(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066461
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20170116BHJP
F23G 5/24 20060101ALI20170116BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20170116BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
F23G5/50 HZAB
F23G5/24 B
F23G5/44 F
F23L7/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-508664(P2015-508664)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2014058763
(87)【国際公開番号】WO2014157466
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-65820(P2013-65820)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聡
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 純也
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】脇元 一政
(72)【発明者】
【氏名】下村 昭夫
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−198635(JP,A)
【文献】
特開2000−028122(JP,A)
【文献】
特開平11−014025(JP,A)
【文献】
特開2010−065932(JP,A)
【文献】
特開2012−163260(JP,A)
【文献】
特開2011−064382(JP,A)
【文献】
特開2001−027411(JP,A)
【文献】
特開2006−242411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
F23G 5/24
F23G 5/50
F23K 5/00
F23L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス床を有して、廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉と、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気を吹き込む酸素富化空気供給装置と、上記羽口から炉内へ燃料ガスを吹き込む燃料ガス供給装置とを備える廃棄物ガス化溶融装置において、
燃料ガス供給装置は、コークス燃焼による熱量と燃料ガス燃焼による熱量の総和を一定とするように、コークスのみを燃焼する場合に比べてコークス供給量を低減することによるコークス燃焼熱量の減少量に対応した燃料ガス供給量で燃料ガスを供給するようになっており、
酸素富化空気供給装置は、空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製するようになっており、
酸素富化空気供給装置を制御する制御装置を有し、
制御装置は、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置から上記羽口へ供給する燃料ガス供給量に応じた酸素濃度とするように、上記酸素富化空気供給装置で混合する空気量と酸素量を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項2】
コークス床を有して、廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉と、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気を吹き込む酸素富化空気供給装置と、上記羽口から炉内へ燃料ガスを吹き込む燃料ガス供給装置とを備える廃棄物ガス化溶融装置において、
酸素富化空気供給装置は、空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製するようになっており、
酸素富化空気供給装置を制御する制御装置を有し、
制御装置は、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置から上記羽口へ供給する燃料ガス供給量に応じた酸素濃度とするとともに、酸素富化空気により供給する酸素量を一定とするように、上記酸素富化空気供給装置で混合する空気量と酸素量を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項3】
コークス床を有して、廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉と、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気を吹き込む酸素富化空気供給装置と、上記羽口から炉内へ燃料ガスを吹き込む燃料ガス供給装置とを備える廃棄物ガス化溶融装置において、
燃料ガス供給装置は、コークス燃焼による熱量と燃料ガス燃焼による熱量の総和を一定とするように、コークスのみを燃焼する場合に比べて低減したコークス供給量に対応した燃料ガス供給量で燃料ガスを供給するようになっており、
酸素富化空気供給装置は、空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製するようになっており、
酸素富化空気供給装置を制御する制御装置を有し、
制御装置は、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置から上記羽口へ供給する燃料ガス供給量に応じた酸素濃度とするとともに、酸素富化空気により供給する酸素量を一定とするように、上記酸素富化空気供給装置で混合する空気量と酸素量を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項4】
制御装置は、酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、次の(1)式で示す範囲に制御することとする請求項1に記載の廃棄物ガス化溶融装置。
0.343 X+26.3 ≦Y≦0.4 X+52 (1)
X:廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量(kg/t)
Y:酸素富化空気の酸素濃度(vol%)
【請求項5】
制御装置は、酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が1kg以上5kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を28vol%以上52vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が5kg以上10kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を30vol%以上54vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が10kg以上15kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を31vol%以上56vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が15kg以上20kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を33vol%以上58vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が20kg以上25kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を35vol%以上60vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が25kg以上30kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を37vol%以上62vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が30kg以上35kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を38vol%以上64vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が35kg以上40kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を40vol%以上66vol%未満とするように制御することとする請求項1に記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項6】
コークス床を有するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融する際に、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気を吹き込むとともに、上記羽口から炉内へ燃料ガスを吹き込む廃棄物ガス化溶融方法において、
コークス燃焼による熱量と燃料ガス燃焼による熱量の総和を一定とするように、コークスのみを燃焼する場合に比べてコークス供給量を低減することによるコークス燃焼熱量の減少量に対応した燃料ガス供給量で燃料ガスを供給し、
空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製し、酸素富化空気の酸素濃度を、上記羽口へ供給する燃料供給量に応じた酸素濃度とするように、混合する空気量と酸素量を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【請求項7】
コークス床を有するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融する際に、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気とともに、上記羽口から炉内へ燃料ガスを吹き込む廃棄物ガス化溶融方法において、
空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製し、酸素富化空気の酸素濃度を、上記羽口供給する燃料供給量に応じた酸素濃度とするとともに、酸素富化空気により供給する酸素量を一定とするように、混合する空気量と酸素量を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【請求項8】
コークス床を有するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融する際に、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気とともに、上記羽口から炉内へ燃料ガスを吹き込む廃棄物ガス化溶融方法において、
コークス燃焼による熱量と燃料ガス燃焼による熱量の総和を一定とするように、コークスのみを燃焼する場合に比べて低減したコークス供給量に対応した燃料ガス供給量で燃料ガスを供給し、
空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製し、酸素富化空気の酸素濃度を、上記羽口への燃料供給量に応じた酸素濃度とするとともに、酸素富化空気により供給する酸素量を一定とするように、混合する空気量と酸素量を制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【請求項9】
酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、次の(1)式で示す範囲に制御することとする請求項6に記載の廃棄物ガス化溶融方法。
0.343 X+26.3 ≦Y≦0.4 X+52 (1)
X:廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量(kg/t)
Y:酸素富化空気の酸素濃度(vol%)
【請求項10】
酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が1kg以上5kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を28vol%以上52vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が5kg以上10kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を30vol%以上54vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が10kg以上15kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を31vol%以上56vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が15kg以上20kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を33vol%以上58vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が20kg以上25kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を35vol%以上60vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が25kg以上30kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を37vol%以上62vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が30kg以上35kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を38vol%以上64vol%未満とし、
廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が35kg以上40kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を40vol%以上66vol%未満とするように制御することとする請求項6に記載の廃棄物ガス化溶融方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス床を有して、廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉を備え、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気と燃料ガスとを吹き込む廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、燃焼して、熱分解残渣を溶融しスラグにして排出する廃棄物溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、熱分解残渣を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような溶融処理方法には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉による方法がある。
【0004】
このシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉下部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス床上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに熱分解残渣を溶融してスラグにする処理を行なう炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の機能が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉下部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれでは酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。炉下部における高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、該主羽口に接続された送気管で酸素富化空気が炉内へ吹き込まれ、高温燃焼帯では投入されて堆積されたコークス床のコークスが燃焼して、熱分解残渣を溶融する溶融熱源となっている。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させると共に、廃棄物を熱分解及び部分酸化させる。また、フリーボード部には三段羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持する。
【0007】
このようにシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと残渣が生成される。炉下部では主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の熱分解残渣が溶融されスラグとメタルとして排出される。コークス床はコークス同士間に生ずる空隙で、主羽口からの酸素富化空気やコークス燃焼により発生した高温ガスを通ガスさせるとともに、溶融したスラグとメタルを通液させる高温火格子としても機能している。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出口より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されたガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス床が形成され、コークスが燃焼して熱分解残渣の溶融熱源となっているが、近年、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することが要望されている。
【0009】
そこで、コークスの一部の代替として天然ガス、プロパンガス、廃棄物ガス化溶融炉にて熱分解により発生する可燃ガス等の燃料ガスを利用することが検討され、例えば、特許文献2では、主羽口(送風羽口)から酸素富化空気とともに燃料ガスを吹き込むことが提案されている。
【0010】
特許文献2では、酸素富化空気を炉内へ送入する羽口の先端が炉内に進入してコークス床内にまで突入して位置するようにして該羽口が設けられている。燃料ガスはこの羽口に接続された送気管内へ供給されて、羽口先端から酸素富化空気とともにコークス床に吹き出され燃焼され、燃料ガスの燃焼熱がコークス床での溶融熱源の一部として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2001−090923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二酸化炭素排出量を削減するため、廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減するべく、特許文献2のようにコークスの一部の代替として燃料ガスを吹き込むとしても、次のような問題がある。天然ガス等の燃料ガスはその主成分がメタン等の炭化水素であり、炉下部に吹き込まれてCO、H
2に熱分解されるとともに燃焼する。炉下部での発熱量を見ると、この熱分解のために周囲から受ける熱量(分解熱)が大きいため、コークスと燃料ガスを燃焼するときの炉下部での発熱量は、燃料ガスの分解熱を周囲から受ける分だけ、コークスだけを燃焼するときの炉下部での発熱量に比べて低くなる。したがって、コークスの使用量を低減してその減少分の代替として燃料ガスを使用すると、コークスのみを燃焼する場合に比べて、炉下部での発熱量が低くなり、コークスの供給量を低減して燃料ガスの供給量を増加すればするほど炉下部での発熱量が小さくなる。その結果、炉下部の温度を十分に昇温できなくなり、熱分解残渣を十分に溶融できず、熱分解残渣の溶融物である溶融スラグの温度を十分に上昇できず、溶融スラグの粘性が高くなり流動性が低下し、溶融スラグの排出が不良となり、操業に支障が生じることがある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、コークスの一部の代替として燃料ガスを使用し、コークスと燃料ガスの併用により熱分解残渣の溶融熱源を得る際に、コークスの使用量を低減して燃料ガスの供給量を増加しても、炉下部の温度を十分に昇温でき、熱分解残渣を十分に溶融し、溶融スラグの温度を十分に上昇できる廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題は、本発明によると、廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関し次のように構成することで解決される。
【0015】
<廃棄物ガス化溶融装置>
本発明に係る廃棄物ガス化溶融装置は、コークス床を有して、廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉と、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気を吹き込む酸素富化空気供給装置と、燃料ガスを吹き込む燃料ガス供給装置とを備えることとする。
【0016】
かかる廃棄物ガス化溶融装置において、本発明では、酸素富化空気供給装置は、空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製するようになっており、酸素富化空気供給装置を制御する制御装置を有し、制御装置は、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置から上記羽口へ供給する燃料ガス供給量に応じた酸素富化空気の酸素濃度とするように上記酸素富化空気供給装置で混合する空気量と酸素量を制御することを特徴としている。
【0017】
本発明では、廃棄物ガス化溶融炉における熱分解残渣を溶融する熱源として使用するコークスの使用量を低減して、その減少分の代替として燃料ガスを使用する際に、制御装置が、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置から羽口へ供給する燃料ガス供給量に応じた酸素富化空気の酸素濃度とするように、上記酸素富化空気供給装置で混合する空気量と酸素量を制御する。
【0018】
コークスと燃料ガスを燃焼するときの炉下部での発熱量は、燃料ガスの分解熱を周囲から受ける分だけ、コークスだけを燃焼するときの炉下部での発熱量に比べて低くなる。そこで、燃料ガスとともに炉下部に吹き込む酸素富化空気の酸素濃度をコークスだけを燃焼する場合より高くして、すなわち、酸素富化空気中の窒素の比率を低くして、窒素の加熱に用いられる熱量を低く抑えて、炉下部での熱分解残渣の溶融や溶融スラグの昇温が好適に行われるように炉下部の温度を高く維持することとした。コークスの使用量を低減して燃料ガスの供給量を増加すればするほど、炉下部での発熱量が小さくなることに対応して、燃料ガス供給量を増加するときには酸素富化空気の酸素濃度を高くして窒素の比率を低くするように制御する。
【0019】
このように、燃料ガス供給量に応じて酸素富化空気の酸素濃度を制御して、燃料ガスとコークスの燃焼により炉下部で発生する熱量が、熱分解残渣を十分に溶融し、溶融スラグ温度を炉からの排出に適した温度にまで上昇させるのに十分な熱量となるようにする。この結果、コークスの一部の代替として燃料ガスを供給する際に、コークス使用量を少なくし燃料ガス使用量を多くしても、炉下部で発生する熱量がコークス単独使用の場合に比べて低下することなく、炉下部の温度を高く維持し、熱分解残渣の溶融と溶融物の排出を円滑に行うことができる。
【0020】
本発明において、制御装置は、酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、次の(1)式で示す範囲に制御することが好ましい。
0.343 X+26.3 ≦Y≦0.4 X+52 (1)
X:廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量(kg/t)
Y:酸素富化空気の酸素濃度(vol%)
【0021】
また、本発明において、制御装置は、酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が1kg以上5kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を28vol%以上52vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が5kg以上10kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を30vol%以上54vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が10kg以上15kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を31vol%以上56vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が15kg以上20kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を33vol%以上58vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が20kg以上25kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を35vol%以上60vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が25kg以上30kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を37vol%以上62vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が30kg以上35kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を38vol%以上64vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が35kg以上40kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を40vol%以上66vol%未満とするように制御することが好ましい。
【0022】
酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて制御する場合に、燃料ガス供給量と酸素富化空気の酸素濃度との対応関係を上記のようにして制御することにより、的確に、炉下部で発生する熱量を、熱分解残渣を十分に溶融し、溶融スラグ温度を炉からの排出に適した温度にまで上昇させるのに十分な熱量とすることができる。
【0023】
<廃棄物ガス化溶融方法>
本発明に係る廃棄物ガス化溶融方法は、コークス床を有するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融する際に、廃棄物ガス化溶融炉の炉下部に設けられた羽口から炉内へ、酸素富化空気とともに燃料ガスを吹き込むこととする。
【0024】
かかる廃棄物ガス化溶融方法において、本発明では、空気と酸素を混合して酸素富化空気を調製し、酸素富化空気の酸素濃度を、上記羽口へ供給する燃料供給量に応じた酸素富化空気の酸素濃度とするように、混合する空気量と酸素量を制御することを特徴としている。
【0025】
本発明において、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、次の(1)式で示す範囲に制御することが好ましい。
0.343 X+26.3 ≦Y≦0.4 X+52 (1)
X:廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量(kg/t)
Y:酸素富化空気の酸素濃度(vol%)
【0026】
本発明において、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が1kg以上5kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を28vol%以上52vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が5kg以上10kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を30vol%以上54vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が10kg以上15kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を31vol%以上56vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が15kg以上20kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を33vol%以上58vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が20kg以上25kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を35vol%以上60vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が25kg以上30kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を37vol%以上62vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が30kg以上35kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を38vol%以上64vol%未満とし、廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量が35kg以上40kg未満のとき、酸素富化空気の酸素濃度を40vol%以上66vol%未満とするように制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上のように、廃棄物ガス化溶融炉における熱分解残渣を溶融する熱源として使用するコークスの使用量を低減して、その減少分の代替として燃料ガスを使用する際に、制御装置が、酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置から羽口へ供給する燃料ガス供給量に応じた酸素富化空気の酸素濃度とするように、上記酸素富化空気供給装置で混合する空気量と酸素量を制御する。燃料ガス供給量に応じて酸素富化空気の酸素濃度を制御して、燃料ガスとコークスの燃焼により炉下部で発生する熱量が、熱分解残渣を十分に溶融し、溶融スラグ温度を炉からの排出に適した温度にまで上昇させるのに十分な熱量となるようにする。この結果、コークスの一部の代替として燃料ガスを供給する際に、コークス使用量を少なくし燃料ガス使用量を多くしても、炉下部での発熱量がコークス単独使用の場合に比べて低下することなく、炉下部の温度を高く維持し、熱分解残渣の溶融と溶融物の排出を円滑に行うことができる。また、燃料ガスをコークスの一部の代替として用いることが効率よくできるため、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態としての廃棄物ガス化溶融装置の概要構成を示す図である。
【
図2】燃料ガス供給量と酸素富化空気の酸素濃度との関係を示すグラフであって、炉下部の温度を適正な範囲に維持できる、燃料ガス供給量に対応する酸素富化空気の酸素濃度の適切な関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の炉下部へ酸素富化空気と燃料ガスとを混合した混合気体を吹き込む際に、燃料ガスの供給量に応じて酸素富化空気中の酸素濃度を調整することを特徴としているが、これらの特徴についての説明に先立ち、
図1にもとづき、このシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成を説明する。
【0030】
<シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成>
図1に示される本発明の一実施形態で採用されているシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉には、ガス化溶融炉1の炉上部に、処理対象物としての廃棄物、燃料としてのコークス、スラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0031】
廃棄物ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、コークス、生成するスラグの成分調整材として使用する石灰石をそれぞれ供給する供給装置(図示せず)が配設されており、この供給装置から供給された廃棄物、コークス、石灰石は搬送コンベア(図示せず)により搬送され炉上部の上記投入口2から炉内に投入される。
【0032】
ガス排出口3には二次燃焼室10が接続して設けられており、廃棄物を熱分解して生成した可燃性ガスを燃焼する。該二次燃焼室10には、二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11が設けられている。また、この二次燃焼室10には、該二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が隣接して設けられている。
【0033】
また、ボイラ12からの排ガスは、後流側に設けられた減温装置や集塵機、さらには排ガス処理装置(いずれも図示せず)を経て無害化された後に大気に放出されるようになっている。
【0034】
上記シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1は、該廃棄物ガス化溶融炉1の内部空間が縦方向で4つの領域に区分されていて、下方から、コークス充填層A、移動層B、ガス化層C、フリーボード部Dが形成される。炉下部には移動層Bとコークス充填層Aが形成される。かかる廃棄物ガス化溶融炉1では、上記移動層B、ガス化層Cのそれぞれで、羽口が設けられ酸素含有ガス等の炉内への吹込みが行われる。炉下部における移動層Bには主羽口5が設けられ、酸素富化空気と燃料ガスが炉下部に吹き込まれる。ガス化層Cには副羽口6が設けられ、空気が吹き込まれる。
【0035】
上述の主羽口5には、酸素富化空気と燃料ガスとの混合気体を炉内へ吹き込むための送気管(図示せず)が接続されており、該送気管には酸素富化空気供給装置14および燃料ガス供給装置15が接続されている。酸素富化空気供給装置14は、空気に酸素を混合して得られた酸素富化空気を上記送気管に供給し、燃料ガス供給装置15は、燃料ガスを上記送気管に供給するようになっている。上記送気管内では、酸素富化空気と燃料ガスとが混合されて混合気体が形成される。該送気管は、酸素富化空気と燃料ガスとを燃焼前に混合できる構成を有していればよく、例えば、単管、二重管、三重管等を用いることができる。
【0036】
また、本実施形態の廃棄物ガス化溶融装置には制御装置16が設けられており、該制御装置16は、酸素富化空気供給装置14で混合する酸素と空気の量を調整して酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置15から送気管に供給する燃料ガス供給量に応じて制御するようになっている。
【0037】
次に、制御装置16による酸素富化空気の酸素濃度の制御について説明する。まず、炉下部の温度を適正な範囲に維持できる、燃料ガス供給量に対応する酸素富化空気の酸素濃度の適切な関係を導き出した。廃棄物ガス化溶融炉の炉内全体でのコークス燃焼による熱量と燃料ガス燃焼による熱量の総和を一定とし、また、酸素富化空気により供給する酸素量を一定として、以下の検討を行った。コークス供給量を低減し、その低減に対応して燃料ガス供給量を多くするように条件を変えて、その際の炉下部の温度を計測して、炉下部の温度を適正な範囲に維持するために必要な酸素富化空気の酸素濃度を求める検討を行った。
【0038】
コークスと燃料ガスを燃焼するときの炉下部での発熱量は、燃料ガスの分解熱を周囲から受ける分だけ、コークスだけを燃焼するときの炉下部での発熱量に比べて低くなる。そこで、燃料ガスとともに炉下部に吹き込む酸素富化空気の酸素濃度をコークスだけを燃焼する場合より高くして、すなわち、酸素富化空気中の窒素の比率を低くして、窒素の加熱に用いられる熱量を低く抑えて、炉下部での熱分解残渣の溶融や溶融スラグの昇温が好適に行われるように炉下部の温度を適正な範囲に維持する。コークスの供給量を低減して燃料ガスの供給量を増加すればするほど、炉下部での発熱量が小さくなることに対応して、燃料ガス供給量を増加するときには酸素富化空気の酸素濃度を高くして窒素の比率を低くするように制御する。
【0039】
ここで、炉下部の温度の「適正な範囲」とは、炉下部にて熱分解残渣の十分な溶融および炉からの溶融スラグの円滑な排出を実現可能な温度範囲を意味している。炉下部の温度が適正な範囲にまで昇温されることにより、熱分解残渣が十分に溶融され、さらに、溶融スラグが十分に昇温され、好ましい流動性を有すこととなり、円滑に排出することができる。
【0040】
廃棄物ガス化溶融炉の炉内全体でのコークス燃焼による熱量と燃料ガス燃焼による熱量の総和を一定とし、コークス供給量を低減し、その低減に対応して燃料ガス供給量を多くする。また、酸素富化空気の供給により炉内へ供給する酸素量を所定量として一定とし、酸素富化空気供給装置14で混合する酸素と空気の量を調整して酸素富化空気の酸素濃度を調整する。例えば、混合する酸素量を増加し空気量を減少して、炉内へ供給する酸素量一定で酸素濃度を増加する。このように、酸素富化空気の供給により炉内へ供給する酸素量は所定量として一定とし、燃料ガス供給量に応じて、炉下部の温度を適正な範囲に維持するために必要な酸素富化空気の酸素濃度の適切な範囲を求めた。
【0041】
燃料ガスとして、天然ガスを用いて、上述の検討を行った。
図2は、上述の検討結果を示すグラフであり、燃料ガス供給量と酸素富化空気の酸素濃度との関係を示すグラフであって、炉下部の温度を適正な範囲に維持できる、燃料ガス供給量に対応する酸素富化空気の酸素濃度の適切な関係を示すグラフである。燃料ガスの供給量(廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量kg/t)を横軸、酸素富化空気の酸素濃度(vol%)を縦軸として示している。
図2のグラフでは、炉下部の温度を適正な範囲とすることができる、燃料ガス供給量に対応した酸素富化空気の酸素濃度の上限値および下限値が実線で示されている。以下、この上限値と下限値との間の範囲を「適正酸素濃度範囲」という。上限値は(1)式で、下限値は(2)式で示される。
Y= 0.4 X+52 (1)
Y= 0.343 X+26.3 (2)
X:廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量(kg/t)
Y:酸素富化空気の酸素濃度(vol%)
【0042】
酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて、(3)式で示す適正酸素濃度範囲に制御することが好ましい。
0.343 X+26.3 ≦Y≦0.4 X+52(3)
X:廃棄物1t当たりの燃料ガス供給量(kg/t)
Y:酸素富化空気の酸素濃度(vol%)
【0043】
燃料ガス供給量に対応した酸素富化空気の酸素濃度が、適正酸素濃度範囲より低いと、酸素富化空気の窒素の比率が高く窒素の加熱に用いられる熱量が多くなり、炉下部の温度を適正な範囲に昇温できず、適正酸素濃度範囲より高いと、コークスの燃焼が過剰に促進されコークスの消耗が早くコークス床を適切に維持できない不具合が生じる。
【0044】
図2にて、破線で示されるように、上記適正酸素濃度範囲を燃料ガス供給量5kg/t毎に区分して表にまとめると、以下の表1のようになる。
【表1】
【0045】
酸素富化空気供給装置が調製する酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給量に応じて制御する場合に、上記(3)式又は表1で示される燃料ガス供給量と酸素富化空気の適正酸素濃度範囲との対応関係のようにして制御することにより、的確に、炉下部で発生する熱量を、熱分解残渣を十分に溶融し、溶融スラグ温度を炉からの排出に適した温度にまで上昇させるのに十分な熱量とすることができる。
【0046】
本実施形態では、上記(3)式又は表1で示される燃料ガス供給量と酸素富化空気の適正酸素濃度範囲との対応関係(以下、「対応関係」という)は、制御装置16に予め記憶されている。燃料ガス供給装置15は、主羽口5へ供給している燃料ガス供給量のデータを連続的にあるいは定期的に制御装置16へ送る。制御装置16は、上記対応関係を参照することにより、燃料ガス供給装置15から得られた燃料ガス供給量と対応する酸素富化空気の適正酸素濃度範囲を特定する。そして、該制御装置16は、酸素富化空気供給装置14が主羽口5へ供給する酸素富化空気中の酸素濃度が上述の特定した適正酸素濃度範囲内に収まるように、酸素富化空気供給装置14で混合する酸素と空気の量を調整して酸素富化空気の酸素濃度を制御する。かくして、燃料ガス供給装置15から送気管に供給する燃料ガス供給量に応じて、酸素富化空気の酸素濃度を制御する。この際、酸素富化空気の供給により炉内へ供給する酸素量は所定量として一定とすることが好ましい。この混合する酸素と空気の量の調整は、例えば、酸素富化空気供給装置14の酸素供給系と空気供給系のバルブやダンパ(いずれも図示せず)の開度を調整することにより行われる。
【0047】
この酸素富化空気の酸素濃度の制御について、表1を参照しながら、具体的に説明する。例えば、燃料ガス供給量が13kg/tであれば、酸素富化空気の酸素濃度を31vol%以上56vol%未満とするように酸素濃度が制御され、その後、燃料ガス供給量が、例えば18kg/tに変動した場合には、酸素濃度を33vol%以上58vol%未満とするように酸素濃度が制御される。
【0048】
本実施形態では、既述したように、制御装置16が、酸素富化空気供給装置14で調製され炉内へ供給される酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガスの供給量に応じて適正な濃度となるように制御する。この制御により、炉下部での燃料ガスとコークスの燃焼による熱量が、熱分解残渣を十分に溶融し、さらに、溶融スラグ温度を炉からの排出に適した温度にまで上昇させるのに十分な熱量にすることができ、炉下部の温度が適正な範囲に維持される。この結果、コークスの一部の代替として燃料ガスを供給する際に、コークス供給量を少なくし燃料ガス供給量を多くしても、必要な熱量を得ることができ、熱分解残渣の溶融と溶融物の排出を円滑に行うことができる。また、燃料ガスをコークスの一部の代替として用い、燃焼熱を溶融熱源として用いることが効率よくできるため、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0049】
このように構成される本実施形態装置では、廃棄物のガス化溶融処理は次の要領で行われる。
【0050】
<廃棄物ガス化溶融炉でのガス化溶融方法>
供給装置からの廃棄物、コークス、石灰石が廃棄物ガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口2を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、主羽口5、副羽口6から、それぞれ混合気体又は空気が炉内へ吹き込まれる。特に、主羽口5からは、酸素富化空気供給装置14から供給される酸素富化空気と燃料ガス供給装置15から供給される燃料ガスとの混合により得られた混合気体が炉内へ吹き込まれる。ここで、上記酸素富化空気供給装置14で調製される酸素富化空気は、既述したように制御装置16が酸素濃度を制御することにより燃料ガス供給量に対応した適正な酸素濃度に調整されている。
【0051】
上記投入口2から投入された廃棄物は、炉内に堆積して廃棄物のガス化層Cを形成し、炉下部の移動層Bから上昇してくる高温の燃焼ガス及び副羽口6から吹き込まれる空気によって加熱され、乾燥され、次いで熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスを含む燃焼ガスは上昇し、可燃性ガスの一部がフリーボード部Dにて燃焼され、炉内部を所定温度に維持し、熱分解により発生した有害物とタール分を分解させる処理が施される。フリーボード部Dを通過したガスは炉上部に設けられたガス排出口3より、炉外の二次燃焼室10へ排出される。ガスは可燃性ガスを多量に含んでいて二次燃焼室10で空気送風口11から空気を吹き込まれ燃焼され、ボイラ12で燃焼ガスから熱回収され蒸気を発生させ、その蒸気が発電等に用いられる。ボイラ12から排出されたガスは、サイクロン(図示せず)で比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置(図示せず)で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機(図示せず)で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突(図示せず)から大気に放散される。
【0052】
ガス化層Cで廃棄物は熱分解されてガスが生成され、さらに、熱分解により生じた固定炭素や熱分解残渣(灰分)は、コークス及び石灰石とともに下降し移動層Bを形成する。移動層Bでは主羽口5から送風される酸素富化空気によりコークス、燃料ガスと廃棄物の固定炭素が燃焼され、この燃焼熱により廃棄物の灰分が溶融され溶融スラグと溶融メタルが生成される。石灰石は灰分が溶融されたスラグの性状を好ましいものとする調整材として働く。さらに、発生した高温の燃焼ガスが上昇し廃棄物の熱分解のために加熱する熱源となる。
【0053】
主羽口5から下方では、高温になりながらも燃え尽きていないコークスがコークス塊同士の間隙を保持して充填された状態でコークス充填層Aを形成しており、溶融スラグと溶融メタルはコークス塊同士の間隙を滴下し炉底に達する。溶融スラグと溶融メタルは炉底に達するまでに均質化され性状が安定化され、炉底に設けられた出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置(図示せず)に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。主羽口5から送風される酸素富化空気と、コークス、燃料ガスと固定炭素の燃焼により発生した高温の燃焼ガスとは、移動層Bからガス化層Cへ上昇して廃棄物を加熱し、ガス化層Cの廃棄物が副羽口6から供給される空気により部分酸化、熱分解される。移動層Bでは、コークス、燃料ガスが燃焼して灰分溶融と廃棄物熱分解の熱源となり、コークスが塊同士の間隙を保持して酸素富化空気と高温の燃焼ガスとを通気させ、溶融スラグと溶融メタルとを通液させる高温火格子の機能を有している。
【0054】
本実施形態では、制御装置16が、酸素富化空気供給装置14で調製され炉内へ供給される酸素富化空気の酸素濃度を、燃料ガス供給装置15から供給する燃料ガスの供給量に応じて適正な濃度となるように制御する。制御装置16は、酸素富化空気供給装置14が主羽口5へ供給する酸素富化空気中の酸素濃度が上述の特定した適正酸素濃度範囲内に収まるように、酸素富化空気供給装置14で混合する酸素と空気の量を調整して酸素富化空気の酸素濃度を制御する。かくして、燃料ガス供給装置15から送気管に供給する燃料ガス供給量に応じて、酸素富化空気の酸素濃度を制御する。この際、酸素富化空気の供給により炉内へ供給する酸素量は所定量として一定とすることが好ましい。この混合する酸素と空気の量を調整は、例えば、酸素富化空気供給装置14の酸素供給系と空気供給系のバルブやダンパ(いずれも図示せず)の開度を調整することにより行われる。
【0055】
この制御により、炉下部での燃料ガスとコークスの燃焼による熱量が、熱分解残渣を十分に溶融し、さらに、溶融スラグ温度を炉からの排出に適した温度にまで上昇させるのに十分な熱量にすることができ、炉下部の温度が適正な範囲に維持される。この結果、コークスの一部の代替として燃料ガスを供給する際に、コークス使用量を少なくし燃料ガス使用量を多くしても、必要な熱量を得ることができ、熱分解残渣の溶融と溶融物の排出を円滑に行うことができる。
【0056】
このように、燃料ガスをコークスの一部の代替として用い、燃焼熱を溶融熱源として用いることが効率よくできるため、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0057】
本実施形態では、主羽口5から混合気体のみを吹き込むこととしたが、これに代えて、二次燃焼室10やボイラ12から回収したダストを混合気体とともに吹き込むこととしてもよい。このように混合気体とともにダストをも吹き込んだ場合、該混合気体中のダストは主羽口5から移動層Bへ達すると、溶融して熱分解残渣の溶融物とともにコークス充填層を滴下し炉底部の出滓口4から溶融スラグとして抜き出される。このように、ダストを溶融処理することにより減容化して、ダストのまま埋立処分する場合に比べて埋立処分量を大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0058】
1 廃棄物ガス化溶融炉
5 主羽口
14 酸素富化空気供給装置
15 燃料ガス供給装置
16 制御装置