(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操作部とこの操作部の後方側に設けられる軸部とを有した金属製の回転操作軸と、前記軸部が挿通され、前記軸部を回転可能に軸支する軸受け部を有する軸受け部材と、前記軸部と共に回転する回転体と、前記回転体の回転動作を検出する回転検出手段と、前記軸受け部材に一体化されるケースと、を備え、前記ケースと前記軸受け部材とで形成される収容空間に前記回転体が配設された回転型電気部品において、
前記回転操作軸の前記操作部は、前記軸受け部の前方側に配設されると共に前記軸受け部の内径よりも大きな形状に形成され、前記軸部は、前記軸受け部材の前方側から前記軸受け部に挿通されており、
前記軸受け部材は、金属板により形成されると共に、前記ケースと対向する板状部と、この板状部から前方側に突出する筒状部と、前記板状部から後方側に突出し前記ケースを保持するための保持部と、を有し、
前記筒状部には、環状段差部と、この環状段差部と前記板状部との間に位置する本体部と、前記環状段差部の前方側に配置され前記本体部よりも径が小さい小径部と、が設けられ、
前記小径部が前記軸受け部を構成すると共に、前記小径部の先端が当該小径部の前方側に位置する前記操作部と対向しており、
前記環状段差部の径方向における段差の寸法が、前記筒状部の前記本体部及び前記小径部の肉厚よりも大きいことを特徴とする回転型電気部品。
前記回転検出手段は、前記回転体の後方側の面に設けられた導電パターンと、前記ケースに設けられ前記導電パターンと摺接する摺動子とにより構成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の回転型電気部品。
【背景技術】
【0002】
操作軸を回転操作する回転型電気部品が、例えば、特許文献1に開示されている。
図10は、特許文献1に記載されている回転型電気部品100の要部断面図、
図11は回転型電気部品100の分解斜視図である。回転型電気部品100は、金属板を折り曲げ加工して形成された取付板101と、摺動子片112aが一体化された絶縁ケース112と、の間に、円筒状の軸受け部104が形成された支持部材102、操作軸105、操作部材108、駆動体109、ゴムラバー110等が配置されている。
【0003】
回転型電気部品100は、操作軸105の回転操作で操作部材108を回転させる電気部品であり、これにより導電パターン108aが摺動子片112aに接離して、接点の切り換えを行うパルススイッチを構成している。操作軸105を回転操作すると、操作軸105の回転に伴って操作部材108が回転し、絶縁ケース112にインサート成形等で一体化された摺動子片112aと操作部材108に設けられた導電パターン108aとが相対的に摺動して、パルススイッチが操作され、回転動作が検出される。
【0004】
回転型電気部品100に用いられている操作軸105は金属製のものである。このような回転型電気部品に用いられる操作軸は、樹脂製と金属製とに大別される。樹脂製の操作軸では衝撃によって破損する虞があるため、例えば自動車等に搭載される電子機器では、機械的強度の観点から、金属製の操作軸を用いた回転型電気部品が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属製の操作軸105及び金属製の軸受け部104では、操作軸105が不所望に押圧されて、軸受け部104と勢い良くぶつかっても内部の操作部材108の回転に支障をきたさないように考慮しておかなければならない。このため、軸受け部104は、変形しにくい亜鉛ダイキャスト等で構成されていた。このように、軸受け部104は、亜鉛ダイキャスト等で構成されているので、コスト高となっていた。また、この構成では、
図11に示すように、軸受け部104とは別に、絶縁ケース112に軸受け部104を一体化させるための取付板101が必要である。このように、軸受け部104とは別に、取付板101を必要とするので、部品点数が多く、製造工程が増加していた。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決して、操作軸(回転操作軸)が押圧されても内部の操作部材(回転体)の回転に影響を及ぼしにくくすることができると共に、部品点数を削減して、且つコストを抑えることのできる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、操作部とこの操作部の後方側に設けられる軸部とを有した金属製の回転操作軸と、前記軸部が挿通され、前記軸部を回転可能に軸支する軸受け部を有する軸受け部材と、前記軸部と共に回転する回転体と、前記回転体の回転動作を検出する回転検出手段と、前記軸受け部材に一体化されるケースと、を備え、前記ケースと前記軸受け部材とで形成される収容空間に前記回転体が配設された回転型電気部品において、前記回転操作軸の前記操作部は、前記軸受け部の前方側に配設されると共に前記軸受け部の内径よりも大きな形状に形成され、前記軸部は、前記軸受け部材の前方側から前記軸受け部に挿通されており、前記軸受け部材は、金属板により形成されると共に、前記ケースと対向する板状部と、この板状部から前方側に突出する筒状部と、前記板状部から後方側に突出し前記ケースを保持するための保持部と、を有し、前記筒状部には、環状段差部と、この環状段差部と前記板状部との間に位置する本体部と、前記環状段差部の前方側に配置され前記本体部よりも径が小さい小径部と、が設けられ、前記小径部が前記軸受け部を構成すると共に、前記小径部の先端が当該小径部の前方側に位置する前記操作部と対向して
おり、前記環状段差部の径方向における段差の寸法が、前記筒状部の前記本体部及び前記小径部の肉厚よりも大きい、ことを特徴とする。
いる、ことを特徴とする。
【0009】
この態様によれば、衝突等により、不所望な力が回転操作軸の操作部に作用して、操作部と軸受け部材の筒状部とが強く当たっても、筒状部は環状段差部によって衝撃を吸収することが可能となるので、回転体の回転動作に影響を及ぼしにくいものとすることができる。したがって、回転型電気部品の操作感触を良好に保つことができる。また、軸受け部材にケースを保持するための保持部が設けられているので、軸受け部をケースに一体化させる取付板の機能も兼ねることができ、部品点数を削減することが可能となる。
また、環状段差部の径方向における段差が、筒状部の本体部及び小径部の肉厚よりも大きいので、衝突等により、操作部と軸受け部材の筒状部とが強く当たっても、筒状部は環状段差部でより変形しやすく、衝撃を吸収することができる。したがって、環状段差部によって過剰な力を吸収できるため、回転体及び、その周囲の部材が塑性変形してしまうことを防ぐことができる。
【0012】
本発明の回転型電気部品において、前記筒状部の前記本体部は円筒状に形成されており、前記回転体を回転可能に保持している、ことを特徴とする。
【0013】
この態様によれば、筒状部の本体部が円筒状に形成されて、筒状部に摺接するように回転体を形成すれば、容易に回転可能に保持できるので、がたつきやひっかかりなく、スムーズな回転操作が可能である。
【0014】
本発明の回転型電気部品において、前記回転操作軸の前記軸部の後方側における端部に嵌着される駆動体を具備し、前記軸部の当該端部には、前記軸部の軸線方向と交差する外側に突出した突出部が設けられると共に、前記回転体には、前記軸部の軸線方向に貫通した中央貫通孔と、該中央貫通孔に連続して前記突出部を挿通可能な貫通凹部と、この貫通凹部とは前記軸部の回転中心に対して所定の角度を有すると共に当該突出部が挿通不能な規制部と、前記駆動体を軸線方向に移動可能な状態で当該駆動体と周方向において係合する係合部と、が設けられ、前記軸部及び前記突出部を前記回転体の前方側から前記中央貫通孔及び前記貫通凹部に挿通させて、前記軸部を所定の角度回転させた状態において、前記突出部が前記規制部の後方側に位置して当該規制部に対向配置されると共に前記駆動体が前記突出部に嵌着され、当該駆動体により前記回転体に対する前記軸部の回転が規制される、ことを特徴とする。
【0015】
この態様によれば、回転操作軸の端部には外側に突出した突出部が設けられ、突出部が挿通不能な規制部を抜け止めとする角度において駆動体が嵌着されているので、回転操作軸が操作されたときにも、軸部の前方側への抜け止めが確実である。そして、回転体に駆動体を軸線方向に移動可能な状態で駆動体と周方向において係合する係合部が設けられているので、回転操作軸が、前後方向には摺動可能であると共に、回転方向には回転体を回転させることができる。
【0016】
本発明の回転型電気部品において、前記回転操作軸の後方側への押圧操作に伴って駆動されるプッシュスイッチが前記駆動体の後方側に配設されており、前記軸部は、前記中央貫通孔に挿通される挿通部と、この挿通部と前記操作部との間に配置され前記挿通部の径よりも大きな形状に形成された中間部とを有すると共に、前記中間部の後方側には、前記中央貫通孔の周囲に位置する前記回転体の前面部と当接可能な当接部が設けられており、前記回転操作軸の後方側への移動によって、前記プッシュスイッチが駆動された後であって、前記操作部が前記軸受け部材の前記小径部に当接する前に、前記当接部が前記回転体の前面部と当接して、前記回転体が前記ケースと前記当接部との間に挟まれるように、前記当接部が前記回転体の前面部と離間した状態で対向配置されている、ことを特徴とする。
【0017】
この態様によれば、回転操作軸の後方側への押圧操作によって、プッシュスイッチが駆動され、さらに押圧されたときには、操作部が軸受け部材の小径部に当接する前に、軸部に設けられている当接部が回転体の前面部と当接して、回転体を介してケースによって支持される。これにより、回転体が配設された収容空間が確保されるので、回転体の回転動作に影響を及ぼしにくいものとすることができる。また、プッシュスイッチに必要以上の力が作用するのを防止することができるので、回転操作軸の後方側へ強い押圧力が加えられた場合でも、プッシュスイッチの機能が損なわれにくいものとすることが可能となる。
【0018】
本発明の回転型電気部品において、前記回転検出手段は、前記回転体の後方側の面に設けられた導電パターンと、前記ケースに設けられ前記導電パターンと摺接する摺動子とにより構成される、ことを特徴とする。
【0019】
この態様によれば、導電パターンと摺動子とによる簡単な構成で、回転体の回転動作を検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸受け部材の筒状部は環状段差部によって、回転操作軸に加えられる衝撃を吸収することが可能となるので、回転体の回転動作に影響を及ぼしにくいものとすることができる。また、軸受け部材にケースを保持するための保持部が設けられているので、部品点数を削減することが可能となる。したがって、操作感触を良好に保つことができると共に、部品点数を削減して、且つコストを抑えることのできる回転型電気部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下に第1実施形態における回転型電気部品1について説明する。
【0023】
図1は、第1実施形態の回転型電気部品1を示す斜視図である。
図2は、回転型電気部品1を示す斜視分解図である。
【0024】
図1に示すように、回転型電気部品1は、金属製の回転操作軸10と、回転操作軸10が挿通され、回転操作軸10を回転可能に軸支する軸受け部25を有する軸受け部材20と、軸受け部材20に一体化されるケース50と、を備えている。
【0025】
図2に示すように、ケース50と軸受け部材20との間には、板ばね35、回転体31、駆動体15、弾性部材18、及び可動接点部41が収納されている。また、ケース50には、金属部材によって形成された固定接点部42と摺動子45とが配設され、それぞれ端子部40に接続されている。弾性部材18と可動接点部41と固定接点部42とが、プッシュスイッチ4を構成している。
【0026】
以下の説明では、回転型電気部品1を操作する操作者側から見て、
図1及び
図2の回転操作軸10側(Z2側)を前方側、ケース50側(Z1側)を後方側と呼称する。なお、Y1側から見た図を正面図、Z2側から見た図を平面図、Z1側から見た図を底面図とする。
【0027】
可動接点部41は、ばね性を有する金属部材によって形成され、リング状の外周部と、外周部の内側に配置され外周部よりZ2側に突出する中央部と、からなる。可動接点部41の中央部と外周部とは金属部材を折り曲げた接続部で繋がっており、接続部は前後方向(Z1−Z2方向)に弾性変形可能になっている。
【0028】
図3は回転型電気部品1を示す側面図であり、
図4は
図3のIV−IV線で切断した模式断面図である。
図5は、回転操作軸10の軸部12の後方側の端部12aに駆動体15が嵌着された状態を示す模式図である。
図6は、回転体31を説明する模式図であり、
図6(a)は回転体31の平面図、
図6(b)は回転体31の正面図、
図6(c)は回転体31の底面図である。
【0029】
図2〜
図4に示すように、回転操作軸10は、軸受け部25の内径よりも大きな外形となるような形状(例えば、断面D字形状)に形成された操作部11と、軸受け部25に摺動可能な外径に設けられた軸部12と、を有している。操作部11は、操作者が操作するための操作つまみを取付可能とする取付部11bを有する形状に形成されている。軸部12は、回転体31に挿通可能な挿通部12cと、挿通部12cの径よりも大きな形状に形成された中間部12dとを有する。また、軸部12の端部12aは、円柱形状でなく、軸部12の軸線方向(Z1−Z2方向)と交差する外側に突出した突出部12bが設けられている。
【0030】
軸受け部材20は、金属板により形成されていると共に、ケース50に重ねられるようにケース50と対向する板状部21と、この板状部21から前方側に突出する筒状部22と、板状部21から後方側に突出してケース50を保持するための保持部23と、が設けられている。筒状部22には、環状段差部22bと、この環状段差部22bと板状部21との間に位置する本体部22aと、環状段差部22bの前方側に配置され本体部22aよりも径が小さい小径部22cと、が設けられている。環状段差部22bは、筒状部22の全周にわたって形成されている。環状段差部22bの径方向における段差の寸法(
図4に示す寸法L)が、筒状部22の本体部22a及び小径部22cの肉厚よりも大きい。具体的には、板状部21を形成する金属板の肉厚は0.4mmで、環状段差部22bの径方向における段差の寸法は1.2mmとしている。本体部22a及び小径部22cは、金属板を絞り加工することによって形成され、本体部22a及び小径部22cの肉厚は、板状部21の肉厚より薄くなっている。よって、環状段差部22bの段差の寸法が本体部22aの肉厚及び小径部22cの肉厚よりも大きくなっている。この小径部22cが軸受け部25を構成すると共に、小径部22cの先端22dが小径部22cの前方側に位置する操作部11の対向面11aと対向している。
【0031】
軸受け部材20は、ケース50を保持する保持部23を有している。この保持部23は、軸受け部材20とケース50とを一体化するためのものである。具体的には、後述するスペーサ51、ケース50、及び軸受け部材20の板状部21が重ね合わされた状態で、保持部23の先端に設けられた複数の係止片がスペーサ51の後方側の面側に折り曲げられることにより、ケース50とスペーサ51とが保持部23によって保持される。本実施形態と異なり、ケース50と対向する板状部21と、板状部21から前方側に突出する筒状部22とだけで構成された軸受け部材の場合には、ケース50とを一体化するための取付板を、別部材として必要とする。これに対し、本実施形態では、軸受け部材20が軸受け部25をケース50に一体化させるための取付板の機能も兼ねている。
【0032】
図4に示すように、回転体31は、前方側の板ばね35を介して板状部21に対向すると共に、後方側でケース50に配設された摺動子45に接するように構成される。一方、
図2に示すように、筒状部22は円筒状に形成されており、筒状部22に摺接するように回転体31の一部を形成することで、回転体31は回転可能に保持される。これにより、回転体31は板ばね35と摺動子45を備えたケース50とに挟持された位置で、がたつきやひっかかりなく、スムーズな回転が可能である。
【0033】
摺動子45は、ばね性を有する金属部材によって形成され、例えば、インサート成形によってケース50に配設されている。この場合、ケース50の後方側にはスペーサ51が配置され、ケース50と一体に保持部23によって保持される。これにより、インサート成形のためにケース50に形成されている孔を隠し、摺動子45が後方側に露出しないようにされて、摺動子45に対する不要な電気的不具合が防止されている。
【0034】
図4及び
図5に示すように、回転体31に挿通された回転操作軸10の軸部12の後方側における端部12aには、駆動体15が嵌着される。
図5に示すように、駆動体15の側面は、凹凸形状に形成されている。
【0035】
回転体31は、
図6(a)に示すように、平面視で円形の外径を有し、その中央に、軸部12の軸線方向に貫通した中央貫通孔31aが形成されている。中央貫通孔31aに連続して突出部12bを挿通可能な貫通凹部31bが設けられている。また、回転体31には、
図6(b)に示すように、筒状部22に摺接する摺接部31fが形成されている。さらに、
図6(c)に示すように、底面側には、駆動体15の凹凸形状に対応して、駆動体15を軸線方向に移動可能な状態で駆動体15と周方向において係合する係合部31cが形成されている。
【0036】
回転体31には、さらに、貫通凹部31bとは軸部12の回転中心に対して所定の角度(本実施形態では90度)を有すると共に突出部12bが挿通不能な規制部31dが設けられている。
図6(a)及び
図6(c)に示すように、中央貫通孔31a及び貫通凹部31bは、軸部12の端部12aの突出部12bが挿通可能であると共に、挿通後に90度回転させた状態で端部12aの突出部12bが駆動体15に嵌着されたときには、突出部12bの抜け止めとなるような形状である。すなわち、規制部31dは突出部12bの前方側に位置して両者が対向状態となっており、軸部12を前方側に引き抜こうとすると、突出部12bが規制部31dに当たるので、端部12aの抜け止めとなっている。
【0037】
また、軸部12は、中央貫通孔31aに挿通される挿通部12cと、この挿通部12cと操作部11との間に配置され挿通部12cの径よりも大きな形状に形成された中間部12dとを有する。それと共に、中間部12dの後方側には、中央貫通孔31aの周囲に位置する回転体31の前面部31eと当接可能な当接部12eが設けられている。このため、軸部12が中央貫通孔31aを前後方向に摺動可能な範囲は、挿通部12cの長さで規制される。
【0038】
これにより、回転操作軸10が前後方向に操作されたときには、回転操作軸10と駆動体15とが一体で、回転体31の係合部31cに沿って前後方向に摺動可能となっている。一方、回転操作軸10が回転方向に操作されたときには、駆動体15と回転体31とが一体で回転する。これにより、回転操作軸10が操作されたとき、前後方向(Z1−Z2方向)には摺動可能であると共に、回転方向には回転体31を回転させることができる。
【0039】
さらに、回転体31は、
図6(c)に示すように、円周方向に導電パターン32を有している。導電パターン32は、リング状の第1導電部32aと、円周方向に分割形成された第2導電部32bとからなる。第1導電部32aと第2導電部32bとは一体形成されているので、電気的に導通している。一方、円周方向に隣り合う第2導電部32b同士の間は絶縁部33であり、電気的に絶縁されている。第2導電部32bは、例えば、360度を15分割するように24度ピッチに設けられている。
【0040】
ケース50には、回転体31に摺接する複数の摺動子45が配設されている。
図4に示すように、複数の摺動子45が、導電パターン32に摺接可能な位置に配置されることにより、回転検出手段30を構成している。第1導電部32aは、第1導電部32aに摺接する摺動子45と常時接している状態にある。一方、第2導電部32bは、回転体31の回転によって、第2導電部32bに摺接する摺動子45との接離が行われる。このため、回転体31の回転によって、第1導電部32aに摺接する摺動子45と、第2導電部32bに摺接する摺動子45と、の間が電気的に導通又は非導通の状態を繰り返すことになるので、回転検出手段30は回転角度に応じたパルス信号を発生可能である。すなわち、回転型電気部品1は、パルススイッチとして動作し、回転を検出することができる。
【0041】
なお、
図6(a)に示す回転体31の前方側には、板ばね35が当接する円周位置に凹凸が形成されている。このため、回転体31が回転すると、操作感触が得られるようになっている。
【0042】
また、
図4に示すように、駆動体15は弾性部材18に当接している。弾性部材18は、例えば、ゴムラバーが成形されたものであり、前後方向(Z1−Z2方向)に弾性変形可能に設けられている。操作部11を押圧操作していない状態では、弾性部材18の付勢力によって、可動接点部41と固定接点部42とが離れた状態にある。
【0043】
図7〜
図9は、
図4の模式断面図において、回転操作軸10がZ1方向に押圧された状態を示す模式図である。
図7は、回転操作軸10に通常の押圧力が加わった状態であり、
図8は、回転操作軸10に過剰の押圧力が加わった状態である。
図9は、
図8のA部において、さらに強い衝撃を環状段差部22bによって吸収した状態である。
【0044】
図7に示すように、通常の押圧操作によって、回転体31の係合部31cに沿って駆動体15がZ1方向に摺動し、弾性部材18が弾性変形する。これにより、弾性部材18が可動接点部41を弾性変形させて、固定接点部42に可動接点部41が当接する。これにより、回転型電気部品1は、プッシュスイッチ4として機能する。回転体31がケース50と当接部12eとの間に挟まれるように、当接部12eが回転体31の前面部31eと離間した状態で対向配置されている。回転体31は板ばね35とケース50とに挟持されており、この駆動体15の摺動動作は、回転体31にはほとんど伝わらないので、回転体31の回転動作に影響を及ぼすことはない。
【0045】
回転操作軸10に過剰の押圧力が加わった場合、
図8に示すように、駆動体15がさらにZ1方向に摺動する。このとき、弾性部材18がストッパーとして機能すると共に、回転体31の中央貫通孔31aより外形が大きい軸部12の中間部12dの後方側に設けられている当接部12eが、回転体31の前面部31eに当接し、さらに、回転体31の後方側のZ1側外周部がケース50に当接するストッパーとして機能する。また、
図8の状態より強く押圧されたときには、回転操作軸10の操作部11の対向面11aが、軸受け部材20の筒状部22の小径部22cの先端22dに当接するように形成されている。このため、回転操作軸10に加わった過剰の押圧力を各所で分散して受け止めることができ、回転型電気部品1の正常動作が損なわれないように保たれる。
【0046】
また、衝突等により、不所望な力が回転操作軸10の操作部11に作用して、操作部11と軸受け部材20の小径部22cの先端22dとが強く当たっても、
図9に示すように、筒状部22は環状段差部22bで変形して、環状段差部22bによって衝撃を吸収することが可能となる。筒状部22に設けられた環状段差部22bが変形可能であり、環状段差部22bによって過剰な力を吸収できるため、筒状部22の根元に位置する板状部21及び、その周囲の回転体31等の部材が塑性変形してしまうことを防ぐことができる。
【0047】
なお、押圧力を吸収できる本実施形態の回転型電気部品1とは異なり、回転操作軸10に加わった過剰の押圧力を軸受け部材20だけで受ける場合には、その変形を防止できる板厚に形成することが必要になる。しかしながら、板状部21と筒状部22とを一体で形成するためには、切削加工またはダイキャスト加工でなければ実現困難である。これらの加工方法を用いると、コスト高になってしまっていた。さらに、ケース50を保持する保持部23が必要であるが、切削加工またはダイキャスト加工で一体加工することが困難であり、取付板等の別部材を用意しなければならない。このため、部品点数が多く、組み立て工数も多くなってしまう。
【0048】
本実施形態の回転型電気部品1では、板厚の薄い金属板を用いて、しぼり加工によって板状部21と筒状部22とを一体で形成している。しぼり加工によって板状部21と筒状部22とを一体で形成可能な板厚の軸受け部材20であっても、筒状部22は環状段差部22bによって衝撃を吸収することが可能である。したがって、回転操作軸10が過剰の押圧力を受けても、内部の回転体31の回転に影響を及ぼしにくくすることができるので、正常な状態での回転型電気部品1の操作感触を良好に保つことができる。また、ケース50を保持する保持部23を板状部21と筒状部22とを一体で形成しているので、回転型電気部品1の部品点数を削減して、且つコストを抑えることができる。
【0049】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0050】
本実施形態の回転型電気部品1において、回転操作軸10の操作部11は、軸受け部25の前方側に配設されると共に軸受け部25の内径よりも大きな形状に形成され、軸部12は、軸受け部材20の前方側から軸受け部25に挿通されている。軸受け部材20は、金属板により形成されると共に、ケース50と重ねられるように対向する板状部21と、この板状部21から前方側に突出する筒状部22と、板状部21から後方側に突出しケース50を保持するための保持部23と、を有している。そして、筒状部22には、環状段差部22bと、この環状段差部22bと板状部21との間に位置する本体部22aと、環状段差部22bの前方側に配置され本体部22aよりも径が小さい小径部22cと、が設けられている。この小径部22cが、軸受け部25を構成すると共に、小径部22cの先端22dが小径部22cの前方側に位置する操作部11と対向している。
【0051】
この態様によれば、衝突等により、不所望な力が回転操作軸10の操作部11に作用して、操作部11と軸受け部材20の筒状部22とが強く当たっても、筒状部22は環状段差部22bによって衝撃を吸収することが可能となるので、回転体31の回転動作に影響を及ぼしにくいものとすることができる。したがって、回転型電気部品1の操作感触を良好に保つことができる。また、軸受け部材20にケース50を保持するための保持部23が設けられているので、軸受け部25をケース50に一体化させる取付板の機能も兼ねることができ、部品点数を削減することが可能となる。
【0052】
本実施形態の回転型電気部品1において、環状段差部22bの径方向における段差の寸法が、筒状部22の本体部22a及び小径部22cの肉厚よりも大きいことが好適である。こうすれば、環状段差部22bの径方向における段差が、筒状部22の本体部22a及び小径部22cの肉厚よりも大きいので、衝突等により、操作部11と軸受け部材20の筒状部22とが強く当たっても、筒状部22は環状段差部22bでより変形しやすく、衝撃を吸収することができる。したがって、環状段差部22bによって過剰な力を吸収できるため、板状部21及び、その周囲に位置する回転体31等の部材が塑性変形してしまうことを防ぐことができる。
【0053】
本実施形態の回転型電気部品1において、筒状部22の本体部22aは円筒状に形成されており、回転体31を回転可能に保持していることが好ましい。こうすれば、筒状部22の本体部22aが円筒状に形成されて、筒状部22に摺接するように回転体31を形成すれば、容易に回転可能に保持できるので、がたつきやひっかかりなく、スムーズな回転操作が可能である。
【0054】
本実施形態の回転型電気部品1は、回転操作軸10の軸部12の後方側における端部12aに嵌着される駆動体15を具備し、軸部12の端部12aには、軸部12の軸線方向と交差する外側に突出した突出部12bが設けられる。それと共に、回転体31には、軸部12の軸線方向に貫通した中央貫通孔31aと、中央貫通孔31aに連続して突出部12bを挿通可能な貫通凹部31bと、が設けられている。回転体31には、さらに、この貫通凹部31bとは軸部12の回転中心に対して所定の角度を有すると共に突出部12bが挿通不能な規制部31dと、駆動体15を軸線方向に移動可能な状態で駆動体15と周方向において係合する係合部31cと、が設けられている。そして、軸部12及び突出部12bを回転体31の前方側から中央貫通孔31a及び貫通凹部31bに挿通させて、軸部12を所定の角度回転させた状態において、突出部12bが規制部31dの後方側に位置して規制部31dに対向配置されると共に駆動体15が突出部12bに嵌着され、駆動体15により回転体31に対する軸部12の回転が規制される。この態様によれば、回転操作軸10の軸部12の端部12aには外側に突出した突出部12bが設けられ、突出部12bが挿通不能な規制部31dを抜け止めとする角度において駆動体15が嵌着されているので、回転操作軸10が操作されたときにも、軸部12の前方側への抜け止めが確実である。そして、回転体31に駆動体15を軸線方向に移動可能な状態で駆動体15と周方向において係合する係合部31cが設けられているので、回転操作軸10が、前後方向には摺動可能であると共に、回転方向には回転体31を回転させることができる。
【0055】
本実施形態の回転型電気部品1は、回転操作軸10の後方側への押圧操作に伴って駆動されるプッシュスイッチ4が駆動体15の後方側に配設されている。そして、軸部12は、中央貫通孔31aに挿通される挿通部12cと、この挿通部12cと操作部11との間に配置され挿通部12cの径よりも大きな形状に形成された中間部12dとを有すると共に、中間部12dの後方側には、中央貫通孔31aの周囲に位置する回転体31の前面部31eと当接可能な当接部12eが設けられている。さらに、回転操作軸10の後方側への移動によって、プッシュスイッチ4が駆動された後であって、操作部11が軸受け部材20の小径部22cに当接する前に、当接部12eが回転体31の前面部31eと当接して、回転体31がケース50と当接部12eとの間に挟まれるように、当接部12eが回転体31の前面部31eと離間した状態で対向配置されている。この態様によれば、回転操作軸10の後方側への押圧操作によって、プッシュスイッチ4が駆動され、さらに押圧されたときには、操作部11が軸受け部材20の小径部22cに当接する前に、軸部12に設けられている当接部12eが回転体31の前面部31eと当接して、回転体31を介してケース50によって支持される。これにより、回転体31が配設された収容空間が確保されるので、回転体31の回転動作に影響を及ぼしにくいものとすることができる。また、プッシュスイッチ4に必要以上の力が作用するのを防止することができるので、回転操作軸10の後方側へ強い押圧力が加えられた場合でも、プッシュスイッチ4の機能が損なわれにくいものとすることが可能となる。
【0056】
本実施形態の回転型電気部品1において、回転検出手段30は、回転体31の後方側の面に設けられた導電パターン32と、ケース50に設けられ導電パターン32と摺接する摺動子45とにより構成されている。この態様によれば、導電パターン32と摺動子45とによる簡単な構成で、回転体31の回転動作を検出することができる。
【0057】
以上のように、本発明の実施形態に係る回転型電気部品1を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0058】
(1)本実施形態において、回転体31は外形が円形であることに限定されない。例えば、分割形成された第2導電部32bの外周に沿った多角形に形成されていてもよい。この場合でも、筒状部22に摺接するように回転させることが可能である。
【0059】
(2)本実施形態では、プッシュスイッチ4を、弾性部材18が可動接点部41を弾性変形させて、固定接点部42に可動接点部41が当接する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ドーム形状の金属板を可動接点に用いて、駆動体15の後方側にドーム形状の金属板が当接する構成としてもよい。
【0060】
(3)本実施形態では、プッシュスイッチ4を有する回転型電気部品1を説明したが、プッシュスイッチを有していない回転型電気部品であってもよい。例えば、プッシュスイッチを内蔵していない回転型電気部品は、操作部を押圧操作する必要がないが、回転型電気部品を電子機器に装着して操作つまみを取付部に取り付ける際に、回転操作軸が強く押し込まれる虞があった。また、自動車等に搭載される電子機器の使用中に、誤って強い衝撃が加わる虞がある。したがって、プッシュスイッチを内蔵していない回転型電気部品であっても、回転動作に影響を及ぼしにくいものとすることは効果的である。