(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
1型糖尿病(T1DM)は、内分泌膵のインスリン分泌性β細胞のT細胞媒介性の自己免疫破壊によって特徴付けられる、慢性代謝性疾患である。絶対的なインスリン欠乏が生じ、高血糖症につながる。臨床診療において1型糖尿病を処置するための現在のレジメンは、主として、血中グルコース値の間欠測定によって決定された投与量で、連続的にまたは毎日数回のいずれかで、皮下のインスリンの注射に基づいている。血中グルコース値(または血糖濃度)は、動物またはヒトの血液中のグルコースの量を含むか又は表わし、国際規格によるモル濃度(mmol/L)、または米国規格による質量濃度(mg/dL)の単位で測定される。後者は以下の記述において使用される。
【0003】
The Diabetes Control and Complications Trial(DCCT)Research Groupは、New England Journal Medical, 1993, 329(14), pages 977−986において、インスリン依存性糖尿病における長期的合併症の発達および進行に対する糖尿病の集中治療の効果に関する結果を公表し、これは、この処置アルゴリズムを使用する集中的な処置が、細小血管合併症を50−76%減少させることを実証した。しかしながら、これは、特にヘモグロビンA1c値<7.5%での、低血糖症に費やされた時間の増加という代償を伴っていた。
【0004】
他の研究では、集中的な処置の結果、B.W. Bode, S. Schwartz, H.A. Stubbs, J.E. Block, "Glycemic characteristics in continuously monitored patients with type 1 and type 2 diabetes: normative values", Diabetes Care, 2005, 28(10), pages 2361−6によって記載されるように、被験体は、一日の30%を、>10mM(180mg/dl)のグルコース値を有しており、しばしば夜には、>2時間/日低血糖症であった。これは自動的な血中グルコースの制御につながった。
【0005】
自動的な閉ループ系が、R. Hovorka, "Continuous glucose monitoring and closed loop systems." Diab Med., 2005, 23(1), pages1−12によって記載され、これは、低血糖症を回避しながらヘモグロビンA1cを改善する可能性を提供した。この種の系が、連続的なグルコース測定、制御デバイス、およびインスリン送達用のためのポンプを必要とすることを、多くの研究者が発見した。例えば、B. Kovatchev, S. Anderson, L. Heinemann, and W. Clarke, "Comparison of the numerical and clinical accuracy of four continuous glucose monitors", Diabetes Care, 2008, 31, pages 1160−1164; B.W. Bequette, "A critical assessment of algorithms and challenges in the development of a closed−−−loop artificial pancreas", Diabetes Technol Ther., 2005, 7, page 28; or R. Rowe, "Insulin pump therapy", Diabetic Medicine, 2001, 18, pages 4−5を参照。
【0006】
人工膵臓(AP)との関連で使用される閉ループ制御アルゴリズムは、主として典型的な制御工学技術に基づいており、G. M. Steil, K. Rebrin, C. Darwin, F. Hariri and M.F. Saad, "Feasibility of automating insulin delivery for the treatment of type 1 diabetes", Diabetes, 2006, 55, pages 3344−3350によって記載されるような、比例・積分・微分(Proportional Integral Derivative)の制御、およびR. Hovorka, "Continuous glucose monitoring and closed loop systems", Diab Med., 2005, 23(1), pages 1−12、またはF. H. El−−−Khatib, S. J. Russell, D. M. Nathan, R. G. Sutherlin、およびE. R. Damiano, "A bihormonal closed−−−loop artificial pancreas for type 1 diabetes", Sci Transl Med., 2010, 2(27), page 27におけるようなモデル予測制御(MPC)によって左右されてきた。
【0007】
経験的知識に基づいた他の手法も、E. Atlas, R. Nimri, S. Miller, E. A. Grunberg and M. Phillip, "MD−Logic Artificial Pancreas System − A pilot study in adults with type 1 diabetes", Diabetes Care, 2010, 33(5), pages 1072−1076、およびD. Campos−Delgado, M. Hernandez−Ordonez, R. Fermat, and A. Gordillo−Moscoso, "Fuzzy−based controller for glucose regulation in type−1 diabetic patients by subcutaneous route", IEEE Trans Biomed Eng., 2006, 53(11), pages 2201−2210に記載されるような人工知能技術の使用を介して提案されてきた。
【0008】
医学的問題を解決するための生体からインスピレーションを得た(Bio−inspired)手法は、自然がその役割をより最適に且つ効率的に行なうために何百万年以上にもわたって進化してきた考えによって動機づけられてきた。したがって、人体の機能性を再現することによって、人体が受け入れることができる、より大きな生理機能を備えた系につながり得る。人工臓器用の生体からインスピレーションを得た技術は、既に蝸牛移植、網膜移植、および前庭の移植を含む、異なる医療分野でうまく実行されてきた。C. Toumazou, J.A. Georgiou, "A 126μW cochlear chip for a totally implantable system", IEEE Journal Solid State Circuits, 2005, 40(2), pages 430−43は、蝸牛の基底膜が作用することで、聴力を回復することができる方法をモデル化する工程を記載している。P. Degenaar, N. Grossman, M.A. Memon, et al, "Optobionic vision − a new genetically enhanced light on retinal prosthesis", J Neural Eng., 2009, 6, pages 1741−2552は、速いので、非常に速く低い力の画像復元(power image restoration)を引き出すための、網膜の神経回路に生じる局所処理をモデル化する網膜移植を記載している。Constandinou, T.G., Georgiou, J., Toumazou, C., "A neural implant ASIC for the restoration of balance in individuals with vestibular dysfunction", Circuits and Systems, 2009, ISCAS 2009. IEEE International Symposium on, pages 641−644, 24−27 May 2009は、バランスを回復させるための、人体の慣性計測を再現する前庭の移植を示した。これらの成功を受け、膵臓の生体機能に基づいて血中グルコースの制御のための制御方策を考えることの有益性が考慮されてきた。
【0009】
生体からインスピレーションを得た制御システムは、特に人工関節の臓器(prosthetic organs)の領域において、膵臓の機能性を再現し、より多くの生理溶液を提供するために使用され得る。血中グルコースの制御のための生体からインスピレーションを得た手法は、膵臓におけるβ細胞からのインスリン分泌物の二相性に基づき、これは、A. Caumo and L. Luzi, "First−phase insulin secretion: does it exist in real life? Considerations on shape and function", AJP − End., 2004, 287(3), E371−E385によって記載されるような、グルコース刺激のタイプおよび大きさに依存する。動物とヒトの両方の研究が示すのは、静脈内のグルコースに対する第1段階のインスリン反応が、グルコース代謝の調節に対して有益な効果があることである。具体的には、第1段階は、肝グルコース産生に対する根底的で長期的な抑制効果を有している。同様に、摂取したグルコースに対する初期のインスリン反応は、食じグルコース耐性の重要な決定因子である。
【0010】
図1は、食事からのグルコース刺激に対応するβ細胞による二相性インスリン分泌の例を示すグラフの実例である。上のグラフのy軸は、血漿グルコース(mg/dL)を表わし、下のグラフのy軸は、インスリン分泌(ug/min)を表わし、ここで、両方のグラフ上のx軸は、分単位の時間を表わす。グラフは、急速に変化するグルコース濃度(すなわち誘導体の効果)による際立った(sharp)第1段階の存在、およびその後の、持続したインスリン放出によって表わされる第2段階を例証する。グルコース刺激に応じてβ細胞の作用を再現することは、T1DM被験体において血中グルコース濃度を制御する助けとなり得る。
【0011】
G.M. Steil et.al., "Modeling b−Cell Insulin Secretion−Implications for Closed−Loop Glucose Homeostasis", Diabetes Technology & Therapeutics, 2003, 5(6)は、血中グルコースの制御のための生体からインスピレーションを得た手法の使用を記載し、これは、以前にE. Breda et.al, "Insulin release in impaired glucose tolerance:oral minimal model predicts normal sensitivity to glucose but defective response times", Diabetes, 2002, 51(1), S227−−−S233によって記載された、インスリン分泌物の最小モデルを使用した。
【0012】
この単純モデルは、インスリン分泌物を、基本的に血漿グルコース濃度に依存する、静的な速度の分泌物、および血漿グルコース濃度の変化の速度に依存する(第1段階)、動的な速度の分泌物(第2段階)へと分解することによって表わしている。Steil et.al.は、インスリン分泌物の最小モデルをPID調節計と比較し、両方が実験データに適合し得ると結論づけた。しかしながら、インスリン分泌モデルは、生体からインスピレーションを得たモデルの単純化により、閉ループ状態下でPID調節計ほど安定していなかった。
【0013】
Oliver et al., "A Benchtop Closed−Loop System Controlled by a Bio−Inspired Silicon Implementation of the Pancreatic s−Cell", Journal of Diabetes Science and Technology, 2009, 3(6)は、閉ループのグルコース制御のために、β細胞の電気活性のモデルを使用し、半導体ASICを実行することによって、「ケイ素」ベータ細胞を形成した。しかしながら、モデルは、インスリン放出の十分な詳細を欠いた。
【0014】
β細胞生理学の数理モデルのいくらかの最近の発展は、M.G.Pedersen et al., "Intra− and inter−islet synchronization of metabolically driven insulin secretion", Biophys J., 2005, 89(1), pages 107−119;A. Bertuzzi et.al., "Insulin granule trafficking in beta−cells:mathematical model of glucose−induced insulin secretion", Am J Physiol Endocrinol Metab., 2007, 293, E396−E409;Yi−der Chen et.al., "Identifying the Targets of the Amplifying Pathway for Insulin Secretion in Pancreatic s−Cells by Kinetic Modelling of Granule Exocytosis", Biophysical Journal, 2008, 95(5), pages 2226−2241、およびM.G. Pedersen et.insight into oral minimal models of insulin secretion", Am J Physiol Endocrinol Metab., 2010, 298, E597−E601.によって記載される。これらの文書は、分子レベルでのグルコース誘導性のインスリン放出を記載し、生体からインスピレーションを得たグルコース制御アルゴリズムの新しい分類につながった。
【0015】
しかしながら、連続的グルコース監視(CGM)および連続的インスリン点滴(CSII)のための現在利用可能な技術は、皮下(S.C.)の経路を使用し、これは、最小限に侵襲性であるという明確な利点があるにもかかわらず、生理学的と言えるには程遠く、従って非最適である。S.C.の経路は、グルコース感知およびインスリン作用での時間遅延、測定誤差およびより高い変動性の形で、グルコース制御に対していくらかの更なる障害を誘発している。時間遅延は、グルコース感知およびインスリン作用によって誘発される(それぞれ、15分まで、および15−20分)。これらの遅延の変動は高くなり得、現在のS.C.の連続的なグルコースセンサーの精度は、回避すべき臨界状態である、特に低血糖症において、20%までの平均の絶対差で最適と言うには程遠い。これらの制限を克服するインスリンポンプを制御するための改善された制御方策を考案することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上に記載された問題を少なくとも部分的に克服するために、膵臓のインスリン分泌物の生体からインスピレーションを得たモデルを組み込み、各ユーザーまたは患者のためのインスリンポンプの制御を最適化することが、本明細書に提案されている。具体的には、本発明は、膵臓のβ細胞の計算モデルに基づいてグルコース制御ユニットを提供する。
【0033】
図2aは、インスリンポンプ(112)の出力の制御するための制御ユニット(102)を含む、制御デバイス(100)の例を例証する。制御ユニット(102)は、ユーザー入力部(104)、測定入力部(106)、および処理ロジック部(108)を含んでいる。制御ユニット(102)は、インスリンポンプ(112)に入力される制御信号(110)を生成し、該制御信号(110)は、インスリンポンプ(112)によって患者またはユーザーに提供されるインスリン値を制御する。ユーザー入力部(104)は、制御ユニット(102)による使用のための1つ以上のゲインファクターおよび他のデータを受け取る。
【0034】
図2bは、インスリンポンプ(120)の例を例証し、該インスリンポンプ(120)は、該インスリンポンプ(120)のポンプユニット(114)の出力を制御するための制御ユニット(102)を含み、メモリユニット(107)が、制御ユニット(102)およびポンプユニット(112)による使用のための1つ以上のゲインファクターおよび他のデータを保存するために含まれている。制御ユニット(102)は、ユーザー入力部(104)、測定入力部(106)、および処理ロジック部(108)を含んでいる。制御ユニット(102)は、ポンプユニット(114)に入力される制御信号(110)を生成し、該制御信号(110)は、ポンプユニット(112)によって患者またはユーザーに提供されるインスリン値を制御する。
【0035】
図2aおよび
図2bの両方を参照すると、操作中、ユーザー入力部(104)は、1つ以上のゲインファクターを受け取り、これは、患者またはユーザーと関連する過去のデータに基づいて決定されている。ゲインファクターは、患者またはユーザーの過去のデータおよびそれらのインスリン必要量に基づいて最適化される。過去のデータは、測定された血中グルコースまたはインスリンの値、時刻、食事または軽食の種類、およびユーザーおよびユーザーのインスリン必要量を特徴づけるのに有用な他の特徴またはパラメーターに基づき得る。あるいは又はさらに、制御デバイス(100)または制御ユニット(102)は、1つ以上のゲインファクターを保存するための記憶装置またはメモリを含んでもよい。例として、
図2bでは、ゲインファクターは、メモリユニット(107)に保存されてもよく、必要ならば、処理ロジック部(108)によってアクセスされてもよい。
【0036】
測定入力部(106)は、ユーザーまたは患者のための測定された血中グルコース値を表わすデータを受け取る。測定入力部(106)は、一例として、ユーザーまたは患者のための皮下の血中グルコースセンサー(図示せず)、静脈内の血中グルコースセンサー(図示せず)、外部の血中グルコースセンサー(図示せず)、または非侵襲性の血中グルコースセンサー(図示せず)、または患者の血中グルコース値を測定するための他の技術から、測定された血中グルコース値を受け取り得る。例として、非侵襲性の感知技術は、血中グルコース値を測定するために使用することができる、フィンガープローブによる非侵襲性の血液測定を行なうことができる電気光学技術を含み得る。あるいは、測定された血中グルコース値は、指または針刺しの方法(needle−stick prick methods)を使用して、ユーザーまたは患者のサンプルから得られ、血中グルコース値の測定器への接続部から手動でまたは自動的に入力され得る。血中グルコース値は、一定の間隔または実時間で測定され得る。
【0037】
処理ロジック部(108)は、メモリユニット(107)に保存された1つ以上のゲインファクターに基づいて、ゲインファクターを設定するように構成され得る。ゲインファクターは、1つ以上のゲインファクターから選択され得、その選択は、時刻、ユーザーまたは患者が食事または軽食を摂取するところであるか又は摂取したか、およびインスリンのそれらの必要量に影響を与えるユーザーまたは患者の他の行動に依存する。処理ロジック部(108)は、ゲインファクター、患者のための測定された血中グルコース値、およびインスリン分泌物の計算モデルに基づいて、ユーザーまたは患者のインスリン欠乏値を推定する。ゲインファクターのモデルの出力および使用から、処理ロジック部は、
図2aのインスリンポンプ(112)または
図2bのインスリンポンプ(120)のポンプユニット(114)のインスリン出力値を制御するための制御信号(110)を生成する。制御信号(110)は、推定される患者のインスリン欠乏値に基づいて生成される。患者のインスリン欠乏値は、ユーザーまたは患者がインスリンポンプから必要とする、さらなるインスリン必要量である。
【0038】
具体的には、処理ロジック部(108)は、インスリン出力値を予測するために、測定された血中グルコース値をインスリン分泌物の計算モデルに適用する。好ましくは、インスリン分泌物の計算モデルは、膵臓のβ細胞の計算モデルである。処理ロジック部(108)は、患者のインスリン欠乏値を決定するために、ゲインファクター(または選択されたゲインファクター)を予測されたインスリン出力値に適用する。測定入力部(106)は、ユーザーまたは患者の測定された血中グルコース値を表わすデータを受け取る。あるいは、ユーザーまたは患者の血中グルコースの測定された濃度または値は、血中グルコースを測定するために、非侵襲的に又は針刺し又は他のデバイスを介して測定され得る。処理ロジック部(108)は、患者のインスリン欠乏値に基づいて、インスリンポンプ(112)のインスリン出力値またはポンプユニット(114)のインスリン出力値を制御するための制御信号(110)を計算する。
【0039】
インスリン分泌物の計算モデルは、患者の過去のデータを有する計算モデルを最適化することによって調整または計算され得るさらなるモデルパラメーターを必要とし得る。ユーザー入力部によって受け取ったゲインファクターに加えて、ユーザー入力部(104)は、処理ロジック部(108)による使用のための調整されたモデルパラメーターおよび他のパラメーターを受け取るようにさらに構成されてもよく、これらは、インスリン分泌物の計算モデルに適用される。ユーザー入力部(104)は、インスリン分泌物の計算モデルを受け取るようにさらに構成され得、これは、制御信号(110)の計算に使用するための処理ロジック部(108)にアップロードされ得る。これは、制御ユニット(102)が、改良された又は新しいインスリン分泌物のモデルによってアップデートされ得るか、またはインスリン分泌物の計算モデルが、ユーザーまたは患者の要件により合わせられ得ることを意味する。調整され得る、膵臓のβ細胞の計算モデルおよびそのモデルパラメーターは、
図3乃至6に関連して記載されている。
【0040】
インスリンポンプ(112)またはポンプユニット(114)の出力の制御の最適化のために、処理ロジック部(108)が選択するための様々なゲインファクターが存在し得る。様々なゲインファクターは、ユーザーまたは患者の血中グルコースの必要量、および時刻または軽食または食事に関するユーザーの行動などの他の要因に依存し得る。異なるシナリオまたはユーザーに対して複数のゲインファクターまたは複数の一連のゲインファクターが存在し得るが、一例として及び単純性のために、インスリンポンプ(100)のインスリン出力値の制御を最適化するために使用される、3つのゲインファクター(第1、第2および第3のゲインファクター)が存在すると仮定される。
【0041】
処理ロジック部(108)は、患者による食事の摂取後の第1期間の間に、ゲインファクター(第1ゲインファクター)を予測されたインスリン出力値に適用するように構成されている。ユーザー入力部は、第2および第3のゲインファクターを受け取ることができ、該第2および第3のゲインファクターは、患者に関連する過去のデータに基づいて計算されている。処理ロジック部(108)は、患者の血中グルコース値が予め決められたグルコース閾値と等しいか又はその閾値を超えるときに、第2ゲインファクターを予測されたインスリン出力値に適用する、および第1期間が終了するとき且つ患者の血中グルコース値が予め決められたグルコース閾値より低いときに、第3ゲインファクターを予測されたインスリン出力値に適用するようにさらに構成されている。
【0042】
あるいは又は加えて、処理ロジック部(108)は、患者またはユーザーによる食事の摂取後の第1期間の間に、ゲインファクターを第1ゲインファクターに設定するように構成され得る。患者またはユーザーは、ユーザーが食事を摂取し得る、または食事を摂取したという徴候を提供するために、ユーザー入力部(104)を使用してもよい。第2ゲインファクターは、患者またはユーザーの血中グルコース値が、予め決められたグルコース閾値と等しいか又はその閾値を超えるときに、処理ロジック部(108)によって設定され得る。第3ゲインファクターは、第1期間が終了するとき且つ患者の血中グルコース値が予め決められたグルコース閾値より低いときに、処理ロジック部(108)によって設定され得る。予め決められたグルコース閾値は、過去のデータおよび患者のインスリン必要量に基づいて決定される。ユーザー入力部(104)は、とりわけ、患者の行動の睡眠、仕事、または運動、時刻、食事または軽食のサイズおよびグルコース必要量に依存して使用するために、予め決められたグルコース閾値または一連の予め決められたグルコース閾値をさらに受け取るように構成されてもよい。
【0043】
上に示されるように、インスリンポンプ(112)または(120)のユーザーは、いくつかのゲインファクターを入力し得るが、少なくとも3つのゲインファクターが必要となり得る。このプロセスを単純化するために、ゲインファクターの少なくともいくつかは、ユーザーによって入力された他のゲインファクターから引き出され得る。例えば、第2および第3のゲインファクターは、処理ロジック部(108)によって第1ゲインファクターに比例するように計算され得る。比率は、ユーザー要件に依存する及び/又はインスリンポンプ(100)の制御を最適化する。例として、第2ゲインファクターは、第1ゲインファクターの略半分の比率になるように設定され得、第3ゲインファクターは、第1ゲインファクターの略5分の1の比率になるように設定され得る。これは、第1ゲインファクターのみがインスリンポンプ(100)のユーザーまたは患者によって入力される必要があることを意味する。ユーザーの要件または行動に依存して使用される、一連の第1ゲインファクターが存在し得ることが理解されるであろう。
【0044】
制御ユニット(102)は、ポンプユニット(112)によってユーザーまたは患者に提供される出力のインスリンの制御の最適化に使用するための、さらなるロジック部または入力部を含み得る。処理ロジック部(108)は、患者のための皮下の血中グルコースの測定された濃度値に基づいた第1インスリン値、および受信される信号または食事の摂取を示すユーザー入力部(104)を決定するためのロジック部を含むようにさらに構成され得る。患者のインスリン欠乏値はさらに、第1インスリン値を含み得る。インスリンポンプ(112)またはポンプユニット(114)に対する制御信号(110)の生成または計算は、患者のインスリン欠乏値に基づいている。例として、第1インスリン値は、患者またはユーザーが食事または軽食を摂取する前、または摂取するときに、患者またはユーザーのためのボーラスインスリンの値を計算する部分的なボーラス計算機によって計算されてもよい。
【0045】
ユーザー入力部(104)は、摂取される食事の指標(indication)を受け取るように構成され得、処理ロジック部(108)は、患者のインスリン出力値を予測するために、その指標をインスリン分泌物の計算モデルに適用する。その後、処理ロジック部(108)は、測定された血中グルコース値および摂取される食事の指標に基づいて食事前のインスリン値(または第1インスリン値)を計算することができる。患者のインスリン欠乏値は、食事前のインスリン値を含むようにさらに調節され、その結果、制御信号(110)が、食事前のインスリン値を使用して生じる。摂取される食事の指標は、摂取される食事の炭水化物の量を表わすデータをさらに含んでもよい。これは、食事前のインスリン値の計算の助けとなる。
【0046】
あるいは又は第1インスリン値に加えて、処理ロジック部は、ポンプユニット(112)またはインスリンポンプ(100)のインスリン出力値からの血漿インスリン濃度の推定に基づいて第2インスリン値を決定するためのロジック部をさらに含む。制御信号(110)の生成または計算が第2インスリン値にさらに基づくように、患者のインスリン欠乏値はさらに、第2インスリン値を含む。あるいは、処理ロジック部(108)は、インスリンポンプ(112)または(120)のインスリン出力値からの血漿インスリン濃度の推定に基づいて、フィードバック(feedback)のインスリン値(第2インスリン出力)を計算する。患者のインスリン欠乏値は、フィードバックのインスリン値に基づいて調節され、その結果、制御信号(110)は、フィードバックのインスリン値を使用して計算される。あるいは又は第1および第2のインスリン値(または食事前およびフィードバックのインスリン値)に加えて、ユーザーまたは患者の基礎あるいは最小のインスリン特性に基づいた第3インスリン値(または基礎インスリン値)が、制御信号(110)の生成または計算のために患者のインスリン欠乏値を調節するために使用されてもよい。患者のインスリン欠乏値は、ゲインファクターの予測されたインスリン出力値、患者の食事前のインスリン値、フィードバックのインスリン値、および基礎インスリン値を組み合わせる又は合計することによって計算されてもよい。制御信号(110)を生成し、計算するために使用される、患者のインスリン欠乏値を計算するさらなる例は、
図2a乃至
図6を参照して提供される。制御信号(110)は、一旦、計算される又は生成されると、その後、インスリンポンプ(112)へ送られる。制御信号(110)は、インスリンポンプ(112)に無線で、またはインスリンポンプ(112)に有線の媒体を介して送信されてもよい。
【0047】
図2cは、インスリンポンプ(100)を制御する方法を例証するフローダイヤグラムである。
図2aおよび2bを参照して記載されるように、制御デバイス(100)およびインスリンポンプ(120)は、それぞれ、インスリンポンプ(112)およびポンプユニット(114)の出力のインスリン値の制御に使用するための、ユーザー入力部(104)、測定入力部(106)、および制御信号(110)を含む。インスリンポンプ(120)またはポンプユニット(114)を制御する方法は、以下の工程によって概説される:
A1. 患者に関連する過去のデータに基づいて計算されている、ゲインファクターを受け取る工程;
A2. 患者に対する測定された血中グルコース値を表わすデータを受け取る工程;。
A3. インスリン出力値を予測するために、測定された血中グルコース値をインスリン分泌物の計算モデルに適用する工程;
A4. 患者のインスリン欠乏値を決定するために、ゲインファクターを予測されたインスリン出力値に適用する工程;
A5. 患者のインスリン欠乏値に基づいて、インスリンポンプ(112)または(120)のインスリン出力値を制御するための制御信号(110)を計算する工程。
【0048】
図2dは、ゲインファクターが、インスリンポンプ(112)および(120)の制御を最適化する、予測されたインスリン出力値に適用されるときに工程A4を例証するフローダイヤグラムである。ゲインファクターを設定する又は適用する工程は以下のとおりである:
A4a. ゲインファクター(または第1ゲインファクター)は、患者による食事の摂取後の第1期間の間に、予測されたインスリン出力値に適用される;
A4b. 第2ゲインファクターは、患者の血中グルコース値が予め決められたグルコース閾値と等しいか又はその閾値を超えるときに適用される。
A4c. 第3ゲインファクターは、第1期間が終了するとき且つ患者の血中グルコース値が予め決められたグルコース閾値より低いときに適用される。
【0049】
随意に、第2および第3のゲインファクターは、ユーザー入力部(104)を介して受け取り、ここで、第2および第3のゲインファクターは、患者に関連する過去のデータに基づいて計算されている。あるいは、第2および第3のゲインファクターは、最初のゲインファクターに比例するように設定されるか又は計算される。第2ゲインファクターは、第1ゲインファクターの略半分の比率になるように設定され得、第3ゲインファクターは、第1ゲインファクターの略5分の1の比率になるように設定され得る。あるいは又はゲインファクターの設定に加えて、ゲインファクターの設定は、過去のデータに基づいて一連の特定のグルコース特性から決定される一連のゲインファクターからのゲインファクターを選択する工程を含む。
【0050】
方法はさらに、患者の過去のデータおよび他のパラメーターとともにインスリンの計算モデルを最適化によって計算され得る、調整されたモデルパラメーターを受け取る工程を含み得る。方法はさらに、調整されたモデルパラメーターをインスリン分泌物の計算モデルに適用する工程を含む。さらに、方法は、制御信号(110)の計算に使用するための処理ロジック部(108)にアップロードされ得る、インスリン分泌物の計算モデルを表わすデータを受け取る工程を含むことができる。これは、制御ユニット(102)が、改良された又は新しいインスリン分泌物のモデルによってアップデートされ得るか、またはインスリン分泌物の計算モデルが、ユーザーまたは患者の要件にさらに合わせられ得ることを意味する。
【0051】
図2cの方法は、摂取される食事の指標を受け取る工程をさらに含み得、ここで、測定された血中グルコース値を適用する工程A3は、患者のインスリン出力値を予測するために、その指標をインスリン分泌物の計算モデルに適用する工程をさらに含む。随意に、方法は、患者に対する測定された血中グルコース値に基づいた第1のインスリン値、および食事の摂取を示す受信される信号を決定する工程を含み、ここで、制御信号(110)の計算は、第1インスリン値にさらに基づいている。あるいは又は加えて、方法はさらに、測定された血中グルコース値および摂取される食事の指標に基づいて、食事前のインスリン値(第1インスリン値)を計算する工程を含む。患者のインスリン欠乏値は、食事前のインスリン値に基づいてさらに調節される。このことから、食事前のインスリン値を使用する制御信号(110)の計算を行うことができる。さらに、摂取される食事の指標は、摂取される食事の炭水化物の量を示すデータをさらに含むことができる。
【0052】
あるいは又は第1インスリン値を決定する工程に加えて、方法は、インスリンポンプ(110)またはポンプユニット(112)のインスリン出力値からの血漿インスリン濃度の推定に基づいて、第2インスリン値を決定する工程を含んでもよい。患者のインスリン欠乏値は、第2インスリン値に基づいてさらに調節され、ここで、制御信号(110)の計算は、第2インスリン値にさらに基づいている。すなわち、方法は、ポンプユニット(112)または(120)のインスリン出力値からの、または制御信号(110)自体からの血漿インスリン濃度の推定に基づいてフィードバックのインスリン値(第2インスリン値)を計算する工程、およびフィードバックのインスリン値を使用して、患者のインスリン欠乏値および制御信号(110)を再計算する工程をさらに含む。
【0053】
インスリンポンプ(110)を制御する際に1つ以上のゲインファクターを使用するために、それらは、インスリンポンプ(110)の患者またはユーザーに関連して測定される必要がある。1つ以上のゲインファクターを決定する工程は、患者に関連する過去のデータに基づいた1つ以上のゲインファクターの生成に基づいている。その後、ゲインファクターは、制御ユニット(102)またはインスリンポンプ(110)のユーザー入力部(104)によって入力される。1つ以上のゲインファクターを決定する工程は、患者による食事の摂取後の第1期間の間に第1ゲインファクター、患者に対する測定された血中グルコース値が予め決められた閾値と等しいか又はその閾値を超えるときに第2ゲインファクター、および第1期間が終了するとき且つ患者の血中グルコース値が予め決められた閾値より低いときに第3ゲインファクターを決定する工程を含む。第2ゲインファクターは、第1ゲインファクターの略半分の比率に設定され得、第3ゲインファクターは、第1ゲインファクターの略5分の1の比率に設定され得る。
【0054】
ゲインファクターまたは第1ゲインファクターは、定められたグルコース特性のための予め決められた期間にわたって、過去のデータに基づいて予測されたインスリン出力値のコスト関数を最小限にすることによって決定され得る。予測されたインスリン出力値のコスト関数(J)は、以下の式によって定義され;
【0056】
式中Tは、予め決められた期間であり、U(t)は、インスリンポンプのインスリン出力値を制御するために制御信号(110)を計算するための患者のインスリン欠乏値であり、SR
b(t)は、最小インスリン速度であり、CHOは、摂取した炭水化物の量であり、およびICRは、計算されたインスリン対炭水化物の比率であり、これらは、定められたグルコース特性のための過去のデータから適用されるか、または引き出される。第1ゲインファクターは、実質的に、[0,3)の範囲であり得る。一連のゲインファクターは、患者の過去のデータに基づいて、一連の具体的なグルコース特性から決定され得る。制御信号(110)は、ゲインファクターの予測されたインスリン出力値、患者の食事前のインスリン値、フィードバックのインスリン値、および基礎インスリン値の合計の組み合わせを含む、患者のインスリン欠乏値から計算される。患者のインスリン欠乏値および制御信号(110)を計算するさらなる例は、
図2a乃至
図6を参照して提供される。
【0057】
上に言及されるように、処理ロジック部(108)は、測定入力部(106)で受け取ったデータに基づいた予測されたインスリン値を提供するために、膵臓のベータ細胞に基づいて、インスリン分泌物の計算モデルを使用する。患者またはユーザーのインスリン値を推定または予測するために使用され得る、多くの生体からインスピレーションを得た計算モデルが存在する。既存のグルコース刺激性の膵臓のインスリン分泌モデルは、Hovorka et. al., "Pancreatic beta−cell responsiveness during meal tolerance test: model assessment in normal subjects and subjects with newly diagnosed noninsulin−dependent diabetes mellitus", J Clin Endocrinol Metab, 1998, 83( 3), pages 744−750; Toffolo et. al, "Quantitative indexes of beta−cell function during graded up & down glucose infusion from c−peptide minimal models", Am J Physiol Endocrinol Metab, 2001, 280(1), E210; A. Cretti et. al, "Assessment of beta−cell function during the oral glucose tolerance test by a minimal model of insulin secretion", Eur J Clin Invest., 2001, 31(5), pages 405−416; Mari et. al., "Meal and oral glucose tests for assessment of beta−cell function: modeling analysis in normal subjects", Am J Physiol Endocrinol Metab, 2002, 283(6), E1159−E1166;およびBreda et. al., "Insulin release in impaired glucose tolerance: oral minimal model predicts normal sensitivity to glucose but defective response times", Diabetes, 2002, 51(1), S227−S233によって記載されるような最小モデルを含む。
【0058】
より高度なモデルが、Pedersen et. al., "Intra−and inter−islet synchronization of metabolically driven insulin secretion", Biophys J., 2005, 89(1), pages 107−119; Bertuzzi et. al., "Insulin granule trafficking in beta−cells: mathematical model of glucose−induced insulin secretion", Am J Physiol Endocrinol Metab., 2007, 293, E396−E409; Chen et. al., "Identifying the Targets of the Amplifying Pathway for Insulin Secretion in Pancreatic s−Cells by Kinetic Modeling of Granule Exocytosis", Biophysical Journal, 2008, 95(5), pages 2226−2241によって記載される。
【0059】
これらの種類の計算モデルはいずれも、処理ロジック部(108)によって使用され得るが、単純すぎるか又は複雑すぎるかのいずれかであり得る。最小モデルは、結果的に、患者またはユーザーの予測されたインスリン値の比較的不正確な推定につながり得る。高度なモデルは、閉ループ制御アルゴリズムを使用する又はそれらを使用して実施することを困難にしている、多くのパラメーターおよび方程式が原因で、複雑すぎるかもしれない。
【0060】
Pedersen et al., "Cellular modeling: insight into oral minimal models of insulin secretion", Am J Physiol Endocrinol Metab., 2010, 298, E597−E601によって記載されるインスリン分泌物の計算モデルが、ほんの一例として、制御ユニット(102)における処理ロジック部(108)によって本明細書で使用される。このモデルは、ペーデルセンモデル(Pedersen model)と呼ばれる。しかしながら、異なるインスリン分泌物の計算モデルが、患者またはユーザーに対する血中グルコースの測定された濃度、及び/又は食事を摂取する又はしないなどの、患者またはユーザーの行動に基づいて、予測された患者インスリン値を提供するために使用され得る。
図3は、ペーデルセンモデルを例証し、これは、膵臓のベータ細胞の計算モデルであり、インスリン分泌の二相性反応、インスリン分泌の「階段」調節、グルコースの増強作用およびインスリン分泌顆粒のキス・アンド・ランを含む、実験データの大部分を表わすことができる。さらに、その相対的な単純性によって、実際の実施を好適なものにしている。ペーデルセンモデルは、貯蔵プールから細胞周辺への分泌顆粒の動員を含み、ここで、それらは原形質膜に付着している(ドッキング)。顆粒は、さらに成熟し(プライミング)、それ故「容易に放出可能なプール(readily releasable pool)」(RRP)に入ることができる。カルシウム流入は、膜融合を引き起こし、続いてインスリン放出を引き起こす。いわゆるキス・アンド・ランのエキソサイトーシスの可能性を含んでおり、ここで、顆粒の積荷(granule cargo)が放出される前に、融合孔は再密封される(reseals)。Grodsky, "A threshold distribution hypothesis for packet storage of insulin and its mathematical modelling", J Clin Invest, vol. 1972, 51(8), pages 2047−2059に記載されるような、カルシウム信号を示す細胞の数のグルコース依存性の増加は、サイレント(silent)且つアクティブな細胞において容易に放出可能な顆粒を識別することよって含まれている。これは、周囲のグルコース濃度より下のカルシウム活性に対する閾値を有する細胞に存在する顆粒のみが、融合することを許されるという意味で、RRPが不均質であることを意味する。
【0061】
容易に放出可能なプール(RRP)は、カルシウム流入、エキソサイトーシスまたは放出(円状(circles))のないサイレントな細胞に位置する容易に放出可能な顆粒、および誘導細胞(triggered cell)(点(dots))における容易に放出可能な顆粒に分けられている。動員は、Grodsky et. alに記載されるように、グルコースに依存するが遅延(τ)を伴うと仮定され、以下のように与えられる;
【0063】
ドッキングされた(docked)プールは、質量平衡等式に従って発達する。
【0065】
式中、Mは動員フラックス(mobilization flux)であり、rは再内在化(reinternalization)の速度である。最後の2つの用語は、それぞれ,顆粒のプライミングおよびデプライミング(deprimining)を記載している。RRPは、時間によって変わる密度関数h(g,t)によって記載され、これは、gとg+dgの間の閾値を有するβ細胞中のRRPにおけるインスリンの量を示している。顆粒は、速度p
+でプライミングされ、速度p
−で急速なエキソサイトーシスの能力を失うと仮定される。その上、顆粒は、誘導されたβ細胞、すなわち、グルコース濃度より下の閾値を有する細胞中にあると、速度f
+で融合する。これは以下の方程式につながる;
【0067】
ここで、θ(G−g)は、G>gに対しては1であり、それ以外は0である、ヘビサイド単位ステップ関数であり、これは、閾値が達成されるときに限り、融合が起こることを示している。プライミングするフラックス(priming flux)p
+Dは、時間非依存の関数φ(g)によって記載された閾値gを有する細胞の画分に従って細胞中に分配する。プライミングは、すべての細胞において同じ速度で生じると仮定され、細胞の画分は、対応する閾値を有することが考慮されている。
【0068】
分泌速度または予測された患者のインスリン出力値は、以下のように表わされる;
【0070】
式中、SR
bは、基礎インスリン分泌物であり、mは、放出の速度定数であり、およびFは、以下の式に従う、融合プールのサイズである;
【0072】
式中、f
+は、融合の速度定数であり、kは、キス・アンド・ランの速度である。整数は、Gより下の閾値を有する細胞中のRRPにおけるインスリンの量を表わす。
【0073】
本発明の実施形態は、ほんの一例として、Pedersen et. al 2010から得たモデルパラメーター値を有する、ペーデルセンの計算モデルを使用し、これは、表1に示される。これらのパラメーターが、ほんの一例であり、任意の適切な計算モデルが、任意の適切なパラメーターとともに使用され得ることが認識されるであろう。
【0075】
インスリンポンプの出力インスリン値を制御するための静脈内(i.v.)タイプの測定を使用して、生体からインスピレーションを得た制御器においてペーデルセンモデルを使用する例が、ここで記載される。制御器は、i.v.−i.v.の制御器と呼ばれる。ペーデルセンモデルは、ほんの一例として、グルコース刺激性の膵臓のインスリン分泌モデルが、Kovatchev et. al. 2009のT1DMシミュレーターの商用バージョンに記載された10人のメンバーの成人の集団を制御するために使用される。i.v.経路は、グルコース感知、および患者またはユーザーに対するインスリン送達のために使用される。患者間のインスリン感受性および変異性が原因で、調整可能なゲインファクターKが方程式(4)の動的項に加えられ、これは、分泌速度または予測された患者のインスリン出力を提供する。さらに、ペーデルセンモデルが、低いグルコース濃度で基礎インスリン分泌物の阻害を含まないため、可変ゲイン(variable gain)kbが、この項を増加させて加えられた(added multiplying)。制御信号は、患者のインスリン欠乏値から生成され、これは、次のように記載され得る:
【0077】
式中、k
bは、以下の式として計算される可変ゲインである;
【0079】
式中、G
spは、グルコースの設定値(例えば、90mg/dL)であり、およびG
limは、阻害を開始する閾値(例えば、80mg/dL)である。
【0080】
i.v.−i.v.の制御器の性能を例証するために、i.v.−i.v.の制御器を使用するシミュレーション例が、10の被験体(例えば患者またはユーザー)に対して75グラムの炭水化物を含有している食事のために行われた。基礎インスリン注入の速度は、手動で各被験体に合わせられ、ゲインファクターKは、10の被験体を血中グルコース濃度の[70,200]mg/dLの範囲内で維持するために個々に調整された。第2段階の規模を縮小する且つ低血糖症を回避するために、ペーデルセンモデルのパラメーターcを2で割る必要があったのは、1人の被験体(被験体#9)だけであったことが観察された。
【0081】
図4は、被験体#1に対応するi.v.−i.v.の制御器の結果を例証する2つのグラフを示す。上のグラフのy軸は、血漿グルコース(mg/dL)を表わし、下のグラフのy軸は、インスリン分泌(ug/min)を表わし、ここで、両方のグラフ上のx軸は、分単位の時間を表わす。上のグラフは、75グラムの炭水化物を含有している食事に対応する予期された血漿グルコース濃度を例証する。下のグラフは、i.v.−i.v.の制御器のインスリン送達を例証する。i.v.−i.v.の制御は、制御の観点からは最適であるが、例えば、重症者管理などの院内での適用において、監視下で使用されるべきである。しかしながら、i.v.−i.v.の制御器は、時間遅延および誘発されるノイズが原因で、移動性または可動性の人工膵臓には適していない。
【0082】
連続的なグルコース感知およびインスリン送達のための現在の技術は、主として、皮下の経路を使用し、その主要な問題は、グルコース感知およびインスリン作用で誘発される時間遅延(それぞれ、15分まで、および15−20分)である。これらの遅延の変動は、高くなり得、現在のS.C.の連続的なグルコースセンサーの精度は、回避すべき臨界状態である、特に低血糖症において、20%までの平均の絶対差で最適と言うには程遠い。
【0083】
図5aは、インスリンポンプ(図示せず)の制御に使用するための本発明の別の実施形態による、制御ユニット(500)の概略図を例証する。制御ユニット(500)は、皮下(S.C.)の経路を介するグルコース感知およびインスリン送達を使用する。制御ユニット(500)は、ユーザーまたは患者の血中グルコースの濃度または値を表わすデータを受け取るためのグルコース測定入力部(506)を含む。制御ユニット(500)は、s.c.の閉ループグルコースの制御器であり、一例として、グルコース刺激性の膵臓のインスリン分泌物のペーデルセンモデルに基づいたベータ細胞の処理ロジック部(508)を含む。ベータ細胞の処理ロジック部(508)は、ユーザー入力部(504)および測定入力部(506)から受け取ったデータに基づいて、予測される患者インスリン値を出力する。ゲインロジック部(Gain logic)(510)は、1つ以上のゲインファクター(K)に基づいた患者のインスリン欠乏値(511)、すなわち、ゲインファクターの予測された患者のインスリン値を決定するために、予測された患者のインスリン値に適用される。制御ユニット(500)には、S.C.のインスリンのフィードバックのロジック部(512)および部分的なボーラスの計算ロジック部(514)が含まれ、これらは、それぞれ、インスリンのフィードバック値およびボーラスのインスリン値を提供する。患者のインスリン欠乏値(511)は、制御信号(516)を生成するための、ゲインファクターの予測されたインスリン値、ボーラスのインスリン値、およびインスリンのフィードバック値に基づいて計算される。さらに、必要ならば、制御信号(516)の生成に使用するための基礎インスリン値を提供するために、基礎インスリン特性のロジック部(515)が組み込まれてもよい。安全対策として、皮下注射(hypo)予防のロジック部(520)が、低血糖症を最小限にする又は予防するために含まれてもよい。本実施例では、患者のインスリン欠乏値(511)は、ゲインファクターの予測された患者の出力値、ボーラスのインスリン値、インスリンのフィードバック値、および基礎インスリン値の合計によって計算され、これらは、制御信号(516)を生成するために使用される。
【0084】
グルコース感知およびインスリン送達の際の遅延に関係する主要な問題は、特に、食後または食事の後の、過度のインスリン摂取およびそれに続く低血糖症のリスクである。この問題を処理するための1つの解決策は、G. M. Steil et. al., "Feasibility of automating insulin delivery for the treatment of type 1 diabetes", Diabetes, 2006, 55, pages 3344−3350に記載された、インスリンのフィードバック値を組み込むことである。これによって、血漿インスリン濃度(インスリンが組み込まれた(insulin−on−board))の推定値に基づいて、インスリン送達を抑制する。制御ユニット(500)の出力で制御信号(516)を生成するために使用される、患者の欠乏出力値(511)は、以下のように表わされる;
【0086】
式中、I(t)は、(基本条件に対する)血漿インスリン濃度の推定値であり、およびK
yは、調整ゲイン(tuning gain)である。S.C.のインスリンのフィードバックのロジック部(512)は、インスリン吸収の薬動力学のモデル化に基づいており、血漿インスリン濃度を推定し、一例として、Hovorka et. al., "Nonlinear model predictive control of glucose concentration in subjects with type 1 diabetes", Physiol. Mea., 2004, 25, pages 905−20に記載されるインスリン吸収のモデルが使用され得る。このモデルの方程式は以下である;
【0088】
式中、k
eは、血漿中のインスリンに対する一次崩壊速度であり、u(t)は、皮下のインスリン注入の速度であり、V
Iは、血漿インスリンの分布容積であり、t
maxIは、時間に対する最大のインスリン吸収であり、S
1(t)およびS
2(t)は、皮下に投与された短時間作用型(例えばLispro)のインスリンの吸収を表わす2つの区画(two−compartment)の鎖である。このフィードバックのモデルのパラメーターは、同じ著者によって提案された平均母集団値に固定される(fixed)。
【0089】
食事の摂取後のグルコース変動(excursion)が原因で、T1DM被験体(患者またはユーザー)のグルコース値を制御するのは難しい。以前に言及された遅延が原因で、制御ユニット(500)は、食後の高血糖症を最小限にするために、グルコース変動の初めに、より活動的(aggressive)である必要がある。しかしながら、遅い食後または絶食の状態中に、制御器は、インスリンの蓄積のリスクを最小限にするために、それほど活動的でない必要がある。ベータ細胞の処理ロジック部(508)からの予測された患者のインスリン値出力は、以下の式に従うゲインファクターKを使用して、ゲインロジック部(510)によって調節される;
【0091】
ゲインKは、異なる時間に設定されてもよく、そのため、単一のゲインファクター(K)を使用する代わりに、いくつかのゲインファクターが、インスリンポンプが作動する変動条件に依存して使用されてもよい。これは、ゲインファクターの予測された患者のインスリン出力値をもたらす。ゲインロジック部(510)のこの実施形態では、3つのゲインファクター(Kp、KhおよびKf)が、ほんの一例として使用される。より多くのゲインファクター、または一連のゲインファクターが、インスリンポンプの制御をさらに最適化するために使用され得ることが認識されるであろう。
【0092】
第1ゲインファクター(Kp)は、食事の摂取後の一定期間(Tp)に使用される。第のゲインファクター(Kh)は、グルコース濃度が、予め決められたグルコース閾値(例えば、180mg/dL)より上であるときに、すべての他の時間に使用される。予め決められたグルコース閾値は、患者の過去のデータおよびそれらのインスリン必要量から計算される。第3ゲインファクター(Kf)は、その他の時間に使用される。軽食(すなわち、<20グラムの炭水化物)が、適切な食事と見なされず、そのため、第2または第3のゲインのいずれかが、この状況で使用され得ることを留意されたい。しかしながら、より多くのゲインファクターが、定められた状況の条件により好適に合うと決定され得ることが認識されるであろう。
【0093】
ゲインロジック部(510)は、以下の式に従う、ゲインファクターK、Kf、Kp、またはKhを設定することができる:
【0095】
方程式5に記載されるような基礎インスリンの減衰ゲイン(kb)は、グルコースセンサーのエラーが大きすぎると考えられるときに、制御信号(516)を生成するために、患者の欠乏出力値(511)から取り除かれ得る。
【0096】
上述の特徴に加えて、制御ユニット(500)もまた、S.C.の測定と送達経路によって誘発された遅延が原因で、食事前の部分的なボーラスを計算する部分的なボーラス計算機(514)を含むように構成されてもよい。部分的な食事前のボーラスは、インスリン作用のピークを糖質吸収のピークと一致させ、且つ食後の変動を最小限にするために、食事が摂取される前に、必要とされたインスリンの一部を送達するために使用されてもよい。この部分的なボーラスを計算するために、摂取された食事の炭水化物(CHO)の量に関する追加の情報が必要とされる。制御ユニット(500)は、ユーザー入力部(504)及び/又は測定入力部(506)から部分的なボーラス計算機(514)によって必要とされる追加の情報を受け取り得る。そのような情報は、制御器に切迫した食事及び/又は摂取され得る炭水化物の量の推定値を通知するユーザーを表わすデータを含み得る。ユーザーまたは患者に対するインスリン対炭水化物の比率(ICR)および補正係数(CF)を使用して、患者の具体的な又は対応する部分的なボーラス(PB)は、以下のように、部分的なボーラス計算機(514)によってように計算され得る:
【0098】
式中、Gは、グルコース濃度であり、およびG
spは、グルコースの設定値である。ボーラスは、食事前に、例えば、食事の摂取の10分前に送達され得る。部分的なボーラスのインスリン値は、ユーザーまたは患者に対する必要とされるインスリンの単なる一部であり、必要とされたインスリンのすべてではない。
【0099】
ゲインロジック部(510)、S.C.のインスリンのフィードバックのロジック部(512)、および部分的なボーラス計算機(514)の出力を考えると、制御ユニット(500)は、以下の方程式に基づいて、制御信号(516)を生成するための患者の欠乏値(511)を計算するように構成され得る:
【0101】
式中、U(t)は、制御信号(516)を生成するための患者の欠乏出力値(511)であり、SR(t)は、ゲインファクターKによって調整されたゲインファクターの予測された患者のインスリン出力値であり、K
yI(t)は、推定された血漿インスリン濃度のインスリンの・フィードバック値であり、およびPB(t)は、計算された食事前の部分的なボーラス値である。基礎インスリン値は、患者のインスリン必要量に依存して含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0102】
制御ユニット(500)はまた、低血糖症(皮下注射)の予防ロジック部(520)を含み得、これは、低血糖症を最小限にする及び/又は予防する安全機構である。これは、アルゴリズム計算が原因のインスリンの過剰送達の起こり得るリスクを最小限にする。皮下注射の予防ロジック部は、インスリンポンプを制御するための、患者の欠乏出力値(511)および生成された制御信号(516)を計算する処理ロジック部と併用して使用され得る。この機構は、インスリンポンプが、断食状態中および食事状態中に注入されることが許される、インスリンの量を制限する。これらの安全制約は、体重、補正係数、インスリンに対する炭水化物の比率、および合計の毎日のインスリン必要量などの、測定されるパラメーターに基づいている。
【0103】
安全制約は、最大の基礎インスリン値および基礎インスリンの組み込み値を含む、断食の制約を含む。最大の基礎インスリン値は、合計の毎日のインスリン必要量に基づいて、一定期間の間、送達されたインスリンを制限する。基礎インスリンの組み込み値は、インスリンの組み込みの推定値(すなわち患者の身体中の活性インスリン)が、予め定義された組み込みの閾値に達するときに、基礎インスリン送達を制限する。安全制約はまた、食後の制約を含み、これは、最大のボーラスおよび食後のインスリンの組み込み値を含んだ。最大のボーラス値は、補正係数および患者のインスリンに対する炭水化物の比率に基づいて、食事に関係するインスリンのボーラスを制限する。食後のインスリンの組み込みの推定値は、インスリンの組み込み値が、予め定義された制限に達するときに、食後のインスリン送達を制限する。その後、低血糖症が、公認されたグルコースを予測するアルゴリズムに基づいて予測され得、低血糖症がN分時間の期間(horizon)(例えばN=20、30、または40分)で予測されるときに、インスリンポンプは停止する。
【0104】
低いグルコース値が予測されるときに、インシュリン送達を抑える、または減少させるために、皮下注射の予防ロジック部(520)が、制御ユニット(500)と併用して使用される。この機能を行う例は、E. Dassau et. al., "Real−time hypoglycaemia prediction suite using continuous glucose monitoring: a safety net for the artificial pancreas", Diabetes Care, 2010, 33, pages 1249−1254に記載されている。皮下注射の予防ロジック部(520)は、グルコース濃度を予測する(例えば、20分前)ように、およびグルコース値が予め定義された閾値以下に落ちる場合に、患者のインスリン欠乏値(U(t))(511)および制御信号(516)によって制御されたインスリンポンプのインシュリン送達を停止する又は減少させるように構成される。予め定義された閾値は、ユーザーまたは患者に特有であり得る。例として、皮下注射の予防ロジック部(520)は、患者のインスリン欠乏値(U(t))(511)を調節し、したがって、以下のロジックに基づいて制御信号(516)を制御する:
【0106】
式中、G(t)は、現在のグルコース値であり、Hは、予測する期間または窓(window)であり、およびSは、以前のnサンプルを使用して計算された線形回帰のスロープである。予め定義されたグルコース安全性の閾値または制限(70)および(90)が、患者またはユーザーのインスリン必要量に依存して調節され得ることが認識されるであろう。
【0107】
制御ユニット(500)は、各ユーザーまたは患者に対するインスリンの送達に最適な制御を提供するために調節され得る。制御ユニット(500)は、個々に調整され得る。
これを行うために、患者またはユーザーは、基礎インスリン必要量を表わすデータを測定するべく研究または検査され得ることで、血糖を最適化する。制御ユニット(500)は、運動などの起こり得る混乱と同様に、起こり得る不一致に取り組むことができる。例として、調整される制御ユニット(500)のパラメーターは:第1、第2および第3のゲインファクター、Kp、Kf、およびKh、食後のゲインKpが有効であるための期間(Tp)、インスリンのフィードバックのゲイン(Ky)、線形回帰(n)および予測する期間(H)に使用されるサンプルの数、およびグルコースの設定値(Gsp)である。さらに、インスリン分泌物の計算モデルのモデルパラメーターは、調整される必要があり得る。この場合、ペーデルセンモデル(Pederson model)(膵臓のベータ細胞モデル)は、インスリン分泌物の計算モデルとして使用される。
【0108】
これらのパラメーターは、患者またはユーザーの過去のデータに基づいて調整され得る。試験から、パラメーターが、低い患者間または被験体間の変動性を有しており、一般に制御器の性能に著しい影響を与えることなく固定され得ると見られてきた。患者またはユーザーに個々に合わせられる必要のある唯一のパラメーターは、ゲインファクターKp、KhおよびKfである。これは、大きなデータセット上で最適化するときに計算上高価になりかねない、三次元の最適化問題を提起している。しかしながら、ゲインファクターKhおよびKfは、Kpに比例するように設定され得る。ほんの一例として、T1DMでシミュレートした母集団に基づいて、表2は、制御ユニット(500)によってシミュレーションで決定され使用されたパラメーター値(モデルパラメーターを含まない)を示す。
【0110】
インビボの研究の間にパラメーターKpを合わせることは可能であり得るが、これは明白な安全上の理由で推薦されない。これは、オフラインのオートチューニングの方法論が、この目的のために実施されるべきであることを意味する。例えば、患者の過去のデータ(移動性のデータとも呼ばれる)は、1回以上の訪問の間に熟練したエンジニア(看護婦または医者)に集められ得る。例えば、患者は、これらの訪問の結果から、第1および第2の訪問を受けたかもしれない。過去のデータは、血中グルコース測定、例えば、連続的なグルコースの監視測定(CGM)、毛細管血のグルコース測定(食前に1回および例えば90分で食後に1回)、インスリンポンプのデータ、および(食物日記から推定された)炭水化物の摂取を含むことができる。
【0111】
過去のデータは、優れた血糖コントロールがこれらの訪問の間に達成される場合のシナリオに基づいて選択される。選択された過去のデータは、ダウンロードされ、分析に適したフォーマットへ収集される。選択された過去のデータを使用して、制御器(500)は、パソコン上で実行されるソフトウェアを使用して行われ得る、最適化分析を使用して調整される。
最適化分析のアルゴリズムは、選択された過去のデータ(例えばCGMデータ、送達された合計のインスリンおよび炭水化物の摂取)を使用し、ゲインファクターなどの制御パラメーター、および制御器(500)によって使用されるインスリン分泌モデルのための他の調整パラメーターを計算する。これは、制御器(500)が、選択されたシナリオの間と同じ量のインスリンを送達することを確かなものにしている。
【0112】
一旦制御パラメーターが、最適化分析を使用して得られたならば、それらは制御器(500)に入力され得る。例えば、ユーザー入力部(504)は、コンピューターから(例えばUSBまたは無線を介して)制御パラメーターを受け取るためのコネクターを含み得るか、またはユーザー入力部は、Micro SD Card(RTM)制御器などの取り外し可能な又は携帯用のメモリを介して制御パラメーターを受け取るための接続部を含み得る。あるいは又はこれらの入力部に加えて、ユーザー入力部(504)は、制御器パラメーターが手入力されるキーパッドまたはキーボードに対する接続部を含み得る。どの場合においても、ユーザー入力部は、最適化アルゴリズム中に計算されたゲインファクターを含む、制御パラメーターを受け取る。加えて、インスリン分泌物の計算モデル及び/又はそのパラメーターは、制御ユニット(500)にアップロードされ得る。
【0113】
例において、方法論は、「優れた」または成功するグルコースの制御シナリオおよび計画された閉ループ試験に対する類似した条件(すなわち、類似した食事、時刻、運動など)に相当する、患者、ユーザーまたは試験された被験体からの開ループの過去のデータ(すなわち食事情報、連続的なグルコース監視のデータ、およびインスリンポンプのデータ)を使用する。このオートチューニングの方法論は、ゲインファクターKpを調節する最適化アルゴリズムを含み、その結果、定められたグルコース特性に関して、制御器は、開ループのシナリオ中に投与された同じ量のインスリンを送達する。
【0114】
制御ユニット(500)を調整する簡易検査の例として、過去の開ループのデータは、T1DMシミュレーターの代謝性試験の作用性から生じ、制御ユニット(500)を調整するために使用された。過去のデータはまた、患者またはユーザーの研究または検診からの実環境データに基づき得る。T1DMシミュレーターは、シナリオの開始の3時間後に摂取された60gの炭水化物の一回の食事での24時間のシナリオに基づいて過去のデータを生成した。基礎インスリン速度(SRb)は、100mg/dLに近い基礎グルコース濃度を達成するために調節された。その後、インスリンに対する炭水化物の比率は、80mg/dLに近い食後の逆反応(すなわちアンダシュート(undershoot))を達成するために調節された。その後、結果として生じるグルコース特性は、制御ユニット(500)を調整するために使用された。Matlab (RTM) Optimization Toolbox (2010b, The Matworks, Natick, MA)からのfminconの関数は、以下のコスト関数を最小限にしたゲインファクターKpを見つけるために使用された:
【0116】
式中、Tは、シナリオの期間(すなわち24時間)であり、CHOは、摂取された炭水化物(すなわち60g)の量であり、ICRは、計算されたインスリンに対する炭水化物の比率である。ゲインファクターKpは、範囲[0,3)内にあるように制約された。しかしながら、異なるインスリンの計算モデルが、異なる範囲および制約を必要とし得ることが認識されるであろう。
【0117】
図5bは、インスリンポンプ(112)を制御するための制御信号(516a)の計算に使用するための制御ユニット(530)の別の例の概略図を例証する。制御ユニット(530)は、
図5aの制御ユニット(500)と類似した構成要素を使用し、したがって、参照符号が単純性のために再使用され、ここで、各構成要素は、
図5aに関連して記載されている。
【0118】
制御ユニット(530)は、グルコース測定入力部(506)からの連続的なグルコースの監視または感知を使用し、これらは、限定されないが、皮下の血中グルコースセンサー、静脈内の血中グルコースセンサー、および非侵襲性の血中グルコースセンサーのグループからのセンサーを使用することができる。グルコース測定入力部(506)は、ユーザーまたは患者の血中グルコースの濃度または値を表わすデータを受け取る。閉ループグルコースの制御器およびベータ細胞の処理ロジック部(508)(膵臓のベータ細胞の計算モデル)は、一例として、グルコース刺激性の膵臓のインスリン分泌物のペーデルセンモデルに基づいている。ベータ細胞の処理ロジック部(508)は、ユーザー入力部(504)(食事の発表(announcements)及び/又は炭水化物の量)および測定入力部(506)から受け取ったデータに基づいて、予測される患者インスリン値を出力する。ゲインロジック部(510)は、患者のインスリン欠乏値(511)を計算するための1つ以上のゲインファクターKに基づいて、ゲインファクターの予測された患者のインスリン値を決定するために、予測された患者のインスリン値を使用する。制御ユニット(500)には、患者に投与されるインスリンに基づく、インスリンのフィードバック値を提供するためのインスリンのフィードバックのロジック部(512)が含まれ、これは、インスリンポンプ(522)の出力から測定され得るか、または制御信号(516a)から引き出され得る。
いくつかの制御器を必要としないことを示す、破線で示された随意に部分的なボーラスの計算ロジック部(514)は、実施されるときにボーラスのインスリン値を提供することができるが、これは以下の見られるように必要ではない。患者のインスリン欠乏値(511)は、ゲインファクターの予測されたインスリン出力値、随意のボーラスのインスリン値、およびインスリンのフィードバック値の合計によって計算され、これは、その後、制御信号(516a)を生成するために使用される。さらに、必要ならば、制御信号(516a)の生成に使用するための患者のインスリン欠乏値(511)を計算する際に基礎インスリン値を提供するために、基礎インスリン特性のロジック部(515)が組み込まれてもよい。安全対策として、皮下注射の予防ロジック部(520)は、低血糖症を最小限にする又は予防するために随意に含まれ、これは、患者のインスリン欠乏値(511)を調節または制限し、それ故、制御信号(516a)を調節または制限する。その後、制御信号(516a)は、インスリンポンプ(522)の出力インスリン値を制御するために使用される。
【0119】
制御器(530)が食事前のボーラスなしで使用されると、食事がユーザーによって発表されることが必要となるだけであり、これは、ユーザー入力部(504)に含まれたボタンを単に押すことによって行うことができる。食事前のボーラスのモダリティー(modality)は、すなわち、部分的なボーラス計算機(514)が実施されるときに、食事に関する追加情報(すなわち炭水化物の量)を必要とし、これは、グラフィカルユーザインタフェースを介して容易に導入され得る。これらの2つの方策間の選択は、処置されるユーザーまたは患者のタイプに依存し得る。子供の集団については、食事または軽食について制御ユニット(530)に伝えるためにボタンを単に押すことはより好都合であろう。10代の若者/成人の集団については、患者またはユーザーは、食事または軽食についてのさらなる情報を求められ得、その結果、部分的なボーラス計算機が、制御ユニット(530)で実施され得る。制御ユニット(500)および(530)は、携帯用の人工膵臓またはインスリンポンプに埋め込まれ得、これは、グルコースセンサー、例えば、連続的なグルコースセンサーと接続する電子計装を含む。
【0120】
図6は、前述のシナリオの一部分のための制御ユニット(500)によって制御された、インスリンポンプによるインスリン送達の例を示すグラフを例証する。上のグラフのy軸は、グルコース(mg/dL)を表わし、下のグラフのy軸は、インスリン(ug/min)を表わし、ここで、両方のグラフ上のx軸は、分単位の時間を表わす。上のグラフは、皮下のグルコース測定(600)(破線の青の線);高血糖症及び低血糖症の閾値(602)(赤い水平線)および食事(604)(バー)を例証する。下のグラフは、食事前の部分的なボーラス(606)(青のバー)、β細胞モデルのインスリン分泌物(608)(実線の緑の線)、基礎インスリン(610)(実線の青緑の線)、インスリンのフィードバック(612)(星印の赤の線)、および送達されたインスリン(614)(青の破線)を例証する。
【0121】
前述のプロセスに加えて、患者内で血中グルコース値を制御する方法が提供され、該方法は、患者に関連する過去のデータに基づいて、患者に対するゲインファクターを計算する工程、患者内の血中グルコース値を測定する工程、インスリン出力値を予測するために、測定された血中グルコース値をインスリン分泌物の計算モデルに適用する工程、前記ゲインファクターおよび予測されたインスリン出力値に基づいて、患者のインスリン欠乏値を計算する工程、および皮下のレベルでインスリンを患者に注入するように構成されたインスリンポンプのための制御入力部として患者のインスリン欠乏値を使用する工程を含む。この方法は、移動性または携帯用のインスリンポンプを使用して、糖尿病(例えば1型または2型の糖尿病を持った人々)をインサイツで又は可動性であるときに処置するために使用され得る。
【0122】
上述の及び
図2a、2b、5a、および5bに関連して記載される制御ユニットは、プロセッサーまたは処理ロジック部、あるいは指示またはコンピュータープログラムを保存するためのメモリまたはロジックゲートを含む、フィールドプログラマブルゲートアレイを含み、これらは、プロセッサーまたは処理ロジック部またはロジックゲートで実行されるときに、制御ユニットに本明細書に概説されるような方法の工程を実行させる、コードを含む。本明細書に記載されるこのようなコンピュータープログラムは、1つ以上のコンピュータープログラムプロダクト内に組み込まれ得、その各々は、コンピューター読み取り可能な媒体およびコンピュータープログラムの1つ以上を含み、ここで、コンピュータープログラムの1つ以上は、コンピューター読み取り可能な媒体上に保存される。上述の及び
図2a、2b、5a、および5bに関連して記載される制御ユニット、例えば、制御ユニット(102)、(500)、または(530)はまた、限定されないが、半導体デバイスまたはチップ、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイスまたはチップ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または他の適切な集積回路またはデバイスなどの、1つ以上の集積回路として実施され得る。
【0123】
本発明は、上に述べられるような好ましい実施形態の観点から記載されたが、これらの実施形態が、単に例示であり、請求項がこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。当業者は、添付の請求項の範囲内にあると考慮される開示の観点で、修正および代替を行うことができるであろう。本明細書に開示または例証される各々の特徴は、単独または本明細書に開示または例証される任意の他の特徴との任意の適切な組み合わせのいずれかで、本発明に組み込まれ得る。