特許第6066483号(P6066483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マルヤス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6066483-燃料圧力の脈動低減装置 図000002
  • 特許6066483-燃料圧力の脈動低減装置 図000003
  • 特許6066483-燃料圧力の脈動低減装置 図000004
  • 特許6066483-燃料圧力の脈動低減装置 図000005
  • 特許6066483-燃料圧力の脈動低減装置 図000006
  • 特許6066483-燃料圧力の脈動低減装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066483
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】燃料圧力の脈動低減装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20170116BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F02M55/02 310C
   F02M55/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-64648(P2013-64648)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-190188(P2014-190188A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 成樹
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−040155(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/106645(WO,A1)
【文献】 特開2010−180727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
F02M 37/00−37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃料室が形成される密閉されたハウジングと、前記燃料室内に設けられた燃料の圧力脈動吸収部材よりなる内燃機関用燃料噴射システムにおける燃料圧力の脈動低減装置において、
前記ハウジングは金属板を素材とする第1及び第2部材よりなり、
前記第1部材は第1カップ状部とその開口側となる外周縁全周から半径方向外向きに延びる第1フランジ部からなる形状でプレス加工により成形され、
前記第2部材はその周縁部の全周を前記第1フランジ部に重ねて当接し、
前記第1及び第2部材の間に形成される環状の当接部分の全周にわたり前記環状の当接部分により形成される平面と直交する方向からレーザービームを照射することにより前記両部材の間の当接面を越える深さまでこれらの両部材を局部的に溶融させて前記両部材を一体的にかつ液密に溶接結合して内部に前記燃料室を有するハウジングを形成し、
前記ハウジングはその壁面を貫通してその内部の前記燃料室を前記内燃機関用燃料噴射システムの連結管路に連結する接続管を備えた
ことを特徴とする燃料圧力の脈動低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料圧力の脈動低減装置において、前記第2部材はプレス加工により前記第1部材の第1カップ状部よりも浅くかつこの第1カップ状部内に挿入可能な第2カップ状部とその開口側となる周縁全周から半径方向外向きに延びて前記周縁部となる第2フランジ部よりなる形状に成形され、前記第2部材はその第2カップ状部が前記第1部材の第1カップ状部内に挿入された状態とそれと逆向きで前記第2カップ状部が前記第1カップ状部から突出された状態の何れか一方において、前記第2フランジ部を前記第1フランジ部に重ねて当接されて前記レーザービームによる溶接により一体的にかつ液密に溶接結合されていることを特徴とする燃料圧力の脈動低減装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料圧力の脈動低減装置において、前記第2部材の第2カップ状部はその開口側が広がった円錐台形状であることを特徴とする燃料圧力の脈動低減装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料圧力の脈動低減装置において、前記圧力脈動吸収部材は、それぞれが前記ハウジングの金属板の板厚よりも薄い金属板からなる第1及び第2ダイヤフラム部材の少なくとも一方を前記第1部材よりも浅いカップ状にプレス加工し、前記第1及び第2ダイヤフラム部材の外周縁部の全周を互いに当接して気密に溶着して内部に密閉空間を形成した少なくとも1個のパルセーションダンパであることを特徴とする燃料圧力の脈動低減装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料圧力の脈動低減装置において、前記圧力脈動吸収部材は、前記ハウジングの金属板の板厚よりも薄い金属板からなる第3ダイヤフラム部材を前記第1部材より浅いカップ状にプレス加工し、前記第3ダイヤフラム部材の外周縁部の全周を前記第1及び第2部材の少なくともいずれか一方の中央部の平坦な内面に当接して液密に固着したものであることを特徴とする燃料圧力の脈動低減装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料圧力の脈動低減装置において、前記第2部材の前記周縁部を除く部分を、前記第2部材の中心軸線を含む平面による断面が波形で、この中心軸線を中心とする同心円状となるように屈曲させたことを特徴とする燃料圧力の脈動低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用燃料噴射システムに使用する燃料圧力の脈動低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用燃料噴射システムには、複数の燃料噴射弁を設けたデリバリパイプに高圧ポンプからの燃料を供給し、各燃料噴射弁に設けた電磁弁の開閉時期を制御装置により制御することによって燃料の噴射量及び噴射時期を制御するものと、複数の燃料噴射弁を設けたデリバリパイプに内燃機関により駆動されるプランジャポンプからの燃料を供給し、制御装置により制御される電磁装置によりプランジャポンプの吸入弁の作動を制御し、これにより1ストローク当たりの吐出量が一定であるプランジャポンプから燃料供給通路側に戻す燃料の量と時期を制御して燃料の噴射量及び噴射時期を制御するものとがある。何れの場合にも管路内の燃料圧力の変動に起因する燃料噴射量の変動を減少させるために燃料圧力の脈動低減装置が設けられている。
【0003】
前者の場合の燃料圧力の脈動低減装置としては、特許文献1に示すパルセーションダンパがあり、これは柔軟な樹脂または耐油ゴム(以下単に柔軟な樹脂等という)の薄膜により形成されてスプリングにより一方向に付勢されたダイヤフラムとケーシングとの間に形成した圧力室を有し、この圧力室がデリバリパイプの内部空間に連通されるようにデリバリパイプに取り付けられて使用されるものである。
【0004】
後者の場合の燃料圧力の脈動低減装置としては、特許文献2に開示されたプランジャタイプの高圧ポンプのダンパ装置がある。これは図6に示すように、高圧ポンプのポンプハウジングと一体的に形成したダンパハウジング1に設けた浅い円筒状の凹部1aの開口部に有底筒状の蓋部材2をかぶせ、溶接などにより液密に塞いで高圧ポンプの加圧室と連通する燃料室3を形成し、薄い金属板を浅いカップ状にプレス加工した2枚のダイヤフラム部材21,22の各外周に形成したフランジ部21a,22aを全周にわたりシーム溶接などにより液密に溶着して内部に密閉空間を形成したパルセーションダンパ20を燃料室3内に収容し、フランジ部21a,22aを保持する例えば3個(図6では1個のみを示す)の取付部材4により支持したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−42338号公報
【特許文献2】特開2012−184757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、柔軟な樹脂等の薄膜よりなるダイヤフラムは柔軟性が高いので小形軽量で脈動吸収性能に優れた燃料圧力の脈動低減装置が得られるが、燃料であるガソリンに含まれる化学物質によりダイヤフラムが劣化するおそれと、燃料圧力の上昇に伴ってダイヤフラムの耐久性が低下するおそれがあった。この問題は柔軟な樹脂の材質を選択することによりある程度は解決することが可能であるが、燃料にはガソリンにアルコールその他の種々の化学物質を混合したものがあり、このような多種の燃料に対し劣化することがないダイヤフラム用の柔軟な樹脂等の材質を選択することはきわめて困難であった。
【0007】
これに対し、特許文献2に記載された パルセーションダンパは薄い金属板を用いたものであるので、どのような燃料に対しても劣化しにくいので高い耐久性が得られる。しかしながら、薄い金属板は柔軟な樹脂等に比して柔軟性が低いので高い脈動吸収性能が要求される場合には小形軽量化が困難になるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、図6に示すように、高圧ポンプのポンプハウジングと一体的に形成したダンパハウジング1とそれに設けた凹部1aの開口部にかぶせた有底筒状の蓋部材2の間の溶接は、蓋部材2の先端面2aより多少離れた外周面を全周にわたり矢印Bに示すように半径方向外側から内向きにレーザービームを照射して両部材1,2を一体的にかつ液密に溶接結合して両部材1,2の間に形成される燃料室3を密閉している。この溶接結合のためには、レーザービームによりこの両部材1,2をそれらの間の当接面を越える深さまで局部的に溶融させる必要があるが、この溶融部の深さの制御は必ずしも容易ではなく、ときには溶融部の先端が燃料室3の内面近くまで達することがある。溶融部の先端部にはレーザービームの照射方向に飛散させようとする力が加わるので、溶融部の先端が燃料室3の内面に達すると、溶融したダンパハウジング1の一部が微細なスパッタとなって燃料室3の内面からレーザービームの照射方向に飛散し、パルセーションダンパ20を収容する燃料室3内に侵入するおそれがあった。燃料室内へのスパッタの侵入は、たとえわずかであってもデリバリパイプに設けた燃料噴射弁の目詰まりの原因となるおそれがあった。
【0009】
さらに、特許文献2のようなダンパ装置一体型の高圧ポンプでは、ポンプとダンパ装置の両方の特性は内燃機関の特性に合わせたものとしなければならない。ポンプまたはダンパ装置のどちらかの特性を変更するだけであっても、ダンパ装置一体型の高圧ポンプは新たな機種として設計しなければならないので、ダンパ装置一体型の高圧ポンプではポンプまたはダンパ装置の各特性に応じて多機種となり、コストアップの原因となる問題があった。本発明はこのような各問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、内部に燃料室が形成される密閉されたハウジングと、燃料室内に設けられた燃料の圧力脈動吸収部材よりなる内燃機関用燃料噴射システムにおける燃料圧力の脈動低減装置において、ハウジングは金属板を素材とする第1及び第2部材よりなり、第1部材は第1カップ状部とその開口側となる外周縁全周から半径方向外向きに延びる第1フランジ部からなる形状でプレス加工により成形され、第2部材はその周縁部の全周を第1フランジ部に重ねて当接し、第1及び第2部材の間に形成される環状の当接部分の全周にわたり環状の当接部分により形成される平面と直交する方向からレーザービームを照射することにより両部材の間の当接面を越える深さまでこの両部材を局部的に溶融させて両部材を一体的にかつ液密に溶接結合して内部に燃料室を有するハウジングを形成し、ハウジングはその壁面を貫通してその内部の燃料室を内燃機関用燃料噴射システムの連結管路に連結する接続管を備えた燃料圧力の脈動低減装置を提供するものである。
【0011】
上記のように構成した燃料圧力の脈動低減装置においては、ハウジングは金属板を素材とする第1及び第2部材よりなり、第1部材は第1カップ状部とその開口側となる外周縁全周から半径方向外向きに延びる第1フランジ部からなる形状でプレス加工により成形され、第2部材はその周縁部の全周を第1フランジ部に重ねて当接し、第1及び第2部材の間に形成される環状の当接部分の全周にわたり環状の当接部分により形成される平面と直交する方向からレーザービームを照射することにより両部材の間の当接面を越える深さまでこの両部材を局部的に溶融させて両部材を一体的にかつ液密に溶接結合して内部に燃料室を有するハウジングを形成しており、第1及び第2部材の局部的に加熱溶融された部分の先端部にはレーザービームの照射方向に飛散されようとする力が加わるが、その飛散方向は両部材の第1フランジ部と周縁部の間に形成される環状の当接部分により形成される平面と直交する方向であって燃料室の外側を通るので、溶融した両部材の一部が微細なスパッタとなってレーザービームの照射方向に飛散したとしても、そのようなスパッタが燃料室内に入って燃料噴射弁の目詰まりの原因となることはない。ハウジングはその壁面を貫通して設けた接続管により内燃機関用燃料噴射システムの連結管路に連結するようにしており、従って本発明による燃料圧力の脈動低減装置は単独の部品として生産して、それを必要とする任意の機種の内燃機関にその他の部品には何らの影響も与えることなく組み込むことができる。これにより生産する内燃機関が多機種の場合には機種の数に比して部品の種類が増大することを防ぐことができるので、コストアップの要因を減らすことができる。
【0012】
上記のように構成した燃料圧力の脈動低減装置においては、第2部材はプレス加工により第1部材の第1カップ状部よりも浅くかつこの第1カップ状部内に挿入可能な第2カップ状部とその開口側となる周縁全周から半径方向外向きに延びて周縁部となる第2フランジ部よりなる形状に成形され、第2部材はその第2カップ状部が第1部材の第1カップ状部内に挿入された状態とそれと逆向きで第2カップ状部が第1カップ状部から突出された状態の何れか一方において、第2フランジ部を第1フランジ部に重ねて当接されてレーザービームによる溶接により一体的にかつ液密に溶接結合されているのが好ましい。このよにしたときには、同一の第1部材と同一の第2部材を組み合わせて使用した場合でも、第2部材の第2カップ状部が第1部材の第1カップ状部内に挿入された場合と、これと逆向きで第2カップ状部が第1カップ状部から突出された場合とでは、ハウジング内に形成される燃料室の高さは後者の場合の方が大きくなる。従って、同じパルセーションダンパを使用した場合には、後者の場合の方がパルセーションダンパの数を増やすことができるので、同一の部材の組み合わせを使用して脈動吸収性能が異なる2種の燃料圧力の脈動低減装置を生産することができ、かつ、部品点数を増やすことなく脈動吸収性能が高い燃料圧力の脈動低減装置を得ることができる。また、ハウジングを構成する第1及び第2部材は何れもプレス成形品であり、ダイカスト製品のポンプハウジングと一体的に形成した従来技術のダンパハウジングに比して肉厚を大幅に薄くすることができるので、ハウジング自体もある程度の脈動吸収機能を備えたものとなり、これにより脈動低減装置の脈動吸収性能を高めることができる。
【0013】
上記のように構成した燃料圧力の脈動低減装置においては、第2部材の第2カップ状部はその開口側が広がった円錐台形状であることが好ましい。このようにしたときには、第2カップ状部の円錐台形状の傾斜面によっても脈動吸収機能が得られるので、燃料圧力の脈動低減装置の脈動吸収性能を高めることができる。
【0014】
上記のように構成した燃料圧力の脈動低減装置においては、圧力脈動吸収部材は、それぞれがハウジングの金属板の板厚よりも薄い金属板からなる第1及び第2ダイヤフラム部材の少なくとも一方を第1部材よりも浅いカップ状にプレス加工し、第1及び第2ダイヤフラム部材の外周縁部の全周を互いに当接して気密に溶着して内部に密閉空間を形成した少なくとも1個のパルセーションダンパであるのが好ましい。このようにしたときには、パルセーションダンパを構成する各ダイヤフラム部材は何れも薄い金属板であるので、どのような燃料に対しても膨潤して劣化するおそれはなく高い耐久性が得られる。
【0015】
上記のように構成した燃料圧力の脈動低減装置においては、圧力脈動吸収部材は、ハウジングの金属板の板厚よりも薄い金属板からなる第3ダイヤフラム部材を第1部材より浅いカップ状にプレス加工し、第3ダイヤフラム部材の外周縁部の全周を第1及び第2部材の少なくともいずれか一方の中央部の平坦な内面に当接して液密に固着したものであるのが好ましい。このようにしたときにも、第3ダイヤフラム部材は金属板であるので、どのような燃料に対しても膨潤して劣化するおそれはなく高い耐久性が得られる。
【0016】
上記のように構成した燃料圧力の脈動低減装置においては、第2部材の周縁部を除く部分を、第2部材の中心軸線を含む平面による断面が波形で、この中心軸線を中心とする同心円状となるように屈曲させるのが好ましい。このようにしたときには、第2部材の各部分の放射方向における伸び剛性が低下するとともに受圧面積が増大するので、第2部材による脈動吸収性能を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による燃料圧力の脈動低減装置の第1実施形態の全体構造を示す平面図である。
図2図1の2−C−2線に沿った断面図である。
図3】本発明による燃料圧力の脈動低減装置における第2実施形態の図2に相当する断面図である。
図4】本発明による燃料圧力の脈動低減装置における第3実施形態の図2に相当する断面図である。
図5】本発明による燃料圧力の脈動低減装置における第4実施形態の図2に相当する断面図である。
図6】従来技術による燃料圧力の脈動低減装置における一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明による燃料圧力の脈動低減装置の実施形態を添付図面を用いて説明する。先ず、第1実施形態による燃料圧力の脈動低減装置10は、図1及び図2に示すように、それぞれ2個の接続管16及び取付金具17を備えたハウジング11と、このハウジング11により形成される燃料室15内に設けられた圧力脈動吸収部材Dにより構成されている。
【0019】
この第1実施形態の燃料の圧力脈動吸収部材Dは、従来技術の説明において図6により説明したパルセーションダンパ20と実質的に同じものであり、薄い金属板を円形の浅いカップ状にプレス加工した2枚の第1及び第2ダイヤフラム部材21,22(以後、単にダイヤフラム部材21,22と記載する。)の各外周に形成したフランジ部21a,22aを重ね、その全周をレーザービーム溶接などにより液密に溶着して内部に密閉された空間を形成したものである。図示の実施例では、2枚のダイヤフラム部材21,22の両方を同一の浅いカップ状にプレス加工して、各外周にフランジ部21a,22aを形成したが、2枚のダイヤフラム部材のいずれか一方21だけを外周にフランジ部21aを有するカップ状にプレス加工し、他方のダイヤフラム部材22はフランジ部21aの外径と同一径の円板として、その外周縁部を一方の第1ダイヤフラム部材21のフランジ部21aと重ね、全周にわたりレーザービーム溶接などにより液密に溶着して内部に密閉された空間を形成したものとしてもよい。
【0020】
この第1実施形態のハウジング11は、図1及び図2に示すように、プレス加工により成形された第1及び第2部材12,13よりなるもので、各部材12,13はダイヤフラム部材21,22に使用する薄い金属板よりは強度上の問題がない程度に少し厚くした金属板を素材として使用している。第1部材12は上述したような金属板の素材をプレス加工により、直径に比べて浅い有底円筒状の第1カップ状部12aと、その開口側となる外周縁全周から半径方向外向きに延びる一定幅の第1フランジ部12bからなる形状に成形したものである。第1カップ状部12aの底壁には浅い円形の突出部12dが形成され、また、第1カップ状部12aの外周壁には円周方向に所定の角度をおいて小さい内向きフランジを有する2つの連結孔12cがバーリング加工などにより形成されている。第1カップ状部12aの形状は円筒形に限らず、角部が大きいアールを形成した正方形などの任意の正多角形筒形でもよい。
【0021】
各連結孔12cに連結する2本の接続管16は同一形状で、細長い管材の一端を内向きに丸め、長手方向においてこの一端側に少し偏った位置及び他端部の外周にそれぞれ環状の抜止め用突起16a及び位置決め用突起16bを形成したものである。この2本の接続管16は、それぞれの他端部を各連結孔12cに外側から挿入し、位置決め用突起16bを第1カップ状部12aの表面に当接させて位置決めして、第1部材12に液密にろう付け固着される。
【0022】
第1部材12には、燃料圧力の脈動低減装置10を内燃機関付近に取り付けるために同一形状の2個の取付金具17が設けられている。各取付金具17は、第1及び第2部材12,13の素材と同様な金属板をプレス加工により長辺部及び短辺部よりなる断面L字状に折り曲げたものである。各取付金具17は、図1に示す平面視における短辺部の形状を第1部材12の第1カップ状部12aの外周壁の外面に隙間なく当接可能な円弧状に湾曲させ、長辺部の先端部には取付穴17aが形成されている。この2個の取付金具17はその短辺部が、円周方向に所定の角度をおいて第1カップ状部12aの外周壁に当接されてろう付け固着される。
【0023】
第2部材13は、プレス加工により第1部材12の第1カップ状部12aよりも浅くかつ第1カップ状部12a内に挿入可能な第2カップ状部13aと、その開口側となる周縁全周から半径方向外向きに延びて第2部材13の周縁部となる第2フランジ部13bよりなる形状に成形したものであり、第2フランジ部13bの外径は第1フランジ部12bの外径と同一である。この第1実施形態の第2部材13の第2カップ状部13aは、高さが第1カップ状部12aの高さの半分弱であり、その開口側が広がった円錐台形状となっている。この第2部材13は、図2に示すようにその第2カップ状部13aが第1部材12の第1カップ状部12a内に挿入された状態として、或いはこれと逆向きに第2カップ状部13aが第1カップ状部12aから突出される状態として(後述する図3参照)、第2フランジ部13bを第1フランジ部12bに重ねて当接することが可能である。
【0024】
図1及び図2に示すように、第1部材12内には1個のパルセーションダンパ20が取付部材23によって保持されている。取付部材23は、一部が欠けた円形に湾曲された形状をし、第1部材12の第1カップ状部12aの内面に弾性的に保持される帯板23aと、帯板23aの円周方向の3カ所に一体的に形成された2つの保持片を有する保持部23bよりなるものである。パルセーションダンパ20は、各保持部23bの保持片の間にフランジ部21a,22aを挟んで保持され(図2参照)、帯板23aを第1カップ状部12aの内面に挿入して摩擦係合により、第1カップ状部12a内に保持される。この状態で第2部材13をその第2カップ状部13aが第1部材12の第1カップ状部12a内に挿入される向きとして、第2フランジ部13bを第1部材12の第1フランジ部12bに重ねて当接し液密に溶着して、内部にパルセーションダンパ20を収納する燃料室15を備えたハウジング11を形成する。この溶着は、図2の矢印Aに示すように第2フランジ部13bに対しそれと直交する下側からレーザービームを照射して第2フランジ部13bの厚さを多少越える深さまで両フランジ部12b,13bを局部的に溶融させ、レーザービームの照射位置を両フランジ部12b,13bの間に形成される環状の当接部分の幅方向中心付近となる円形の線14の全周に沿って移動させることにより行う。なお、この場合のレーザービームの照射は第1フランジ部12bに対し直交する上側から行うことも可能である。
【0025】
図3に示す第2実施形態では、第1実施形態の場合と全く同一の第1及び第2部材12,13使用し、第2部材13は図2に示すのとは逆向き、すなわち、第2カップ状部13aが第1カップ状部12aから突出される向きとして第2フランジ部13bを第1フランジ部12bに重ねて当接して溶着結合する。この場合の両フランジ部12b,13bの溶着結合は、図2で説明したのと同様にして行えばよい。互いに溶着した第1及び第2部材12,13の間に形成されて燃料室15となる空間の高さは、この第2実施形態では図2に示す第1実施形態の場合の高さの約2倍となる。従って、パルセーションダンパ20の寸法が同一ならば、圧力脈動吸収部材Dを構成するパルセーションダンパ20の数を、図2に示す第1実施形態では1個であるのに対し、図3に示す第2実施形態では2個とすることができるので、最大寸法であるハウジング11の外径が同一で、脈動吸収性能が約2倍の燃料圧力の脈動低減装置を得ることができる。すなわち、この第2実施形態によれば、第1実施形態と共用の同数の第1及び第2部材12,13を使用して、2個のパルセーションダンパ20を収容できる燃料室15を形成でき、これにより脈動吸収性能の高い燃料圧力の脈動低減装置を得ることができる。なお、図3の燃料圧力の脈動低減装置に使用するパルセーションダンパ20は、ダイヤフラム部材21,22のフランジ部をなくして、ダイヤフラム部材21,22のカップ状部の外径を大きくし、両ダイヤフラム部材21,22の外周縁部となる開口縁を当接しレーザービームなどにより一体に溶着して内部に密閉された空間を形成したものとしており、このようにすれば1個のパルセーションダンパ20の容積が増大するので、脈動吸収性能を一層高めることができる。この場合に使用する取付部材24は、前述した帯板23aと同様な帯板24aの両側の円周方向各3カ所に保持部24bを備えている。
【0026】
次に、図4に示す第3実施形態の説明をする。この第3実施形態は、圧力脈動吸収部材Dを構成するパルセーションダンパ20は第1実施形態と実質的に同じ構造のものを2個使用し、ハウジング11の構造とパルセーションダンパ20の支持構造を第1及び第2実施形態と異ならせたものである。そこで、これらの相違点について主として説明する。
【0027】
この第3実施形態では、ハウジング11の第1部材12は、高さが高めである点を除き、第1及び第2実施形態の第1部材12とほぼ同じである。第2部材13は第2カップ状部13aがないほぼ円板状で、第2フランジ部に対応する環状の周縁部13bと中央平坦部13cはほぼ同じ高さで、中央平坦部13cの外側に続いて環状の底部平坦面を有する下方突出部13dが形成され、下方突出部13dと第2フランジ部13bの間には断面が山形の上方突出部13eが形成されている。従って、第2部材13の周縁部13bを除く部分は、第2部材13の中心軸線Cを中心とする同心円状で中心軸線Cを含む平面による断面が波形となるように屈曲されている。なお、第2部材13の厚さは第1部材12よりも多少薄くしている。
【0028】
また、パルセーションダンパ20の支持構造である弾性取付部材25は、上面及び下面に燃料が通過する通過口を有してパルセーションダンパ20を支持するフレーム25aと、フレーム25aの上面及び下面の中央に一体的に設けた各4本の脚部25bよりなる。各4本の脚部25bはフレーム25aから離れるように折り曲げられ、各先端部は中央部と平行になるように折り曲げられている。フレーム25aに支持されたパルセーションダンパ20は、従来技術の説明において説明したのと同様に、各ダイヤフラム部材21,22の各外周に形成したフランジ部21a,22aを重ね、その全周をレーザービーム溶接などにより液密に溶着して内部に密閉された空間を有するものである。
【0029】
この第3実施形態では、2つのパルセーションダンパ20は、図4に示すように、フレーム25aにより上下二段に積み重ねられて、互いに当接される弾性取付部材25の各脚部25bの先端部は、例えば、折り曲げかしめなどにより互いに一体的に連結され、これにより第3実施形態の圧力脈動吸収部材Dは構成される。このように連結された2つのパルセーションダンパ20は、下側となる各脚部25bの先端が下方突出部13dの環状の底部平坦面上に当接するように第2部材13上に載せられ、接続管16及び取付金具17が設けられた第1部材12がかぶせられ、第1部材12の第1フランジ部12bを第2部材13の周縁部13bを重ねて当接し、前述したレーザービーム溶接により液密に溶着して、内部にパルセーションダンパ20が収納された燃料室15を備えたハウジング11を形成する。最上部となる各脚部25bの先端は第1部材12の第1フランジ部12bが第2部材13の周縁部13bに当接される前に第1部材12の突出部12dの内面に当接され、従って第1部材12と第2部材13が溶着された状態では、各弾性取付部材25は弾性的に撓んで各パルセーションダンパ20は弾性的に保持され、突出部12d及び下方突出部13dにより半径方向の移動も拘束される。
【0030】
次に、図5に示す第4実施形態の説明をする。この第4実施形態は、圧力脈動吸収部材Dを構成する第3ダイヤフラム部材26と第2部材13の形状が第1実施形態と異なっている。そこで、主としてこれらの相違点について説明する。
【0031】
この第4実施形態では、ハウジング11の第2部材13は平坦な円板状であり、その厚さは第1部材12よりも多少薄くしている。また圧力脈動吸収部材Dは、金属板をプレス加工によりハウジング11の第1カップ状部12aよりも浅いカップ状部26aと、その外周から半径方向外向きに突出する第3フランジ部26bよりなる形状に形成した第3ダイヤフラム部材26を2つ用いたものである。各第3ダイヤフラム部材は、第3フランジ部26bをハウジング11の第1及び第2部材12,13の中央部の平坦な内面に当接し、レーザービーム溶接などにより液密に固着して、第1及び第2部材12,13との間に密閉空間を形成している。
【0032】
上述した各実施形態によれば、ハウジング11を構成する第1部材12と第2部材13は、それぞれの第1フランジ部12bに第2フランジ部13bを重ねて当接し、第2フランジ部13bに対し直交する下側からレーザービームを照射し、第2フランジ部13bの厚さを多少越える深さまでこの両フランジ部12b,13bを局部的に溶融させて両部材12,13を一体的にかつ液密に溶接結合して内部に燃料室15を有するハウジング11を形成している。この溶接の際に両フランジ部12b,13bの局部的に加熱溶融された部分の先端部にはレーザービームの照射方向に飛散されようとする力が加わるが、その飛散方向は第1及び第2部材12,13の両フランジ部12b,13bとの当接面と直交する方向であって燃料室15の外側を通るので、溶融した両フランジ部12b,13bの一部が微細なスパッタとなってレーザービームの照射方向に飛散したとしても、そのようなスパッタが燃料室15内に入って燃料噴射弁の目詰まりの原因となることはない。
【0033】
上述した各実施形態による燃料圧力の脈動低減装置10においては、燃料の噴射量及び噴射時期の制御を、プランジャポンプから燃料供給通路側に戻すことにより制御する形式の内燃機関用燃料噴射システムにおける戻し管路のような、比較的低圧の連結管路の途中に取り付けてもよく、また、電磁弁を有する燃料噴射弁を設けたデリバリパイプに高圧ポンプからの燃料を直接供給する場合の連結管路の途中に取り付けてもよい。
【0034】
上述した各実施形態では、ハウジング11を構成する第1及び第2部材は何れもプレス成形品であり、ダイカスト製品のポンプハウジングと一体的に形成した従来技術のダンパハウジングに比して肉厚を大幅に薄くすることができるので、ハウジング11自体もある程度の脈動吸収機能を備えたものとなり、これにより燃料圧力の脈動低減装置の脈動吸収性能を高めることができる。
【0035】
上述した第1及び第2実施形態では、第2部材13はプレス加工により第1部材12の第1カップ状部12aよりも浅くかつ第1カップ状部12a内に挿入可能な第2カップ状部13aとその開口側となる周縁全周から半径方向外向きに延びて周縁部13bとなる第1フランジ部12bよりなる形状に成形し、第2部材13はその第2カップ状部13aが第1部材12の第1カップ状部12a内に挿入された状態とこれと逆向きで第2カップ状部13aが第1カップ状部12aから突出された状態の何れにおいても、第2フランジ部13bを第1フランジ部12bに重ねて当接してレーザービームによる溶接により一体的に結合してハウジング11を形成することを可能としている。
【0036】
このようにすれば、同じ第1部材12と同じ第2部材13とを組み合わせて使用した場合でも、第2部材13の第2カップ状部13aが第1部材12の第1カップ状部12a内に挿入された場合と、これと逆向きで第2カップ状部13aが第1カップ状部12aから突出された場合とでは、ハウジング11内に形成される燃料室15の高さは後者の場合の方が大きくなる。よって、同じパルセーションダンパ20を使用した場合には、後者の場合の方が燃料室15内に収納できるパルセーションダンパ20の数を増やすことができ、同一の部材の組み合わせを使用して脈動吸収性能が異なる2種の燃料圧力の脈動低減装置を生産することができる。このようにしてパルセーションダンパの数を増やしたものによれば、部品点数を増やすことなく脈動吸収性能が高い燃料圧力の脈動低減装置を得ることができる。
【0037】
しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、第2部材13は第1カップ状部12aと同じ外径の単純な円板とし、第1フランジ部12bに第2部材13の周縁部の全周を重ねて当接してレーザービームによる溶接により一体的に結合してハウジング11を形成することも可能である。このようにしたときにも前述した、高い耐久性が得られるとともに、燃料噴射弁の目詰まりは防止され、ハウジング11自体の脈動吸収機能により燃料圧力の脈動低減装置の脈動吸収性能を高めることができるという各効果を得ることができる。
【0038】
上述した第1及び第2実施形態では、第2カップ状部13aはその開口側が広がった円錐台形状としている。このようにしたことで、この第2カップ状部13aの円錐台形状の傾斜面によっても脈動吸収機能が得られるので、燃料圧力の脈動低減装置の脈動吸収性能を高めることができる。
【0039】
上述した第3実施形態では、第2部材13は第2カップ状部13aがないほぼ円板状で、第2フランジ部に対応する環状の周縁部13bと中央平坦部13cはほぼ同じ高さで、中央平坦部13cの外側に続いて環状の底部平坦面を有する下方突出部13dが形成され、下方突出部13dと第2フランジ部13bの間には断面が山形の上方突出部13eが形成されている。第2部材13の周縁部を除く部分は、第2部材13の中心軸線Cを含む平面による断面が波形で、この中心軸線Cを中心とする同心円状となるように屈曲させている。これにより、第2部材13の各部分の放射方向における伸び剛性が低下するとともに受圧面積が増大するので、第2部材13による脈動吸収性能を一層高めることができる。
【0040】
上述した第1〜第3実施形態によれば、ハウジング11の燃料室15内に設けられて脈動吸収作用を行うパルセーションダンパ20は、前述のように少なくとも一方がカップ状にプレス加工され、外周縁部の全周が互いに当接され気密に溶着されて内部に密閉空間が形成された2枚のダイヤフラム部材21,22よりなり、2枚のダイヤフラム部材21,22は何れも薄い金属板からなり、どのような燃料に対しても高い耐久性が得られる。
【0041】
上述した第4実施形態では、圧力脈動吸収部材Dは、ハウジング11の金属板の板厚よりも薄い金属板からなる第3ダイヤフラム部材26を第1部材12より浅いカップ状にプレス加工し、第3ダイヤフラム部材26の外周縁部の全周を第1及び第2部材12,13の中央部の平坦な内面に当接して液密に固着した。このようにしたときにも、上述した第1〜第3実施形態のパルセーションダンパ20と同様に、第3ダイヤフラム部材26はどのような燃料に対しても膨潤して劣化するおそれはないので高い耐久性が得られる。なお、第3ダイヤフラム部材を上述した第1及び第2実施形態の第1部材12及び第2部材13の中央部の平坦な内面に当接して液密に固着したものであっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
前述した特許文献2のように、ダンパ装置一体型の高圧ポンプでは、ポンプとダンパ装置の両方の特性を内燃機関の特性に合わせなければならなく、ポンプまたはダンパ装置のどちらかの特性を変更するだけでも、ダンパ装置一体型の高圧ポンプを新たな機種として設計しなければならなった。このため、ダンパ装置一体型の高圧ポンプではポンプまたはダンパ装置の各特性に応じて多機種となり、コストアップの原因となる問題があった。しかし、本発明による燃料圧力の脈動低減装置10は単独の部品として生産して、それを必要とする任意の機種の内燃機関にその他の部品には何らの影響も与えることなく組み込むことができる。これにより生産する内燃機関が多機種の場合には機種の数に比して部品の種類が増大することを防ぐことができ、コストアップの要因を減らすことができる。
【符号の説明】
【0043】
10…燃料圧力の脈動低減装置、11…ハウジング、12…第1部材、12a…第1カップ状部、12b…第1フランジ部、13…第2部材、13a…第2カップ状部、13b…第2フランジ部(周縁部)、15…燃料室、16…接続管、20…パルセーションダンパ、21…第1ダイヤフラム部材、22…第2ダイヤフラム部材、26…第3ダイヤフラム部材、D…圧力脈動吸収部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6