(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のバイス(38)は、前記長手方向の原点位置から離れた位置に設けられた複数の固定バイス(38)を備え、前記制御部は、前記形材(W2)の長さに応じて前記複数の固定バイス(38)のうち、前記形材(W2)の前記一端に近い1つを前記メイン固定バイス(38(3)〜(6))として前記制御を行う請求項1記載の形材加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の加工装置の場合、複数のクランプユニットのうち、両端のクランプユニットが原則として固定であり、その間の複数の可働クランプユニットが間隔調整装置により移動可能に設けられているもので、被加工物を両端のクランプユニットで固定することを前提としている。従って、被加工物の長さの大きく変わる場合には、そのままでは対応できないものである。被加工物の長さが大きく変わる場合には、別途設けられた支持長さ調節機構により、固定クランプユニットの一方の位置を動かして、調節しているものであり、被加工物の長さの変化に対応するための構造が複雑であり、自動化するための制御プログラムも複雑化するものである。
【0006】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、様々な長さの形材を常に安定に保持できるシンプルな構造の形材保持部を備えた形材加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定長さに切断された形材を加工する形材加工装置であって、搬入された前記形材を所定位置に保持する形材保持部と、前記形材保持部に保持された前記形材を工具で切削加工する加工ヘッドと、前記形材保持部及び前記加工ヘッドの動作を制御する制御部とで構成された切削加工部を備え、前記形材保持部には、搬入された前記形材の長手方向の一端を前記長手方向の所定の原点に向かって押圧するプッシャと、前記プッシャに押圧された前記形材の他端が当接して位置決めされる可動式のストッパと、前記長手方向の複数の位置に配設され、前記ストッパ及びプッシャにより位置決めされた前記形材の側部をそれぞれクランプする複数のバイスとが設けられ、前記複数のバイスは、前記長手方向の原点位置から各々離れた位置に設けられ、前記押形材の長手方向の一端部をクランプするメイン固定バイスと、前記原点位置と前記第一固定バイスとの間に設けられ、前記形材の長手方向の他端部をクランプするメイン可動バイスとを有し、前記制御部は、前記形材保持部に前記形材を保持させる際に、前記メイン固定バイスと前記メイン可動バイスから各々外側に突出する前記形材の各突出長が第一基準長以下になるように、前記ストッパの位置と前記メイン可動バイスの位置を原点位置から前記長手方向に平行に移動する形材加工装置である。
【0008】
前記複数のバイスは、前記長手方向の原点位置から離れた位置に設けられた複数の固定バイスを備え、前記制御部は、前記形材の長さに応じて前記複数の固定バイスのうち、前記形材の前記一端に近い1つを前記メイン固定バイスとして前記制御を行うものである。
【0009】
前記複数のバイスは、前記メイン固定バイスと前記メイン可動バイスとの間に設けられた補助バイスを有し、前記メイン固定バイス、前記補助バイス及び前記メイン可動バイスが、前記長手方向に第二基準長以下の間隔を空けて順に配置され、それぞれ前記形材の側部をクランプするものである。
【0010】
前記メイン可動バイスに隣接する補助バイスは可動式であり、前記形材の長さが前記原点位置から前記メイン固定バイスまでの距離よりも短い場合、前記制御部は、前記形材保持部に前記形材を保持させる際に、前記メイン可動バイスを、前記長手方向の前記原点位置付近に配置したまま、前記メイン可動バイス及び前記補助バイスから外側に突出する前記形材の長さが前記第一基準長以下になるように、前記ストッパの位置を制御して前記形材の位置決めを行い、かつ前記補助バイスと前記メイン可動バイスとの間隔が前記第二基準長以下になるように前記補助バイスの位置を制御し、前記形材が前記メイン可動バイス及び前記補助バイスによって保持されるものである。
【0011】
またこの発明は、原点位置から前記長手方向に平行に移動所定長さに切断された形材を加工する形材加工装置であって、搬入された前記形材を所定位置に保持する形材保持部と、前記形材保持部に保持された前記形材を工具で切削加工する加工ヘッドと、前記形材保持部及び前記加工ヘッドの動作を制御する制御部とで構成された切削加工部を備え、前記形材保持部には、搬入された前記形材の長手方向の一端を前記長手方向の所定の原点に向かって押圧するプッシャと、前記プッシャに押圧された前記形材の他端が当接して位置決めされる可動式のストッパと、前記長手方向の複数の位置に配設され、前記ストッパ及びプッシャにより位置決めされた前記形材をそれぞれクランプする複数のバイスとが設けられ、前記複数のバイスは、前記長手方向の原点位置から各々離れた位置に設けられ、前記形材の長手方向の一端部をクランプするメインバイスと、前記メインバイスに隣接して設けられ、前記形材の長手方向の他端部をクランプする可動式の補助バイスとを有し、前記制御部は、前記形材保持部に前記形材を保持させる際に、前記メインバイスを、前記長手方向の前記原点位置付近に配置したまま、前記メインバイス及び前記補助バイスから外側に突出する前記形材の長さが前記第一基準長以下になるように、前記ストッパの位置を原点位置から前記長手方向に平行に移動して前記形材の位置決めを行い、かつ前記補助バイスと前記メインバイスとの間隔が第二基準長以下になるように前記補助バイスの位置を制御し、前記形材が前記メインバイス及び前記補助バイスによって保持されるようにした形材加工装置である、
【発明の効果】
【0012】
本発明の形材加工装置によれば、複数のバイスを有する形材保持部により、様々な長さの形材を安定に保持することができ、切削加工を常に精度よく行うことができる。特に、形材は、多数のバイス位置を動かすことなく、最小限のバイス位置の調整で、あらかじめ規定された所定のルールに従って自動的に保持されるので、作業者の熟練度に関係なく、確実に一定の安定度を得ることができる。また、複数のバイスのうち、固定バイスの数を多くして、可動バイスの数を少なくすることができるので、形材保持部全体の構造がシンプルになると共に、可動バイス及びストッパの位置を制御するための制御プログラムも簡単化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の形材加工装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の形材加工装置10は、所定長さに切断された形材W1に対して、プレス加工と切削加工を行うための装置であり、
図1、
図2に示すように、形材搬入装置12、プレス加工部14、自動移送装置16、切削加工部18、及び図示しない形材搬出装置を備えている。
【0015】
形材W1は、例えばアルミニウムを押出成形して寸法切りした長尺材であり、
図3に示すように、平坦な本体板1と、本体板1の4箇所に延設された突条部2a〜2dとを有している。例えばサッシ等の建材用であれば、押し出し成形後の加工により、長手方向の長さLは300〜3000mm程度に切断されている。
【0016】
形材搬入装置12は、
図1、
図2に示すように、搬入された加工前の形材W1をY方向(形材W1の長手方向と直角の方向)に移送するローダ20と、ローダ20の出力端で形材W1を受け、後段のプレス加工部14に向けてX方向(形材W1の長手方向、またはその長手方向に平行に延びる方向)に移送する第一コンベア22とで構成されている。
【0017】
プレス加工部14は、X方向に並設された複数のプレスユニット24を有し、プレスユニット24毎に異なる金型24a(パンチ、ダイ等)が取り付けられ、各種のプレス加工を行うことができる。ここでは、
図4のプレス加工後の形材W2に示すように、突条部2cの複数箇所に大径の穴B1を開ける穴あけ加工、突条部2cの両端の部分B2を切除する切り取り加工、突条部2aの両端と中央寄りの部分B3を切除する切り取り加工、突条部2bの両端と中央寄りの部分B4を切除する突条切り加工等を行う。形材W1は、
図1のX方向における左側から右側に向けて通過しながらプレス加工が行われるため、中央寄りの部分B4を切除する突条切り加工用の金型24aを使用して、複数回のプレス加工により、その切除する部分の大きさを増加することもできる。これにより、準備する金型24aの個数を減少することもできる。
【0018】
自動移送機16は、プレス加工部14で加工された形材W2をX方向に移送する第二コンベア26と、形材W2を後段の切削加工部18に向けてX方向に移送する第三コンベア28と、形材W2を第二コンベア26から第三コンベア28に載せ替える図示しない移載機とで構成されている。第三コンベア28は、図示しないローラとこのローラを所定の位置に昇降自在に支持したシリンダとを備えている。第二コンベア26上の形材W2は、プレス加工をしやすいように載置されているので、移載機は、形材W2を第三コンベア28に載せ替えるときに、後段の切削加工部18で加工をしやすいように載置する。例えば、形材W2の上面と下面とを反転させる。つまり、形材W1および第二コンベア26上の形材W2は、突条部2aが下面側を向いており、第二コンベア26から第三コンベア28に載せ替える際に、突条部2aが上面側を向くようにする。これは、プレス加工部14での加工は、突条部2aが下面側であるほうが加工を行いやすいからである。自動移送機16で反転させるのは、その後の切削加工部18での加工が行いやすい点と、切削加工部18までの搬送が行いやすいからである。
【0019】
切削加工部18は、
図5に示すように、形材W2を所定位置に保持する形材保持部30と、レール32a上に移動自在に取り付けられ、形材保持部30に保持された形材W2を切削加工する加工ヘッド32と、形材保持部30及び加工ヘッド32の動作を制御する図示しない制御部とで構成される。切削加工部18は、加工ヘッド32に取り付けられた各種工具を使用して、数値制御による精密な切削加工を行う。ここでは、
図6の切削加工後の形材W3に示すように、突条部2cの穴(プレス加工で形成された円筒状の穴B1)の内壁C1を円錐状にするサラモミ加工、本体板1の複数箇所に小径の穴C2を開ける穴あけ加工等を行う。また、プレス加工部14にて切除した箇所にて、さらにその一部を切削加工することもできる。
【0020】
形材保持部30は、第三コンベア28から搬入された形材W2をX方向に位置決めするためのストッパ34、及びプッシャ36と、位置決めされた形材W2を保持する6組のバイス38を備えている。形材保持部30には、
図7に示すように、形材W2を長手方向に移動自在に支持した昇降自在の複数対のローラ40が、形材W2の送り方向に設けられている。ローラ40は、各々シリンダ42により、形材W2の太さや断面形状に合わせて、所定の高さに設定可能に設けられている。
【0021】
プッシャ36は、制御部の指令により形材W2の長手方向の一端をストッパ34に向けてX方向に押圧する部材である。プッシャ36は、一例ではあるが、加工ヘッド32に取り付けておくことができる。このようにすることで、長手方向への押圧のための形材W2の端部までの移動が、加工ヘッド32の動力で行えるため、コストの削減が可能である。なお、加工ヘッド32の動力にてストッパ34への押圧を行うこともできるが、その場合には、加工ヘッド32の制御が煩雑になってしまうため、形材W2の端部からストッパ34方向に向けて、図示しないエアシリンダによって駆動するようにするとよい。また、プッシャ36は、そのエアシリンダとは別のエアシリンダにて、形材W2のY方向に退避した位置から、形材W2の延長線上に位置させる。ストッパ34は、制御部の指令によりX方向に可動し、プッシャ36に押圧された形材W2の他端を位置決めする部材である。6組のバイス38は、X方向に所定の間隔を空けて配設され、制御部の指令により、ストッパ34及びプッシャ36が位置決めした形材W2の側部をそれぞれクランプするユニットである。以下、各バイスは、第三コンベア28に近い側から順番に38(1),38(2),38(3),38(4),38(5),38(6)の符号を付して区別して説明する。
【0022】
バイス38(1),38(2)は、制御部の指令によりX方向の位置が可動する可動バイスであり、バイス38(3)〜38(6)は、X方向の位置が固定されている固定バイスである。固定バイス38(3)〜38(6)が互いに隣り合う間隔g0は、後述する第二基準長Lk2以下である。また、可動バイス38(2)のX方向の可動範囲は、固定バイス38(3)から第二基準長Lk2以上離れない範囲である。可動バイス38(1)のX方向の可動範囲は、可動バイス38(2)から第二基準長Lk2以上離れない範囲である。ストッパ34のX方向の可動範囲は、可動バイス38(1)から後述する第一基準長Lk1以上離れない範囲である。
図8は、ストッパ34、プッシャ36及びバイス38(1)〜バイス38(6)が退避した状態を示しており、
図9は、ストッパ34及びプッシャ36によって位置決めされた形材W2をバイス38(1)〜バイス38(6)が保持している状態を示している。
【0023】
ここで、第一及び第二基準長Lk1,Lk2について説明する。第一基準長Lk1は、形材W2を固定した場合において、固定位置から延出した片持ち梁状の部分であって、その部分の形材W2を所望の精度で加工可能な最大長さである。片持ち梁状の部分の長さが第一基準長Lk1以下であれば、切削加工時の形材W2の振動や変位が小さく抑えられ、加工を高精度に行うことができる。また、第二基準長Lk2は、形材W2が両端固定された場合に、その形材W2を所望の精度で加工可能な最大長さである。両端固定された間の長さが第二基準長Lk2以下であれば、切削加工時の形材W2の振動や変位が小さく抑えられ、加工を高精度に行うことができる。この第一及び第二基準長Lk1,Lk2は制御部に記憶されている。
【0024】
次に、切削加工部18の詳細な動作について、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
まず、制御部が被加工物である形材W2の長さLを把握する(ステップS11)。長さLの情報を取得する方法は、形材搬入装置12から自動搬送機16へ形材W1を搬送する図示しない搬送装置により、形材W1の長さを容易に検出することができる。その他、作業者が長さLの中央値をコンピュータ入力してもよいし、バーコードなどを読み取ることで入力してもよく、形材W2が搬入される毎にセンサ等で測定してもよい。
【0026】
次に、制御部が、形材W2の長さLに応じて、ストッパ34が形材W2を係止するX位置と、可動バイス38(1),38(2)が形材W2を保持するX位置とをそれぞれ決定する(ステップS12)。そして、制御部の指令により、
図8の退避位置にあるストッパ34、可動バイス38(1),38(2)が、ステップS12で決定されたX位置に移動する(ステップS13)。このとき、ストッパ34の高さ位置(Z位置)は、退避状態と同様に各バイス38よりも十分低い位置である。プッシャ36の高さ位置(Z位置)は形材W2の高さと同じであるが、Y方向に退避して形材W2から離れている。
【0027】
次に、形材W2が形材保持部30の各バイス38の高さの所定位置まで搬入され(ステップS14)、ストッパ34が形材W2の高さに上昇し、プッシャ36がY方向に移動して形材W2の延長線上に移動し、プッシャ36が形材W2の一端を押圧し、他端をストッパ34に当接せることにより、形材W2が位置決めされる(ステップS15)。
【0028】
形材W2が位置決めされると、各バイス38がY方向に駆動され、形材W2の側面を両側から挟むようにクランプする(ステップS16)。そして、ストッパ34とプッシャ36が退避位置に移動(ステップS17)した後、加工ヘッド38が形材W2に対して各種の切削加工を行う(ステップS18)。
【0029】
ステップS18が終了すると、各バイス38によるクランプを解除し、形材搬出装置により、加工された形材W3を切削加工部18から搬出する(ステップS19)。そして、各バイス38が退避位置に移動し(ステップS20)、切削加工の1サイクルが終了する。
【0030】
次に、上記のステップS12で決定されるストッパ34及び可動バイス38(1),38(2)のX位置、及び固定バイス38(3)〜38(6)のX位置の関係について、
図11と
図12に基づいて、詳しく説明する。
【0031】
まず、退避状態においては、
図11に示すように、ストッパ34は、係止面34aがX方向の原点位置になる(e0=0)ように配置され、可動バイス38(1)は、ストッパ34側の側面が係止面34aから距離h0だけ離れるように配置される。h0は、第一基準長Lk1以下の値である。固定バイス38(3)は、ストッパ34側の側面が原点から距離f0だけ離れた位置に固定され、可動バイス38(2)は、可動バイス38(1)と固定バイス38(3)の間の所定位置に配置される。その他の固定バイス38(4),38(5),38(6)は、上記のように、一定の距離g0を空けて順番に固定されている。各バイス38のクランプ幅(X方向の長さ)は、d0で一定である。プッシャ36は、最端の固定バイス38(6)よりも外側の十分離れた位置に配置される。
【0032】
ステップS12で決定されるストッパ34及び可動バイス38(1),38(2)のX位置は、被加工物である形材W2の長さLによって異なる。
【0033】
図11の保持状態1は、長さLが非常に長い場合を表している(L=L1)。ここでは、固定バイス38(6)がメイン固定バイスとして働き、可動バイス38(1)がメイン可動バイスとして働き、可動バイス38(2)と固定バイス38(3)〜38(5)とが補助バイスとして働く。
【0034】
制御部は、形材W2の長さLに基づいて、まずストッパ34のX位置を決定する。具体的には、形材W2を保持した状態で、形材W2のプッシャ36側の一端がメイン固定バイス38(6)の外側に所定長さk1だけ突出するように、原点からストッパ34の係止面34aまでの距離e1を決定する。k1は、第一基準長Lk1以下の値である。つまり、この形材W2の長さL1にて、ストッパ34のX位置が移動しない場合には、形材W2の端部が固定バイス38(6)まで届かず、固定バイス38(5)がメイン固定バイスになるが、このときのメイン固定バイス38(5)の外側に突出する長さは第一基準長Lk1以上となってしまうため、原点からストッパ34を移動することになる。ストッパ34のX位置が決まると、メイン可動バイス38(1)のX位置を決定する。具体的には、形材W2のストッパ34側の一端がメイン可動バイス38(1)の外側に所定長さh1だけ突出するように、ストッパ34の係止面34aからメイン可動バイス38(1)までの距離h1を決定する。h1は、第一基準長Lk1以下の値であり、上記のh0と同じ値でもよい。メイン可動バイス38(1)のX位置が決まると、補助バイス38(2)のX位置を決定する。具体的には、補助バイス38(2)がメイン可動バイス38(1)と補助バイス38(3)との間の中央に配置されるように、メイン可動バイス38(1)との間隔j1、補助バイス38(3)との間隔j1を決定する。j1は、第二基準長Lk2以下の値である。
【0035】
保持状態1では、
図11に示すように、形材W2は、一端部がメイン固定バイス38(6)の外側に長さk1だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)の外側に長さh1だけ突出して保持される。片持ち梁状体の2つの突出部分は、それぞれの長さが第一基準長Lk1以下なので、しっかりと保持される。また、形材W2の突出部分以外の内側部分は、メイン固定バイス38(6)とメイン可動バイス38(1)、及び補助バイス38(2)〜38(5)によって、間隔j1または間隔g0を空けて保持される。両端固定された5つの部分は、それぞれの長さが第二基準長Lk2以下なので、それぞれがしっかりと保持される。なお、補助バイス38(2)をメイン可動バイス38(1)と補助バイス38(3)の中央に配置しない場合でも、広い方の間隔が第二基準長Lk2以下であれば、同様の効果を得ることができる。
【0036】
ここで、制御部は、可動バイス38(1)とストッパ34の係止面34aからの距離h0、固定バイス38(3)と原点からの距離f0、隣合う固定バイス38(4),38(5),38(6)同士の一定の距離g0、各バイス38のクランプ幅(X方向の長さ)のd0を記憶している。このため、制御部はストッパ34の位置とメイン可動バイス38(1)の位置を制御するには、制御部に記憶された上記の情報と、加工を行う形材W2の情報とをもとに算出を行い、その結果から、メイン固定バイス38(6)を決定し、そのメイン固定バイス38(6)からの突出寸法が第一基準長Lk1以下になるようにストッパ34とメイン可動バイス38(1)とを移動制御している。
【0037】
図11の保持状態2は、形材W2の長さLが、上記の保持状態1を実現できない程度に短い場合を表している(L=L2<L1)。ここでは、固定バイス38(5)がメイン固定バイスとして働き、可動バイス38(1)がメイン可動バイスとして働き、可動バイス38(2)と固定バイス38(3),38(4)が補助バイスとして働く。固定バイス38(6)は、実質的に機能しない。
【0038】
制御部は、形材W2の長さLに基づいて、まずストッパ34のX位置を決定する。具体的には、形材W2を保持した状態で、形材W2のプッシャ36側の一端がメイン固定バイス38(5)の外側に所定長さk2だけ突出するように、原点からストッパ34の係止面34aまでの距離e2を決定する。k2は第一基準長Lk1以下の値であり、上記のk1と同じ値でもよい。ストッパ34のX位置が決まると、メイン可動バイス38(1)のX位置を決定する。具体的には、形材W2のストッパ34側の一端がメイン可動バイス38(1)の外側に所定長さh2だけ突出するように、ストッパ34の係止面34aからメイン可動バイス38(1)までの距離h2を決定する。h2は第一基準長Lk1以下の値であり、上記のh0と同じ値でもよい。そして、メイン可動バイス38(1)のX位置が決まると、補助バイス38(2)のX位置を決定する。具体的には、補助バイス38(2)がメイン可動バイス38(1)と補助バイス38(3)との間の中央に配置されるように、メイン可動バイス38(1)との間隔j2、補助バイス38(3)との間隔j2を決定する。J2は、第二基準長Lk2以下の値である。
【0039】
保持状態2では、形材W2は、一端部がメイン固定バイス38(5)の外側に長さk2だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)の外側に長さh2だけ突出して保持される。片持ち梁状態の2つの突出部分は、それぞれの長さが第一基準長Lk1以下なので、それぞれしっかりと保持される。また、形材W2の突出部分以外の内側部分は、メイン固定バイス38(5)とメイン可動バイス38(1)、及び補助バイス38(2)〜38(4)によって、間隔j2または間隔g0を空けて保持される。両端固定された4つの部分は、それぞれの長さが第二基準長Lk2以下なので、しっかりと保持される。
【0040】
図11の保持状態3は、形材W2の長さLが、上記の保持状態2を実現できない程度に短い場合を表している(L=L3<L2)。ここでは、固定バイス38(4)がメイン固定バイスとして働き、可動バイス38(1)がメイン可動バイスとして働き、可動バイス38(2)と固定バイス38(3)とが補助バイスとして働く。固定バイス38(5),38(6)は、実質的に機能しない。制御部がストッパ34、メイン可動バイス38(1)及び補助バイス38(2)のX位置が決定する流れは上記と同様である。
【0041】
保持状態3では、形材W2は、一端部がメイン固定バイス38(4)の外側に長さk3(=k1)だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)の外側に長さh3(=h0)だけ突出して保持される。片持ち梁状態の2つの突出部分は、それぞれの長さが第一基準長Lk1以下なので、それぞれしっかりと保持される。また、形材W2の突出部分以外の内側部分は、メイン固定バイス38(4)とメイン可動バイス38(1)、及び補助バイス38(2),38(3)によって、間隔j3または間隔g0を空けて保持される。両端固定された3つの部分は、それぞれの長さが第二基準長Lk2以下なので、しっかりと保持される。
【0042】
図12の保持状態4は、形材W2の長さLが、上記の保持状態3を実現できない程度に短い場合を表している(L=L4<L3)。ここでは、固定バイス38(3)がメイン固定バイスとして働き、可動バイス38(1)がメイン可動バイスとして働き、可動バイス38(2)が補助バイスとして働く。固定バイス38(4),38(5),38(6)は、実質的に機能しない。制御部がストッパ34、メイン可動バイス38(1)及び補助バイス38(2)のX位置を決定する流れは上記と同様である。
【0043】
保持状態4では、形材W2は、一端部がメイン固定バイス38(3)の外側に長さk4(=k1)だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)の外側に長さh4(=h0)だけ突出して保持される。片持ち梁状態の2つの突出部分は、それぞれの長さが第一基準長Lk1以下なので、しっかりと保持される。また、形材W2の突出部分以外の内側部分は、メイン固定バイス38(3)とメイン可動バイス38(1)、及び補助バイス38(2)によって、間隔j4を空けて保持される。両端固定された2つの部分は、それぞれの長さが第二基準長Lk2以下なので、しっかりと保持される。
【0044】
図12の保持状態5は、形材W2の長さLが、上記の保持状態4を実現できない程度に短い場合を表している(L=L5<L4)。ここでは、メイン可動バイス38(1)と可動バイス38(2)の2つで形材W2を保持し、その他のバイス38(3)〜38(6)は実質的に機能しない。
【0045】
制御部は、形材W2の長さLに基づき、メイン可動バイス38(1)とストッパ34のX位置を退避位置に維持する(e5=0、h5=h0)こととし、可動バイス38(2)のX位置を決定する。具体的には、形材W2を保持した状態で、形材W2のプッシャ36側の一端が可動バイス38(2)の外側に所定長さk5(=k1)だけ突出するように、メイン可動バイス38(1)と可動バイス38(2)の間隔j5を決定する。ただし、可動バイス38(2)の駆動機構の構造をシンプルにするため、可動バイス38(2)は、退避位置から固定バイス38(3)まで範囲しか移動できないようになっている。
【0046】
保持状態5では、形材W2は、一端部が可動バイス38(2)の外側に長さk5(=k1)だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)の外側に長さh5(=h0)だけ突出して保持される。片持ち梁状態の2つの突出部分は、それぞれの長さが第一基準長Lk1以下なので、しっかりと保持される。また、形材W2の突出部分以外の内側部分は、メイン固定バイス38(3)とメイン可動バイス38(1)によって、間隔j5を空けて保持される。両端固定された寸法j5の部分は、長さが第二基準長Lk2以下なので、しっかりと保持される。
【0047】
図12の保持状態6は、形材W2の長さLが、上記の保持状態5を実現できない程度に短い場合を表している(L=L6<L5)。メイン可動バイス38(1)と可動バイス38(2)の2つで形材W2を保持する点は、保持状態5と同じである。
【0048】
制御部は、形材W2の長さLに基づき、メイン可動バイス38(1)とストッパ34のX位置を退避位置に維持する(e6=0、h6=h0)こととし、可動バイス38(2)のX位置も退避位置に維持する決定をする。したがって、X方向に移動させる部材がないので、移動のための時間が短縮され、駆動機構の負担も軽減されるという利点がある。
【0049】
保持状態6では、形材W2は、一端部が可動バイス38(2)の外側に長さk6(<k5=k1)だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)の外側に長さh6(=h0)だけ突出して保持される。片持ち梁状体の2つの突出部分は、個々の長さが第一基準長Lk1以下なので、それぞれしっかりと保持される。また、形材W2の突出部分以外の内側部分は、可動バイス38(2)とメイン可動バイス38(1)によって、間隔j6を空けて保持される。両端固定された寸法j6の部分は、長さが第二基準長Lk2以下なので、しっかりと保持される。
【0050】
図12の保持状態7は、形材W2の長さLが、上記の保持状態6を実現できない程度に短い場合を表している(L=L7<L6)。ここでは、メイン可動バイス38(1)だけで形材W2を保持し、その他のバイス38(2)〜38(6)は実質的に機能しない。
【0051】
制御部は、形材W2の長さLに基づき、メイン可動バイス38(1)とストッパ34のX位置を退避位置に維持する(e5=0、h7=h0)。したがって、保持状態6と同様に、X方向に移動する部材がないので、移動のための時間が短縮され、駆動機構の負担も軽減されるという利点がある。
【0052】
保持状態7では、形材W2は、一端部がメイン可動バイス38(1)のプッシャ36側に長さk7(<Lk1)だけ突出し、他端部がメイン可動バイス38(1)のストッパ34側に長さh7(=h0)だけ突出して保持される。片端持ち梁状態の2つの突出部分は、それぞれ長さが第一基準長Lk1以下なので、しっかりと保持される。
【0053】
ここまでの保持状態1〜7の説明は、形材W2の両端部が特定のバイスから突出する(k1〜k7>0、h0〜h7>0)としたが、形材W2の端部が特定のバイス38から突出せず中に収まっていてもよい(k1〜k7≦0<Lk1、h0〜h7≦0<Lk1)。ただし、この場合、形材W2をクランプする部分が小さく(X方向長さが短く)なってクランプ力が低下する可能性があるので、一定以上のクランプ力を確保するようにする。バイスの長さd0が非常に短い場合は、形材W2の端部を突出させる設定(k1〜k7>0、h0〜h7>0)とし、所定のクランプ力が確実に得られるようにすることが好ましい。また、ストッパ34を可動バイス38(1)と一体にして、h0〜h7が常に一定となるようにすることもできる。
【0054】
以上説明したように、形材加工装置10によれば、6組のバイス38を備えた形材保持部30により、様々な長さの形材W2を、常に安定に保持することができるので、切削加工を精度よく行うことができる。特に、形材W2は、あらかじめ規定された所定のルール(形材W2の各バイスからの長さを一定値以下にするための、第一基準長Lk1や第二基準長Lk2を設定したルール)に従って保持されるので、バイス位置の調節を最小限として、確実に一定の保持強度でバイスにより保持され、安定な加工が可能となる。また、6組のバイス38は、固定バイスの数が多く(この実施形態では4組)、可動バイスを最小限(この実施形態では2組)に抑えることができるので、形材保持部30全体の構造がシンプルになると共に、可動バイス及びストッパの位置を制御するための制御プログラムも簡単化することができる。
【0055】
また、形材加工装置10は、切削加工部18の前段にプレス加工部14を設け、これらを自動移送機16で連結することによって、形材W1に対してプレス加工と切削加工とを行う一貫ラインが構成され、素材(形材W1)から製品(形材W3)を得るまでの工程を効率化することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、形材保持部の複数のバイスは、少なくとも固定バイスと可動バイスとを一対に有していればよく、可動バイスを1組にしてもよい。補助バイスについては、長い形材の加工が想定される場合、第二基準長を考慮して適宜の数だけ設けることができ、補助バイスを可動式にするか固定式にするかについても適宜設定しうるものである。短い形材しか加工しない装置の場合は、補助バイスを省略してもよい。