【文献】
Journal of Chemical Technology and Biotechnology、2007.発行、Vol.82、p.775−780
【文献】
FERRENTINO Justin M. et al.、Microalgal Oil Extraction and in−Situ Transesterification、AIChE Annual meeting 2006、2006.11.15発行
【文献】
Journal of the American Oil Chemists’ Society、1998.発行、Vol.75,No.12、p.1735−1740
【文献】
Antimicrobial Agents and Chemotherapy、1979.発行、Vol.16, No.4、p.486−490
【文献】
The Journal of General Physiology、1945.発行、Vol.28, No.4、p.297−327
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
石鹸を製造する方法であって、乾燥細胞重量で少なくとも5%の微細藻類脂質および500ppm以下の色素を含む微細藻類バイオマスを、塩基を含む水溶液と接触させることにより、該微細藻類バイオマスを鹸化して、脂肪酸塩を形成する工程を含み、ここで、該石鹸は、該脂肪酸塩を含み、該方法は、鹸化の前に該バイオマスから微生物脂質を抽出することなく行われ、該微細藻類バイオマスが、プロトテカ属の微細藻類細胞を含み、該微細藻類バイオマスの所望の量のグリセロ脂質および脂肪酸エステルを脂肪酸塩に変換するために、該鹸化反応において用いられる十分な量の塩基が加えられ、その結果、重量で少なくとも1%のグリセロ脂質および脂肪酸エステルが非鹸化で残留する、方法。
前記微細藻類バイオマスは、乾燥細胞重量で少なくとも10%の微細藻類脂質、0.01mg/kg未満のクロロフィル、またはその両方を含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
<I.定義>本明細書中で用いられるある種の用語の定義が、読者の便宜のために以下提供される。
【0065】
核酸に関して言及する場合、「微細藻類で活性がある」とは、微細藻類内で機能的である核酸を指す。例えば、トランスジェニック微細藻類に抗生物質耐性を与える抗生物質耐性遺伝子を作動させるのに用いられてきたプロモーターは、微細藻類で活性がある。微細藻類で活性があるプロモーターの例には、ある種の藻類種に内在性のプロモーター及び植物ウイルスに見られるプロモーターを含む。
【0066】
「アシル担体タンパク質」又は「ACP」とは、脂肪酸合成の間、4'-ホスホパンテテイン部分のチオール末端で、チオールエステルとして成長するアシル鎖と結合するタンパク質であり、脂肪酸合成酵素複合体の構成成分を含むタンパク質である。脂肪アシルACPチオエステラーゼと連動したアシル担体タンパク質を参照して、「天然に共発現された」という用語は、ACPおよびチオエステラーゼが、それらが由来する組織又は生物において天然に(自然に)共発現されることを意味する。共発現する理由は、例えば、例えばそれら2つの酵素をコードする遺伝子が共通の制御配列の制御下にあるか、又は、それらが同じ刺激に応答して発現されることである。
【0067】
「アシルCoA分子」又は「アシルCoA」は、補酵素Aの4'-ホスホパンテテイン部分の遠位チオールにチオールエステル結合を介して補酵素Aに共有結合するアシル部分を含む分子である。
【0068】
「純粋培養」とは、他の生きている生物の混入がない生物の培養物を意味する。
【0069】
「バイオディーゼル」は、脂質のエステル転移により生産される脂肪酸エステルを指す。前記エステルは、エステル転移反応の構成成分に依存してメチルエステル、エチルエステル、又は他のエステルであってもよい。
【0070】
「バイオマス」とは、細胞の増殖及び/又は繁殖により生産される物質を指す。バイオマスは、細胞外物質と合わせて、細胞及び/又は細胞内の内容物を含んでもよい。細胞外物質は、限定はされないが、細胞により分泌される化合物を含む。
【0071】
「バイオリアクター」とは、細胞(例、微生物)が、任意ではあるが浮遊培養で培養される、密閉体または部分的密閉体を意味する。
【0072】
「触媒」とは、生成物の一部とならずに、反応物が生成物への化学反応を容易にするか又は促進することができるエージェント(例、分子、又は高分子複合体)を指す。触媒は、従って反応速度を上昇させ、その反応後、前記触媒は他の反応物に作用して生成物を形成する場合がある。触媒は一般的に、反応に必要な全体の活性化エネルギーを下げて、従って反応がより急速に若しくはより低い温度で進み、及び/又は反応平衡がより速やかに達成可能である。触媒の例には、生物的触媒である酵素、及び非生物的触媒である熱を含む。
【0073】
「セルロース系材料」とは、セルロースの消化産物(例、グルコース、キシロース、アラビノース、二炭糖、オリゴ糖類、リグニン、フルフラール、及び他の分子)を意味する。
【0074】
「共培養(co-culture)」及びその変形例(例、共培養する(co-cultivate))とは、同一のバイオリアクター中、2種類以上の細胞の存在することを指す。前記2種類以上の細胞は、両方ともが微生物(例、微細藻類細胞)であってもよいし、又は異なる細胞種とともに培養される微細藻類細胞であってもよい。培養条件は、2つ以上の細胞種の増殖及び/又は繁殖を促進するものであっても良いし、あるいは2つ以上の細胞種の一つの細胞種(若しくは、その細胞種のサブセット)の増殖及び/又は繁殖を、残りの細胞の細胞増殖を維持しながら促進するものであってもよい。
【0075】
「補因子」とは、酵素がその酵素活性を実行するのに必要な任意の分子で、基質以外のものを指すように本明細書中で使用される。
【0076】
「相補的DNA」(「cDNA」)とは、メッセンジャーRNA(mRNA)のDNA複写物であり、それは、例えば、メッセンジャーRNAの逆転写により、又は増幅(例、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を介して)により得ることができる。
【0077】
「培養される」及びその変形例とは、適切な培養条件を用いて1又は複数の細胞の増殖(growth)(細胞サイズ、細胞内含有量、及び/又は細胞活性の増加)及び/又は繁殖(propagation)(有糸分裂を介する細胞数の増加)を意図的に促進することを指す。増殖(growth)と繁殖(propagation)との両者の組合せは、増繁殖(proliferation)ともいう。前記1又は複数の細胞は、微生物(例、微細藻類)であってもよい。適切な条件の例には、既知組成培地(公知の性質(例、pH、イオン強度、及び炭素源)を有するもの)、バイオリアクター中での特定の温度、酸素分圧、及び二酸化炭素レベルを使用することを含む。前記用語は、生物が自然に増殖して究極的に化石化されて地層の原油を生産するように、自然に又はさもなくば人間が直接介入しない微生物の増殖または繁殖を指すものではない。
【0078】
「外来遺伝子」とは、細胞に形質転換される(導入される)核酸をいう。形質転換された細胞は、組換細胞と呼ばれてもよいし、その細胞に追加的な外来遺伝子が導入されてもよい。外来遺伝子は、異なる種(異種性のもの)、又は形質転換された細胞に対して同一種(相同な)由来であってもよい。 相同遺伝子の場合では、導入される遺伝子は、その遺伝子の内在性コピーに対して細胞のゲノムの異なる場所を占領するか、若しくはそれが置き換わる内在性遺伝子の異なる調整制御下に置かれるか、又はその両者である。外来遺伝子は、細胞内で複数コピー存在してもよい。外来遺伝子は、ゲノムへの挿入として又はエピソーム性の分子として細胞において維持可能である。
【0079】
「外因的に提供される」とは、細胞培養の培養培地に提供される分子について記載する。
【0080】
「抽出される」とは、溶媒を使用し又は使用せずに水溶性のバイオマスから油または脂質が分離されることを指す。
【0081】
「脂肪アシルACPチオエステラーゼ」とは、脂質合成期間中、アシル担体タンパク質(ACP)から脂肪酸の切断を触媒する酵素である。
【0082】
「固定炭素源」とは、炭素、典型的には有機分子を含む分子で、外界気温および外界圧で固体または液体形態で存在する分子を意味する。
【0083】
本明細書中で使用される「真菌」とは真菌界に由来するキチン質の細胞壁によって特徴づけられる従属栄養性生物を意味する。
【0084】
「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の原子を意味する。ヘテロ原子の例は、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、硫黄、リン、鉄、及び銅である。
【0085】
「ホモジネート」は、物理的に破壊されたバイオマスを意味する。
【0086】
「疎水性画分」とは、水溶性層中よりも疎水性層中でより可溶性の物質の部分または画分を指す。疎水性画分は実質的に水と混合せず、通常無極性である。
【0087】
「増加した脂質収量」とは、例えば、培養物1リットルあたりの細胞の乾燥重量を増やすことによって、脂質を構成する細胞の割合を増やすことによって、又は、単位時間あたりの培養物容量1リットルあたりの脂質の全体量を増やすことによって達成可能な、微生物培養物の脂質生産性の増加を指す。
【0088】
「誘導性プロモーター」とは、特定の刺激に応答して作動可能に連結される遺伝子の転写を媒介するプロモーターである。
【0089】
「作動可能に連結する」とは、2つの核酸配列(例、制御配列(典型的にはプロモーター)及び連結される配列)間の機能的な連結を指す。プロモーターが外来遺伝子の転写を媒介する場合、プロモーターは前記遺伝子に作動可能に連結する。
【0090】
「in situ」とは、「その場所で」又は「その本来の位置において」を意味する。 例えば、培養物は、触媒を分泌する第一の微生物(例、微細藻類)及び基質を分泌する第二の微生物を含むことができる。この場合、前記第一および第二の微生物は、さらなる物質の分離または処理を必要とせずに、特定の化学反応がin situでその共培養中で起こるのに必要な構成成分を生産する。
【0091】
「リパーゼ」とは、脂質基質中のエステル結合の加水分解を触媒する酵素である。リパーゼは脂質を加水分解してグリセロールと脂肪酸にするのを触媒し、そして、TAGsをエステル転移して脂肪酸アルキルエステルにするのを触媒するように機能することができる。
【0092】
「脂質」は、微生物から得ることができる親油性の分子である。脂質の主とする生物学的機能は、脂質は他にも機能するが、エネルギーを貯蔵し、細胞膜の構造的構成成分として作用し、及びシグナル分子として働くことを含む。脂質は無極性の溶媒(例、エーテル、クロロフォルム)に可溶であり、水には相対的に不溶性である。脂質は、長い、疎水性の炭化水素「末端」から概ねなる。脂質の例には、(飽和及び不飽和)脂肪酸、グリセリドまたはグリセロ脂質(例、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド(TAGsを含む)若しくは中性脂肪及びホスホグリセリド若しくはグリセロリン脂質)、非グリセリド(例、スフィンゴ脂質、ステロール脂質(コレステロールおよびステロイドホルモン類を含む)、プレノール脂質(テルペノイドを含む)、ワックス及びポリケタイド)、並びに、複合脂質誘導体(糖結合脂質又は糖脂質及びタンパク質結合脂質)を含む。脂質の他の例には、遊離脂肪酸、脂肪酸のエステル、ステロール、色素(例、カロテノイド、オキシカロテノイド)、キサントフィル、植物ステロール、エルゴチオニン(ergothionine)、リポ酸、抗酸化剤(ベーターカロテンを含む)、及びトコフェロールを含む。多価不飽和脂肪酸(例、アラキドン酸)、ステアリドン酸、コレステロール、デスメステロール(desmesterol)、アスタキサンチン、カンタキサンチン、並びにn -6及びn-3の高度不飽和脂肪酸(例、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA))も含まれる。
【0093】
「脂質経路酵素」は、脂質代謝(すなわち、脂質合成、修飾、又は分解のいずれか)に関連する酵素であり、限定はされないが、リパーゼ、脂肪アシルACPチオエステラーゼ、及びアシル担体タンパク質を含む。
【0094】
「栄養物の限界濃度」とは、培養される生物の繁殖を制限する培養物中の栄養物濃度である。「栄養物の非限界濃度」とは、所定の培養期間中に最大の繁殖を支持することができる栄養物濃度である。従って、栄養物が非限界である場合よりも栄養物が限界濃度存在する場合、所定の培養期間中に生産される細胞数は低い。栄養物が、最大の繁殖を支持するものよりも高い濃度で存在する場合、栄養物は、培養に「過剰」であるといわれる。
【0095】
「グリセロ脂質プロフィール」とは、バイオマスの特定サンプル中のグリセロ脂質の種々の炭素鎖長と飽和レベルの分布を指す。例えば、サンプルは、約60%のグリセロ脂質がC18:1で、20%がC18:0、15% がC16:0及び、5%がC14:0であるグリセロ脂質を含むことができた。炭素長が、飽和に言及することなく参照される場合、「C18」では、そのような参照は任意の量の飽和を含むことができる。例えば、C18として20%の脂質を含む微生物バイオマスは、同じ又は異なる量でC18:0、C18:1、C18:2等を含むことができ、その合計が前記微生物バイオマスの20%を構成する。
【0096】
「可溶化物」とは、溶菌した細胞の内容物を含む溶液を指す。「可溶化する」とは、少なくともいくつかの細胞内内容物を放出するのに十分なように、細胞の細胞膜及び任意ではあるが細胞壁を破壊することを指す。「溶菌」とは、しばしば力学的、ウイルス的、又は浸透圧性の機構で、生物の統合性を損なうものにより、少なくともいくつかの細胞内内容物を放出するのに十分なように、生物の細胞膜および任意ではあるが細胞壁を切断することを指す。
【0097】
「微細藻類」とは、(a)真核生物でクロロプラスト若しくはクロロプラスト遺残を含む微生物か、(b)ラン藻類である微生物を意味する。微細藻類には、固定炭素源だけに依存して生きることができる従属栄養生物に加えて、エネルギーとして固定炭素源を代謝することができない偏性光独立栄養生物を含む。微細藻類は、細胞分裂直後に姉妹細胞から分離する単細胞生物(例、クラミドモナス)を指すことができるし、2つの異なる細胞種を有する単純な多細胞光合成微生物である微生物(例、ボルボックス)も指すことができる。「微細藻類」は、また、細胞間接着を示す他の光合成微生物(例、アグメネルム(Agmenellum)、アナバエナ(Anabaena)、ピロボツリス(Pyrobotrys))も含み、また、光合成をもはや行うことができないクロロプラスト様構造体を含む生物(例、プロトテカ属の微細藻類、いくつかの渦鞭毛藻類)も含む。
【0098】
「微生物(microorganism)」と「微生物(microbe)」は、本明細書中では、互換的に使用され、微小(microscopic)単細胞生物を指す。
【0099】
「油」は、疎水性、親油性、無極性の炭素含有物質を意味し、限定はされないが、地質由来の原油、地質由来の原油の蒸留留分、植物油、藻類油、及び微生物油を含む。
【0100】
本明細書中で使用される「油性酵母」は、DCW(細胞乾燥重量)の10%より多くを脂質として蓄積することができる酵母を意味する。 油性酵母には、酵母(例、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、酵母の改変株(例、DCW(細胞乾燥重量)の10%より多くを脂質として蓄積することができるように改変されたサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)))を含む。
【0101】
「浸透圧ショック」は、浸透圧の突然の減少に引き続く、溶液中の細菌、藻類、又は他の細胞の破裂のことをいう。浸透圧ショックにより、時々、溶液に細胞の構成成分を放出するのを誘導される。
【0102】
「フォトバイオリアクター」とは、少なくともその一部が少なくとも部分的に透明であるか、部分的に開口しているかし、従って、光が透過し、その中で1又は複数の微細藻類細胞が培養される容器をいう。 フォトバイオリアクターは、ポリエチレンバッグ若しくはエルレンマイヤーフラスコの例のように閉じていてもよいし、又は屋外の池の例のように外界に開放されていてもよい。
【0103】
「多糖類分解酵素」は、任意の多糖を加水分解、又は脱重合を触媒することができる酵素を指す。例えば、セルラーゼは、セルロースの加水分解を触媒する多糖類分解酵素である。
【0104】
「多糖類」(又は、グリカン)は、グリコシド結合で互いに結合される単糖からできている炭水化物である。セルロースは、ある種の植物細胞壁を構成する多糖類の例である。セルロースは、酵素によって脱重合されて、より大きい二糖類及びオリゴ糖類と共に、単糖類(例、キシロース、グルコース)を得ることができる。
【0105】
「ポート」とは、バイオリアクターの構成において、物質(例、ガス、液体、細胞)の流入または流出を可能にするバイオリアクターの開口部をいう。ポートは、通常、フォトバイオリアクターから伸びている管に接続される。
【0106】
「組換」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関して用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質若しくはベクターが異種の核酸若しくはタンパク質の導入により、又は天然の(自然状態の)核酸若しくはタンパク質の変化により修飾されたこと、あるいは、細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、組換細胞は非天然遺伝子(細胞の有する天然(非組換)形態では見いだされない遺伝子)を発現するか、非組換細胞が発現するのに比べて異なるように天然の遺伝子を発現する(すなわち、非組換細胞における遺伝子発現と比べて、天然の遺伝子が過剰発現、過少発現、又は全く発現されない)かする。「組換核酸」とは、自然には見いだされない形態の核酸を指し、その核酸はインビトロでの核酸操作(例、ポリメラーゼやエンドヌクレアーゼを用いて)により形成され、(そして、自然状態の核酸の精製された調製物を含むことができる)。従って、直線形態の単離された核酸、又は、通常連結されないDNA分子をライゲートすることにより(例、2つの異なる核酸を互いに作動可能に連結するよう配置して)インビトロで形成される発現ベクターは、組換体である。一旦組換核酸が宿主または生物に導入されると、それは非組換的に(すなわち、宿主細胞のインビボの細胞装置を使って)複製可能である。しかしながら、そのような核酸(組換的に製造され、次に非組換的に複製されたもの)は、それでも組換体であると見なされる。同様に、「組換タンパク質」は、組換技術を使用して(すなわち、組換核酸の発現を介して)作られるタンパク質である。
【0107】
「鹸化油」は、微生物源由来の脂肪酸エステルの鹸化中に生成されるカルボン酸塩および同伴する化合物のことをいう。脂肪酸エステルは、微生物により生産されるトリアシルグリセロール(TAGs)に由来することができる。微生物源由来の油に同伴する化合物には、カロテノイド、トコフェロール、トコトリエノール(tocotrienols)、及び生物起源の他の化合物を含む。
【0108】
「超音波処理」は、音波エネルギーを用いて、生物材料(例、細胞)を破壊するプロセスをいう。
【0109】
「茎葉」とは、穀粒が収穫された後、残っている、穀物の乾燥した茎および葉をいう。
【0110】
「ショ糖資化性遺伝子」とは、発現した時に、細胞がエネルギー源としてスクロース(ショ糖)を利用する能力を補助する遺伝子である。ショ糖輸送体、ショ糖インベルターゼ、及びヘキソキナーゼ(例、グルコキナーゼ、フルクトキナーゼ)が、ショ糖資化性遺伝子の例である。
【0111】
<II.一般>他の応用例はあるが、輸送燃料及び石油化学産業において使用するために、大規模に脂質を生産するように、ある種の微生物を使用することができる。本発明は、コストを有意に減少させ、微生物から脂質および貴重な脂質由来の化合物を得る効率を有意に上昇させる方法を提供する。本発明の方法の使用に適した微生物には、微細藻類、油性酵母、真菌、細菌、及びラン藻を含む。本発明で使用される微細藻類の属には、脂質生産微細藻類であるクロレラがある。本発明は、バイオディーゼル燃料として及び/又は他の応用に有用な脂肪酸アルキルエステルへ、トリアシルグリセロール(TAGs)をin situでエステル転移する方法も提供し、微生物バイオマス中で脂質の化学修飾する他の方法をも提供する。
【0112】
本発明は、DCW(乾燥細胞重量)の少なくとも5%を脂質(例、トリグリセリド)として生成する微生物集団を培養することにより脂肪酸アルキルエステル(例、脂肪酸メチルエステル(FAME))を製造する方法も提供する。この方法では、微生物バイオマスは培養物から回収され、任意ではあるが、乾燥されて水分を除去される。それから、エステル転移が低級アルコール及び触媒(例、NaOH)を添加することで達成され、脂肪酸アルキルエステルを含む親油性層と親水性細胞物質を含む親水性層とを生成する。前記親油性層を、前記親水性層から容易に分離することができる。
【0113】
バイオマスの直接的なエステル転移は、エステル転移に先行してバイオマスから親油性構成成分を抽出する介在的な分離プロセス工程を経ることなく、エステル転移に先行する伝統的な抽出と精製工程を実施する方法に比べて、飛躍的にコストが減少するバイオディーゼルの生産を許容する。
【0114】
本発明の方法は、グリセロ脂質をin situでエステル転移して脂肪酸アルキルエステルとすることを介してバイオディーゼルを生成することのさらなる利点を提供する。特に、本発明の微生物は、その細胞のグリセロ脂質含量を変更することを許容する条件下で培養されてもよい。驚くべきことに、乾燥細胞重量に応じて油:非油の比率がますます高まった細胞中で、より大きな割合の総グリセロ脂質が脂肪酸アルキルエステルへ転換可能であるということが発見された。さらに、これらの油:非油のより高い比率は、別の予期せぬ利点をも導く。油:非油の比率がますます高まった細胞から生成される脂肪酸アルキルエステルは、油:非油の比率がより低い細胞から生産されるものよりも、ヘテロ原子の濃度が低い。本方法は、当該分野の現在の教義(つまり、微細藻類の光独立栄養増殖がバイオ燃料生産のための最適な微細藻類培養方法である)にかなり反するものを提供する(例えば、屋外のフォトバイオリアクターで増殖するために、バイオマスの生産性と脂質含量について微細藻類株をスクリーニングすることに関して議論する Rodolfi, et al., Biotechnology & Bioengineering 102(1):100-112 (2008)を参照されたい)。バイオマスの油含量が高まれば高まるほど、直接的化学修飾後の結果として生じる生成物の質が高まるということも発見された。本発明は、より高品質な化学製品の生産のため、直接的化学修飾のためにより高い油含量を達成するように微生物(例、微細藻類)を培養する従属栄養的な方法を提供する。
【0115】
本発明は、脂質含有微生物バイオマスを化学修飾(例、限定はされないが、水素付加、エステル交換、水酸化、加水分解、鹸化)する他の方法をも提供する。これらの方法は、非常にたくさんの応用例のための幅広い種々の化学製品を生産するために本明細書中に記載された種々の微生物および培養条件で使用されてもよい。
【0116】
本発明は、有用な組成物(脂肪酸アルキルエステルを含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも1つのより重い層とを含む組成物;完全に飽和した脂質を含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも1つのより重い層とを含む組成物;脂質を含むより軽い層と1より多い種又は株由来の微生物バイオマスを含む少なくとも1つのより重い層とを含む組成物;水酸化された脂質を含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも1つのより重い層とを含む組成物;及び遊離脂肪酸を含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも1つのより重い層とを含む組成物)をも提供する。
本発明は、微生物集団を培養することにより生産されるバイオマスのアルカリ加水分解に由来する鹸化油を含む組成物も提供する。
【0117】
<III.微生物>本発明に有用な微生物は、バイオディーゼル生産のための化学修飾に適した脂質、他の目的(例、工業化学原料、食用油)のために脂肪酸エステルを生産するのに適した脂質、また、他の化学実体の生産のために適した脂質を生産する。バイオディーゼル及び化学品生産に適した脂質には、脂肪酸分子を含むTAGsを含む。いくつかの実施形態では、適した脂肪酸は、少なくとも 8、少なくとも 10、少なくとも 12、少なくとも 14、少なくとも 16、少なくとも 18、少なくとも 20、少なくとも22、少なくとも24、少なくとも 26、少なくとも 28、少なくとも 30、少なくとも 32、少なくとも 34、又はそれより多くの炭素原子を含む。 バイオディーゼルに好適な脂肪酸は、一般的に16及び18個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、上記脂肪酸は飽和している(炭素間2重又は3重結合がない);一不飽和(1つの2重結合)である;多不飽和(2以上の2重結合)である;直鎖である(環状ではない);及び/又はその構造中に分岐がほとんどないか若しくは全くない。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明のin situでのエステル転移および修飾方法に有用な微生物を培養することによって、乾燥した場合、油含量を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも25%含むバイオマスを得る。他の実施形態では、乾燥バイオマスは、油含量を少なくとも30%、少なくとも 35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%含む。この文脈で使用される「乾燥」又は「乾燥した」は、実質的にすべての水分がないことを指す。バイオマスは乾燥されることなしに化学修飾されてもよい。例えば、バイオマスは、遠心分離された細胞ペーストを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明のin situでのエステル転移および修飾方法に有用な微生物を培養することによって、少なくとも10%の脂質がC18である、少なくとも15%の脂質がC18である、少なくとも20%の脂質がC18である、少なくとも25%の脂質がC18であるバイオマスを得る。他の実施形態では、前記バイオマスは、少なくとも30%の脂質がC18である、少なくとも35%の脂質がC18である、少なくとも40%の脂質がC18である、少なくとも45%の脂質がC18である、又は少なくとも50%の脂質がC18である脂質構成要素を含む。さらに他の実施形態では、前記バイオマスは、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%のC14、及び/又はC16若しくはより長い鎖長である脂質構成成分を含むことができる。代わりに、前記バイオマスは少なくとも10%又は少なくとも20%のC14又はより短い鎖長である脂質構成成分を含むことができる。
【0120】
本発明の方法において有用な微生物は、天然に又は遺伝学的に操作されて、脂質収量を増加させ、望ましい炭素鎖長(例、C18)の脂肪酸をより高い割合で含むTAGsを生成し、又はエネルギー源および炭素源としての特定の栄養源(例、糖蜜)を使用する。そのような遺伝子工学的改変は、「脂質経路操作」の表題の下に記載される。
【0121】
高レベルの適した脂質を生来生産する微生物が典型的には好まれるが、適した脂質を生産する微生物の任意の種が、本発明の方法で使用されてもよい。また、特定の発酵条件にさらされたとき、乾燥細胞重量の割合として高レベルの脂質を生産することができる微生物も好ましい。微細藻類を本発明の方法に使用してもよいし、本発明の方法に用いいることが可能な微細藻類の非限定例(属と種の両者)は、表1に一覧表にされる。
【0122】
[表1] 微細藻類の例。
アクナンセス・オリエンタリス(Achnanthes orientalis)、アグメヌルム(Agmenellum)、アンフィプロラ・ヒアリン(Amphiprora hyaline)、アンフォラ・コフェイフォルミス(Amphora coffeiformis)、アンフォラ・コフェイフォルミス・リネア(Amphora coffeiformis linea)、アンフォラ・コフェイフォルミス・プンクタタ(Amphora coffeiformis punctata)、アンフォラ・コフェイフォルミス・タヨロリ(Amphora coffeiformis taylori)、アンフォラ・コフェイフォルミス・テヌイス(Amphora coffeiformis tenuis)、アンフォラ・デリカティッシマ(Amphora delicatissima)、アンフォラ・デリカティッシマ・キャピタタ(Amphora delicatissima capitata)、アンフォラ属の種(Amphora sp.)、アナバエナ(Anabaena)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アンキストロデスムス・ファルカタス(Ankistrodesmus falcatus)、ボエケロヴィア・ホオグランディ(Boekelovia hooglandii)、ボロディネラ属の種(Borodinella sp.)、ボツリョコッキス・ブラウニイ(Botryococciis braunii)、ボツリョコッカス・スデティクス(Botryococcus sudeticus)、バクテリオコッカス・マイナー(Bracteococcus minor)、バクテリオコッカス・メディオヌクレタス(Bracteococcus medionucleatus)、カルテリア(Carteria)、カエトセロス・グラシリス(Chaetoceros gracilis)、カエトセロス・ムエレリ(Chaetoceros muelleri)、カエトセロス・ムエレリ・スブサルスム(Chaetoceros muelleri subsalsum)、カエトセロス属の種(Chaetoceros sp.)、クロレラ・アニトラタ(Chlorella anitrata)、クロレラ・アンタルクティカ(Chlorella Antarctica)、クロレラ・アウレオビリディス( Chlorella aureoviridis)、クロレラ・キャンディダ( Chlorella Candida)、クロレラ・カプスレイト(Chlorella caps/μlate)、クロレラ・デシカート(Chlorella desiccate)、クロレラ・エリプソイデア(Chlorella ellipsoidea)、クロレラ・エメルソニイ(Chlorella emersonii)、クロレラ・フスカ(Chlorella fusca)、クロレラ・フスカ・バー・バクオレタ(Chlorella fusca var. vacuolata)、クロレラ・グルコトロファ(Chlorella glucotropha)、クロレラ・インフシオナム(Chlorella infusionum)、クロレラ・インフシオナム(Chlorella infusionum)バール。クロレラ・インフシオナム・バー・アクトフィラ(Chlorella infusionum var. actophila)、クロレラ・インフシオナム・バー・アウゼノフィラ(Chlorella infusionum auxenophila)、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)、クロレラ・ロボフォラ(Chlorella lobophora)(SAG 37.88株)、クロレラ・ルテオビリディス(Chlorella luteoviridis)、クロレラ・ルテオビリディス・バー・アウレオビリディス(Chlorella luteoviridis var. aureoviridis)、クロレラ・ルテオビリディス・バー・ルテスセンス(Chlorella luteoviridis var. lutescens)、クロレラ・ミニアタ(Chlorella miniata)、クロレラ・ミヌティッシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ムタビリス(Chlorella mutabilis)、クロレラ・ノクツルナ(Chlorella nocturna)、クロレラ・オヴァリス(Chlorella ovalis)、クロレラ・パルバ(Chlorella parva)、クロレラ・ファトフィリア(Chlorella photophila)、クロレラ・プリングシェイミィ(Chlorella pringsheimii)、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)(UTEX株1806、411、264、256、255、250、249、31、29、25のいずれかを含む)、クロレラ・プロトセコイデス・バー・アシジコラ(Chlorella protothecoides var.acidicola)、クロレラ・レグラリス(Chlorella reg/μlaris)、クロレラ・レグラリス・バー・ミニマ(Chlorella reg/μlaris var. minima)、クロレラ・レグラリス・バー・ウンブリカタ(Chlorella reg/μlaris var. umbricata)、クロレラ・レイシグリィ(Chlorella reisiglii)、クロレラ・サッカロフィア(Chlorella saccharophila)、クロレラ・サッカロフィア・バー・エリプソイデア( Chlorella saccharophila var. ellipsoidea)、クロレラ・サリナ(Chlorella salina)、クロレラ・シンプレックス(Chlorella simplex)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana、クロレラ属の種(Chlorella sp.)、クロレラ・スファエリカ(Chlorella sphaerica)、クロレラ・スティグマトフォラ(Chlorella stigmatophora)、クロレラ・バニエリィ(Chlorella vanniellii)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・ブルガリス・エフ・テルティア(Chlorella vulgaris f tertia)、クロレラ・ブルガリス・バー・アウトトロフィカ(Chlorella vulgaris var. autotrophica)、クロレラ・ブルガリス・バーヴィリディス(Chlorella vulgaris var.viridisu)、クロレラ・ブルガリス・バー・ブルガリス(Chlorella vulgaris var. vulgaris)、クロレラ・ブルガリス・バー・ブルガリス・エフ・テルティア(Chlorella vulgaris var. vulgaris f tertia)、クロレラ・ブルガリス・バー・ブルガリス・エフ・ヴィリディス(Chlorella vulgaris var. vulgaris f viridis)、クロレラ・シャンセラ(Chlorella xanthella)、クロレラ・ゾフィンジエンシス(Chlorella zofingiensis)、クロレラ・ツレボウシオイデス(Chlorella trebouxioides)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロロコッカム・インフシオヌム(Chlorococcum infusionum)、クロロコッカム属の種(Chlorococcum sp.)、クロゴニウム(Chlorogonium)、クロオモナス属の種(Chroomonas sp.)、クリソスファエラ属の種(Chrysosphaera sp.)、 クリコスファエラ属の種(Cricosphaera sp.)、クリプテコディニウム・コーニィ(Crypthecodinium cohnii)、クリプトモナス属の種(Cryptomonas sp.)、サイクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica),サイクロテラ・メネグヒニアナ(Cyclotella meneghiniana)、サイクロテラ属の種(Cyclotella sp.)、ドナリエラ属の種(Dunaliella sp.)、ドナリエラ・バルダウィル(Dunaliella bardawil)、ドナリエラ・バイオクラタ(Dunaliella bioculata)、ドナリエラ・グラヌラテ(Dunaliella granulate)、 ドナリエラ・マリタイム(Dunaliella maritime)、ドナリエラ・ミヌタ(Dunaliella minuta)、ドナリエラ・パルヴァ(Dunaliella parva)、ドナリエラ・ペイルセイ(Dunaliella peircei)、ドナリエラ・プリモレクタ(Dunaliella primolecta)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、 ドナリエラ・テリコラ(Dunaliella terricola)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、ドナリエラ・ヴィリディス(Dunaliella viridis)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、エレモスファエラ・ヴィリディス(Eremosphaera viridis)、エレモスファエラ属の種(Eremosphaera sp.)、エリプソイデン属の種(Ellipsoidon sp.)、エウグレナ(Euglena)、フランセイア属の種(Franceia sp.)、フラギラリア・クロトネンシス(Fragilaria crotonensis)、フラギラリア属の種(Fragilaria sp.)、グレオカプサ属の種(Gleocapsa sp.)、グロエオサムニオン属の種(Gloeothamnion sp.)、ヒメノモナス属の種(Hymenomonas sp.)、イソクリシス・エーエフエフ・ガルバナ(Isochrysis aff galbana)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクル・アクチニウム(Micr actinium)、ミクル・アクチニウム(Micr actinium)(UTEXLB 2614), モノラフィディウム・ミヌツム(Monoraphidium minutum)、モノラフィディウム属の種(Monoraphidium sp.)、ナンノクロリス属の種(Nannochloris sp.)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス属の種(Nannochloropsis sp.)、ナビクラ・アクセプタタ(Navicula acceptata)、ナビクラ・ビスカンテラエ(Navicula biskanterae)、ナビクラ・シュードテネロイデス(Navicula pseudotenelloides)、 ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa), ナビクラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)、ナビクラ属の種(Navicula sp.)、ネフロクロリス属の種(Nephrochloris sp.)、ネフロセルミス属の種(Nephroselmis sp.)、ニツスチア・コムニス(Nitschia communis)、ニツスチア・アレカンヅフナ(Nitzschia alexandfna)、ニツスチア・コムニス(Nitzschia communis)、ニツスチア・デイシパタ(Nitzschia dissipata)、ニツスチア・フルスツルム(Nitzschia frustulum)、ニツスチア・ハンツスチアナ(Nitzschia hantzschiana)、ニツスチア・インコンスピクア(Nitzschia inconspicua)、ニツスチア・インテルメディア(Nitzschia intermedia)、ニツスチア・マイクロセファラ(Nitzschia microcephala)、ニツスチア・プシラ (Nitzschia pusilla)、ニツスチア・プシラ・エリプティカ(Nitzschia pusilla elliptica)、ニツスチア・プス・イリア・モノエンシス(Nitzschia pus ilia monoensis)、ニツスチア・クアヅラングラー(Nitzschia quadrangular)、ニツスチア属の種(Nitzschia sp.)、オクロモナス属の種(Ochromonas sp.)、オオサイスティス・パルバ(Oocystis parva)、オオサイスティス・プシラ(Oocystis pusilla)、オオサイスティス属の種(Oocystis sp.)、オスシラトリア・リムネティカ(Oscillatoria limnetica)、オスシラトリア属の種(Oscillatoria sp.)、オスシラトリア・スブレヴィス(Oscillatoria subbrevis)、パラクロレラ・ケッセリ(Parachlorella kessleri)、パスケリア・アシドフィラ(Pascheria acidophila)、パブロバ属の種(Pavlova sp.)、ファングス(Phagus)、フォルミディウム(Phormidium)、プラティモナス属の種(Platymonas sp.)、プレウロクリシス・カーター・アエ(Pleurochrysis carter ae)、プレウロクリシス・デンタテ(Pleurochrysis dentate)、プレウロクリシス属の種(Pleurochrysis sp.)、プロトテカ・ウィクケルハミイ(Prototheca wickerhamii)、プロトテカ・スタグノラ(Prototheca stagnora)、プロトテカ・ポルトリセンシス(Prototheca portoricensis)、 プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)、プロトテカ・ゾフィ(Prototheca zopfii)、シュードクロレラ・アクアティカ(Pseudochlorella aquatica)、ピラミモナス属の種(Pyramimonas sp.)、ピロボツリス(Pyrobotrys)、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)、サルシノイド・クリソフィテ(Sarcinoid chrysophyte)、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)、シゾシツリウム(Schizochytrium)、スピロギラ(Spirogyra)、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、スチココッカス属の種(Stichococcus sp.)、シネココッカス属の種(Synechococcus sp.)、テツラエヅロン(Tetraedron)、テツラセルミス属の種(Tetraselmis sp.)、テツラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)、タラッシオシラ・ウェイッスフロギィ(Thalassiosira weissflogii)及びヴィリデイエラ・フリデリシアナ(Viridiella fridericiana)。
【0123】
本発明の方法で用いられ得る油性酵母の非限定例が、表2で一覧表にされる。
【0124】
[表2]油性酵母の例。
クリプトコッカス・クルバツス(Cryptococcus curvatus)、クリプトコッカス・テリコルス(Cryptococcus terricolus)、カンジタ属の種(Candida sp.)、リポマイセス・スタルケィ(Lipomyces starkeyi)、リポマイセス・リポファ(Lipomyces lipofer)、エンドマイコプシス・バルナリス(Endomycopsis vernalis)、ロドトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・グルシリス(Rhodotorula gracilis)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)。
【0125】
本発明の方法で用いることが可能な真菌の非限定例が、表3で一覧表にされる。
【0126】
[表3]真菌の例。
モルティエレラ(Mortierella)属の種、モルティエレラ・ビナセア(Mortierrla vinacea)、モルティエレラ・アルペン(Mortierella alpine)、フィリシウム・デバリアヌム(Pythium debaryanum)、ケカビ属シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、ペネシリウム・イイラシヌム(Pennicillium iilacinum)、ヘンセヌロ(Hensenulo)属の種、カエトミウム(Chaetomium)属の種、クラドスポリウム(Cladosporium)属の種、マルブランシェア(Malbranchea)属の種、リゾプス(Rhizopus)属の種およびフィシウム(Pythium)属の種。
【0127】
本発明に使用する微生物の選択に影響する考慮には、バイオディーゼルの生産に適した脂質の生産に加えて、(1)細胞重量パーセントとしての高脂質含量、(2)増殖の容易性、及び(3)処理の容易性を含む。好適な微生物は、従属栄養性に(光なしに糖上で)増殖するか、例えば、米国特許出願第60/941,581号(2007年6月1日出願)、第60/959,174号(2007年7月10日出願)、第60/968,291号(2007年8月27日出願)、及び第61/024,069号(2008年1月28日)に開示された方法を使用してそのような増殖をするように操作された。
【0128】
処理上の考慮には、例えば、細胞を溶菌する効果的な手段の利用可能性を含む。細菌も本発明の方法に用いられてもよい。特に、油性細菌(例、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する種(例、ロドコッカス・オパカス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス属の種))である。
【0129】
本発明の方法に用いられる微細藻類の種を、被験微細藻類のゲノムのある標的領域を増幅することにより同定できる。例えば、プライマーを使って核および/又はクロロプラストDNAの増幅及びシーケンシングによって、並びにゲノムの任意の領域を使った方法論によって、微細藻類の特定の種又は株の同定をなすことができる(例、Wu et al., Bot. Bull. Acad. Sin. (2001) 42:115-121、「クロレラ種の同定、リボソームDNA配列を用いた単離」を参照されたい)。十分に確立された系統学解析方法(例、リボソーム内部転写スペーサー(ITS1、ITS2 rDNA)、23SrRNA、18SrRNA、及び他の保存されたゲノム領域の増幅とシーケンシング)を、微細藻類や他の炭化水素及び脂質生産生物で、本明細書に開示された方法に用いることが可能な生物の種を同定するために用いることができる。 藻類の同定と分類方法の例については、例えば、Genetics, 2005 August; 170(4):1601-10 and RNA, 2005 April, 11(4):361-4を参照されたい。
【0130】
ゲノムDNA比較を、本発明の方法で用いられる、適した微細藻類の種を同定するのに用いることもできる。保存されたDNA(限定はされないが、23SrRNAをコードするDNAを含む)領域を微細藻類種から増幅することができ、本発明の方法に用いられる微細藻類に分類学上関連する微細藻類種をスクリーニングするためにコンセンサス配列と比較することができる。クロレラ及びプロトテカ属中の種に対するそのようなDNA配列比較の例は、実施例中で以下に示される。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用される微細藻類は、配列番号3〜6にリストされる少なくとも1つの配列に対するヌクレオチド同一性が少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも89%、少なくとも88%、少なくとも87%、又は少なくとも86%である23SrRNAをコードするゲノムDNA配列を有する。他の実施形態では、本発明の方法に使用される微細藻類は、配列番号3〜29にリストされる少なくとも1つの配列に対するヌクレオチド同一性が少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、又は少なくとも60%である23SrRNAをコードするゲノムDNA配列を有する。
【0132】
クロレラは、本発明の方法に使用可能な、緑藻植物門に属する単細胞緑藻類の一つの属である。クロレラは、形態が球状であり、直径約2から10μmで、そして鞭毛を持たない。 いくつかの種のクロレラは、天然には従属栄養性である。脂質、特に長鎖脂質(バイオディーゼルに適し、かつ化学修飾して他の分子にするのに適している。)が高い組成であるので、クロレラ(特にクロレラ・プロトセコイデス)は、本発明に使用される好適な微生物である。また、この微細藻類は、従属栄養性で増殖する。
【0133】
プロトテカは、本発明の方法に有用なクロレラの非光合成変異体と考えられる単細胞微細藻類の一つの属である。クロレラは、光合成を介してエネルギーを得ることができる一方、プロトテカ属の種は完全従属栄養生物である。プロトテカは、形態が球状であり、直径約2から15μmで、そして鞭毛を持たない。脂質組成のため、特に鹸化に適した飽和脂質であるため、プロトテカ(特にプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis))は、本発明に使用される好適な微生物である。また、この微細藻類から抽出される脂質は着色剤の夾雑物をほとんど含まず、さらに、その脂質を鹸化に適合させる。
【0134】
植物及び動物と同様に、藻類及び他の微生物は、他のエネルギー源(例、日光)が利用できない場合に使用するために、脂質の形態で過剰なエネルギーを貯蔵する。さらに、油含量の調節は、水系環境にて生存する藻類が浮遊することを可能にし、従って、光合成プロセスを行うために日光へのアクセスを最適化する。油含量の調節を介して浮力を改変する能力は、より高等な植物に比較して高い細胞油濃度を生成することができる微細藻類細胞へと誘導してきた。高油含量の特徴は、油含有バイオマスのin situでの化学修飾に有利である。何故なら、本明細書中で実証されるように、高油バイオマスは、低油バイオマス(特に光合成由来の低油バイオマス)に比べて、より高い精製度のTAG誘導体を生産するからだ。従って、高油バイオマスを生成するのに用いることが可能な微生物は、本発明の方法で使用するのに好ましい。
【0135】
<A.増殖方法>任意の遺伝学的操作を実行する目的のためと脂質の生産の目的との両者のために、微生物を培養することができる。前者の型の培養は小規模で実施され、そして、少なくとも初期には、開始時の微生物が増殖できる条件の下実施される。例えば、開始時の微生物が光独立栄養生物の場合、光の存在下で初期培養を行う。もし、前記微生物が光に独立して増殖するよう進化し又は操作された場合、培養条件を変更することができる。脂質生産目的の培養は、通常大規模に実施される。
【0136】
<1.光合成増殖方法>例えば、フォトバイオリアクター中に含まれ得る液体培養培地中で、光の存在下、光合成微生物(例、微細藻類)を増殖することができる。他のパラメーター(例、波長スペクトル、1日当たりの暗時間:明時間の比率)と共に、微細藻類細胞の培養物に照射される光子数を操作することができる。自然光と人工光とを同時に、及び/又は交互に組み合わせることに加えて、自然光で微細藻類を培養することもできる。例えば、クロレラ属の微細藻類を、日中は自然光下で培養し、夜間は人工光下で培養することができる。
【0137】
微生物(例、微細藻類)を増殖するためにフォトバイオリアクターのガス含量を操作することができる。フォトバイオリアクター容量の一部は液体よりむしろガスを含むことができる。ガス吸入系がフォトバイオリアクターへガスを送り込むのに使用されてもよい。(空気、空気/CO
2混合物、希ガス(例、アルゴン)、及び他のガスを含む)任意のガスをフォトバイオリアクターへ送り込むことができる。フォトバイオリアクターへのガス流入速度を操作することもできる。フォトバイオリアクターへのガス流量が増加するほど、微細藻類培養の混濁度が増加する。ガスをフォトバイオリアクターへ運ぶポートの配置が、所定のガス流速での培養の混濁度に影響を与えることができる。特定の生物による最大限の増殖のための最適なCO
2量を生成するように、空気/CO
2混合物を調節することができる。微細藻類は、光存在下、例えば3%CO
2/97%空気下で、100%空気の場合よりも有意に早く増殖する。3%CO
2/97%空気は、空気よりも約100倍CO
2が多い。例えば、空気:CO
2混合物で、約99.75%空気:0.25%CO
2、約99.5%空気:0.5%CO
2、約99.0%空気:1.00%CO
2、約98.0%空気:2.0%CO
2、約97.0%空気:3.0%CO
2、約96.0%空気:4.0%CO
2、約95.00%空気5.0%CO
2のものを、本発明の方法に従って、バイオリアクター又はフォトバイオリアクターへ注入することができる。5%CO
2:95%空気混合物をボツリオコッカス(Botryococcus)細胞を含むフォトバイオリアクターへ注入されることが、報告されている(J Agric Food Chem. 2006 Jun. 28;54(13):4593-9; J Biosci Bioeng. 1999;87(6):811-5; and J Nat Prod. 2003 June;66(6):772-8)。
【0138】
任意の種々の異なる種類の透明材料又は半透明材料で作製された閉鎖系のフォトバイオリアクター中で、微細藻類を増殖、維持することができる。そのような材料には、プレキシグラス(Plexiglas)(登録商標)筐体、ガラス筐体、物質(例、ポリエチレン)から製造されたバッグ、透明又は半透明のパイプ、及び他の材料を含む。 開放系のフォトバイオリアクター(例、水路様の池、沈殿池、他の非閉鎖系の容器)中で、微細藻類を増殖、維持することもできる。
【0139】
「藻類遮光」とは、光源が光合成培養物のあらゆる細胞に透過および達することができないことを指す。光源に最も近い細胞が、(その物理的存在により、及びクロロプラストで光子が吸収されることにより)先の光源からそれらの細胞を「遮光」し、従って、それらの他の細胞への暴露を、脂質又は細胞増殖や繁殖に必要な他の物質へと炭素原料を転換するのに必要なエネルギーを制限する。培養物を混合することにより、すべての細胞を光源に暴露する機構を提供することができるが、「遮光」は、ともかく暴露の全体時間に影響し、増殖を遅延し及び乾燥細胞重量の割合としての油含量を低下させるよう導く。結果として、高い細胞密度及び/又は高油含量を達成するために、より長い増殖期間を必要とする場合がある。延長した増殖期間の後でさえ、唯一のエネルギー源としての光存在下で増殖する細胞は、乾燥細胞重量の割合として15%を超える油を含むことは滅多にない。また、微細藻類の光合成増殖は、バイオマス中に高レベルのクロロフィルを生じ、直接的にエステル転移されるバイオマス中で、顕著に高いマグネシウム量を導く。何故なら、マグネシウムはクロロフィルの構成成分であり、そして、クロロフィルは親油性層中に蓄積する高い疎水性の化合物であるからである。さらに、従属栄養性に増殖される藻類よりも光合成的に増殖される藻類により高レベルのカロテノイドが蓄積する。
【0140】
<2.脂質生産のための従属栄養性増殖方法>光合成増殖方法と対照的に、光が進入することができないバイオリアクター中に含まれる培養物と共に、液体培地中で微細藻類を培養することができる。これらのような従属栄養性培養方法は、増殖と脂質生産のためのエネルギーを提供するために、固定炭素源(例、グルコース、グリセロール、セルロース系物質)の使用に依存する。総脂質生産量を最適化するために、培養条件パラメーターを操作することができる。
【0141】
微細藻類培養培地は、典型的に構成成分(例、固定窒素源、微量元素、任意ではあるがpH維持のための緩衝液、リン酸)を含む。他の構成成分には、固定炭素源(例、酢酸、グルコース)及び塩(例、特に海水中の微細藻類については、塩化ナトリウム)を含むことができる。 微量元素の例には、例えば、それぞれの形態中(ZnCl
2、H
3BO
3、CoCl
2-6H
2O、CuCl
2-2H
2O、MnCl
2-4H
2O、及び(NH
4)6Mo
7O
24-4H
2O)にある亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガン、モリブデンを含む。これらや他の培養バラメーター(例、培養培地のpH、微量元素の種類と濃度、及び他の培地構成要素)を、本発明の方法中で望ましい生産成績を達成するために操作することもできる。
【0142】
固定炭素源上で増殖することができる生物については、前記固定炭素源は、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース(ショ糖)、ガラクトース、キシロース、マンノース、ラムノース、グリセロール、セルロース系の原料、及び/又はフロリドシド(floridoside)であってもよい。1又は複数の炭素源を、1又は複数の外来的に提供される固定炭素源の少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少なくとも約5mM、少なくとも約50mM、及び少なくとも約500mMの濃度で供給することができる。複数種のクロレラについては、例えば、従属栄養性増殖することにより、バイオマスの高生産及び細胞中での高脂質含量の蓄積を生じる。
【0143】
脂質生産については、組換細胞を含む細胞を、典型的には大規模に培養又は発酵する。 前記培養は、大きな液体容量で(例、例として浮遊培養で)実施されてもよい。他の例には、小規模な細胞培養で開始し、脂質生産と同時に細胞増殖と繁殖により大規模なバイオマスへと拡張されることを含む。大規模な培養容量を収容するために、バイオリアクター又は鉄製発酵槽を用いることができる。ビール及び/又はワインの生産に用いられるのに類似した発酵槽が適していて、それはエタノールの生産に使用される非常に大きな発酵槽である。
【0144】
発酵槽で培養するための適切な栄養源を提供する。これらには、1又は複数の以下のもののような原料を含む:固定炭素源(例、グルコース、コーンスターチ、脱重合されたセルロース、スクロース(ショ糖)、サトウキビ、テンサイ、乳糖(ラクトース)、乳清、または糖蜜);脂肪源(例、脂肪、植物油);窒素源(例、タンパク質、大豆粗挽き粉、コーンスティープリカー(cornsteep liquor)、アンモニア(純粋な又は塩の形態)、硝酸又はその塩、又は分子窒素);及び、リン源(例、リン酸塩)。また、発酵槽は、培養条件(例、温度、pH、酸素分圧、及び二酸化炭素レベル)の制御が可能である。ガス状の構成成分(例。酸素、窒素)を、液体培養物中に通気させることができる。
【0145】
細胞がその増殖サイクルの様々な相を経ることができるように発酵機を使用することができる。例として、脂質生産細胞の植菌液を培地に導入することができ、次に前記細胞が増殖を開始する前に遅延期(遅延期)がある。前記遅延期の後に、増殖速度が着実に増加し、対数期又は指数関数期に入る。前記指数関数期は、栄養素(特に窒素)が減少するために細胞分裂の遅延又は完全停止が典型的に引き続く。遅延の後、増殖は止まり、そして、細胞は固定炭素源を目的の生成物(例、TAG)へと転換する定常状態へ入る。 長期間に渡り定常状態を維持することにより、目的の生成物(例、本明細書中に記載される微生物の場合には脂質)が乾燥細胞重量の高いパーセンテージに結果としてなる。いくつかの例では、細胞の乾燥重量の割合として30%より多く、40%より多く、50%より多く、又は60%より多くの脂質を有する微生物バイオマスを生成するために、延長された期間に細胞分裂を経ない一方、炭水化物(例、グルコース)を脂質へと細胞が転換する定常状態で微生物細胞を維持することが望ましい。窒素制限は、細胞が細胞分裂を実行しないようにするのに一般的に十分である。
【0146】
本明細書中に記載される及び当該技術分野で公知の条件を用いて増殖される微生物は、少なくとも20重量%の脂質、好ましくは、少なくとも40重量%の脂質、より好ましくは少なくとも50重量%の脂質、より好ましくは少なくとも60重量%の脂質、より好ましくは少なくとも70重量%の脂質、及び最も好ましくは少なくとも80重量%の脂質を含むことができる。いくつかの実施形態では、1週間以下の培養期間中に少なくとも20重量%の脂質構成成分を達成するため、本明細書中に記載される条件を用いて微生物を培養する。いくつかの実施形態では、培養期間は、14日以下、13日以下、12日以下、11日以下、10日以下、9日以下、8日以下、6日以下、5日以下、4日以下、又は3日以下である。前記培養期間の任意の一期間において、微生物は、少なくと20%、少なくと25%、少なくと30%、少なくと35%、少なくと40%、少なくと45%、少なくと50%、少なくと55%、少なくと60%、少なくと65%、少なくと70%、少なくと75%、少なくと80%、少なくと85%、又は少なくとも90%の乾燥細胞重量当たりの脂質を生産することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2日の培養期間中に少なくとも20重量%の脂質構成成分を達成するため、本明細書中に記載される条件を用いて微生物を培養する。いくつかの実施形態では、前記培養期間は、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、又は少なくとも8日である。前記培養期間の任意の一期間において、微生物は、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%の乾燥細胞重量当たりの脂質を生産することができる。
【0147】
バイオディーゼルとして使用するのに適した脂質若しくは他の標的分子の収量を増加するように、及び/又は生産コストを減少させるように処理条件を調節することができる。例えば、ある実施形態では、1又は複数の栄養物(例、窒素)の限界濃度の存在下で微生物(例、微細藻類)を培養する。この条件は、窒素が過剰に供給される培養における微生物の脂質収量に対して、微生物の脂質収量を増加させる傾向がある。特定の実施形態では、脂質収量の増加は、少なくとも10%、20%、30%、40%、 50%、75%、100%、200%、300%、400%、又は500%である。全培養期間の一部又は全期間の間栄養物の限界量の存在下で微生物を培養することができる。特定の実施形態では、全培養期間中少なくとも2回、限界濃度と非限界濃度の間で、前記栄養物濃度を繰り返す。また、図に示されるように、ある固定炭素源(例、グリセロール)を、他の固定炭素源の同等な量と比較して、脂質の細胞重量パーセントを増加させるために用いることができる。
【0148】
脂質収量を増加させるために、脂質生産微生物(例、微細藻類)のための栄養源の中に酢酸を用いることができる。脂肪酸合成を開始する代謝の起点(すなわち、アセチルCoA)へ酢酸を直接供給する。従って、培養に酢酸を供給することは脂肪酸生産を増加させることができる。一般的には、この実施形態では、微生物を十分量の酢酸の存在下で培養し、具体的には酢酸の非存在下における微生物脂質(例、脂肪酸)収量に対して、微生物脂質収量及び/又は微生物脂肪酸収量を増加させる。
【0149】
別の実施形態では、脂質経路酵素(例、脂肪酸合成酵素)のための1又は複数の補因子の存在下で脂質生産微生物(例、微細藻類)を培養することにより、脂質収量が増加する。一般的には、この実施形態では、前記補因子の濃度は、前記補因子の非存在下における微生物脂質収量に対して、微生物脂質(例、脂肪酸)収量を増加させのに十分なものである。特定の実施形態では、前記補因子は、前記補因子をコードする外来遺伝子を含む微生物(例、微細藻類)を培養物中に含めることにより、培養物に提供される。代わりに、補因子は、前記補因子の合成に参加するタンパク質をコードする外来遺伝子を含む微生物(例、微細藻類)を含めることにより、培養物に提供されてもよい。ある実施形態では、適した補因子には、脂質経路酵素により必要とされる任意のビタミン(例、ビオチン、パントテン酸)を含む。本発明での使用に適した補因子をコードする遺伝子、又はそのような補因子の合成に参加する遺伝子は周知であり、当業者に知られたコンストラクト及び技術を使って微生物(例、微細藻類)に導入してもよい。
【0150】
当該技術分野で知られた種々の異なる培養方法を用いて、乾燥重量当たり油/脂質の蓄積の比率が高い微細藻類バイオマスが生成されてきた。蓄積された油/脂質を高い比率で有する微細藻類バイオマスは、本発明の方法に従って有用である。Liらは、高濃度の鉄を用いて独立栄養状態(つまり、光合成増殖条件)の下増殖される定常培養中で乾燥細胞重量当たり56.6%までの脂質を有するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)培養物を記述している(Li et al., Bioresource Technology 99(11):4717-22 (2008))。Rodolfiらは、窒素欠乏状態下フォトバイオリアクター中で増殖され、60%の脂質乾燥細胞重量と39.8%の脂質乾燥細胞重量をそれぞれ有するナノクロロプシスの1種(Nanochloropsis sp.)培養物とカエトセロス・カルシトランス(Chaetoceros calcitrans)培養物を記述している (Rodolfi et al., Biotechnology & Bioengineering 102(1): 100-112 (2008))。Solovchenkoらは、低窒素状態下で光栄養性に増殖される場合、約30%の脂質蓄積(乾燥細胞重量)を有するパリエトクロリス・インサイス(Parietochloris incise)培養物を記述している(Solovchenko et al., Journal of Applied Phcology 20:245-251 (2008))。クロレラ・プロトセコイデスは、窒素欠乏で、ある種の従属栄養性状態下で増殖されると55%まで脂質(乾燥細胞重量)を生産することができる(Miao and Wu, Bioresource Technology 97:841-846 (2006))。(クロレラ・エメルソニイ(Chlorella emersonii)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana、クロレラ・ミヌツッシマ(Chlorella minutiima)を含む)他のクロレラが、低窒素培地条件下で攪拌されたタンク・バイオリアクター中で増殖されると、63%までの油(乾燥細胞重量)を蓄積したと記述されてきた (Illman et al., Enzyme and Microbial Technology 27:631-635 (2000))。乾燥細胞重量当たりさらに高い比率の脂質蓄積が報告されてきた。その中には、増加されたNaCl条件で増殖されるデュマリエラ・テルチオレクタ(Dumaliella tertiolecta)培養物において70%の脂質(乾燥細胞重量)蓄積があること(Takagi et al., Journal of Bioscience and Bioengineering 101(3): 223-226 (2006))及びボツリオコッカス・ブラウニ(Botryococcus braunii)培養物で75%の脂質蓄積があること(Banerjee et al., Critical Reviews in Biotechnology 22(3): 245-279 (2002))が含まれる。これらや類似した方法を、微細藻類の光合成及び従属栄養性増殖に用いて油を生産するのに用いることができる。
【0151】
本明細書中に記載される培養方法により生成され、本発明に従って有用な微細藻類バイオマスは乾燥重量当たり少なくとも10%の微細藻類油を含む。いくつかの実施形態では、前記微細藻類バイオマスは、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、又は少なくとも60%の乾燥重量当たりの微細藻類油を含む。いくつかの実施形態では、前記微細藻類バイオマスは、乾燥重量当たり10から90%の微細藻類油、25から75%の微細藻類油、40から75%の微細藻類油、又は50から70%の微細藻類油を含む。
【0152】
種々の実施形態では、前記微細藻類バイオマスは、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも38%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも 48%、少なくとも49%、又は少なくとも50%の乾燥重量当たりの微細藻類油を含む。他の実施形態では、前記微細藻類バイオマスは、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも 73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、又は少なくとも90%の乾燥重量当たりの微細藻類油を含む。
【0153】
<a.非典型的な炭素源の使用>微生物は、非典型的な炭素源(例、スクロース(ショ糖)、キシロース、セルロース系物質、モロコシシロップ、廃棄物)上で自然に増殖することができるか、又は増殖するように操作される。適したセルロース系材料には、主として食用でも繊維製品でもない農作物(すなわち、植物の一部、主茎及び葉)と共に、草木穀物及び木質エネルギー穀物(woody energy crops)由来の残留物を含む。例には、農業廃棄物(例、サトウキビバガス、籾殻、トウモロコシ繊維(茎、葉、穀皮、及び穂軸を含む)、麦わら、稲わら、テンサイパルプ、柑橘類パルプ、柑橘類の皮);林業廃棄物(例、広葉樹及び針葉樹間伐材)、木材作業由来の広葉樹及び針葉樹残留物;木材廃棄物(例、製材工場廃棄物(木材チップ、おがくず)、パルプ工場廃棄物);都市廃棄物(例、地方(市町村)固形廃棄物の紙分画、都市木材廃棄物、及び都市緑の廃棄物(例、地方ガラス断片));木材建設廃棄物を含む。その他のセルロース系素材には、専用のセルロース系穀物(例、スイッチグラス、ハイブリッドポプラ材、ススキ)、サトウキビ繊維(fiber cane)、及びモロコシ繊維を含む。そのような材料から生産される五炭糖には、キシロースを含む。
【0154】
別の従属栄養性増殖方法では、微細藻類種は、混合炭素源(例、モロコシシロップ、純粋モロコシ)を利用することができる。モロコシシロップは、サトウモロコシのジュースから生産される。その糖プロフィールは、主にグルコース(デキストロース)、フルクトース、スクロースからなる。モロコシを唯一の炭素源として利用する能力について、微細藻類株をスクリーニングすることができる。非限定例として、以下の実施例で説明するように、(クロレラ・プロトセコイデス、クロレラ・ルテオビルディス(Chlorella luteovirdis)、プロトテカ・モリフォルミス、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)、パラクロレラ・ケッセレリ(Parachlorella kessleri)、プロトテカ・スタグノラ(Prototheca stagnora))の数種類の株由来の微細藻類は、従属栄養性条件においてモロコシシロップを利用することができる。
【0155】
いくつかの微生物は、化合物の不均質な原料である固定炭素源(例、地方(市町村)廃棄物、二次処理汚水、廃水、並びに固定炭素の他の原料及び他の栄養物(例、硫酸類、リン酸類、硝酸類))上で、自然増殖する又は増殖するよう操作可能である。汚水構成成分が脂質の生産において栄養源として役割を果たし、その培養物は、本発明の方法に従って、in situでのエステル転移及びバイオディーゼル生産のため、又は他の化学修飾のための安価な脂質源を提供する。
【0156】
バイオディーゼル又は他の化学修飾された脂質の生産コストを下げるために、未精製の、部分精製の又は精製されたグリセロールで、脂質エステル転移の副産物として生産されるものが、例えば、脂質生産微生物培養物を発酵するために原料として用いられてもよい。従って、本発明は、第1の微生物培養物中で微生物(例、微細藻類)を培養する工程と、以下に説明されるように、前記微生物バイオマスをエステル転移反応に供して脂肪酸エステル(類)とグリセロールとを生産する工程と、及び前記グリセロールを第2の微生物培養物へ原料として添加する工程とを含む方法を提供する。第1及び第2の微生物培養物は、必ずしも必要ではないが、同一微生物の培養物であってもよい。所望するならば、連続システムを、本発明に従って実行することができ、それにより、培養物より回収された脂質から生産されるグリセロールを、同一の培養物に再供給することができる。
【0157】
複数属の真核及び原核微生物の両者(クロレラ属、ナビクラ(Navicula)属、セネデスムス(Scenedesmus)属、スピルリナ(Spirulina)属の微生物を含む)の発酵のためにグリセルールを使用することを取り入れた改善された培養パラメーターを、本明細書中で説明する。本実施例が実証するように、極めて多様な進化系統の微生物(複数の異なるクロレラ種の培養物と同様に、クロレラ、ナビクラ、セネデスムス、スピルリナを含む)が、精製された試薬級グリセロールだけでなく、バイオディーゼルエステル転移反応由来の酸性及び非酸性のグリセ−ロール副産物上で非常に良く増殖する。いくつかの例では、微細藻類(例、クロレラ種)は、グルコースの存在下よりもグリセロールの存在下でより速やかに細胞分裂を行う。
【0158】
本発明の方法は、例えば、細胞にまずグリセロールを供給して急速に細胞密度を増加させ、そして、次にグルコースを供給して脂質を蓄積させるという二段階増殖プロセスを介して培養される微生物を利用することができる。このことは、エステル転移プロセスのグリセロール副産物を生産過程に戻すという有意な経済的利益を提供する。他の供給方法(例、グリセロールとグルコースとの混合物を供給する方法、グルコースを増殖期間に供給し及びグリセロールを脂質生産期間に供給する方法)も提供される。そのような混合物を供給することは、経済的利益を提供する。また、本発明の方法には、微生物に、代替糖(例、スクロース(ショ糖))をグリセロールとの種々の組み合わせで供給する方法を含む。これらの代替手段は極めて多様な進化系統の微生物(原核生物と真核生物を含む)由来の微生物で実証されてきた。そのことは、本発明の方法に従う微生物発酵のためのこれら代替培養の実効性を実証する。
【0159】
複数のクロレラ種、及びクロレラ種の範疇の複数株は、等価量の試薬級グリセロール中よりもエステル転移由来のグリセロール副産物の存在下でよりよく活動する。エステル転移由来のグリセロール副産物は、グリセロールに加えて残留メタノールと他の夾雑物とを通常含有する。例えば、
図1から6は、クロレラ・プロトセコイデス及びクロレラ・ケッセレリの複数の株が、純粋な試薬級グリセロールで増殖される場合よりもバイオディーゼルエステル転移由来の酸性及び非酸性グリセロール副産物においてより優れた生産性を示すことを実証する。他の微生物(例、セネデスムス、ナビクラ)も、等価量の試薬級グリセロール中よりも、エステル転移由来のグリセロール副産物の存在下においてより良く活動することができる。
【0160】
図1は、1リットル当たりの乾燥細胞重量(1リットル当たりのDCW)が、純粋なグリセロールでよりもバイオディーゼルグリセロール副産物での方が高いことを示し、細胞がグリセロール単独で又はグルコースと組み合わせて増殖された場合においても、この傾向は当てはまる。
図2は、他のクロレラの株においても同じ傾向であることを示す。
図12(b)は、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)の1リットル当たりの乾燥細胞重量が、純粋な試薬級グリセロールより、バイオディーゼル副産物の酸性及び非酸性グリセロール上での方が高いことを実証する。
図13は、ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)の1リットル当たりの乾燥細胞重量が、純粋な試薬級グリセロールよりバイオディーゼルの副産物である非酸性のグリセロール上での方が高いことを実証する。
【0161】
図3及び4は、複数のクロレラ種及びクロレラ種の範疇の複数株では、細胞が等価濃度の純粋な試薬級グリセロールの存在下で培養される場合よりも、バイオディーゼルグリセロール副産物の存在下で培養される場合の方が1リットル当たりの脂質レベル(又は脂質含量)が高いことを実証する。
【0162】
図5及び6は、複数のクロレラ種及びクロレラ種の範疇の複数株では、等価濃度の純粋な試薬級グリセロールの存在下で培養される場合よりも、バイオディーゼルグリセロール副産物の存在下で培養される場合の方が、脂質として高い乾燥細胞重量パーセンテージ(細胞重量割合としての脂質)で蓄積することを実証する。
図11は、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)とナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)の双方が、等価濃度の純粋な試薬級グリセロールの存在下で培養される場合よりも、バイオディーゼルグリセロール副産物の存在下で培養される場合の方が、脂質として高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積することを実証する。
図12(a)は、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)では、等価濃度の純粋な試薬級グリセロールの存在下で培養される場合よりも、バイオディーゼルグリセロール副産物の存在下で培養される場合の方が、脂質として高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積することができることを実証する。
【0163】
さらに、複数の微生物種(微細藻類(例、クロレラ、セネデスムス、ナビクラ、スピルリナ)を含む)は、グルコースだけの存在下よりも、グリセロールとグルコースとの混合物の存在下で、バイオディーゼルを生産するものとしての良好な特徴を呈する。従って、
図7は、クロレラが、2%グルコースの存在下よりも、1%グリセロール/1%グルコースの存在下の方が、培養物1リットル当たりのより高い脂質レベル(含量)を蓄積することができることを実証する。
図12(b)は、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)の1リットル当たりの乾燥細胞重量が、2%グルコースの存在下よりも1%バイオディーゼル副産物グリセロール/1%グルコースの存在下で培養される場合の方が高いことを実証する。
図13は、ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)の1リットル当たりの乾燥細胞重量が、2%グルコースの存在下よりも1%バイオディーゼル副産物グリセロール/1%グルコースの存在下で培養される場合の方が高いことを実証する。
【0164】
図8は、クロレラが、グルコースのみの存在下で培養される場合よりも等しい濃度(重量パーセント)のグリセロールとグルコースとの混合物の存在下で培養される場合の方が、脂質としてより高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積できることを実証する。
図11(a)は、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)が、グルコースのみの存在下で培養される場合よりも、バイオディーゼル副産物であるグリセロールとグルコースとの等しい濃度(重量パーセント)の混合物の存在下で培養される場合の方が、脂質としてより高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積できることを実証する。
図11(b)は、ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)が、グルコースのみの存在下で培養されるよりも、試薬級のグリセロールとグルコースとの等しい濃度(重量パーセント)の混合物の存在下、及びバイオディーゼル副産物グリセロールとグルコースとの等しい濃度の混合物の存在下で培養される方が、脂質として高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積することができることを実証する。
図12(b)は、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)が、グルコースのみの存在下で培養されるよりもバイオディーゼル副産物グリセロールとグルコースとの等しい濃度(重量パーセント)の混合物の存在下で培養される場合の方が、脂質としてより高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積することができることを実証する。乾燥細胞重量パーセンテージとして脂質を増加させるさせるそのような方法は、バイオマスが直接的なエステル転移反応に供される場合、低い脂質パーセンテージのバイオマスよりも、バイオディーゼル中で、より少ない量のヘテロ原子を生産するバイオマスを生成するのに有用である。
【0165】
微生物(微細藻類(例、クロレラ、セネデスムス、ナビクラ)を含む)にグリセロールとグルコースとを順次加えることにより、グリセルールとグルコースとの単一バッチの混合物としての場合よりもむしろ、さらなる収量増加を生み出すことができることがさらに発見されてきた。複数のクロレラ種及びクロレラ種の範疇の複数株のこの特質を、バイオディーゼルグリセロール副産物と試薬級グリセロールとの双方の存在下で試験した。
【0166】
従って、
図8は、クロレラが、実験開始時に等量のグリセロールとグルコースとを一緒に加える場合よりも、第1の期間にグリセロールを培養に添加し、次にグルコースを加えて第2の期間の間、培養を続ける場合の方が、脂質としてより高い乾燥細胞重量パーセンテージで蓄積することができることを実証する。乾燥細胞重量パーセンテージとして脂質を増加させるさせるそのような方法は、バイオマスが直接的なエステル転移反応又は化学修飾の他の方法に供される場合、低い脂質パーセンテージのバイオマスよりも、バイオディーゼル中又は他の生成物中で、より少ない量のヘテロ原子を生産するバイオマスを生成するのに有用である。
図9は、クロレラでは、培養開始時に等量のグリセロールとグルコースとを一緒に加える場合よりも、グリセロールとグルコースを順次加える場合の方が、培養物1リットル当たりの脂質レベル(含量)が高いことを示す。酸性のバイオディーゼル副産物グリセロール、非酸性のバイオディーゼル副産物グリセロール、又は試薬級グリセロールを用いた場合にも、この傾向が観察された。
【0167】
図10は、2つの異なる種のクロレラの4つの異なる株が、実験開始時に等量のグリセロールとグルコースとを同時に添加する場合より、グリセロールとグルコースとを順次加える場合の方が、培養物1リットル当たりの乾燥細胞重量をより高く蓄積することを実証する。酸性のバイオディーゼル副産物グリセロール、非酸性のバイオディーゼル副産物グリセロール、又は試薬級グリセロールを用いた場合にも、この傾向が観察された。
図14(a)及び(b)は、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)およびナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)の両方が、発酵の開始時に同一量のグリセロールとグルコースを加えることに比較して、バイオディーゼル副産物グリセロールだけが第1の期間に培養に加えられ、引き続きその後グルコースを加える方が、1リットル当たりの細胞乾燥重量の増加を示すことができることを実証する。
【0168】
従って、微生物脂質生産における3つの異なる生産性マーカー(1リットル当たりの乾燥細胞重量、リットル中の脂質グラム、および脂質としての乾燥細胞重量パーセンテージ)は、バイオディーゼル副産物の使用および炭素源の時間的分離によって改善される。
【0169】
バイオディーゼルや他の化学修飾された脂質を生産するコストは、原料としてセルロース系のバイオマスを使用することによっても減少することができる。セルロース系バイオマス(例、茎葉(例、トウモロコシ茎葉))は、安価で容易に入手できる。しかしながら、酵母に原料としてこの物質を使用する試みは失敗してきた。特に、そのような原料は、酵母の増殖に阻害的であることが見いだされてきて、そして、酵母はセルロース系物質から生産される五炭糖(例、ヘミセルロース由来のキシロース)を使用することができない。対照的に、微細藻類は加工されたセルロース系物質上で増殖することができる。従って、本発明は、本明細書中に記載される本方法に従ってエステル転移可能な脂質の生産のために、セルロース系物質及び/又は五炭糖の存在下で微細藻類を培養する方法を提供する。セルロース系物質は、一般に、セルロース(40から60%の乾燥重量)、ヘミセルロース(20から40%の乾燥重量)、及びリグニン(10から30%の乾燥重量)を含む。
【0170】
驚くべきことに、クロレラ・プロトセコイデスは、グルコース又はキシロース単独のいずれかで培養される場合よりも、グルコースとキシロースを組み合わせて培養される場合の方が、より高い生産性レベルを呈することができる。この相乗的な効果は、
図15に示されるように、それがキシロースとグルコースとの組み合わせで(例、セルロース系物質で)クロレラを培養することを可能にするという有意な利点を提供する。
【0171】
バイオディーゼルとして使用するのに適した脂質の収量を増加させ、及び/又は生産コストを減少させる処理条件の具体例を、上述のように個別に若しくは組み合わせて使用することができる。また、本発明には、上述した方法に使用するのにずっとさらに適した微生物を作り出すために、微生物(例、微細藻類)の選抜及び/又は遺伝学的操作をすることを含む。例えば、繁殖及び/又は脂質生産を増加させるために上述した任意の原料を利用する能力が増大した微生物を使用することは、本発明の方法の範囲に入る。
【0172】
バイオディーゼル又は他の化学修飾された脂質を生産するコストは、原料としてスクロース(例えば、サトウキビから生産されたスクロースを含む)を用いることで減少することができる。本発明の方法には、炭素源としてスクロース(ショ糖)を利用することができる改変されたクロレラ種を使用することを含む。例えば、ショ糖輸送体およびショ糖インベルターゼの発現は、クロレラが培養培地から細胞へスクロースを輸送することを可能にし、スクロースを加水分解してグルコースとフルクトースを生成することを可能にする。 任意ではあるが、フルクトースの最大限のリン酸化に内在性のヘキソキナーゼ活性が不十分な例では、フルクトキナーゼも発現してもよい。適したショ糖輸送体の例には、ジェンバンクアクセス番号CAD91334、CAB92307、及びCAA53390の番号で記述されるものを含む。適したショ糖インベルターゼの例には、ジェンバンクアクセス番号CAB95010、NP_012104、及びCAA06839の番号で記述されたものを含む。適したフルクトキナーゼの例には、ジェンバンクアクセス番号P26984、 P26420、及びCAA43322の番号で記述されたものを含む。微細藻類(クロレラを含む)の形質転換のためのベクターで、1又は複数のそのような遺伝子をコードするベクターを、例えば、国際公開WO2008/151149パンフレットに記載されるように設計することができる。
【0173】
ショ糖インベルターゼの分泌は、スクロースを細胞へと輸送することができる輸送体の発現の必要を不必要にすることができる。このことは、分泌されたインベルターゼがスクロース分子をグルコース分子とフルクトース分子とに転換するのを触媒するからであり、その両分子は輸送されて、本明細書中に開示される微生物に利用可能である。分泌シグナルを有するショ糖インベルターゼを発現することにより、細胞外でインベルターゼ活性を生成する。クロレラで活性のある分泌シグナルの例に関しては、Hawkins et al., Current Microbiology Vol. 38 (1999), pp. 335-341を参照されたい。そのようなタンパク質を発現することにより、エネルギー源としてすでに細胞外のグルコースを利用することができる細胞が、細胞外エネルギー源としてスクロースを利用することを可能にする。本明細書中で実証されるように、エネルギー源として細胞外フルクトースと細胞外グルコースとの両者を使用することができる細胞(例、クロレラ・プロトセコイデス)中では、インベルターゼの分泌は、効率的で安価なエネルギー源としてスクロースを使用するために必要な唯一の触媒活性を提供することができる。
【0174】
外来性の分泌可能なショ糖インベルターゼを発現する微生物の増殖能を、クロレラ・プロトセコイデスの培養培地にインベルターゼを添加することにより説明する。前記インベルターゼの添加により、細胞がリグニンを含有する糖源(例、糖蜜)上で発酵されるのを許容する。藻類又は他の微生物は、純粋なグルコース中で増殖するのと同様に糖蜜中で増殖するように、本明細書中で記載されるよう設計され得、サトウキビ加工のこの低価値廃棄物の使用により、炭化水素生産において有意にコスト削減することができる。
図19と20は、細胞外ショ糖インベルターゼ存在下又は非存在下でグルコース若しくはスクロース上での増殖に比較して、3つの糖蜜源(BS1、BS2、HTMと表示される)上での細胞増殖を示す。
【0175】
ショ糖輸送体を発現する細胞において、それに加えて、スクロースが細胞に入ることを可能にする任意の炭水化物輸送体を発現する細胞において、ショ糖インベルターゼを細胞内に発現することもできる。
【0176】
<B.脂質経路操作>
本明細書中に記載されるように、本発明の方法に従って有用な微生物は、任意ではあるが、微生物を培養するのに(例、スクロース原料の有効利用を促進するためのショ糖インベルターゼの発現)又は本発明の直接的な化学修飾方法を実施するのに(例、バイオマスの破壊を促進するための溶菌遺伝子の発現、及び/又はエステル転移反応を触媒するためのリパーゼ遺伝子の発現)、利点があり得る特定の遺伝子を発現するように操作されてもよい。また、オプションの遺伝子操作を、微生物の脂質経路を操作するのに有利なように用いることができる。生産される脂質の特性と比率を変更するため、及び/又は脂質への炭素フラックスを増加させるために、この経路を改変することができる。
【0177】
<1.生産される脂質の特性及び/又は比率の変更>微細藻類の場合、いくつかの野生型細胞は、すでに良好な増殖特性を有するが、所望される脂質タイプ又は脂質量を生産しない。 例には、ピロボツリス(Pyrobotrys)、フォルミディウム(Phormidium)、アグメネルム(Agmenellum)、カルテリア(Carteria)、レポシンシス(Lepocinclis)、ピロボツリス(Pyrobotrys)、ニッツチア(Nitzschia)、レポシンシス(Lepocinclis)、アナバエナ(Anabaena)、エウグレナ(Euglena)、スピロギラ(Spirogyra)、コロコッカム(Chlorococcum)、テトラエドロン(Tetraedron)、オスシラトリア(Oscillatoria)、ファガス(Phagus)およびクロロゴニウム(Chlorogonium)を含み、それらは地方(市町村)汚水又は廃水中で増殖するのに望ましい増殖特性を有する。改良された脂質生産特性を有するようにこれらの細胞を操作することができる。所望される特性には、単位量当たり及び/若しくは単位時間当たりの脂質収量と炭素鎖長を(例、バイオディーゼル生産のため又は炭化水素原料を必要とする工業的応用のため)最適化すること、2重若しくは3重結合の数を任意ではあるがゼロに減少させること、リング及び環状構造を取り除くか除去すること、並びに特定種の脂質の若しくは異なる脂質集団の水素:炭素比率を増加させることを含む。また、望ましい脂質を生産する微細藻類を操作して、さらにずっと有利な結果を有するようにすることもできる。そのような微細藻類の例には、クロレラ属の種を含む。
【0178】
特定の実施形態において、脂肪酸合成のために代謝における分岐点を制御する1又は複数のキー酵素を、脂質生産を改善するためにアップレギュレーションするかまたはダウンレギュレーションすることができる。例えば、目的の酵素をコードする遺伝子を発現する(例、転写を増加させる強いプロモーター及び/又はエンハンサー要素を使用する)発現コンストラクトで細胞を形質転換することにより、アップレギュレーションを達成することができる。そのようなコンストラクトには、形質転換体を選択に供することができるように選択マーカーを含むことができ、そのことにより前記コンストラクトの増幅及びコードされる酵素の発現レベルの増加を生じることができる。本発明の方法に従ってアップレギュレーションするのに適した酵素の例には、ピルビン酸をアセチルCoAに変換する役割を担うピルビン酸デヒドロゲナーゼ(例(微細藻類からのいくつかの例)には、ジェンバンク登録番号NP_415392、AAA53047、QlXDMl及びCAF05587の番号で記載されるものを含む)を含む。ピルビン酸デヒドロゲナーゼのアップレギュレーションはアセチルCoA生産を増加させることができ、従って脂肪酸合成を増加させる。アセチルCoAカルボキシラーゼは、脂肪酸合成の初期工程を触媒する。従って、この酵素(例(微細藻類からのいくつかの例)には、ジェンバンク登録番号BAA94752、AAA75528、AAA81471、YP_537052、YP_536879、NP_045833、及びBAA57908の番号で記載されるものを含む)は脂肪酸生産を増加させるためにアップレギュレート可能である。脂肪合成の間に成長するアシル鎖を担持するアシル担体タンパク質(ACP)(例、微細藻類からのいくつかの例には、ジェンバンク登録番号A0T0F8、P51280、NP_849041、YP_874433の番号で記載されるものを含む)をアップレギュレートすることにより、脂肪酸生産を増加させることもできる。グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、脂肪酸合成の律速段階を触媒する。この酵素(例、微細藻類からのいくつかの例には、ジェンバンク登録番号AAA74319、AAA33122、AAA37647、P44857、及びABO94442の番号で記載されるものを含む)のアップレギュレーションにより、脂肪酸生産を増加することができる。前述しているタンパク質は、(クロレラ属の種を含む)微細藻類中で発現するための候補である。
【0179】
目的の酵素のダウンレギュレーションは、例えば、アンチセンス、触媒RNA/DNA、RNA干渉(RNAi)、「ノックアウト」、「ノックダウン」、または他の突然変異生成技術を使用して実現することができる。細胞内抗体を用いて酵素発現/機能を阻害することもできる。本発明の方法に従ってダウンレギュレーションするのに適した酵素の例には、トリカルボン酸(TCA)サイクルの一部としてアセチルCoAを消費するクエン酸シンターゼを含む。クエン酸シンターゼをダウンレギュレートすることにより、より多くのアセチルCoAを脂肪酸合成経路に押し込むことができる。
【0180】
グローバルな調節因子は、脂肪酸生合成経路の遺伝子発現を調整する。従って、複数の脂質合成遺伝子発現を必要に応じてそれぞれ阻害若しくは向上させるため、及び究極的には脂質生産を増加させるために、1若しくは複数のグローバルな調節因子をアップレギュレート又はダウンレギュレートすることができる。例には、ステロール調節要素結合タンパク質(SREBPs)(例、SREBP-1a及びSREBP-1c)(例、ジェンバンク登録番号NP_035610およびQ9WTN3にて記載されるものを参照されたい)を含む。基準点酵素の制御に関しては、上述するように、グローバルな調節因子をアップレギュレート又はダウンレギュレートすることができる。
【0181】
遺伝学的に操作されて、脂質経路酵素(例、脂肪アシルACPチオエステラーゼ(登録番号がある表4中の例を参照されたい)、又は脂質合成期間中アシル担体タンパク質から望ましい炭素長を有する脂肪酸の切断を促進することができるアシル担体タンパク質(ACP))をコードする1又は複数の外来遺伝子を発現した微生物(例、微細藻類、油性酵母、細菌、又は真菌)を用いて、本発明の方法を実施することもできる。脂肪アシルACPチオエステラーゼは、特定の炭素鎖長を有する脂肪酸に対する特異性に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、誘導可能プロモーターに作動可能に連結された遺伝子から、前記脂肪アシルACPチオエステラーゼを発現することができるし、及び/又は細胞内コンパートメントにおいて発現することもできる。いくつかの実施形態では、脂肪アシルACPチオエステラーゼ及び天然に共発現されるACPをコードする遺伝子を、任意ではあるが、上述された他の脂質経路酵素をコードする1又は複数の遺伝子と共に細胞へ形質転換してもよい。他の実施形態では、前記ACPと前記脂肪アシルACPチオエステラーゼは、それらが特定の組織若しくは生物において天然に共発現されるか又はされないかに関わらず、本発明の微生物及び方法中にその2つが一緒に用いられる場合、利点を分け与えるもの同士お互いに親和性を有することができる。従って、そのような自然に共発現される酵素のペア双方を発現する細胞で、また、ACPから長さ特異的な炭素鎖の切断を促進するためにお互いに相互作用する親和性を共有するペアで、本発明の方法を実施することができる。
【0182】
本発明で使用するのに適したさらなる改変の例は、2006年8月15日に出願された現在放棄された米国特許仮出願第60/837,839号及び2007年8月15日に出願された米国特許出願第11/893,364号に記載されていて、それぞれの出願は、参照により本明細書中に引用される。この出願は、2以上の外来遺伝子(1つ目は固定炭素源(例、スクロース)の輸送体をコードするもの、2つ目はショ糖インベルターゼ酵素をコードするもの)を発現する微細藻類株で遺伝子操作されたものを開示している。その結果としてできた発酵可能な生物は、従前に知られた生産方法により取得可能であったものよりも、低い製造コストで脂質を生産する。この同時係属出願は、上述した2つの外来遺伝子の挿入を、かってないほどの脂質生産への炭素フラックスを導く定方向及び/又はランダム突然変異を介して、多糖類生合成の破壊と組み合わせることができることをも教示する。個別に及び組み合わせた場合、栄養性転換、脂質生産を変更するよな操作、及び外来酵素を用いての処理は、微生物により生産される脂質組成物を変更する。前記変更とは、生産される脂質量、他の脂質に比べての生産される1又は複数の脂質種の量、及び/又は微生物中で生産される脂質種の型の変化であってもよい。例えば、微細藻類を操作して、より多量の及び/若しくはより高比率のTAGs、又はより高割合の特定炭素長の脂肪酸分子を有するTAGsを生産することができる。
【0183】
本発明の微生物と方法とに使用するのに適した脂肪アシルACPチオエステラーゼは、限定はされないが、表4に一覧表にされたものを含む。
【0184】
[表4]脂肪アシルACPチオエステラーゼとジェンバンク登録番号
ウンベルラリア・カリフォルニカ(Umbellularia californica)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAC49001)
シナモム・キャンフォラ(Cinnamomum camphora)脂肪ACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#Q39473)
ウンベルラリア・カリフォルニカ(Umbellularia californica)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#Q41635)
ミリスティカ・フラグランス(Myristica fragrans)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAB71729)
ミリスティカ・フラグランス(Myristica fragrans)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAB71730)
アブラヤシ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#ABD83939)
アブラヤシ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAD42220)
ポピュラス・トメントサ(Populus tomentosa)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#ABC47311)
シロイヌナズナ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#NP_172327)
シロイヌナズナ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#CAA85387)
シロイヌナズナ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#CAA85388)
ゴッシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#Q9SQI3)
クフェア・ランセオラタ(Cuphea lanceolata)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#CAA54060)
クフェア・ホケリアナ(Cuphea hookeriana)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAC72882)
クフェア・カロフィラ・サブSP・メソステモン(Cuphea calophylla subsp.mesostemon)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#ABB71581)
クフェア・ランセオレイト(Cuphea lanceolata)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#CAC19933)
アブラヤシ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAL15645)
クフェア・ホケリアナ(Cuphea hookeriana)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#Q39513)
ゴッシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAD01982)
ブドウ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#CAN81819)
マンゴスチン脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAB51525)
カラシナ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#ABI18986)
マドフカ・ロンギフォリア(Madhuca longifolia)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAX51637)
セイヨウアブラナ脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#ABH11710)
イネ(インディカ栽培品種-グループ)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#EAY86877)
イネ(ジャポニカ栽培品種-グループ)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#NP_001068400)
イネ(インディカ栽培品種-グループ)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#EAY99617)
クフェア・ホケリアナ(Cuphea hookeriana)脂肪アシルACPチオエステラーゼ(ジェンバンク#AAC49269)
【0185】
本発明の微生物と方法とに使用されるのに適した他の酵素には、表4に一覧表にされたタンパク質の1つと少なくとも70%のアミノ酸同一性を有するもの、及びそれに対応する所望の酵素活性(すなわち、アシル担体タンパク質から脂肪酸を切断するもの)を呈するものを含む。さらなる実施形態では、前記酵素活性が、上記した配列の1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性を有する配列に存在し、それらは参照により本明細書に引用される。
【0186】
上記した脂質経路酵素は、微生物(例、微細藻類、油性酵母、真菌)又は微生物集団から種々の脂質を生産するのに有用であり、それにより脂肪アシルACPチオエステラーゼは、脂質合成中にアシル担体タンパク質(ACP)から脂肪酸を切り離す。これらの脂質経路酵素は、特定の炭素原子数を含む基質に作用する特異性を有することができる。例えば、脂肪アシルACPチオエステラーゼは、ACPから16個の炭素原子を有する脂肪酸を切り離す特異性を有していてもよい。従って、種々の実施形態では、微生物は、基質に含まれる炭素原子数に関して酵素活性(例、ACPから脂肪酸を切断するもの)を触媒する特異性を有するタンパク質をコードする外来遺伝子を含むことができる。種々の実施形態では、前記酵素特異性は、8から34個の炭素原子、好ましくは8から18個の炭素原子、及びさらに好ましくは14から18個の炭素原子を有する基質に対するものであってもよい。
【0187】
発現される外来遺伝子の所望の組み合わせを選択することにより、微生物により生成される脂質構成成分を目的に合わせることができる。前記微生物は、上記したように培養される場合、ACPに連結された脂肪酸を合成し、脂肪アシルACPチオエステラーゼが前記ACPからの脂肪酸の切断を触媒して、さらなる酵素処理を介してその脂肪酸分子を取り込むTAGを生成する。
【0188】
<2.脂質経路への増加した炭素フラックス>いくつかの微細藻類は、有意量の非脂質代謝物(例、多糖類)を生産する。多糖類生合成は、細胞が利用できる総代謝エネルギーのかなりの割合を使用し得るので、脂質生産細胞を突然変異し次に多糖類生産が減少若しくは除去されたものをスクリーニングすることは、高い脂質収量を生産することができる株を生成する。
【0189】
クロレラにおけるトランスジーンの発現例を、これらの文献(例、Current Microbiology Vol. 35 (1997), pp. 356-362; Sheng Wu Gong Cheng Xue Bao. 2000 July;16(4):443-6; Current Microbiology Vol. 38 (1999), pp. 335-341; Appl Microbiol Biotechnol (2006) 72: 197-205; Marine Biotechnology 4, 63-73, 2002; Current Genetics 39:5, 365-370 (2001); Plant Cell Reports 18:9, 778-780, (1999); Biologia Plantarium 42(2): 209-216, (1999); Plant Pathol. J. 21(1): 13-20, (2005)を参照されたい)に見いだすことができる。クロレラへトランスジーンを導入するための任意の便利な技術を、本発明の目的のために用いることができる。
【0190】
油性酵母(例、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))におけるトランスジーンの発現例を、この文献 (例、 Bordes et al., J Microbiol Methods, Jun.27 (2007)を参照されたい)に見いだすことができる。真菌(例、モルティエレラ・アルペン(Mortierella alpine)、ケカビ属シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceus))におけるトランスジーンの発現例を、これらの文献(例、Microbiology, July; 153(Pt.7):2013-25 (2007); Mol Genet Genomics, June; 271(5):595-602 (2004); Curr Genet, March;21(3):215-23 (1992); Current Microbiology, 30(2):83-86 (1995); Sakuradani, NISR Research Grant,「有用な脂質生産微生物の代謝操作の研究」(2004);及び PCT/JP2004/012021を参照されたい)に見いだすこともできる。細菌(例、大腸菌)における外来遺伝子の発現例は、周知である。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al. 3d edition, 2001, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい。
【0191】
<IV.in situエステル転移方法>本発明の方法に従って、TAGsをin situでエステル転移して脂肪酸アルキルエステルへとすることを、上記した微生物培養物から生成したバイオマスで実行することができる。いくつかの実施形態では、バイオマスは微生物の異なる種若しくは株の2以上の培養物を組み合わせたバイオマスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記異なる種と株は、実施例22と24に説明されるように互いに異なるグリセロ脂質プロフィールを有する。
【0192】
本発明のいくつかの方法では、微生物バイオマスは培養培地からまず回収されて、乾燥され、そしてそれからエステル転移反応に先行して、任意のバイオマス破壊処理に供される。本発明の他の方法では、微生物バイオマスは、乾燥及びエステル転移反応に先行してバイオマス破壊処理に供される。 いくつかの方法では、バイオマスを回収することは、例えば、細胞培養バイオリアクターの内容物をふるい若しくは類似した濾過装置に通過させ、水分と細胞培養培地とからバイオマスの細胞構成成分を分離することを含む。いくつかの実施形態では、バイオマスを回収することは、細胞培養物の細胞構成成分を処理してペースト又は低水分含量の組成物へとすることを含む。
【0193】
<A. 乾燥方法>本明細書中に記載された培養微生物から生成されるバイオマスを乾燥することは、エステル転移反応中さもなくば基質として利用可能な水分(以下により詳細に記述するが、所望の脂肪酸アルキルエステルよりもむしろ遊離脂肪酸の形成を導く)を除去する。本発明のin situでのエステル転移方法に使用されるバイオマスを乾燥されなければならない程度は、エステル転移プロセスに使用されるアルコール:バイオマス比率、アルコールのコスト、エステル転移反応が実行される反応容器のサイズに課されるコスト若しくは他の容量制限に依存している。理解可能なように、これらの因子が、バイオマスを乾燥するコストに対してバランスされて、バイオマスの「許容可能な乾燥度」を決定する。
【0194】
いくつかの実施形態では、バイオマスを、バイオマスがドラム中で回転されるドラム乾燥機を用いて乾燥することができ、及び、乾燥処理をはかどらせるように加熱されてもよい空気を適用して乾燥することができる。他の実施形態では、オーブンやスプレードライヤーを用いてバイオマスの乾燥を促進することができる。代わりに、凍結乾燥処理を介してバイオマスを乾燥してもよい。凍結乾燥処理は、バイオマスが凍結-乾燥チャンバー中で凍結される「凍結-乾燥」プロセスとして、略式的に記載される場合がある。凍結-乾燥チャンバーに真空を適用することは、バイオマスからの水分の昇華(一次乾燥)及び脱離(desorption)(二次乾燥)を生じ、結果として下記するようにさらなる処理に適した生成物を生じる。さらに他の実施形態では、本明細書中に記載される方法に従ってさらに処理されるためのバイオマスを適切に乾燥するために、前述したものの組み合わせを利用してもよい。
【0195】
<B.バイオマス破壊方法>いくつかの実施形態では、in situでのエステル転移反応に先行してバイオマスを破壊し、微生物の細胞内内容物がアルコール及び触媒のエステル転移用試薬に、より簡単にアクセスできるようにすることが望ましい場合がある。このことは、本発明の方法に従ってTAGsを脂肪酸アルキルエステル又は他の分子へと転換することを促進することを補助することができる。
【0196】
本発明のいくつかの方法では、バイオマスの破壊を、上述した1又は複数の乾燥処理にバイオマスを供する前に完了することができる。他の方法では、バイオマスの破壊は、そのような乾燥処理の後に行うことができる。いくつかの方法では、バイオマスを乾燥処理に供する若しくは供しないで、バイオマスの破壊の前に又は後に、バイオマスから水分を除去する。増殖の後に、任意ではあるが培養培地を遠心分離して濃縮された微生物バイオマスを生成するように、微生物を単離する。微生物細胞を溶菌して溶解物を生産することにより、バイオマスの破壊を完了することができる。 細胞溶菌は、任意の簡便な手段(例、熱誘導溶解、塩基添加、酸添加、酵素(例、プロテアーゼ、多糖類分解酵素(例、アミラーゼ))の使用を介して、超音波の使用を介して、力学的溶解、浸透圧ショックの使用を介して、溶菌ウイルスの感染、及び/又は1若しくは複数の溶菌遺伝子の発現)により達成されてもよい。微生物により生産された細胞内分子を放出させるため溶菌を実行する。微生物を溶菌するこれらの方法のいずれもを、単一の方法として又は組み合わせて使用することができる。
【0197】
細胞破壊の程度を顕微鏡解析により観察することができる。本明細書中に記載される1又は複数の方法を使用する場合、典型的には70%より多い細胞破損が観察される 好ましくは、細胞破損は80%より多く、より好ましくは90%より多く、及び最も好ましくは約100%である。
【0198】
特定の実施形態では、例えば、細胞脂質をエステル転移反応のための触媒(例、下記されるように発現されたリパーゼ、化学触媒)への暴露を増加させるため、増殖の後に微生物を溶菌する。リパーゼ発現(例、誘導可能なプロモーターを介しての)タイミング、細胞溶菌、及び、エステル転移反応条件(例、水分の除去、アルコール添加等)の調整は、リパーゼ媒介エステル転移からの脂肪酸エステル収量を最適化するように調整されてもよい。
【0199】
本発明の一実施形態では、微生物を溶菌する処理は、微生物を含む細胞懸濁物を加熱することを含む。この実施形態では、微生物を含む培養培地(又は、培養培地から単離される微生物懸濁物)は、加熱されて初めて微生物(すなわち、微生物の細胞壁及び膜)は、分解し又は破損する。典型的には、適用される温度は、少なくとも50℃である。より高い温度(例、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、又はそれより高い温度)が、より効率的な細胞溶菌のために用いられる。
【0200】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理は、微生物を含む細胞懸濁物に塩基を加えることを含む。前記塩基は、使用される微生物の少なくとも一部のタンパク質性の化合物を加水分解するのに十分なほど強力であるべきである。タンパク質を可溶化するのに有用な塩基は、化学の当該技術分野で公知である。これらの方法で有用な例示的な塩基には、限定はされないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びこれらの混合物の水酸化物、炭酸、並びに炭酸水素を含む。好ましい塩基はKOHである。 本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理は、微生物を含む細胞懸濁物に酸を加えることを含む。
【0201】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理は酵素で微生物を溶菌することを含む。微生物を溶菌する酵素には、プロテアーゼ及び多糖類分解酵素(例、ヘミセルラーゼ(hemicellulase)、ペクチナーゼ(pectinase)、セルラーゼ、ドリセラーゼ(driselase))を含む。任意ではあるが、クロレラ又はクロレラウイルス由来の多糖類分解酵素が好ましい。油保有バイオマスを溶解する好ましい酵素ペアは、アルカラーゼ(alcalase)とマンナウェイ(mannaway)(ノボザイム社)である。
【0202】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理を、超音波を用いて実行(すなわち、超音波処理)する。細胞を高周波音を用いて溶菌することもできる。前記音は、電気的に作り出されて、金属の先端部分を通して適切な濃度の細胞懸濁物へ伝播されてもよい。この超音波処理(又は超超音波処理)は、細胞懸濁物中に空洞を創出することに基づいて細胞の完全性を破壊する。
【0203】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理を力学的手段で実行する。細胞は力学的に溶菌されて、任意ではあるが、脂質のエステル転移を促進するようにホモジナイズされてもよい。例えば、圧力式破壊装置を用いて、細胞を含有するスラリーを固定された開口バルブを通してポンプすることができる。(1500バールまでの)高圧力を適用し、次に排出ノズルを通して急激に膨張させる。細胞破壊を、細胞の破裂を引き起こす3つの異なるメカニズム(バルブ上の衝突、開口部中での高い液体ずり応力、及び放出時の急激な圧力低下)により達成する。前記方法は、細胞内分子を放出させる。代わりに、ボールミルを用いてもよい。ボールミルでは、細胞を小さな研磨粒子(例、ビーズ)を用いて懸濁物中にて攪拌する。細胞は、ずり応力、ビーズ間で粉砕すること、及びビーズの衝突のため破損する。ビーズは細胞を破壊して、細胞内内容物を放出させる。ずり応力により(例、混合機(高速のもの又はワーリングブレンダー)、フレンチプレス、又は弱い細胞壁の場合遠心分離さえをも使用して)、細胞を破壊することもできる。
【0204】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理を、浸透圧ショックを適用して行う。
【0205】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理は、蒸気処理により(すなわち、圧力をかけた蒸気を加えることを通して)実行される。
細胞破壊のための微細藻類の蒸気処理は、例えば、米国特許第6,750,048号に記載される。
【0206】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理は、微生物の溶菌ウイルスへの感染を含む。多種多様のウイルスが本発明の方法での使用に適した微生物を溶菌することが知られ、特定の微生物のために特定の溶菌ウイルスを選択及び使用することは、当該技術分野の技術レベルの範囲にある。例えば、パラメシウム・バルサリア(paramecium bursaria)クロレラウイルス(PBCV-1)は、大型、正二十面体、プラークを形成する、2重鎖DNAウイルスで、ある種の単細胞、真核クロレラ様緑藻類中で複製及び溶菌するウイルスの一群(フィコドナウイルス科、クロロウイルス属)の原型である。従って、任意の感受性のある微細藻類(例、クロレラ・プロトセコイデス)を、その培養物を適したクロレラウイルスに感染させることにより溶菌することができる。クロレラ種をクロレラウイルスに感染させる方法は、公知である。例えば、Adv. Virus Res. 2006;66:293-336; Virology, 1999 April 25;257(1): 15-23; Virology, 2004 January 5;318(1):214-23; Nucleic Acids Symp. Ser. 2000;(44): 161-2; J. Virol. 2006 March;80(5):2437-44; and Annu. Rev. Microbiol. 1999;53:447-94を参照されたい。
【0207】
本発明の別の実施形態では、微生物を溶菌する処理は、自己溶菌を含む。この実施形態は、本発明の方法中で有用な微生物を遺伝子操作して、微生物を溶菌するであろう溶菌遺伝子を生産する。この溶菌遺伝子を誘導可能なプロモーターを用いて発現することができ、従って、培養培地中で所望の密度にまで細胞をまず増殖することができ、そしてその後回収し、次に、プロモーターを誘導して前記溶菌遺伝子を発現させて細胞を溶菌する。一実施形態では、溶菌遺伝子は、多糖類分解酵素をコードする。ある種の他の実施形態では、溶菌遺伝子は、溶菌ウイルス由来の遺伝子である。従って、例えば、クロレラウイルス由来の溶菌遺伝子をクロレラ(例、クロレラ・プロトセコイデス)で発現することができる。
【0208】
溶菌遺伝子の発現を、誘導可能なプロモーター(例、刺激(例、小分子、光、熱、及び他の刺激の存在)により誘導される微細藻類中で活性のあるプロモーター)を用いて好ましくは行う。クロレラウイルス由来の溶菌遺伝子は公知である。例えば、Virology 260, 308-315 (1999); FEMS Microbiology Letters 180 (1999) 45-53; Virology 263, 376-387 (1999); and Virology 230, 361-368 (1997)を参照されたい。
【0209】
特定の実施形態では、例えば、細胞脂質をエステル転移反応のための触媒(例、下記で議論されるリパーゼ、化学触媒)への暴露を増加させるため、増殖の後に微生物を溶菌する。リパーゼ発現(例、誘導可能なプロモーターを介しての)タイミング、細胞溶菌、及び、エステル転移反応条件(例、水分の除去、アルコール添加等)の改変は、リパーゼ媒介エステル転移からの脂肪酸エステル収量を最適化するように調整されてもよい。
【0210】
<C.エステル転移>脂肪酸アルキルエステルを含む親油性の層と細胞物質及びグリセロールを含む親水性層とを生成するために、上述の微生物により生産される脂質を本発明の方法に従ってエステル転移プロセスに供する。本発明のいくつかの方法では、親油性層を親水性細胞物質からその後分離する。
【0211】
<1.一般的化学プロセス>動物性及び植物性油は、典型的にはトリアシルグリセロール(TAGs)で作られていて、それは三価アルコール(例、グリセロール)を伴った遊離脂肪酸エステルである。エステル転移では、TAG中のグリセロールが低級アルキルアルコール(例、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール)で置換される。典型的な反応スキームは、以下である。
【化1】
【0212】
このスキームでは、アルコールを塩基で脱プロトン化して、より強力な求核試薬にする。一般には、エタノール又はメタノールを大過剰(50倍まで)使用する。通常、この反応は非常にゆっくりと進むか又は全く進まないであろう。酸又は塩基と共に熱を用いて、反応の速度を速めるのを補助するようにしてもよい。前記酸又は塩基はエステル転移反応により消費されない。従って、これらは、反応物ではなく触媒である。ほぼすべてのバイオディーゼルは、従来は塩基触媒技術を使って生産されてきて、それは低温度及び低圧力のみ必要とし、98%を超える転換収率を生み出す(但し、開始時の油は、水分と遊離脂肪酸とが低い)。
【0213】
エステル転移の特殊なケースは、グリセロール分解又は化学結合を分解するためのグリセロール(グリセリン)の使用である。グリセロール分解反応は、通常、酸又は塩基の添加により触媒される。単純エステル、脂肪、遊離脂肪酸又はTAGsにおいて、グリセロール分解を実行することができる。そこでは、メチルエステルが過剰なグリセロールと反応してモノ及び/又はジグリセリドを形成し、副産物としてメタノールを生産する。モノ及びジグリセリドは、乳化剤として有用であり、一般的には食品に加えられる。
【0214】
<2.エステル転移のために組換リパーゼを使用すること>また、塩基の代わりに酵素(例、リパーゼ)を用いて実験的にエステル転移を行ってきた。リパーゼ触媒エステル転移を、例えば、室温と80℃との間の温度、TAGの低級アルコールに対するモル比が1:1より大きく、好ましくは約3:1で実施することができる。本発明の方法に係るエステル転移での使用に適するリパーゼには、限定はされないが、表5に一覧表にされたものを含む。エステル転移に有用なリパーゼの他の例は、米国特許第4,798,793号、米国特許第4,940,845号、米国特許第5,156,963号、米国特許第5,342,768号、米国特許第5,776,741号、及び国際公開第WO89/01032号パンフレットに見いだされ、これらのそれぞれは参照により本明細書中に引用される。
【0215】
[表5]エステル転移に使用するためのリパーゼ
黒色麹菌リパーゼABG73614、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼB(novozym-435)CAA83122、カンジダ・サイリンドゥラセア(Candida cylindracea)リパーゼAAR24090、カンジタ・リポリティカ(Candida lipolytica)リパーゼ(リパーゼL、天野製薬(株))、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(例、リパーゼ-OF、名糖産業(株))、ムカー・ミエヘイ(Mucor miehei)リパーゼ(リポザイムIM 20)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)リパーゼAAA25882、リゾパス・ジャポニカ(Rhizopus japonicas)リパーゼ(Lilipase A-1OFG)Q7M4U7_1、リゾムカー・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼB34959、リゾープス・オリザエ(Rhizopus oryzae)リパーゼ(リパーゼF)AAF32408、セラチア・マルセスセンス リパーゼ(SM Enzyme)ABI13521、テルモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa)リパーゼCAB58509、リパーゼ P(ナガセChemteX社)およびリパーゼ QLM(名糖産業(株)、名古屋、日本)
【0216】
バイオディーゼルに適した脂肪酸エステルの生産のためにリパーゼを使用することの1つの挑戦は、強塩基処理に使用される水酸化ナトリウム(NaOH)の価格よりもリパーゼの価格がずっと高いということである。この挑戦に、リサイクル可能な固定化されたリパーゼを使用することにより取り組んできた。しかしながら、生産コストに関してリパーゼに基づく処理が強塩基処理と競合することができるようにするための最小限の繰り返し数の間リサイクルされた後にも、固定化されたリパーゼの活性を維持しなければならない。エステル転移において典型的に使用される低級アルコールによって、固定化されたリパーゼは毒される。米国特許第6,398,707号(2002年6月4日にWuらに付与されたもの)は、参照により本明細書中に引用されるが、固定化されたリパーゼの活性を向上させる方法、及び活性の減少した固定化されたリパーゼを再生する方法を記載する。
【0217】
特定の実施形態では、リパーゼが作用する脂質を生産する同一の微生物中に組換リパーゼを発現する。適した組換リパーゼには、上記表5に一覧表にされたもの及び/若しくは上記表5に一覧表にされたジェンバンク登録番号の下記述されるもの、又は上記表5に一覧表にされたリパーゼの1つと少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し及びリパーゼ活性を呈するポリペプチドを含む。さらなる実施形態では、前記酵素活性が、上記した配列の1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性を有する配列に存在し、それらは全て参照により本明細書に引用される。
【0218】
微生物(例、微細藻類)中のリパーゼ遺伝子発現の例示的ベクター設計は、微細藻類で活性のあるプロモーターと作動可能に連結されるリパーゼをコードする遺伝子を含む。代わりに、前記ベクターがリパーゼ遺伝子と作動可能に連結されるプロモーターを含まない場合、ベクター挿入時に内在性のプロモーターに作動可能になるようにリパーゼ遺伝子を細胞に形質転換することができる。 プロモーターを含まない形質転換方法が微細藻類で実証されてきた(例、 Plant Journal 14:4, (1998), pp.441-447を参照されたい)。前記ベクターは、抗生物質や除草剤に抵抗性を付与するタンパク質(すなわち、選択マーカー)をコードする第2の遺伝子を含むこともできる。任意ではあるが、1つ又は双方の遺伝子には、ポリアデニル化シグナルを含む3'非翻訳配列が引き続く。前記2つの遺伝子をコードする発現カセットを、ベクター又は複数の別々のベクターに物理的に連結することができる。微細藻類の同時形質転換を用いることもでき、そこでは、異なるベクター分子が細胞を形質転換するために同時に用いられる(例、Protist 2004 December; 155(4):381-93を参照されたい)。耐性カセットを欠いている細胞が増殖しないであろう条件下で、形質転換された細胞を、任意ではあるが、抗生物質や他の選択マーカーの存在下で増殖する能力に基づいて選択することができる。
【0219】
リパーゼ及び選択マーカーをコードするDNAは、コドンが最適化されたcDNAであってもよい。微細藻類で発現のために遺伝子を再コードする方法は、米国特許第7,135,290号に記載されている。さらなる情報は、ウェブアドレスwww.kazusa.orjp/codonで入手できる。
【0220】
多数のプロモーター(形質転換される藻類に内在性であるプロモーター、形質転換される藻類に内在性でないプロモーター(すなわち、他の藻類からのプロモーター、高等植物からのプロモーター、及び植物ウイルス若しくは藻類ウイルスからのプロモーター)を含むもの)が微細藻類で活性がある。微細藻類で活性のある外来性及び/又は内在性プロモーター、並びに微細藻類で機能する抗生物質耐性遺伝子が、当該技術分野で公知である。 外来性遺伝子を発現するのに用いられるプロモーターは、その遺伝子に天然に連結されているプロモーターであってもよいし、異種遺伝子であってもよい。いくつかのプロモーターは、1より多い種の微細藻類で活性がある。他のプロモーターは種特異的である。好適なプロモーターには、プロモーター(例、クラミドモナス・レインハードティ(Chlamydomonas reinhardtii)由来RBCS2)及びウイルスプロモーター(例、カリフラワーモザイクウイルス及びクロレラウイルスのもの)を含み、それらは、複数種の微細藻類で活性があることが示されてきた(例、Plant Cell Rep. 2005 Mar;23(10-11): 727-35、 J Microbiol. 2005 Aug;43(4): 361-5、 Mar Biotechnol (NY). 2002 Jan;4(1): 63-73を参照されたい)。
【0221】
プロモーター、cDNAs、及び3'UTRsとベクターの他の要素とを、自然源から単離される断片を用いてクローニング技術を介して創り出すことができる(例、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al. 3d edition, 2001, Cold Spring Harbor Press; 及び米国特許第4,683,202号を参照されたい)。代わりに、要素は公知の方法を用いて合成的に創り出さしてもよい(例、Gene 1995 October 16;164(1):49-53を参照されたい)。
【0222】
任意の適した技術(例、バイオリスティクス(biolistics)(遺伝子銃)、エレクトロポレーション、ガラスビーズ形質転換、炭化ケイ素ウィスカー形質転換を含む)により、細胞を形質転換することができる。
【0223】
特定の実施形態では、リパーゼは、誘導可能な及び/又は狙いを定めた方法で発現する。リパーゼ遺伝子を発現するために誘導可能なプロモーターを使用することは、条件が調節された場合に微生物増殖後の脂質生産を許容し、必要とあらば、例えば細胞破壊後にエステル転移を向上し、反応混合物の水分含量の減少を促進し、及び/又はTAGsの脂肪酸エステルへの転換を駆り立てる十分量のアルコール添加を向上させる。本発明に有用な誘導可能なプロモーターには、刺激(例、外来的に提供される小分子、温度(加熱、冷却)、光等)に応答して作動可能に連結される遺伝子の転写を媒介するものを含む。適したプロモーターは、本質的にサイレントな遺伝子の転写を活性化することができるか、又は作動可能に連結される遺伝子で、低レベルに転写される遺伝子の転写を、好ましくは実質的にアップレギュレートすることができる。 後者の場合、リパーゼの転写レベルは、それが発現される微生物の増殖と好ましくは有意に干渉しない。
【0224】
特定の実施形態では、リパーゼの発現を1又は複数の細胞コンパートメントへ標的することは、利点があり、そこでは、エステル転移反応の開始まで、細胞脂質の大部分からリパーゼを隔絶する。
【0225】
<3.より高い油:非油比率を有するバイオマスの利点>農業製品の直接的エステル転移を、米国特許出願公開第20030229237号(2003年12月11日公開)及び米国特許出願公開第20050020842号(2005年1月27日公開)に報告されるように実行した。これらの処理は、エステル転移処理のための基質として物質(例、大豆、ココナッツ、ヤシ、トウモロコシ、綿、亜麻、アブラナ/キャノーラ、紅花、ヒマワリ若しくは他の種油原料、又は動物脂肪)を用いて、脂肪酸アルキルエステルを生産する。
【0226】
本明細書中に記載されるように、本発明のエステル転移方法に有用なTAGsの生成のための微生物を使用することの特定の利点は、バイオマス中の油の非油に対する比率を修飾する能力であり、予想外にも2つの有利な性質を付与することが見いだされてきた。第1に、下記実施例で示されるように、より高い油:非油比率を有するバイオマスのエステル転移は、TAGsの脂肪酸アルキルエステルへの転換効率を増加するよう導く。第2に、同様に下記実施例で示されるように、より高い油:非油比率を有するバイオマスのエステル転移は、望ましくないヘテロ原子の割合が減少したバイオディーゼル生成物を生産する。後者の場合、エステル転移により生成される親油性層は、60ppm(百万分率)以下の重量のリンを含む。いくつかの実施形態では、親油性層のリン重量は、25ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層のリン重量は、10ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層中の硫黄重量は、80ppm以下であり、さらに他の実施形態では、親油性層中の硫黄重量は、60ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層の硫黄重量は、15ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層の鉄重量は、2ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層の亜鉛重量は、40ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層の亜鉛重量は、12ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層中のマグネシウム及びカルシウムの組み合わせた重量は、5ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層中のナトリウム及びカリウムの組み合わせた重量は、50ppm以下である。いくつかの実施形態では、親油性層中のナトリウム及びカリウムの組み合わせた重量は、15ppm以下である。本発明のいくつかの方法は、以下の2以上のヘテロ原子又はヘテロ原子の組み合わせが、エステル転移された物質の親油性層中での濃度を以下の濃度(硫黄は15ppm未満、リンは2未満(0.001%全質量)、マグネシウムとカルシウムとを合算した量は5ppm以下、及びナトリウムとカリウムを合算した量は15ppm以下)に限定される生成物を生み出す。
【0227】
従属栄養性に増殖される高油バイオマス(特に微細藻類)のもう一つの観点は、エステル転移後親油性層を生じるカロテノイドの量である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり400μg以下である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり200μg以下である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり100μg以下である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり40μg以下である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり5μg以上である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり10μg以上である。本発明のいくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり30μg以上である。いくつかの実施形態では、親油性層は、上記した最大限と最小限レベルとの任意の組み合わせの間(例、親油性層1グラム当たり400より小さくと少なくとも5μgの間)のルテインの量を含む。いくつかの実施形態では、ルテインの量は親油性層1グラム当たり約35μgである。
【0228】
いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり275μg以下である。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり150μg以下である。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり75μg以下である。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり25μg以下である。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり0.5μg以上である。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり10μg以上である。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり20μg以上である。いくつかの実施形態では、親油性層は、上記した最大限と最小限レベルとの任意の組み合わせの間(例、親油性層1グラム当たり275より小さくと少なくとも0.5μgの間)のゼアキサンチンの量を含む。いくつかの実施形態では、ゼアキサンチンの量は親油性層1グラム当たり約23μgである。
【0229】
いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり8μg以下である。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり5μg以下である。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり2μg以下である。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり0.1μg以下である。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり0.001μg以上である。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり0.01μg以上である。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり0.05μg以上である。いくつかの実施形態では、親油性層は、上記した最大限と最小限レベルとの任意の組み合わせの間(例、親油性層1グラム当たり8より小さくと少なくとも0.01μgの間)のα-クリプトキサンチンの量を含む。いくつかの実施形態では、α-クリプトキサンチンの量は親油性層1グラム当たり約0.06μgである。
【0230】
いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり18μg以下である。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり8μg以下である。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり4μg以下である。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり2μg以下である。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり0.1μg以上である。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり1μg以上である。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は、親油性層1グラム当たり1.5μg以上である。いくつかの実施形態では、親油性層は、上記した最大限と最小限レベルとの任意の組み合わせの間(例、親油性層1グラム当たり18より小さくと少なくとも0.1μgの間)のβ-クリプトキサンチンの量を含む。いくつかの実施形態では、β-クリプトキサンチンの量は親油性層1グラム当たり約1.8μgである。
【0231】
いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり1.9μg以下である。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり1μg以下である。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.1μg以下である。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.09μg以下である。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.0005μg以上である。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.01μg以上である。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.05μg以上である。いくつかの実施形態では、親油性層は、上記した最大限と最小限レベルとの任意の組み合わせの間(例、親油性層1グラム当たり1.9より小さくと少なくとも0.0005μgの間)のα-カロテンの量を含む。いくつかの実施形態では、α-カロテンの量は親油性層1グラム当たり約0.08μgである。
【0232】
いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり14μg以下である。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり10μg以下である。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり4μg以下である。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり1.5μg以下である。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.1μg以上である。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり0.9μg以上である。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は、親油性層1グラム当たり1μg以上である。いくつかの実施形態では、親油性層は、上記した最大限と最小限レベルとの任意の組み合わせの間(例、親油性層1グラム当たり14より小さくと少なくとも0.1μgとの間)のβ-クリプトキサンチンの量を含む。いくつかの実施形態では、β-カロテンの量は親油性層1グラム当たり約1.2μgである。
【0233】
本発明の方法を高い油:非油比率を含むバイオマスへ適用することを介して、TAGsが脂肪酸エステルへと転換される効率が上昇したこと、及び親油性層に導入されるヘテロ原子の割合が減少したことは、予想外の利点である。油をエステル転移することができる効率が改善したこと、及びエステル転移された生成物中のヘテロ原子の割合が減少したことを示す実施例が、以下に記載される。
【0234】
いくつかの実施形態では、エステル転移若しくは他の化学修飾方法に供される乾燥バイオマスの油:非油比率は、少なくとも1:20、少なくとも1:19、少なくとも1:18、少なくとも1:17、少なくとも1:16、少なくとも1:15、少なくとも1:14、少なくとも1:13、少なくとも1:12、少なくとも1:11、少なくとも1:10、少なくとも1:9、少なくとも1:8、少なくとも1:7、少なくとも1:6、少なくとも1:5、少なくとも1:4、少なくとも1:3、少なくとも1:2、又は少なくとも1:1である。他の実施形態では、エステル転移に供される乾燥バイオマスの油:非油比率は、少なくとも1.1:1、少なくとも1.2:1、少なくとも1.3:1、少なくとも1.4:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.6:1、少なくとも1.7: 1、少なくとも1.8:1、少なくとも1.9:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、又は少なくとも10:1である。
【0235】
<V.脂質含有バイオマスの化学修飾の他の方法>本発明は、種々の工業及び他の応用に有用な生成物を生み出すエステル転移以外の化学修飾方法(水素付加、エステル交換、水酸化、及び加水分解に加えて誘導体化を含む)を提供する。上記エステル転移に言及するものと同様に、これらの化学修飾を、本明細書中に記載される微生物培養物から生成されるバイオマスにおいて実行することもできる。いくつかの実施形態では、バイオマスは微生物の異なる種若しくは株の2以上の培養物を組み合わせたバイオマスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、異なる株又は種は、実施例22に説明されるように互いに異なるグリセロ脂質プロフィールを有する。本発明のいくつかの方法では、微生物バイオマスはまず培養培地から回収されて、そして次に脂質の少なくとも1%を共有結合的に修飾する化学反応に供される。いくつかの実施形態では、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の脂質が、前記化学プロセスにより修飾される。
【0236】
<A.水素付加:2重結合の飽和>水素付加は、グリセロ脂質又は遊離脂肪酸の有する脂肪酸構成成分中の2重結合へ、水素を付加するものである。水素付加プロセスは液体油の半固形又は固形脂肪への変換を許容し、それは特定の応用にさらに適している場合がある。水素付加は、周知の化学プロセスであり、一般的には、油混合物と細かく砕いた遷移金属(例、ニッケル、パラジウム、プラチナ、又はロジウム)触媒とを上昇した温度(例、140から225℃)で、水素存在下で接触させることを含む。
【0237】
本明細書中に記載される方法により生産されるバイオマスの水素付加を、本明細書中に記載される1又は複数の方法及び/若しくは物質(脂質としての乾燥細胞重量パーセンテージを少なくとも20%有する微生物バイオマスを含む)と組み合わせて実行して生成物を生産することができ、これは、以下(米国特許第7,288,278号(食品添加物又は薬剤)、米国特許第5,346,724号(潤滑物)、米国特許第5,475,160号(脂肪アルコール)、米国特許第5,091,116号(食用油)、米国特許第6,808,737号(マーガリンやスプレッドのための構造脂肪)、米国特許第5,298,637号(低カロリー脂肪代替品)、米国特許第6,391,815号(水素付加触媒及び硫黄吸着剤)、米国特許第5,233,099号及び米国特許番号5,233,100号(脂肪アルコール)、米国特許第4,584,139 号(水素付加触媒)、米国特許第6,057,375号(消泡剤)、並びに米国特許第7,118,773号(食用乳化スプレッド))に報告され、その各々は参照により本明細書中に引用される。
【0238】
<B. エステル交換:グリセロ脂質の脂肪酸構成要素を分子間交換すること>
天然に生産されるグリセロ脂質は、典型的には脂肪酸構成要素の一様な分布を有していない。油に関しては、エステル交換とは、互いに異なるグリセロ脂質の2つのエステル間でのアシルラジカルの交換を指す。エステル交換プロセスは、グリセロ脂質の混合物の脂肪酸構成要素が再構成されて分布パターンを変更することができるメカニズムを提供する。エステル交換は、周知の化学プロセスであり、一般的には油の混合物を、ある期間(例、30分)、触媒(例、アルカリ金属又はアルカリ金属アルカリ化物(例、ナトリウム・メトキシド))の存在下、加熱(約200℃まで)することを含む。このプロセスは油混合物の脂肪酸構成要素の分布パターンをランダム化するのに用いられてもよいし、又は所望の分布パターンを生産するように方向付けられてもよい。脂質の化学修飾のこの方法は、本明細書中に提供される材料(例、脂質の乾燥細胞重量パーセンテージを少なくとも20%有する微生物バイオマス)で実行されてもよい。
【0239】
定方向エステル交換は、特定の脂肪酸分布パターンを求めるものであるが、油混合物を、存在する場合があるいくつかのTAGsの融点以下の温度で維持することにより実行することができる。このことにより、これらのTAGsの選択的結晶を生じ、それらが結晶化するのに従って、反応混合物からそれらを効率的に除去する。このプロセスを、油中の脂肪酸のほとんどが析出するまで継続してもよい。定方向エステル交換プロセスを、例えば、より長い鎖長の脂肪酸をより短い鎖長の脂肪酸で置換することを介して低カロリー含量の生成物を生産するのに用いることができる。定方向エステル交換を、水素付加(それは望まないトランス異性体を生産し得る)に頼らずに、食品添加物若しくは食製品(例、マーガリン)に求められる所望の融解性質及び構造特徴を提供することができる脂肪の混合物を有する生成物を生産するのに用いることもできる。
【0240】
本明細書中に記載される方法により生産されるバイオマスのエステル交換を、1又は複数の本方法及び/若しくは物質と組み合わせて実行して生成物を生産することができ、これは、以下(米国特許第6,080,853号(非消化可能脂肪代替物)、米国特許第4,288,378号(ピーナッツバター安定化剤)、米国特許第5,391,383号(食用スプレー油)、米国特許第6,022,577号(食製品のための食用油)、米国特許第5,434,278号(食製品のための食用油)、米国特許第5,268,192号(低カロリーナッツ製品)、米国特許第5,258,197号(低カロリー食用組成物)、米国特許第4,335,156号(食用脂肪製品)、米国特許番号7,288,278号(食品添加物又は薬剤)、米国特許第7,115,760号(分画くプロセス)、米国特許第6,808,737号(構造脂肪)、米国特許第5,888,947号(エンジン潤滑剤)、米国特許第5,686,131号(食用油混合物)、米国特許第4,603,188号(硬化性ウレタン組成物))に報告され、その各々は参照により本明細書中に引用される。
【0241】
本発明の一実施形態では、上述したようにバイオマスのエステル転移は、エステル転移された生成物とポリオールとの反応が、参照により本明細書中に引用される米国特許第6,465,642号に報告されるように引き続いて、ポリオール脂肪酸ポリエステルを生産する。参照により本明細書中に引用される米国特許第6,278,006号に報告されるように、エステル転移を短鎖脂肪酸エステルを有する微生物バイオマスで実行することもできる。
【0242】
<C. 水酸化:水を2重結合に付加することを介しての飽和>水酸化は水を2重結合に付加することに関与し、飽和及びヒドロキシル部分の取り込みを生じる。水酸化プロセスは、グリセロ脂質の1又は複数の脂肪酸構成要素をヒドロキシ脂肪酸へ転換する機構を提供する。例えば、参照により本明細書中に引用される米国特許第5,576,027号に報告される方法を介して、水酸化を実行することができる。水酸化された脂肪酸(ヒマシ油及びその誘導体を含む)は、いくつかの工業応用(食品添加物、界面活性剤、色素湿潤剤、消泡剤、防水剤、可塑剤、化粧品の乳化剤及び/若しくは消臭剤、並びに、それに加えて、エレクトロニクス、医薬品、塗料、インキ、接着剤、及び潤滑剤)における構成成分として有用である。
【0243】
本明細書中に記載される方法により生産される微生物バイオマスの水酸化を、1又は複数の本方法及び/若しくは物質と組み合わせて実行して生成物を生産することができ、これは、以下(米国特許第6,590,113号(油ベースのコーティング及びインキ)、米国特許第4,049,724号(水酸化プロセス)、米国特許第6,113,971号(オリーブオイルバター)、米国特許第4,992,189号(潤滑剤及び潤滑添加剤)、米国特許第5,576,027号(水酸化ミルク)、並びに米国特許第6,869,597号(化粧品))に報告され、その各々は参照により本明細書中に引用される。
【0244】
水酸化グリセロ脂質をエストリド(estolides)へ転換することができる。エストリドは、水酸化された脂肪酸構成要素がエステル化されて別の脂肪酸分子になったグリセロ脂質からなる。水酸化グリセロ脂質のエストリドへの転換を、グリセロ脂質と脂肪酸との混合物を温め、前記混合物を鉱酸と接触させることにより実施することができ、そのことは、Isbell et al., JAOCS 71(2): 169-174 (1994)により記載され、参照により本明細書中に引用される。エストリドは種々の応用例に有用であり、限定はされないが、以下に報告されるもの(米国特許第7,196,124号(エラストマー材料及び床仕上げ材)、米国特許第5,458,795号(高温適用のための濃縮油)、米国特許第5,451,332号(工業応用のための流動体)、米国特許第5,427,704号(燃料添加物)、並びに米国特許第5,380,894号(潤滑剤、グリース、可塑剤、及びプリントインク))を含み、その各々は参照により本明細書中に引用される。
【0245】
<D.加水分解と誘導体化:遊離脂肪酸の切断及び修飾>本発明の方法により生産されるグリセロ脂質からの脂肪酸構成要素の加水分解は、誘導体化可能な遊離脂肪酸を生み出し、他の有用な化学実体を生産する。加水分解は水及び(酸または塩基)触媒の存在下で起こる。遊離した遊離脂肪酸を誘導体化して種々の生成物を得ることができ、それらは以下に報告され(米国特許第5,304,664号(高度に硫酸化された脂肪酸)、米国特許第7,262,158号(洗浄剤組成物)、米国特許第7,115,173号(柔軟剤組成物)、米国特許第6,342,208号(皮膚を手入れするための乳剤)、米国特許第7,264,886号(水忌避剤組成物)、米国特許第6,924,333号(塗料添加物)、米国特許第6,596,768号(脂質に富む反芻動物原料)、米国特許第6,380,410号(洗剤及び洗浄剤のための界面活性剤))、その各々が参照により本明細書中に引用される。
【0246】
<E.脂質含有微生物バイオマスを修飾するための他の化学反応>脂質含有微生物バイオマスで実行可能な他の化学反応には、トリアシルグリセロールをシクロプロパン化剤と反応させて、米国特許第6,051,539号に報告されるように流動性及び/若しくは酸化安定性を向上させること、米国特許第6,770,104号に報告されるようにトリアシルグリセロールからワックスを製造すること、並びにJournal of the American Oil Chemists' Society, 79:1, 59-63, (2001)の「エポキシ化されたトリアシルグリセロールのアクリル化動力学への脂肪酸組成物の効果」と及びFree Radical Biology and Medicine, 37:1, 104-114 (2004)とに報告されるトリアシルグリセロールのエポキシ化を含み、それぞれは参照により本明細書中に引用される。
【0247】
いくつかの方法では、修飾の第1段階は2重結合を飽和するための水素処理であり、水素及び触媒の存在下、上昇された温度で脱酸素化が引き続く。いくつかの方法では、水素付加と脱酸素化は同じ反応で起こる。他の方法では、水素付加の前に脱酸素化が起こる。 また、水素と触媒との存在下で、その後任意ではあるが、異性化を実行する。最終的に、所望するならば、ガスとナフサ構成成分を除去することができる。例えば、米国特許第5,475,160号(トリグリセリドの水素付加)、米国特許第5,091,116号(脱酸素化、水素付加、及びガス除去)、米国特許第6,391,815号(水素付加)、米国特許第5,888,947号(異性化)を参照されたい。その各々は参照により本明細書中に引用される。
【0248】
<F.油保有微生物バイオマス及び抽出油の鹸化>
<1.鹸化の基本化学>動物油及び植物油は、典型的にはトリアシルグリセロール(TAGs)で作られており、それは、三価アルコール(グリセロール)と脂肪酸とのエステルである。アルカリ加水分解反応では、TAG中のグリセロールが除去され、アルカリ金属カチオン(例、ナトリウム、又はカリウム)と結合することができる3個のカルボン酸アニオンを切り離して、脂肪酸塩を生産する。典型的な反応スキームは、以下である。
【化2】
【0249】
このスキームでは、カルボン酸構成要素がグリセロール部分から切断されて、ヒドロキシル基で置換される。前記反応に用いられる塩基(例、KOH)の量は、所望する鹸化度により決定される。もし、その目的が、例えばTAG組成物にもともと存在する幾分かの油を含む石鹸製品を生産することである場合、すべてのTAGsを脂肪酸塩に転換するのに不十分な塩基量を、前記反応混合物に導入する。通常、この反応は、水溶性溶液中で実行され、ゆっくりと進行するが、加熱することにより円滑に行われる場合がある。脂肪酸塩の析出を、塩(例、水溶性アルカリ金属ハライド(例、NaCl又はKCl))を反応混合物へ添加することにより促進することができる。好ましくは、前記塩基はアルカリ金属水酸化物(例、NaOH又はKOH)である。 代わりに、他の塩基(例、アルカノールアミン(例、トリエタノールアミン及びアミノメチルプロパノール))を、前記反応スキームに使用してもよい。いくつかの実施形態では、これらの代替物が透明な石鹸製品を生産するのに好ましい場合がある。
【0250】
<2.油保有バイオマスの鹸化>無傷のバイオマス又はアルカリ加水分解反応に供される前に破壊されたバイオマスで、本発明の方法に従って、油保有微生物バイオマスの鹸化を実行することができる。前者の場合、本明細書中に記載される微生物の培養により生成される無傷の微生物バイオマスは、塩基と直接接触されて、前記バイオマスのエステル含有脂質構成成分を脂肪酸塩に転換してもよい。いくつかの実施形態では、微生物が培養された水分の全て又は一部を除去して、バイオマスのグリセロ脂質及び脂肪酸エステル構成成分の所望の部分を鹸化するのに十分な塩基量を含有する水溶性溶液中に、前記バイオマスを再懸濁する。いくつかの実施形態では、バイオマス中の100%未満のグリセロ脂質及び脂肪酸エステルを脂肪酸塩に転換する。
【0251】
本発明のいくつかの方法では、アルカリ加水分解反応に供されるのに先行して、バイオマスを破壊する。バイオマスの破壊を、1又は複数の上述した細胞溶菌方法(例、熱誘導溶解、力学的溶解等を含む)を介して完了し、微生物の細胞内内容物を塩基により容易にアクセスできるようにさせる。これは、TAGs又は脂肪酸の脂肪酸塩への転換を促進することを補助することができる。酸誘導溶解を、鹸化に先行してバイオマスの破壊のために用いることができるが、追加的な塩基が(脂肪酸塩への転換効率に影響を及ぼす場合がある)アルカリ加水分解反応中で全ての残留する酸を中和するのに消費されるだろう可能性を減少させるために、他の方法がより望まれる場合がある。熱の適用がアルカリ加水分解反応を円滑にすることができるので、熱誘導溶解を鹸化反応に先行して又はその間に用いて、脂肪酸塩を生産することができる。
【0252】
本発明のいくつかの実施形態では、アルカリ加水分解反応に供されることに先行して、バイオマスは任意の処理に供されないか、又は破壊以外の任意の処理に供されない。いくつかの実施形態では、バイオマス中の脂質の非脂質物質に対する比率を50重量%より多くにまで(又は50%より多く)増加させるようにバイオマスの先行する濃縮を、本明細書に記載するように実行する。他の実施形態では、バイオマスを、先行濃縮工程なしにアルカリ加水分解反応に供する。いくつかの実施形態では、アルカリ加水分解反応に供されるバイオマスは、回収時のバイオマスと同じ相対的割合で水以外の構成成分を含む。 実質的にすべての水分が除去された実施形態では、バイオマスは細胞のエマルジョン又は実質的に乾燥されたエマルジョン濃縮物を含む。
【0253】
本明細書中に記載される任意の微生物を用いて、鹸化油の生産のための脂質含有バイオマスを生産することができる。いくつかの実施形態では、微生物は、本明細書中に記載される方法から生産される鹸化油組成物に、他の性質を付与することもできる。例えば、異なる条件下で培養される微細藻類と共に、異なる種の微細藻類は、色(例、緑、黄、オレンジ、赤等を含む)が様々である。これらの色を微細藻類に付与する少量の化合物を、わざと保持して、従って、結果としてできる鹸化油組成物は自然な着色剤を提供する。いくつかの実施形態では、バイオマスの他の構成要素(例、カロテノイド類及びキサントフィル類を含む)を、前記鹸化油組成物中に少量保持することもできる。
【0254】
バイオマスの鹸化の範囲は、本発明の方法において変化してもよい。いくつかの実施形態では、バイオマスのグリセロ脂質構成要素をも含む鹸化油組成物を生産することが望ましい。アルカリ加水分解反応に使用するための塩基(例、NaOH)の適量を、バイオマスのグリセロ脂質及び脂肪酸エステル含量の解析に基づいて決定してもよい。いくつかの実施形態では、脂質含有バイオマスを直接的に鹸化するのに過剰な塩基を使用するのが好ましい。何故なら、塩基の幾分かはバイオマスの他の構成要素との反応により消費可能だからである。いくつかの実施形態では、バイオマスのエステル含有脂質構成要素を鹸化するのに過剰量の塩基を使用することは、望まないほどアルカリ性である鹸化油組成物を生じる。このような例では、前記組成物を精製して、水中で鹸化油組成物を沸騰させ、塩(例、NaCl、KCl等)の添加を介して脂肪酸を再析出させることにより組成物のアルカリ度を減少させることができる。精製された石鹸組成物は、それからさらなる処理(例、過剰水分を除去すること、種々の添加物を前記石鹸組成物に導入すること、及び前記石鹸を棒状若しくは他の形体に成形すること等)に供される。
【0255】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法から生成される脂肪酸塩(鹸化油と称されもする)は、以下から選択される1又は複数の添加物(例、精油、芳香油、香油、植物成分、抽出物、CO
2抽出物、粘土、着色剤、二酸化チタン、雲母、着色ハーブ、グリッター、エクスフォリアント(exfoliants)、フルーツの種、繊維、穀物粉、ナッツ粗挽き粉、種粗挽き粉、油ビーズ、ろうビーズ、ハーブ、ヒドロゾル、ビタミン、粉乳、防腐剤、酸化防止剤、トコフェロール、塩、砂糖、植物油、ワックス、グリセリン、海草、栄養油、保湿油、植物バター、プロピレングリコール、パラベン、蜂蜜、蜂ワックス、アロエ、ポリソルベート、コーンスターチ、ココアパウダー、サンゴパウダー、湿潤剤、ガム、乳化剤、および増粘剤、あるいは本明細書中に記載される任意の他の添加物)と組み合わせられてもよい。
【0256】
<3.抽出油の鹸化>バイオマスの抽出される脂質構成要素の鹸化度は、塩基が抽出油に存在するグリセロ脂質又は脂肪酸エステル以外の構成成分との相互作用を通して消費されるという可能性が低いため、より容易に制御可能である。脂質構成要素の抽出を、従来からのヘキサン抽出法、又は油抽出若しくは無溶媒抽出法を介して実行することができる。
【0257】
従来からのヘキサン抽出(他の適した有機溶媒を用いることもできる)は、脂質がヘキサンとの溶液を形成するのを可能にするのに十分な量と期間で、バイオマス若しくは可溶化物とヘキサンとを接触させることを一般的に含む。その混合物をそれから濾過することができ、そしてヘキサンを、例えば、ロトエバポレーション(rotoevaporation)で除去する。ヘキサン抽出方法は、当該技術分野で周知である。
【0258】
油抽出には、可溶化物構成成分を先行して分離することなしに可溶化物へ直接油を添加することを含む。油の添加後、可溶化物は、自発的に又は遠心分離等の結果かのいずれかで、異なる層へと分離する。前記層には、減少する比重の順序で、重い固体のペレット、水溶性層、乳化層、及び油層を含む。乳化層は、脂質と水溶性層とのエマルジョンである。可溶化物に関する添加される油のパーセンテージ(w/w又はv/v)、遠心分離力、もしあれば、水溶性培地の量、及び他の因子に依存するが、乳化層と油層とのいずれか又はその両者が存在してもよい。細胞可溶化物若しくは油を有する乳化層のインキュベーション又は処理を、微生物により生産される脂質が不均一な混合物を形成するため油中に可溶化されるようになるのを可能にするのに十分な時間で実行する。
【0259】
種々の実施形態では、抽出処理で使用される油は、例(大豆、アブラナ、キャノーラ、ヤシ、パーム核、ココナッツ、トウモロコシ、廃棄野菜油、
ナンキンハゼ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、鶏脂肪、牛脂、豚脂、微細藻類、大型藻類、クフェア、亜麻、ピーナッツ、チョイスホワイトグリース(ラード)、カメリナ
・サティバ、マスタードシードカシューナッツ、オート麦、ルピナス、ケナフ、キンセンカ、麻(hemp)、コーヒー、あまに(亜麻)、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャの種、コリアンダー、椿、ゴマ、紅花、米、油桐、ココア、コプラ、
ケシ、トウゴマ、ペカン、ホホバ、ジャトロファ、マカデミア、ブラジルナッツ、アボカド)からの油を備える群から選択される。可溶化物に加えられる油量は、典型的には油が組み合わせられている可溶化物の5%(v/v及び/又はw/wで測定される)より多い。従って、油の好適なv/v又はw/wは、細胞可溶化物の5%より多いか、又は、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、及び少なくとも95%である。
【0260】
可溶化物を冷却することにより、有機溶媒若しくは油を実質的に使用しないか又は全く使用せずに、無溶媒抽出法を介して可溶化物から脂質を抽出することもできる。そのような方法では、可溶化物は、上記室温より高くすることと組み合わせて酸処理により好ましくは生産される。特に、温度が室温と65℃との間である場合、超音波処理を用いることもできる。遠心分離又は静置におけるそのような可溶化物を、複数の層へ分離することができ、そのうちの1つの層は、水溶性:脂質層(「乳化」層)である。他の層には、固体ペレット、水溶性層、及び脂質層を含む。脂質を、凍結融解することにより、又はさもなくばエマルジョンを冷却することにより、乳化層から抽出することができる。そのような方法では、任意の有機溶媒又は油を加えることは必要ではない。任意の溶媒又は油が加えられる場合、それらは、可溶化物の5%v/v又はw/wより少なくてもよい。
【0261】
分離された又は抽出された脂質は、それから上記されるアルカリ加水分解反応に供されて、そこでは、反応混合物に加えられる塩基量は、所望される量の脂質組成物のグリセロ脂質及び脂肪酸エステルの構成要素を鹸化するために仕立てられてもよい。組成物中のエステル化された脂質量の近似又は定量を用いて、油の特定部分を鹸化するのに必要な塩基量を合わせることができるし、結果として生じる組成物に残留する非鹸化油の量を調整する機会を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、又は少なくとも10%の重量当たりの油が、結果として生じる組成物中で非鹸化の状態にある。他の実施形態では、全ての又は実質的に全ての油を鹸化することが望ましい場合がある。従って、結果としてできる組成物は10%以下の、9%以下の、8%以下の、7% 以下の、6%以下の、5%以下の、4%以下の、3%以下の、2%以下の、1%以下の、又は0.5%以下の重量当たりの非鹸化油を含む。
【0262】
本発明の種々の実施形態では、微生物バイオマス又は油は、様々な炭素鎖長及び様々な飽和レベルを有する脂質を含むことができる。脂質の性質は、鹸化反応に供されるバイオマス若しくは油を生成するのに用いられる1又は複数の微生物集団の天然なグリセロ脂質プロフィールから生じ、又はより大きな割合で特定の脂質を生産するトランスジェニックな微生物株が作り出される(本明細書中に記載される)脂質経路操作の結果でもあり得る。
【0263】
本明細書中に記載されるエステル転移若しくは他の化学修飾に供される微生物バイオマスは、任意ではあるが、脂質の微生物乾燥重量に対する比率を増加させる先行する濃縮処理に供されてもよい。いくつかの実施形態では、バイオマス中での脂質の非脂質物質に対する比率は、10重量%より多く、20重量%より多く、30重量%より多く、40重量%より多く、50重量%より多く、60重量%より多く、70重量%より多く、80重量%より多く、90重量%より多く、又は100重量%より多く増加する。本発明のいくつかの方法では、バイオマスを先行濃縮工程なしに、又は、いくつかの実施形態では、前記比率を50%より多く増加させる先行濃縮工程なしに、化学反応に供する。脂質の非脂質物質に対する比率の向上は、例えば、前記バイオマス以外の源から(例、第2の微生物バイオマス培養物から、又は植物若しくは種油源などから)得られる脂質の添加により達成されてもよい。オプションの濃縮に供されるか否かに関わらず、脂質構成成分は、50%以下、60%以下、70%以下、80%以下、90%以下、又は95%以下の化学反応に供されるバイオマスを含み、好ましくは脂質構成成分は、15%以上、20%以上、30%以上、35%以上、40%以上、又は45%以上のバイオマスを含む。いくつかの実施形態では、回収されたバイオマスは、乾燥細胞重量あたり、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも 55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%の脂質含量を含む。
【0264】
いくつかの実施形態では、バイオマスを鹸化(又は他の化学修飾)反応に供することに先行してバイオマスから水分を除去する。本発明のいくつかの実施形態では、バイオマスを鹸化(又は他の化学修飾)反応に供することに先行して水分を除去すること及び/又は溶解以外の任意の処理に、微生物バイオマスを供しない。いくつかの実施形態では、化学反応に供されるバイオマスは、発酵物から回収する時点のバイオマスと同じ相対的割合で水以外の構成成分を含む。この文脈では、「同じ相対的割合」とは、細胞の使用若しくはバイオマスの回収に引き続くいくつかの構成成分の代謝転換、回収されたバイオマス(外来性の試薬や触媒の添加しない)中でのいくつかの構成成分の化学転換、回収されたバイオマスからのガスの流出、並びに/又は容易に制御することができない相対的割合の同様な修飾に、随伴する変化を計上した後にも、前記構成成分の割合が実質的に同一の状態であることを意味する。「同じ相対的割合」という語句は、実験誤差(例、±5%)の幾分かのレベルを説明することも意味する。
【0265】
本発明のいくつかの方法では、共有結合的に修飾される脂質を、前記脂質の化学修飾の後にバイオマスの他の構成成分から分離する。いくつかの実施形態では、脂質を分離することは層分離を含み、それにより、共有結合的に修飾される脂質はより軽い非水溶性層を形成し、そして、バイオマスの構成成分は1又は複数のさらにより重い層を形成する。前記より軽い非水溶性層をその後除去して、共有結合的に修飾される脂質構成成分を単離することができる。いくつかの実施形態では、共有結合的に修飾される脂質を含む親油性層のバイオマスの有する親水性細胞物質からの分離を、遠心分離又は他の技術により促進することができる。 共有結合的に修飾される脂質のそれが分離されるバイオマスに対する比率は、乾燥重量当たり、10%脂質対90%バイオマスと90%脂質対10%バイオマスとの間であってもよい。
【0266】
<4.より高い飽和油含量とより少ない色素不純物とを有するバイオマスの利点>本明細書中に記載される鹸化方法で使用されるバイオマス及び/又は抽出油は、様々なグリセロ脂質プロフィールと様々な他の構成要素(例、色素)の比率とを有する多数種の微生物の任意の1つに由来してもよいが、好適な実施形態では、前記バイオマス及び/又は前記抽出油は、TAGs中にある飽和脂肪酸の比較的高い比率、及び油に色を付与する構成要素(例、色素)の比較的低い比率を含む。一実施形態では、バイオマス及び/又は抽出油は、プロトテカ属の微細藻類に由来する。
【0267】
鹸化油の脂肪酸構成要素の飽和性質は、色素構成要素の存在と共に、鹸化油を含む組成物の有効期間と、それに加えてその美的資質とに影響を与える。飽和脂肪酸は、その不飽和脂肪酸対応物よりも酸化が起こりにくい。従って、鹸化油製品の調製物中で飽和:不飽和脂肪酸構成要素の比較的より高い比率を有する鹸化油の使用により、より長期間の全体有効期間に結果としてなり、及び、しばしば不快な臭いを有する酸化生成物の発生を最小限にする。同様に、取り込まれる鹸化油組成物の外観を酸化時に変化させる傾向がある色素不純物の相対的欠如は、特に、有効期間を超過した際に、前記組成物の美的資質とそのような製品の顧客満足とを向上させる。結果としてできる石鹸の顧客は、特定の色や色の欠如を石鹸のブランドと関連づける傾向があり、毎回同じ色の製品を期待するようになる。鹸化油における色の欠如は、結果としてできる鹸化油におけるさらなる一貫性を可能にする。
【0268】
飽和脂肪酸のより高い比率は、以下に議論される鹸化組成物の調整に特に有利であり、そこでは、バイオマス(又は抽出油)中のグリセロ脂質部分が非鹸化の状態のままである。以前議論したように、グリセロ脂質の一部は、鹸化反応に使用される塩基量を調節することにより未修飾(非鹸化)の状態のままであることができ、従って、もともと存在するグリセロ脂質の幾分かの割合を保持する石鹸製品を生産する。鹸化反応中の過剰なグリセロ脂質の存在は、一般的に「過脂肪」と称される。鹸化反応の後に生成物に残留する過剰な油は、組成物に保湿特性を付与するが、任意の油と同様に酸化にさらされ、不快な臭いのする組成物の発生を導く場合がある。反応混合物の「過脂肪」構成成分として飽和:不飽和脂肪酸構成要素のより高い比率の使用は、相対的に長期有効期間を有する製品を結果として生じ、悪臭のする酸化製品の生産を最小限にする。
【0269】
種々の実施形態では、飽和脂肪酸構成要素は、本発明の方法に従ってアルカリ加水分解反応に供される微生物バイオマス又は抽出油のエステル含有脂質構成成分を1から100%まで含む。好適な実施形態では、飽和脂肪酸構成要素は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%のエステル含有脂質構成成分をアルカリ加水分解反応中に含む。
【0270】
いくつかの実施形態では、色生成不純物(例、カロテノイド)が、微生物バイオマス若しくは抽出油中に、500ppm以下、250ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、又は25ppm以下の濃度で存在する。色生成不純物には、カロテノイド(例、ルテイン、ベータカロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、及びクロロフィル)を含む。他の実施形態では、微生物バイオマス若しくは抽出油に存在するクロロフィル量は、0.1mg/kg未満、0.05mg/kg未満、又は0.01mg/kg未満である。
【0271】
いくつかの実施形態では、鹸化以前若しくは後の、それぞれ微生物油若しくは石鹸は、鹸化油1グラム当たり、60μg未満、59μg未満、58μg未満、57μg未満、56μg未満、55 μg未満、54μg未満、53μg未満、52μg未満、51μg未満、50μg未満、49μg未満、48μg未満、47μg未満、46μg未満、45μg未満、44μg未満、43μg未満、42μg未満、41μg未満、40μg未満、39μg未満、38μg未満、37μg未満、36μg未満、35μg未満、34μg未満、33 μg未満、32μg未満、31μg未満、30μg未満、29μg未満、28μg未満、27μg未満、26μg未満、25μg未満、24μg未満、23μg未満、22μg未満、21μg未満、20μg未満、19μg未満、18μg未満、17μg未満、16μg未満、15μg未満、14μg未満、13μg未満、12μg未満、11μg未満、10μg未満、9μg未満、8μg未満、7μg未満、6μg未満、5μg未満、又は4μg未満のカロテノイドを含む。
【0272】
プロトテカ属の微細藻類(限定はされないが、プロトテカ・ウィクケルハミイ(Prototheca wickerhamii)、プロトテカ・スタグノラ(Prototheca stagnora)、プロトテカ・ポルトリセンシス(Prototheca portoricensis)、 プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)、プロトテカ・ゾフィ(Prototheca zopfii)を含む)は、実施例28に説明されるように、より高い比率の飽和脂肪構成要素を天然に生産する。さらに、プロトテカ属の微細藻類から抽出される油は、ほとんど色生成不純物を含まず、鹸化油を含む無色の組成物の生産を可能にする。従って、本発明に従って鹸化方法を実施するためのバイオマス若しくは油の源としてのそのような微生物の使用が好ましい。
【0273】
<VI.組成物>本発明は、本明細書中に記載される方法により調製可能な組成物をも提供する。本発明の種々の組成物の各々においては、微生物バイオマスは、細菌、ラン藻、真核微細藻類、油性酵母、及び真菌を備える群より選択される。いくつかの実施形態では、微生物バイオマスは表1に一覧表にされる真核微細藻類を備える群中の微生物由来のバイオマスより選択される。いくつかの実施形態では、前記微生物バイオマスはクロレラ属の種であり、そして、いくつかの実施形態では、前記種は、クロレラ・フスカ(Chlorella fusca)、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・サッカロフィア(Chlorella saccharophila)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)及びクロレラ・エリプソイデア(Chlorella ellipsoidea)を備える群より選択される。一実施形態では、前記種はクロレラ・プロトセコイデスである。いくつかの実施形態では、微生物バイオマスは表2に一覧表にされる油性酵母を備える群より選択される酵母に由来し、又は、表3に一覧表にされる真菌を備える群より選択される真菌に由来する。
【0274】
一実施形態では、本発明は、脂肪酸アルキルエステルを含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも一つのより重い層とを含む組成物を対象としている。
【0275】
前記組成物の種々の実施形態では、前記脂肪酸アルキルエステルの少なくとも20%がC18である。 他の実施形態では、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%の前記脂肪酸アルキルエステルがC18である。いくつかの実施形態では、前記脂肪酸アルキルエステルの少なくとも50%がC16又はより長い鎖長である。いくつかの実施形態では、前記脂肪酸アルキルエステルの少なくとも10%がC14又はより短い鎖長である。いくつかの実施形態では、前記脂肪酸アルキルエステルの少なくとも20%がC14又はより短い鎖長である。
【0276】
いくつかの実施形態では、組成物は、様々な量でヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態では、より軽い層中のカルシウム及びマグネシウムを組み合わせた重量当たりの量は、5ppm(parts per million)(百万分率)以下である。いくつかの実施形態では、より軽い層中のリンの量は、0.001質量%以下である。いくつかの実施形態では、より軽い層中の硫黄の量は、15ppm以下である。いくつかの実施形態では、より軽い層中のカリウム及びナトリウムの組み合わせた重量当たりの量は、5ppm以下である。いくつかの実施形態では、より軽い層の総カロテノイド含有量は1グラム当たりカロテノイド100μg以下である。
【0277】
別の実施形態では、本発明は、完全に飽和した脂質を含む最も軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも一つのより重い層とを含む組成物を提供する。
【0278】
さらに別の実施形態では、本発明は、脂質を含むより軽い層と、1より多い種又は株からなる微生物バイオマスを含む少なくとも一つのより重い層とを含む組成物を提供する。まだ別の実施形態では、本発明は、水酸化脂質を含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも一つのより重い層とを含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、遊離脂肪酸を含むより軽い層と微生物バイオマスを含む少なくとも一つのより重い層とを含む組成物を提供する。
【0279】
さらに別の実施形態では、本発明は、上述したように、微生物集団を培養することにより生産されるバイオマスのアルカリ加水分解に由来する鹸化油を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、鹸化油が由来するバイオマスは、2以上の異なる株又は種の微生物で、別々に培養されてきた微生物からのバイオマス混合物を含む。一実施形態では、微生物の少なくとも2つの異なる株又は種の組み合わせられるバイオマスは、互いに異なるグリセロ脂質のプロフィールを含む。異なる実施形態では、前記組成物は固体(粉末を含む)又は液体であってもよい。
【0280】
本発明の鹸化油組成物には、本明細書中に記載されるように、1又は複数の微生物種由来の脂肪酸塩を含むことができ、鹸化油が調製されたバイオマスに直接由来するカロテノイド若しくは他の構成成分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、鹸化油組成物には、限定はされないが、β-カロテン、α-カロテン、アスタキサンチン、α-クリプトキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、フィトエン、フィトフルエン、及び/又はゼアキサンチンを含む。いくつかの実施形態では、鹸化油組成物には、藻類多糖類(例、参照により本明細書中に引用される国際公開第WO/2007/084769号パンフレットに記載されるもの)を含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、鹸化油組成物は、種々の割合の非鹸化グリセロ脂質で、バイオマス由来のものを含む。種々の実施形態では、バイオマス由来の非鹸化グリセロ脂質は、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の鹸化油組成物を含む。他の実施形態では、非鹸化グリセロ脂質は、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下の鹸化油組成物を含む。
【0282】
本発明に係る鹸化油組成物の種々の実施形態では、鹸化油は、組成物の総質量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも 85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を含む。いくつかの実施形態では、鹸化油は、組成物の総質量の80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下含む。いくつかの実施形態では、バイオマス由来の構成成分(例、限定はされないが、鹸化油、非鹸化油、及びカロテノイド等を含む)は、組成物の総質量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を構成する。他の実施形態では、バイオマス由来の構成成分は、組成物の総質量の80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下を構成する。
【0283】
鹸化油組成物のいくつかの実施形態では、前記組成物はさらに、大豆、アブラナ、キャノーラ、ヤシ、ヤシ核、ココナツ、トウモロコシ、廃棄野菜、
ナンキンハゼ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、鶏脂肪、牛脂、豚脂、微細藻類、大型藻類、クフェア、亜麻、ピーナッツ、チョイスホワイトグリース、ラード、カメリナ
・サティバ、マスタードシードカシューナッツ、オート麦、ルピナス、ケナフ、キンセンカ、麻(hemp)、コーヒー、あまに(亜麻)、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャの種、コリアンダー、椿、ゴマ、紅花、米、油桐、ココア、コプラ、
ケシ、トウゴマ、ペカン、ホホバ、ジャトロファ、マカデミア、ブラジルナッツ、アボカドから選択される少なくとも1つの油を含む。
【0284】
鹸化油組成物のいくつかの実施形態では、1又は複数の添加物を脂肪酸塩と組み合わせる。いくつかの実施形態では、例えば、皮膚用洗浄剤として使用される場合、組成物の洗浄効率を最適化するように前記添加物を選択する。他の実施形態では、添加物により、消費者にアピールする組成物に付与される性質について、添加物を選択する。いくつかの実施形態では、洗浄効率と消費者へのアピールとの両者について、添加物を選択する。種々の実施形態では、前記添加物は、精油、芳香油、香油、植物成分、抽出物、CO
2抽出物、粘土、着色剤、二酸化チタン、雲母、着色ハーブ、グリッター、エクスフォリアント(exfoliants)、フルーツの種、繊維、穀物粉、ナッツ粗挽き粉、種粗挽き粉、油ビーズ、ろうビーズ、ハーブ、ヒドロゾル、ビタミン、粉乳、防腐剤、酸化防止剤、トコフェロール、塩、砂糖、植物油、ワックス、グリセリン、海草、栄養油、保湿油、植物バター、プロピレングリコール、パラベン、蜂蜜、蜂ワックス、アロエ、ポリソルベート、コーンスターチ、ココアパウダー、サンゴパウダー、湿潤剤、ガム、乳化剤、および増粘剤より選択される。これらの添加物は、多数のスキンケア有効成分及び浴室付属品供給業者から商業的に入手可能である。
【0285】
精油には、オールスパイス、アミリス(amyris)、アンジェリカの根、アニス種子、バジル、ベイ、ベルガモット、黒コショウ、カユプテ、樟脳、カナンガ、カルダモン、ニンジンの種、カッシア、キャットニップ、シダーウッド、カモミール、シナモン樹皮、シナモンリーフ、シトロネラジャワ、クラリセージ、 クローブバッド(clovebud)、コリアンダー、コーンミント、イトスギ、ダバナ(davana)、ディル種子、エレミ、ユーカリ、フェンネル、モミ、乳香、ゼラニウムブルボン、ゼラニウムロースト、ゼラニウム、ジンジャー、グレープフルーツピンク、グレープフルーツ、ガージャム(gurjum)バルサム、ヒソップ、ジュニパーベリー、ラバンジン(lavandin)、ラヴァンデュラ属、ラベンダー、レモンマートル、レモンティーツリー、レモン、レモングラス、ライム、リツェアクベバ、マンダリン、マジョラム、モウズイカ、ミルラ、ネロリ、ネロリーナ(nerolina)、ニアウリ(niaouli)、ナツメグ、オレンジ、パルマローザ、パチュリ、ペパーミント、プチグレン、松葉、ラベンサラ(ravensara)、ラヴィンサラ(ravintsara)、ロザリナ(rosalina)、バラ、ローズマリー、ローズウッド、セージ、サンダルウッド、スペアミント、スパイクナード、スターアニス、タンジェリン、ティーツリー、タイム、トゥルシ、バーベナ、ベチバー、イランイラン、及びズドラベ(zdravetz)、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0286】
芳香と香油には、純粋チューリップ、アーモンド、アマレット、琥珀、アナイス(anais)、リンゴ、リンゴシナモン、リンゴスパイス、アプリコット、アプリコットクリーム、アラビアムスク、アジア梨、アジアスモモの花、秋材、バナナ、バジル、バジルネクタリン、ベイラム、ヤマモモ、ベルガモット、ベリーとクリーム、バースデーケーキ、ブラックチェリー、紅茶、ブラックベリーの紅茶、ブラックカレント(blackcurrent)、ブルーナイル、ブルーベリーデライト、ブランブルベリー・プリザーブ、ブラウンシュガー、バブルガム、バタークリーム、バタースコッチ、オランダカイウユリ、カンタループ、キャラメルりんご、カーネーション、ニンジンケーキ、チャイティー、カモミール、チャイナムスク、チャイナレイン、白芍、菊、シナモン、ココナッツ、ココナッツクリーム、綿菓子、クランベリー、キュウリ、キューカンバメロン、ラッパズイセン、タンポポ、デルフィニウム、デューベリー、加糖練乳、アールグレイティー、イースタークッキー、エッグノグ、エジプトムスク、魅惑の森、イギリスラベンダー、イギリス梨、常緑樹、イチジク、フランジパニ、乳香、フレンチバニラ、新鮮なリンゴ、入れたてのコーヒー、フルーツパンチ、クチナシ、ゼラニウム、ジンジャーリリー、ジンジャーブレッド、グレープ、グレープフルーツ、青りんご、緑の草、緑茶、グアバ、グアバの花、ハワイアンホワイトジンジャー、ヘリオトロープ、麻、草本、休日のフルーツケーキ、ホーリーベリー、蜂蜜生姜、ハチミツ、ハニーサックル、ジャスミン、ジャスミン茶、ジュニパーベリー、キウイ、ラベンダー、革、レモン、レモンパセリ、ライラック、ライム、ローガンベリー、蓮の花、マグノリア、マンダリン、マンゴー、マンゴーとキウイ、モミジ、ミルクチョコレート、ミモザ、ミントライム、桑、ミルラ、ネロリ、オークモス、オートミール、海の雨、オレンジの花、オレンジシャーベット、オレンジバニラ、パパイヤ、パッションフルーツ、パチョリ、モモ、モモとクリーム、ピアベリー(pearberry)、ペパーミント、ピカキ(pikaki)、ピナコラーダ、パイナップル、ザクロ、パンプキンパイ、レーズンとアーモンド、ラズベリー、ローストナッツ、ローズウッド、セージ、サンダルウッド、ササフラス、海苔、ゴマ、シベリアマツ、スノーベリー、スペイン苔、スパイス、イチゴ、砂糖、あめ玉、日焼け止めローション、スイートクローブ、スイートグラス、スイートピー、タンジェリン、タイココナッツ、木材、トマトの葉、バニラ、スイカ、ホワイトチョコレート、セイヨウミザクラ、藤、毒薬、並びにイランイラン、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0287】
エクスフォリアント(Exfoliants)は、皮膚表面から、死んだ皮膚細胞、汚れ、若しくは他の物質をはがすのに用いることが可能な粒子を含み、そして、限定はされないが、果物の種子や繊維、穀物粉末、ナッツや種子の粗挽き粉、及び油若しくはろうビーズを含む。果物繊維には、ブルーベリー、クランベリー、グレープ、キウイ、ラズベリー、ブラックベリー、及びイチゴ等を含む。穀物粉末には、様々な生地の度合いに製粉されるオートムギ粉末、及びアーモンド粉末等を含む。ポリマービーズ(例、ポリエチレンから製造されるもの)等を使用することもできる。死んだ皮膚細胞及び/又は皮膚の最も外側の細胞の除去は、生物活性のある剤(例、カロテノイド)(本発明の組成物中に存在してもよい)が皮膚のより深い層へより良くアクセスする機会を提供する。
【0288】
抽出物とCO
2抽出物には、従来の抽出法由来の又は液化二酸化炭素の使用を介してのハーブ抽出物を含む。ハーブには、アロエベラの葉、アルファルファの葉、アルカンナの根、アナトー種子、クズウコン、ゴボウ、キンセンカの花びら、ニンジンの根、カモミールの花、コンフリーの葉、コーンシルク、オランダ青ケシ、ウイキョウ種子、ショウガの根、高麗人参、緑茶の葉、ジャスミンの花、ジュニパーベリー、ラベンダーの芽、レモンの皮、レモングラス、マシュマロの根、イラクサ、オート麦わら、オレンジの皮、パプリカ、パセリ、ペパーミントの葉、バラの芽、バラの花びら、ローズヒップ、ローズマリーの葉、シェーブグラス(shavegrass)、スペアミントの葉、セイヨウオトギリソウ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0289】
着色剤とグリッター(glitters)には、緑#5、緑#8、オレンジ#4、赤#22、赤#33、紫#2、青#1、緑#3、赤#40、黄#5、黄#6、緑#6、赤#17、それに加えて真珠光沢雲母及び着色ハーブ(例、ヘナの葉、サンダルウッド、ウコン、クランベリー、キウイ、ラズベリー、アルカンナ、アナトー、ニンジンの根、イラクサ、パプリカ、パセリ)を含む。
【0290】
種々の実施形態では、上記される1又は複数の添加物を含む鹸化油組成物は、化粧品として使用するために調剤される。いくつかの実施形態では、前記化粧品は、個別衛生製品(例、個々の身体又はその部分(例、顔、足等)で使用するための洗浄剤組成物)である。
【0291】
一観点では、本発明は、本明細書中に記載される鹸化油組成物と経口サプリメントを含むキットを対象としている。一実施形態では、前記経口サプリメントはビタミンである。別の実施形態では、前記経口サプリメントはハーブである。
【0292】
別の観点では、本発明は、上記される1又は複数の添加物の混合剤のために、本明細書中に記載されるように生産されるバイオマスのアルカリ加水分解に由来する鹸化油を用いることの方法と、その混合物を化粧品として包装することとの方法を対象としている。一実施形態では、前記化粧品は洗浄剤組成物(例、洗顔クレンザー)を含む。
【0293】
本発明に従って微生物バイオマスに由来する構成成分の存在を検出するのに、通常のDNA解析方法を用いることができる。
【0294】
本明細書中に引用される全ての参考文献(例、特許、特許出願、刊行物を含む)は、前に具体的に引用されたかどうかに関わらず、その全体が参照により本明細書に引用される。本明細書中で言及される刊行物を、本発明について用いられる場合がある試薬、方法論、及び概念を記述し並びに開示する目的のため引用する。本明細書中のものは全て、これらの参考文献が本明細書中に記載される本発明に関して先行技術であるとの認知として解釈されるものではない。特に、以下の特許出願が、任意の目的のためその全体が参照により本明細書中に引用される:米国特許仮出願第61/043,620号(2008年4月9日出願、タイトル「微生物バイオマスの直接的化学修飾」;米国特許仮出願第61/074,610(2008年6月20日、タイトル「油保有微生物バイオマス及び油から製造される石鹸および化粧品」;国際公開第WO 2008/151149号パンフレット;米国特許仮出願第61/112,464号(2008年11月7日、タイトル「微細藻類構成成分を含む化粧品組成物」。
【0295】
この発明は、その具体的実施形態に関連して記載されたが、それがさらなる改変ができることは理解されよう。一般的には、本発明の原理に従う、並びに、本発明が属する技術分野中で既知若しくは慣行の範囲内の開示及びこれ以前に記載される基本的特徴に適用される場合がある本開示からのそのような逸脱を含む、本発明のバリエーション、用途、若しくは適用は、以下の特許請求の範囲の範疇に含まれる。以下の実施例を、特許請求の範囲に記載の発明を説明するために提示するが、限定するためではない。
【実施例】
【0296】
<実施例1>
特に指摘がない場合は、ここ及び以下の実施例に記載される全ての株は、テキサス大学藻類培養物コレクション(オースチン、テキサス州)から取得された。この実施例では、グリセロール及びグルコース上での増殖について、クロレラ株を検証した。 以下のクロレラ種および株を培養した。クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)(株263、397、398、2228)。クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)(株1663、1665、1669、1671、1810)。クロレラ・サッカロフィア(Chlorella saccharophila)(株2911、2469)。クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)(株31、249、250、264)。各々の株を、固体培地から25mlの液体基礎培地(2g/Lイースト抽出物、2.94mMのNaNO
3、0.17mMのCaCl
2-2H
2O、0.3mMのMgSO
4-7H
2O、0.4mMのK
2HPO
4、1.28mMのKH
2PO
4、0.43mMのNaCl)に植菌し、75μEm
-2s
-1の光強度の下で、72時間27℃で、振盪培養した。これらの培養物を、2mlの(a)基礎培地のみ、(b)基礎培地にさらに0.1%のグルコースを加えたもの、(c)基礎培地に0.5%の試薬級グリセロール(EM Scienceのカタログ#GX0185-6)を加えたものを含む24穴プレートに、1mlあたり1x10
5の細胞の最終密度で各々の株を植菌するために用いた。プレートを暗所に置き、27℃で72時間振盪培養した。3通りの条件で増殖されたそれぞれの株のサンプルを、蒸留水で1.9:1に希釈し、吸光度をMolecular Devices SpectraMax 340PCにおいて600nmで計測した。全ての株は、基礎培地のみと比較してグルコース及びグリセロールの存在下で、増殖を示した。
【0297】
<実施例2>
<
株及び培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#1(株250)、#2(株264)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#1(株398)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した。改変プロテオース培地は、1リットルにつき0.25gのNaNO
3、0.09gのK
2HPO
4、0.175gのKH
2PO
4、0.025gのCaCl
2-2H
2O、0.075gのMgSO
4-7H
2Oおよび2gイースト抽出物から構成された(g/L)。バイオディーゼル生産からのグリセロール廃棄物(酸性グリセロール(AG)及び非酸性グリセロール(NAG))を、Imperial Western Products (セルマ、カリフォルニア州、米国)から取得した。「純粋な」または「試薬級」グリセロールを、EM Science(メルクKGAの1部門)カタログ#GX0185-6から得た。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール
2. プロテオース+1%酸性グリセロール
3. プロテオース+1%非酸性グリセロール
4. プロテオース+1%純粋なグリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
5. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
6. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0298】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%(w/v)グルコースを、サンプル#4、5および6に加え、その細胞をさらに24時間培養した。乾燥細胞重量を測定するために、1mlの各々の培養物を、エッペンドルフ5415C遠心機で5分間5,000回rpmにて、遠心分離することによってペレットにした。上清を除去後、細胞ペレットを-80℃で凍結し、研究室スケールの凍結乾燥機(Labconco社、ミズーリ州、米国)中で凍結乾燥した。結果を
図1に示す。
【0299】
<実施例3>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#1(株250)、#3(株249)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#2(株397)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース
2. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース
3. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
【0300】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。 96時間後、細胞増殖を乾燥細胞重量について測定した(実施例2を参照されたい)。結果を
図2に示す。
【0301】
<実施例4>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#3(株249)、#4(株31)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#2(株397)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース
2. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース
3. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
【0302】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なるグリセロール(純粋、酸性、又は非酸性のもの)を含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。96時間後、脂質含量を測定した。 細胞中の脂質含量を測定するために、100μlの培養物を回収して、等量の培地で一度洗浄した。各々のチューブに、5μlの洗浄された細胞と200μlの硫酸(18M)を加えた。前記チューブを、水浴中、90℃で30分間インキュべートし、そして、1mlのリン酸バニリン試薬をチューブに加えて、37℃で15分間インキュベートした。リン酸バニリン試薬を調製するために、0.12gのバニリンを20mlの水に加え、そして、85%のリン酸を用いて容量を100mlに調節した。ガラス・キュベット中で、サンプルとして5μlの水を有する参照チューブに対して、530nmにおける吸光度を測定した。結果を
図3に示す。
【0303】
<実施例5>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#2(株264)、およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#1(株398)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール
2. プロテオース+1%非酸性グリセロール
3. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
4. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0304】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なるグリセロール(純粋、又は非酸性のもの)を含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%グルコースを、サンプル#3および#4に加え、その細胞をさらに24時間培養した。脂質含量を全てのサンプルで測定した(実施例4を参照されたい)。非特異的吸収をチェックするために600nmでの吸光度も測定し、脂質量を計算するために530nmでの吸光度から差し引いた。基準曲線は、1から10μgまでの範囲にあるクロロフォルムに溶解されたトリオレインから構成される。結果を
図4に示す。
【0305】
<実施例6>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#3(株249)、およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#2(株397)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
2. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
3. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0306】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なるグリセロール(純粋、酸性、又は非酸性のもの)を含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。 72時間の初期増殖の後、1%グルコースを加えて、そしてその細胞をさらに24時間培養した。乾燥細胞重量および脂質含量を全てのサンプルで測定した(実施例2及び5を参照されたい)。脂質パーセンテージを、乾燥細胞重量で割った総脂質量から計算した。結果を
図5に示す。
【0307】
<実施例7>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#2(株264)、およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#1(株398)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
2. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0308】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、1%の純粋な又は1%の非酸性グリセロールのいずれかを含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%グルコースを加えて、そしてその細胞をさらに24時間培養した。乾燥細胞重量および脂質含量を全てのサンプルで測定した(実施例1及び4を参照されたい)。脂質パーセンテージを、総脂質量を乾燥細胞重量で割ったものから計算した。結果を
図6に示す。
【0309】
<実施例8>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#1(株250)、#4(株31)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#2(株397)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+2%グルコース
2. プロテオース+1%グリセロール+1%グルコース
【0310】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。初期増殖の96時間後、脂質含量を測定した(実施例5を参照されたい)。結果を
図7に示す。
【0311】
<実施例9>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#3(株249)、#4(株31)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#1(株398)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+2%グルコース
2. プロテオース+1%グリセロール+1%グルコース
3. プロテオース+1%グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0312】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%(w/v)グルコースを、#3培地に加えて、そしてその細胞をさらに24時間培養した。乾燥細胞重量および脂質含量を全てのサンプルで測定した(実施例2及び5を参照されたい)。脂質パーセンテージを、総脂質量を乾燥細胞重量で割ったものから計算した。 結果を
図8に示す。
【0313】
<実施例10>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#1(株250)、#3(株249)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#2(株397)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース
2. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
3. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース
4. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
5. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
6. プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0314】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%(w/v)グルコースを、#2、#4、及び#6培地に加えて、そしてその細胞をさらに24時間培養した。脂質含量を全てのサンプルで測定した(実施例4を参照されたい)。結果を
図9に示す。
【0315】
<実施例11>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)#1(株250)、#3(株249)、#4(株31)およびクロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)#2(株397)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した(実施例2を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース
2. プロテオース+1%純粋グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
3. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース
4. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
5. 1%プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
6. 1%プロテオース+1%非酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0316】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%(w/v)グルコースを、#2、#4、及び#6培地に加えて、そしてその細胞をさらに24時間培養した。乾燥細胞重量を全てのサンプルで測定した(実施例2を参照されたい)。結果を
図10に示す。
【0317】
<実施例12>
<
株および培地>(a)スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)(UTEX 2340)および(b)ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)(UTEX 667)のスピルリナ保存培養体を、スピルリナ培地で維持し、そして、ナビクラ(Navicula)を土壌抽出物培地(SEM)で維持した。スピルリナ(Spirulina)培地は、162mMのNaHCO
3、38mMのNa
2CO
3、1.9mMのK
2HPO
4、29mMのNaNO
3、5.75mMのK
2SO
4、17.1mMのNaCl、0.8mMのMgSO
4-7H
2O、0.25mMのCaCl
2-2H
2O、2mMのNa
2EDTA、0.36mMのFeCl
3-6H
2O、0.21mMのMnCl
2-4H
2O、0.037mMのZnCl
2、0.0085mMのCoCl
2-6H
2O、0.017mMのNaMoO
4-2H
2O、0.78μMのCuSO
4-5H
2O、0.15μMのZnSO
4-7H
2O、10μMのH
3BO
3および0.001mMのビタミンB
12から構成された。土壌抽出物培地は、2.94mMのNaNO
3、0.17のmMCaCl
2-2H
2O、0.3mMのMgSO
47H
2O、0.43mMのK
2HPO
4、1.29mMのKH
2PO
4、0.43mMのNaClおよび土壌抽出物から構成された。バイオディーゼル生産からのグリセロール廃棄物(酸性グリセロール(AG)及び非酸性グリセロール(NAG))を、Imperial Western Products(セルマ、カリフォルニア州、米国)から取得した。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
(a)
7.スピルリナ(Spirulina)培地+2%グルコース
8.スピルリナ(Spirulina)培地+2%試薬級グリセロール
9.スピルリナ(Spirulina)培地+2%非酸性グリセロール
10.スピルリナ(Spirulina)培地+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
(b)
1. SEM+2%ブドウ糖
2. SEM+2%試薬級グリセロール
3. SEM+1%試薬級グリセロール+1%グルコース
4. SEM+2%酸性グリセロール
5. SEM+1%酸性グリセロール+1%グルコース
6. SEM+2%非酸性グリセロール
7. SEM+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
【0318】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。96時間後、脂質含量を測定した。細胞中の脂質含量を測定するために、100μlの培養物を回収して、等量の培地で一度洗浄した。各々のチューブに、5μlの洗浄された細胞と200μlの硫酸(18M)を加えた。前記チューブを、水浴中、90℃で30分間インキュべートし、そして、1mlのリン酸バニリン試薬をチューブに加えて、37℃で15分間インキュベートした。リン酸バニリン試薬を調製するために、0.12gのバニリンを20mlの水に加え、そして、85%のリン酸を用いて容量を100mlに調節した。ガラス・キュベット中で、サンプルとして5μlの水を有する参照チューブに対して、530nmにおける吸光度を測定した。基準曲線は、1から10μgまでの範囲にあるクロロフォルムに溶解されたトリオレインから構成される。
【0319】
乾燥細胞重量を測定するために、0.5mlの各々の培養物を、5分間5,000rpmで遠心分離することによってペレットにした。上清を除去後、細胞ペレットを-80℃で凍結し、凍結乾燥システム(Labconco社、ミズーリ州、米国)中で一晩乾燥した。脂質パーセンテージを、総脂質量を乾燥細胞重量で割ったものから計算した。結果を
図11に示す。
【0320】
<実施例13>
<
株および培地>セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)(UTEX 2552)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地で維持した。改変プロテオース培地は、1リットルにつき0.25gのNaNO
3、0.09gのK
2HPO
4、0.175gのKH
2PO
4、0.025gのCaCl
2-2H
2O、0.075gのMgSO
4-7H
2Oおよび2gイースト抽出物から構成された(g/L)。各々の増殖条件について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. Proteose+2%グルコース
2. Proteose+2%グリセロール
3. Proteose+2%酸性グリセロール
4. Proteose+2%非酸性グリセロール
5. Proteose+1%酸性グリセロール+1%グルコース
【0321】
セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)(UTEX 2552)を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。96時間後、乾燥細胞重量により細胞増殖を測定し、脂質含量を蛍光体バニリンアッセイ(実施例12を参照されたい)により測定した。脂質パーセンテージを、総脂質量を乾燥細胞重量で割ったものから計算した。 結果を
図12に示す。
【0322】
<実施例14>
<
株および培地>ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)(UTEX 667)保存培養体を、土壌抽出培地で維持した(実施例12を参照されたい)。各々の増殖条件について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
1. SEM+2%グルコース
2. SEM+2%グリセロール
3. SEM+2%酸性グリセロール
4. SEM+1%酸性グリセロール+1%グルコース
5. SEM+2%非酸性グリセロール
6. SEM+1%非酸性グリセロール+1%グルコース
ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)(UTEX 667)を、5×10
5細胞/mlの濃度で、グルコース又は異なるグリセロール(純粋、酸性、又は非酸性のもの)を含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。 96時間後、細胞増殖を乾燥細胞重量により測定した(実施例12を参照されたい)。結果を
図13に示す。
【0323】
<実施例15>
<
株および培地>セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)(UTEX 2552)及びナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)(UTEX 667)保存培養体を、セネデスムス・アルマツスについては改変プロテオース(Proteose)培地で、そして、ナビクラ・ペリクロサについては土壌抽出物培地で維持した(実施例1を参照されたい)。各々の株について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)
5. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース
6. プロテオース+1%酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)
1. SEM+1%酸性グリセロール+1%グルコース
2. SEM+1%酸性グリセロール+1%グルコース(72時間後に加えられた)
【0324】
各々の株を、5×10
5細胞/mlの濃度で、異なる培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。72時間の初期増殖の後、1%グルコースを、サンプル#2に加え、その細胞をさらに24時間培養した。細胞増殖を乾燥細胞重量により測定した(実施例12を参照されたい)。結果を14(a)及び(b)に示す。
【0325】
<実施例16>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)(UTEX 31)保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地(実施例1を参照されたい)で維持した。各々の条件について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。
4. プロテオース
5. プロテオース+0.5%グルコース
6. プロテオース+0.5%キシロース
7. プロテオース+0.25%グルコース+0.25%キシロース
【0326】
クロレラ・プロトセコイデス#4(UTEX 31)を、3×10
5細胞/mlの濃度で、異なる糖類(グルコース又はキシロース)を含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。 72時間の増殖後、細胞増殖を各々の培養物の細胞数を計測することにより測定した。結果を
図15に示す。
【0327】
<実施例17>
<
株および培地>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)株#1、#3、#4保存培養体を、改変プロテオース(Proteose)培地(実施例1を参照されたい)で維持した。各々の条件について、1mlの下記の異なる培地を24穴プレートに準備した。 1. プロテオース
2. プロテオース+1%グルコース
3. プロテオース+1%フルクトース
【0328】
各々の株を、1×10
6細胞/mlの濃度で、異なる糖類(グルコース又はフルクトース)を含む培地に植菌した。培養物を暗所に置き、Labnet社(バークシア、英国)のオービタルシェーカー(軌道振盪機)によって、430rpmで撹拌した。96時間の増殖後、細胞密度を各々の培養物の細胞数を計測することにより測定した。結果を
図16に示す。
【0329】
<実施例18>
<
スクロース(ショ糖)上でのクロレラ>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)(UTEX 249)を、3つの50mlフラスコ中の1%のスクロースを有するプロテオース培地(2.94mMのNaNO
3、0.428mMのK
2HPO
4、1.28mMのKH
2PO
4、0.427mMのNaCl、0.17mMのCaCl
2-2H
2O、0.3mMのMgSO
4-7H
2O、プロテオースペプトンlg/L)に、4x10
5細胞/mlの最終的な菌体密度になるように、植菌した。インベルターゼ(シグマ#14504)を、0.01U/mlおよび0.05U/mlで2つの培地に加えた。全3つの培養物を、暗所で150rpmにて約60時間振盪培養した。最終的な細胞数計測を、全3つの培養物について、暗所で約60時間振盪した後、実施した。0.01U/mlおよび0.05U/mlフラスコがそれぞれ1x10
8および3x10
8の菌体密度に達した一方、コントロールフラスコは4.4x10
5細胞/mlに到達した。各々のフラスコを顕微鏡分析によって実験終了時にコンタミネーションを検査したが、全てがきれいだった。
【0330】
<実施例19>
<
ショ糖インベルターゼを伴う糖蜜上でのクロレラ・プロトセコイデスの増殖>
<
植菌のためのクロレラ細胞の調製>クロレラの10mlの液体培養を、固形プロテオースプレートから植菌体を取り出して開始した。培養物を26℃で約2日間、光の下で増殖した。増殖を、750nmで吸光度測定器(OD)を用いて、及び乾燥細胞重量を測定することにより測定した。
【0331】
<糖蜜および糖原液の調製>以下の表6に示すように、5%の原液を、グルコース(ブドウ糖)、スクロース(ショ糖)、並びにサトウキビを糖にする商業的処理から得られる3つの異なる糖蜜サンプル(BSl、BS2およびHTMとラベルされるもの)を用いて調製した。全ての原液のpHが、6から6.6の範囲であることを確認し、そして、その原液をそれからオートクレーブした。
【0332】
[表6]糖蜜および糖溶液
【0333】
<
インベルターゼ溶液の調製>インベルターゼの40単位/mlの原液を、10mlの蒸留水中で400単位/mgのインベルターゼ(シグマ)の1mgを再構成することによって調製した。
【0334】
<
実験条件および準備>10mlの培養物を調製して、基礎プロテオース培地中、それぞれが1%の最終的な糖蜜/糖の濃度、0.05単位/mlのインベルターゼ、及び1.0×10
6細胞/mlクロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)からなるように調製した。培養物に、以下の通りに番号をつけた。
(1)培地のみのコントロール、
(2)1%HTM、
(3)1%BSl、
(4)1%BS2、
(5)1%グルコース、
(6)1%スクロース。
また、同様のコントロールセットを、インベルターゼの添加なしに調製した。前記培養物を、暗所で28℃、250rpmにて5日間振盪培養した。
【0335】
<
結果>クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)細胞の増殖を、暗所でそれぞれの栄養源上での5日間のインキュベーションの後に評価した。
図19と20に示されるように、純粋なグルコース上で増殖する場合の収率と同等の収率を有するように、ショ糖インベルターゼの存在下の糖蜜上で、細胞を増殖することができる。
【0336】
<実施例20>
<
高油および低油バイオマスの生成>エステル転移のためのクロレラ・プロトセコイデス#1(株250)バイオマスを、流加(フェッドバッチ)発酵物(基本的には、Appl Microbiol Biotechnol 78:29-36 (2008)に記載される)として、固定炭素源としてのグルコースの存在下で従属栄養性に増殖した。サンプル「LO-1」を、指数関数的増殖期間(60時間で)に取り出した。それは、光合成増殖で得られるものと同様な油含量を含む。サンプル「080020-1」を、培養物中の全ての窒素が消費され及び培養物が脂質蓄積の定常状態相に入った後に、115時間で取り出した。
【0337】
<
脂質含量>油(エステル転移前のもの)の総脂質含量を、HPLC分析により測定した。約10mgの乾燥バイオマスを、KOHで飽和した1mlのイソプロパノールと混合し、80℃で4時間インキュベートした。細胞ペレットからの脂質を抽出し、そして4時間80℃に加熱したイソプロパノール・水酸化カリウム溶液を用いて加水分解した。その抽出サンプルを、以下の方法を用いて、Aglint 1100 HPLCで解析した。前記サンプルを、ブロモフェナシルブロミド(60mg/ml)で誘導体化し、ルナ(Luna) 5u C8(2) 100Aの150x2mmカラム(フェノメナックス社(Phenomenex))にロードした。前記サンプルを、水の100%アセトニトリル:テトロヒドロフラン(95:5)に対する勾配を利用してカラムから溶出した。シグナルを、254nmの波長でDADアレイ検出器を用いて検出した。
【0338】
サンプル「LO-1」は、8.6%の油を含み、サンプル「080020-1」は28%の油を含んでいた。
【0339】
<実施例21>
<
微生物バイオマスの直接的エステル転移>
<
サンプル調製>上記するように調製された、低油含量および高油含量の各々を含むバイオマスの湿ったペレットを凍結乾燥した。サンプルからの乾燥バイオマスを粉砕して粗粉末にし、真空中にて55℃で一晩再乾燥した。各々のサンプルについて、メトラー・トレド(Mettler Toledo)湿潤度解析装置を用いて水分比率が<3%であると測定された。
【0340】
<
エステル転移>無水メタノール/1N NaOHを、乾燥バイオマス(<3%水分)に、1:5の比率で、ねじ口ガラスボトルへ、バイオマスの4倍量加えた。攪拌棒が、前記ボトル中に置かれ、それからきつく蓋をした。混合物を、55℃で7時間、激しく攪拌した。そのバイオマスを、ワットマン・フィルターペーパーを通して濾過し、そして、濾液が透明になるまでメタノールで洗浄した。全ての洗浄物を、初めの濾液を有する球形(バルーン)フラスコにて組み合わせて、そして、メタノールを、ロトバップ(rotovap)を使用して留去した。クロロフォルム(1部)を加えて、よく混合し、そしてそれから分離漏斗に注いだ。 メタノール(2部)を前記フラスコに加えて、よく混合し、そしてそれから分離漏斗に注いだ。DI水(0.8容量)を前記フラスコに加えて、よく混合し、そしてそれから分離漏斗に注いだ。前記分離漏斗の内容物を激しく(通気して)振盪し、分離するのを可能にした。下層(クロロフォルム/油)を、前もって重さを量ったフラスコへ回収し、そして、新たなクロロフォルムを二次抽出のため漏斗へ加え戻した。その後、前記クロロフォルムを、ロトバップを使用して留去した。そのフラスコを再計量することにより、収率を決定した。上記するように、脂質含量をHPLCで再度測定した。 エステル転移された組成物のカロテノイド構成要素の分析的測定を、HPLC法(Schmid et al., J of Applied Phycology 7:487-494 (1995)に記載される)を用いて行った。元素分析を、誘導結合型プラズマ質量分析法により実行した。
【0341】
<
結果>表7は 低油(LO-1-8.6%脂質) 及び高油 (080020-1-28%脂質)バイオマスからのエステル転移された生成物の結果を示す。全てのカロテノイドは、脂肪酸メチルエステルを含む親油性層のmcg/gで示される。
【0342】
[表7]エステル転移された低油および高油バイオマスの組成
【0343】
<実施例22>
<
高油含量を達成するための微細藻類の培養>微細藻類株を養殖(培養)して、乾燥細胞重量当たり高い油パーセンテージを実現した。凍結保存細胞を室温で融解し、500μlの細胞を、4.5mlの培地 (4.2g/L K
2HPO
4、3.1g/L NaH
2PO
4、0.24g/L MgSO
4-7H
2O、0.25g/L クエン酸一水和物、0.025g/L CaCl
2-2H
2O、2g/L酵母抽出物)に2%グルコースを加えたのものに加え、6穴プレート中で、攪拌(200rpm)して、28℃で7日間増殖させた。前もって計量されたエッペンドルフ・チューブ中、14,000rpmで5分間、1mlの培養物を遠心分離することにより、乾燥細胞重量を測定した。培養上清を捨てて、得られた細胞ペレットを、1mlの脱イオン水で洗浄した。前記培養物を再遠心分離して、その上清を捨てて、そして、その細胞ペレットを凍結するまで-80℃に置いた。その後、サンプルを24時間凍結乾燥し、そして乾燥細胞重量を計算した。培養物中の総脂質の測定については、3mlの培養物を取り出して、Ankomシステム(Ankom社、マセドン、ニューヨーク州)を製造元のプロトコルに従って使用して解析に供した。サンプルを、Amkom XT10抽出機を製造元のプロトコルに従って用いて溶媒抽出に供した。 総脂質を、酸で加水分解された乾燥サンプルと溶媒抽出された乾燥サンプルとの間の質量差として測定した。乾燥細胞重量のパーセント油測定を、表8に示す。
【0344】
[表8]高油含量を達成するための微細藻類の培養
【0345】
<実施例23>
<
高油含量を有する微細藻類のジェノタイピング>上記表8に一覧表にされる23個の株からの微細藻類サンプルをジェノタイピングした。以下のように藻類バイオマスから、ゲノムDNAを単離した。細胞(約200mg)を、液体培養物から、14,000 x gで5分間遠心分離した。その後、細胞を滅菌した蒸留水に再懸濁し、14,000 x gで5分間遠心分離し、そして、その上清を捨てた。 直径約2mmの1種類のグラスビーズをバイオマスに加えて、そして、チューブを-80℃で少なくとも15分間置いた。サンプルを取り出して、150μlの粉砕緩衝液 (1%N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(Sarkosyl)、0.25Mスクロース、50mM NaCl、20mM EDTA、100mM Tris-HCl, pH 8.0、RNase A 0.5 maikuro μg/μl)を加えた。短時間ボルテックスすることによりペレットを再懸濁し、40μlの 5M NaClの添加が引き続いた。サンプルを短時間ボルテックスし、66μlの5%CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)の添加および最後の短時間ボルテックスが引き続いた。サンプルを14,000 x gで10分間遠心分離した後、サンプルを65℃で10分間、次にインキュベートした。上清を新たなチューブに移し、そして、300μlのフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(12:12:1)で一度抽出し、14,000 x gで5分間遠心分離することが引き続いた。結果としてできる水溶性層を0.7容量のイソプロパノール(約190μl)を含む新たなチューブに移し、逆さまにして混合し、そして、30分間室温で又は4℃で一晩インキュベートした。14,000 x gで10分間遠心分離することを介してDNAを回収した。得られたペレットを、その後、70%エタノールで2回洗浄し、100%エタノールでの最終洗浄が引き続いた。ペレットを室温で20から30分間空気乾燥し、次に50μlの10mM TrisCl、1mM EDTA (pH 8.0)への再懸濁を行った。
【0346】
5μlのトータルな藻類DNA(上記のように調製された)を、10mM Tris, pH 8.0に1:50で希釈した。PCR反応(最終量20μl)を以下のように準備した。 10μlの2xiProof HFマスターミックス(バイオラド社)を0.4μlのプライマーSZ02613(5'-TGTTGAAGAATGAGCCGGCGAC-3'(配列番号1)(10mMの原液濃度)に加えた。このプライマー配列はジェンバンク登録番号L43357中の567から588番目の方向に進み、並びに、高等植物および藻類色素体ゲノムで高度に保存されている。これに、0.4μlのプライマーSZ02615(5'-CAGTGAGCTATTACGCACTC-3'(配列番号:2)(10mMの原液濃度)の添加が引き続く。このプライマー配列はジェンバンク登録番号L43357中の1112から1093番目に相補的であり、並びに、高等植物および藻類色素体ゲノムで高度に保存されている。次に、5μlの希釈したトータルDNA及び3.2μlのdH2Oを加えた。PCR反応を以下のように実行した。98℃で45秒、(98℃で8秒、53℃で12秒、72℃で20秒)を35サイクル、次に72℃で1分、そして25℃で保った。PCR産物の精製については、20μlの10mM Tris, pH 8.0を各々の反応に加え、40μlのフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(12:12:1)を用いて抽出し、ボルテックスし、そして14,000 x gで5分間遠心分離することが引き続いた。PCR反応物をS-400カラム(GE Healthcare社)に添加し、3,000 x gで2分間遠心分離した。精製されたPCR産物を、その後PCR8/GW/TOPOへTOPOクローニングし、そして、LB/Specプレート上でポジティブクローンを選択した。精製されたプラスミドDNAを、M13フォワード及びリバースプライマーを用いて双方向にシークエンスした。配列アラインメント及び進化系統樹を、ジェニアス(Geneious)DNA解析ソフトウェアを用いて、
図29aから29iに示されるように、作成した。株1から23(実施例22、表8に表示されているもの)の配列を、貼付された配列表中の配列番号:7から29として一覧表にした。
【0347】
<実施例24>
<
藻類種における脂質鎖の多様性>実施例2に上記するように、種々の藻類種の培養物を改変プロテオース培地中で維持し、全ての実験をその中で実行した。各々の株について、10mlの培養物を50mlのフラスコに以下の様に準備した。
1.炭素添加のないプロテオース増殖培地
2.1%グルコースを有するプロテオース増殖培地
【0348】
各々の株を、1.0x10
6細胞/mlの初期播種密度で、上述した2つの条件下増殖させた。前記培養物を暗所に置き、250rpmで7日間攪拌した。7日の増殖期間の後、細胞を回収し、乾燥細胞重量を測定することにより、コントロールに比べて暗所での増殖について評価した。乾燥細胞重量を以下のように測定した。1mlの培養物を遠心分離し、得られたペレットを水で濯いで任意の塩若しくは残留培地を除去し、最終的な濯いだペレットを-80℃で凍結し、並びに凍結乾燥システム (ラブコンコ、ミズーリ州、米国)中で一晩凍結乾燥に供した。 以下の表9に一覧表にされた全ての種が、暗所において炭素源としてのグルコース上で増殖した。 グルコース欠如下(条件1)では、細胞は増殖しなかった。実施例20に記載されるように、グリセロ脂質プロフィールを測定した。
【0349】
[表9]種々の藻類種のグリセロ脂質プロフィール
【0350】
また、実施例22に記載され且つ表8に示されるように増殖した株のサブセットからの脂質サンプルを、HPLCを使用して脂質プロフィールに関して解析もした。結果を
図29に示す。
【0351】
<実施例25>
<
高油クロレラ・プロトセコイデスバイオマスの鹸化>高油含量を有するバイオマスを生成し、実施例20に記載された方法に従って解析した。前記バイオマスは45%の脂質、20%の炭水化物、10%のタンパク質、10%の他の細胞構成要素、10%の水、及び5%の塩を含む。ある実施形態では、前記バイオマスは、部分的に脱水された細胞マス中に懸濁された脂質球を含む乾燥藻類細胞の全体を含むことができる。
【0352】
<液体細胞性石鹸の調製>上記で同定されたバイオマスは、水に分散されて、細胞内油(oil-in-cell)の乳化濃縮物を形成する。所望量のグリセロ脂質および脂肪酸エステルを脂肪酸塩へと転換するのに十分な過剰KOHを、バイオマスを含む水溶性溶液に溶解する。その混合物をその後、攪拌してアルカリ加水分解反応の完了を促進し、80℃と90℃との間の温度に30分から12時間加熱し、脂質の脂肪酸塩への転換を完了する。エバポレーション(蒸発)で失った水分を、反応処理中ずっと必要なだけ元に戻す。種々の添加物(例、グリセリン(透明度のため及び保湿性質を付与するため)、エチレンジアミン(EDTA、硬水条件で使用される場合に能力を向上するためのキレート剤)、ココアミドプロピル・ベタイン(cocoamidopropyl betaine)(洗浄および濯ぎ特性を付与するのに使用される両性界面活性剤)、並びに香料を含む)を鹸化組成物と組み合わせて、石鹸製品を生産することができる。いくつかの実施形態では、前記石鹸製品は、以下の表10に示される構成成分を有する細胞性石鹸を含む。
【0353】
[表10]バイオマスから直接製造される細胞性石鹸の構成成分
【0354】
この実施例中に記載される細胞性石鹸は、天然の水和及び皮膚軟化性質であって、藻類細胞由来の炭水化物及びタンパク質によって付与されるものと、藻類のカロテノイド及び他の化合物を組成物中に取り込むことに由来する抗酸化特性を含む。
【0355】
代わりに、有機塩基(例、トリエタノールアミン)をアルカリ加水分解反応に用いて、より透明な生成物を生産することができる。また、トリエタノールアミン又は別の有機塩基を使用すると、洗浄剤として使用する場合に皮膚へ刺激を引き起こす可能性がより少ない、より刺激性の少ない生成物が一般に生産されるであろう。
【0356】
任意ではあるが、脂肪酸塩を、NaCl又はKCl塩の添加により混合物から析出させることができ、本明細書中に記載される種々の添加物と組み合わされる組成物に使用するため分離してもよい。
【0357】
図20は、48%の油の乾燥細胞重量クロレラ・プロトセコイデスバイオマスを用いて作られる石鹸の顕微鏡写真を示す。前記石鹸は10% w/wの藻類バイオマスを含んでいた。
【0358】
<実施例26>
<
クロレラ・プロトセコイデスバイオマスからのヘキサン抽出油の鹸化>実施例20に記載される方法に従って、バイオマスを生成する。バイオマスからの脂質の従来的ヘキサン抽出を実行する。前記ヘキサン抽出脂質を、その後、所望量の脂質を脂肪酸塩へ転換するのに十分な塩基量を含む水溶性のNaOH若しくはKOH溶液と脂質とを混合することにより、並びに任意ではあるが、その混合物を加熱して反応を早めることにより鹸化する。脂肪酸塩は、その後、NaCl又はKClの添加により析出する。ヘキサン抽出バイオマス由来の鹸化油の組成物は、ヘキサンが微生物バイオマスからそのような化合物を抽出する際の効率が原因で、夾雑するカロテノイドをより高い割合で含む。
【0359】
<実施例27>
<
クロレラ・プロトセコイデスバイオマスからの無溶媒抽出油の鹸化>実施例20に記載される方法に従って、バイオマスを生成する。バイオマスからの脂質の無溶媒抽出を、物理的圧力の使用を通してバイオマスを溶解および圧縮することにより実行する。前記抽出脂質を、その後、所望量の脂質を脂肪酸塩へ転換するのに十分な塩基量を含む水溶性のNaOH若しくはKOH溶液と脂質とを混合することにより、並びに任意ではあるが、その混合物を加熱して反応を早めることにより鹸化する。脂肪酸塩は、その後、NaCl又はKClの添加により析出する。ヘキサン抽出バイオマス由来の鹸化油の組成物は、無溶媒法を用いて微生物バイオマスからそのような化合物を抽出する効率が減少するために、ヘキサン抽出脂質に比較して、夾雑するカロテノイドを相対的により低い割合で含む。
【0360】
<実施例28>
<プロトテカ株のグリセロ脂質プロフィール>5種類のプロトテカ株を、2%グルコースを有する培地中で培養し、6穴プレート中で、攪拌(200rpm)して、28℃で7日間増殖した。脂質プロフィールを標準的なHPLC方法を用いて測定した。特定株についての脂質プロフィールは、異なる培養培地で増殖された場合にも有意に変化しなかった。結果を以下の表11に示す。
【0361】
[表11]プロトテカ株のグリセロ脂質プロフィール
【0362】
UTEX1435からのバイオマスをヘキサン抽出に供した。抽出された油は、ほとんど色を含んでいなかった。
図19は、クロレラ・プロトセコイデスUTEX250からの油に比較して、UTEX1435の油のサンプルを示す。
【0363】
<実施例29>
<プロトテカ・モリフォルミスUTEX1435から抽出された油のカロテノイド及びクロロフィル解析>プロトテカ・モリフォルミス(UTEX1435)バイオマスからのヘキサン抽出油を、上記実施例26に記載した方法に従って生成し、HPLCを使用してカロテノイド及びクロロフィルについて解析した。全体として、前記カロテノイドレベルは、上記表7に記載される油中のカロテノイドレベルよりもずっと低かった。また、前記油中のクロロフィル含量は、0.01mg/kg未満であった。この結果は、ほとんど色を有しないUTEX1435バイオマスからの抽出油の結果で、
図19に示されるものと一貫性がある。UTEX1435バイオマスから抽出された油についてのカロテノイド及びクロロフィル解析は、以下の表12に要約される。
【0364】
[表12]プロトテカ・モリフォルミスUTEX1435から抽出された油のカロテノイド解析
【0365】
<実施例30>
<
クロレラ・プロトセコイデスの8個の株からの23S rRNAのゲノムDNA解析>クロレラ・プロトセコイデスの8個の株 (UTEX 25、UTEX 249、UTEX 250、UTEX 256、UTEX 264、UTEX 411、CCAP 211/17、及びCCAP 211/8d)からのゲノムDNAを単離して、そして、23S rRNAのゲノムDNA解析を上記実施例23に記載される方法に従って実行した。
【0366】
試験されたクロレラ・プロトセコイデスの全ての株は、UTEX25以外は配列が同一であった。結果は、
図21aから21cに示される分岐図に要約される。8個の株の全てについての配列を、貼付した配列表中に配列番号:3及び4として一覧表にする。
【0367】
プロトテカ・モリフォルミスUTEX1436についての23s rRNAゲノム配列(配列番号:5)を、他のプロトテカ種およびクロレラ・プロトセコイデスと比較もした。その比較が示したのは、プロトテカ・モリフォルミスUTEX1436についての23s rRNAゲノム配列が、その他のプロトテカの遺伝子型(配列番号:6)に非類似であることである。
【0368】
<実施例31>
<
モロコシ利用スクリーニング>
<
株>以下の株を、モロコシを唯一の炭素源として利用することができる微細藻類株を同定するためのスクリーニングに用いた。10個の株は、クロレラ・プロトセコイデス(UTEX 25、UTEX 31、UTEX 411、CCAP 221/8D、UTEX 249、UTEX 250、UTEX 256、UTEX 264、SAG 211-10D、及びCCAP 211/17)であった。6個の株は、プロトテカ・モリフォルミス(UTEX 1435、UTEX 1437、UTEX 288、UTEX 1439、UTEX 1441、及びUTEX 1434)であった。他の株には、クロレラ・ルテオビリディス(Chlorella luteoviridis)(UTEX 22及びSAG 2214)、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)(UTEX 2229)、パラクロレラ・ケッセレリ (SAG 12.80)、並びにプロトテカ・スタグノラ(Prototheca stagnora) (UTEX 1442)を含む。
【0369】
<
培養条件>微細藻類株(上記で同定されたもの)の種培養物を、24穴プレートにて1ml液体培養物として開始し、約350rpmで攪拌し、光の下48時間独立栄養性に増殖させた。純粋モロコシは、フルクトース21.0% w/w、デキストロース28.0% w/w、スクロース16.0% w/w、及びマルトース<0.5% w/wの糖プロフィールを有するものをマアスダム・ソルガム・ミル(Maasdam Sorghum Mills)(リンビル、アイオワ州)から購入した。前記培養物を、その後、唯一の炭素源として2%、5%、又は7%(v/v)の純粋モロコシ(純粋原料から希釈されたもの)を含む液体培地に移し、そして、前記培養物を約350rpmで攪拌し、暗所で従属栄養性に増殖させた。前記培養物からのサンプルを、24、40、48、67、及び89時間で抜き出し、増殖を、分光光度計においてA750を読むことにより測定した。増殖を、
図22から27に示されるように、試験した各々の株について観察した。