(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記表示パネルの1フレームの期間の中を表示駆動期間と非表示駆動期間に分けて、前記表示パネルとタッチパネルの動作タイミングを制御する液晶表示制御回路を有し、
前記液晶表示制御回路は、前記表示駆動期間で前記駆動回路にコモン電圧を出力させ、前記非表示駆動期間で前記駆動回路にパルス電圧を出力させる、ドライバIC。
請求項2において、前記記憶領域は前記電圧指定データを記憶する第1不揮発性レジスタと前記振幅指定データを記憶する第2不揮発性レジスタとである、ドライバIC。
請求項1において、前記電圧生成回路は、前記振幅データと前記電圧指定データを入力し、前記電圧指定データの値に前記振幅データの値を加算するディジタル演算回路と、前記ディジタル演算回路で演算された加算データをアナログ電圧に変換して前記高レベルを生成する高レベル生成回路と、前記電圧指定データをアナログ電圧に変換して前記コモン電圧を生成するコモン電圧生成回路と、を有する、ドライバIC。
請求項1において、前記電圧生成回路は、前記振幅データをアナログ電圧に変換して振幅電圧を生成する振幅電圧生成回路と、前記電圧指定データをアナログ電圧に変換して前記コモン電圧を生成するコモン電圧生成回路と、前記コモン電圧生成回路で生成されたコモン電圧に前記振幅電圧生成回路で生成された振幅電圧をアナログ加算して前記高レベルを生成するアナログ加算回路と、を有する、ドライバIC。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される実施の形態について概要を説明する。実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0014】
〔1〕<ドライバIC;コモン電極電圧を基準に走査駆動振幅データを用いて走査駆動電圧を生成>
表示パネル(2)とタッチパネル(3)を動作させるドライバIC(4)は、前記表示パネルの画素のコモン電極(VCOM)に印加するコモン電圧(VcomDC)の電圧指定データ(Dvcom)と前記タッチパネルの駆動電極(TA1〜TXm)のパルス駆動に用いるパルス電圧(PLStx)の振幅指定データ(Dampt)とを保持するための記憶領域(60)と、前記記憶領域が保持する電圧指定データ及び前記振幅指定データに基づいて、前記コモン電圧を生成すると共に前記コモン電圧を低レベルとして前記パルス電圧の高レベルを生成する電圧生成回路(42,42a)と、前記表示パネルの動作タイミングに同期して前記電圧生成回路で生成されたコモン電圧を出力し、前記タッチパネルの動作タイミングに同期して前記電圧生成回路で生成された前記コモン電圧に対して前記高レベルを振幅に持つパルス電圧を出力する駆動回路(31)と、を有する。
【0015】
これによれば、コモン電圧の最適値に個体バラツキがあってもこれを電圧指定データに反映し、タッチ検出に最適な駆動パルスの振幅を振幅指定データに反映することにより、コモン電圧の最適値にバラツキがあっても、コモン電圧基準の駆動パルスを用いたタッチ検出に所要の検出精度を確保することができる。駆動パルスのDC的な基準レベルにグランドレベルのような一定電圧を採用することを要しないので、駆動回路の出力電圧の種類が増えず、電力消費が増大せず、1表示フレーム期間中で表示及びタッチ検出に用いることができる余裕時間が短くならず、また、駆動回路の回路規模を増大させることもない。
【0016】
〔2〕<表示駆動及び非表示駆動の分割制御>
項1において、前記表示パネルの1フレームの期間の中を表示駆動期間と非表示駆動期間に分けて、前記表示パネルとタッチパネルの動作タイミングを制御する液晶表示制御回路(22)をさらに有する。前記液晶表示制御回路は、前記表示駆動期間で前記駆動回路にコモン電圧を出力させ、前記非表示駆動期間で前記駆動回路にパルス電圧を出力させる。
【0017】
これによれば、表示駆動期間と非表示駆動期間に合わせて駆動回路の出力動作を容易に制御することができる。
【0018】
〔3〕<第1及び第2記憶領域は不揮発性レジスタ>
項2において、前記記憶領域は前記電圧指定データを記憶する第1不揮発性レジスタ(60A,60B)と前記振幅指定データを記憶する第2不揮発性レジスタ(60C)とである。
【0019】
これによれば、表示パネル及びタッチパネルに応じたコモン電圧の最適値はドライバICによるパネルモジュールのモジュールテストの段階で決定することができ、一度決定したらその後の変更を要しない場合がほとんどである。また、駆動パルスの振幅はタッチパネルの検出感度や低消費電力モードとの関係でシステム動作上適宜変更を要する場合が想定される。その違いを考慮したとき、双方のデータを格納する記憶領域を異なる不揮発性レジスタとすることが使用上便利である。
【0020】
〔4〕<ホストインタフェース>
項3において、前記第2不揮発性レジスタはホストインタフェース(40)を介して外部から電気的に書き込み可能なレジスタである。
【0021】
これによれば、振幅指定データの書き換えの便に供することができる。電気的に書き込み可能なレジスタには例えばMONOS(Metal Oxide Nitride Oxxide Semiconductor)構造などのフラッシュメモリ用記憶素子を採用すればよい。書き換えを前提としない第1不揮発性レジスタは1回限りの書き込みで十分であれば電気ヒューズを用いたトリミング回路で構成してもよい。
【0022】
〔5〕<複数の電圧指定データ>
項4において、前記第1不揮発性レジスタは複数の前記電圧指定データを別々に格納する記憶領域(60A,60B)を有する。前記液晶表示制御回路が表示モードに応じて前記第1不揮発性レジスタから所要の電圧指定データを選択して前記電圧生成回路に与える。
【0023】
これによれば、表示ラインに対する昇順駆動又は降順駆動などの表示モードによってもコモン電圧の最適値に差を生ずる場合に、表示モードに応じて最適なコモン電圧を採用でき、コモン電圧の切り替えは駆動パルスのパルス振幅に全く影響を与えない。
【0024】
〔6〕<振幅データ等のディジタル演算処理を介する走査駆動電圧の生成>
項1において、前記電圧生成回路は、前記振幅データと前記電圧指定データを入力し、前記電圧指定データの値に前記振幅データの値を加算するディジタル演算回路(52)と、前記ディジタル演算回路で演算された加算データをアナログ電圧に変換して前記高レベルを生成する高レベル生成回路(51)と、前記電圧指定データをアナログ電圧に変換して前記コモン電圧を生成するコモン電圧生成回路(50)と、を有する。
【0025】
これによれば、ディジタル信号をアナログ信号に変換する変換動作以外をディジタルデータの処理によって実現することができる。ドライバICに混載するアナログ回路部分を少なくする場合に好適である。
【0026】
〔7〕<振幅データ等のアナログ変換電圧の加算処理を介する走査駆動電圧の生成>
項1において、前記電圧生成回路は、前記振幅データをアナログ電圧に変換して振幅電圧を生成する振幅電圧生成回路(53)と、前記電圧指定データをアナログ電圧に変換して前記コモン電圧を生成するコモン電圧生成回路(50)と、前記コモン電圧生成回路で生成されたコモン電圧に前記振幅電圧生成回路で生成された振幅電圧をアナログ加算して前記高レベルを生成するアナログ加算回路(54)と、を有する。
【0027】
これによれば、ディジタル信号をアナログ信号に変換して必要な電圧加算などをアナログ処理で実現することができる。ドライバICに混載するアナログ回路部分を多くする場合に好適である。
【0028】
〔8〕<ドライバIC;コモン電極電圧を基準に走査駆動振幅データを用いて走査駆動電圧を生成>
表示パネル(2)とタッチパネル(3)を駆動するドライバIC(4)は、前記表示パネルの画素の信号電極を第1駆動端子(Psc)を用いて駆動する第1駆動回路(21)と、前記表示パネルの画素のコモン電極(VCOM)と前記タッチパネルの駆動電極(TX1〜TXm)とに兼用される兼用電極(TX1〜TXm)を第2駆動端子(Ptx)を用いて駆動する第2駆動回路(31)と、前記タッチパネルの検出電極から得られる電圧変化を検出する検出回路(30)と、前記表示パネルの1フレームの期間の中を表示駆動期間と非表示駆動期間に分けて、前記第1駆動回路、前記第2駆動回路、及び前記検出回路の動作タイミングを制御する液晶表示制御回路(22)と、前記兼用電極の駆動に用いるコモン電圧の電圧指定データ(Dvcom)と、前記兼用電極の駆動に用いるパルス電圧の振幅指定データ(Dampt)を保持するための記憶領域(60)と、前記記憶領域が保持する電圧指定データ及び前記振幅指定データに基づいて、前記コモン電圧を生成すると共に前記コモン電圧を低レベルとして前記パルス電圧の高レベルを生成する電圧生成回路(42、42a)と、を有する。前記液晶表示制御回路は、前記表示駆動期間に前記第1駆動回路に前記信号電極を駆動させ、且つ、前記第2駆動回路に前記電圧生成回路で発生されたコモン電圧で前記第2駆動端子を駆動させ、前記非表示駆動期間に前記第1駆動回路による前記信号電極の駆動を停止させ、且つ、前記検出回路に検出動作させると共に前記第2駆動回路に前記電圧生成回路で生成された前記コモン電圧に対して前記高レベルを振幅に持つパルス電圧で前記第2駆動端子を駆動させる。
【0029】
これによれば、コモン電圧の最適値に個体バラツキがあってもこれを電圧指定データに反映し、タッチ検出に最適な駆動パルスの振幅を振幅指定データに反映することにより、コモン電圧の最適値にバラツキがあっても、コモン電圧基準の駆動パルスを用いたタッチ検出に所要の検出精度を確保することができる。駆動パルスのDC的な基準レベルにグランドレベルのような一定電圧を採用することを要しないので、駆動回路の出力電圧の種類が増えず、電力消費が増大せず、1表示フレーム期間中で表示及びタッチ検出に用いることができる余裕時間が短くならず、また、駆動回路の回路規模を増大させることもない。
【0030】
〔9〕<表示入力装置>
表示入力装置は、表示パネル(2)にタッチパネル(3)が組み込まれたパネルモジュール(1)に、表示パネル及びタッチパネルを駆動するドライバIC(4)が搭載されて成る。前記タッチパネルの駆動電極(TX1〜TXm)が前記表示パネルの画素のコモン電極(VCMOM)に兼用される。前記駆動電極との交差位置でタッチ検出容量(Ctp)が形成された前記タッチパネルの検出電極(RX1〜RXn)と、前記コモン電極に接続される表示パネルの画素の走査電極(GL1〜GLmk)及び信号電極(SL1〜SLj)との夫々が個別化される。前記ドライバICは、前記表示パネルの画素の信号電極を駆動する第1駆動回路(21)と、前記コモン電極と前記駆動電極に兼用された兼用電極を駆動する第2駆動回路(31)と、前記タッチパネルの検出電極から得られる電圧変化を検出する検出回路(30)と、前記兼用電極の駆動に用いるコモン電圧の電圧指定データと前記兼用電極の駆動に用いるパルス電圧の振幅指定データとを保持するための記憶領域(60)と、前記記憶領域が保持する電圧指定データ及び前記振幅指定データに基づいて、前記コモン電圧を生成すると共に前記コモン電圧を低レベルとして前記パルス電圧の高レベルを生成する電圧生成回路(42,42a)と、を有する。前記第2駆動回路は、前記第1駆動回路による前記信号電極の駆動に応じて、前記電圧生成回路で生成されたコモン電圧で前記兼用電極を駆動し、前記第1駆動回路による前記信号電極の駆動停止及び前記検出回路による検出動作に応じて、前記電圧生成回路で生成された前記コモン電圧に対して前記高レベルを振幅に持つパルス電圧で前記兼用電極を駆動する。
【0031】
これによれば、コモン電圧の最適値に個体バラツキがあってもこれを電圧指定データに反映し、タッチ検出に最適な駆動パルスの振幅を振幅指定データに反映することにより、コモン電圧の最適値にバラツキがあっても、コモン電圧基準の駆動パルスを用いたタッチ検出に所要の検出精度を確保することができる。駆動パルスのDC的な基準レベルにグランドレベルのような一定電圧を採用することを要しないので、駆動回路の出力電圧の種類が増えず、電力消費が増大せず、1表示フレーム期間中で表示及びタッチ検出に用いることができる余裕時間が短くならず、また、駆動回路の回路規模を増大させることもない。したがって、インセル型のパネルモジュールにおいて高いタッチ検出精度を容易に実現することができる。
【0032】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0033】
《表示入力装置》
図2にはパネルモジュール1とこれを駆動するドライバIC4を備えた表示入力装置が例示される。パネルモジュール1は表示パネルの一例である液晶表示パネル2にタッチパネル3が組み込まれた所謂インセル形態で構成され、例えばガラス基板上にTFTと画素電極をマトリクス状に配置したTFTアレイ基板を有し、その上に、液晶層、画素電極に対するコモン電極層、カラーフィルタ、タッチ検出電極、及び表面ガラスなどが積層されて構成される。
図2では便宜上、液晶表示パネル2とタッチパネル3を左右に分離して図示しているが、実際には両者が重ねられている。
【0034】
図2に従えば、液晶表示パネル2は、例えば、交差配置された走査電極GL1〜GLmk(m、kは正の整数)と信号電極SL1〜SLj(jは正の整数)の各交点にTFTと呼ばれる薄膜トランジスタTrが配置され、薄膜トランジスタTrのゲートに対応する走査電極GL1〜GLmk、薄膜トランジスタTrのソースに対応する信号電極SL1〜SLjが設けられ、そして薄膜トランジスタTrのドレインにはコモン電極VCOMとの間にサブピクセルとなる液晶素子及び蓄積コンデンサ(図では液晶素子及び蓄積コンデンサを1個のコンデンサCpxで代表する)が接続されて、各画素が形成される。走査電極GL1〜GLmkの夫々に沿った画素のラインを表示ラインと称する。表示制御では順次走査電極GL1〜GLmkが駆動され、走査電極単位で薄膜トランジスタTrがオン状態にされることで、ソースとドレイン間に電流が流れ、そのとき信号電極SL1〜SLjを介してソースに加えられている各々の信号電圧が液晶素子Cpxに印加されることによって液晶の状態が制御される。
【0035】
タッチパネル3は、静電容量方式とされ、例えば、交差配置された駆動電極TX1〜TXmと検出電極RX1〜RXnの交差位置に多数のタッチ検出容量Ctpがマトリクス状に形成されている。特に制限されないが、
図2ではk本の表示ライン単位でコモン電極をm個に分割し、対応する駆動電極TX1〜TXmと共通化して、パネルモジュール1の薄型化を図っている。駆動電極TX1〜TXmはコモン電極VCOMと兼用化された兼用電極であり、駆動電極TX1〜TXmと対応するコモン電極VCOMを便宜的に兼用電極TX1〜TXmとも称する。駆動電極TX1〜TXmを順次駆動したときタッチ検出容量Ctpを介して検出電極RX1〜RXnに電位変化が現れ、この電位変化を検出電極RX1〜RXn毎に積分することによって検出信号を形成することができる。検出容量の近傍に指があるとその浮遊容量によって検出容量Ctpとの合成容量値が小さくなり、この容量値の変化に応じた検出信号の相違によってタッチと非タッチを区別するようになっている。液晶表示パネル2に重ねられたタッチパネル3を用いることによって、液晶表示パネル2の画面表示に応じてタッチパネル3で行われるタッチ操作によるタッチ座標からその操作を判別可能になる。
【0036】
ドライバIC4は、液晶表示パネル2に対する表示駆動及びタッチパネル3に対するタッチ駆動検出を行なうコントローラデバイスもしくはドライバデバイスとして機能する。このドライバIC4は上記パネルモジュールのTFT基板にCOG(Chip on Glass)などの形態で実装されている。ドライバIC4は、例えばパネルモジュール1をユーザインタフェースとして搭載するスマートフォンなどの情報端末装置のホストプロセッサ(HSTMCU)5に接続され、ホストプロセッサ5との間で、動作コマンド、表示データ、タッチ検出座標データなどの入出力が行なわれる。
【0037】
ドライバIC4は、特に制限されないが、液晶表示ドライバ(LCDDRV)10、及びタッチパネルコントローラ(TPC)11を搭載して半導体集積回路化されている。半導体集積回路化されたドライバIC4は、例えば、CMOS集積回路製造技術などによって単結晶シリコンなどの半導体基板に形成されている。特に制限されないが、
図2の例では、走査電極GL1〜GLmkを駆動する回路はゲートドライバIC(GDRV)6として液晶表示パネル2に搭載される。ドライバIC4は垂直同期信号などのフレーム同期信号に同期して信号電極SL1〜SLjを駆動すると共に、ゲートドライバIC6に走査電極GL1〜GLmkの駆動タイミングなどを与える。ゲートドライバIC6はドライバIC4から与えられたタイミングにしたがって走査電極GL1〜GLmkの駆動を行う。
【0038】
液晶表示ドライバ10は、特に制限されないが、一つの表示フレーム期間の中を、表示駆動期間、及び表示駆動期間に続く非表示駆動期間に分けて液晶表示パネル2を制御する。表示駆動期間と非表示駆動期間との分割数は夫々2分割などの適宜の分割数でよい。例えば走査電極GL1〜GLmkをk×i(iは正の整数)本単位でm/i個のブロックに分割してm/i個の表示駆動期間に分割し、分割された表示駆動期間毎に対応するブロックのk×i本の走査電極を順番に駆動し、各走査電極の駆動タイミングに合わせて対応する表示ラインの表示データで信号電極SL1〜SLjを駆動する。液晶表示ドライバ10は表示駆動期間に対応するブロックの走査電極に対する駆動タイミングをゲートドライバIC6に与える。また、液晶表示ドライバ10は非表示駆動期間において信号電極SL1〜SLjの駆動を停止し、タッチパネルコントローラ11にタッチ検出動作可能であることを通知する。タッチパネルコントローラ11は非表示駆動期間毎に、駆動電極TX1〜TXmの内の所定範囲を順次パルス駆動してタッチ検出容量Ctpを介して検出電極RX1〜RXnに現れる電位変化を積分することによって検出信号を形成し、取得した検出信号をホストプロセッサ5に与える。ホストプロセッサ5は与えられた検出信号に基づいてタッチ座標の演算を行って、表示画像に対するタッチ操作の意味を解釈する。図示はしないが、タッチパネルコントローラ11で取得した検出信号を受け取ってタッチ座標の演算を行うサブプロセッサをドライバICにオンチップすることも可能である。
【0039】
≪ドライバIC≫
図1にはドライバIC4の構成が例示される。
図1では液晶表示ドライバ10とタッチパネルコントローラ11は渾然一体に示されており、ゲートドライバIC6のゲート駆動タイミング信号などを出力するゲートドライバ駆動回路20、信号電極SL1〜SLjを駆動するためのソース駆動回路21、及び液晶表示制御回路22は主に液晶表示ドライバ10の構成要素とされる。駆動電極TX1〜TXmとコモン電極VCOMを兼用する兼用電極TX1〜TXmを駆動するTXパルス出力回路31、検出電極RX1〜RXnに現れる電位変化を積分することによって検出信号を形成するRX検出回路30、及びタッチ検出制御回路32は主にタッチパネルコントローラ11の構成要素とされる。ホストプロセッサ5とコマンド及びデータなどを入出力するホストインタフェース(HSTIF)40、記憶回路41、電圧生成ブロック42は液晶表示ドライバ10及びタッチパネルコントローラ11の双方の機能に関係する構成要素とされる。
【0040】
記憶回路41はコマンドレジスタ、データレジスタ、不揮発性レジスタなどによって構成される。液晶表示制御回路22はフレーム同期信号としての垂直同期信号VSYNCを入力し、例えばこれが1フレームの期間を規定する。1フレームは例えば60Hzなどの周期とされる。1フレームの期間はバックポーチ及びフロントポーチのほかに、前述の複数の表示駆動期間及び非表示駆動期間を含んでいる。各期間は例えば表示ラインのライン周期などを単位にホストプロセッサ5によって記憶回路41のレジスタ回路に定義される。
【0041】
液晶表示制御回路22は表示ラインカウンタなどを備え、そのカウント値を表示駆動期間及び非表示駆動期間の設定値と比較し、表示駆動期間ではそのカウント値にしたがった表示ラインの表示データをソース駆動回路21に与えて信号電極SL1〜SLjを駆動すると共に、ゲートドライバ駆動回路20にゲートドライバIC6のゲート駆動タイミング信号を与えて今回の表示ラインに対応する走査電極(GL1〜GLmk)を駆動させる。さらに、タッチ検出制御回路32を介し表示駆動期間に対応してTXパルス出力回路31に兼用電極TX1〜TXmからコモン電圧VcomDCを出力させて、液晶表示パネル2のコモン電極VCOMの電位をコモン電圧VcomDCに駆動する。
【0042】
一方、液晶表示制御回路22は非表示駆動期間において、ソース駆動回路21に信号電極SL1〜SLjの駆動を停止させ(停止直前の出力を維持、高出力インピーダンス状態、又は一定階調電圧出力)、且つ、ゲートドライバ駆動回路20に走査電極GL1〜GLmkを非選択(薄膜トランジスタTrのカット・オフ)にさせる。この状態で、液晶表示制御回路22は非表示駆動期間に対応してタッチ検出制御回路32タッチ検出動作を開始させる。タッチ検出動作では、表示ラインカウンタのカウント値を参照して今回のタッチ検出ラインの兼用電極(TX1〜TXm)にTXパルス出力回路31から駆動パルスPLStxを出力させ、これに同期してRX検出回路30に検出電極RX1〜RXnに現れる電位変化を積分して検出信号を形成させる。検出信号は記憶回路41に蓄積され、所定のタッチ検出ライン分の信号毎にホストコンピュータ5に与えられて座標演算に供される。
【0043】
Pxtは兼用電極TX1〜TXmに対する駆動パルスPLStx又はコモン電圧VcomDCの出力端子を総称する。Prxは検出電極RX1〜RXnに現れる検出信号の入力端子を総称する。Pscは信号電極SL1〜SLjに対する出力端子(駆動端子)を総称する。PgtはゲートドライバIC6のゲート駆動タイミング信号の出力端子を総称する。
【0044】
電圧生成回路42は、記憶回路41の設定値及び液晶表示制御回路22の指示にしたがって、駆動パルスPLStxのハイレベル電圧VtxH、コモン電圧VcomDC、RX検出回路30の検出ノードに対するプリチャージ電圧、信号電極SL1〜SLjを駆動する階調電圧、ゲート駆動タイミング信号の電圧などを生成して対応部へ出力する。以下、駆動パルスPLStxのハイレベル電圧VtxHとコモン電圧VcomDCを生成するための構成について詳述する。
【0045】
《ハイレベル電圧VtxHとコモン電圧VcomDCを生成》
図1において電圧生成回路42にはハイレベル電圧VtxHとコモン電圧VcomDCを生成する構成が例示される。即ち、駆動パルスPLStxのハイレベル電圧VtxHとコモン電圧VcomDCを生成するための、VCOM電圧生成回路50、TXH電圧生成回路51およびディジタル演算回路としての電圧レベル決定回路52が例示される。記憶回路41はコモン電圧VcomDCを設定するための電圧指定データDvcomとパルス電圧PLStxの振幅を設定するための振幅指定データDamptとを保持するための記憶領域60を有する。電圧指定データDvcomは例えばグランドレベル基準の電圧値を示すディジタルデータである。振幅指定データDamptは電位差を示すディジタルデータである。双方のデータの分解能は等しくされていてもよいし、また、電圧レベル決定回路52にデコード回路を設けておけば双方のデータの分解能は異なっていてもよい。
【0046】
電圧レベル決定回路52は液晶表示制御回路22の指示にしたがって、記憶領域60の電圧指定データDvcomに振幅指定データDamptを加算し、加算値をTXH電圧生成回路51でアナログ電圧に変換して駆動パルスPLStxのハイレベル電圧VtxHを生成させ、且つ、電圧指定データDvcomをVCOM電圧生成回路50でアナログ電圧に変換してコモン電圧VcomDCを生成させる。TXパルス生成回路31は、表示駆動期間において兼用電極TX1〜TXmにコモン電圧VcomDCを出力し、非表示駆動期間において兼用電極TX1〜TXmの中からタッチ検出ラインの兼用電極に対してコモン電圧VcomDCをローレベルとし電圧VtxHをハイレベルとする駆動パルスPLStxを順次出力する。
【0047】
図3には電圧指定データDvcomと振幅指定データDamptを用いた電圧生成例が示される。例えば電圧指定データDvcom_1と振幅指定データDamptを用いたとき、コモン電圧としてVcomDC_1、駆動パルスPLStx_1のハイレベル電圧としてVtxH_1が生成され、駆動パルスPLStx_1はVcomDC_1をローレベル、VtxH_1をハイレベルとする振幅で変化する。一方、最適なコモン電圧としてそれとは異なる電圧指定データDvcom_2を用いる場合には、コモン電圧としてVcomDC_2、駆動パルスPLStx_2のハイレベル電圧としてVtxH_2が生成され、駆動パルスPLStx_2はVcomDC_2をローレベル、VtxH_2をハイレベルとする振幅で変化する。最適なコモン電圧が相違しても、駆動パルスPLStx_1とPLStx_2の振幅は同じになるから、両者で同じタッチ検出精度を実現することができる。
【0048】
図4には振幅指定データDamptの代わりに駆動パルスのハイレベル電圧を指定する場合の電圧生成例を比較例として示す。駆動パルスのハイレベル電圧を指定するデータを便宜上Dvtxhとし、このデータはグランドレベルGNDを基準とする電圧指定データになる。例えば電圧指定データDvcom_1とハイレベル指定データDvtxhを用いたとき、コモン電圧としてVcomDC_1、駆動パルスPLStxのハイレベル電圧としてVtxHが生成され、駆動パルスPLStx_3はVcomDC_1をローレベル、VtxHをハイレベルとする振幅で変化する。一方、最適なコモン電圧としてそれとは異電圧指定データDvcom_2を用いる場合には、コモン電圧としてVcomDC_2、駆動パルスPLStxのハイレベル電圧としてVtxHが生成され、駆動パルスPLStx_4はVcomDC_2をローレベル、VtxHをハイレベルとする振幅で変化する。最適なコモン電圧が相違すれば、駆動パルスPLStx_3とPLStx_4の振幅も相違することになり、両者で同じタッチ検出精度を実現することができない。
【0049】
したがって、電圧指定データDvcomと振幅指定データDamptを用いて駆動パルスPLStxのローレベル電圧Vcomとハイレベル電圧VtxHを生成すれば、コモン電圧Vcomの最適値に個体バラツキがあってもこれを電圧指定データDvcomに反映し、タッチ検出に最適な駆動パルスの振幅を振幅指定データDamptに反映することにより、コモン電圧の最適値にバラツキがあっても、コモン電圧Vcomを基準とする駆動パルスPLStxを用いたタッチ検出に所要の検出精度を確保することができる。駆動パルスのDC的な基準レベルにグランドレベルのような一定電圧を採用すること(
図4)を要しないので、駆動回路としてのTXパルス出力回路31の出力電圧の種類が増えず(Vcom,VtxHの2種類で済み、グランドレベルGNDを含まない)、電力消費が増大せず、1表示フレーム期間中で表示及びタッチ検出に用いることができる余裕時間が短くならず、また、TXパルス出力回路31の回路規模を増大させることもない。
【0050】
図5には記憶領域60の具体例と共に駆動パルスPLStxとコモン電圧VcomDCの生成系統を整理して示してある。記憶領域60は、特に制限されないが、前記電圧指定データDvcomを記憶する第1不揮発性レジスタ60A,60Bと前記振幅指定データDamptを記憶する第2不揮発性レジスタ60Cで構成される。液晶表示パネル2及びタッチパネル3に応じたコモン電圧Vcomの最適値は、例えばドライバIC4でパネルモジュール1を実際に駆動するモジュールテストの段階で決定することができ、一度決定したらその後の変更を要しない場合がほとんどである。また、駆動パルスの振幅はタッチパネル3の検出感度や低消費電力モードとの関係でシステム動作上適宜変更を要する場合が想定される。その違いを考慮したとき、双方のデータを格納する記憶領域60を異なる不揮発性レジスタ60A,60Bと不揮発性レジスタ60Cとすることが使用上便利である。特に、前記第2不揮発性レジスタ60Cはホストインタフェース40を介して外部から電気的に書き込み可能なレジスタである。したがって、ホストプロセッサ5による振幅指定データDamptの書き換えの便に供することができる。電気的に書き込み可能なレジスタには例えばMONOS構造などのフラッシュメモリ用記憶素子を採用すればよい。書き換えを前提としない第1不揮発性レジスタ60A,60Bは1回限りの書き込みで十分であれば電気ヒューズを用いたトリミング回路で構成してもよいが、第2レジスタ60Cと同様に第1不揮発性レジスタ60A,60Bも電気に書き換え可能な不揮発性レジスタで構成するほうがよい。そうすれば、記憶領域60をフラッシュメモリのような一つの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリに割り当てることができる。
図3の例では、前記第1不揮発性レジスタ60A,60Bは複数の前記電圧指定データDvcom_1、Dvcom_2を別々に格納する記憶領域とされる。前記液晶表示制御回路22が表示モードに応じて前記第1不揮発性レジスタ60A又は60Bの一方の電圧指定データを前記電圧レベル決定回路52内のセレクタ61によって選択する。したがって、表示ラインに対する昇順駆動又は降順駆動などの表示モードによってもコモン電圧Vcomの最適値に差を生ずる場合に、表示モードに応じて最適なコモン電圧Vcom_1又はVcom_2を採用でき、コモン電圧の切り替えは駆動パルスのパルス振幅に全く影響を与えない。
【0051】
図6にはアナログ回路を主体とした電圧生成回路の具体例と共に駆動パルスPLStxとコモン電圧VcomDCの生成系統を整理して示したブロック図である。
図6に例示される電圧生成回路42aは、振幅データDamptをアナログ電圧に変換して振幅電圧Vamptを生成するTX振幅電圧生成回路53と、電圧指定データDvcom_1又はDvcom_2をアナログ電圧に変換して前記コモン電圧Vcomを生成するVCOM電圧生成回路50と、VCOM電圧生成回路50で生成されたコモン電圧Vcomに前記TX振幅電圧生成回路53で生成された振幅電圧Vamptをアナログ加算して駆動パルスPLStxのハイレベルVtxHを生成するアナログ加算回路としての電圧加算回路54と、を有する。不揮発性レジスタ60A,60B,60Cなどその他の構成は前記と同様であり、同一機能を有する構成要素にはそれと同じ参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
図6の例によれば、ディジタル信号をアナログ信号に変換して必要な電圧加算などをアナログ処理で実現することができる。ドライバICに混載するアナログ回路部分を多くする場合に好適である。ドライバICに混載するアナログ回路部分を少なくする場合には
図5の構成が好適である。
【0053】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0054】
例えば、表示パネルは液晶パネルに限定されずEL(Electro-Luminescence)パネルであってもよい。コモン電圧の電圧指定データの基準レベルは回路のグランドレベル基準に限定されず、適宜の基準であれば良い。表示とタッチ検出を分離する構成は表示の1フレームの期間を表示駆動期間と非表示駆動期間に分けることに限定されず、その他の期間を挿入してもよい。振幅指定データの記憶領域は不揮発性レジスタに限定されず揮発性レジスタであっても良い。振幅指定データと電圧指定データはパワーオンリセットによって不揮発性メモリから電圧生成回路にロードされて利用されるようにしてもよい。振幅指定データ等を用いて駆動パルスのハイレベル電圧などを生成する回路構成は上記図実施の形態に限定されず、適宜変更可能である。また、電圧や振幅のデータを格納する記憶領域60が不揮発性メモリに形成されていて、それらデータがアドレス信号でアドレシングされて当該不揮発性メモリから読み出される場合には、前記セレクタ61の機能は記憶回路41が持つことになる。
【0055】
また、ドライバICは
図2で説明したように液晶表示ドライバ(LCDDRV)、タッチパネルコントローラ(TPC)だけでなく、サブプロセッサなどもオンチップしてよい。さらにゲートドライバ6を搭載してもよい。