特許第6066479号(P6066479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066479
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】燃料デリバリパイプアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   F02M55/02 360A
   F02M55/02 360C
   F02M55/02 330D
   F02M55/02 330C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-22525(P2013-22525)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152688(P2014-152688A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 成樹
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−026387(JP,A)
【文献】 特開平10−281035(JP,A)
【文献】 特開2012−241568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸い真直管材よりなり高圧燃料ポンプから加圧された燃料が供給される燃料通路が内部に形成されたメインパイプと、このメインパイプに一体的に固着されて燃料噴射弁が液密に挿入される内周面を有する複数のソケット部と、前記各ソケット部の内周面により形成される各内部空間を前記燃料通路に連通する複数の連通孔と、前記メインパイプをエンジンに取り付けるための取付穴を有する複数のブラケット部とを備えた燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、
前記各ソケット部は一端側が開口された有底円筒状とし、前記各ブラケット部は前記取付穴が設けられた平板よりなるものとし、
少なくとも1個の前記ソケット部と少なくとも1個の前記ブラケット部はそれぞれが1個の複合板金部材に一体化されて板材を素材とする塑性加工により形成し、
前記各ソケット部は、それらの中心軸線が所定の間隔をおいて互いに平行に配置し、その底壁及び側壁を含む周壁の外面を前記メインパイプの外壁の外面に当接してろう付けにより互いに一体的に固着し、
前記メインパイプの燃料通路と前記ソケット部の内部空間を連通する前記各連通孔は、前記メインパイプの外壁とこれに対向する前記ソケット部の底壁及び側壁を含む周壁に形成した
ことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、前記各複合板金部材のソケット部はそれらの開口縁に半径方向外向きのフランジを形成し、前記ブラケット部は前記フランジを半径方向外向きに延長することにより形成し、前記取付穴はこのブラケット部の先端部に形成したことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、1個の前記ソケット部に一体的に形成する前記ブラケット部は2個として、前記ソケット部の軸線方向から見て前記フランジの前記メインパイプに対して互いに反対側となる部分からそれぞれ半径方向外向きに延長することにより形成したことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、2個の前記ブラケット部は一直線上に配置してそれぞれの先端部に形成する前記取付穴は前記ソケット部の中心軸線に対し互いに点対称となる位置に配置し、かつそれらに挿通される取付ボルトが前記メインパイプと干渉しないように前記各取付穴の中心を結ぶ線を同メインパイプに対し直交または傾斜して交差させて配置したことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、前記取付穴は、前記メインパイプの長手方向に進むにつれて同メインパイプの両側に交互に配置されていることを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、全ての前記ソケット部に前記ブラケット部を一体的に設けて複合板金部材としたことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、前記メインパイプの外壁の外周の一部には前記所定の間隔をおいて底面が平面の複数の凹部を塑性加工により形成し、前記各ソケット部はそれらの底壁が平板よりなるものとし、この底壁を前記メインパイプの凹部の底面に当接してろう付けにより互いに一体的に固着したことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンの燃焼室内に高圧の燃料を直接噴射する場合に使用する燃料デリバリパイプアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料デリバリパイプとしては、特許文献1(実用新案登録第2544331号公報)に開示されたフューエルデリバリパイプがある。このフューエルデリバリパイプは燃料噴射式自動車用エンジンの燃料加圧ポンプから送給された燃料を、燃料噴射弁を介してエンジンの各吸気通路あるいは各気筒に供給するためのものであり、直線状に延びる燃料通路を内部に有する連通管と、この連通管の長手方向に沿って所定の間隔をおいて配設された燃料噴射弁取付用の複数の筒状ソケットと、連通管をエンジンに取り付けるための複数のブラケットよりなるものである。各筒状ソケットは燃料噴射弁を受け入れる筒状延伸部と連通管の周りに巻回されるバンド部からなり、連通管の外周に合成樹脂またはアルミニウム材で一体的にモールド成形され、連通管にはその内部の燃料通路を各筒状ソケットの筒状延伸部内に連通する複数の孔が形成されている。複数のブラケットは一端が連通管に溶接されて、それから半径方向同一側に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2544331号公報(明細書の実施例及び図1図7の記載)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の技術では、各筒状ソケットはモールド成形品であって切削加工箇所が多いのに加え、各ブラケットとは別々に連通管に固定されており、構成部品点数も多くなるので製造コストが増大し、また筒状ソケットとブラケットの間の位置の精度を高めるのが難しいので、エンジンに対する組付性がよいとはいえないという問題がある。
【0005】
また、この種のフューエルデリバリパイプでは、エンジンのシリンダヘッドに差し込んで固定された各燃料噴射弁の外端部外周がOリングを介して各筒状ソケットの内周面に液密に挿入されている。加圧された燃料が供給されたとき、または、燃料が間欠的に噴射されたときのように連通管の燃料通路内の燃料圧力が変動すると、連通管の各筒状ソケットが固定された部分をシリンダヘッドに対し接近離隔する向きに変位させる力が加わる。連通管をエンジンに取り付けるための複数のブラケットは連通管から半径方向同一側に突出して溶接固着されているので、各ブラケットは基端部がエンジンに固定されて先端部に連通管が固定された片持ち梁となり、必ずしも充分な支持剛性を備えていない。このため連通管を支持する各ブラケットの先端部は、前述した変動する力によりシリンダヘッドに対し接近離隔するように変位すると同時に、連通管の軸線を中心として多少の角度で揺動する。連通管が片持ち梁で固定されているうえに、筒状ソケットとブラケットとの位置の精度が高くないこと及びシリンダヘッドに対する連通管の変位と揺動とにより、連通管に固着された各筒状ソケットとエンジンに固定された各燃料噴射弁とが相対移動し、それらの間の隙間を液密にシールするOリングは半径方向の一方が圧縮されることで他方の圧縮率が低下し、この圧縮率の低下した他方から燃料漏れが発生する問題がある。
【0006】
また、特許文献1の筒状ソケットは連通管にモールド成形されたものであり、筒状ソケットのバンド部は連通管の外周面に押圧されているだけで固着されていないので、供給される燃料が高圧の場合には、連通管とバンド部の間から燃料がしみ出て漏れるという問題も生じる。本発明はこのような各問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、丸い真直管材よりなり高圧燃料ポンプから加圧された燃料が供給される燃料通路が内部に形成されたメインパイプと、このメインパイプに一体的に固着されて燃料噴射弁が液密に挿入される内周面を有する複数のソケット部と、各ソケット部の内周面により形成される各内部空間を燃料通路に連通する複数の連通孔と、インパイプをエンジンに取り付けるための取付穴を有する複数のブラケット部とを備えた燃料デリバリパイプアセンブリにおいて、各ソケット部は一端側が開口された有底円筒状とし、各ブラケット部は取付穴が設けられた平板よりなるものとし、少なくとも1個のソケット部と少なくとも1個のブラケット部はそれぞれが1個の複合板金部材に一体化されて板材を素材とする塑性加工により形成し、各ソケット部は、それらの中心軸線が所定の間隔をおいて互いに平行に配置し、その底壁及び側壁を含む周壁の外面をメインパイプの外壁の外面に当接してろう付けにより互いに一体的に固着し、メインパイプの燃料通路とソケット部の内部空間を連通する各連通孔は、メインパイプの外壁とこれに対向するソケット部の底壁及び側壁を含む周壁に形成したことを特徴とする燃料デリバリパイプアセンブリを提供するものである。
【0008】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、各ソケット部は一端側が開口された有底円筒状とし、各ブラケット部は取付穴が設けられた平板よりなるものとし、少なくとも1個のソケット部と少なくとも1個のブラケット部はそれぞれが1個の複合板金部材に一体化されて板材を素材とする塑性加工により形成したので、構成部品点数が減少し、切削加工が不要となるとともに、組付け加工工数を低減させることができ、製造コストを低減させることができる。さらに、一体化された複合板金部材によればそれぞれのソケット部となる部分とブラケット部となる部分の間の位置及び角度の精度が高くなるので、エンジンに対する燃料デリバリパイプアセンブリの組付性を高めることができる。
【0009】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、各複合板金部材のソケット部はそれらの開口縁に半径方向外向きのフランジを形成し、ブラケット部はフランジを半径方向外向きに延長することにより形成し、取付穴はこのブラケット部の先端部に形成することが好ましい。このようにしたときには、板材から絞り加工により有底円筒状のソケット部だけを形成した半製品のフランジとなる部分を適当な大きさとし、引き続き行う打ち抜き加工でブラケット部を形成することで複合板金部材を形成することができ、複合板金部材の製造が容易となるので、その製造コストを低減させることができる。また、ブラケット部はソケット部のフランジ部を半径方向外向きに延長することにより一体的に形成されたものであるので、ブラケット部を固定するためのろう付け箇所を減少させることができ、同様に製造コストを低減させることができる。
【0010】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、1個のソケット部に一体的に形成するブラケット部は2個として、ソケット部の軸線方向から見てフランジの前記メインパイプに対して互いに反対側となる部分からそれぞれ半径方向外向きに延長することにより形成することが好ましい。このようにしたときには、メインパイプのソケット部を支持するブラケット部はソケット部の両側に位置してソケット部及びメインパイプを両持ち支持するようになり、加圧された燃料が供給されたとき、または、燃料が間欠的に噴射されたときのように燃料通路内の燃料圧力の変動が生じても、メインパイプ及びソケット部のエンジンに対する変位が減少するので、ソケット部と燃料噴射弁の間をシールするOリングの半径方向の圧縮率を均一に保つことができ、これによりOリングから燃料漏れのおそれを減少させることができる。
【0011】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、2個のブラケット部は一直線上に配置してそれぞれの先端部に形成する取付穴はソケット部の中心軸線に対し互いに点対称となる位置に配置し、かつそれらに挿通される取付ボルトがメインパイプと干渉しないように各取付穴の中心を結ぶ線を同メインパイプに対し直交または傾斜して交差させて配置することが好ましい。このようにしたときには、メインパイプ及びソケット部は両側のブラケット部よりなる真直な両持ち梁の丁度中央に支持され、これによりメインパイプ及びソケット部のエンジンに対する揺動も極めて少なくなるので、Oリングの半径方向の圧縮率をさらに均一に保つことができ、燃料漏れのおそれをさらに減少させることができる。また、各取付穴に挿通される取付ボルトがメインパイプと干渉しない限り、メインパイプに対するブラケット部の傾斜角度は自由であるので、取付穴の配置の自由度を高めることができる。
【0012】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、取付穴は、メインパイプの長手方向に進むにつれて同メインパイプの両側に交互に配置されていることが好ましい。このようにしたときには、メインパイプの長手方向における支持部のピッチが減少するので、燃料デリバリパイプアセンブリに加わる力による局部的な変位を減少させることができる。
【0013】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、全てのソケット部にブラケット部を一体的に設けて複合板金部材とすることが好ましい。このようにしたときには、各ソケット部は何れも直接的にブラケット部を介してエンジンに取り付けられるので、全てのソケット部のエンジンに対する取付剛性を均等に高め、各Oリングの半径方向の圧縮率を均一に保つことができ、全体として燃料漏れのおそれを減少させることができる。
【0014】
上記のように構成した燃料デリバリパイプアセンブリにおいては、メインパイプの外壁の外周の一部には所定の間隔をおいて底面が平面の複数の凹部を塑性加工により形成し、各ソケット部はそれらの底壁が平板よりなるものとし、この底壁をメインパイプの凹部の底面に当接してろう付けにより互いに一体的に固着することが好ましい。このようにしたときには、互いに当接するメインパイプの凹部の底面とソケット部の底壁はそれぞれ平面及び平板となり、これによりこの両部材の間の当接は均一となるのでろう付けは確実に行われ、この部分のろう付けの欠陥による燃料漏れを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による燃料デリバリパイプアセンブリの一実施形態の全体構造を示す一部破断した側面図である。
図2図1に示す燃料デリバリパイプアセンブリの下面図である。
図3図2の3−C−3線に沿った断面図であり、メインパイプは横断面で示した。
図4図1の4−4線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面により、本発明による燃料デリバリパイプアセンブリの一実施形態の説明をする。この実施形態の燃料デリバリパイプアセンブリ10は直列4気筒の直噴型エンジンに用いられるもので、図1及び図2に示すように、両端がジョイント部材14とプラグ16により閉じられた1本のメインパイプ11と、このメインパイプ11に所定の間隔をおいて固着された4個の複合板金部材20と、メインパイプ11のジョイント部材14側となる部分に固定されたボス部材18により構成されている。これら各部材は全体が一体となるようにろう付けにより固着され、固着後に必要に応じて鍍金などの表面処理がなされている。
【0017】
メインパイプ11は鋼材などの金属材よりなり、主として図1及び図2に示すように、直線状に延びる丸い真直管材を所定の長さに切断したもので、その内部には燃料通路11aが形成されている。メインパイプ11の外壁11bの外周の円周方向の所定位置には、この燃料デリバリパイプアセンブリ10が適用されるエンジンに差し込んで固定した4個の燃料噴射弁Aの間隔と対応する長手方向の所定間隔をおいて、平面よりなる底面とその両側に続く緩い傾斜面12aよりなる4個の凹部12が塑性加工により形成されている。凹部12の略中央部には第1連通孔22aが形成されており、第1連通孔22aは後述するソケット部21の第2連通孔22bとともに連通孔22を構成して、メインパイプ11の燃料通路11aとソケット部21の内部空間とを連通するものである。
【0018】
ジョイント部材14は鋼材などの金属材よりなり、主として図1に示すように、中央のフランジ14aとその両側の小径部及び大径部よりなり、同軸的に段付孔15が貫通された旋削部材である。このジョイント部材14は、小径部がメインパイプ11の右端の内周面に嵌合されて液密にろう付け固着されている。プラグ16は鋼板などの金属板をカップ状に絞り成形した板金部材で、メインパイプ11の左端の内周面に嵌合されて液密にろう付け固着されている。
【0019】
高圧燃料ポンプからの加圧された燃料が供給される燃料供給管(図示省略)は、拡管された先端部がジョイント部材14の大径部の先端部に当接され、大径部外周に形成した雄ねじ14bに螺合させたユニオンナットにより締め付け固定される。これによりメインパイプ11内の燃料通路11aには高圧燃料ポンプからの加圧された燃料が供給される。
【0020】
ボス部材18は鋼材などの金属材よりなる旋削部材で、主として図1及び図4に示すように、その下縁の外周は大きく面取りされ、また下面にはメインパイプ11の外周面と隙間なく当接可能な円弧状の接合面18aが形成されている。このボス部材18は、接合面18aがメインパイプ11の右端部近くの外周面に当接されて液密にろう付け固着されている。ボス部材18の上半部に形成された有底円筒孔18bには圧力センサ(図示省略)を取り付けるための雌ねじが形成され、この有底円筒孔18bの内部は、ボス部材18の一部とメインパイプ11の外壁11bを貫通する連通孔19によりメインパイプ11内の燃料通路11aに連通されている。
【0021】
この実施形態の複合板金部材20は、図1図3に示すように、互いに一体化されたソケット部21と2個のブラケット部23よりなるもので、板材を素材とする塑性加工により成形されたものである。ソケット部21は有底円筒状で、図3において上側となる一端は底壁21cにより閉じられ、反対側には燃料噴射弁Aの後端部を挿入するための開口が設けられている。ソケット部21の底壁(周壁)21cの略中央部には第2連通孔22bが形成されており、第2連通孔22bは前述した第1連通孔22aとともに連通孔22を構成し、メインパイプ11の燃料通路11aとソケット部21の内部空間とを連通するものである。ソケット部21の開口縁には半径方向外向きのフランジ21bが形成されている。また、フランジ21bには燃料噴射弁Aの円周方向の回転を防止する回り止め孔21dが形成されており、回り止め孔21dには燃料噴射弁Aの図示しない突起部が係合される。
【0022】
各ブラケット部23は、ソケット部21の軸線方向から見てフランジ21bのメインパイプ11に対して互いに反対側となる部分を、ソケット部21の外径より多少広い幅でそれぞれ半径方向外向きに延長することにより形成したもので、一直線上に配置されている。ソケット部21の中心軸線Cに対し互いに点対称の位置となるブラケット部23の長手方向両端部には、燃料デリバリパイプアセンブリ10をエンジンに取り付けるための丸い取付穴24が形成され、ブラケット部23のこの長手方向両端部の形状は、図2に示すように、取付穴24と同心でブラケット部23の中間部の幅よりも大きい径の円形となっている。
【0023】
この複合板金部材20は、板材から絞り加工により有底円筒状のソケット部21だけを形成した加工途中の半製品の複合板金部材20のフランジ21bとなる部分を適当な大きさとし、引き続き行う打ち抜き加工で両側のブラケット部23を形成することにより製造する。
【0024】
このようにして製造した4個の複合板金部材20は、各ソケット部21の中心軸線Cを一平面上で前述したメインパイプ11の凹部12と同じ所定の間隔をおいて互いに平行で、かつメインパイプ11と直交するよう整列させる。このとき、各ソケット部21の第2連通孔22bがメインパイプ11の第1連通孔22aと上下に一致するようにし、各ソケット部21の底壁(周壁)21cの外面をメインパイプ11の凹部12の底面に当接させ、連通孔22の周囲をろう付けにより互いに一体的に液密に固着する。
【0025】
なお、図2では、メインパイプ11の長手方向に対する、各ブラケット部23の両端の取付穴24の中心を結ぶ長手方向の角度を一定とした例を示したが、この角度は各取付穴24に挿通される取付ボルトが挿入の際にメインパイプ11と干渉することがない限り自由であるので、メインパイプ11の長手方向に対する各複合板金部材20のブラケット部23の長手方向の角度はエンジン側の構造に合わせて各複合板金部材20毎に異ならせることも可能である。
【0026】
上述した実施形態の燃料デリバリパイプアセンブリ10によれば、ソケット部21は有底円筒状とし、ブラケット部23は平板よりなるものとするとともに、4個のソケット部21はそれぞれ2個のブラケット部23とともに4個の複合板金部材20に一体化されて板材を素材とする塑性加工により形成した。このようにしたことで、構成部品点数が減少し、切削加工が不要となるとともに、組付け加工工数を低減させることができ、これにより製造コストを低減させることができる。
【0027】
このように一体化された複合板金部材20によれば、ソケット部21となる部分とブラケット部23となる部分の間の位置の精度を高めることができるので、エンジンに対する燃料デリバリパイプアセンブリ10の組付性を高めることができる。なお、上述した実施形態では、4個のソケット部21の全てにそれぞれ2個のブラケット部23を一体化し、4個の複合板金部材20を得て、それぞれのブラケット部23により燃料デリバリパイプアセンブリ10をエンジンに取り付けるようにしている。このようにすれば、4個のソケット部21は全てブラケット部23を介してエンジンに両持ち支持されるので、全てのソケット部21のエンジンに対する取付剛性を均等に高めることができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、例えば4個のソケット部21のうち両端に位置する2個にのみブラケット部23を設け、複合板金部材20となるのは両側に位置する2個のみとし、中央の2個はソケット部21のみとし、両側の2個のブラケット部23により燃料デリバリパイプアセンブリ10をエンジンに取り付けるようにして実施してもよい。その場合はエンジンに対する4個のソケット部21のうち中央に位置する2個のブラケット部23のエンジンに対する取付剛性は多少低下するが、必要ならば両側の各ブラケット部23の外縁に沿って補強フランジを立てるなどしてブラケット部23の剛性を高めればよい。
【0028】
また、上述した実施形態では、メインパイプ11の外壁11bの外周の一部には長手方向に所定の間隔をおいて底面が平面の複数の凹部12を塑性加工により形成し、各ソケット部21はそれらの底壁21cを平板とし、この底壁21cを凹部12の底面に当接してろう付けにより互いに一体的に固着している。このようにすれば、互いに当接するメインパイプ11の凹部12の底面とソケット部21の底壁21cはそれぞれ平面及び平板となり、この両部材の間の当接は均一となるのでろう付けは確実に行われ、この部分のろう付けの欠陥により燃料漏れなどが生じるおそれは減少する。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、メインパイプ11は凹部12を設けることなく円形のままとし、ソケット部21の底壁21cをメインパイプ11の丸い外周面に合わせた凹円弧状に形成し、ソケット部21の凹円弧状の底壁21cをメインパイプ11の丸い外周面に当接してろう付け固着するようにして実施することも可能である。この場合には、ソケット部21の底壁21cの凹円弧状の形状精度を高めて両部材11,21の間の当接を均一にすることにより、ろう付けの欠陥による燃料漏れを減少させることができる。
【0029】
また、上述した実施形態では、ソケット部21には周壁として底壁21cをメインパイプ11の外壁11bの外面に当接させ、ソケット部21の底壁21cに連通孔22bを形成したが、本発明はこれに限られるものでなく、ソケット部21の側壁をメインパイプ11の外壁11bの外面に当接させ、ソケット部21のメインパイプ11の外壁11bの外面に当接する部分に連通孔22bを形成してもよく、このようにしたときにも同様の作用効果を得ることができる。また、このときには、ソケット部21の側壁を平板とし、この平板の側壁を凹部12の底面に当接してろう付けにより互いに一体的に固着してもよい。
【0030】
上述した実施形態では、複合板金部材20は1個のソケット部21と2個のブラケット部23よりなるが、本発明はこれに限られるものでなく、複合板金部材20は1個のソケット部21に1個のブラケット部23よりなるもの、または、1個のソケット部21に3個以上のブラケット部23よりなるものであってもよい。また同様に、複合板金部材20は2個以上のソケット部21と1個以上のブラケット部23よりなるものであってもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、ソケット部21のフランジ21bから半径方向外向きに延長するブラケット部23は単純な平板よりなるものとしたが、このブラケット部23は横方から見てシルクハットの断面形状となるように段状に折り曲げてもよく、そのようにすれば場合によっては組み付けに必要となるカラー部材を省略することができる。
【0032】
また、上述した実施形態では、ソケット部21のフランジ21bから半径方向外向きに延長するブラケット部23は単純な平板よりなるものとしたが、このブラケット部23の先端部をメインパイプ11側に折り曲げてもよく、このようにしたときには、ブラケット部23の強度を高くすることができる。
【0033】
また、上述した実施形態では、各取付穴24はソケット部21の中心軸線Cに対し互いに点対称となる位置に配置し、これにより各燃料噴射弁Aと各ソケット部21の間の隙間を液密にシールするOリングの半径方向の圧縮率を均一に保つことができ、燃料漏れを減少させるという効果を得ているが、ソケット部21の中心軸線Cに対する取付穴24の点対称の位置が多少程度ずれていても実質的に同様な効果が得られる。
【0034】
また、上述した実施形態では、ソケット部21はその中心軸線がメインパイプ11の中心軸線と直交する位置に配置させたが、本発明はこれに限られるものでなく、連通孔22(22a、22b)によりソケット部21の内部空間がメインパイプ11の燃料通路11aと連通可能な範囲にて、ソケット部21はその中心軸線がメインパイプ11の中心軸線から半径方向にオフセットさせた位置に配置したものであってもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では、ソケット部21のフランジ21bから半径方向外向きに延長するブラケット部23は単純な平板よりなるものとしたが、このブラケット部23の先端部をメインパイプ11側に折り曲げてもよく、このようにしたときには、ブラケット部23の強度を高くすることができる。
【符号の説明】
【0036】
10…燃料デリバリパイプアセンブリ、11…メインパイプ、11a…燃料通路、11b…外壁、12…凹部、20…複合板金部材、21…ソケット部、21a…内部空間、21b…フランジ、21c…底壁、22(22a,22b)…連通孔、23…ブラケット部、24…取付穴、C…中心軸線。
図1
図2
図3
図4