特許第6066475号(P6066475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066475
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】有芯コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/064 20160101AFI20170116BHJP
   H01F 41/073 20160101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01F41/064
   H01F41/073
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-4119(P2013-4119)
(22)【出願日】2013年1月12日
(65)【公開番号】特開2014-135458(P2014-135458A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】日特エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】須崎 知彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 功治
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−118282(JP,A)
【文献】 特開平09−162059(JP,A)
【文献】 特開2006−066468(JP,A)
【文献】 特開平02−156513(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109930(WO,A1)
【文献】 特開2000−217315(JP,A)
【文献】 特開平11−186043(JP,A)
【文献】 特開昭49−022548(JP,A)
【文献】 特開平08−250364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/064
H01F 41/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が支持された被巻線部材(11)を両端が支持された状態で回転させて前記被巻線部材(11)の一端側に線材(12)を巻回して前記被巻線部材(11)の一端側に土手巻線(13)を形成する第一巻線工程と、
前記被巻線部材(11)の一端の支持を解消する一端支持解消工程と、
他端が支持された前記被巻線部材(11)を回転させて他端を支持する巻治具(16)と前記土手巻線(13)の間の前記被巻線部材(11)に前記線材(12)を巻回する第二巻線工程と
を含む有芯コイルの製造方法。
【請求項2】
第一巻線工程における被巻線部材(11)の回転速度に対して、第二巻線工程における被巻線部材(11)の回転速度を速くする請求項1記載の有芯コイルの製造方法。
【請求項3】
巻回される線材(12)が接合される電極(11e,11f)が、一端支持解消工程において支持が解消される被巻線部材(11)の一端に形成された請求項1又は2記載の有芯コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材となる被巻線部材の周囲に線材を巻回して、その巻回された線材から成るコイルを被巻線部材の周囲に形成する有芯コイルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、芯材となる棒状の被巻線部材に線材を巻回して、その巻回された線材から成るコイルを被巻線部材の周囲に形成する有芯コイルの製造方法として、対向して配置された二つの巻治具を備え、所要の巻幅と同じになるように二つの巻治具の間隔が増減され、その増減がされたところで、被巻線部材の、二つの巻治具に挟まれている部分に線材を巻回する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この製造方法では、被巻線部材を二つの巻治具に挟むことにより被巻線部材が撓むような芯ぶれを防止するとともに、被巻線部材の二つの巻治具に挟まれている部分に線材を巻回することにより、例え、その被巻線部材に巻幅を制限する鍔のようなものが無くても、その被巻線部材の所望の位置に所望の巻幅で線材を確実に巻回し得るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−192778号公報(図10,段落番号0058)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の製造方法では、被巻線部材の両端を二つの巻治具により挟んだ状態で、それら二つの巻治具を被巻線部材と共に同方向に回転させ、それにより被巻線部材の二つの巻治具に挟まれている部分に線材を巻回するので、被巻線部材の回転速度を高めるには限界があり、その回転速度を高めて有芯コイルの製造速度を高めることはできない不具合があった。
【0005】
即ち、被巻線部材の両端を二つの巻治具により挟んだ状態でそれらを同一の方向に同一の速度で回転させたとしても、その回転速度が、例えば毎分1万回転以上のように高まると、二つの巻治具の間に生じる回転誤差により、それらの巻治具に両端が支持された被巻線部材に捩れが与えられ、その被巻線部材が、例えば比較的割れやすいフェライトのようなものであれば、その被巻線部材は破損してしまい、例えば歪みにより特性が異なるパーマロイのようなものであれば、その被巻線部材における特性が変化するような不具合があった。例えば、熱処理を行った磁性材料の捩れ外力等を加えたときの磁性特性の劣化については、一般的に知られているところである。
【0006】
一方、被巻線部材を高速で回転させて、有芯コイルの製造速度を高めるために、その被巻線部材の一方の端部を巻治具に支持して回転させることも考えられる。しかし、被巻線部材の一方の端部を巻治具に支持して回転させると、被巻線部材が棒状であってその被巻線部材に巻幅を制限する鍔のようなものが無い様なものであれば、その被巻線部材の他方の巻幅を制限するべきものが存在しないので、その被巻線部材の所望の位置に所望の巻幅で線材を巻回することができない不具合を生じさせる。
【0007】
本発明の目的は、被巻線部材の所望の位置に所望の巻幅で線材を確実に巻回するとともに、その巻線速度を十分に高めることができる有芯コイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有芯コイルの製造方法は、両端が支持された被巻線部材を両端が支持された状態で回転させて被巻線部材の一端側に線材を巻回して被巻線部材の一端側に土手巻線を形成する第一巻線工程と、被巻線部材の一端の支持を解消する一端支持解消工程と、他端が支持された被巻線部材を回転させて他端を支持する巻治具と土手巻線の間の被巻線部材に線材を巻回する第二巻線工程とを含む。
【0009】
ここで、第一巻線工程における被巻線部材の回転速度に対して、第二巻線工程における被巻線部材の回転速度を速くすることが好ましく、巻回される線材が接合される電極が、一端支持解消工程において支持が解消される被巻線部材の一端に形成されることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明における有芯コイルの製造方法では、土手巻線の形成時に、両端が支持された被巻線部材を回転させるので、この土手巻線の形成時にその被巻線部材が撓むような芯ぶれを生じさせることはない。このように、両端を支持して被巻線部材に芯ぶれ等を生じさせないことにより、供給された線材を所望の箇所に巻回させることが可能となり、被巻線部材の一端側に比較的正確な形状の土手巻線を形成することができる。また、被巻線部材の回転速度を、従来と同様に被巻線部材に捩れが与えられない程度の速度とすることにより、この土手巻線の形成時に、被巻線部材の破損等を防止することもできる。
【0011】
また、その土手巻線が形成された後には、被巻線部材の一端の支持を解消し、その後、他端が支持された被巻線部材を回転させて他端を支持する巻治具と土手巻線の間の被巻線部材に線材を巻回する第二巻線工程を行うので、この第二巻線工程において被巻線部材は、その両端が支持されるようなことはない。このため、この第二巻線工程において、例え、被巻線部材が僅かに撓む芯ぶれを生じさせたとしても、被巻線部材に捩れが与えられることはないので、その被巻線部材の破損等を回避しつつ、その巻線速度を高めることができる。そして、この巻線は、巻治具と土手巻線の間で行われ、被巻線部材の土手巻線を越えた一端側と、他端側における巻治具が把持する部分には巻線されない。よって、被巻線部材に巻幅を制限する鍔のようなものが無い様なものであっても、その被巻線部材の所望の位置に所望の巻幅で線材を巻回することができる。
【0012】
ここで、被巻線部材への巻線は、被巻線部材が長尺なものであれば、第二巻線工程における土手巻線と巻治具との間の巻線において、その大部分が行われることになる。このため、土手巻線を形成する第一巻線工程における被巻線部材の回転速度に対して、第二巻線工程における被巻線部材の回転速度を、例えば毎分5万回転以上のように著しく高めることにより、得られる有芯コイルの製造速度を十分に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明実施形態の製造方法を工程順に示す図である。
図2】その被巻線部材の他端が支持された状態を示す図である。
図3】その被巻線部材の一端側に形成された電極に巻初めの線材を接合している状態を示す図である。
図4】その被巻線部材の両端が支持された状態を示す図である。
図5】その被巻線部材の一端側に土手巻線が形成された状態を示す図である。
図6】その被巻線部材の他端を支持する巻治具と土手巻線の間に巻線する状態を示す図である。
図7】その巻き終わりの線材を電極に接合している状態を示す図である。
図8】その完成品の有芯コイルの断面図である。
図9】その被巻線部材の斜視図である。
図10】その被巻線部材の周囲にコイルが形成された完成品の有芯コイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の有芯コイルの製造方法は、図1(a)に示すように、両端が支持された被巻線部材11を両端が支持された状態で回転させて、図1(b)に示すように、被巻線部材11の一端側に線材12を巻回して被巻線部材11の一端側に土手巻線13を形成する第一巻線工程と、図1(c)に示すように、被巻線部材11の一端の支持を解消する一端支持解消工程と、図1(d)に示すように、他端が支持された被巻線部材11を回転させて他端を支持する巻治具16と土手巻線13の間の被巻線部材11に線材12を巻回する第二巻線工程とを含む方法である。
【0016】
被巻線部材11は、その巻幅を制限するフランジや鍔のようなものを有しない棒状のものである。図9に示すように、この実施の形態では、いわゆる時計コイルに用いられるようなものであって、棒状の巻胴部11aの両端部にその巻胴部11aよりも大きな取付部11b,11cが形成されたものを用いるものとする。図9に示す被巻線部材11では、巻回される線材12が巻胴部11aと電気的に導通することを防止するため、棒状の巻胴部11aの巻線領域よりもやや広い範囲において、例えばテープのような絶縁部材11hが棒状の巻胴部11aに予め巻き付けられるものとする。そして、その巻胴部11aの一端側に形成された取付部11bには基板11dが積層され、その基板11dには、巻胴部11aに巻回される線材12(図6)の巻初めと巻き終わりの線材12a,12b(図10)が接合される電極11e,11fが形成されるものとする。
【0017】
このような被巻線部材11に巻回されるこの実施の形態における線材12は、図示しないが、銅からなる芯線と、その芯線の周囲に形成された絶縁皮膜とを有するものとし、その絶縁皮膜は加熱により溶融し冷却して固着するようなものであるものとする。これ故に、この実施の形態における線材12は、加熱されることにより隣接して接する他の線材12と融着する、いわゆる自己融着性のものとする。
【0018】
なお、図9に示す被巻線部材11では、その一端側における取付部11bに、基板11dの位置決めを行う突起が複数形成され、その突起(図示せず)が進入可能な孔11gが基板11dに形成される。そして、その突起が孔11gに進入するように基板11dを取付部11bに積層させることにより、その基板11dを取付部11bの所定の位置に接着するものとする。
【0019】
また、本発明における有芯コイルの製造方法の実施には、本発明の方法を実現し得る製造装置が用いられ、その製造装置がコントローラにより制御されて、本発明の製造方法が連続的にかつ自動的に行われるものとする。
【0020】
これらを前提として、本発明の製造方法における各工程を以下に詳説する。
【0021】
<第一巻線工程>
図1(b)に示すように、第一巻線工程では、両端が支持された被巻線部材11を両端が支持された状態で回転させて被巻線部材11の一端側に線材12を巻回して被巻線部材11の一端側に土手巻線13を形成する。従って、本発明の方法を実現し得る製造装置は、図5に示すように、被巻線部材11の電極11e,11f(図9)が設けられた一端側を支持する支持具14と、被巻線部材11の電極11e,11fが設けられていない他端側を支持する巻治具16と、線材12を繰り出すノズル17と、そのノズル17から繰り出された線材12を把持可能な把持装置18(図3)を備えるものとする。
【0022】
この第一巻線工程に際して、図2に示すように、先ず、被巻線部材11の他端を巻治具16に支持させる。図2に示す巻治具16は、図示しないモータの回転軸に同軸に取付けられるものであることが好ましい。即ち、巻治具16を図示しないモータの回転軸に直接取付けることにより、巻治具16の共振を生じさせる固有振動数を著しく高くすることができ、その巻治具16に共振を生じさせることなくその巻治具16が回転し得る速度を、例えば毎分数万回転とするように著しく高めることができるからである。
【0023】
図2に示す巻治具16は、モータの図示しない回転軸に同軸に設けられた主把持部16bと、その主把持部16bに枢支された揺動片16cとを有するものを例示する。図示しないモータの回転軸に接続された主把持部16bの基端は断面が円形に形成され、主把持部16bの先端は断面が半円状に形成される。揺動片16cは主把持部16bの断面が半円状の先端部分に重なって、重心を回転中心に一致させて巻治具16を比較的速い速度で回転させることが可能になるように、その揺動片16cと主把持部16bは全体として断面の外形が円形になるように形成される。
【0024】
その主把持部16bに重なった揺動片16bはその主把持部16bにピン16dにより枢支され、そのピン16dより先端側の揺動片16cは主把持部16bと共に被巻線部材11の他端を把持し、これによりこの巻治具16は被巻線部材11の他端を支持可能に構成される。そして、被巻線部材11に臨む揺動片16cの先端と主把持部16bの先端には、巻胴部11aに巻き付けた絶縁部材11hとの接触を避ける周溝16fが形成される。この周溝16fにより、巻治具16は、巻胴部11aに巻き付けた絶縁部材11hを食い千切ることなく、被巻線部材11の他端を支持するものとする。
【0025】
また、図2に示す巻治具16は、被巻線部材11の他端を支持した状態で、その被巻線部材11に臨む揺動片16cの先端縁と主把持部16bの先端縁が、被巻線部材11の軸芯に直交する平面に形成される。そして、揺動片16cと主把持部16bの先端側における周囲は、被巻線部材11に向かって先細りに成るように被巻線部材11に直交する面に対して傾斜して形成される。これにより、揺動片16cと主把持部16bの先端側周囲に接触する線材12は、その傾斜により被巻線部材11の巻胴部11aに案内され、その線材12が巻治具16自体に巻回されるような事態を防止するように構成される。そして、ピン16dより図示しないモータ側の揺動片16cと主把持部16bとの間にはそれらの間隔を拡大して、揺動片16cの先端と主把持部16bの先端により被巻線部材11の他端を把持するように付勢するコイルスプリング16e(図6)が介装される。
【0026】
図3に示すように、巻胴部11aに巻回される線材12の端部は巻初めの線材12aとして、巻治具16に他端が支持された被巻線部材11の一端側に形成された一方の電極11e(図9)に接合される。また、把持装置18は、ノズル17から繰り出される線材12の端部を把持する一対の把持片18a,18bを有するものとする。この巻初めの線材12aの電極11eへの接合は、線材12を繰り出すノズル17及び線材12の端部を把持する把持装置18を移動し、把持装置18とノズル17の間の線材12を被巻線部材11の一端側に形成された電極11eに重合させ、この状態で接合する。この接合を溶接装置により行う場合には、溶接装置の加熱鏝19により、巻初めの線材12aを被巻線部材11における基板11dとともに挟み、その加熱鏝19により巻初めの線材12aを基板11dに形成された電極11eに溶接することが好ましい。
【0027】
なお、巻初めの線材12aが電極11eに接合された後には、把持装置18を図3の実線矢印で示すように被巻線部材11から遠ざけて、把持装置18と電極11eの間にある線材12をその電極11eの近傍において切断しておく。そして、この実施の形態における把持装置18は、その切断された残余の線材12を図示しない線材貯蔵箱まで搬送するものとする。
【0028】
次に、図4に示すように、巻初めの線材12aが電極11eに接合された被巻線部材11の一端を支持具14に支持させる。図4に示す支持具14は、被巻線部材11の一端を厚さ方向から挟む一対の支持片14a,14bを備えたものを示す。この一対の支持片14a,14bは、図示しないが、被巻線部材11の軸芯に平行な回転軸を中心として回転可能な回転板に、互いに接近し又は離間するように設けられる。そして、この図示しない回転板は三軸方向に任意に移動可能に構成されるものとする。
【0029】
また、図4に示す支持具14は、被巻線部材11の一端を支持した状態で、その被巻線部材11に臨む一対の支持片14a,14bの先端縁が、被巻線部材11の軸芯に直交する平面に形成される。そして、一対の支持片14a,14bの先端側における周囲は、被巻線部材11に向かって先細りに成るように被巻線部材11に直交する面に対して傾斜して形成される。これにより、一対の支持片14a,14bの先端側周囲に接触する線材12は、その傾斜により被巻線部材11の巻胴部11aに案内され、その線材12が支持具14自体に巻回されるような事態を防止するように構成される。
【0030】
この支持具14による被巻線部材11の一端の支持は、図示しないが、先ず、一対の支持片14a,14bを互いに離間させた状態で、被巻線部材11の線材12aが電極11eに溶接された一端側を挟むような位置にまで移動させる。その後、その一対の支持片14a,14bを互いに接近させることにより被巻線部材11の一端を挟む。このようにして、その被巻線部材11の一端を支持具14に支持させる。これにより、被巻線部材11の両端は、支持具14と巻治具16により、支持されることになる。
【0031】
ここで、上述した巻治具16と同様に、一対の支持片14a,14bには、電極11eに溶接された巻初めの線材12aとの接触を避ける図示しない凹みや、巻胴部11aに巻き付けたテープのような絶縁部材11hとの接触を避ける周溝14cが形成される。そして、この一対の支持片14a,14bは、巻初めの線材12a及び絶縁部材11hを食い千切ることなく、被巻線部材11の一端を挟むものとする。これは一般的に、そのテープのような絶縁部材11hとしてはポリエステルやポリイミド等の軟質材料が用いられることが多く、一対の支持片14a,14bにより被巻線部材11の一端を支持させる際に、巻胴部11aに巻き付けたテープのような絶縁部材11hが食い千切られると、線材12が巻胴部11aと電気的に導通することを防止するという絶縁部材11hの本来的機能を害するおそれがあるからである。
【0032】
次に、図5に示すように、支持具14と巻治具16により両端が支持された被巻線部材11を両端が支持された状態で回転させる。具体的には、この被巻線部材11の回転は、支持具14と巻治具16を同期して同一方向に同一の速度で回転させる。被巻線部材11を両端が支持された状態で回転させて、ノズル17を被巻線部材11の一端側において往復移動させ、そのノズル17から繰り出される線材12を被巻線部材11の一端側に巻回して、その被巻線部材11の一端側に土手巻線13を形成する。即ち、そのノズル17から繰り出される線材12を被巻線部材11の一端側に集中して巻回することにより、被巻線部材11の一端側に巻回された線材12から成る土手巻線13を形成する。
【0033】
土手巻線13の程度は、被巻線部材11の大きさやそこに巻回される線材12の太さにより適宜決定される。例えば、直径が0.0145mmの線材12を用いるような場合には幅1.2mmの間に20層の巻線をすることにより得られる土手巻線13が例示される。このとき、図5に示すように、支持具14に支持される被巻線部材11の一端は、線材12が巻回されない部分となり、この支持具14がその被巻線部材11の一端側における巻幅を制限するものとして機能する。
【0034】
この実施の形態における支持具14は、被巻線部材11に臨む一対の支持片14a,14bの先端縁が被巻線部材11の軸芯に直交する平面に形成されているので、線材12を被巻線部材11の一端側に集中して巻回すると、その一対の支持片14a,14bの先端縁に線材12が接触して、得られた土手巻線13の支持具14側における端縁は、被巻線部材11の軸芯に直交することになる。図5には、被巻線部材11の軸芯に直交する支持具14側における端縁と、被巻線部材11の軸芯に平行な辺とを有する、断面が三角形を成す土手巻線13を示す。このように断面を三角形とすることにより、崩れることの少ない安定した形状の土手巻線13を形成することが可能になる。
【0035】
そして、いわゆる自己融着性の線材12を用いるので、この土手巻線13の形成時に、加熱ヒータ20によりその土手巻線13を構成する線材12を加熱して、線材12の絶縁皮膜を溶融し冷却して固着させ、土手巻線13を構成する線材12を互いに融着し、得られた土手巻線13がその後崩れるようなことを防止することが好ましい。
【0036】
このように、本発明では、第一巻線工程において、被巻線部材11を両端が支持された状態で回転させるので、この土手巻線13の形成時にその被巻線部材11が撓むような芯ぶれを生じさせることはない。よって、ノズル17から繰り出された線材12は、そのノズル17から繰り出された位置に対向する被巻線部材11に正確に案内されて、その被巻線部材11に巻回される。これは、先に巻回された線材12の上に更に巻回される線材12にあっても同様であって、先に巻回された線材12の上に巻回される線材12がずれて巻回されるようなこともない。この結果、この第一巻線工程では、被巻線部材11を両端が支持された状態で回転させることにより、ノズル17から繰り出された線材12を所望の箇所に所望の形状を成すように巻回させることが可能となり、被巻線部材11の一端側に比較的正確な所望の形状の土手巻線13を形成することが可能となる。
【0037】
ここで、この実施の形態では、棒状の巻胴部11aに絶縁部材11hを巻き付け、被巻線部材11の一端を挟む一対の支持片14a,14bに、電極11eに溶接された巻初めの線材12a及び絶縁部材11hとの接触を避ける図示しない凹みや周溝14cを形成している。このため、その図示しない凹みや周溝14cにより支持面積が減少して、一対の支持片14a,14bによる被巻線部材11の一端の支持が不安定になる可能性もある。けれども、この第一巻線工程では、被巻線部材11の両端を支持し、その状態で回転させるので、例え、被巻線部材11の一端の支持が不安定になったとしても、この土手巻線13の形成時にその被巻線部材11の芯ぶれは有効に防止される。この結果、所望の形状の土手巻線13を確実に形成することができる。
【0038】
また、この第一巻線工程において、例えば、この被巻線部材11を従来と同様に毎分4〜5千回転程度の比較的高くない速度で回転させることにより、被巻線部材11に捻りを生じさせることはない。このため、被巻線部材11の回転速度を、従来と同様に被巻線部材11に捩れが与えられない程度の回転速度とすることにより、この土手巻線13の形成時に被巻線部材11が破損するような事態を回避することができる。そして、加熱ヒータ20により加熱して、その土手巻線13を構成する線材12を互いに融着することにより、得られた土手巻線13がその後崩れるようなことを防止することができる。また、この土手巻線13は、被巻線部材11の一端側に形成されるけれども、被巻線部材11の支持具14が把持する部分には巻線されないので、その支持具14により、被巻線部材11の一端側における巻幅を制限することができる。
【0039】
<一端支持解消工程>
この一端支持解消工程では、被巻線部材11の一端の支持を解消する。これは、支持具14による被巻線部材11の一端の支持を解消し、その後、第二巻線工程の準備として、支持具14を被巻線部材11から離間させておくことが好ましい。具体的には、被巻線部材11の一端を挟む一対の支持片14a,14bを互いに離間させてその把持を解消させ、その状態で、被巻線部材11から離間する待機位置までその一対の支持片14a,14bを移動させることにより行われる。
【0040】
ここで、仮に、第一巻線工程において、被巻線部材11の他端を支持することなく被巻線部材11の一端を支持して、その被巻線部材11の一端側に土手巻線13を形成すると、この一端支持解消工程において、その被巻線部材11の他端を新たに支持させた後に被巻線部材11の一端の支持を解消する必要が生じる。けれども、本発明では、第一巻線工程において、被巻線部材11の両端を支持してその被巻線部材11を回転させ、その被巻線部材11の一端側に土手巻線13を形成する。このため、この一端支持解消工程においては、その被巻線部材11の他端を新たに支持させる工程は不要となり、被巻線部材11の一端の支持を解消するだけで足りることになる。この結果、本発明における一端支持解消工程は、被巻線部材11の他端を新たに支持させる工程を含む場合に比較して、短時間に速やかに行うことが可能になり、本発明により得られる有芯コイル23(図8)の製造速度を高めることが可能となる。
【0041】
<第二巻線工程>
この第二巻線工程では、図6に示すように、被巻線部材11の他端を支持した巻治具16を被巻線部材11と共に回転させて、ノズル17から繰り出される線材12を巻治具16と土手巻線13の間の被巻線部材11に巻回する。具体的には、図示しないモータを駆動してその回転軸に設けられた巻治具16を回転させ、ノズル17から繰り出される線材12を被巻線部材11の巻胴部11aに巻回させる。このとき、図6の実線矢印で示すように、線材12を繰り出すノズル17を土手巻線13と巻治具16との間で往復移動させることが好ましい。このノズル17の移動により、そのノズル17から繰り出される線材12を土手巻線13と巻治具16の間に均一に巻回することができる。
【0042】
このようにして、先に形成された土手巻線13に隣接して、新たに巻回された線材12から成る新たな巻線21を巻胴部11aの周囲に形成する。そして、この新たな巻線21の形成時にあっても、加熱ヒータ20によりその新たな巻線21を構成する線材12を加熱してそれら線材12の絶縁皮膜を加熱により溶融し冷却して固着させ、互いに融着させて、得られた新たな巻線21の形状がその後崩れるようなことを防止する。
【0043】
ここで、この第二巻線工程では、被巻線部材11の他端を支持した巻治具16を回転させて、巻治具16と土手巻線13の間の被巻線部材11に線材12を巻回するので、この巻治具16の回転による巻線時にその被巻線部材11の両端を支持するようなことはない。このため、両端を支持した状態で比較的高速で被巻線部材11を回転させることに起因する捩れが被巻線部材11加わることはなく、この巻治具16の回転速度を、例えば毎分1万回転以上にまで高めても、捻りに起因して被巻線部材11が破損するようなことはない。よって、この第二巻線工程では、被巻線部材11の回転速度を高めて、その巻線を従来よりも高速に行うことができる。
【0044】
ここで、この実施の形態では、巻胴部11aの一端側に形成された取付部11bに電極11e,11fが形成された基板11dを積層し、他端側に形成された取付部11cには何も積層させていない(図9)。このため、被巻線部材11の他端を支持する巻治具16は、電極11e,11fが形成された被巻線部材11の一端を支持する支持具14に比較して、その他端側の取付部11cを安定して把持することが可能になる。これにより巻治具16は被巻線部材11の他端を確実に支持することになって、巻治具16を被巻線部材11とともに比較的速い速度で回転させることが可能となるのである。
【0045】
そして、この巻線は、巻治具16と土手巻線13の間で行われ、被巻線部材11の土手巻線13を越えた一端側と、他端側における巻治具16が把持する部分には巻線されない。このため、実質的に、支持具14と巻治具16が把持した被巻線部材11の間に巻線が成されることになり、この被巻線部材11に巻幅を制限する鍔のようなものが無い様なものであっても、その被巻線部材11の所望の位置に所望の巻幅で線材12を巻回することができる。
【0046】
更に、被巻線部材11への巻線は、実際に線材12が巻回される巻胴部11aが長尺であって比較的長いようなものであれば、この第二巻線工程における土手巻線13と巻治具16との間の巻線において、その大部分が行われることになる。このため、土手巻線13を形成する第一巻線工程における被巻線部材11の回転速度に対して、この第二巻線工程における被巻線部材11の回転速度を高め、例えば1分間に5万回転又は6万回転以上のように、従来よりも高めることにより、被巻線部材11への巻線速度を著しく高め、得られる有芯コイル23(図8)の製造速度を十分に高めることが可能となる。
【0047】
そして、所望の回数線材12を被巻線部材11に巻回することができた後は、ノズル17を移動させて、図7に示すように、その新たな巻線21から引き出される巻き終わりの線材12bを被巻線部材11の一端に形成された電極11f(図9)に重合させ、この状態で、溶接装置によりその線材12bをその電極11fに接合させる。溶接装置を用いたこの接合手順は、巻初めの線材12aの電極11eへの接合手順と同一であるので、繰り返しての説明を省略する。そして、巻終わり線材12bを電極11fに接合した後には、図7に示すように、ノズル17から繰り出される線材12を把持装置18に把持させて、その把持装置18をノズル17とともに被巻線部材11から実線矢印で示すように遠ざけて、把持装置18と電極11fの間にある線材12をその電極11fの近傍において切断する。そして、ノズル17から繰り出される線材12の端部を把持装置18に把持させておくことにより、次の巻線に備えることができる。
【0048】
その後、巻治具16による被巻線部材11の他端における支持を解消してその巻治具16から被巻線部材11を取外す。このようにして、巻治具16から取外して、図8及び図10に示すように、土手巻線13と新たな巻線21から成るコイル22と、その被巻線部材11とを有する有芯コイル23を得る。巻治具16から取外された有芯コイル23は、図示しない搬送装置により搬送されるものとする。そして、別の新たな被巻芯部材11を巻治具16に取付けて、再び巻線を開始することにより、本発明の巻線方法を連続して繰り返す。これにより、有芯コイル23を連続的に製造することが可能になる。
【0049】
なお、上述した実施の形態では、棒状の巻胴部11aの両端部にその巻胴部11aよりも大きな取付部11b,11cが形成された被巻線部材11を用いて説明したけれども、両端が支持可能である限り、被巻線部材11は、例えば、取付部11b,11cが形成されずに、巻幅を制限するフランジや鍔のようなものを有しないような棒状のものであっても良い。
【0050】
また、上述した実施の形態では、テープのような絶縁部材11hが棒状の巻胴部11aに予め巻き付けられた被巻線部材11を用いて説明したけれども、線材12が巻胴部11aと電気的に導通するようなことを防止しうる限り、絶縁部材11hを巻胴部11aに巻き付けなくても良い。
【0051】
また、上述した実施の形態では、被巻線部材11の一端を支持する支持具14の、一対の支持片14a,14bの先端周囲を傾斜して形成し、これにより、線材12を被巻線部材11の外周に案内するようにしたけれども、線材12が支持具14自体に巻回されるような事態を回避しうる限り、その一対の支持片14a,14bの先端周囲を湾曲させ、これにより、線材12を被巻線部材11の外周に案内するようにしても良い。
【0052】
更に、上述した実施の形態では、被巻線部材11の他端を支持する巻治具16の、揺動片16cの先端縁と主把持部16bの先端周囲を傾斜して形成し、これにより、揺動片16cと主把持部16bの先端周囲に接触する線材12を被巻線部材11の外周に案内するようにしたけれども、線材12が巻治具16自体に巻回されるような事態を回避しうる限り、揺動片16cと主把持部16bの先端周囲を湾曲させ、これにより、線材12を被巻線部材11の外周に案内するようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
11 被巻線部材
11e,11f 電極
12 線材
13 土手巻線
16 巻治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10