mmの間の軸幅を有する溝または畝溝(furrow)を形成することを可能にし、空気式タイヤのパターンに、降雨地面上を走行する時の優れた排水能力を取り戻させる。
3mmよりも小さいと、コードの能力はもはや十分ではなく、また、15mmよりも大きいと、取入れられる利得はもはや実質的でない。
1つの実施態様によれば、上記ゴムシースの厚さは、0.3mmと1.5mmの間、好ましくは0.5mmと1.0mmの間の厚さである。
【0018】
好ましくは、上記ゴムコアと上記ゴムシースは加硫系をさらに含み、上記複合コードは加硫されていない。
上記加硫されていない複合コードを空気式タイヤブランクのトレッド空洞内に配置した後、上記空気式タイヤブランクの加硫操作中に、上記複合コードとトレッドの残余物との間にで相互拡散および共加硫による機械的結合が生じる。上記複合コードのトレッド残余物とのこの機械的結合は、上記再溝付け用コードの周りの連続且つ均質な全体物であるという利点を有する。
【0019】
もう1つの実施態様によれば、上記ゴムコアと上記ゴムシースは加硫系をさらに含み、上記複合コードは予備加硫されている。
用語“予備加硫”とは、上記複合コードを、空気式タイヤブランクのトレッド空洞内に組込む前に、1回目の加硫、即ち、上記複合コードに加硫していないゴム混合物の可塑状態特性を喪失せしめるには十分な架橋操作に供することを意味する。上記複合コードの加硫は、上記ゴムシースと上記空気式タイヤブランク内の隣接トレッドとの上記ブランクでの加硫操作中の相互拡散および共加硫による良好な機械的結合を可能にするには完全でない。
この予備加硫状態は、トレッド中の組込み、成形および上記空気式タイヤブランクの架橋の操作全部において、特に上記ゴムコアがブタジエンコポリマーを含む場合に、上記再溝付け用コードの形状を保持することを可能にする。
【0020】
好ましくは、上記ゴムシースは、上記コアの外表面の50%よりも多くを取囲んでいる。また、上記シースは、上記コアの全体を取囲んでいる。
【0021】
上記ゴムシースは、開円環(open torus)形状を有する。該シースは、その場合、1つのみの部分から作られているが、上記ゴムコアとトレッドの隣接材料との直接接触の領域を残すために、上記ゴムコアを完全には取囲んでいない。この接触領域は、軸方向に延びており、上記複合コードとトレッドの隣接混合物間の良好な機械的結合を促進し、従って、上記複合コードの機械的強度を、上記複合コードの引抜き前の空気式タイヤの使用全体に亘って増強している。
【0022】
例えば、上記複合コードは、正方形、長方形またはU字形断面輪郭を有し得、上記ゴムシースは、正方形または長方形の3つの辺或いは上記U字の2本の分岐(分枝)および底に沿って配置し得る。
また、上記
複合コードは、実質的に円形断面輪郭を有し得る。
【0023】
もう1つの実施態様によれば、上記複合コードは、上記ゴムシースが2つの連結していない部分を含むようなコードである。従って、上記シースは、2つの部分にあり、上記ゴムコアとトレッドの隣接混合物との2つの直接接触領域を残す。この実施態様は、上記複合コードの機械的強度を、上記複合コードの引抜き前の空気式タイヤの使用全体に亘って増強している。
【0024】
上記複合コードが正方形もしくは長方形またはU字型の断面輪郭を有する場合、上記ゴムシースは、好ましくは、上記正方形または長方形の2つの相対辺に沿ってまたは上記U字の2本の分岐のみに沿って配置する。この態様は、上記コアとトレッド混合物の間の軸方向に延びている2つの直接接触領域を残す。
【0025】
上記複合コードの断面は、任意の形状、特に、実質的に円形であり得る。
また、上記ゴムシースは、軸方向断絶を有する。この断絶は、上記複合コードのトレッド隣接材料との機械的結合を局所的に増強する。
【0026】
本発明のもう1つの主題は、トレッドが上に存在するクラウン補強材を含むクラウンを有する空気式または非空気式タイヤであって、上記トレッドが、上記トレッドの少なくとも1つの
円周方向空洞内に、上記で説明したようなな複合コードを含むことを特徴とする上記空気式または非空気式タイヤである。
【0027】
本発明は、特に、バン類、“大型車両”(即ち、地下鉄、バス、重量物道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)、または農業用車両もしくは土木機器のような道路外車両)、或いは他の輸送または作業用車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図するタイヤに関する。また、本発明は、乗用車、SUV (スポーツ用多目的車)、二輪車(特に、オートバイ)、航空機等のタイヤにも該当する。
【0028】
本発明に従う複合コードは、空気式タイヤ、即ち、空気で膨張させるタイヤにおいて、さらにまた、非空気式タイヤ、即ち、耐荷重性が構造的に且つ非空気的に付与されるタイヤにおいて使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本説明においては、特に明確に断らない限り、パーセント(%)は、全て質量%である。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
用語“phr”は、エラストマー100質量部当りの質量部を意味するものと理解されたい。
【0031】
“ベースとする組成物”なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解されたい;これらベース構成成分のある種のものは、上記組成物の種々の製造段階において、特に、その製造および架橋または加硫中に、少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応するように意図する。
【0032】
使用する測定および試験法
充填剤の特性決定
d
wで示すナノ粒子の(質量)平均径は、通常、水または界面活性剤を含有する水溶液中の分析すべき充填剤の超音波解凝集による分散後に測定する。
【0033】
シリカのような無機充填剤においては、測定は、Brookhaven Instruments社から販売されている“XDC”(X線ディスク遠心分離) X線検出遠心分離沈降速度計を使用して、以下の手順に従って実施する。40mlの水中の分析すべき無機充填剤の3.2gのサンプルの懸濁液を、1500W超音波プローブ(Bioblock社から販売されている3/4インチ(19.05mm)Vibracellソニケーター)の60%出力(“出力制御”の最高位置の60%)において、8分間継続する作用によって調製する;音波処理後、15mlの上記懸濁液を、上記回転ディスク中に導入する;120分間の沈降後に、粒子の粒径の質量分布および質量平均径d
wを、上記XDC沈降速度計のソフトウェアによって算出する(d
w = Σ(n
i×d
i5) / Σ(n
i×d
i4) (n
iは、サイズまたは直径階級d
iを有する物体数である)。
【0034】
カーボンブラックにおいては、上記手順を、15%のエタノールと0.05%のノニオン界面活性剤を含む水溶液(容量%)によって実施した。測定は、DCPタイプの遠心分離光沈降速度計(Brookhaven Instruments社から販売されているディスク遠心分離光沈降速度計)を使用して実施する。10mgのカーボンブラックの懸濁液を、前以って、15%のエタノールと0.05%のノニオン界面活性剤を含む40mlの水溶液(容量%)中で、600W超音波プローブ(Bioblock社から販売されているVibracell 1/2インチ(12.7mm)ソニケーター)の60%出力(即ち、“勾配振幅”の最高位置の60%)において、10分間継続する作用によって調製する。音波処理中に、15mlの水(0.05%のノニオン界面活性剤を含む)と1mlのエタノールからなる勾配を、上記沈降速度計の回転ディスク中に、8000回転/分で注入して“段階勾配”形成させる。その後、0.3mlの上記カーボンブラック懸濁液を、上記勾配の表面に注入する;120分間継続する沈降後に、粒径の質量分布および質量平均径d
wを、上述のようにして、上記沈降速度計のソフトウェアによって算出する。
【0035】
微小粒子(非補強用粒子)の粒径の測定に関しては、単純に、機械的篩分けによる粒径分析を使用し得る。その操作は、規定量のサンプル(例えば、200g)を、振動テーブル上で、種々の篩直径により(例えば、5μmから300μmまで徐々に変化する一連の10〜15メッシュサイズにより)、30分間篩分けすることからなる;各篩上で集めた超過サイズを精密天秤で秤量する;物質の総質量に対する各メッシュ直径における超過サイズの%を、その秤量から推定する;最後に、質量メジアン径(または見掛けメジアン直径)を粒径分布のヒストグラムから既知の方法で算出する。
【0036】
引張試験
これらの試験は、ゴム混合物の弾性応力および破断点諸特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46‐002に従って実施する。公称割線モジュラス(即ち、見掛け応力、MPaでの)を、10%伸び(M10と記す)において、2回目の伸びにおいて(即ち、その測定自体において使用する伸長速度での順応サイクル後に)測定する。公称応力(MPaでの)および破断点伸び(%でのEB)も測定する。これらの引張測定は、全て、フランス規格NF T 40‐101 (1979年12月)に従い、温度(23±2℃)および湿度測定(50±5%相対湿度)の標準条件下において実施する。
【0037】
発明を実施する条件
本発明の主題に従うゴム複合コードは、少なくとも1種のジエンエラストマーと30phrよりも多い充填剤A (この充填剤の粒子は500nmよりも小さい質量平均径を有するナノ粒子である)をベースとするゴムコアと、上記第1と同一または異なる少なくとも1種のジエンエラストマー、0〜30phr未満の充填剤A'および70phrよりも多い充填剤B (この充填剤の粒子は1μmよりも大きい質量メジアン径を有する微小粒子である)をベースとするゴムシースを含むという本質的特徴を有する。
【0038】
また、上記ゴム複合コードのコアは少なくとも1種のジエンエラストマーとナノ粒子からなる30phrよりも多い充填剤Aとを含み、上記ゴムシースは少なくとも1種のジエンエラストマー、0〜30phr未満の充填剤A'および70phrよりも多い充填剤Bを含むとも言うことができる。
【0039】
ジエンエラストマー
用語“ジエンエラストマー”または“ジエンゴム”は、知られている通り、ジエンモノマー(2個の共役型または非共役型炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0040】
上記ゴムコアおよび上記ゴムシースの各ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択する。
【0041】
特に適しているのは、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg (ガラス転移温度;ASTM D3418に従い測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマーである。
【0042】
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−20℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
【0043】
特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、SBR (エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)であるか、或いはSBR/BR、SBR/NR (またはSBR/IR)、またはBR/NR (またはBR/IR)、またはSBR/BR/NR (またはSBR/BR/IR)のブレンド(混合物)である。SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または例えば35質量%〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用し得る。
【0044】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(50phrよりも多くにおいて)、イソプレンエラストマーである。用語“イソプレンエラストマー”とは、知られている通り、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム;IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)が挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは90%よりも多い、さらにより好ましくは98%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0045】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記ゴムコアおよび/または上記ゴムシースは、−70℃と0℃の間のTgを示す1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーと−110℃と−80℃の間、より好ましくは−105℃と−90℃の間の1種以上の“低Tg”ジエンエラストマーとのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、S‐SBR、E‐SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも高いシス‐1,4‐連鎖化物(enchainment)含有量(モル%)を示す)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。低Tgエラストマーは、好ましくは、少なくとも70%に等しい含有量(モル%)に従うブタジエン単位を含む;低Tgエラストマーは、好ましくは、90%よりも多いシス‐1,4‐連鎖化物含有量(モル%)を示すポリブタジエン(BR)からなる。
【0046】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴムコアおよび/または上記ゴムシースの組成物は、例えば、30〜100phr、特に50〜100phrの高Tgエラストマーを、0〜70phr、特に0〜50phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして含む;もう1つの例によれば、上記組成物は、100phrの全体において、溶液中またはエマルジョン中で調製した1種以上のSBRを含む。
【0047】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記コアおよび/または上記シースの組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いシス‐1,4‐連鎖化物含有量(モル%)を示すBR(低Tgエラストマーとして)と1種以上のS‐SBRまたはE‐SBR(高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含む。
【0048】
本発明に従って配合した組成物は、単独のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含み得、これらの単独または複数のジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと、実際にはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーとさえ組合せて使用することが可能である。
【0049】
上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し得或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基、または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、アミン基を担持するアルコキシシラン基(例えば、US 2005/0203251号、JP 2001158834号、JP 2005232367号、EP 1 457 501 A1号またはWO 09/133068号)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0050】
上記ジエンエラストマーが天然ゴムである場合、天然ゴムは、その生産地において直接、或いは、その後、ゴム組成物の調製前または調製中に、物理的または化学的変性または処理に供し得ている。これらの操作は、当業者にとって周知であり、例えば、酵素処理または特定の化合物の添加による化学変性からなる。
【0051】
充填剤A
本発明の主題に従う複合コードは、一方では30phrよりも多い補強用充填剤Aを含むゴムコアと、他方では0〜30phr未満の補強用充填剤A'を含むゴムシースとを含むという本質的な特徴を有する。
【0052】
タイヤトレッドの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0053】
全てのカーボンブラック、特に、タイヤのトレッドにおいて通常使用するブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。後者のうちでは、さらに詳細には、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN722)も挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0054】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号およびWO‐A‐2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤を挙げることができる。
【0055】
用語“補強用無機充填剤”は、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して、“白色”充填剤、“透明”充填剤として、実際には“非黒色”充填剤としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る、任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来(天然または合成)の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0056】
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、球体または任意の他の適切な高密度化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、用語“補強用無機充填剤”は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0057】
補強用無機充填剤として特に適しているのは、シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al
2O
3)である。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET比表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0058】
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m
2/gと400m
2/gの間、より好ましくは60m
2/gと300m
2/gの間のBET比表面積を有する。
好ましくは、上記ゴムコアにおいては、補強用充填剤A (カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の総含有量は、30phrよりも多く、より好ましくは40phrと100phrの間の量である;この含有量は、上記複合コードのゴムコアに、低ヒステリシスを保持しながら、良好な耐クラッキング性を付与することを可能にする。
【0059】
好ましくは、上記ゴムシースにおいては、補強用充填剤A'の総含有量は10phrよりも低く、より好ましくは2phrと5phrの間の量である。この含有量は、上記ゴムシースに、有意な引張強度を付与することなく、生状態での良好な挙動を付与することを可能にする。
好ましくは、上記ナノ粒子の(質量)平均径は、20nmと200nmの間、より好ましくは20nmと150nmの間である。
【0060】
知られている通り、補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
【0061】
特に、例えば出願 WO03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称するシランポリスルフィドを使用する。
【0062】
特に適するのは、以下の定義に限定されることなく、下記の一般式(I)に相応する“対称形”として知られるシランポリスルフィドである:
(I) Z ‐ A ‐ S
x ‐ A ‐ Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくは、C
1〜C
18アルキレン基またはC
6〜C
12アリーレン基、特にC
1〜C
10、特にC
1〜C
4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】
(式中、R
1基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C
1〜C
18アルキル基、C
5〜C
18シクロアルキル基またはC
6〜C
18アリール基(好ましくはC
1〜C
6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC
1〜C
4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R
2基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C
1〜C
18アルコキシル基またはC
5〜C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1〜C
8アルコキシルおよびC
5〜C
8シクロアルコキシルから選ばれる基、さらにより好ましくはC
1〜C
4アルコキシルから選ばれる基、特にメトキシルおよびエトキシル)を示す)]。
【0063】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、TESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C
1〜C
4)アルコキシルジ(C
1〜C
4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0064】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式Iにおいて、R
2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
【0065】
本発明の主題に従うゴムコア組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは3phrと8phrの間の量である。
【0066】
当業者であれば、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、その表面上に、上記充填剤とエラストマー間の結合を形成させるためにカップリング剤の使用を必要とする官能部位、特にヒドロキシルを含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0067】
充填剤B
上記複合コードのゴムシースは、非補強用充填剤(充填剤Bで示す)として、70phrよりも多い、1μmよりも大きい(質量)平均径を有する微小粒子を含むという第2の本質的な特徴を有する。
【0068】
含有量および上記微小粒子の径の双方において上記最低値よりも低いと、目標とする技術的効果が得られない;その場合、過度に高い耐クラッキング性が上記複合コードのゴムシースにおいて観察されており、作業者は、再溝付け用コードを、その空洞から、特定の工具無しではもはや引抜くことができない。
【0069】
微小粒子の上記含有量は、好ましくは100phrよりも多く、より好ましくは200phrと600phrの間の量であり、そのメジアン径は、好ましくは1μmと200μmの間、特に5μmと100μmとの間である。含有量および上記微小粒子の径の双方において上記最高値よりも高いと、上記ゴムシースの稼動中不十分な固着のリスクが生じ、その場合、稼動中に、トレッドの空洞内での上記再溝付け用コードの良好な永続的で且つ均質な固着をもはや担保できない。
上記した全ての理由により、上記微小粒子の含有量は、さらに好ましくは、300phrと500phrの間の量であり、そのメジアン径は、さらに好ましくは、10μmと50μmの間の径である。
【0070】
充填剤Bとして使用し得る上記非補強用充填剤は、当業者にとって既知である;特に、下記のものが挙げられる:
・天然炭酸カルシウム(チョーク)、合成炭酸カルシウム、天然ケイ酸塩(カオリン、タルク、雲母)、粉砕シリカ、アルミナ類、ケイ酸塩またはアルミノケイ酸塩;
・ポリエステルアミド、澱粉、ポリ乳酸またはセルロース誘導体(例えば、酢酸セルロースまたはリグニン)のような生分解性化合物。
【0071】
さらに好ましくは、チョーク、合成炭酸カルシウム、カオリンおよびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる充填剤Bの微小粒子を使用する。
そのような好ましく商業的に入手可能な充填剤Bの例としては、例えば、品名“Omya BLS”としてOmya社から販売されているチョークおよび品名“Polwhite KL”としてImerys社から販売されているカオリンを挙げることができる。
【0072】
各種添加剤
また、上記ゴムコアおよび上記ゴムシースのゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用樹脂;例えば出願WO 02/10269号に記載されているような、メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウもしくはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドをベースとする架橋系;加硫促進剤または加硫活性化剤のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
顔料の添加は、磨耗レベルが上記再溝付け用コードに達する時点を明確に指標する利点を有する。
【0073】
また、上記ゴムコアは、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、無機充填剤用の被覆剤、或いは、より一般的には、知られている通り、ゴムマトリックス中での無機充填剤の分散性を改良し組成物の粘度を低下させることによって、生状態における組成物の加工の容易性を改良することのできる加工助剤も含み得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;第一級、第二級または第三級アミン;または、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0074】
また、上記ゴムコアは、好ましい非芳香族系または極めて僅かに芳香族系の可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィンオイル、MESオイル、TDAEオイル、エステル可塑剤(例えば、トリオレイン酸グリセリン)、例えば出願WO 2005/087859号、WO 2006/061064号およびWO 2007/017060号に記載されているような、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す炭化水素樹脂、およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物も含み得る。そのような好ましい可塑剤の全体的含有量は、好ましくは10phrと100phrの間、より好ましくは20phrと80phrの間の量、特に10〜50phrの範囲内である。
【0075】
上記可塑化用炭化水素樹脂(“樹脂”なる呼称は、定義によれば、固体化合物について使用されることを思い起すべきである)のうちでは、α‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテン、ポリリモネン;或いは、C
5留分ホモまたはコポリマー樹脂、例えば、C
5留分/スチレンコポリマー樹脂またはC
5留分/C
9留分コポリマー樹脂が挙げられる;これらは、単独で、或いは、例えば、MESまたはTDAEオイルのような可塑化用オイルと組合せて使用し得る。
【0076】
添付図面は、組込んだ再溝付け用コードを含むトレッドの製造用機器、さらにまた、そのようなトレッドを例示している。
【実施例】
【0077】
本発明の実施例
複合コードの製造
上記ゴムコアおよび上記ゴムシースの組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階)、並びに、その後の典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度に下げて機械加工する第2段階(“生産”段階)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋系を混入する。
【0078】
上記ゴムコアおよび/または上記ゴムシースの組成物の製造方法は、例えば、少なくとも下記の段階を含む:
・ジエンエラストマー中に、第1段階(“非生産”段階)において、1種以上の充填剤を混入し、全てを、1回以上、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階;
・混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
・その後、第2段階(“生産”段階)において、架橋系を混入する段階;
・全てを110℃よりも低い最高温度まで混練する段階;
【0079】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的段階において実施し、その間に、最初の工程において、全ての必須ベース成分(ジエンエラストマー、充填剤および必要な場合のカップリング剤、可塑化系)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、例えば1〜2分間混練した後の第2の工程において、架橋系を除いた他の添加剤、必要に応じてのさらなる被覆剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間の時間である。
【0080】
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、低温(例えば、40℃と100℃の間の温度)に維持したオープンミルのような開放ミキサー内で混入する。その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0081】
架橋系は、好ましくは、イオウと促進剤とをベースとする加硫系である。イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“DCBS”と略記する)、N‐(tert‐ブチル)‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N‐(tert‐ブチル)‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物を使用し得る。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0082】
この加硫系に、各種既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等を添加し、上記第1非生産段階中および/または上記生産段階中に混入する。イオウ含有量は、例えば、0.5phrと3.0phrの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0083】
上記ゴムコアおよび上記ゴムシースの最終組成物は、その後、シートまたはプラークの形にカレンダー加工することができる。これらの中間製品は、その後、1回以上の操作で押出加工して、好ましくは1回の操作で同時押出加工して、空気式タイヤトレッドの空洞内での組込みに適する上記複合コードの最終形状を付与する。その後、複合コードは、スプールの周りに巻取り得る。
上記複合コードは、二輪、乗用または産業タイプの車両のような自動車の空気式タイヤの任意のトレッド内部空洞内に配置するのに使用し得る。
【0084】
図16は、円形断面を有する第1の実施態様のコード80の断面図である。この複合コードは、実質的に円形の断面を有するコア83およびシース84を含む。シース84は、コア83を完全に取囲んでいる。コア83の直径は3〜10mm程度であり、シース84の厚さは0.3と1.5mmの間、好ましくは0.5mmと1.0mmの間の厚さである。
【0085】
図17は、実質的に円形の断面を有する第2の実施態様の複合コード81を示す。この実施態様においては、シース85は、1つの部分からなり、コア83を完全には取囲んでなくてコア83の円周の領域87を空いたまま残している。領域87は、複合コード81の長さの全体または1部に亘って軸方向に延びている。従って、この複合コードのトレッド空洞内への挿入後、この部分87は、トレッドの隣接混合物と直接接触し、この混合物に、相互拡散および共加硫によって強力に結合し得る。これによって、上記複合コードと稼動中のトレッドの混合物との結合の耐久性は増強される。
【0086】
図18は、実質的に円形の断面を有する複合コード82を示す。この複合コード82のシース86は、コア83を完全には取囲んでなく、2つの領域87および88を空のまま残している2つの部分からなっている。2つの領域87および88は、複合コード82の全体または1部に亘って軸方向に延びている。複合コード81の場合におけるように、上記2つの空き領域は、上記複合コードとトレッド混合物間の結合の稼動中の耐久性を増強する。上記2つの領域87および88は、好ましくは、軸方向に相対している。
【0087】
図19は、断面がU字形であるもう1つの実施態様の複合コード90を示している。この複合コード90は、実質的にU字形の断面を含むコア93とシース94とを含む。シース94は、コア
93を完全に取囲んでいる。上記U字の2本の分岐の高さは5〜12mm程度であり、上記U字の2本の分岐頂部間の距離は5〜12mm程度である。シース94の厚さは、0.3〜1.5mm程度、好ましくは0.5mmと1.0mmの間の厚さである。
【0088】
図20は、実質的にU字形の断面を有する第2の実施態様の複合コード91を示す。この実施態様においては、シース95は、1つの部分からなり、コア93を完全には取囲んでなくてコア93の円周の領域97を空いたまま残している。シース95は、U字の両分岐およびU字の底に亘って延びている。領域97は、複合コード91の長さの全体または1部に亘って軸方向に延びている。部分97は、上記複合コードと稼動中のトレッド混合物との結合の耐久性を増強することを可能にする。この無シース部分
97は、好ましくは、トレッドの空洞内で半径方向最外側の形で配置する。
【0089】
図21は、実質的にU字形の断面を含む複合コード92を示す。この複合コード92のシース96は、コア93を完全には取囲んでなく、2つの領域97および98を空のまま残している2つの部分からなっている。シース96の上記2つの部分は、この場合、U字の2本の分岐に沿って延びている。上記2つの領域97および98は、複合コード92の全体または1部に亘って軸方向に延びている。複合コード91の場合におけるように、上記2つの空き領域は、上記複合コードとトレッド混合物間の結合の稼動中の耐久性を増強する。上記2つの領域97および98は、軸方向に相対している。
【0090】
図22は、複合コード100を側面図において示している。この複合コードは、例えば実質的に円形断面のコア83と、さらにまた、ゴムシース101とを含む。シース101は、複合コード100の長さ全体に亘って軸方向に延びてはなくて、折々に遮断されてコア83の表面において空き領域102を残している。これらの領域102は、上記コアと空気式タイヤのトレッドの隣接混合物との直接の接触を可能にしている。複合コード100の例においては、領域102は、コア83の周りを1周している。
【0091】
勿論、空き領域87、88、97、98および102の任意の軸方向または円形的組合せは可能である。また、他の横断面形のコードも可能である。
【0092】
複合コードを含むトレッドの製造
それ自体既知の第1の実施態様によれば、1つ以上の空洞に組込んだ複合コードを含むトレッドは、同時押出によって製造する。従って、コードおよびこれらのコードを埋込んだトレッドは、一緒に押出される。
【0093】
第2の実施態様によれば、下記を実施する:
・ゴムトレッドを押出成形する;
・少なくとも1本の畝溝をトレッド内に形成する;
・少なくとも1本の複合コードをスプールから供給する;そして、
・複合コードを上記または各畝溝内に挿入する。
【0094】
上記複合コードを、上記で示したようにして、ゴムトレッドの形成前に、ゴムトレッドとは別に製造する。その後は、複合コードを畝溝内に配置し、畝溝を閉鎖するに十分である。コードは、その形成後、そのようにしてゴム内に埋め込まれる。この方法は、各製造群の開始時のプロセス安定化段階を省く可能性があるという事実による製造失敗からのスクラップ量を抑制する。
好ましくは、トレッドの各部分に関して、その部分を押出成形し、畝溝をその部分に同時に形成する。
【0095】
以下、適切な例における、車両の空気式タイヤグリーンブランクの製造用のトレッドを製造するのに使用する押出機である機器の実施態様を、
図1〜14に関連して説明する。
【0096】
図15において、上記ブランクの加硫後のこの製造操作から得られた空気式タイヤの断面の1部2を例示している;この断面は、空気式タイヤの回転軸3に対して放射面において採用している。トレッド4は、空気式タイヤの
外周において、タイヤ側壁間で且つタイヤ
外周内
部のタイヤカーカス5上に及んでいる。トレッド4は、空気式タイヤが地面と接触する表面を構成する外周面6を示している。この面は、円形断面の円筒状の一般的形状を有している。
トレッド4は、天然および合成エラストマーの混合物および各種成分および補助剤を通常含むゴムから形成された本体を含む。
【0097】
トレッド4は、適切な場合は数的に5本である複数本のコードまたはストリング8を有する;この本数は限定されない。コードは、各々、
図7、11および15における場合のような円形断面或いは
図8および12における場合のような正方形断面を有するワイヤー形状を有する。各コードは、本体内に埋込まれており、トレッドの2つの主外面および内面から一定距離延びている。各複合コードは、空気式タイヤと同軸の円を形成しており、軸3に垂直の面に延びている。各コードは、同一または異なる横プロフィールを有し得、また、同一または異なる材料からなり得る。各コードは、個々に、前以って、また、
トレッド4とは別に製造し、その後、スプール9(
図2参照)に巻取り、後で上記機器に持ち込まれる。
【0098】
押出機の鼻部10は、互いに平行に且つ対面して、互いに離れて配置した2枚の平面形の垂直直立体14を含むフレーム12を含む。上記鼻部の装置の大部分は、2枚の直立体14の間に設けられたスペース内に及んでいる。
【0099】
上記鼻部は、特に
図2の右側部分に示し、押出加工して本体を形成することを意図するゴムを導入するのに使用する導管16を含む。鼻部10は、導管16の下流口に配置し且つ円形断面の円筒状外周面23を示すシリンダーまたはロール18を含む。上記鼻部は、さらに、押出加工すべき材料を加圧するためのチャンバー25を面23と一緒に区切っているアーチ22を形成している部材20のアッセンブリを含み、上記チャンバー内には導管16が入り込んでいる。部材20はフレーム12に強固に取付けられ、一方、ロール18は、直立体14に対し、
図2ではロールの水平軸24の周りに逆時計方向に回転可動的に装着されている。鼻部10は、チャンバー25から下流に延び、上記ロールの面23と対面している形状化ブレード26を含む。上記ブレードの下流において、上記鼻部は、コードを前以って作り出していた畝溝内に装入するのに使用する小取付け用ホイール32有するアッセンブリ30を、さらにまた、上記畝溝をそのようにして配置したコード上で閉鎖するのに使用するスティッチング(stitching)アッセンブリ34を含む。
【0100】
図3および4に関しては、形状化ブレード26は、直立体14の一方から他方までの細長形を有しこれら直立体に強固に取り付けた本体28を含む。本体28は、空洞と突起を示す下面36を有して、その形状を、トレッドの上面6に、この面36と上記ロールの面23との間にゴムを通す結果によって付与することを意図する。従って、これらの2つの要素は、その形状を、材料の通過中に、トレッド4の面に付与する押出オリフィスを構成する。
【0101】
ブレード26は、すき先(ploughshare)40を担持する支持体38をさらに含み、このすき先の数は、トレッドが受入れを意図するコード8の本数に等しく、適切な例では、5個である。特に
図2において例示しているように、すき先40の各々は、“L”字一般形状を示し、“L”字の長い方の部分は、軸24に対して垂直方向に近く且つ半径方向に近い方向に伸びており、また、この方向に沿う摺動によって可動し得るように装着されている支持体38の専用オリフィスに挿入されている。
【0102】
ブレード26は、各すき先40のための、本体28に強固に取付ける手段を含み、この手段は、適切な場合、各すき先において、2個の取付けスクリュー42から形成されており、これらのスクリューは、上記支持体の1部を貫通し、すき先を上記支持体の内面に対して締め付けている。この配置は、すき先の本体28に対する上記方向に沿う位置を調整することを、ひいては、例えば製造する空気式タイヤのモデルに応じてトレッド4内に相応するすき先によって作り出される畝溝44の深さを調整することを可能にする。
【0103】
畝溝44自体は、ゴムトレッドを構成する押出成形材料中への各すき先40の“L”字の基部即ち小片の侵入によって作り出される。各畝溝は、各すき先の基部が、本体28の面36から、さらに詳細には、
図4に示しているように、この面の一定領域から突出していることによって作り出される。“L”字の小片は、上記すき先が上記押出ブレードの形状化部分の下で侵入するように配向させている。この特定の設定は、上記すき先の上流部分を、トレッド内の圧力がまだゼロでない領域に位置させること可能にし、すき先のトレッド材料への侵入を容易にしおよび成形の質を向上させることを可能にする。
【0104】
面36は、各すき先と直角に、各すき先を越えてすき先の各側面上に延びている空洞45を示す。これらの空洞は、各々、畝溝のいずれの側にも、面6の主部分から発出するゴムの余剰物を構成するそれぞれの突出ビード46を形成することを可能にしている。従って、各畝溝44は、各畝溝と連続している2つの関連ビード46の間で延びている。
【0105】
畝溝数は、適切な場合、5本に等しいので、10本のビードが存在する。畝溝44は、後記で理解し得るように、上記コードを受入、次いで、埋め込むことを意図する。また、
面36は、畝溝44とは対照的に、トレッド上および最終空気視器タイヤ上に明白に存続することを意図する、適切な場合数的に3本の畝溝50も形成するように形状化されている。上述した畝溝は、全て、互いに平行に、且つトレッド4の縱方向に伸びている。
【0106】
図6に示しているように、ブレード26は、適切な場合、材料をデバリングしてトレッドの2つの相対側端を定めるためのナイフを構成する2つの装置52をさらに含む。これらの装置は、互いに対面して、支持体38のいずれかの側に配置する。
上記押出機は、それぞれのコードを巻き取るスプール9を受入れる手段55を含む。これらの手段は、製造作業が進むにつれてスプールがほどけるのを可能にするように配置する。
【0107】
スティッチングアッセンブリ30(
図6、9および10参照)は、適切な場合、コード数と数的に等しい、即ち、数的に5つの小ホイール32を含む。これらの小ホイールは、互いに同一であって、水平軸56の周りに互いに共軸的に取付けられている。これらの小ホイールは、ブレード26に面して延びており、上記コードをトレッドに挿入する前に、スプール9から来るコードの通路57がアッセンブリ30とブレード26の間を通るようになっている。この通過の間、上記コードは、それぞれの小ホイール32の円周辺端部に対して支持されている。従って、各小ホイールは、相応するコードを上記畝溝の底まで案内してその中にそのコードを置くように機能する;この目的の小ホイールは、相応する畝溝の内側に入り込んでいる。
【0108】
各小ホイール32は、上記フレームに取付けた共通の構台上に備え付ける;その垂直位置は、これらの
小ホイールを多少深く各畝溝内に入り込ませ、従って、相応する各コードを多かれ少なかれ各畝溝内に挿入するために調整可能である。適切な場合には、モーター付きドライブは、小ホイール32に対しては設けられない;これらの小ホイールは、トレッドおよびこのトレッドに挿入するコードの前進によってこれらの前進と同じ周辺速度で回転駆動させる。チューブのような、各コードがその軸に沿って横断する中間案内部材を設けて各コードをスプール9からアッセンブリ30まで案内することは可能である。
【0109】
図7は、開放畝溝44を有するトレッド4を例示しており、その底には複合コード8が置かれている。この図は、ほぼ4ミリメートルの直径を有する円形断面を有するコードに関する。
図8は、同様に、トレッド4の例を示しており、その畝溝44内には、平行六面体形、例えば、4mmの辺長を有する正方形の断面を示す複合コード8が置かれている。
【0110】
図2および11〜14に関しては、スティッチングアッセンブリ34は、スティッチング装置を含み、その数は、コードの本数に等しく、即ち、適切な場合、5本である。これらの装置60の1つを
図14に例示している。アッセンブリ34は、直立体14に強固に取付けられ、これら直立体の一方から他方に及んでいる支持体62を含む。装置60の各々は、形状化形を有し、支持体62の相応するメスオリフィス内に受入れると共に軸24に対する半径方向と同様なその縦方向に沿って上記支持体内で摺動により移動可能である支柱64を含む。アッセンブリ34は、各装置において、支持体62の壁を貫通して支柱64を上記支持体の内面に対して締め付け、従って、装置60を支持体62に対して選定した調整位置で強固に固定する締付け要素66を含む。
【0111】
各装置60は、上記支柱の下部末端において、2個の小歯状ホイール70を担持するアーム68を含む(これらのホイール70は、同一平面上にあるが交差しているそれぞれの回転軸72によって回転する形で上記アームに取付けられ、また、これらの小ホイールがトレッドの前進方向に対して上流側に向う開放形状を有するように配置されている)。これらの小ホイールは、当該畝溝に関連するそれぞれのビード46に対して支持されるように配置して、畝溝44を充たす目的のために、これらの突起を形成している材料を当該畝溝中のコード8上に落し込む。上記コードは、そのようにして、それぞれ
図7および8に相応する2つの例の
図11および12に示しているように、トレッド内に埋められ、覆われ、埋込まれる。
【0112】
上記トレッドの製造方法は、この機器により、以下の方法で実施する。ゴムを形成する材料は、上記鼻部に、導管16により矢印71に従って持ち込まれ、その後、チャンバー25に通り、そこで、ブレード26とロール18によって形成された押出オリフィスから押出される前に加圧される。特に、トレッドの上面6に上記形状を付与するこの操作中に、すき先40が、面6内に、縦方向畝溝44と、さらにまた、各畝溝のいずれの側にも位置する2本のビード46とを作り出す。これらのすき先は、チャンバー25内でゆきわたっている圧力と対比して圧力を下げている上記機器の領域の後方部分に存在する。
【0113】
コードを担持しているスプール9がコードをほどき、小ホイール32によって案内され且つ支持されているコードがこれらの小ホイールおよびブレード26を通って、トレッドの厚さ内のそれぞれの畝溝44の底部に挿入される。コードは、スプールからトレッドが前方へ駆動している作用下に解放される;この作用は、小ホイール32も駆動させる。スプールは、その動き中に、如何なる作動装置によっても遅延しない。
【0114】
トレッドを形成する材料は、この段階では、まだ高温であり軟質である。トレッドがスティッチングアッセンブリ34の下を通るとき、ホイール70がビード46の材料を相応する畝溝内に落し込み、そのようにして関連複合コードをトレッドの厚さ内に埋込む。畝溝は、そのようにして閉鎖され充たされる。
これらの操作は、当該トレッドの各面において連続して生じる。これらの操作は、トレッド全体において同時に生じ、トレッドは連続して製造される。
【0115】
試験
コードを製造し、空気式タイヤのトレッド中に、上述のようにして組込んだ。上記ゴムコアおよび上記ゴムシースの配合は、下記の表1に示している。量は、エラストマー100質量部当りの質量部(phr)として表している。
【0116】
【表1】
(1) 天然ゴム;
(2) 充填剤A:Rhodia社からのZeosil 1165MPシリカ、HDタイプ;
(3) カップリング剤:TESPT (Degussa社からのSi69);
(4) 充填剤B:チョーク、Omya社からのOmya BLS銘柄;
(5) 充填剤A':カーボンブラックN330 (ASTM級、Degussa社);
(6) TDAEオイル (Hansen & Rosenthal社からのVivatec 500):
(7) N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6‐PPD);
(8) 酸化亜鉛 (工業級;Umicore社);
(9) N‐(シクロヘキシル)‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS)。
【0117】
【表2】
【0118】
シースS1およびコアC1の各材料は、低歪み(10%)での匹敵し得る剛性並びにこれも匹敵し得る破断点伸びを示している。一方、シースS1の材料は、コアC1の材料の破壊応力よりも極めて著しく低い破壊応力を有する。再溝付け用コードを特定の工具なしで手作業によって引抜くことを可能にするのは、このことである。
【0119】
トレッドの円周空洞内に、上記組成物C1-S1に相応する、ほぼ0.8mmの厚さを有するシースを有する8mm程度の高さと幅を有する
図19のコード90とどうような形状を有する
U字形のコードを含む315/70 R 22.5サイズの大型車両用の空気式タイヤを製造した。上記シースは、上記コードのコアを完全に取囲んでいた。空洞をトレッド内に形成し、上記コードを、上記で説明した方法に従い、生形状のこれら空洞に装入した。上記コードは、半径方向最内部の形で位置するU字の底でもって、標準方式で再溝付けすることを意図する領域と同じトレッドレベルに配置した。
【0120】
また、同じ空気式タイヤは、トレッドの他の同様な空洞内に、本発明に従う複合コードのシースのゴム混合物と同様なゴム混合物のみからなるコードを含んでいた。
【0121】
これらの空気式タイヤを、先ずは最初に、高荷重および高ドリフト回転操作を直線高荷重回転操作と交互に行う、トレッド用の応力付与用回転ドラム上での試験に2000kmで供した。タイヤおよびそのトレッドは、良好に耐えていた。
【0122】
その後、上記空気式タイヤのトレッドをかんながけした、即ち、トレッドを機械加工して、その厚さを再溝付け用コードのシースが見えるまで減じた。引続き、空気式タイヤを、乾燥状態の進路上および一定厚の水で覆われた進路上での行動試験に供した。
【0123】
これらの試験は、90km/時の標準速度、その後の125km/時の制限速度においての乾燥状態のサーキット上での数十kmの走行操作からなっていた。その後、これらの空気式タイヤを、多くのカーブを含み水で覆われたサーキット上で試験して、水が空洞内でのコードの保持にひどく影響を与えてないかを確認した。
【0124】
これら試験の全てにおいて、本発明に従うゴムコードは、それら空洞内に定位置に残存していた。これらコードの固着性は、トレッドのかんながけ前および後のコードとトレッドの隣接材料間の如何なる相対運動をも阻止するに十分であった。コードは、その後、特定の工具なしで即座に手作業で取出すことができた。トレッド内にそのようにして作り出した溝は、適切であった。
【0125】
他方では、本発明に従う複合コードのシースの混合物と同様な混合物のみからなるゴムコードは、トレッドをかんながけした後に実施した試験に耐えなかった。大きさの変った断片が次第に剥がれ落ち、他は空洞内に捕捉されたままであった。
【0126】
従って、本発明に従う再溝付け用コードは、空気式タイヤの製造前後のその形状の良好な管理を可能にし、上記コードを抜出した後のパターンの適切な外観を修復し、そして、工業的実施の高い容易性を有するという利点を有する。